前作「DEEP PURPLE IN ROCK」による成功の余波を受け、全英1を記録した'71年発表作品。 その前作と歴史的名盤と呼ばれる次作「MACHINE HEAD」との間に挟まれ、「地味な作品」と称されることの多い本作であるが、ロック史に残る偉大な作品と比較するのは酷というものだ。 実際、楽曲の質が劣るということは決してなく、ペイシーによるツイン・ドラムによるイントロが衝撃的なハード・チューン「FIREBALL」や歌メロがあまりにもキャッチーな「STRANGE KIND OF WOMAN」といった代表曲を始め、ムーディーかつドラマティックな「NO NO NO」、哀愁のカントリー・ナンバー「ANYONE'S DAUGHTER」、ペイシーのドラム・ロールが凄まじい「THE MULE」、ギランがワイルドな歌唱を聴かせる「FOOLS」、ヘヴィかつグルーヴィーな「NO ONE CAME」と魅力的な曲が揃っている。 アルバムのアート・ワークも非常に美しい。 但し、前作の大きな特徴でもあった個々のメンバーの激しいインター・プレイは減退、特にリッチーのギター・ソロが若干大人しめなのが残念だ。
バンドを代表するばかりでなく、ロック史に残る名曲が多数収録された'72年発表の歴史的名盤。 若干の大人しさが感じられた前作「FIREBALL」の反省からか、黄金期と呼ばれたメンバーの激しいインター・プレイが再び爆発しており、良質の楽曲にさらなる付加価値を与えることに成功している。 ギランの驚異的な高音シャウトやリッチーのギターとジョンのオルガンによる激しいソロ・バトルがヘヴィなロジャーのベースとペイシーのダイナミックなドラミングに乗せて展開される永遠のハード・ロック・チューン「HIGHWAY STAR」、世界一多く弾かれたギター・リフであるといっても過言ではないほどの超有名曲「SMOKE ON THE WATER」、ジャジーな薫り漂うインスト・パートが秀逸な「LAZY」、ロジャーのベースがウルトラ・ヘヴィな「SPACE TRUCKIN'」といった代表曲はもちろんのこと、ギター・リフがあまりにもかっこいい「MAYBE I'M A LEO」、リッチーの奏でるギター・メロディが素晴らしいドライヴ感に満ちた「PICTURES OF HOME」、曲調が目まぐるしく変化する「NEVER BEFORE」といった曲も実に素晴らしく、正に捨て曲一切なしの名盤中の名盤である。
「GAMES PEOPLE PLAY」等でもおなじみのJOE SOUTHの有名曲のカヴァーで、全米4位をも記録したヒット・シングル。 「na nana na nana na nana na」との陽気なメロディはあまりにも有名。 個人的にはオリジナルの方が好きなのですが、こちらの演奏はハイ・テンションで壮絶。
前作「THE HOUSE OF BLUE LIGHT」発表後、二度目の脱退をなしたイアン・ギランの後任に元RAINBOW~YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEのジョー・リン・ターナーを迎え、レコード会社も移籍して制作された'90年発表作。 メンバー5人のうち3人が元RAINBOW組ということで「DEEP RAINBOW」等とも揶揄されもした。 楽曲のパンチ力に欠けていた前作に比べ、幾分バラエティに富んだ楽曲が並んではいるものの、その音楽性は再結成後の路線から大きく変化してはいない。 そのため、ジョー在籍時のRAINBOW最後のアルバム「BENT OUT OF SHAPE」の続編のようなキャッチーな楽曲の詰まった作品を期待していたファンにとっては若干肩透かしを喰ったかもしれない。 そのジョーの歌唱は相変わらずソウルフルで素晴らしいが、やや枯れた声質となったことでかつての艶が失われているのが気になる。 終始大人しめのドラム・プレイも、後にリッチーから「実はドラム・マシーンを使用していた」との仰天告白がなされている。 重厚な香り漂うリーダー・トラックの「KING OF DREAMS」、ジョンのオルガン・ソロが大活躍する「THE CUT RUNS DEEP」、名曲「LAZY」を彷彿させるシャッフル・ナンバー「FIRE IN THE BASEMENT」、ジョーのソウルフルな歌唱が素晴らしい「TRUTH HURTS」、ポップなキーボード・リフの「BREAKFAST IN BED」、厳かなムード漂う「FORTUNETELLER」、元FORIGNERのアル・グリーンウッドとの共作曲「TOO MUCH IS NOT ENOUGH」といった楽曲はいずれも良いし、個人的にはリッチーの泣きのギターが炸裂する「LOVE CONQUERS ALL」とアルバムにおいて最もアグレッシヴな「WICKED WAYS」が気に入っているが、やや落ち着きすぎとのきらいはある。 クラシック・レコードのようにレコード盤に針を落としてじっくりと聴きたくなるようなアルバムだ。
IRON MAIDEN等と共にNWOBHMブームを牽引し、ロック界を代表するまで成長した英国はシェフィールド出身のバンドによる'80年発表のデビュー・アルバム。 当時のメンバーはジョー・エリオット(Vo)、スティーヴ・クラーク(G)、ピート・ウイリス(G)、リック“サブ"サヴェージ(B)、リック・アレン(Dr)の5人で、リック・アレンに至っては若干16歳という若さだった。 プロデューサーはJUDAS PRIEST等を手がけたトム・アロム。 ジョーの歌声を始め、若年者ゆえの青臭さがそこかしこに見えるものの、エッジの利いたギター・リフがかっこいい「ROCK BRIGADE」、派手なコーラス・ワークを聴かせる「HELLO AMERICA」、静と動とのコンストラストが美しい「SORROW IS A WOMAN」、流麗なギター・メロディを伴う疾走曲「IT COULD BE YOU」、ジョーの「UH~!YEAH~!」のコーラスが耳に残る「SATELLITE」、英国バンドらしい愁いに満ちた「WHEN THE WALLS CAME TUMBLING DOWN」、正統派ヘヴィ・メタルの名曲「WASTED」、臨場感伴うアレンジが施された「ROCKS OFF」、フックのあるギター・リフが魅力の「IT DON'T MATTER」、派手なギター・ソロを聴かせる「ANSWER TO THE MASTER」、アルバムを締めくくるエピック的な大作「OVERTURE」と、グラム・ロック直伝のギラギラしたエレキ・ギターの音色がいかした、現在の彼らからは想像もつかないような正統的なヘヴィ・メタルが聴ける。
ドン・ドッケン(Vo)、ジョン・ノーラム(g)、ビリー・ホワイト(g)、ピーター・バルテス(b)、ミッキー・ディー(ds)による、ある意味スーパー・バンドと呼べる編成で'90年に発表されたアルバム。 比較するのもなんだが、ジョージ・リンチのLYNCH MOBよりもDOKKENの香りを残している。 ジョン・ノーラムが持ち込んだと思われる初期EUROPEにも通ずる愁いもこのバンドの個性だ。 正にそのDOKKENとEUROPEを足して2で割ったようなハード・ロック「CRASH'N BURN」は超名曲だし、初期EUROPEを髣髴させる「1000 MILES AWAY」や「LIVING A LIE」の哀愁のメロディもたまらない。キャッチーな「MIRROR MIRROR」、ドンの愁いある歌唱が美しい「STAY」、ギター・メロディが秀逸な「DOWN IN FLAMES」、アグレッシヴでハードな「THE HUNGER」もお勧め。 このアルバム1枚っきりで終わったのはちょっと残念。
`89年にアルバム「NO FUEL LEFT FOR THE PRIGRIMS」で国外デビューを果たしたデンマーク出身のバンドによる'90年1月23日に行った大阪ミッド・シアターでのショーケース・ギグの模様を捉えた7曲入りライヴ・アルバム。 収録曲は全て同アルバムからの楽曲であり、他のアルバムからの選曲がないことや名曲「JIHAD」が漏れていることなどに物足りなさを感じるファンもいるかもしれないが、企画盤としては十分のボリュームといえるだろう。 バンドも期待を損なうことのないプレイを聴かせてくれるが、若干臨場感に欠けるきらいがあるかも。 さらに欲を言えば、プロモーション・ビデオ等から伝わってくるハイパーな無軌道っぷりがもう少し感じられてもいい。
「時間」をテーマにした`81年発表のコンセプト・アルバム(邦題は「タイム~時へのパスポート」)。 プロデュースはジェフ・リン(Vo)自らが行っており、前作「DISCOVERY」同様、エレクトロニクスを大胆に導入したポップでスペーシーなサウンドを聴かせる。 機械的なヴォイスが聴き手の高揚感を駆り立てる「PRPLOGUE」をイントロにした「TWILIGHT」は、ここ日本ではドラマの主題歌等にも使用されたメロディアス・ポップの超名曲。 以降、キーボードの奏でるメロディが哀愁を感じさせる「YOURS TRULY,2095」、美しく悲哀に満ちたメロディの「TICKET TO THE MOON」、アコースティック・ギターのサウンドがほのぼのとした雰囲気を誘う「THE WAY LIFE'S MEANT TO BE」、神秘的な雰囲気漂うインスト曲「ANOTHER HEART BREAKS」、優しげで流麗なメロディの「RAIN IS FALLING」、ダンサンブルなサウンドの「FROM THE END OF THE WORLD」、陽気なレゲエ・ナンバー「THE LIGHT GO DOWN」、スペーシーなテクノ・チューン「HERE IS THE NEWS」、ジェフの優しげな歌唱が秀逸な「21ST CENTURY MAN」、オールディーズ・ロックのようなシングル・ヒット曲「HOLD ON TIGHT」、アルバムの締めくくりにふさわしい「EPILOGUE」と、ジェフ・リンのコンポーザーとしての才能がいかんなく発揮された秀作である。
当時はロック不毛の地と言われたスウェーデン出身の4人組による、北欧メタルの先駆けとなった'83年発表の衝撃的デビュー・アルバム(邦題「幻想交響詩」)。 メンバーはジョーイ・テンペスト(Vo,Key)、ジョン・ノーラム(G)、ジョン・レヴィン(B)、トニー・レノー(Dr)。 美しいアルバム・ジャケット、スウェーデンという出身地、果ては未熟な歌唱や演奏までもがこのバンドの神秘性を高めていた。 北欧の寒々しい風景を想起させる哀愁のメロディを備えた「IN THE FUTURE TO COME」、オープニングがかっこいい「FAREWELL」、官能的で哀愁漂うギターと透明感のあるサウンドが美しい「THE KING WILL RETURN」、ギターがあまりにもメロディアスなインスト「BOYAZONT」、疾走感抜群の「CHILDREN OF THIS TIME」、キャッチーなサビのメロディが印象的な「WORDS OF WISDOM」、トリッキーなリズムが面白い「PARADIZE BAY」、ツー・バスによる疾走感に乗せた寒々しいメロディが印象深い「MEMORIES」等、未熟さ・B級臭さは拭えないものの、透明感と哀愁に満ちた好曲が揃っている。 しかし、本作は何といっても「SEVEN DOORS HOTEL」の存在に尽きるだろう。 物悲しいピアノによるイントロダクション、疾走感に満ちた曲調と哀愁ある美しいサビのメロディ、官能的ななギター・ソロを聴かせるこの曲はメタル史に残る超名曲である!!
バンドのポップ志向に傾きつつある方向性に嫌気がさしたジョン・ノーラムが脱退、後任にキー・マルセロを迎えて発表された'88年発表の4th。 プロデューサーはHEARTやSURVIVOR等を手がけたロン・ネヴィソン。 ジョーイのヴォーカルを前面に押し出し、かつ、きらびやかなシンセサイザー・サウンドに彩られたなポップな作風は正にロン・ネヴィソンならでは。 今でこそ「好曲粒揃いの好盤」との評価はできるものの、当時、1stと2ndのころのような北欧メタルの旗手としてのEUROPEに思い入れが強かった自分にとっては裏切られたような思いさえしたアルバムであった。 コーラスが美しくポップな「SUPERSTITIOUS」、ロックなリフとキャッチーなコーラスの「LET THE GOOD TIMES ROCK」、ジョーイの伸びやかな歌声が美しい「MORE THAN MEETS THE EYE」、甘く壮大なスケール感のバラード「COAST TO COAST」、哀愁と透明感あるサウンドの「SIGN OF THE TIMES」、80年代的なきらびやかさの「JUST THE BEGINNING」等は悪くはないが、どうしても北欧メタルの代名詞的「READY OR NOT」や、あまりにも強烈な泣きを発散させるバラード「TOMORROW」のような初期を思い起こさせる名曲に耳を奪われてしまう。 ただ、このバンド特有の気品や哀愁・透明感といったものは失われておらず、むしろ強烈に発散させている。 キー・マルセロのギター・プレイは流麗で素晴らしいが、ゲイリー・ムーアやマイケル・シェンカーの系譜を継ぐジョン・ノーラムが去ったのは痛い。