注目のレーベル、Les Acteurs De L’Ombreよりの発売という事で興味を持った一枚。最初の導入部を聴いた限りでは、陰鬱なフォーク要素やスラッジめいた引き摺りリフで暗黒な世界観を演出しつつ、レーベルメイトのPARAMNESIAやTHE GREAT OLD ONES、REGARDE LES HOMME TOMBRE辺りと共通する、邪悪なアトモスフェリック・ブラックを聴かせてくれるんだろうな…と、アルバムの展開に思いを馳せていましたが…半分は当たり、半分は外れという感じですね。
ヴォーカルも例によって自然に回帰した人間の遠吠えのような絶叫ですし、WOLVES IN THE THRONEROOMを始めとしたカスカディアン・自然崇拝系ブラック好きにもお勧めできそう。そもそもメンバーがWODENSTHRONE絡みですね。ただし時折音割れ風の音色のノイジーさのある音作りに若干の癖があるのと、キーボードインスト部分がやや長く、気分でないときは若干冗長に感じるかも。
公式にはメンバーについて言及されていないものの、実はALGHAZANTH、CIRCLE OF OUROBOROUS、HORNAなど、フィンランドでも著名なブラックメタルバンドのメンバーが参加しているバンドなのだとか。音の方も、その面子のハクに負けない、「プリミティブブラックとしての」クオリティの高さを持つ作品ですね。
ブラックメタル特有のトレモロリフとノイジーな音質、スケールの大きな展開で聴かせる、いわゆるアトモスフェリック・ブラックやポストブラック路線の音ですが、クリーンヴォーカルは排されていたりなど、過剰なメロウさは抑えられている傾向で、ブラックの持つ本質的なダークさが前面に押し出されている辺り、「White Tomb」「Mammal」期のALTAR OF PLAGUESなどにも通じる音ですね。サタニックというよりはエスカティック(終末的)というか、どこか荒廃した情景が浮かんでくるような音。
結成の経緯が経緯だけに、「The Past is like a Holocaust」との歌詞は色々考えてしまいますが…そういう勘繰りをされることも承知で詞を書いてる気がします。そのフレーズの絶叫と、意外なまでに流れのしっかりした歌メロに、メリハリがあってかなりの良曲。アルバム内でも1、2を争うほど印象深い曲ですね。
2005年発表の音源集。 98年のデモ「Ring to Rune」、2000年のデモ「Winter of Tragedies Reign」をまとめ、リマスターを施したもの。
このバンド、BEHEXENやSARGEISTを始め、HORNAやMORTUALIA、FINNENTUMなど数多くのバンドに関与し、NIGHTBRINGERやDROWING THE LIGHTなど知名度の高いバンドにも関わっていた、フィニッシュ・ブラックの裏番長的存在ともいえるShatraug氏が正式メンバーのペイガンブラック…という触れ込みですが…そんなハクの付いた出自とは裏腹に、余りにも渋いというか…ぶっちゃけ地味な作風です(笑)。
元はMOONREICHやREGARDE LES HOMME TOMBRE、PARAMNESIA、DELUGEなど良質なバンドを抱え、最近大注目のレーベル「Les Acteurs de L’Ombre Productions」より発売されてますが、なんとその翌年日本のレーベル、Maa Productionsからもリリースされてますね。これだけでも注目度の高さが伺えますが、日本盤は約1500円で安いのも嬉しい(笑)。
路線としてはREGARDE LES HOMME TOMBREやTHE GREAT OLD ONESなど、Les Actuers L’Ombre勢なんかが好きな人は気に入りそう…と思いますが、こちらの方がより人を寄せ付けない感じ。そういえば、最新作は未聴ですが、Season of Mistからのリリースだとか。何気に出世頭のバンドなのかもしれません。
ヴォーカルのクリーンも溜息を付くような嘆き節で、雰囲気を壊すことがなく良い感じ…なのですが、個人的には鬱ブラックのある意味での「粗さ」「衝動性」が、エレクトロでアーバンな雰囲気作りの足を引っ張ってしまっている印象も受けますね…。ULVERの「Perdition City」やSTAR OF ASHの作品なんかが顕著ですが、この手のエレクトロ路線の作風は音のレイヤーが丁寧に重ねられて陶酔できる雰囲気を演出することが多いですが、その傾向がプロダクションの粗さと少しぶつかっている感じがするんですよね。
ノルウェー・ドイツの混合メンバーからなるシンフォニック・ブラックメタルバンドで、MAYHEMその他のHellhammer氏がドラムを務める…という事と、日本盤が出てたこともあって購入。シンフォブラックの王道をDIMMU BORGIRやCRADLE OF FILTH辺りとすると、そこからは若干路線を異にする作風の音ですね。
…なんというかこのバンド、感性的に幼いころからゲーム音楽の派手でキャッチーなメロディに慣れ親しみ、V系を始めとした分かりやすい攻撃性のかっこよさのあるバンド音楽を聴いて育った、私たちくらいの世代に直撃なものがあるんですよね。音圧の高いギターや暴れるドラムもそうだし、ゲーム音楽に通じるメロディがそこかしこに出てくるのも熱い。「Suite Museum」のジャジーなパートのメロディは艦これの夜戦の曲でしたっけ?に似てるし、「Last Melody」は紅魔郷の頃の東方+ACID BLACK CHERRYっぽい。
…驚いたのは、何と言っても楽曲が凄く良いんですよね。どの曲も歌メロが、アイドル系のポップスと比較しても何ら劣らないくらいにキャッチー。むしろそのキャッチネスが、メタル者特有の大仰な感性でブーストされている分、より魅力は高いかもしれません。初めてこのアルバムを聴いた時はまず歌メロの良さに目を瞠ったものです。「Rising!」「ExBrave」のキャッチネス、「scar」「君に恋した春桜」の叙情性、「I am You」の演奏との鬩ぎ合い…どれも魅力的なのは前提として、「キャラが立ってる」感じ。
一言で言えば、「Sworn to the Dark」期くらいまでのWATAINや、FUNERAL MISTを思わせるような、ジャンルとして成熟してきてからのブラックの王道…という感じの、邪悪さを追求するような路線の音ですね。コシのある…と表現したくなるような野太いデスボイス、邪悪なだけでなく宗教的な神秘性も感じさせるトレモロなど、表現のレベルは間違いなく高いと思います。
まずヴォーカル…単に絶叫するだけでなく、呻いたりして精神のタガが外れたようなパフォーマンスも壮絶ですが、それにリバーブが掛かりまくるので最早訳の分からないことに。音質もノイジーさがあるだけでなく、エフェクト的な音も混ぜて更にぶっ壊れた感覚をブーストさせてますね。個人的には、KATHARSISの「VVorld VVithout End」やLEVIATHANの「Massive Conspiracy Against All Life」辺りのアルバムを想起させるようなカルト性を感じます。