前作のシンプルかつコンパクトな作風を更に推し進めたような内容の'94年発表の6th。 前作までにあったバンド特有の緊張感は薄れ、曲によってはキャッチーとすら形容してしまいたくなるほどであるが、ところどころに顔を覗かせる叙情的なメロディの美しさにバンドの新たな魅力を感じたのも事実。 ニック・メンザの大砲のようなドラミングがかっこいい「RECKONING DAY」、不規則なギター・リフが印象的なリーダー・トラックの「TRAIN OF CONSEQUENCES」、サビのメロディが叙情的な「ADDICTED TO CHAOS」、ユニゾンで奏でられるギターが余りにも美しい「A TOUT LE MONDE」、バック・コーラスも爽やかな好曲「ELYSIAN FIELDS」、最もMEGADETHらしいリフを持った「THE KILLING ROAD」、幻想的なオープニングが劇的な「BLOOD OF HEROES」、明るいイントロとキャッチーな歌メロの「FAMILY TREE」、引きずるようなヘヴィさの「YOUTHANASIA」、ヘヴィさと叙情的メロディを併せ持った「I THOUGHT I KNEW IT ALL」、リフに重みのある「BLACK CURTAINS」、歌詞に過去の名曲が登場するシンプルな作りの「VICTORY」で本編終了。 ボーナス・トラックとしてDIAMOND HEADのような「A CROWN OF WORMS」とライヴ曲3曲を収録。 アルバムのハイライト的な曲が欲しかった気も。
10年以上の時を経てついに再結成されたEUROPEが'04年に放った6th。 プロデューサーは名盤「THE FINAL COUNTDOWN」を手がけたケヴィン・エルソン。 本作は過去のどの作品とも違うダーク&ヘヴィな作風で、オルタナティブ・ロック全盛期に多くのバンドが時代に寄り添ったかのようなサウンドに方向転換をしたことで落胆させられた気持ちを彷彿させるような内容である。 ジョン・ノーラムのギターもこの曲調では本来の魅力を発揮できていない気がする。 それでも「START FROM THE DARK」はBON JOVIにとっての「IT'S MY LIFE」のように、バンドの未来への指針となるような曲であるし、エッジのきいたギター・リフがかっこいい「FLAMES」や「WAKE UP CALL」、ほのぼのとした雰囲気がかつての曲調を彷彿させる「HERO」、ギター・ソロが絶品の「REASON」、愁いを含んだメロディが美しいバラード「ROLL WITH YOU」、パンチのきいたサビが印象的な「SUCKER」、本作において比較的アップ・テンポな「AMERICA」などは悪くはない。 次作もこの水準の出来ならばともかく、今はバンドが戻ってきてアルバムを発表してくれた喜びがアルバムの不満を大きく上回る。
本作において初期のハードな路線に戻ると前評判の高かった'91年発表の5th。 プロデューサーはRATTやWINGERを手がけたボー・ヒル。 ギターの音が前面に戻ってはいるものの、いかんせんアメリカンな香りが強い。 これまでの作品を淡い水墨画に例えるとすれば、このアルバムは差し詰め油絵といった感じだ。 キャッチーで軽快な「HALFWAY TO HEAVEN」、ジョーイの甘い歌声が魅力の「I'LL CRY FOR YOU」、典型的なハード・ロック・ソングの「SEVENTH SIGN」などはなかなかの好曲だし、ポップながらも哀愁漂うドラマティックな「PRISONERS IN PARADISE」やオリエンタルなメロディの「GIRL FROM LEBANON」は名曲だと思うが、これまでのEUROPEとは毛色が違うとの感は否めない。 手がけたバンドは皆同じ音になってしまうとの悪名の高いボー・ヒルの功罪も大きい。 イントロの流麗なギターが印象的な「BREAK FREE」やファンキーに刻まれるリフがいかした「YESTERDAY'S NEWS」のボーナス・トラック2曲が最もEUROPEらしいサウンドを奏でているのが皮肉だ。
バンドのポップ志向に傾きつつある方向性に嫌気がさしたジョン・ノーラムが脱退、後任にキー・マルセロを迎えて発表された'88年発表の4th。 プロデューサーはHEARTやSURVIVOR等を手がけたロン・ネヴィソン。 ジョーイのヴォーカルを前面に押し出し、かつ、きらびやかなシンセサイザー・サウンドに彩られたなポップな作風は正にロン・ネヴィソンならでは。 今でこそ「好曲粒揃いの好盤」との評価はできるものの、当時、1stと2ndのころのような北欧メタルの旗手としてのEUROPEに思い入れが強かった自分にとっては裏切られたような思いさえしたアルバムであった。 コーラスが美しくポップな「SUPERSTITIOUS」、ロックなリフとキャッチーなコーラスの「LET THE GOOD TIMES ROCK」、ジョーイの伸びやかな歌声が美しい「MORE THAN MEETS THE EYE」、甘く壮大なスケール感のバラード「COAST TO COAST」、哀愁と透明感あるサウンドの「SIGN OF THE TIMES」、80年代的なきらびやかさの「JUST THE BEGINNING」等は悪くはないが、どうしても北欧メタルの代名詞的「READY OR NOT」や、あまりにも強烈な泣きを発散させるバラード「TOMORROW」のような初期を思い起こさせる名曲に耳を奪われてしまう。 ただ、このバンド特有の気品や哀愁・透明感といったものは失われておらず、むしろ強烈に発散させている。 キー・マルセロのギター・プレイは流麗で素晴らしいが、ゲイリー・ムーアやマイケル・シェンカーの系譜を継ぐジョン・ノーラムが去ったのは痛い。
世界中で650万枚以上を売り上げる大ヒットを記録した、バンドの代表作でもある'86年発表の3rd。 脱退したトニー・レノーの後任にイアン・ホーグランド(Dr)が、専任キーボーディストとしてミック・ミカエリが加入。 JOURNEY等の産業ロック系アーティストの数々の名盤を産み出したケヴィン・エルソンをプロデューサーに迎えたことにより、非常に洗練された聴き易い作品を作り上げた。 キーボードを前面に押し出したきらびやかなサウンド、これまでになくシンプルかつコンパクトになった楽曲は、1st・2ndの頃のピュアな北欧メタルが好きなファンにはショックを与えたものの、「THE FINAL COUNTDOWN」という超名曲が産み出されては納得せざるを得ない変化であった。 世界25カ国で№1を記録した同曲以外にも、キャッチーでライヴ向けの「ROCK THE NIGHT」、ジョーイの甘い歌声が耳に残るヒット・バラード「CARRIE」、DEEP PURPLEのようなキーボード・ソロが聴ける「DANGER ON THE TRACK」、前作までの北欧メタル・サウンドに最も近い哀愁度をを誇る「NINJA」、ギターとキーボードによるソロが美しい「CHEROKEE」、優しく甘いサウンドに包まれた「TIME HAS COME」、ドッシリとしたミディアム・テンポ・ナンバー「HEART OF STONE」、アルバム唯一の疾走曲「ON THE LOOSE」、キャッチーな中にも透明感のある「LOVE CHASER」と捨て曲は一切なく、ポップになりながらもバンド特有の哀愁&透明感は失われていない。
デビュー・アルバムの路線を踏襲しつつも、演奏技術・サウンド・プロダクションが格段に向上した'84年発表の2nd(邦題は「明日への翼」)。 「SEVEN DOORS HOTEL」のような必殺の超名曲はないものの、ギターのメロディに酔いしれる「STORMWIND」、疾走感に満ちたアグレッシヴな「SCREAM OF ANGER」、美しいアコースティック・ギターの音色からドラマティックに展開する「OPEN YOUR HEART」、ヘヴィで力強い「TREATED BAD AGAIN」、ギターとキーボードの絡みがメロディアスなインスト「APHASIA」、ヘヴィなリフとキャッチーなサビが魅力的な「WINGS OF TOMORROW」、ノーラムの流麗なギター・ソロが絶品の「WASTED TIME」、北欧メタルらしい疾走感とメロディに満ちた「LYIN' EYES」、ジョーイの甘く切ない歌声が感動的なバラード「DREAMER」、DEEP PURPLEのBURNを彷彿させる「DANCE THE NIGHT AWAY」と名曲が目白押しで、捨て曲は見当たらない。 これぞ北欧メタルの名盤! 個人的にも本作こそがEUROPEの最高傑作!
実験的な作風の前作「CHAMELEON」は、ファンがHELLOWEENに求めていたメロディが希薄であったため、圧倒的に否の意見が多かった。 マイケル・キスク、インゴ・シュヒテンバーグの脱退騒動もあり、下降線を辿ると思われていたバンドであったが、元PINK CREAM 69のアンディ・デリス、元GAMMA RAYのウリ・カッシュを迎えて質の高い楽曲を配した'94年発表の本作で見事に復活した。 オーケストレーション溢れるイントロ曲「IRRITATION」からダイナミックに幕を開ける「SOLE SURVIVOR」、哀愁あるメロディと疾走感に満ちたアンディ時代の超名曲「WHERE THE RAIN GROWS」、PINK CREAM 69を彷彿させる哀愁の「WHY?」、ヘヴィなリフから壮大なサビに繋がる「MR EGO(TAKE ME DOWN)」、憂いあるアンディの歌唱がただのキャッチーな曲にさせない「PERFECT GENTLEMAN」、ゲーム音を導入したコミカルな「THE GAME IS ON」、これまたアンディの歌唱により哀愁度抜群の「SECRET ALIBI」、正統的ハード・ロックの「TAKE ME HOME」、PINK CREAM 69のような切ないバラード「IN THE MIDDLE OF A HEARTBEAT」、疾走感とダイナミックさに満ちた「STILL WE GO」と楽曲はどれも素晴らしい。 ボーナス・トラックの出来も良く、憂いと疾走感ある「CAN'T FIGHT YOUR DESIRE」は本編に収録されていても遜色のない出来だし、イングヴェイをパロった「GRAPOWSKI'S MALMSUITE 1001(iN D-DOLL)」も面白い。 HELLOWEENとPINK CREAM 69の融合といった感のある本作は「KEEPER~」時代とは明らかに違うが、新生HELLOWEENとしての未来を期待させる内容となっている。
前作「THE MOMENTARY LAPSE OF REASON(鬱)」は、奇才ロジャー・ウォーターズが脱退したこともあってか批判も多かった。 約7年ぶりとなる'94年発表の本作は、身を委ねたくなるような美しいサウンドが全体を覆い尽くしているという印象だ。 美しいピアノの「CLUSTER ONE」に始まり、威厳に満ちたサウンドの「WHAT DO YOU WANT FROM ME」、ギルモアの歌声が優しく包む「POLES APART」、流麗なギター・ソロが聴けるインスト「MAROONED」、天から一筋の光が差すような美しいメロディの「A GREAT DAY FOR FREEDOM」、まるでU2のような「TAKE IT BACK」、80年代ポップのような「COMING BACK TO LIFE」、絶望的な哀愁に満ちた「HIGH HOPES」等、PINK FLOYDの名に恥じない聴き応え十分の作品である。 全米・全英№1は伊達じゃない!