ルネッサンス時代の再来を願う想いを架空の国「ホーリー・ランド」に見立てた'96年発表のコンセプト・アルバムとなる2nd。 プロデューサーは、前作に引き続いてチャーリー・バウアーファイントとサシャ・ピート。 ドラマーがマルコ・アントゥネスからリカルド・コンフェッソーリに変わっている。 本作では、デビュー・アルバムで垣間見えた母国ブラジルのラテン・リズムや民族楽器の導入を前面に押し出すとともに、バンドのもう一つの特徴であるクラシカル・メロディと融合させており、2ndアルバムにして早くもこのバンドでなければ作りえない個性的なサウンドを生み出すことに成功している。 島への漂着を思わせるようなサウンドのイントロ「CROSSING」、エッジの利いたギター・リフがかっこいい「NOTHING TO SAY」、静と動との対比が美しくドラマティックな「SILENCE AND DISTANCE」、トライバルなブラジリアン・リズムからメロディアスなスピード・メタルへの転調が素晴らしい「CAROLINA Ⅳ」、まるでワールド・ミュージックのような「HOLY LAND」といったアルバム前半の流れが絶品。 アルバム後半も、ミステリアスなイントロの「THE SHAMAN」、マトスの伸びやかな歌唱が心に染みる「MAKE BELIEVE」、愁いのあるメロディが美しい「DEEP BLUE」、おそろしく陰鬱な気分にさせる「LULLABY FOR LUCIFER」と好曲が続くが、前半の充実ぶりと比較すると、やや興奮の度合いは落ちる。 その中でもスリリングなハイ・スピード・ナンバー「Z.I.T.O.」は、1st収録の「CARRY ON」の路線を踏襲する名曲。 バンドが結成されてから最初に作曲したというボーナス・トラック「QUEEN OF THE NIGHT」もなかなかかっこいいリフを持ったナンバーだ。 結局、このアルバムを気に入るかどうかのポイントは、ブラジリアン・リズムの大胆な導入を是と取るか否と取るかにあると思うが、個人的にはこの試みは大歓迎である。
前作「REBIRTH」の成功によって以前と変わらぬ実力と音楽性を備えていることを世間に知らしめた新生ANGRAが、真の意味でファンを惹きつけることのできるバンドであるかを世に問うたのが作品であり、個人的にもアルバムを聴くまで期待と不安を抱いていた。 しかし、彼らはそんなプレッシャーをもはねのけ、バンドの最高傑作といっても過言ではない名作を作り上げた。 '04年に発表された本作は、11世紀ヨーロッパにおける十字軍のエルサレム遠征をテーマにしたコンセプト・アルバムである。 プロデューサーは前作に引き続きPINK CREAM 69のデニス・ワードであるが、音の分厚さがこれまでになく増しており、情報量の多いアルバムとなっている。 バンドの演奏テクニックは相変わらず素晴らしく、前作ではやや線が細く感じられたエドゥのヴォーカルも押し引きを覚えた素晴らしい歌唱を聴かせてくれる。 神秘的なメロディの「DEUS LE VOLT!」からスピーディなメロディック・パワー・メタル史に残る超名曲「SPREAD YOUR FIRE」への完璧な流れを始め、スリリングなギター・リフと激しいツー・バスを聴かせる「ANGELS AND DEMONS」、勇ましくも愁いを帯びたメロディの「WAITING SILENCE」、爽快感のある美しさを持ったバラード「WISHING WELL」、GAMMA RAYのカイ・ハンセンとのツイン・ヴォーカルによるANGRA史上最も速い超激走チューン「THE TEMPLE OF HATE」、目まぐるしく展開するプログレッシヴ大曲「THE SHADOW HANTER」、エドゥの伸びやかな歌唱が素晴らしい「NO PAIN FOR THE DEAD」、BLIND GUARDIANのハンズィ・キアシュが参加した、エッジの利いたヘヴィ・チューン「WINDS OF DESTINATION」、民族音楽的なオリエンタル・ムードを放つ「SPROUTS OF TIME」、おそろしくテクニカルで流麗なギター・プレイが聴ける「MORNING STAR」、グラミー賞受賞経験もあるブラジル人アーティスト、ミルトン・ナシメントが素晴らしい歌唱を聴かせる「LATE REDEMPTION」、これまでの楽曲をオーケストレーションで綴るエンディング曲「GATE XIII」と、素晴らしい楽曲がアルバムをよりドラマティックなものにしている。 常にアルバム全体として楽しみたいコンセプト・アルバムの名盤。
前作「SET THE WORLD ON FIRE」で飛躍的な音楽的変化を遂げたものの、ドラマー以外のメンバーが脱退し、ジェフ・ウォーターズ自らがヴォーカル&ベースも担当するなど、殆どソロ作品に近い形で作成された94年発表の4th。 問題視されたジェフのヴォーカルであるが、楽曲にうまくはまっており、違和感は感じられない。 ソリッドな殺傷力に満ちたギター・リフが次から次へと繰り出される楽曲は見事で、特に「KING OF THE KILL」、「SECOND TO NONE」の2曲は必聴! 中盤のメロウでポップなバラード「ONLY BE LONELY」やプログレッシヴな「HELL IS A WAR」、ファンキーなリズムの「SPEED」、叙情性に満ちた「IN THE BLOOD」といったフックのきいた曲の存在も見逃せない。 もっと注目を浴びてもいいと思うのだが、バンドのメンバーが固定しないのがマイナス要因。
デビュー・アルバムが好評を得たインテレクチュアル・スラッシュ・メタル・バンドが、脱退したランディ・ランペイジ(Vo)とアンソニー・グリーンハム(G)の後任に元OMENのコバーン・ファー(Vo)とデイヴ・スコット・デイヴィスを迎え、'90年に発表した2nd。 プロデュースはVOI VODを手掛けたグレン・ロビンソンとジェフ・ウォーターズ(G)自身が担当。 クランチの利いたギター・リフとタイトなリズム、複雑でありつつも難解とならない絶妙な曲展開、ジェフ・ウォーターズ(G)のテクニカルなギター・ソロと、演奏・楽曲は相変わらず素晴らしく、ニュー・シンガーのコバーン・ファーの実力は明らかに前任者以上で、楽曲にも違和感なくはまっている。 現代社会が抱える問題や精神異常をテーマにした歌詞もこのバンド特有のものだ。 デモ・テープ時代から暖められてきたスラッシュ・メタルを代表する名曲「PHANTASMAGORIA」を始めとして、ツインで奏でられるフックの利いた名ギター・リフを持つ「THE FUN PALACE」、機銃掃射のように刻まれるリフがたまらなく格好いい「ROAD TO RUIN」、変調が見事な「SIXES AND SEVENS」、キャッチーなコーラスを有する「STONEWALL」、目まぐるしい曲展開を見せるドラマティックなタイトル曲「NEVER, NEVERLAND」、圧巻のギター・ソロを聴かせる「IMPERILED EYES」、パンキッシュな「KRAF DINNER」、刻まれるギター・リフの音色が心地よい「REDUCED TO ASH」、エンディングにふさわしい荒くれナンバー「I AM IN COMMAND」と、バンドの最高傑作との呼び声も高い、捨て曲なしの好盤。
91年のカリフォルニアにおけるライヴと92年のスタジオ・ライヴで構成された94年発表のライヴ・アルバム。 レコード会社移籍に伴う契約解消のためとはいえ、ジョン・ブッシュ加入の翌年にこのジョーイ・ベラドナ時代のライヴ盤を出したのはタイミングとしては非常に悪かったが、ジョーイ時代に思い入れのあるファンには嬉しい内容ではある。 「TIME」のイントロに導かれる「(Efilnikufesin)N.F.L.」で勢い良く始まり、「A.I.R」の名リフが後を引き継ぐ。KISSのカヴァー「PARASITE」、アルバムより縦ノリ感を増した「KEEP IT IN THE FAMILY」、疾走感を増した「CAUGHT IN A MOSH」、リズム隊によるトライバルなイントロで客を煽る「INDIANS」、ジョーイと観客の「oh~」との掛け合いに始まる「ANTISOCIAL」、PUBLIC ENEMYとのジョイントによる「BRING THE NOISE」までが実際のライヴ。 よりタイトになった「I AM THE LAW」、「METAL THRASHING MAD」、「IN MY WORLD」、「NOW IT'S DARK」の4曲がスタジオ・ライヴ。 代表曲はおおむね押さえてはいるものの物足りなさは残るし、全て実際のライヴ録音で聴きたかったというのが正直なところ。 「GUNG-HO」や「GOT THE TIME」等も収録してほしかった。
結果的にジョーイ・ベラドナ(Vo)が在籍しての最後のスタジオ・アルバム(企画盤を除く。)となってしまった `90年発表の5th。 プロデューサーは前作に引き続きマーク・ドッドソンを、ミックスにはMETALLICAやTESLA等を手掛けた敏腕スティーヴ・トンプソン&マイケル・バービエロを迎えている。 前作「STATE OF EUOHORIA」は、アメリカ社会の抱える問題に焦点を当てた歌詞の影響もあってか非常に暗いサウンドのアルバムであったが、「時」をテーマにした本作においても、歌詞のメッセージ性は相変わらずであるし、サウンドもこれまで以上にヘヴィであるものの、リフやメロディにかつてのキャッチーさが戻ってきたのが大きな特徴。 時計のチクタク音のイントロで始まるヘヴィなオープニング曲「TIME」、トライバルなリズムで始まるメロディアスな「BLOOD」、あまりにもヘヴィなギター・リフの「KEEP IT IN THE FAMILY」、これまたメロディアスな部類に入る本作屈指の名曲「IN MY WORLD」、メロディアスなベース・リフを奏でるインスト曲「INTRO TO REALITY」、グルーヴ感に満ちたヴォーカル・メロディ主導の「BELLY OF THE BEAST」、ジョー・ジャクソンの代表曲のハイ・テンションなカヴァー「GOT THE TIME」といったナンバーは文句なしに素晴らしいし、リズム隊による重く暗いプレイが圧巻の「GRIDLOCK」、パンキッシュなギター・リフの「H8 RED」、BLACK SABBATH直系の引き摺るような重さのイントロで始まる「ONE MAN STANDS」、スコットがヴォーカルを取るDISCHARGEのカヴァー「PROTEST SND SURVIVE」、ハード・コアな「DISCHARGE」といったバンドのルーツを露にした楽曲も悪くはないが、ジョーイの歌唱力を活かしたサウンドからは遠ざかったままであったと言える。
前作「DOOMSDAY MACHINE」発表後、ギターの片割れクリストファー・アモットが脱退。 その穴をFIREWINDのガス・Gや元TALISMANのフレドリック・オーケソンといった名手が埋めてツアーを行っていたが、結局、クリストファーが復帰して製作されたのが'07年発表の7thとなる本作。 プロデューサーには名作「WAGES OF SIN」を手がけたフレドリック・ノルドストロームを再び起用。 空襲警報のようなサイレンに始まる緊張感に満ちた「BLOOD ON YOUR HANDS」、名曲「NEMESIS」を彷彿させる激速ナンバー「THE LAST ENEMY」、イントロのメロディが美しくメランコリックな「I WILL LIVE AGAIN」、アンジェラが凶暴なヴォイスを聴かせる「IN THIS SHALLOW GRAVE」、アルバムのリーダー・トラックともなった、'80年代的な曲構成のアンセム的ナンバー「REVOLUTION BEGINS」、ヘヴィで独創的なメロディを持ったタイトル・トラック「RISE OF THE TYRANT」、哀愁に満ちたギター・リフが初期IN FLAMESを彷彿させる「THE DAY YOU DIED」、マイケル・アモットがマイケル・シェンカーやウリ・ジョン・ロートを彷彿させるような必殺のギター・ソロを奏でる「INTERMEZZO LIBERTE」、サビに絡みつくギター・メロディが美しい「NIGHT FALLS FAST」、不気味なクワイアを聴かせる「THE GREAT DARKNESS」、美しく緊張感に満ちたギター・プレイが満載の「VULTURES」と、楽曲のクオリティは終始落ちることがなく、メロディアスなギター・ソロが満載の、バンドの最高傑作との呼び声も高い名盤。 アンジェラの歌も力強さと凶暴性を増している。 KISSの超マイナーな楽曲を見事に蘇生させた日本盤ボーナス・トラックの「THE OATH」も非常によい出来だ。
デンマーク出身の5人編成のバンドによる'89年発表の3rd。 プロデューサーはMETALLICAを手掛けたフレミング・ラズムッセン。 METALLICAにも似た理路整然としたリフ・ワーク、目まぐるしい曲展開、マイケルとモルテンのスタッツァー兄弟によるツイン・ギターが奏でる中近東風のメロディ、フレミング・ロンズドルフのパワフルなヴォーカルがこのバンドの大きな特徴であり、そのサウンドはインテレクチュアル・スラッシュやパワー・メタルと呼ぶに相応しい。 中近東風メロディを奏でるオープニング・インスト「7:00 FROM TASHKENT」、フレミングがパワフルかつ伸びやかなヴォーカルを聴かせる「BENEATH THE CLAY (R.I.P)」、緻密かつ複雑なリフを持つタイトル曲「BY INHERITANCE」、イントロとアウトロのツイン・ギターのメロディが素晴らしい「BOMB FOOD」、静と動とがドラマティックに展開する「DON'T BELIEVE」、アルバムにおいて最もアグレッションに満ちた「LIFE IN BONDAGE」、独特なリフとメロディを持つ「EQUAL AT FIRST」、NAZARETHの名曲の秀逸なカヴァー「RAZAMANAZ」、次々とリフが繰り出される「BACK IN THE TRASH」と、テクニカルな演奏裏打ちされた楽曲はいずれもなかなかのものである。 歌詞の問題から日本盤からは削除されてしまったが、劇的なオープニングとダイナミックな曲展開を誇る「KHOMANIAC」は一聴の価値あり。