本国では「LIVE AT THE HAMMERSMITH」との2枚組として発売された、イアン・ペイス加入後である'80年6月23日と24日に英国ハマースミス・オデオンにて行われたライヴを収録した同年発表のライヴ・アルバム。 プロデューサーはマーティン・バーチ。 過去最高の演奏陣によるタイトかつダイナミックな演奏とディープかつソウルフルなデヴィッドの歌唱をベストな選曲で熱狂的な聴衆の下に聴かせた白熱のライヴだ。 オープニングには欠かせない軽快なナンバー「COME ON」、スタジオ盤よりも疾走感が増したことでかっこよさが格段に増している「SWEET TALKER」、今でもイントロが流れただけで鳥肌の立つ超名曲「WALKING IN THE SHADOW OF THE BLUES」、延々と繰り広げられるバンドのジャミング的な演奏が素晴らしい、本作のハイライト的位置に存在する「LOVE HUNTER」、バンドに成功をもたらしたヒット曲ならではの盛り上がりを見せる「FOOL FOR YOUR LOVING」、スタジオ盤以上に美しくデヴィッドの歌声も伸びやかな「AIN'T GONNA CRY NO MORE」、ブルージーでありながらもダイナミックな「READY AN' WILLING」、ハードに疾走する「TAKE ME WITH YOU」と、全楽曲がスタジオ版を凌駕するライヴ・アルバムの超名盤。
マイケル・モンロー(Vo)、アンディ・マッコイ(G)、ナスティ・スーサイド(G)、サム・ヤッファ(B)、ジップ・カジノ(Dr)の5人からなるフィンランド出身の伝説的ロックン・ロール・バンドによる'81年発表の1st(邦題は「白夜のバイオレンス」)。 THE ROLLING STONES等のスタンダードなロックのほか、パンク・ロックやグラム・ロックからも影響を受けたと思しき音楽性とド派手なルックスはこのころから健在で、後にロック界におけるカリスマ的存在へ昇り詰めていくこととなる。 歌や演奏は決して上手いとは言えないが、ヘタウマな魅力があるのも確かで、そのルーズ感さえもがバンドの個性となっている。 ギター・リフがクールでかっこいいロックン・ロールの超名曲「TRAGEDY」を始め、アンディがトリッキーなギターを聴かせる「VILLAGE GIRL」、ポップでキュートなサウンドの「STOP CRYIN'」、ロマンチックなメロディのバラード「DON'T NEVER LEAVE ME」、軽快なノリのハード・チューン「LOST IN THE CITY」、ハードボイルドな「FIRST TIME」、哀愁漂うメロディが美しい「CHEYENNE」、ツイン・ギターの奏でるメロディがポップな「11th STREET KIDZZ」、CAROL KINGのハイ・テンションなカヴァー「WALKING WITH MY ANGEL」、マイケルのサックスがかっこいい「PRETENDER」といった代表曲や好ナンバーを収録。 ワールド・ワイド盤はバラの絵を模したアート・ワークに変更されている。
前作「NEVER SAY DIE」発表後に再びオジー・オズボーンが脱退、後任候補にはデヴィッド・カヴァデールやグレン・ヒューズの名も噂に上がったものの、最終的にその座に収まったのはRAINBOWで強靭な歌唱を聴かせたロニー・ジェイムズ・ディオであった。 本作はそのロニーを擁して'80年に発表された作品であるが、実力には折り紙付きのロニーを加入させたことでサウンド・スタイルもその歌唱力を生かしたドラマティックなものへと変化しており、へヴィでダークなBLACK SABBATHサウンドにDIOの中世的な世界観を融合させた良質の化学反応を起こしている。 ドライブ感に満ちたハード・ロック・チューン「NEON KNIGHT」、ディオならではのドラマティックな世界観が広がる「CHILDREN OF THE SEA」、ギーザーのグルーヴ感溢れるベースがかっこいい「LADY EVIL」、美しくドラマティックな曲調とダイナミックな展開を見せる壮大なタイトル曲「HEAVEN AND HELL」、ギター・リフが明るくうねる「WISHING WELL」、スリリングな演奏・勇壮な疾走感・美しいメロディといったヘヴィ・メタルの要素を凝縮した超名曲「DIE YOUNG」、コーラスがキャッチーな「WALK AWAY」、トニーによるヘヴィなギター・リフと美しいギター・ソロが圧巻のバラード「LONLEY IS THE WORD」と、収録曲の全てが名曲と言って差し支えのないHR/HM史に残る超名盤であり、特にここ日本においては、オジー時代のいずれの作品よりも愛されているのではないだろうか。 ロニーの歌唱力だけでなく、各メンバーのプレイも非常に素晴らしい。 プロデューサーはDEEP PURPLEやRAINBOW等を手がけたマーティン・バーチ。 キーボーディストには後々までバンドを支えていくこととなるジェフ・ニコルズが参加している。
前作発表後にリズム隊が脱退、元MOTORHEADのフィル“アニマル"テイラーらが参加するとの噂があったものの、結局、キーボード奏者を含んだデイブ・キングの元バンド・メイトを迎えて制作された'86年発表の3rd。 プロデューサーはZENO等を手掛けたテリー・マニング。 本作の主導権はこのプロデューサーが握っていると言っても過言ではなく、アルバム収録曲の大多数の作曲に関わっており、バンドの中心的存在であったはずのエディ“ファスト"クラークは作曲には一切タッチしていない。 愁いを含んだメロディが美しい「THE WORLD WAITS FOR YOU」、きらびやかなシンセサイザーのサウンドがポップな「KILL ME WITH YOUR HEART」、いかにも'80年代的な哀愁ポップ・サウンドの「TIRED OF YOUR LOVE」、もの悲しいメロディのバラード「CHANGE」、デイヴの歌唱が素晴らしいダイナミックなタイトル曲「WAITING FOR THE ROAR」、シンセサイザーのサウンドがきらびやかな「GIRL」といった良い曲もあるが、シンセサイザーの大々的な導入やオーケストラの起用など、巷で隆盛を誇っていた産業ロックのようなきらびやかな装飾がなされており、バンドの持ち味であったロウ・パワーが失われてしまった感がある。 本来であれば見事にハマったであろうジャニス・ジョプリンの名曲「MOVE OVER」の生々しさに欠けるカヴァーが、バンドとサウンド・プロダクションとのミスマッチを表しているように思う。
ハンズィ・キアシュ(Vo,B)、アンドレ・オルブリッチ(G)、マーカス・ズィーペン(G)、トーマス“トーメン"スタッシュ(Dr)の4人からなるLUCIFER'S HERITAGEを前身とするドイツ出身のバンドによる'88年発表のデビュー・アルバム。 プロデューサーはカレ・トラップ。 音楽性はカイ・ハンセンのいたころのHELLOWEENに近く、疾走感ある演奏にメロディアスなコーラスが乗った良質のパワー・メタルを聴かせてくれてはいるものの、本作ではまだそのフォロワーの域を抜きん出るまでには至っていない。 しかし、ファンタジックなメロディを聴かせる「MAJESTY」や正統派パワー・メタル・チューン「RUN FOR THE NIGHT」といった曲は今でもライヴで演奏されることのある魅力的な曲であるし、迫力のあるコーラスが印象的な「GUARDIAN OF THE BLIND」、 スリリングなインスト「TRIAL BY THE ARCHON」からフックのきいたメロディの「WIZARD'S CROWN」に至る流れ、目まぐるしく展開するヘヴィなタイトル・チューン「BATTALIONS OF FEAR」も悪くない。 クラシックの「新世界」をモチーフにした「BY THE GATES OF MORIA」や、やはりクラシカルなメロディのボーナス・トラック「GANDALF'S REBIRTH」といったインスト・チューンもかっこいい。 バンドの持ち味であるファンタジックなメロディはその片鱗を垣間見せる程度であるが、デビュー作としては十分合格点に達しており、将来性のあるB級バンドとして期待が持てる作品であった。
アルバムのハイライトであるとともに、彼らの曲の中でも最高級に位置する代表曲。 その壮大でドラマティックな曲構成とスリリングなメロディは恐ろしいほどの完成度を誇る。 徹頭徹尾BLIND GUARDIANらしさが刻印された超名曲だ。 「RETURNING OF THE MIRACLES!! IT'S MY OWN REQUIEM!!」
ドラムスにリッチ・バターズビーを呼び戻し,ベーシストに元AMEN、BRIDES OF DESTRUCTIONのスコット・ソーリーを迎えて再結成・制作された'07年発表作品。 前作「THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED」は好曲が散りばめられた充実作ではあったものの,バンド・サウンドの特徴の一つである哀愁の度合いが薄れているように感じられた。 本作も前作の延長線上にはあるものの,何曲かでデビュー・当時の激しいサウンドに哀愁のメロディが乗るという基本姿勢に立ち返ったかのようなサウンドを聴かせてくれる。 攻撃的で複雑な曲展開を見せる「ROOTING FOR THE BAD GUY」、前衛的なサビのメロディの「THE SWEETEST SONG」、ポップで軽快な疾走曲「THE REVOLUTION WILL BE TELEVISED」、過激な歌詞の内容とは裏腹にキャッチーな「THE NEW FLESH」、壮大で美しいメロディの「SLAUGHTERED AUTHORS」、後半のインスト・パートが名曲「MY BABY IS A HEADFUCK」を彷彿させる「THE HARD WAY」、どことなく懐かしさを感じさせる感動的ナンバー「INNER CITY OVERTURE」、哀愁漂うキャッチーなコーラスを聴かせる「BI-POLAR BABY」、底抜けに明るいコーラスの「SHE'S ALL THAT」、ヘヴィかつノイジーな「DESTROY ALL MONSTERS」のほか、日本盤ボーナス・トラックとしてハーモニーが美しいインスト曲「SO THE SPENCERS CAN POKE OUT」とポップなリズム感を持った「OH BONITA」を収録。 リフそのもののメロディに若干の弱さを感じるものの,聴き込むほどに味わいの出る作品である。
IRON MAIDENのヤニック・ガーズが在籍していたことでも知られる英国はニュー・キャッスル出身のNWOBHMバンドによる'80年発表の唯一のアルバム。 耳を惹くのは明らかにリッチー・ブラックモアの影響下にあるヤニックのギター・プレイで、DEEP PURPLEやRAINBOWに激似の楽曲もおそろしくクオリティが高い。 まるでDEEP PURPLEのような疾走感の「MIDNIGHT CHASER」、美しくドラマティックなサウンドを聴かせる名曲「RED SKIES」、スペーシーでキャッチーなキーボード・リフの「HIGH UPON HIGH」、ロニー在籍時のRAINBOWのようなギター・リフの「WAY OF THE KINGS」、こちらはグラハム在籍時のRAINBOWのようなメロディの「NO REPRIEVE」、イントロはDEEP PURPLE、歌入り後はRAINBOWのようなギター・リフの「DON'T BE FOOLED」、メロディアスなギターを聴かせる10分強の大曲「FOOL FOR GODS」のほか、シングルのA・B面から、スペーシーなキーボード・サウンドが美しい「SUFFRAGETTES」、WHITESNAKEのような「BACK TO THE GRIND」、RAINBOWのようなシャッフル・ナンバー「CHEETAH」をボーナス収録。 ボーナス・トラックを含めて捨て曲の一切見当たらない好作品。
前作「WHEELS OF STEEL」から僅かな製作期間で発表された'80年発表の3rd。 そのせいか、楽曲のインパクトは前作に比べて若干劣る気はするものの、ヘッド・バンガーズ・アンセムたる「HEAVY METAL THUNDER」を始め、メロディアスな疾走曲「TO HELL AND BACK AGAIN」、コーラスを共に叫びたくなるタイトル曲「STRONG ARM OF THE LAW」、轟音のようなイントロの「TAKING YOUR CHANCES」、フックのきいたギター・リフの「20,000 FT」、イントロのギター・メロディが秀逸な「HUNGRY YEARS」、メロディに爽快感さえ感じさせる「SIXTH FORM GIRLS」、幾重にも重ねられていくギター・リフが圧巻の「DALLAS 1 PM」といった名曲・佳曲が収録された充実作であることは間違いない。 リマスター盤には「20,000 FT」、「DALLAS 1 PM」、「HUNGRY YEARS」、「STRONG ARM OF THE LAW」、「HEAVY METAL THUNDER」の'81年のライヴ・ヴァージョンがボーナス・トラックとして収録されている。
マイケル・シェンカーの参加したことで話題性十分であった前作「LOVE DRIVE」と大ヒットを記録した次作「BLACKOUT」の間に発表されたにもかかわらず、イマイチ評価の低い'80年発表作品(邦題は「電獣」)。 決して楽曲が悪いわけではなく、彼らならではの官能的なメロディを聴かせる「MAKE IT REAL」、ガッツ溢れるギター・リフの疾走曲「DON'T MAKE NO PROMISES (YOUR BODY CAN'T KEEP)」、優しげで爽やかなバラード「LADY STARLIGHT」、イントロのギター・リフの迫力にノック・アウト必至のライヴでの定番曲「THE ZOO」といった曲はヘヴィ・ローテーションになり得るし、クラウスの高音シャウトが凄い「HOLD ME TIGHT」、ギラギラしたサウンドが異彩を放つ「TWENTIETH CENTURY MAN」、サビのメロディがキャッチーな「FALLING IN LOVE」、ダークな曲調から一変するサビのメロディが美しい「ONLY A MAN」、気だるく憂鬱な気分を音にしたかのような「ANIMAL MAGNETISM」も悪くない。 確かに突出した曲はないかも知れないが、これほどの楽曲を揃えながらも高評価を得られないことに彼らに求められているハードルの高さを痛感させられる。 アルバム・ジャケットはやっぱり発禁。
オジー・オズボーン(Vo)、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ビル・ワード(Ds)の4人で結成された、ヘヴィ・メタルの重鎮・ドゥーム・メタルの元祖であるイギリスはバーミンガム出身のバンドによる'70年2月13日の金曜日にVirtigo Recordsから発表されたデビュー作。 プロデューサーはロジャー・ベイン。 ブルーズを限りなくダークかつヘヴィにしたようなインテンス極まりない楽曲、狂気じみたギター、轟音のようなベース、雷鳴のようなドラミング、浮遊感のあるヴォーカルと、そのサウンドはあまりにも個性的。 雨音と雷鳴が鳴り響くイントロから不気味で重苦しいリフが奏でられる代表曲「BLACK SABBATH」を筆頭に,ギター&ベースとユニゾンで奏でられるオジーのハーモニカが魅惑的な「THE WIZARD」、ギター・リフがサイケデリックで浮遊感に満ちた「BEHIND THE WALL OF SLEEP」、一度聴いたら忘れられないほど個性的なギター・リフを持つ「N.I.B」、ブルージーながらも軽快なシングル曲でCROWのカヴァー「EVIL WOMAN(DON'T PLAY YOUR GAMES WITH ME)」、インストのアコギ・サウンドが美しくも不気味な「SLEEPING VILLAGE」、演奏陣のブルーズ・ジャムが圧巻のTHE AYNSLEY DUNBER RETALIATIONのカヴァー「WARNING」、幻惑的な世界に落ちてしまいそうなサウンドの「WICKED WORLD」といった好曲を収録。 数々の名アルバム・ジャケットを手掛けたキーフによるアート・ワークも邪悪な美しさを放っている。
ジョン・ロード加入後の`78年にロンドンのハマースミス・オデオンで行われたライヴを収録した'80年発表の来日記念アルバムで、欧米では「LIVE…IN THE HEART OF THE CITY」と併せた2枚組として収録された。 本作の売りはDEEP PURPLE時代の楽曲である「MIGHT JUST TAKE YOUR LIFE」と「MISTREATED」のWHITESNAKEヴァージョンが聴けることで、まだイアン・ペイスが加入する前のライヴではあるが、その迫力や臨場感は申し分がない。 「MIGHT JUST TAKE YOUR LIFE」はグレン・ヒューズのパートをバーニー・マースデンが歌っており、さすがにグレンのようなハイ・トーンとはいかないものの、原曲を損なうことのない絶妙のコーラスを聴かせてくれている。 「MISTREATED」のディープでソウルフルな歌唱はデヴィッドの真骨頂だ。 その他,ライヴのオープニングには定番であったファンキーな「COME ON」、スタジオ版に増して爽快な疾走感の「LIE DOWN」、観客の大合唱が感動を呼ぶ名曲「AIN'T NO LOVE IN THE HEART OF THE CITY」、2本のギターが奏でるメロディが素晴らしい「TROUBLE」と全6曲という収録曲ながらも、1曲の密度が非常に濃いので物足りなさはない。
ドラムの座をステファン・カウフマンにチェンジしての`80年発表の2nd。 音質・楽曲はデビュー作から目覚しく向上し、ウドの金切り声が炸裂する「SAVE US」、メロディアスなギター・リフの「CHINA LADY」、キャッチーなコーラス・ワークの「DO IT」はなかなかの好曲であるが、レコード会社から売れる曲を要求されたという経緯もあってか、いささか散漫な印象は受ける。 特に、外部ライターのペンによる「I'M A REBEL」はAC/DC調の縦ノリロックの好ナンバーであるが、他の曲と比較して浮いている感は否めない。 叙情的バラード「NO TIME TO LOOSE」とRAINBOWの「TEMPLE OF THE KING」を彷彿させる「THE KING」で再びピーター・バルテスがヴォーカルを担当している。
ウド・ダークシュナイダー(Vo)、ウルフ・ホフマン(G)、ヨルグ・フィッシャー(G)、ピーター・バルテス(B)、フランク・フリードリッヒ(Ds)からなるドイツ出身のバンドによる'79年発表のデビュー・アルバム(邦題は「殺戮のチェーン・ソー」)。 後にSCORPIONSに次ぐ代表的なジャーマン・メタル・バンドとなる彼らであるが、このデビュー・アルバムはサウンドもチープで楽曲もあか抜けていない。 しかし、ウドのカミソリ・ヴォーカルやウルフのギター・メロディといったバンドの個性は、その片鱗を垣間見せてはいる。 キャッチーなギター・リフの「LADY YOU」、メロディに叙情性が伺える「TIRED OF ME」、疾走感のある正統・メタルチューン「FREE ME NOW」、ウリ・ロートのような官能的なギター・ソロを聴かせる「GLAD TO BE ALONE」、ギター・リフがなかなか個性的な「HELLDRIVER」等の佳曲もあるが,熱心なファンでなければ必聴盤ではないだろう。 「SEAWINDS」でヴォーカルをとっているのはピーター・バルテス。