元ALICE COOPER BANDのキップ・ウィンガー(Vo,B)、ポール・テイラー(Key)、名手レブ・ビーチ(G)、元DIXIE DREGSのロッド・モーゲンステイン(Ds)の4人のテクニシャンにより結成されたバンドの'88年発表のデビュー・アルバム。 RATTで有名なボー・ヒルによるプロデュースで、アルバムは全米21を記録するヒットとなった。 確かなテクニックに裏打ちされた演奏とポップで近未来的なサウンドが魅力で、ゾクゾクさせるイントロが掴みOKなオープニング・ナンバー「MADALAINE」、哀愁に満ちたメロディが秀逸な「HUNGRY」、ポップながらもレブのテクニカルなギターが光る「SEVENTEEN」、'80年代を代表する感動的な名バラード「WITHOUT THE NIGHT」、ジミ・ヘンの超有名曲を大胆にカヴァーした「PURPLE HAZE」、スペーシーなサウンドが印象的な「STATE OF EMERGENCY」、ダイナミックかつメロディアスな「TIME TO SURRENDER」、軽快な疾走ナンバー「POISON ANGEL」、イントロのギターと独特のテンポが魅力的な「HANGIN ON」、キップの熱い歌唱が素晴らしい「HEADED FOR A HEARTBREAK」、バックに流れるギターがかっこいい日本版ボーナス・トラックの「HIGHER AND HIGHER」と、ヒットも納得の1枚だ。
'79年2月の2度目の来日公演の模様を収録した同年発表のライヴ・アルバム。 本作よりプロデュースをトム・アロムが手がけている。 当初、「PRIEST IN THE EAST」のタイトルで日本のみでリリースされる予定であったが、その出来の良さからワールド・ワイドでのリリースとなり、DEEP PURPLEの「LIVE IN JAPAN」やSCORPIONSの「TOKYO TAPES」等と並ぶ来日ライヴ・アルバムの代表作となった。 実際にはロブがホテルの空調で喉を傷めて本調子ではなかったため、後にヴォーカル・パートを差し替えているのだが、ライブの臨場感は全く損なわれていない。 各曲ともスタジオ版をはるかに凌駕する破壊力と疾走感を伴ったパフォーマンスで、これを聴いたら二度とスタジオ版を聴く気がしなくなってしまうほど(聴くけどね)。 あまりにもアグレッシヴでハイ・テンションな「EXCITER」を是非とも多くの人に堪能してもらいたい。 初期の彼らのベスト・アルバムとしての意味合いも持っているので初心者にもうってつけ。 ファンならずともマスト・バイな必聴盤である。
前作「STAINED CLASS」と同年の'78年に発表された5th(邦題は「殺人機械」)。 欧米でのオリジナル・タイトルは「HELL BENT FOR LEATHER」。 プロデュースも前作に引き続きジェイムス・ガスリーが担当。 華麗な様式美サウンドは更に薄れ、ロブの歌唱も低・中低音域に重きを置いたものになるなど、非常に漢臭さ・力強さを感じさせる作品になっている。 バンドが後にヘヴィ・メタル・ファッションの代名詞となるレザー&スタッドの衣装に身を包んだのもこのころだ。 スピード・チューン、ヘヴィ・チューン、ロックン・ロール調、美しいバラード等、楽曲がバラエティに富んでいるのも本作の特徴であり、繰り出されるギター・リフがあまりにも個性的で秀逸な「DELIVERING THE GOODS」、ライヴでも定番となっている正統的疾走チューン「HELL BENT FOR LEATHER」、終盤のシンガロングがライヴで大合唱となるFLEETWOOD MACのカヴァー「THE GREEN MANALISHI(WITH THE TWO-PRONGED CROWN)」、単調ながらも疾走感のあるギター・リフがかっこいい「RUNNING WILD」、美しさと儚さを兼ね備えた名バラード「BEFORE THE DAWN」といった名曲を始め、軽快なロックン・ロール・タイプの「ROCK FOREVER」、キャッチーでメロディアスな「EVENING STAR」、PRIEST版「WE WILL ROCK YOU」といった趣きの「TAKE ON THE WORLD」、ヘヴィかつグルーヴィな「BURNIN'UP」、ヘヴィなギター・リフを持つタイトル曲「KILLING MACHINE」、破壊的なリズムの「EVIL FANTASIES」といった好ナンバーを収録。 ミステリアスなアルバム・ジャケットもかっこいい。 リマスター盤にはボーナス・トラックとして「ROCK HARD RIDE FREE」の原型である「FIGHT FOR YOUR LIFE」とライヴ版「RIDING ON THE WIND」が追加されている。
伝統的ハード・ロックからヘヴィ・メタルへの移行期にあった'78年発表の4th。 プロデューサーはデニス・マッケイ(一部、ジェームス・ガスリー)。 新ドラマーとしてレス・ビンクスが加入。 このアルバムの強みは、のちのスラッシュ・メタル勢にも多大な影響を与えることとなった激烈疾走チューン「EXCITER」とヘヴィなリフと泣きのギター・ソロによる美しくドラマティックな曲展開を繰り広げる「BEYOND THE REALMS OF DEATH」といったヘヴィ・メタル史に残る2大名曲が収録されていることで、これら2曲の存在が本作を名盤足らしめるものになっている。 高いキーで歌われるロブの歌唱が秀逸なアップ・テンポ・ナンバー「WHITE HEAT, RED HOT」、哀愁を感じさせるSPOOKY TOOTHの秀逸なカヴァー「BETTER BY YOU, BETTER THAN ME」、次々に繰り出されるギター・リフがかっこよいタイトル・チューン「STAINED CLASS」、シンコペーションの利いた軽快なドラミングを聴かせる「INVADER」、ブリティッシュな薫り漂うヘヴィ・チューン「SAINTS IN HELL」、ロブがPRIEST史上屈指のハイ・トーンを聴かせる「SAVAGE」、あまりにも不気味なギター・リフを持った「HEROES END」といった曲も素晴らしい。 よりモダンになったバンドのロゴ・マークや近未来的なアルバム・ジャケットも秀逸である。 リマスター盤のボーナス・トラックには重厚な美しさを持つ「FIRE BURNS BELOW」とライヴ版「BETTER BY YOU, BETTER THAN ME」が追加されている。
メジャー・レーベルであるCBSに移籍後の'77年に発表された3rd(邦題は「背信の門」)。 アラン・ムーア(ds)が脱退し、特別出演名義ながらデビッド・カヴァデールやジャック・ブルースとも共演した名手サイモン・フィリップスが参加している。 プロデューサーは元DEEP PURPLEのロジャー・グローヴァー。 前作「SAD WINGS OF DESTINY」を踏襲した作風で、まだまだヘヴィ・メタルというよりは様式美テイスト溢れるハード・ロックといった趣きだ。 アルバムのオープニングにふさわしいかっこいいギター・リフを持った「SINNER」、フォーク・シンガー、ジョーン・バエズの曲の秀逸なカヴァー「DIAMONDS AND RUST」といった代表曲を筆頭に、歌メロがキャッチーな「STARBREAKER」、PRIEST史上で最も甘いバラード「LAST ROSE OF SUMMER」、スピーディーかつメロディアスな正に隠れた名曲と呼ぶにふさわしい「LET US PREY/CALL FOR THE PRIEST」、グルーブ感溢れるヘヴィ・チューン「RAW DEAL」、ロブのハイ・トーンとディープ・ヴォイスとの使い分けが見事なパワー・バラード「HERE COME THE TEARS」、ロブの狂気じみたスクリーム凄まじくミステリアスな「DISSIDENT AGGRESSOR」と、捨て曲は見当たらないが、若干オーバー・プロデュース気味なのが残念。 リマスター盤にはボーナス・トラックとして、英国のGUNのカヴァー「RACE WITH THE DEVIL」とライヴ版「JAWBREAKER」を収録。 アルバム・ジャケットがミステリアスでありつつも美しい。
前作「REBIRTH」の成功によって以前と変わらぬ実力と音楽性を備えていることを世間に知らしめた新生ANGRAが、真の意味でファンを惹きつけることのできるバンドであるかを世に問うたのが作品であり、個人的にもアルバムを聴くまで期待と不安を抱いていた。 しかし、彼らはそんなプレッシャーをもはねのけ、バンドの最高傑作といっても過言ではない名作を作り上げた。 '04年に発表された本作は、11世紀ヨーロッパにおける十字軍のエルサレム遠征をテーマにしたコンセプト・アルバムである。 プロデューサーは前作に引き続きPINK CREAM 69のデニス・ワードであるが、音の分厚さがこれまでになく増しており、情報量の多いアルバムとなっている。 バンドの演奏テクニックは相変わらず素晴らしく、前作ではやや線が細く感じられたエドゥのヴォーカルも押し引きを覚えた素晴らしい歌唱を聴かせてくれる。 神秘的なメロディの「DEUS LE VOLT!」からスピーディなメロディック・パワー・メタル史に残る超名曲「SPREAD YOUR FIRE」への完璧な流れを始め、スリリングなギター・リフと激しいツー・バスを聴かせる「ANGELS AND DEMONS」、勇ましくも愁いを帯びたメロディの「WAITING SILENCE」、爽快感のある美しさを持ったバラード「WISHING WELL」、GAMMA RAYのカイ・ハンセンとのツイン・ヴォーカルによるANGRA史上最も速い超激走チューン「THE TEMPLE OF HATE」、目まぐるしく展開するプログレッシヴ大曲「THE SHADOW HANTER」、エドゥの伸びやかな歌唱が素晴らしい「NO PAIN FOR THE DEAD」、BLIND GUARDIANのハンズィ・キアシュが参加した、エッジの利いたヘヴィ・チューン「WINDS OF DESTINATION」、民族音楽的なオリエンタル・ムードを放つ「SPROUTS OF TIME」、おそろしくテクニカルで流麗なギター・プレイが聴ける「MORNING STAR」、グラミー賞受賞経験もあるブラジル人アーティスト、ミルトン・ナシメントが素晴らしい歌唱を聴かせる「LATE REDEMPTION」、これまでの楽曲をオーケストレーションで綴るエンディング曲「GATE XIII」と、素晴らしい楽曲がアルバムをよりドラマティックなものにしている。 常にアルバム全体として楽しみたいコンセプト・アルバムの名盤。
ルネッサンス時代の再来を願う想いを架空の国「ホーリー・ランド」に見立てた'96年発表のコンセプト・アルバムとなる2nd。 プロデューサーは、前作に引き続いてチャーリー・バウアーファイントとサシャ・ピート。 ドラマーがマルコ・アントゥネスからリカルド・コンフェッソーリに変わっている。 本作では、デビュー・アルバムで垣間見えた母国ブラジルのラテン・リズムや民族楽器の導入を前面に押し出すとともに、バンドのもう一つの特徴であるクラシカル・メロディと融合させており、2ndアルバムにして早くもこのバンドでなければ作りえない個性的なサウンドを生み出すことに成功している。 島への漂着を思わせるようなサウンドのイントロ「CROSSING」、エッジの利いたギター・リフがかっこいい「NOTHING TO SAY」、静と動との対比が美しくドラマティックな「SILENCE AND DISTANCE」、トライバルなブラジリアン・リズムからメロディアスなスピード・メタルへの転調が素晴らしい「CAROLINA Ⅳ」、まるでワールド・ミュージックのような「HOLY LAND」といったアルバム前半の流れが絶品。 アルバム後半も、ミステリアスなイントロの「THE SHAMAN」、マトスの伸びやかな歌唱が心に染みる「MAKE BELIEVE」、愁いのあるメロディが美しい「DEEP BLUE」、おそろしく陰鬱な気分にさせる「LULLABY FOR LUCIFER」と好曲が続くが、前半の充実ぶりと比較すると、やや興奮の度合いは落ちる。 その中でもスリリングなハイ・スピード・ナンバー「Z.I.T.O.」は、1st収録の「CARRY ON」の路線を踏襲する名曲。 バンドが結成されてから最初に作曲したというボーナス・トラック「QUEEN OF THE NIGHT」もなかなかかっこいいリフを持ったナンバーだ。 結局、このアルバムを気に入るかどうかのポイントは、ブラジリアン・リズムの大胆な導入を是と取るか否と取るかにあると思うが、個人的にはこの試みは大歓迎である。