かのマイク・ヴァーニーが発掘した名手ラーズ・エリック・マットソンを中心に据えたフィンランドのバンドによる'89年発表作品。 北欧メタルのような透明感のあるサウンドが特徴で、時折、モロにイングヴェイを感じさせる場面もあるものの、嫌いではない。 ラーズのギター・プレイも流麗で素晴らしいの一言。 スペーシーなサウンドと流麗なギターに彩られた名曲「BREAK YOUR CHAINS」、イングヴェイを髣髴させる「LET IT ROCK」、ラーズのバカテクが発揮されたインスト曲「MUJAHEDIN WARRIOR」、パイプ・オルガンのような厳かなイントロが美しい「CAN'T GO ON WITHOUT YOUR LOVE」、アルバム唯一の疾走曲「DEVIL IN YOUR MIRROR」、泣きのギターが聴けるインスト曲「TALES UNTOLD」が個人的にはお気に入り。 ボーナス・トラック2曲の出来も悪くない。
YARDBIRDSを脱退したジミー・ペイジ(G)が、ロバート・プラント(Vo)、ジョン・ポール・ジョーンズ(B)、ジョン・ボーナム(Dr)らと共にNEW YARDBIRDSを結成、バンド名をLED ZEPPELINに改め、'69年1月に発表したのがデビュー・アルバムにしてロック史に残る超名盤となった本作「Ⅰ」である。 キャッチーなヘヴィ・ロックの名曲「GOOD TIMES BAD TIMES」、ペイジのアコースティック・ギターが大迫力のドラマティック・バラード「BABE I'M GONNA LEAVE YOU」、WILLIE DIXSONのブルーズ・ソングの秀逸なカヴァー「YOU SHOOK ME」、バンドのテクニカルな演奏がせめぎ合う、ヘヴィかつサイケデリックなアルバムのハイライト・チューン「DAZED AND CONFUSED」、ジョンジーのハモンド・オルガンのサウンドが美しい「YOUR TIME IS GONNA COME」、ギター・サウンドがトラディショナルな「BLACK MOUNTAIN SIDE」、前曲からの流れがあまりに見事な、疾走感に満ちたハード・ロックの超名曲「COMMUNICATION BREAKDOWN」、やはりWILLIE DIXSONのブルーズ・ソングの秀逸なカヴァーである「I CAN'T QUIT YOU BABY」、ギター・リフがあまりにもかっこいい大曲「HOW MANY MORE TIMES」と、これだけの好曲揃いでありながらも更なる飛躍を感じさせるところが凄い。 ハイ・トーン・ヴォイスが素晴らしいプラント、印象的なリフを数々生み出すペイジ、テクニカルで安定のあるプレイを聴かせるジョンジー、ドラムをぶったたくような破壊力に満ちたボンゾと、4人の個性と実力のひしめき合いという点においてはあのBEATLESを超越していると言っても過言ではない。
デビュー・アルバムからわずか9か月余りの'69年10月に発表され、あのTHE BEATLESの「ABBY ROAD」を蹴落として7週連続全米№1となる大ヒットを記録した2nd。 ツアーの各先々で作曲・録音されたということもあって各曲の録音状態はまちまちであるが、それが逆に功を奏してかラフでダイナミックなサウンドを得ることに成功している。 ジミー・ペイジによるギター・リフがあまりにも強烈な個性を放つ「WHOLE LOTTA LOVE」や「HEARTBREAKER」といったヘヴィ・ロックの超名曲を筆頭に、静と動とがダイナミックに展開する「WHAT IS AND WHAT SHOULD NEVER BE」、HOWLIN' WOLFの「KILLING FLORE」をモチーフにしたエキセントリックな「THE LEMON SONG」、プラントのソフトな歌唱がはかなくも悲しげな哀愁を漂わせる絶品バラード「TAHNK YOU」、キャッチーで軽快なメロディを聴かせる「LIVING LOVING MAID (SHE JUST A WOMAN)」、サビにおいて迫力のあるヘヴィなギター・リフで迫る「RAMBLE ON」、ボンゾのドラミングが圧巻のインスト曲「MOBY DICK」、牧歌的なメロディとキラー・リフへとが同居する「BRING IT ON HOME」と、楽曲には一切の隙も見当たらない。 各メンバーの歌唱&演奏もライヴ感に満ちており、前作にも増して凄まじい迫力を伴っている。 個人的には、彼らの作品の中で最も好きなアルバムであるとともに、ロック史上においても5本の指に入る名盤であると信じてやまない。
前作「LED ZEPPELIN Ⅱ」の大ヒットによりロック界の頂点を極めたバンドであるが、幾多の伝説を残したツアー終了後、ペイジとプラントがウェールズの片田舎に引っ込んで書き溜めた曲はブリティッシュ・フォークをルーツとするものであった。 それらの曲を中心に製作された'70年発表の3rdは、前作までのヘヴィでブルージーな曲調を好んだファンやプレスから酷評されもしたが、本作以降に発表されたアルバムを聴けばわかるとおり、結果的にはバンドの可能性をさらに押し広げることに成功したアルバムであった。 ストリングスが不思議な情景を醸し出す「FRIENDS」、軽快に刻まれるアコギとエレキによるリフとが絶妙に絡む「CELEBRATION DAY」、ブルージーで官能的なペイジのギターと慟哭のようなプラントの歌唱が絶品のバラード「SINCE I'VE BEEN LOVING YOU」、超弩級のヘヴィ・ナンバー「OUT ON THE TILES」、フォーキーで牧歌的な「GALLOWS POLE」、アコギの特性を活かした哀愁のバラード「TANGERINE」、プラントの伸びやかな歌唱が絶品の「THAT'S THE WAY」、作曲を行ったコテージ名を曲タイトルに掲げた、宴の様子をとらえたような「BRON Y-AUR STOMP」、ぶっ飛びのイントロを聴かせる「HATS OFF TO (ROY) HARPER」と、ギターをエレクトリックからアコースティックに持ち替えた曲を中心に据えたところで、楽曲の水準は押しなべて高い。 しかし、何といっても本作の目玉は、バンド史上屈指の名曲で、うねるようにヘヴィなギター・リフにプラントのエキセントリックな歌唱が乗ったモンスター・ソング「IMMIGRANT SONG」の存在であろう。
イギリスのRUSHとも評されたマイク(Vo,B)とグレン(G)のスクリムショウ兄弟とパット・コールマン(Dr)のマンズフィールド出身のトリオによる'80年発表の唯一のアルバム。 多彩な楽器を使いこなす各メンバーのプレイはいずれも素晴らしく、RUSHやRAINBOW等からの影響が顕著な楽曲は、あまりにも物悲しいメロディに彩られた哀愁のドラマティック・バラード「MAN OF COLOURS」やRAINBOWの「KILL THE KING」を彷彿させる「METAL MAN」といったNWOBHM史上に名を残す名曲を始めとして、明るくキャッチーなメロディを聴かせる「GOING HOME」、初期RAINBOW的なギター・リフを持つ「KNIFE IN YOUR BACK」、ハイ・トーンを駆使した哀愁ナンバー「MAMMA (I DON'T WANNA LOSE YA)」、ツインで奏でられるギター・リフがトリッキーな「WALK ON WATER」、プログレッシヴな曲展開が圧巻の「DON'T LOOK BACK」と、アルバムの中に捨て曲は一切見当たらない。 CD再発の際には、ボーナス・トラックとして'82年発表のシングル「ASHES TO ASHES」が追加収録されているが、これがU.F.O.の「DOCTOR DOCTOR」を彷彿とさせる好ナンバーだ。 アルバム1枚で消えていったのが実に惜しまれるバンドであった。
元LITTLE CAESARのロン・ヤング(Vo)、元WHITESNAKE等のエイドリアン・ヴァンデンバーグ(G)、ルディ・サーゾ(B)、トミー・アルドリッヂ(Dr)と、ある意味スーパー・バンド的なメンツによる'94年発表の作品。 エイドリアンがこういう音を目指していたのであれば、ロン・ヤングの起用は大正解であった。 ジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリンといった伝説的人物の伝説的名曲に影響を受けたようなブルージーな曲の数々を、ロンは見事に歌い上げている。 MOVE OVERのような「CAN YOU FEEL IT」、哀愁の漂う物悲しいバラード「RIDE THE STORM」、ファンキーで軽快な「CAN'T HOLD IT」、LITTLE WINGのような「DO ANGELS DIE」、キャッチーで温かみのある歌メロが耳を引くバラード「DARK SHADE OF GREY」等、決して悪いアルバムではないが一般受けするサウンドではない。 VANDENBERGに魅了された者としては「何もキミがやらなくても」という感想が残る。
事件に巻き込まれ記憶を失った少女の実話をモチーフにした'94年発表のコンセプト・アルバムで、PINK FLOYD的なプログレッシヴ・ロックを英国特有の叙情的サウンドで聴かせてくれる。 中でもスティーヴ・ホガースのウェットで力強い歌声とスティーヴ・ロザリーの流麗なギターは絶品で、達人の域に達していると言っていい。 目の前に情景が広がってくるような「BRIDGE」に幕を開け、地味ながらもウェットで美しいサウンドが続いていくが、ドラマティックな曲展開の「GOODBYE TO ALL THAT」、慟哭のような歌唱がパワフルな「HARD AS LOVE」、歌声とギターが美しくメロディアスな「ALONE AGAIN IN THE LAP OF LUXURY」、明るくスウィングするような「PAPER LIES」、圧倒的な説得力を持つ歌声と流麗なギターが圧巻の「THE GREAT ESCAPE」等、決してとっつき易いアルバムでは無いものの、「これぞ英国ロック!」とサウンドが主張しているようである。
伝説的ロック・オペラの名盤「BAT OUT OF HELL」から15年以上の時を経て発表された'94年発表の続編。 全米№1を記録した劇的なバラード「I'D DO ANYTHING FOR LOVE(BUT I WON'T DO THAT)」、印象的なギター・リフと大抑なコーラスの「LIFE IS A LEMON AND I WANT MY MONEY BACK」、温かみのある歌メロが秀逸な「ROCK AND ROLL DREAMS COME THROUGH」、壮大で劇的なクワイアが涙モノの「IT JUST WON'T QUIT」、明るくキャッチーな「OUT OF THE FRYING PAN(AND INTO THE FIRE)」、ピアノの音色も美しいドラマティックなバラード「OBJECTS IN THE REAR VIEW MIRROR MAY APPEAR CLOSER THAN THEY ARE」、次曲のイントロとなる「WASTED YOUTH」、ハードなギターとスリリングな曲調から明るく曲展する「EVERYTHING LOUDER THAN EVERYTHING ELSE」、ショー的でテクノ調サウンドも聴かれる「GOOD GIRLS GO TO HEAVEN(BAD GIRLS GO EVERYWHERE)」、正にクラシックなインスト「BACK INTO HELL」、映画のエンド・ロールを見ているような「LOST BOYS AND GOLDEN GIRLS」と、美しくドラマティックな曲の数々は「BAT OUT OF HELL」を完全に超えている。 ロックの範疇を超えて素晴らしいと言える内容の超名盤。
前作のシンプルかつコンパクトな作風を更に推し進めたような内容の'94年発表の6th。 前作までにあったバンド特有の緊張感は薄れ、曲によってはキャッチーとすら形容してしまいたくなるほどであるが、ところどころに顔を覗かせる叙情的なメロディの美しさにバンドの新たな魅力を感じたのも事実。 ニック・メンザの大砲のようなドラミングがかっこいい「RECKONING DAY」、不規則なギター・リフが印象的なリーダー・トラックの「TRAIN OF CONSEQUENCES」、サビのメロディが叙情的な「ADDICTED TO CHAOS」、ユニゾンで奏でられるギターが余りにも美しい「A TOUT LE MONDE」、バック・コーラスも爽やかな好曲「ELYSIAN FIELDS」、最もMEGADETHらしいリフを持った「THE KILLING ROAD」、幻想的なオープニングが劇的な「BLOOD OF HEROES」、明るいイントロとキャッチーな歌メロの「FAMILY TREE」、引きずるようなヘヴィさの「YOUTHANASIA」、ヘヴィさと叙情的メロディを併せ持った「I THOUGHT I KNEW IT ALL」、リフに重みのある「BLACK CURTAINS」、歌詞に過去の名曲が登場するシンプルな作りの「VICTORY」で本編終了。 ボーナス・トラックとしてDIAMOND HEADのような「A CROWN OF WORMS」とライヴ曲3曲を収録。 アルバムのハイライト的な曲が欲しかった気も。
これまで製作したPVを収録した'06年発売のDVD作品。 METALLICAの場合、バンドの人気が絶頂期を迎えてからPVを作り始めているため、どのPVも金がかかっていて見るものをあきさせない。 映画「ジョニーは戦場へ行った」を取り込んだPVの傑作「ONE」、ストロボ映像が印象的な名監督ウェイン・アイシャムによる「ENTER SANDMAN」、モノクロ映像が楽曲に見事にマッチした「THE UNFORGIVEN」、ブラック・アルバム製作スタジオの模様を捉えた「NOTHING ELSE MATTERS」、ツアーのステージ・セットの全貌が明らかになる「WHEREVER I MAY ROAM」、ライヴにおける熱気が伝わる「SAD BUT TRUE」、前衛芸術的なゴシック感が漂う「UNTIL IT SLEEPS」、メンバーのクイズ回答者やガンマンに扮した演技に驚かされた「HERO OF THE DAY」、最後に映像の裏方をバラすオチのついた「MAMA SAID」、大雪山での演奏映像がクールな「KING NOTHING」、メンバーが360度回転しながら演奏する見事な映像の「THE MEMORY REMAINS」、前作のストーリーを見事に踏襲した「THE UNFORGIVEN Ⅱ」、カー・レースのスピード感が曲と絶妙にマッチした「FUEL」、ストリッパーの悲しき人生を題材にした「TURN THE PAGE」、ロックの世界におけるパーティーの模様をパロった「WHISKEY IN THE JAR」、マイケル・ケイメン指揮によるオーケストラとの競演曲「NO LEAF CLOVER」、映画並みのスリリングな映像を駆使した「M.I:Ⅱ」のサントラ曲「I DISAPPEAR」、サン・クエンティン収容所内の囚人達を前に演奏された「ST.ANGER」、迫力の映像と熱い演奏シーンを織り交ぜた「FRANTIC」、退廃的な映像の「THE UNNAMED FEELING」、同名映画におけるメンバー内の緊張関係を捉えた「SOME KIND OF MONSTER」のほか、ボーナス映像として「ONE」のPVとその制作秘話を収録した'89年発表のにVHS作品「2 OF ONE」と「THE UNFORGIVEN」のストーリー映像、映画「SOME KIND OF MONSTER」の予告ビデオを収録。 ファンならずとも一見の価値あり。
UFO脱退後、アルコール依存症を乗り越えたマイケル・シェンカー(G)が自らの名前をグループ名にしたバンドによる'80年発表の1st。 他のレコーディング・メンバーは、ゲイリー・バーデン(Vo)、モ・フォスター(B)、サイモン・フィリップス(Ds)、ドン・エイリー(Key)。 プロデューサーはロジャー・グローバー。 ハード・ロックの教科書のような超名曲「ARMED AND READY」、マイケルのチョーキング・プレイが炸裂する哀愁の「CRY FOR THE NATIONS」、ザクザクと刻まれるリズム・ギターと官能のギター・ソロを兼ね備えたインストゥルメンタルの超名曲「INTO THE ARENA」を始め、ヘヴィなギター・リフの「VICTIM OF ILLUSION」、官能的なインスト曲「BIJOU PLEASURETTE」、サイモン・フィリップスによるドラム・プレイも素晴らしい「FEELS LIKE A GOOD THING」、サビのメロディがキャッチーな「LOOKING OUT FROM NOWHERE」、強烈な泣きを発するバラード「TALES OF MYSTERY」、オリエンタルなムード漂うドラマティックな「LOST HORIZONS」と、楽曲も充実している。 マイケルのエキサイティングかつエモーショナルにはじけまくったギターはあまりにも絶品で、もはや伝統芸能の域に達していると言っても過言ではない。 本作は紛れもないHR/HM史に残る超名盤である。
突然のヴィンス・ニール解雇後、新ヴォーカリストに元THE SCREAMのジョン・コラビを迎えて'94年に発表された、MOTLEY CRUE凋落の源となったアルバム。 ボブ・ロックのプロデュースによるダークかつヘヴィなサウンドは今でも色焦ることのない迫力を伴っているが、いかんせん時代を先取りしすぎた感がある。 アルバムは、破壊力のあるヘヴィなリフの「POWER TO THE MUSIC」、うねるような「UNCLE JACK」、ヘヴィ・グルーヴの超名曲「HOOLIGAN'S HOLIDAY」、ストリングスによるサウンドがドラマティックな「MISUNDERSTOOD」、アコースティック・ギターが渋く埃っぽい「LOVESHINE」、最も従来のMOTLEY CRUEらしい「POISON APPLES」、フックのあるリフの「HAMMERED」、ダーク&ヘヴィなリフの「TIL DEATH DO US PART」、グルーヴ感に満ちた「WELCOME TO THE NUMB」、猪突猛進檄音ナンバー「SMOKE THE SKY」、ムーディな「DROPPIN LIKE FLIES」、ジョンの優しげな歌唱が美しい「DRIFTAWAY」といった構成。 冒頭からヘヴィでスローなナンバーを連発させたことがアルバムの印象をさらに悪くさせているし、ジョン・コラビの声質も、このサウンドには合っているものの、「ヴィンスの個性的な声があってこそMOTLEY CRUE」との印象を払拭するまでには至っていない。