骨太なブルーズ・ロックを聴かせるニューヨークのバンドによる'90年発表の2nd(邦題は「悪徳の街」)。 ナタを振り下ろしたかのような重量感のあるギター・リフや社会の暗部を抉り出したかのようなメッセージ色の強い歌詞等、基本的に前作の延長線上にあるサウンドだ。 楽曲はいずれもSEXをイメージさせるもので、LED ZEPPELLINの「BLACK DOG」のような「GATES OF LOVE」、ベースとギターがユニゾンで奏でるリフが格好いい「DESIRE / FIRE IN THE NIGHT」、美しいサウンドを奏でるバラード「DON'T DRAG ME DOWN」、AC/DCのような骨太ロックン・ロール曲「LAST CALL ROSIE」、リーダー・トラックとなった小気味良いリズムの「DOCTOR POTION」、ガッツィーなギター・リフと比較的キャッチーなコーラスを聴かせる「TEMPTATION」、ハイ・テンションなシャッフル・ナンバー「SIMPLE MAN / SIMPLE WOMAN」といった曲は悪くはないものの、いわゆるヒット・メイカー・タイプのバンドではないため、バンド本来の魅力がこのスタジオ・アルバムでどこまで十分に伝え切れるかは疑問である。
`89年にアルバム「NO FUEL LEFT FOR THE PRIGRIMS」で国外デビューを果たしたデンマーク出身のバンドによる'90年1月23日に行った大阪ミッド・シアターでのショーケース・ギグの模様を捉えた7曲入りライヴ・アルバム。 収録曲は全て同アルバムからの楽曲であり、他のアルバムからの選曲がないことや名曲「JIHAD」が漏れていることなどに物足りなさを感じるファンもいるかもしれないが、企画盤としては十分のボリュームといえるだろう。 バンドも期待を損なうことのないプレイを聴かせてくれるが、若干臨場感に欠けるきらいがあるかも。 さらに欲を言えば、プロモーション・ビデオ等から伝わってくるハイパーな無軌道っぷりがもう少し感じられてもいい。
デビュー・アルバムが好評を得たインテレクチュアル・スラッシュ・メタル・バンドが、脱退したランディ・ランペイジ(Vo)とアンソニー・グリーンハム(G)の後任に元OMENのコバーン・ファー(Vo)とデイヴ・スコット・デイヴィスを迎え、'90年に発表した2nd。 プロデュースはVOI VODを手掛けたグレン・ロビンソンとジェフ・ウォーターズ(G)自身が担当。 クランチの利いたギター・リフとタイトなリズム、複雑でありつつも難解とならない絶妙な曲展開、ジェフ・ウォーターズ(G)のテクニカルなギター・ソロと、演奏・楽曲は相変わらず素晴らしく、ニュー・シンガーのコバーン・ファーの実力は明らかに前任者以上で、楽曲にも違和感なくはまっている。 現代社会が抱える問題や精神異常をテーマにした歌詞もこのバンド特有のものだ。 デモ・テープ時代から暖められてきたスラッシュ・メタルを代表する名曲「PHANTASMAGORIA」を始めとして、ツインで奏でられるフックの利いた名ギター・リフを持つ「THE FUN PALACE」、機銃掃射のように刻まれるリフがたまらなく格好いい「ROAD TO RUIN」、変調が見事な「SIXES AND SEVENS」、キャッチーなコーラスを有する「STONEWALL」、目まぐるしい曲展開を見せるドラマティックなタイトル曲「NEVER, NEVERLAND」、圧巻のギター・ソロを聴かせる「IMPERILED EYES」、パンキッシュな「KRAF DINNER」、刻まれるギター・リフの音色が心地よい「REDUCED TO ASH」、エンディングにふさわしい荒くれナンバー「I AM IN COMMAND」と、バンドの最高傑作との呼び声も高い、捨て曲なしの好盤。
イギリスのRUSHとも評されたマイク(Vo,B)とグレン(G)のスクリムショウ兄弟とパット・コールマン(Dr)のマンズフィールド出身のトリオによる'80年発表の唯一のアルバム。 多彩な楽器を使いこなす各メンバーのプレイはいずれも素晴らしく、RUSHやRAINBOW等からの影響が顕著な楽曲は、あまりにも物悲しいメロディに彩られた哀愁のドラマティック・バラード「MAN OF COLOURS」やRAINBOWの「KILL THE KING」を彷彿させる「METAL MAN」といったNWOBHM史上に名を残す名曲を始めとして、明るくキャッチーなメロディを聴かせる「GOING HOME」、初期RAINBOW的なギター・リフを持つ「KNIFE IN YOUR BACK」、ハイ・トーンを駆使した哀愁ナンバー「MAMMA (I DON'T WANNA LOSE YA)」、ツインで奏でられるギター・リフがトリッキーな「WALK ON WATER」、プログレッシヴな曲展開が圧巻の「DON'T LOOK BACK」と、アルバムの中に捨て曲は一切見当たらない。 CD再発の際には、ボーナス・トラックとして'82年発表のシングル「ASHES TO ASHES」が追加収録されているが、これがU.F.O.の「DOCTOR DOCTOR」を彷彿とさせる好ナンバーだ。 アルバム1枚で消えていったのが実に惜しまれるバンドであった。
スタジオ・アルバムとしては「DREAM POLICE」に続いて発表された'80年発表の5th。 プロデューサーはTHE BEATLESの数々の作品等を手掛けたジョージ・マーティン。 奇抜なアルバム・ジャケットのデザインと同様、サウンドの方もモダンな作風となっており、その人工的なエフェクト処理に当初は違和感を覚える。 ロビンがフレディ・マーキュリーのような歌唱を聴かせるリーダー・トラックの「STOP THIS GAME」を始め、軽快なリズムで決める「JUST GOT BACK」、エディ・コクランのようなロックン・ロール曲「BABY LOVES TO ROCK」、哀愁のメロディを奏でる「CAN'T STOP IT BUT I'M GONNA TRY」、甘くほのぼのとしたメロディのバラード「WORLD'S GREATEST LOVER」、ロボット・ヴォイスがいかにも'80年代的な「HIGH PRIEST OF RHYTHMIC NOISE」、ハードな疾走チューン「LOVE COMES A-TUMBLIN' DOWN」、ダンサンブルな「I LOVE YOU HONEY BUT I HATE, YOUR FRIENDS」といった佳曲が目白押しのアルバムであるが、これまでの作品に見られたような必殺のナンバーが見当たらないため、アルバム全体の印象は薄い。 本作発表後、ルックス面でのファン人気の一翼を担っていたトム・ピーターソン(B)がバンドを脱退。 トムがバンドに復帰するまでの間、バンドは長い長い低迷期を迎えることとなるのであった。
前作「THE HOUSE OF BLUE LIGHT」発表後、二度目の脱退をなしたイアン・ギランの後任に元RAINBOW~YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEのジョー・リン・ターナーを迎え、レコード会社も移籍して制作された'90年発表作。 メンバー5人のうち3人が元RAINBOW組ということで「DEEP RAINBOW」等とも揶揄されもした。 楽曲のパンチ力に欠けていた前作に比べ、幾分バラエティに富んだ楽曲が並んではいるものの、その音楽性は再結成後の路線から大きく変化してはいない。 そのため、ジョー在籍時のRAINBOW最後のアルバム「BENT OUT OF SHAPE」の続編のようなキャッチーな楽曲の詰まった作品を期待していたファンにとっては若干肩透かしを喰ったかもしれない。 そのジョーの歌唱は相変わらずソウルフルで素晴らしいが、やや枯れた声質となったことでかつての艶が失われているのが気になる。 終始大人しめのドラム・プレイも、後にリッチーから「実はドラム・マシーンを使用していた」との仰天告白がなされている。 重厚な香り漂うリーダー・トラックの「KING OF DREAMS」、ジョンのオルガン・ソロが大活躍する「THE CUT RUNS DEEP」、名曲「LAZY」を彷彿させるシャッフル・ナンバー「FIRE IN THE BASEMENT」、ジョーのソウルフルな歌唱が素晴らしい「TRUTH HURTS」、ポップなキーボード・リフの「BREAKFAST IN BED」、厳かなムード漂う「FORTUNETELLER」、元FORIGNERのアル・グリーンウッドとの共作曲「TOO MUCH IS NOT ENOUGH」といった楽曲はいずれも良いし、個人的にはリッチーの泣きのギターが炸裂する「LOVE CONQUERS ALL」とアルバムにおいて最もアグレッシヴな「WICKED WAYS」が気に入っているが、やや落ち着きすぎとのきらいはある。 クラシック・レコードのようにレコード盤に針を落としてじっくりと聴きたくなるようなアルバムだ。
元KEELのギタリストのマーク・フェラーリを中心に結成されたLAのバンドによる'90年発表のデビュー・アルバム。 当初のヴォーカリストであったオニー・ローガンがジョージ・リンチ率いるLYNCH MOBに引き抜かれてしまったために無名のローリー・キャシーが後任に迎えられているが、これがとんでもなく素晴らしい実力を持ったヴォーカリスト。 声質はデビュー間もないころのジョン・ボン・ジョヴィを思わせるが、声のレンジやパワーが半端ではない。 ツイン・ギターを駆使したハーモニーもこのバンドの大きな特徴だ。 スピード感抜群のオープニング曲「FOUR ON THE FLOOR」、哀愁のメロディを奏でる 「TAKE THIS HEART OF MINE」、美しいインスト「RIVIERA」に導かれるヘヴィな「LONG WAY DOWN」、キャッチーかつメロディアスな「LET'S MAKE LOVE TONIGHT」、迫力のバック・コーラスを聴かせる疾走曲「JUMP THE GUN」といった好曲のほか、ブリティッシュ・ロックからの影響が伺える「CRYIN' SHAME」、アメリカン色の強い「LOVESTRUCK」、甘いバラード「WAITING IN VAIN」、ファンキーな「FISTFUL OF MONEY」、FOGHATのメタリックなカヴァー「I JUST WANT TO MAKE LOVE TO YOU」といったアルバムのアクセントとなる曲も悪くない。 あとはこのバンドならではの個性が楽曲に見られれば言うことなしであったが、大きな成功を得ることなくバンドは解散してしまった。
MOTLEY CRUEの活動がままならないニッキー・シックス(B)が、L.A.GUNSのトレイシー・ガンズ(G)、元MOTLEY CRUEのジョン・コラビ(G)、ADEMAのクリス・コールズ(Dr)、無名のロンドン・ルグランド(Vo)と結成したバンド。 その後、ジョンとクリスが脱退し、ポール・ギルバートのバンドに参加していたスコット・クーガン(Dr)が迎えられている。 元々はニッキーと元GUNS N' ROSESのスラッシュ(G)、元VAN HALENのサミー・ヘイガー(Vo)によるスーパー・プロジェクトが画策されたのが発端であったが、サミーの代わりにBUCKCHEREYのジョシュ・トッドとキース・ネルソンのコンビを迎えたあたりから構想が元GUNS N' ROSESのメンバーらによるVELVET REVOLVER結成に方向転換、代わりにニッキーが結成したのがこのバンドというわけだ。 `03年発表のこの作品はいわばデモであることから、楽曲もプレイも未完成との感は否めないが、冒頭から勢いよくガツンとかましてくれる「SHUT THE FUCK UP」、テンションを持続させたままハードに迫る「I DON'T CARE」、ダークな曲調でメロディに悲哀を感じさせる「I GOT A GUN」、ロンドンがフィル・アンセルモのようなヘヴィな歌唱を聴かせる「TWO TIMES DEAD」、ダークでメロディアスなギターが聴ける「BRACE YOURSELF」、キャッチーかつファンキーな「NATURAL BORN KILLERS」、スコットがヴォーカルをとるメロウなナンバー「LIFE」、ヘヴィなギター・リフと愁いを帯びた歌メロとの対比が素晴らしい「REVOLUTION」、トレイシーのギター・ソロが美しくメロディアスな「ONLY GET SO FAR」といった毒気と華やかさに満ちた良質の楽曲が詰め込まれた'80年代ハード・ロック・ファンにはたまらないであろう好盤となっている。 本作発表後、残念ながら(?)ニッキーがオリジナル・メンバーによるMOTLEY CRUE再結成のためにバンドを脱退してしまった。
バンドを代表するばかりでなく、ロック史に残る名曲が多数収録された'72年発表の歴史的名盤。 若干の大人しさが感じられた前作「FIREBALL」の反省からか、黄金期と呼ばれたメンバーの激しいインター・プレイが再び爆発しており、良質の楽曲にさらなる付加価値を与えることに成功している。 ギランの驚異的な高音シャウトやリッチーのギターとジョンのオルガンによる激しいソロ・バトルがヘヴィなロジャーのベースとペイシーのダイナミックなドラミングに乗せて展開される永遠のハード・ロック・チューン「HIGHWAY STAR」、世界一多く弾かれたギター・リフであるといっても過言ではないほどの超有名曲「SMOKE ON THE WATER」、ジャジーな薫り漂うインスト・パートが秀逸な「LAZY」、ロジャーのベースがウルトラ・ヘヴィな「SPACE TRUCKIN'」といった代表曲はもちろんのこと、ギター・リフがあまりにもかっこいい「MAYBE I'M A LEO」、リッチーの奏でるギター・メロディが素晴らしいドライヴ感に満ちた「PICTURES OF HOME」、曲調が目まぐるしく変化する「NEVER BEFORE」といった曲も実に素晴らしく、正に捨て曲一切なしの名盤中の名盤である。
前作「DEEP PURPLE IN ROCK」による成功の余波を受け、全英1を記録した'71年発表作品。 その前作と歴史的名盤と呼ばれる次作「MACHINE HEAD」との間に挟まれ、「地味な作品」と称されることの多い本作であるが、ロック史に残る偉大な作品と比較するのは酷というものだ。 実際、楽曲の質が劣るということは決してなく、ペイシーによるツイン・ドラムによるイントロが衝撃的なハード・チューン「FIREBALL」や歌メロがあまりにもキャッチーな「STRANGE KIND OF WOMAN」といった代表曲を始め、ムーディーかつドラマティックな「NO NO NO」、哀愁のカントリー・ナンバー「ANYONE'S DAUGHTER」、ペイシーのドラム・ロールが凄まじい「THE MULE」、ギランがワイルドな歌唱を聴かせる「FOOLS」、ヘヴィかつグルーヴィーな「NO ONE CAME」と魅力的な曲が揃っている。 アルバムのアート・ワークも非常に美しい。 但し、前作の大きな特徴でもあった個々のメンバーの激しいインター・プレイは減退、特にリッチーのギター・ソロが若干大人しめなのが残念だ。