デビュー・アルバムがなかなか好評だったスイス出身のバンドによる'94年発表の2nd。 本作も前作の延長線上にある骨太のハード・ロックを聴かせてくれる。 やはり秀逸なのはスティーヴ・リーのソウルフルかつパワフルな歌唱で、乱暴な言い方をすれば彼の歌を聴くだけでも価値のあるアルバムだと思う。 ドライブ感に満ちた「HIGHER」、ワウを駆使したギターが個性的な「MOUNTAIN MAMA」、メタリックな疾走曲「HERE COMES THE HEAT」、ヘヴィなリフが心地よい「SHE GOES DOWN」、BEATLESの名曲をハードにアレンジした「COME TOGETHER」、典型的な疾走ハード・ロック曲「OPEN FIRE」、温かなメロディのバラード「I'M ON MY WAY」等、聴き所は多い。
マイケル・モンロー(Vo)、アンディ・マッコイ(G)、ナスティ・スーサイド(G)、サム・ヤッファ(B)、ジップ・カジノ(Dr)の5人からなるフィンランド出身の伝説的ロックン・ロール・バンドによる'81年発表の1st(邦題は「白夜のバイオレンス」)。 THE ROLLING STONES等のスタンダードなロックのほか、パンク・ロックやグラム・ロックからも影響を受けたと思しき音楽性とド派手なルックスはこのころから健在で、後にロック界におけるカリスマ的存在へ昇り詰めていくこととなる。 歌や演奏は決して上手いとは言えないが、ヘタウマな魅力があるのも確かで、そのルーズ感さえもがバンドの個性となっている。 ギター・リフがクールでかっこいいロックン・ロールの超名曲「TRAGEDY」を始め、アンディがトリッキーなギターを聴かせる「VILLAGE GIRL」、ポップでキュートなサウンドの「STOP CRYIN'」、ロマンチックなメロディのバラード「DON'T NEVER LEAVE ME」、軽快なノリのハード・チューン「LOST IN THE CITY」、ハードボイルドな「FIRST TIME」、哀愁漂うメロディが美しい「CHEYENNE」、ツイン・ギターの奏でるメロディがポップな「11th STREET KIDZZ」、CAROL KINGのハイ・テンションなカヴァー「WALKING WITH MY ANGEL」、マイケルのサックスがかっこいい「PRETENDER」といった代表曲や好ナンバーを収録。 ワールド・ワイド盤はバラの絵を模したアート・ワークに変更されている。
実験的な作風の前作「CHAMELEON」は、ファンがHELLOWEENに求めていたメロディが希薄であったため、圧倒的に否の意見が多かった。 マイケル・キスク、インゴ・シュヒテンバーグの脱退騒動もあり、下降線を辿ると思われていたバンドであったが、元PINK CREAM 69のアンディ・デリス、元GAMMA RAYのウリ・カッシュを迎えて質の高い楽曲を配した'94年発表の本作で見事に復活した。 オーケストレーション溢れるイントロ曲「IRRITATION」からダイナミックに幕を開ける「SOLE SURVIVOR」、哀愁あるメロディと疾走感に満ちたアンディ時代の超名曲「WHERE THE RAIN GROWS」、PINK CREAM 69を彷彿させる哀愁の「WHY?」、ヘヴィなリフから壮大なサビに繋がる「MR EGO(TAKE ME DOWN)」、憂いあるアンディの歌唱がただのキャッチーな曲にさせない「PERFECT GENTLEMAN」、ゲーム音を導入したコミカルな「THE GAME IS ON」、これまたアンディの歌唱により哀愁度抜群の「SECRET ALIBI」、正統的ハード・ロックの「TAKE ME HOME」、PINK CREAM 69のような切ないバラード「IN THE MIDDLE OF A HEARTBEAT」、疾走感とダイナミックさに満ちた「STILL WE GO」と楽曲はどれも素晴らしい。 ボーナス・トラックの出来も良く、憂いと疾走感ある「CAN'T FIGHT YOUR DESIRE」は本編に収録されていても遜色のない出来だし、イングヴェイをパロった「GRAPOWSKI'S MALMSUITE 1001(iN D-DOLL)」も面白い。 HELLOWEENとPINK CREAM 69の融合といった感のある本作は「KEEPER~」時代とは明らかに違うが、新生HELLOWEENとしての未来を期待させる内容となっている。
評判の良かったミニ・アルバム「VICTIM OF THE SYSTEM」に続いて'94年に発表された作品。 どの曲もコンパクトで非常に分かり易く、決してギター・テクニックのひけらかしになっていないのがミソ。 疾走感に満ちたメロディアス・ナンバー「THE FUTURE IS BLACK」、オープニングのギターが美しい「FLY AWAY」、キャッチーなコーラスがかっこいい「WARRIOR」、ロブの熱唱が素晴らしい「I'LL WAIT」、インギー的なサビの「HOLD THE LINE」、変拍子なりフの「SOMETHING'S WRONG WITH THE WORLD TODAY」、バック・コーラスの掛け合いがかっこいい疾走曲「ANSWER TO THE MASTER」、ブリッジのメロディが魅力的な「HUNGRY DAYS」、凄まじいギター・ソロの「THE KING IS RISING」と捨て曲は無い。 ただし、ロブ・ロックが常に高いレンジで歌う為、曲が似通ったものになってしまっているのが残念。 決定打となるような必殺チューンも欲しかった。
モダンな方向性が賛否両論をよんだ前作も個人的には楽しめたアルバムだった。 '04発表の本作はかつての煽情的メロディが戻ったとも言われているが、基本的には前作の延長線上にあると思う。 よって、前作を支持するファンであれば、本作もきっと気に入るのではないだろうか? 暴虐的で正にデス・メタルの「F(R)IeND」、モダンな曲調の「THE QUIET PLACE」、疾走感とメロディが同居する「DEAD ALONE」、引きずるようなヘヴィなリフに哀愁のメロディがのる「TOUCH OF RED」、イントロのギターが印象的で展開もプログレッシヴな「MY SWEET SHADOW」、疾走感のあるリフが正統的な「IN SEARCH FOR I」、デジタルな音蔵による疾走感がかっこいい「SUPERHERO OF THE COMPUTER RAGE」と素晴らしい曲は多いが、「この1曲!」というような決め手となる強烈なナンバーが欲しかった。
ブルース、エイドリアンが復帰しての3作目、通算で14作目となる'06年発表作品(邦題は「戦記」)。 プロデューサーは三度ケヴィン・シャーリー。 宗教や戦争といった問題をテーマにしていることから全体的に暗い雰囲気が漂う作品であるが、本作の特徴は何といってもその収録曲の長さであろう。 なんと収録曲10曲中、9分台が2曲、8分台が1曲、7分台が3曲あるといった具合だ。 しかし、無駄に冗長な曲は一切なく、次々と繰り出されるメロディの美しさと展開美に酔いしれること請け合い。 個人的にはスティーヴが真骨頂を発揮したドラマティック大曲の「FOR THE GREATER GOOD OF GOD」が一押し。 その他も、歌メロやギターのハーモニーにTHIN LIZZYの影響を感じさせる疾走チューン「DIFFERENT WORLD」、ギター・ソロとクワイアのユニゾンが壮大な「THESE COLOURS DON'T RUN」、重厚さと疾走感とが同居した「BRIGHTER THAN A THOUSAND SUNS」、中近東風のリフがいかした「THE PILGRIM」、ブルースの伸びやかな歌唱が素晴らしい「THE LONGEST DAY」、ブルースのソロ作品の名曲「TEARS OF THE DRAGON」に激似の「OUT OF THE SHADOWS」、風変わりなリフがヘヴィでかっこいい、リーダー・トラックとなった「THE REINCARNATION OF BENJAMIN BREEG」、ブルースのハイ・トーン・ヴォイスが壮絶な「LORD OF LIGHT」、秀逸なリフとダイナミックな曲展開が魅力の大曲「THE LEGACY」と、若干過去の曲の焼き直し的なフレーズはあるもののの、好曲揃いである。 バンドも円熟味を増し、ますますWISHBORN ASH化してきたとの印象を得た。 ただ、やはり強力な疾走チューンがもう1、2曲欲しい気はするが。
今やヘヴィ・メタル界の旗手とも言える存在となった、英国はロンドン出身のバンドによる'80年発表の衝撃のデビュー・アルバム(邦題は「鋼鉄の処女」)。 本作発表時のメンバーは、スティーヴ・ハリス(B)、ポール・ディアノ(Vo)、デイヴ・マーレイ(G)、デニス・ストラットン(G)、クライヴ・バー(Ds)の5人。 従来のハード・ロックにプログレッシヴ・ロックからの影響が伺える展開美を駆使した曲構成とパンク・ロックが持つ荒々しさとを融合したようなそのサウンドは、あまりにも斬新的・革命的で、NWOBHMと呼ばれたヘヴィ・メタル・ブームの先駆者ともなった。 特筆すべきは、ヘヴィなギター・リフを中心に激しくもドラマティックに展開する大作「PHANTOM OF OPERA」と、あまりにも個性的なギター・リフを持ったバンドのテーマ曲とも言える「IRON MAIDEN」の、「この2曲を聴かずにしてメタル・ファンを名乗るなかれ」と言っても過言ではないほどの超名曲の存在である。 その他にも、荒々しさとメロディアスとを兼ね備えた疾走チューン「PROWLER」、静と動との対比が美しくも激しい「REMEMBER TOMORROW」、あまりにも印象的なドラム・リフを持った代表曲「RUNNING FREE」、ダイナミックかつ複雑に展開するインスト曲「TRANSYLVANIA」、神秘的で美しいサウンドの「STRANGE WORLD」、個性的なリフを持った正統チューン「CHARLOTTE OF THE HARLOT」といった好曲が目白押しで、個人的にもバンドの全作品中で1,2を争う名盤と信じて止まない。 アルバム発表後にシングルでリリースされたパンキッシュなギター・リフの「SANCTUARY」をボーナス・トラックとして収録しているが、こちらもバンドの代表曲だ。
元SANTANAのグレッグ・ローリー(Vo,Key)とニール・ショーン(G)を中心に結成されたサンフランシスコ出身のバンドによる'75年発表の1st。 その他のメンバーはジョージ・ディックナー(G)、ロス・ヴァロリー(B)、エインズレー・ダンバー(Dr)。 ニールのギターがメロウでドラマティックな「OF A LIFETIME」、正に朝の爽やかさを想起させる「IN THE MORNING DAY」、美しさと破天荒さを兼ね備えたインスト曲「KOHOUTEK」、グレッグによるキーボードが活躍する「TO PLAY SOME MUSIC」、複雑な展開がプログレッシヴなインスト「TOPAZ」、美しくドラマテックなパートと激しくロックするパートによる「IN MY LONELY FEELING/CONVERSATIONS」、堅実なベース・プレイと自己主張するギターに彩られた「MYSTERY MOUNTAIN」と、産業ロックの代表格のように謳われた現在の彼らからは想像もつかないようなインスト・パート中心とした英国的でプログレッシヴなロックが聴ける。 中でもニール・ショーンの激しく美しいギター・プレイとエインズレー・ダンバーのアグレッシヴなドラミングは秀逸!
'76年発表の2nd(邦題は「未来への招待状」)。 前作はジャム・セッションを発展させたインテンスな演奏とプログレッシブな展開が魅力的な作品であった。 レコード盤でいうところのA面(1~5曲目)は、ブリティシュ・ポップを髣髴させる新機軸の「ON A SATURDAY NITE」、ジョージ・ハリスンの秀逸で爽やかなカヴァー「IT'S ALL TO MUCH」、情念のこもったブルージーな「ANYWAY」、LED ZEPPELINのような重量感のある「SHE MAKES ME (FEEL ALRIGHT)」、ニールの扇情的なギターが聴ける「YOU'RE ON YOUR OWN」と起伏に富んだ内容となっているが、やはり注目は前作の作風をさらにグレード・アップさせたB面(6~8曲目)であろう。 優しげで美しいメロディと終盤のドラマティックな展開が魅力のタイトル曲「LOOK INTO THE FUTURE」、各演奏パートの攻めぎ合いが凄まじい「MIDNIGHT DREAMER」、正に目の前で演奏されているかの錯覚を受ける「I'M GONNA LEAVE YOU」の流れはとても秀逸。
アルバム・ジャケットのカミソリの刃のように鋭利でソリッドに研ぎ澄まされたリフに重点が置かれた'80年発表の名盤。 プロデューサーは同年にDEF LEPPARDのデビュー・アルバムも手がけるトム・アロム。 これまでの作品にあったメロディや構築美、ギター・ソロといった要素を一切排除した作風は、ある意味問題作とも言えるが、それ以上に曲が良いのが本作の強み。 後に自らの代名詞ともなったヘヴィ・チューン「METAL GODS」、一度聴いたら忘れることのできない、あまりにもかっこいいギター・リフを持つ「BREAKING THE LAW」、アンコールには欠かすことのできないパーティ・ロック・ソング「LIVING AFTER MIDNIGHT」といった代表曲を始め、文字どおり弾丸のような突進力に満ちた「RAPID FIRE」、金属を削るような研ぎ澄まされたギター・リフを持つ「GRINDER」、聖歌のような観客合唱型ナンバー「UNITED」、明るいロック調ナンバー「YOU DON'T HAVE TO BE OLD TO BE WISE」、重厚で威厳に満ちた「THE RAGE」、疾走感に満ちたリフが延々と繰り返される「STEELER」といった好曲が収録されている。 リマスター盤には英国国歌のような「RED,WHITE AND BLUE」と'80年のアメリカ・ツアーにおける「GRINDER」の臨場感溢れるライヴ・バージョンが追加収録。 アメリカ進出前のバンドの集大成とも言うべきアルバムであり、これまでのアルバムは本作に辿り着くまでの通過点であるといっても過言ではない! なお、本作よりドラマーがレス・ビンクスから元TRAPEZEのデイヴ・ホーランドに交代している。
前作「STAINED CLASS」と同年の'78年に発表された5th(邦題は「殺人機械」)。 欧米でのオリジナル・タイトルは「HELL BENT FOR LEATHER」。 プロデュースも前作に引き続きジェイムス・ガスリーが担当。 華麗な様式美サウンドは更に薄れ、ロブの歌唱も低・中低音域に重きを置いたものになるなど、非常に漢臭さ・力強さを感じさせる作品になっている。 バンドが後にヘヴィ・メタル・ファッションの代名詞となるレザー&スタッドの衣装に身を包んだのもこのころだ。 スピード・チューン、ヘヴィ・チューン、ロックン・ロール調、美しいバラード等、楽曲がバラエティに富んでいるのも本作の特徴であり、繰り出されるギター・リフがあまりにも個性的で秀逸な「DELIVERING THE GOODS」、ライヴでも定番となっている正統的疾走チューン「HELL BENT FOR LEATHER」、終盤のシンガロングがライヴで大合唱となるFLEETWOOD MACのカヴァー「THE GREEN MANALISHI(WITH THE TWO-PRONGED CROWN)」、単調ながらも疾走感のあるギター・リフがかっこいい「RUNNING WILD」、美しさと儚さを兼ね備えた名バラード「BEFORE THE DAWN」といった名曲を始め、軽快なロックン・ロール・タイプの「ROCK FOREVER」、キャッチーでメロディアスな「EVENING STAR」、PRIEST版「WE WILL ROCK YOU」といった趣きの「TAKE ON THE WORLD」、ヘヴィかつグルーヴィな「BURNIN'UP」、ヘヴィなギター・リフを持つタイトル曲「KILLING MACHINE」、破壊的なリズムの「EVIL FANTASIES」といった好ナンバーを収録。 ミステリアスなアルバム・ジャケットもかっこいい。 リマスター盤にはボーナス・トラックとして「ROCK HARD RIDE FREE」の原型である「FIGHT FOR YOUR LIFE」とライヴ版「RIDING ON THE WIND」が追加されている。