オリジナル・メンバーで発表した前作「LAP OF LUXURY」でシーン最前線への復帰を果たしたバンドが'90年に放った13th。 プロデューサーはHEART等を手掛けた売れっ子のリッチー・ズィトー。 作曲陣にKIX等にも関わったテイラー・ローズ&ロバート・ホワイト・ジョンソン、FOREIGNERのミック・ジョーンズ、ヒット・メイカーのダイアン・ウォーレンを迎え、ゲスト・ミュージシャンとしてミック・ジョーンズ、PRITENDERSのクリッシー・ハインド、ロイ・ウッド、WHITE LIONのマイク・トランプが参加した豪華盤。 アリーナ・ロック的なオープニング曲「BACK'N BLUE」、軽快なテンポが心地よく、バック・コーラスとの掛け合いも絶妙な「I CAN'T UNDERSTAND IT」、数々のヒット曲を手掛けてきたダイアン・ウォーレン作曲による美しいバラード「WHEREVER WOULD I BE」、哀愁のメロディを聴かせる「IF YOU NEED ME」、ロッド・スチュアートも惚れ込んだポップなリーダー・トラック「CAN'T STOP FALLIN' INTO LOVE」、ハード・ロッキングなタイトル曲「BUSTED」までの流れはほぼ完璧。 クリッシー・ハインドの怪しげな歌唱が魅惑的な「WALK AWAY」、'80年代ポップス的な「YOU DRIVE, I'LL STEER」、切ないメロディを伴うバラード「WHEN YOU NEED SOMEONE」、BEATLESを想起させるメロディの「HAD TO MAKE YOU MINE」、バンドの出自を誇示するかのようなロック・チューン「ROCK'N ROLL TONIGHT」も悪くない。 日本盤ボーナス・トラックとしてDEF LEPPARDの「POUR SOME SUGAR ON ME」的な「BIG BANG」を収録。 いかにも売れ線狙い的な作りが鼻に付くかも知れないが、良質の楽曲群の存在がそれを補って余りある。
'94年というオルタネイティヴ・ロック隆盛の時期に発表したアルバム(邦題は「蒼い衝動」)。 ア~ア~ア~ア~とのコーラスが印象的な明るくドライヴする「MY GANG」、ややオルタネイティヴっぽいダークさを持った「WOKE UP WITH A MONSTER」、思わず口ずさみたくなるほどキャッチーでポップなサビの「YOU'RE ALL I WANNA DO」、横揺れの甘いメロディのバラード「NEVER RUN OUT OF LOVE」、これまたポップなメロディにのって流れていく「DIDN'T KNOW I HAD IT」、AC/DCのGIRLS GOT RHYTHMを彷彿させる「GIRLFRIENDS」等、ポップで良質な楽曲がぎっしり詰まった正にCHEAP TRICKらしさ満載のアルバム。 日本盤ボーナスには剣の舞をロック・アレンジした「SABRE DANCE」収録。
HELLOWEEN系ジャーマン・メタル・バンドによる'90年発表のデビュー・アルバム(邦題は「ルイ14世」)。 プロデューサーにHELLOWEENやGAMMA RAY等を手掛けたトミー・ハンセンを迎えている。 バンドの演奏はまだまだ未熟で、ヒステリックに叫ぶヴォーカルが時折耳障りに感じる場面もあるし、疾走感を伴ってクサいメロディを聴かせる手法もHELLOWEENのフォロワーの域を抜け出すまでには至っていないものの、将来性を強く感じさせるバンドであった。 現代の「メロスピ」を思わせる「PHARAO」、サビの歌メロとギター・ソロがメロディアスな「10,000 MILES」、牧歌的な歌メロを奏でるドラマティックなタイトル曲「LOUIS XⅣ」、ヘヴィかつファストな「GODS OF NOISE」、イントロのツイン・ギターによるメロディが格好いい「YOU AND I」、正統的HMチューンの「ANGEL」、フラメンコのようなイントロを聴かせる「SHOOT THE FOX」といった楽曲は、練り不足との感は否めないもののなかなかの出来であるし、何よりもヘヴィネス・スピード・メロディの三要素を兼ね備えたジャーマン・メタル史上に残る超名曲「POWER AND GLORY」を収録しているのが本作の強みであり、この1曲を聴くためだけにこのアルバムを入手する価値はあると言っても過言ではない。
ドブロやマンドリン、サックス、ピアノといった楽器をふんだんに使用し、前作で見られたブルーズ懐古主義を更に強く推し進めた'90年発表の3rd。 アメリカの大地に根差したかのような土着色の強いサウンドはHR/HMファンには受け入れにくいかもしれないが、個人的には彼らが本物のロックン・ロールを聴かせることのできるバンドであることをはっきりと再認識させられた好アルバムである。 バンドの華やかな色彩を感じさせる御機嫌なオープニング曲「THE MORE THINGS CHANGE」、ブルーズの渋さとロックン・ロールの華やかさが同居したリーダー・トラック「SHELTER ME」、悲哀を感じさせる切ないメロディのバラード「HEARTBREAK STATION」、スリリングなギター・リフを持つ「LOVE GONE BAD」を始め、ファンキーな「LOVE'S GOT ME DOIN' TIME」、女声コーラスがいかした「SICK FOR THE CURE」、カントリー・ソングと言える「ONE FOR ROCK AND ROLL」、呪術的な雰囲気漂う「DEAD MAN'S ROAD」、軽快なテンポを刻む「MAKE YOU OWN WAY」、BEATLESの「COME TOGETHER」を彷彿させる「ELECTRIC LOVE」、トムの優しげな歌唱が印象的な「WIND OF CHANGE」といった楽曲は、地味ではあるが聴けば聴くほどに味が出る。
骨太なブルーズ・ロックを聴かせるニューヨークのバンドによる'90年発表の2nd(邦題は「悪徳の街」)。 ナタを振り下ろしたかのような重量感のあるギター・リフや社会の暗部を抉り出したかのようなメッセージ色の強い歌詞等、基本的に前作の延長線上にあるサウンドだ。 楽曲はいずれもSEXをイメージさせるもので、LED ZEPPELLINの「BLACK DOG」のような「GATES OF LOVE」、ベースとギターがユニゾンで奏でるリフが格好いい「DESIRE / FIRE IN THE NIGHT」、美しいサウンドを奏でるバラード「DON'T DRAG ME DOWN」、AC/DCのような骨太ロックン・ロール曲「LAST CALL ROSIE」、リーダー・トラックとなった小気味良いリズムの「DOCTOR POTION」、ガッツィーなギター・リフと比較的キャッチーなコーラスを聴かせる「TEMPTATION」、ハイ・テンションなシャッフル・ナンバー「SIMPLE MAN / SIMPLE WOMAN」といった曲は悪くはないものの、いわゆるヒット・メイカー・タイプのバンドではないため、バンド本来の魅力がこのスタジオ・アルバムでどこまで十分に伝え切れるかは疑問である。
元KEELのギタリストのマーク・フェラーリを中心に結成されたLAのバンドによる'90年発表のデビュー・アルバム。 当初のヴォーカリストであったオニー・ローガンがジョージ・リンチ率いるLYNCH MOBに引き抜かれてしまったために無名のローリー・キャシーが後任に迎えられているが、これがとんでもなく素晴らしい実力を持ったヴォーカリスト。 声質はデビュー間もないころのジョン・ボン・ジョヴィを思わせるが、声のレンジやパワーが半端ではない。 ツイン・ギターを駆使したハーモニーもこのバンドの大きな特徴だ。 スピード感抜群のオープニング曲「FOUR ON THE FLOOR」、哀愁のメロディを奏でる 「TAKE THIS HEART OF MINE」、美しいインスト「RIVIERA」に導かれるヘヴィな「LONG WAY DOWN」、キャッチーかつメロディアスな「LET'S MAKE LOVE TONIGHT」、迫力のバック・コーラスを聴かせる疾走曲「JUMP THE GUN」といった好曲のほか、ブリティッシュ・ロックからの影響が伺える「CRYIN' SHAME」、アメリカン色の強い「LOVESTRUCK」、甘いバラード「WAITING IN VAIN」、ファンキーな「FISTFUL OF MONEY」、FOGHATのメタリックなカヴァー「I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU」といったアルバムのアクセントとなる曲も悪くない。 あとはこのバンドならではの個性が楽曲に見られれば言うことなしであったが、大きな成功を得ることなくバンドは解散してしまった。
KISSにも曲を提供しているジョン・ボウワーを擁するバンドの94年発表のデビュー・アルバム。 そのKISSのポール・スタンレーがプロデューサーに名を連ねていることもあってか、曲調はKISSを彷彿させ、ヴォーカルの声質もポール・スタンレーにとてもよく似ている。 80年代アメリカン・ロックを彷彿させる明るくポップな曲が満載で、軽快なノリの「HIKE IT UP」や「NO YOU DON'T」、80年代なら大ヒットしそうな美しいバラード「STANDING ON THE CORNER FOR YA」等、捨て曲は見当たらない。 中でも、煽情的なメロディが物悲しく美しい「DYING FOR LOVE」と、サビのバック・コーラスとの掛け合いが秀逸な「IN THE HEALER」の2曲は必聴の名曲!
テッド・ニュージェント(G・Vo)、元STYXのトミー・ショウ(G・Vo)、元NIGHT RANGERのジャック・ブレイズ(B・Vo)を中心に結成されたバンドの90年発表の1st。 このメンバーが競演するというだけで質の高い作品を期待してしまうが、その期待を裏切られることはない。 明るくキャッチーな「COMING OF AGE」、コーラスが美しい「RUNAWAY」、伸びやかなコーラスが鳥肌モノの名バラード「HIGH ENOUGH」、哀愁に満ちたドラマティックな「COME AGAIN」、NIGHT RANGERを彷彿させるハード・ロック「ROCK CITY」、メロディアスかつポップな「TELL ME HOW YOU WANT IT」、テッド・ニュージェントならではの暴走ナンバー「PILEDRIVER」等、「アメリカン・ロックとは何ぞや?」との問いかけに答えるかのよう内容である。 80年代のアメリカン・ロック全盛の時代に発表されていれば、もっと大ブレイクしたのではないだろうか?
第二期黄金メンバーによる'70年発表の初スタジオ・アルバム。 リッチーがバンドの主導権を握ることにより、それまでのクラシックとの融合を試みたアート・ロック路線からバンドのインター・プレイを軸に据えたハード・ロック路線へと方向転換し、バンドの人気を決定付けることに成功した歴史的名盤。 楽曲のよさもさることながら、各メンバーの演奏が強烈極まりなく、そのヘヴィさは現代においても全く色褪せていない。 うねるようなギター・リフがあまりにもヘヴィかつストロングな「SPEED KING」や哀愁のメロディと驚異的なインスト・パートとが目まぐるしく展開し、ギランが壮絶なシャウトを聴かせる大曲「CHILD IN TIME」といった代表的名曲は勿論のこと、心地よい疾走感とメロディアスなインスト・パートが印象的な「FLIGHT OF THE RAT」や不協和音的なジョンのオルガン・サウンドが狂気的な「HARD LOVIN' MAN」といった曲も素晴らしい。 ヘヴィなギター・リフとギランの強烈なシャウトを聴かせる「BLOODSUCKER」、ブルージーかつヘヴィな「INTO THE FIRE」、ジョンのオルガンがダイナミックなプレイを聴かせる「LIVING WRECK」も捨てがたい。 個人的にはこのバンドの最高傑作であると信じてやまない。 メンバーをアメリカ西部に存在するマウントラッシュモアをモチーフに準えたアルバム・ジャケットもかっこいい。