デンマーク出身の5人編成のバンドによる'89年発表の3rd。 プロデューサーはMETALLICAを手掛けたフレミング・ラズムッセン。 METALLICAにも似た理路整然としたリフ・ワーク、目まぐるしい曲展開、マイケルとモルテンのスタッツァー兄弟によるツイン・ギターが奏でる中近東風のメロディ、フレミング・ロンズドルフのパワフルなヴォーカルがこのバンドの大きな特徴であり、そのサウンドはインテレクチュアル・スラッシュやパワー・メタルと呼ぶに相応しい。 中近東風メロディを奏でるオープニング・インスト「7:00 FROM TASHKENT」、フレミングがパワフルかつ伸びやかなヴォーカルを聴かせる「BENEATH THE CLAY (R.I.P)」、緻密かつ複雑なリフを持つタイトル曲「BY INHERITANCE」、イントロとアウトロのツイン・ギターのメロディが素晴らしい「BOMB FOOD」、静と動とがドラマティックに展開する「DON'T BELIEVE」、アルバムにおいて最もアグレッションに満ちた「LIFE IN BONDAGE」、独特なリフとメロディを持つ「EQUAL AT FIRST」、NAZARETHの名曲の秀逸なカヴァー「RAZAMANAZ」、次々とリフが繰り出される「BACK IN THE TRASH」と、テクニカルな演奏裏打ちされた楽曲はいずれもなかなかのものである。 歌詞の問題から日本盤からは削除されてしまったが、劇的なオープニングとダイナミックな曲展開を誇る「KHOMANIAC」は一聴の価値あり。
結果的にジョーイ・ベラドナ(Vo)が在籍しての最後のスタジオ・アルバム(企画盤を除く。)となってしまった `90年発表の5th。 プロデューサーは前作に引き続きマーク・ドッドソンを、ミックスにはMETALLICAやTESLA等を手掛けた敏腕スティーヴ・トンプソン&マイケル・バービエロを迎えている。 前作「STATE OF EUOHORIA」は、アメリカ社会の抱える問題に焦点を当てた歌詞の影響もあってか非常に暗いサウンドのアルバムであったが、「時」をテーマにした本作においても、歌詞のメッセージ性は相変わらずであるし、サウンドもこれまで以上にヘヴィであるものの、リフやメロディにかつてのキャッチーさが戻ってきたのが大きな特徴。 時計のチクタク音のイントロで始まるヘヴィなオープニング曲「TIME」、トライバルなリズムで始まるメロディアスな「BLOOD」、あまりにもヘヴィなギター・リフの「KEEP IT IN THE FAMILY」、これまたメロディアスな部類に入る本作屈指の名曲「IN MY WORLD」、メロディアスなベース・リフを奏でるインスト曲「INTRO TO REALITY」、グルーヴ感に満ちたヴォーカル・メロディ主導の「BELLY OF THE BEAST」、ジョー・ジャクソンの代表曲のハイ・テンションなカヴァー「GOT THE TIME」といったナンバーは文句なしに素晴らしいし、リズム隊による重く暗いプレイが圧巻の「GRIDLOCK」、パンキッシュなギター・リフの「H8 RED」、BLACK SABBATH直系の引き摺るような重さのイントロで始まる「ONE MAN STANDS」、スコットがヴォーカルを取るDISCHARGEのカヴァー「PROTEST SND SURVIVE」、ハード・コアな「DISCHARGE」といったバンドのルーツを露にした楽曲も悪くはないが、ジョーイの歌唱力を活かしたサウンドからは遠ざかったままであったと言える。
著しい進歩を見せ付けるとともに、バンドのオリジナリティ確率にも成功した'90年発表の3rd。 プロデューサーは前作に引き続きカレ・トラップが担当。 ヒロイック・ファンタジーからの影響が顕著なメロディをスピーディーに聴かせるスタイルはこれまでと同様であるが、本作ではメロディの質が格段に向上し、どの曲でもシンガロング・パート満載の好盤に仕上がった。 中世ファンタジー的なギター・メロディと勇壮なコーラスを聴かせる名曲「TRAVELER IN TIME」、爆発力のあるコーラスが壮大な「WELCOME TO DYING」、スリリングなギターを聴かせるインスト曲「WEIRD DREAMS」、有名小説「指輪物語」を題材にした美しいバラード「LORD OF THE RINGS」、迫力あるバック・コーラスを聴かせる「GOODBYE MY FRIEND」、アルバムの中でも1,2を争うメロディアスなコーラスを聴かせる「LOST IN THE TWILIGHT HALL」、ギター・メロディが風変わりな「TOMMYKNOCKERS」、ハンズィが美しい歌唱を聴かせる異色曲「ALTAIR 4」、「GUARDIAN OF THE BLIND!」のコーラスを始めとする歌メロが抜群に格好いい「THE LAST CANDLE」と、収録曲の全てが格好よく、個人的には彼らの中で一番好きな作品が本作である。 元HELLOWEEN~GAMMA RAYのカイ・ハンセンがヴォーカルとギターでゲスト参加。 ボーナス・トラックとして1st収録の「RUN FOR THE NIGHT」のライヴ・ヴァージョンを収録。
言わずと知れたIRON MAIDENのヴォーカリストであるブルース・ディッキンソンが'90年に発表した1stソロ作。 プロデューサーはクリス・タンガリーディスが、ミックスはナイジェル・グリーンが担当。 本作発表後にエイドリアン・スミスの後釜としてIRON MAIDENに加入することとなる元WHITESPIRIT~GILLANのヤニック・ガーズ(G)、若手ブリティッシュ・バンドJAGGED EDGEのファビオ・デル・リオ(Dr)らがバックを固めている。 IRON MAIDEN加入当初はバンドの音楽性に合わないと散々叩かれた歌い手であるから本ソロ作品のようなオーソドックスなHR/HMがはまらないはずがなく、伸びやかで力強い己の特性を活かした歌唱を聴かせてくれている。 明るくキャッチーなメロディのタイトル曲「TATTOED MILLIONAIRE」、コーラスにおけるシンガロングが一聴して耳に残る「DIVE! DIVE! DIVE!」、スリリングなオープニングが格好いい「NO LIES」といった好曲を始め、静から動への展開がドラマティックなオープニング曲「SON OF A GUN」、優しげな歌唱が印象的な「BORN IN 58」、ビッグなリフとキャッチーなコーラスが魅力の「HELL ON WHEELS」、MOTT THE HOOPLEの有名曲のカヴァー「ALL THE YOUNG DUDES」、陽気な歌唱を聴かせる「ZULULULU」といった曲も悪くない。 IRON MAIDENの「NO PRAYER FOR THE DYING」や「FEAR OF THE DARK」といった作品作りに引き継がれていった部分が間違いなく本作にはある。
オリジナル・メンバーで発表した前作「LAP OF LUXURY」でシーン最前線への復帰を果たしたバンドが'90年に放った13th。 プロデューサーはHEART等を手掛けた売れっ子のリッチー・ズィトー。 作曲陣にKIX等にも関わったテイラー・ローズ&ロバート・ホワイト・ジョンソン、FOREIGNERのミック・ジョーンズ、ヒット・メイカーのダイアン・ウォーレンを迎え、ゲスト・ミュージシャンとしてミック・ジョーンズ、PRITENDERSのクリッシー・ハインド、ロイ・ウッド、WHITE LIONのマイク・トランプが参加した豪華盤。 アリーナ・ロック的なオープニング曲「BACK'N BLUE」、軽快なテンポが心地よく、バック・コーラスとの掛け合いも絶妙な「I CAN'T UNDERSTAND IT」、数々のヒット曲を手掛けてきたダイアン・ウォーレン作曲による美しいバラード「WHEREVER WOULD I BE」、哀愁のメロディを聴かせる「IF YOU NEED ME」、ロッド・スチュアートも惚れ込んだポップなリーダー・トラック「CAN'T STOP FALLIN' INTO LOVE」、ハード・ロッキングなタイトル曲「BUSTED」までの流れはほぼ完璧。 クリッシー・ハインドの怪しげな歌唱が魅惑的な「WALK AWAY」、'80年代ポップス的な「YOU DRIVE, I'LL STEER」、切ないメロディを伴うバラード「WHEN YOU NEED SOMEONE」、BEATLESを想起させるメロディの「HAD TO MAKE YOU MINE」、バンドの出自を誇示するかのようなロック・チューン「ROCK'N ROLL TONIGHT」も悪くない。 日本盤ボーナス・トラックとしてDEF LEPPARDの「POUR SOME SUGAR ON ME」的な「BIG BANG」を収録。 いかにも売れ線狙い的な作りが鼻に付くかも知れないが、良質の楽曲群の存在がそれを補って余りある。
HELLOWEEN系ジャーマン・メタル・バンドによる'90年発表のデビュー・アルバム(邦題は「ルイ14世」)。 プロデューサーにHELLOWEENやGAMMA RAY等を手掛けたトミー・ハンセンを迎えている。 バンドの演奏はまだまだ未熟で、ヒステリックに叫ぶヴォーカルが時折耳障りに感じる場面もあるし、疾走感を伴ってクサいメロディを聴かせる手法もHELLOWEENのフォロワーの域を抜け出すまでには至っていないものの、将来性を強く感じさせるバンドであった。 現代の「メロスピ」を思わせる「PHARAO」、サビの歌メロとギター・ソロがメロディアスな「10,000 MILES」、牧歌的な歌メロを奏でるドラマティックなタイトル曲「LOUIS XⅣ」、ヘヴィかつファストな「GODS OF NOISE」、イントロのツイン・ギターによるメロディが格好いい「YOU AND I」、正統的HMチューンの「ANGEL」、フラメンコのようなイントロを聴かせる「SHOOT THE FOX」といった楽曲は、練り不足との感は否めないもののなかなかの出来であるし、何よりもヘヴィネス・スピード・メロディの三要素を兼ね備えたジャーマン・メタル史上に残る超名曲「POWER AND GLORY」を収録しているのが本作の強みであり、この1曲を聴くためだけにこのアルバムを入手する価値はあると言っても過言ではない。
ドブロやマンドリン、サックス、ピアノといった楽器をふんだんに使用し、前作で見られたブルーズ懐古主義を更に強く推し進めた'90年発表の3rd。 アメリカの大地に根差したかのような土着色の強いサウンドはHR/HMファンには受け入れにくいかもしれないが、個人的には彼らが本物のロックン・ロールを聴かせることのできるバンドであることをはっきりと再認識させられた好アルバムである。 バンドの華やかな色彩を感じさせる御機嫌なオープニング曲「THE MORE THINGS CHANGE」、ブルーズの渋さとロックン・ロールの華やかさが同居したリーダー・トラック「SHELTER ME」、悲哀を感じさせる切ないメロディのバラード「HEARTBREAK STATION」、スリリングなギター・リフを持つ「LOVE GONE BAD」を始め、ファンキーな「LOVE'S GOT ME DOIN' TIME」、女声コーラスがいかした「SICK FOR THE CURE」、カントリー・ソングと言える「ONE FOR ROCK AND ROLL」、呪術的な雰囲気漂う「DEAD MAN'S ROAD」、軽快なテンポを刻む「MAKE YOU OWN WAY」、BEATLESの「COME TOGETHER」を彷彿させる「ELECTRIC LOVE」、トムの優しげな歌唱が印象的な「WIND OF CHANGE」といった楽曲は、地味ではあるが聴けば聴くほどに味が出る。