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Usher-to-the-ETHERさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 1001-1100

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SCHRAT - Schattenwahn ★★★ (2012-10-10 20:50:08)

2011年発表の2nd。
韓国のMisanthropic Artより発売。

作風は、メロブラの中でもジャーマン系と北欧系の両方の特性が感じられるような音ですね。氷の礫が吹き付けてくるような、ザラついたリフの音色、常に薄くメロウな雰囲気を醸し出しつつも、ここぞという所で印象的な泣きメロが炸裂するスタイルは、NEGATORやGRAUPEL辺りのジャーマンブラックに近い感じですが、時折現れる、スラッシーなリズムに哀愁の篭もった、キャッチーなメロが乗るパートはTAAKEやGORGOROTH辺りの、正統派メタルが根底にあるであろうタイプの北欧古参ブラックの影響も感じられたり。

その辺りの名の知れたブラックを比較対象に挙げたくなるほどメロディのセンスは良く、特に3曲目では、FUNERAL MISTの楽曲に出てきそうな宗教色の強いメロディも出てくるなど、単にメロウなだけではない邪悪さも感じさせてくれます。ヴォーカルも肺胞の一つ一つに溜まった邪悪の気を一気に吐き散らすかのような、憎々しげな高音絶叫スタイルですが、何気に呪詛系の呻き声も使っていたり、実は表現力がある声だと思う。

このバンドも大量のフォロワーを生んだりするような個性を持っているわけではないんですが、メロブラとして堅実に良い作品を作ってると思います。古参バンドを一通り聴いて、このジャンルにどっぷり嵌まる覚悟が決まった人ならば確実に楽しめる作品かと。もちろん、変にマニアックな所もなく純粋に高品質なメロブラなので、初心者が古参バンドすっ飛ばして聴いたとしてもしっかり魅力が伝わると思います。


GNOME - SILENT SCREAM ★★★ (2012-10-10 20:46:55)

2012にZero Dimensional Recordsから発売された音源集。
90年代半ばから後半にかけて活動したバンドですが、その時の音源を集めたもの。
2枚組限定盤にはメンバーのアンビエントプロジェクト「Human Soul」の音源も収録。

これは結構驚きましたね…90年代半ばの時点で、日本にこういうブラックメタルを演ってる事にびっくり。柔らかくも不気味で、妖気漂うようなシンセに包まれ展開するブラックメタルに、BURZUM系の裏返り気味の悲痛絶叫の絡むスタイルで、今でいう鬱ブラックとアトモスフェリックブラックを足したような感じなんですが…それだけでは終わらない個性も感じられる音。

近年の鬱ブラックやアトモスフェリックブラックと比べると、まだストレートでオールドスクールなブラックメタルをある程度踏襲しているような感じで、時折リフやリズムに躍動感のようなものを感じたりするんですよね。同様にメロディも雰囲気のあるだけでない、明瞭なものが多く、特に6曲目のベースとユニゾンするトレモロリフのメロディには、悶絶し感銘を受けてしまいました…。この気持ち悪さと哀愁の同居する、毒に満ちたムードが堪らないです。

この手のバンドって、アルバムを通して雰囲気を統一させることが多いですが、音源集という性格もあってか、1曲ごとに異なる表情を見せる構成も特徴的ですね。ちなみに本編でのメロディアスさ、メロディセンスの良さからアンビエントの方にもかなり期待をしていましたが…正直こっちはマニアック過ぎてキツい(苦笑)。FenrizやIldjarnのやってたアンビエントと比べるとちょっとカルト趣味過ぎるかも…。はっきり言って私には受け入れがたい音でした。


ISKALD ★★ (2012-10-08 08:21:36)

ノルウェー産ブラックメタルバンド。
バンド名はノルウェー語で「氷の如く冷たい(ice-cold)」の意。


ISKALD - The Sun I Carried Alone ★★★ (2012-10-08 08:19:35)

2011年発表の3rd。

ISKALDはこれしか聴いてないんですが、何気に大名盤なんじゃないでしょうか…少なくとも、メロディックブラックというサブジャンルの中で、代表格のバンドと上位の座を争えるだけのクオリティは持っていると思います。流石に質の高いブラックの作品をリリースし続けるIndie Recordingsから出てるだけのことはあります。

音は、端的に言ってしまえば「Isa」期のENSLAVEDをメロブラ化した感じ…なんですが、まず当時のENSLAVEDを思わせる音の作り方自体が素晴らしい。メタルとしてのマッシブさをしっかり伝え、その骨太さがどこかスピリチュアルにも感じられる力強い音質ですが、決してオーバープロデュースでやかましいだけになる事はなく、繊細さも残してくれている音作り。トレモロを前面に出したパートやツーバス連打のパートなんて甘美過ぎてそれだけで悶絶。

そして楽曲自体も当然の如く素晴らしい。
ファストブラック等と比べると全体的なスピードこそ抑え目なものの、左右ギターの絡みによる変幻自在なリフ中心で展開していく曲作りは非常にドラマティック。暴雨の中櫂を漕ぐかの如き力強さの刻みリフの中、バンド名同様の冷たさや、エピックな悲哀の篭もったトレモロが炸裂するギターワークが本当にかっこいい。本当に、聴いてるだけでうっとりとなれます。

これ、初心者から上級者まで、メロディアスなブラックメタルが嫌いでないならば、決して買って損はない作品だと思う。メタルとしてハイクオリティで、かつ作品の端々からブラックメタルバンドとしての矜持が滲み出てくるようなアルバム。個人的にはメロブラが好きであれば必ず押さえておいて頂きたい作品です。


BENIGHTED LEAMS - Ferly Cestesms (2012-10-06 20:52:05)

2004年発表の3rd。

メンバーであるAlex氏の経歴は非常に輝かしいものですが…その輝かしさからは想像も付かないほどのマニアックな路線のブラック。メロディやスピードなどにあかせた分かりやすい展開は極力排し、ジリジリとしたギターとそれに同期するようなドラムが圧迫感・絶望感を醸し出すような音。アンビエントブラックにも通じる暗い耳触り、思想を懇々と説くような語りも楽曲のカルト性を助長。

鬱ブラックのような感情の迸り、アトモスフェリックブラックのような情景の広がりすらなく、ひたすらに陰鬱な音像が続く感じで、「真にマイナスの音楽」というものがあるなら、こういう音なんじゃないかな…とすら思わせる暗さ。正直、無愛想にも程があると思う音なので、ブラック初心者には無用の長物だと思う。はっきり言って私もここまでマニアックだと付いていけないかも(笑)。

ここまで来ると、あとはAlex氏の感性と共鳴するものがあるかどうか、という感じがしてしまいますね。かなり聴き手を選ぶ作風なので、ジャンルの熱心なファンにのみ推薦。


BENIGHTED LEAMS ★★ (2012-10-06 20:50:42)

アメリカ産独りブラック。
唯一のメンバーであるAlex Kurtagic氏は、LUNAR AURORAやTHE MEADS OF ASPHODELを始め多くのブラック関係のリリースで知られるレーベル、Supernal Musicのオーナーであり、DIMMU BORGIRやTORMENTORのカヴァーアートを担当した経験を持ち、更には作家や編集者としての顔を持つ才人。


ALTAR THE SKY - Plight of the Vomit Eagle ★★ (2012-10-06 11:07:05)

2004年発表の1st。

カオティックでダークなメロディを紡ぎ上げるトレモロ、テクニカルデスのバンドがやりそうな、引っ掛かりのあるリフ、デスメタル的なうねりを伴う刻みなどを適宜交えながら展開していくブラックで、独りブラック故にか音質がカルト方面にもメジャー方面にも行ききれてないせいで多少チープな印象を受けるのは否めないんですが、リフやメロディのセンスなどは悪くなく、低い知名度の割にはかなり歯ごたえのある音を出していると思います。特に動きの多いリフがかっこいい。

しかし、何と言っても一番のウリはヴォーカルの、鋭く噛み千切るような絶叫でしょう。個人的にこの人の声、かなりツボなんですよね。喉が引き千切れんばかりに歪んだ、潰れまくった高音絶叫で、かのManiac氏を髣髴とさせます。MAYHEMでいうと、Grand Declaration~期とChimera期の中間くらいのパフォーマンスだと思う。ただ、絶叫がこんなにかっこいいんだし、微妙なクリーンは正直なくてもよかったような…。

但し、現在バンドが存続しているのかも分からない上に、レーベルが閉鎖しているので新品での入手は難しくなってるかもしれません。デス寄りブラックが好みならば聴いておいて損はないと思いますので、見かけたら是非。


KHONSU - ANOMALIA ★★★ (2012-10-06 06:30:51)

2012年発表の1st。

メンバーやスタッフがKEEP OF KALESSIN絡みのバンドですが…特に「Armada」以降のKOKの影響が顕著ながらも、しっかり差別化されている作風ですね。スラッシュ由来の、刻みを多用したダイナミックで動きの多いリフ捌きを用いた、メタルとして非常に質の高い演奏はKOKに通じるものがありますが、こちらはKOKのように完全にリフ主導の曲作りではなく、3rd以降のARCTURUSを思わせるシアトリカルな展開も多いのが特徴。

サイバーなキーボードや透き通った音色のピアノ、クリーンも用いたヴォーカルワークなどを駆使した、宇宙的な世界観の演出はKOKに通じる動的でかっこいいリフ捌きにより、更にドラマティックなものに。Thebon氏のヴォーカルも、KOKで聴かせたような熱いダミ声がなりだけでなく、不気味さを演出する呪詛系なども用いていて、表現の幅を広げている感じ。ただ中途半端にイケメンなクリーンヴォーカルは正直個人的には微妙。ARCTURUSの3rd、4thと比べると変態度低いのが物足りない…かも。

そういう訳でKEEP OF KALESSINとは明らかに異なる路線を行く音ではあるんですが、そこかしこにKOKの影が感じられるのも興味深いんですよね。「Inhuman States」のファストに絶頂に上り詰めるような、スラッシーなリフ捌きはKOK好きなら確実にグッと来るだろうし、全体的なバンドサウンドの音作り自体がかなり似てると思う。この歪みに頼り過ぎない、フレーズをしっかり聴かす事を念頭に置いたようなギターの音作り、KOK共々かなり好きですね。

かなりKOKを引き合いに出す箇所の多い文章を書いてしまいましたが、純粋にメタルとしてクオリティの高い音で、宇宙的な世界観も独特のものですのでKOK知らない方にも普通にお勧め。KOKもそうなんですが、ブラックのメタルの価値観を度外視したようなカルト主義が肌に合わないメタラーにもお勧めできるバンドです。


KHONSU ★★ (2012-10-06 06:29:49)

ノルウェー産ブラックメタルバンド。
中心人物のS. Gronbech氏はKEEP OF KALESSINのメンバーであり、1stアルバムでもギターを弾いているObsidian C氏の兄弟。またKOKのThebon氏も正式メンバーと、メンバーの多くがKEEP OF KALESSIN絡みで構成されるバンド。先日Season of Mistより1枚目のアルバムをリリースしました。


ASTRAL SILENCE ★★ (2012-10-04 00:15:04)

スイス産スペースアンビエントブラック。
BORGNEのライブメンバーであるQuaoar氏によるプロジェクト。


ASTRAL SILENCE - Astral Journey (2012-10-04 00:11:50)

2010年発表の1st。

ブックレットの特殊なインクを使って凹凸を出したアートワークや、CD盤面の無音部分に施された宇宙風の意匠など、アイテムとしてもこだわりが見える造りの作品ですね…。
作風は、アンビエントパートやミニマルなブラックメタルパートを交互に聴かせ、宇宙的な情景を描くような音で、端的に言ってDARKSPACE系の音なんですが…あちらよりももう少しマニア対象な感じ。

ノイジーなギターとアトモスフェリックなキーボードが混じり、質量のある宇宙を展開する音や、神の座から宇宙に語りかけるかのようにも聴こえるヴォーカルなど、ムードとして徹底してはいるんですが…ミニマルな要素が強く、一応ギターやキーのメロディがある程度はあるんですが、展開としては星や銀河の配列が少しずつ変わったりとか、その程度の変化があるくらいで、基本宇宙が広がってる情景自体は変わらない感じ。アンビエントパートも(DARKTHRONEの)Fenrizのソロを引き伸ばした感じのミニマルさだし。

DARKSPACEよりも良くも悪くもマニアックな音なんですよね。やりすぎてて普遍性を欠いてるというか。個人的には嫌いじゃないんですが、流石に気分じゃないときは聴けない音だと思ったり。


REGNUM - Regnum ★★ (2012-10-03 17:40:26)

2005年発表の8曲入りEP。
スウェーデンのTotal Holocaustより発売。
演奏時間も30分近くあるので、実質的にはフルアルバム並のボリューム。

定義上、どうしても同じような音になってしまいがちな鬱ブラックですが、このバンドはかなり独特な視点を持って鬱ブラックを解釈してるようですね。とぼとぼと歩くようなテンポのリズムに妖しく眠りに誘うような、妙にクリアなベース、BURZUMの4thを思わせる、しかしもっと弱々しい音色のノイジーなリフ、ノイズ塗れで素の声がほぼ分からない絶叫が絡むスタイル。この手には珍しく、リフはトレモロではなく、平坦にノイズを重ねるようなものがメイン。

鬱ブラックって強烈なマイナスの感情が感じられるものが多いんですが、これは感情を全て吐きつくして抜け殻になってしまったかのような音。ギターの弱々しい音色といいやる気のないテンポといい、聴いているだけで体中から覇気を奪われていくような感じで、鬱ブラック耐性ない人には最早毒にしかなりえない作品でしょう。妙にメロディアスなベースも「もういい。早く休め」と言わんばかりに聴こえてしまいます。

メタルに本来求められるような派手さやエモーショナルさはないですが、テンションがシンクロしたならばかなり安らかになれそうな一枚。自殺一歩手前というよりも餓死一歩手前の無気力サウンド。ラテン語で王国を意味するバンド名からは想像の付かないような音です。


GRAND BELIAL'S KEY - Mocking the Philantrophist ★★★ (2012-10-03 17:37:37)

97年発表の1st。

これはかっこいいですね。
一聴すると、アングラ臭を隠そうともしない、生々しく泥臭いようなリフの音色に、吐き捨てるような低音がなりヴォーカルが乗る、ウォーブラックのような音なんですが…ウォーブラック的な荒さをしっかり感じさせつつも、メロディアスな哀愁であったり、ドラマティックな展開があったり、正統派メタルを通過しているような、メタリックな感性…それもメロデスのような洗練されたものではなく、もっと古臭くアングラなものが備わっている感じのする音。

一見するとその二つって相性が良いようには思えないんですが、アングラでオールドスクールなメタルの素養を感じさせる演奏であったり、時々クサメロの領域に入りかけるメロディアスさであったりが、意外にも汚い音質による生々しい演奏によって更なる魅力を引き出されているんですよね。時に牙を剥く、ウォーブラック的な自棄な攻撃性も、メタル本来の持つドラマ性をより強化している感じ。…まあ、単に私がこの泥臭い音作りがツボなだけというのも否定はしませんが(笑)。

これはブラックのアングラな音質に抵抗がないなら是非とも聴いておいてほしい一枚ですね。とにかくかっこいい。その一言に尽きます。


SUNWHEEL - Industry of Death ★★★ (2012-10-02 21:32:18)

2010年発表の1st。

耳に痛い音ではないものの、音像を覆うようなノイジーさのギターリフと、アトモスフェリックで澱んだ感じの音色の、厚みのあるキーボードが交じり合い、終末的な雰囲気を漂わせるシンフォニック・ブラック。良く聴くとギターリフなどにはメタリックであったり、メロディアスな部分も多いものの、この手のジャンルの中でもかなり重苦しいムードを醸し出している音だと思う。

常にどす黒い雲が垂れ込めている感じの音作りに呼応するかのように、ヴォーカルもこの手にありがちなハイピッチ絶叫ではなく、何かを威圧するかのようなデスメタル的な低音咆哮を聴かせるタイプ。食い縛った歯の隙間から憎悪や怨嗟が漏れ出しているような、感情の篭もった声。このバンドは以前Swastyka(鉤十字)を名乗っていたことからも分かるとおり、NS的な思想を持っているようですが、この人を寄せ付けない雰囲気はそういった思想に由来するのかもしれません。

シンフォブラックらしいメロディアスさ、質の高さはあるものの、同時にカルトな雰囲気もしっかり感じさせてくれるアルバム。シンフォ系としては33分と演奏時間は短いものの、個人的にこの雰囲気の濃さはかなり好きですね。


BRISEN - MADRE TENEBRA (2012-10-01 22:34:56)

2009年発表の5曲入りEP。
なんかバンド名がセンブリ茶っぽい(笑)

奇数曲がホラー系のインスト、偶数曲がブラックメタル曲の構成。
何気にキャリアの長いバンドで、96年にフルアルバムをリリースして以来の作品となるらしいですが…オールドスクールな感触とバンドの標榜するオカルトなムードを上手く両立させた、良い作品だと思います。

2曲目は針の筵を転げまわるような、スラッシーなパートが印象的な曲、4曲目はロック的なミッドテンポに妖しい語りが乗る儀式めいた曲。どちらも薄暗いメロディ、喉を絞めたようなキイキイ系ヴォーカルが入り、なかなか独特な雰囲気を持ってますね。1曲目、3曲目のインストも妖しいムード満点で、悪くないと思う。

ただ、ブラック曲はどちらも4分に満たない曲で、ラストのインストがあまり変化のない4分を超える楽曲という構成はちょっと不満かも。いくらEPとはいえ、少しブラック部分が短過ぎるような。


FORMLOFF - Spyhorelandet ★★ (2012-09-28 20:18:22)

2012年発表の2nd。

疾走パートも適度に交えつつ、聴き手をはぐらかすようなグニャグニャしたパートや、神秘的な音色のギター、キーボード、クリーンヴォーカル等を用いて妖しくカルトなムードを演出するパートなどを挟み、悪夢が広がるかのような病んだ世界観を演出するアヴァンギャルド・ブラック。何気にメロディアスなリフも多いんですが、そのメロディにもフレンチブラックに通じる病的で美しい感触があり、作品を聴きやすくフックのあるものにするだけでなく、更に壊れた雰囲気を増しているような感じがします。

こういう、病的でぶっ壊れた世界観を持ってはいるんだけど、しっかり印象深いメロディがあって、展開自体も作りこまれている…カルトさとクオリティを上手く両立させつつ、個性的でもあるブラックってツボではあるんですが…敢えて不満を挙げるならヴォーカルに暴力性が足りないことでしょうか。声の歪みの強さや、啜り泣き等も交える演技力はまあいいんですが…個人的にはもうちょっとストレートな凶悪さが欲しい所。ちょっと駄々っ子っぽく聴こえちゃう時も。

VED BUENS ENDEを始めとした病気で前衛的なブラックや、フランス産のメロディアスなプリミティブブラックに共感を覚える方にお勧め。毒の効いたメロディと世界観が良い感じですよ。


HORDE OF HEL - LIKDAGG ★★★ (2012-09-28 20:16:53)

2011年発表の2nd。

…一体何なんだこの変わりようは(笑)。
まず前作で不満だった音の小ささ、弱々しさは完全に解消…どころか、これ音圧で言ったらブルータルブラックと変わりないんじゃ…というくらい爆音に。音の圧力が増し、KRIEGやBLOOD OF KINGU辺りにも通じる殺気を感じる音作りに。まるで人の何倍もある、邪悪なガーゴイルの像が鎮座ましましているかのような圧迫感。

音作りの変化と共に作風もかなり変わり、アンビエントパートもありつつも、それはあくまで補助的な使われ方で、基本はバンドサウンドの凶悪さを直接ぶつけてくるような、ある程度ストレートなものになってはいますが…やはりどこか狂気染みたグロテスクさを感じるのは相変わらず。トレモロリフが邪悪なメロディを奏でる箇所なんて、ガーゴイル像から吸っただけで内腑を腐食させる、有害の波動が放出されているような、破壊的なまでの不気味さを感じますし。

…個人的にはこっちの路線の方が好みではあるんですが、ここまで変わってしまうとMoribundからRegainに移籍して、レコード会社の意向が入ったんじゃないかと邪な勘繰りをしてしまったり(笑)。まあ、こんなマニアックな音楽性を持っているバンドが外的要因にそうそう音楽性を左右されたりしなそうですけどね。


SUMRAK (СУМРАК) - LITANIES OF HATRED (ЛИТАНИИ НЕНАВИСТИ) ★★★ (2012-09-28 00:27:22)

2004年発表の1st。500枚限定。
DARKTHRONEの「Natassja In Eternal Sleep」カヴァーを収録。

邪気と寒気を帯びたトレモロリフを纏った疾走というプリミティブ・ブラックの本懐はしっかりかっこよく聴かせつつ、呪術的なクリーンヴォーカルやアコースティックギターを用いたメロウなパート、聴き手の邪性を呼び覚ますようなスネアの打ち鳴らしなど、展開やフレーズにプリブラとしてはかなり意匠を凝らしたような作風。生々しく、地下臭さを隠そうともしない音作りではありますが、RAWなメロディックブラックとしても聴けそうなドラマティックさ。

ただし、一般的なメタラーにも受けそうなタイプのメロブラと比べると、邪悪さや陰湿さは段違い。特に時に単音で、時に左右のチャンネルの絡みで聴かせるギターのメロディが毒々しくて素晴らしい。疾走パートでは毒を撒き散らしながら駆け抜け、ミッドテンポのパートでは遅効性の毒が体を蝕んでいるような、マイナスの魅力を纏った印象を持たせつつも、メロウさも効いている本当に良いメロディだと思う。

ひたすら邪悪なS.R.氏の楽曲、アコギ等を巧く使いエピック性を演出するDemiurg氏の楽曲と、コンポーザー二人の曲調が微妙に異なるのも、またアルバムを劇的なものにしていると思う。また、淡々としたデスボイスが左右から響いてくるような、ヴォーカルのパフォーマンスやミックスも非常に効果的で、位相のずれた世界から悪魔が語りかけてくるかのような邪悪さが演出されてますね。

ただ、ちょっと微妙だと思ったのが、アーティスト写真。ここまで邪悪さを感じさせる作風なのに、二刀の剣を重そうに持って、鎖帷子着込んでるとか…(笑)。なんか生活観が妙に滲み出てきてしまってる感じが…(笑)。まあペイガンっぽくてDemiurg氏のアコギを使った作風には合ってるのかもしれませんけど。ともあれ、メロウなプリブラ好きには大推薦のアルバムです。


LITROSIS - I Am Death ★★ (2012-09-28 00:22:21)

2012年発表の1st。

UNHOLY RITUALのメンバーの関わる、ギリシャ産ブラックメタルバンドのデビュー作…とのことでしたが、これはメロデス的を通り越して正統派メタル的な魅力すら感じる、シンフォブラックでもメタリックな作風の作品ですね。時折リフに込められたメロディがイギリスの正統派メタルっぽい湿り気を帯びていたり、シンフォブラックとしてはかなりギターソロに力を入れていたり、ブラックの邪悪さこそ薄いものの、美点・力点はそこではなく、正統なメタルの魅力に置かれている感じ。

しかし、ブラックメタルとしての苛烈さ・シンフォメタルとしての大仰さはしっかり備えていて、ファストブラックを普段聴いていても目を瞠るようなブラスト、ブラックらしい冷気を感じるトレモロ、ヴァイキングメタルに通じる、壮大な物語の始まりを感じさせるようなエピックなメロディが、正統派メタル的なドラマ性と上手く絡み、更に劇的なものとなって完成している感じ。個人的には、ヴォーカルの声がIhsahnとちょっと似てるのもポイント高いです。

まあ、メディアがCD-Rだからなのかちょっと音質が平べったい感じだったり、一曲ハードロック的な熱の篭もったクリーンで歌い上げる曲まであるのはちょっとやりすぎに感じたりなどはしますが、基本的には楽曲のクオリティ自体は非常に高いと思う。関連バンドのUNHOLY RITUALもそうでしたが、メロディのセンスが良く、それを引き立てる術を知っているような作風が素晴らしい。


THY CATAFALQUE - Rengeteg ★★ (2012-09-23 11:03:28)

2011年発表の5th。

ARCTURUSファンにお勧めという事でブラック関連の棚に陳列されていたのを発見、興味を持って購入した次第なんですが…確かにこれはARCTURUS、それも2nd以降のブラックをある程度離れ、プログレ/アヴァンギャルドメタル化してからのARCTURUSに近い路線で期待通りの音。…というかこれ、ARCTURUSの文脈がなかったら、多分ブラックの棚に陳列されてない作品だと思う。

音的には男女クリーンヴォーカルや、インダストリアル風味から派手めなオーケストラ、妖艶なプログレメタル風など多岐に渡る音色を使い、浮遊感を演出するキーボードを交えた、妖しく幻想的な作風。個人的には高音はSimen似、中音域はGarm似のクリーンヴォーカルの声質にはかなり惹かれるものがあります。正直SimenやGarm程歌唱力高いとは思わないけど、歌い方や声は凄く好み。

アヴァンギャルドメタルにありがちな即興めいたウネウネ感は少なく、むしろリフ捌きなんかはARCTURUSよりもメタルの泥臭さが強いと思う。ARCTURUSの4thがスペースオペラならこっちは惑星探査って感じ。アルバム構成も聴き手を飽きさせないようドラマ性を持たせてある感じで、中盤の古代文明を発見したかのようなエスニックな雰囲気や、ラスト付近のそのまま宇宙に消失しそうな勢いの疾走などは個人的に聴き所だと思う。

ヴォーカルやチェロなどにゲストを招いているものの、基本的にTamas氏一人のプロジェクトだそうですが、一人バンドにありがちな薄っぺらさはなく、しっかりクオリティの高いプログレメタルを聴かせてくれます。音は大分違いますが、CYNICの世界観が好きな人なんかにもアピールできる作品なのでは。


FROZEN DEATH - RAVENSTORM ★★★ (2012-09-22 03:22:40)

2003年発表の1st。
元は自主制作盤でしたが、Midwinterから2000年発表のデモ音源「Winter Domain」を付けて再発されています。

で、内容なんですが、これがかなり素晴らしくてびっくり。
寒々しいメロディをトレモロリフ全開で奏でながら疾走するメロディック・ブラック。トレモロリフの頻度はメロブラでもかなり高めの方ながら、左右のギターでリフの絡みがあったり猛然と刻むパートを設けたり、ブラックメタル、ひいてはヘヴィメタルの範囲から逸脱しない、ストレートなかっこよさも強い音。

個人的な印象としては、DARK FUNERALやNAGLFAR辺りを、もう少しマイルドにしてトレモロ頻度を高めた路線という感じ。ただし音作りはそれらバンドと比べて大分チープで、プリミティブ寄りなんですが…ノイジーで刺々しい方向ではなく、篭もって丸いプロダクションになっており、前述のバンドよりも攻撃性が低い音になっている分、純粋にメロディの良さを楽しめる作りになってると思う。

寒々しくメロウなメロディとトレモロリフという、メロブラ王道の組み合わせながらメロディ自体が素晴らしく、聴いていてうっとり出来る好盤。デモ音源の方も更にチープな音作りながら同路線でやはりかっこいい。Midwinter盤は500枚限定だそうですが、この優れた内容で500枚は少ないと思う。ただ、せっかく良いバンドを見つけたと思ったら、既に解散してるみたいなのが残念…。


NORTHDARK - Toward the Emptiness ★★ (2012-09-22 03:19:03)

2007年発表の1st。

この作品、様式自体はプリミティブブラックのそれを踏襲してる感じなんですが、メロディの使い方がカオスでカルトで非常にかっこいいです。メロ自体は正統派メタルのかっこよさ、もしくはペイガンの勇壮さを感じさせるものなんですが…疾走パートではそれを早回しして剃刀の嵐に叩き込まれるかのような、かなりイカれた感じになっていて非常に邪悪。スピーカーで聴くとコンポに悪霊が憑依したようにも聴こえる。

また、ヴォーカルも悲痛というか、怨念篭もってる感じで良いですね。割れまくりの、怨嗟と怒気を多分に孕んだ怒鳴り声。いわゆる怒号系ですが、野太いだけでなく、負の感情がたっぷり入っている感じが素晴らしい。プリミティブ系としては割と展開を重視した作風なんですが、イカれた部分と叙情的でかっこいい部分が適度にあって、カルトながらカルトすぎて自己満足にならない、マニア向け音楽としての質の高さがありますね。

怒りや恨みに満ちた精神状態を、そのまま音楽にパッケージして届けたような作品。剥き出しの邪悪さに、この手の音楽が好きであればきっと共感できるはず。


NORTHDARK ★★ (2012-09-22 03:18:09)

ロシア産ブラックメタルバンド。
これまでに4枚のアルバムをリリースしていますが、中心人物のD氏が自殺で亡くなったため、バンドは解散してしまった模様。


FOG - Through the Eyes of Night...Winged They Come ★★★ (2012-09-19 10:47:19)

2001年発表の1st。
ジャケ裏には7曲しか書かれていませんが、短いイントロとやけに長いアウトロを含むので、実際のトラック数は9。

…関連バンドのHORDES OF LUNAR EQLIPSEが割と良かったので、こちらも購入しましたが…予想以上に素晴らしいアルバムでびっくり。スタイルとしては、寒々しいトレモロや猛然とした疾走を交えつつ、緩急付けて展開する、オーソドックスなブラックメタルで、楽曲がやや長尺なことを除けば、特に衒いのある音ではないんですが…これが非常にかっこいい。

まずオーバープロダクションでもなく、ラフ過ぎて聴きづらいわけでもない、適度に湿り気と生々しさのある音作りが素晴らしく、その音でのブラストがホント気持ち良い。安心して音の渦に切り刻まれる感じ。圧倒的なのに、変に耳に痛くない音圧が最高です。加えて、ごくたまに現われる、正統派メタルにありそうなフレーズも良いフックになってると思う。

また、メロディのセンスそれ自体も素晴らしく、特に4曲目や5曲目などで聴けるトレモロリフなんて、ブラックメタルの代表曲と言われる曲のそれと比べても、全く差し支えないんじゃないかと思えるくらいにツボを突いてる。実に寒々しくて邪悪でかっこよすぎです。…この作品、あと少しジャンルの初見リスナーにも優しい分かりやすさがあったら、普通に「初心者が聴くべきアルバムn選」みたいな企画で選ばれてもおかしくないと思う。

このプリミティブにもオールドスクールにも寄りすぎていず、かつ両方の魅力をある程度備えているような音、本当に素晴らしいと思う。SATYRICONの「Nemesis Divina」アルバムに通じるドラマティックさですが、こちらの方がもっとラフでカオスな感じ。バンドは2ndアルバムの制作に着手していたものの、メンバーが抜けて解散してしまったようですが…ホント惜しすぎる…。


PLASMA POOL - Drowning ★★ (2012-09-19 10:40:37)

97年発表の、おそらく2nd。

Attila Csiharが参加していた事でも有名なバンドですが、音楽性はメタルとは少し距離を置いてる感じなんですね。打ち込みのリズムにシンセやサンプリング、Attilaのヴォーカルが乗り進行していくインダストリアルで、ギターこそ入っていないものの、アトモスフェリックなシンセが醸し出す近未来的だけど破滅的な雰囲気は、ABORYMなどのサイバー系ブラックに確実に通じるものがあると思う。厭人的、厭世的なムードが如何にもブラック人脈っぽい感じ。

そしてAttilaのヴォーカルは相変わらず人外ですね。
彼のトレードマークと言える低音で呪詛を唱えるような、ドスの効いた唸り声ももちろん聴けますが、ホイッスル気味の高音でキイキイ喚いてみせたり、低音で妖しく語るような声を聴かせたり、やはりこの手のヴォーカルの中でも抜群に表現力に長けている感じ。ダンサブルなリズムに合わせたノリの良いヴォーカルラインもあって、単に邪悪なだけではないパフォーマンスを聴かせてくれます。

Attilaが参加している割には意外とネット上に日本語のレビューが少ない気がするんですが、やはりこのギターが入ってない、純粋なエレクトロな音がメタラー受け悪いんでしょうか…。ブラックに共通するムードはありますし、ULVERの「Metamorphose EP」「Themes from~」やSAMAELの「Era One」辺りの音源を楽しめた方であれば、何の問題もなく受け入れられると思う。


ISARNHEIMR - Isarnheimr ★★ (2012-09-19 10:36:14)

2006年発表の1st。
割とマイナーなバンドですが、これは意外にいいですね。

シンプルでミニマルな2ビート中心の疾走と、ドゥーミーに引きずり込むようなスローパートを軸に展開していく、如何にもなプリミティブブラックですが…疾走パートにおける、宗教的な恍惚感を引き起こすような神秘的なトレモロ、スローパートにおける聴き手を幻惑するような酩酊感、不協的な生理に訴える気色悪さの篭もったメロディなど、何気にリフのフレーズのセンスが良いんですよね。

ただ、SILENCERや初期BURZUMを、ちょっとヘナチョコにした感じのヴォーカルは頂けないかも…。常に情けなく裏返る寸前みたいな声で、メロディのスケールの大きさと今ひとつ噛み合っていない感じが…。時々殺気が上手く声に乗ってるような時もあって、ピンポイントでかっこよさを感じる時は割と多いんですが…。個人的な好みとしては、もうちょっと声の歪みが強い方がいいかな…と思ったり。

ジャンル愛好家以外が無理して買う必要はない作品だとは思いますが、プリブラ好きにとっては聴くべきところも多く、悪くないアルバムだと思う。前述したフレーズの良さとか、ラストの後味の悪さとか、所々で発揮される邪悪な感性が良い感じです。


FOREST - Forest ★★ (2012-09-19 10:32:32)

96年発表の1st。
複数のレーベルから何度も再発されているアルバムらしいですね。
私が持っているのは2002年に出たISO666盤。

ロシアのペイガンブラックではかなり名の知れた存在のようですが、これは渋い(笑)。渋いプリミティブと渋いペイガンを掛け合わせたら、激シブのブラックが完成した感じ。オーソドックスなプリブラにペイガン系土着メロとクリーン朗唱を加えた感じですが、3部作期のDARKTHRONE以上にリフのメロディはシンプルだし、クリーンも歌い上げるというよりは呟く感じで、語弊を恐れずに言えば地味な音だと思う。

とは言っても、流石何度も再発されているだけあって、音作りは(プリブラとして)完成されてると思う。このリフの歪ませ方が実に心地良く、ある意味癒されます(笑)。何気に4曲目のラストなんかではかなりメロウなメロディも聴けますし、全体的に控えめながらしっかりした叙情性が感じられるのも良いですね。正直新規のジャンルファンは見込めなさそうだけど、プリブラの魅力が分かってる人には一聴で伝わる音だと思います。

ちなみに、私の買ったISO666盤にはボーナスで94年録音のリハーサルテープ収録の「Winter Howl」という、20分の大作が収録されていますが…これがほぼ別バンドみたいな音源でびっくり。マンドリンのようにも聴こえるトレモロやアルペジオ、獣の吼え声のSEなどを取り入れた、バンド名通りの森林系アトモスフェリックブラック。日も差さない森の奥で、ブラックメタルという名の儀式を執り行っているかのような、非常にカルトなムードが演出されていて素晴らしい。


POCCOLUS - Ragana ★★ (2012-09-16 22:24:36)

94年発表の1st。
2009年に96年のライブ2曲を追加、リマスターして再発されました。

NAHASHをレビューしたときも似たようなこと書いた気がしますが…PERGALEやSVARTTHRONを始め、リトアニアのブラックってどこか病的というか、グロテスクな感性を持っているバンドが多いという印象なんですが…このバンドも例に漏れず、黎明期の時点でこんなマニアックなブラックのスタイルを演ってたバンドがいる事に驚きを覚えるような、独自路線のペイガンブラックを演ってますね。

ペイガン系って、少なからず儀式的なムードを持つバンドが多いんですが、この作品はそのレベルを通り越して、ブラックメタルの様式を借りた儀式音楽という感じ。宇宙交信系の奥行きと澱みを演出するようなシンセ・アンビエントを背景にRAWなブラックを展開しているような音で、バンドによる音も土着的というには余りに不気味。悪魔を喚び出すような詠唱とそれに取り付かれたような絶叫を使い分けるヴォーカルも雰囲気に合ってますね。ライブ曲ではSILENCER系キチ絶叫もあり。

演奏や音像の粗さこそあるものの、NEGURA BUNGETを数段マニアックにしてプログレ筋受けを期待できなくしたような感じの、独特の世界観はマニアにはたまらないのでは。再発されたのも頷ける、「濃い」音を出してるバンドだと思います。


KOSA (КОСА) - EVILABSORPTION (ЗЛОПОГЛОЩЕНИЕ) ★★★ (2012-09-16 22:20:14)

2007年発表の1st。

ウクライナ産のペイガンブラックという紹介でしたが、基本的にはプリミティブブラックの様式を踏襲した作風で、リフに民族テイストのメロディで味付けをした感じですね。一曲目を聴いてまずドラムの音の篭もり具合に面食らいますが、アルバムが進むと大分マシになってきます(笑)。この打ち込みっぽい微妙なドラムのシンプルな2ビートを軸にトレモロの叙情的なメロディで攻めていく訳ですが、このメロディが実は凄く良い。

うっすらメロウなメロディ…というよりは、メロディのメロウ度自体はかなり高く、それが地下臭い音像に薄く被さっていく感じですね。時折このメロディを前面に出して、展開にドラマ性を持たせてくれますが…そのパートではどこかフレンチブラックめいた病的な耽美さも感じられ、それがウクライナらしい土着性と相俟って恐ろしいまでの邪悪さを感じさせてくれます。個人的には、MALICIOUS SECRETSに通じる霊的なムードを感じたりも。

ミニマルではあるものの、正直無味乾燥にも聴こえるリズムセクションや、苦しそうに踏ん張るようなヴォーカルなど、まだ微妙な部分はありますが、この病的で霊的なメロディを含蓄したトレモロリフはかなり素晴らしいと思う。メロディ派のプリミティブブラックファンは是非。ちなみにCDのタイトルやアーティスト名が探しにくいという方は、CDケースの逆側の背を確認してみてください。英語版のバンド名・アーティスト名が書かれてます。


THE ARRIVAL OF SATAN - Vexing Verses ★★★ (2012-09-16 00:18:43)

2009年発表の2nd。
今にも自傷に走りそうなモノトーンジャケもヤバいですが、中身はジャケ以上に激ヤバな代物ですよ、これ…。

まず1曲目を聴いた時点で圧倒されるのが、殺意すら感じる音圧。ノイジーなギターリフも轟音といって差し支えないんですが、ドラムの演奏終わったらドラムセット一台オシャカになってるんじゃないかと思うようなカチコミブチ切れシバキ倒しっぷりが半端じゃないです。このドラミングが主軸となったやたらやかましい爆音は、プリブラのシャーシャー系ともウォーブラックのボロボロ系とも違ったRAWさがあって、辛口ながらも非常にかっこいい。

…と、まずはその殺気溢れる出音に圧倒されるんですが、よく聴くとリフの質感も独特。意識の底の底まで冷えるような、黒い光を放つうねりが込められているような感触で、一般的なプリブラのトレモロリフやオールドスクールなリフとは明らかに違う感じ。むしろ波動を感じるような音色のリフということで、テイストとしては音響ドゥームに近いのかも。ファストパートのインパクトが凄まじいですが、実はミッドテンポのパートにもそれなりに時間が割かれてますが、そのパートもリフの独特さや音作りでかなり魅力的に聞こえる。

また、ヴォーカルもブラックメタルのジャンルでも常軌を逸したキチっぷりで素晴らしい。タイトル曲の捲くし立てとか絶叫なんて、バイオハザードとかでウイルスに冒されてゾンビ化する人間が壊れていく理性に怯えながら叫んでいるかのような切羽詰った狂気を感じるし、7曲目のラストの息を切らしながらの叫びは聴いているこっちの息が詰まるほど。正直このヴォーカルのパフォーマンスだけで★3つ付けてもいいくらい。

「何かに圧倒されたい」という動機で、ブラックメタルを聴くことに手を出したような方にはまさにうってつけな作品。同郷のバンドではANTAEUSやAOSOTHなどが好みの方にもお勧め。こっちの方がもっとマニア向けですけど。


VERMETH - Suicide Or Be Killed! ★★ (2012-09-16 00:12:26)

2008年発表の2nd。

MUTIILATIONやVLAD TEPESを輩出した事で知られる、フランスのブラックメタルサークルLes Legions Noires(The Black Legions)に属するバンドとして有名なVERMETHですが…他の関連バンドとは少し違う路線の作風ですね。特にMUTIILATIONを始め、LLN絡みのバンドって病的でRAWな作風が多い印象ですが、この作品から感じられるのは病的さよりもストレートな怒り。流石ブックレットに激しい言葉でポーザー連中やブートレグ等に対して激しい言葉で非難してるだけはあります(笑)。

作風的にはRAWで荒々しい、オールドスクールなブラックなんですが…RAWさが篭もった感触ではなく、ノイジーな轟音となって表われているのが特徴ですね。ベースが何気に音量大きめで、リフの荒々しさと相俟ってうねるように怒りを叩きつけるような音に。最早怒気を通り越した殺気、悪意を通り越した殺意を直に叩きつけるかのような凄まじさで、ヴォーカルの余りの怒りにベルセルクと化したかのような、野太い怒号も非常にかっこいい。

これ、近年の作品ながらLLN関連のリリースでも衝動に満ちた作品だと思う。確かにノイジーな轟音は聴きやすいとは言えませんが、激しい感情や衝動の篭もった音楽が好きであれば何かしら感じるところはあると思う。ただカルトなだけの作品ではないと思います。


KRAKE - CONQUERING DEATH ★★★ (2012-09-15 09:52:52)

2012年発表の1st。

ショップの紹介でも、デビューアルバムにして完成度の非常に高いアルバムをリリースしたシンフォニック・ブラックメタルバンドが現れたと話題になっていましたが、確かにこれはクオリティ高いですね。流石ENSLAVEDやKEEP OF KALESSINの作品のリリースでも知られる大手レーベル、Indie Recordingが目を付けるだけあって、プロダクションやメロディの良さ、楽曲構成力などメジャークラスと比肩しうる質の高さのある作品だと思います。

この手の同系統のバンド…1st期のABIGAIL WILLIAMS辺りなどと比較すると、刻み中心の厚みのあるギターワークはドラマティックながらもメロディアス度はやや控えめ、加えてキーボードが楽曲を包み込むような、冷たくアトモスフェリックな音色を多用するため、どこか冷厳で神秘的な印象。ヴォーカルのデス声にも、なんだか厳かな感情が篭もっているように感じられてなりません。

最近出たハイクオリティなシンフォニック・ブラックの作品としてAPOSTASYの「Nuclear Messiah」がありますが、あちらがメロデス的な細やかなギターワークとメロディでドラマ性を演出していたのに対し、こちらは悠然と構えるようなスケールの大きい音で聴き手を迎えるような世界観を演出しており、良い意味で対照的だと思う。クサメロ重視の方にはAPOSTASYの方がお勧めなんですが、こちらはメタルとしての完成度と冷厳なアトモスフェリックを両立させており、ムード重視のブラックが好みの方にお勧め。


GRIGORI ★★ (2012-09-14 00:28:55)

ニュージーランド産独りブラック。
かなり宗教色強めなカルトなサウンド。


GRIGORI - Principivm et finis ★★★ (2012-09-14 00:28:09)

2009年発表の、ブックレットの香りが素晴らしい1st。
ULVERの「Blood Inside」もこんな匂いでしたね。

英古語やラテン語のフレーズをまぶして宗教色を演出するブックレットや、イントロから邪悪に響く聖歌SEなど、どこか3rd以降のDEATHSPELL OMEGAから世界観的な影響を受けているような感じを受けますが…こちらの方がもっとプリミティブ寄りで、ストレートな音ですね。ドゥーミーに引き摺るギターや聖歌、オルガンやキーボード等を組み合わせたSE的パートを挿入し、宗教じみた厳かなムードを醸し出しつつ進行するアルバム構成が特色。

この引き摺るようなギターはブラックメタル部分にも使われており、まるで邪悪な気を集める磁場がどす黒い音塊の中にあるかのような、圧迫感すら与える音像を演出してますね。加えて宗教的な厳かさが逆説的にブラック特有の邪悪さに繋がるような、神秘的かつ畏怖を感じさせるメロディの使い方も相俟って、根深いカルトさが感じられる仕上がりに。一部では初期DISSECTIONを思わせるようなアコースティックギターのフレーズも聴け、バンドのセンスの高さを知らしめてくれます。

ただ、確かに素晴らしいアルバムなんですが、ブラックメタルパートが本当に良いだけに、SE的なパートがちょっと長過ぎる気はするんですよね…イントロは音飛びっぽいノイズまで入ってるし。正直ちょっと勿体付け過ぎな構成という気も。とは言っても、余裕で★3つ付けますけど。宗教じみたカルト性をブラックに求めている方なら聴いておいて損はないバンドかと。ちなみに発売元はABSOLUTE OF MALIGNTYやARKHA SVAのリリースで知られるSatanic Propagandaで、その繋がりで知った方にもお勧め。


VALHOM - Despair ★★★ (2012-09-13 23:32:03)

2007年発表の3rd。

このバンドって確かアメリカのブラックでしたよね?パッと聴いた感じ、北欧もしくはドイツ産っぽい雰囲気のある作風ですね。トレモロリフと疾走を組み合わせた展開で寒々しさを演出する音はちょっと昔のノルウェー産ブラックっぽいし、氷の礫を連想させる粗いリフにうっすらメロウなメロディを滲ませ、時折明瞭なメロディのフレーズが出てくるところなんかはジャーマンっぽいと思う。その良いとこ取りをしてドラマティックに仕上げた感じで、あまりアメリカっぽい印象はないですね。

メロウさ、妖艶さを強調するアトモスフェリックなキーボードの導入、メタリックになりすぎない=アトモスフェリックさを壊さない程度に用いられる刻みリフなど、各要素の取り入れ方がセンスいい感じで、北欧やドイツのブラックが好きならば安心して聴いていられる音。敢えて欠点を探すとするなら、ドラムの音が無味乾燥(打ち込み説あり)で、触りだけ聴くとB級ブラックっぽく聞こえるかもしれない点でしょうか。と言っても、曲は悪くなく十分良盤だと思いますが。

あまり話題に上らないですけど、堅実に良いアルバムだと思います。ただ、結成以降メンバーの増減はありつつ、コンスタントに作品を発表していたけど現在は解散しているみたいなのが勿体ないですね…。この堅実さが安心して聴けるのに…。


HORDES OF THE LUNAR ECLIPSE - Dancing Demons in the Grey-Lit Glade ★★ (2012-09-13 23:28:04)

2003年発表の1st。

バンド名は日本語に訳すると「月蝕の徒」みたいな感じでしょうか。どことなくシンフォニックだったり、オカルティックだったりするものを想像する名前ですが…実際は弾幕系とでも称したくなるような、衝動性溢れる荒々しいブラック。音量やや小さめ、しかし手数が多くRAWなドラミングが粗いギターリフと一体になって出来る、砲撃が次々に着弾するかのような音はWARブラックにも通じるダーティな聴き心地がありますね。

しかしそのRAWな音から漏れ聞こえてくるメロディは、バンド名から想起されるような、青い燐光が仄かに煌くようなオカルト性・ロマン性のあるものでなかなか素晴らしい。特にメロディアスさが強調された6曲目などは、彼らのメロディセンスが堪能できる好例と言えるでしょう。曲によっては弦楽器も導入し、エピックな展開を見せるなど、衝動性だけではない構築性もある楽曲展開も見所ですね。

知名度的にも割とマイナー物件だし、作風自体確かに全くメジャーっぽさはないんですけど、この粗い音が聴き心地がいいのは確か。メロディの聴かせ方も悪くないですし、マニアな方にはお勧めです。


SUPREMACY - Satanic Reich ★★★ (2012-09-10 23:14:16)

2003年発表の1st。
特価品コーナーからサルベージしてきたんですけど、これ、そんな扱いを受けるには余りにも不遇な名盤だと思います。もう一聴で邪悪さがビシビシ伝わってきますもん。

作風は、一言で言うなら「プリミティブブラックの要素を強化したFUNERAL MIST」。ヴォーカルこそシンプルなものの、リフが放つ宗教的な邪悪さ、禍々しさはかなり共通していると思う。ただしこちらの方がもっとRAWで粗い音作りだったり、リズムもシンプルな2ビート疾走中心だったり、よりプリブラに近いスタイルですね。

この作品を聴いて、まず圧倒されるのはその邪悪さ。粗い音が元々邪悪であったリフを更に強化し、澱んだ血腥いムードを醸し出し恍惚感すら覚える狂性を演出してます。そこに時折リードギターのフレーズも入りますが、これもまた狂的で非常に邪悪。噛み千切るような絶叫にリバーブを掛け、真っ暗な洞窟から響く魔獣の慟哭のようにも聴こえるヴォーカルも素晴らしい。

最初この音を聴くと、粗く篭もった音に一瞬身を引きそうになるんですが、すぐにそれがリフやヴォーカルの禍々しさを強調していることに気付き、「この作風にはこの音でなければならない」と思えるほどの説得力を持って迫ってくるんですよね。この音質・音作りも、狙ってやってるんだったら相当なセンスだと思う。正にこれがRAWブラックの魅力だと思いますし。

これはブラックの隠れた名盤といって良いと思います。
ちなみに発売元はスウェーデンの悪の枢軸、Total Holocaust Records。レーベル買いも上等です。このレーベルに目を付けてるようなブラック好きならば確実に満足する事でしょう。


DIES ATER - Odium's Spring ★★ (2012-09-10 23:10:38)

2007年発表の4th。

実はこの作品、当時聴いた時は余り好きになれなくって、時間を置いて聴いたら気に入った…というアルバムだったりします。作風としては、ドガバキダイナミックに疾走するドラムと、粗いだけでなく、重さや厚みもしっかり感じさせる刻みリフの迫力ある絡みを軸に据えた、非常に攻撃性の高いブラック。そこにアトモスフェリックなキーを被せ、直接的な暴力性だけでない邪悪さを演出しようという試みも見られます。

他のジャーマンブラックと比べると、デス的なダイレクトな攻撃性が高く、メロディアスな部分は少なめですが…いかにもジャーマンブラックらしい冷厳なトレモロが聴ける8曲目、スケールの大きい邪悪さの感じられるラス曲など、メロディを活用する場面ではしっかり聴かせてくれるのが良いですね。まあ個人的にはもうちょっとだけメロディアスな方が好みだったりしますが。

今聴くと、ダイナミックで破壊的かつ、アトモスフェリックさも演出する音が心地良く聴けて、決して悪い作品ではないと思うんですが…おそらく当時嵌まらなかったのは、メロディ(トレモロ)成分少なめなことに加えて、バスドラの床を踏み抜くようなビキビキした音が苦手だったせいもあるかもしれません。その辺りちょっと音作りに癖があるんですが、慣れるとかなりかっこよく聴こえます。


APOSTASY - Nuclear Messiah ★★★ (2012-09-09 00:18:32)

2011年発表の3rd。

シンフォブラックの中でも、これはストレートにかっこいい一枚ですね。
メタリックで泣きの効いたギターソロを挿入したり、ダイナミックなリフ使いの中にハーモニクスやメロディを入れて味付けをしたり、動きの多いギターワークが特徴の作風で、キーボードを抜いてもメロブラ…というよりメロデスとして成立してしまいそう。刻みを多用しつつも決して単調にならないフレーズの組み方が非常にかっこいい。

また、これだけギターを前面に押し出した、メタリックなかっこよさ重視のサウンドながら、キーボードも要所要所でしっかり良い仕事をしてくれるのが素晴らしいですね。個人的には2曲目、「Parasite Swarm」の轟音の中で可憐に響く、流麗なピアノのフレーズなんかは物凄くツボ。時に壮大さ、時に不穏さを増幅させるような、オーケストレーションの使い方も上手いと思う。

ヴォーカルも切れ味の良い絶叫とドスの効いたグロウルを使い分け、曲を更にインテンスに彩ってくれているし、総じてクオリティは非常に高いと思う。ただ、好みが分かれそうな所を敢えて挙げるとするなら、メロディにCOFのようなゴシック色、初期EMPERORのような邪悪さは薄い事でしょうか。と言っても壮大で破滅的で美しく、シンフォブラックとしては十二分にかっこいい音ですけどね。

これはシンフォ系初心者でも取っ付きやすい音だと思う。シンフォブラックのアトモスフェリックでムード重視だったり、儀式的な雰囲気だったりが苦手な人でもかなり入り込みやすい作品。質も非常に高いのでシンフォブラックを聴き込んでる人でも楽しめるかと。


ASHES - HYMNS TO A GREY SKY (2012-09-09 00:14:08)

2005年発表の1st。

MAYHEMとTHE MEADS OF ASPHODELのスプリットやLUNAR AURORAの過去作、FLEURETY、HATE FORESTなど、有名なブラック関連のリリースも多いSupernal Musicから、UK産RAWアンビエントブラックのファーストアルバムがリリースという事で、セールで安価だった事もあって試しに購入してみたんですが…これは辛いですね(苦笑)。一昔前に「素人にはお勧め出来ない」というネットスラングが流行りましたが、正にそんな感じ。

内容はRAWアンビエントブラックという紹介の通り、デモっぽい粗い音質のオールドスクールなブラックを浮遊感あるキーが包むというものですが…まず構成が酷い。CDケースの背面には曲のタイトルが幾つか書かれているのに、何故かそれが1トラックに纏めて入ってる。しかも長々とSE的な音を挿入するパートもあって、飛ばせないのが辛い。殆どヴォーカルの聞こえないミックスながら、歌が入ると音割れするのでヴォーカルが歌ってるかどうか判別できる音質も大概だと思う。

ただ、駄目なところがどうしても目立ってしまうんですが、良い所も少なからずあるんですよね。例えばキーボードの音色は、暗闇の中で光る燐光を思わせる妖艶さがあって、それがRAWで粗いバンドサウンドと合わさって意外なかっこよさを生んでいるところもあるし、時折挿入されるアコースティックギターを用いたパートはなかなか叙情的で、結構頑張ってると思う。…とは言っても、罷り間違っても初心者にお勧めできるような間口の広さはないですけど…。

そういう訳で、かなりマニア向けの一枚。ブラック聴いてると、このレーベルの作品って結構棚に溜まってくるんですが、その中でも群を抜いてマニアック。1000枚限定らしいですが、正直それでも多いくらいマニア度高いです(笑)。


ADUSTUM - SEARING FIRES AND LUCID VISIONS ★★★ (2012-09-03 19:01:44)

2011年発表の1st。
注目レーベルWorld Terror Committeeよりリリース。

ベルギー産ブラックメタルバンドのデビュー作という事ですが…ベルギーと言えば20年近いキャリアを持つ大ベテランのENTHRONEDが有名ですが、このバンドも新進気鋭ながらENTHRONEDに喰らい付かんとする、邪悪さもクオリティも非常に高いブラックメタルを演ってますね。ENTHRONEDやWATAIN、AZAGHAL辺りのハイクオリティな真性系のブラックが好きならば、何かしら感じるものはあるだろう作品。

音としては、ミニマリズムやRAWさに頼ることなく、メタリックなかっこよさを残しつつブラック特有の邪悪さもしっかり演出していく、ストレートなブラックメタルで、前述したバンドにかなり近いものがあると思う。ただしENTHRONEDやWATAINの近年の作品と比べるとプロダクションにやや粗さは残ってますが、オーバープロダクションにならない生々しさがありつつ、マニアックな聴き辛さはない音質で悪くないと思います。

しかしこの作品、リフやメロディなど、ブラックの根幹となる要素が悉く素晴らしいんですよね。ブラック特有の平坦リフは腐食部分がジクジクと広がるような、爛れた邪悪さが感じられますし、トレモロリフに込められたメロディは闇の帳が緩やかに降りてくるような、品性のあるダークさがあって非常にかっこいい。ギターソロも用いる作風ですが、そのメロディもメロウさと神秘性が同居していてうっとり出来るんですよね。

また、悪意と威厳を伴った、太いがなり声で邪悪さ十分のパフォーマンスを聴かせつつ、時折地獄に落ちる男の悲鳴のような絶叫を響かせるヴォーカルの表現力、聴き手に常に緊張感を持つ事を強いるような、ところどころでフックのあるフレーズを仕込んでくるドラミングもまた素晴らしい。演奏時間こそ31分と短いのがネックなものの、デビューアルバムとしては隙がなさすぎて怖いくらいの出来だと思う。

流石WTCだけあって、またしても素晴らしく有望なバンドを発掘してきましたね…世の中の邪悪音楽好き全員にお勧めしたい作品です。特にENTHRONEDやWATAIN、AZAGHALなどの真性ブラックが好きな方は是非。ほんと素晴らしいです。


GRABNEBELFURSTEN - Von Schemen und Trugbildern ★★★ (2012-09-03 18:57:32)

2001年発表の1st。

やたら長いバンド名や謎のおっさんクリーチャージャケからしてヤバ気なオーラが漂いまくってますが(笑)、その予想(期待?)を裏切らない、奇妙で奇矯なブラックメタル。アトモスフェリック系のシンセやペイガン系のメロディ、メロブラ的なトレモロなどを用い、ドラマティックに仕上げたブラック…と書くとまともそうに聴こえるんですが、全体を通じて妙にユルい空気感があり、そのユルさ故になんだか前衛的で得体が知れない音に聴こえる感じですね。

まずメロディなんですが…普通にメロブラとしてかっこいい、冷厳で耳に残るメロディやペイガン系の土着的なメロウさを発揮する泣きメロをトレモロリフで弾いてたりして、センスの高さを感じさせてはくれるんですが…時折妙に調子の外れたようなメロディを仕込んでくるのが面白い。特に7曲目なんて、一部地獄のお笑い番組のテーマソングがあったらこんな感じだろうな…ってメロディまであって、それが同じ曲に神秘的なシンセや冷厳なトレモロと同居してるのが、ある意味凄まじいセンスしてると思う。

そしてヴォーカルも特徴的。低音のグロウルと高音のスクリームを使い分けるスタイルですが、喉を絞めた感じの、常に情けなく裏返るのようなスクリームが良くも悪くもヒドいです(笑)。白塗りは白塗りでも、コープスペイントというよりはバカ殿のご乱心という感じがしてしまいます(笑)。CELTIC FROSTを意識したのか「ウッ!」も披露してますが…声がアレなのでしゃっくりにしか聞こえません(笑)。特徴的過ぎて純粋に邪悪系を求めて聴いたら嫌悪感感じるレベルかも。ちなみにグロウルは普通に邪悪。

明らかに変態的で、しかもユルい感性を持っている変り種のブラックなのに、メロディのセンスが無駄に素晴らしい辺りなんとも心憎い作品。時折メロブラでも明らかに極上レベルのメロディが出てくるんですよね…こんな変な作風なのに。ともかく変なだけでもユルいだけでもないブラックですので、個性派好きならば聴いて損はないかもしれません。


AD-HOC - Ad-hoC ★★★ (2012-09-02 00:27:02)

2011年発表の1st。

「アドホック」というバンド名からは、ついインダストリアル/サイバー系のブラックなんだろうな…と予想してましたが、ところがどっこい、激ドラマティックかつハイクオリティなジャーマンメロブラで、良い意味で裏切られました。このアルバムは2011年のリリースの中でもかなりお勧めですね。

路線としては、ヴァイオリンやピアノ、アトモスフェリックなキーボードを絡めつつ、灼け付くような哀愁リードギター、繊細に鳴り響くトレモロを駆使し、極上のメロディアスさで展開していくメロディック・ブラック。ヴォーカルの絶叫こそ食いしばった歯の隙間から憎悪が漏れ出してくるような憎々しげなダーティさを放ってますが、メロディがドイツ産らしい上品なメロウさに満ちていて、それだけでもう悶絶出来ます。

妖しい普通声などを取り入れたり、前衛的な感性も見え隠れしますが、それによって聴きづらくなったりする事はなく、あくまでハイクオリティなメロブラを貫いている感じ。特に、アトモスフェリックなキーボードと高音のトレモロが絡み、発生した星雲を光速で切り裂いていくような、トリップ感すら覚える疾走パートがかっこよすぎです。シューゲイザー系・ポストハードコア系ブラックにも通じる儚さも感じますが、本格的にそっちに行く3歩手前で留まっているのがまた良い感じ。

欲を言えば、ちょっと普通声が弱いのでそこは改善して欲しい感じですが、十二分に素晴らしい作品だと思う。個人的な印象としては、初期ARCTURUSをもう少しストレートにして、ジャーマンメロブラの感性で再構築した感じ。DER WEG EINER FREIHEITやODEM ARCARUMなどのドイツ産メロブラが好きな方は勿論、Cold Dimension系のどこか超越的な雰囲気があるブラックが好きな方にもお勧め。


BLODULV - Ⅲ - Burial ★★★ (2012-08-31 19:30:42)

2005年発表の3rd。

ファーストインプレッションは「ILDJARNのメロブラ版」?
やたら音のでかい、音圧で押し潰すようなノイジーなリフと、これまたノイジーなエフェクトを掛け、十分な声量と殺気を伴いつつ全力でがなり散らすヴォーカルを、打ち込みと思しきミニマルで、妙に抜けのいいドラムに乗せて展開する、RAWで極悪なブラック。「血の狼」のバンド名に恥じないクソ迫力ノイジー音質といい、ドラムのスチスチ感といいかつてのILDJARNを想起させる音。

但しILDJARNと異なるのは、こちらはメロブラ的なトレモロリフの含有率がかなり高く、極悪でありながらメロディアスな仕上がりになっていること。ほんの少しトラッド色も感じられる、勇壮さ漂うメロディ使いも見受けられ、単調なドラムスとも相俟ってパンキッシュなかっこよさに聴こえたりも。メロディの濃淡や緩急の付け方である程度ドラマ性のある仕上がりにしてあるため、ILDJARNよりは展開のある音。ミニマリズムに徹していないとも言えるんですが、その分聴きやすい。この手に慣れてるリスナーなら、極悪音質も2~3曲聴くうちに心地良さへと変わるはず。

ノイズとメロディ、そしてど迫力の絶叫を浴びるように聴ける、いいアルバムだとは思うんですが…バンドは既に解散していて、フルアルバムとしてはこれが最後の音源になってしまった模様。シンプルなRAWブラックの魅力を見せ付けてくれる作品ですので、プリミティブ系好きな方は是非。


VORKREIST - Sabbatical Flesh Possession ★★ (2012-08-31 19:24:29)

2003年発表の1st。

人脈や関連バンドは真っ黒ですけど、作風の方は刻みやハーモニクスを多用したリフ、アングラ臭を効かせつつ低音を効かせ、血腥い暴力性を漂わせる音作り、ブラック系の喚きだけでなく地の底から響くような低音グロウルも使うヴォーカルと、かなりデスメタルの色も強い路線ですね。フランス産に多い病気っぽさはあまりなく、もっと直接的に禍々しく暴力的な雰囲気を伝えるような音。

個人的には、ドラムの音がちょっと篭もり気味なのがかなりツボなんですよね…。却って音が重々しく聴こえて、低音の効いたプロダクションとも相俟って絨毯爆撃でも受けているような感じ。心地良い蹂躙感です。また、アングラで暴力的な雰囲気とは裏腹に、メロいパートは何気にかなりメロディアス。特に9曲目なんて、最初期のARCH ENEMYが泣きメロとギターソロを捨ててアングライズムに特化したような雰囲気があって、かなりかっこいい。

デスメタルにかなり近い音ではありますが、メロディの爛れた禍々しさなど、根底に流れているのはやはりブラックの血だと思う。一聴では人脈から想像しづらい音ですが、聴いている内に段々馴染んでくる感じですね。


VORKREIST ★★ (2012-08-31 19:22:06)

フランス産デス/ブラックメタル。
SECRETS OF THE MOONを始め、様々なバンドに参加した経験を持つ女性ベーシストのLSK氏や、MERRIMACKのA.K.氏らが関わるバンド。


DIN BRAD ★★ (2012-08-30 23:37:08)

ルーマニア産ペイガン/ネオフォーク。
NEGURA BUNGETのメンバーによるサイドプロジェクト。


DIN BRAD - DOR (2012-08-30 23:34:15)

2012年発表の1st。

ブラック好きの間でカルトな支持を集める、NEGURA BUNGETのサイドプロジェクトという事ですが…こちらは本家とは異なり、メタル色のない、純粋な暗黒フォークサウンドという感じですね。パーカッシブなリズムやマンドリン、笛などによる薄暗い民族メロディにより演出した幻想的ムードを、更にドラッギーに広がるシンセが包み込み、そこに妖艶な女性声メインのヴォーカルが乗るスタイル。

このヴォーカルがかなり表現力豊かで、森の深部で魔女の説法を聴いているような感覚に陥るんですが…個人的にはこの作品、ヴォーカルがメイン過ぎる感じなんですよね…。アカペラ曲も多く、基本的にヴォーカルの表現力ありきで作られている感じで、私としてはもっと音響・音像重視の作風の方が好みだったり。と言っても純粋な好みの問題で、女性ヴォーカルは十二分に巧いし、男性ヴォーカルも笑いながら歌ってるような妙な節回しを付けたり、変な味があっていいとは思う。

という訳で個人的な好みに照らすともう一歩だったんですが、波長が合えばルーマニアの薄暗い森の奥まで一瞬でトリップさせるくらいの雰囲気はあるアルバムだと思う。ヴォーカルがかなり重視されてる事も踏まえて、そういうムードの作品が好みの方なら間違いなく楽しめるでしょう。


ZARATHUSTRA - Perpetual Black Force ★★★ (2012-08-30 23:32:27)

2003年発表の2nd。

触りだけ聴くと、イカレ系のリードギターやスラッシーなリフなど、オールドスクールな要素の強い、背徳的でダーティなブラックメタル…という印象ですが、このバンドはそれに加えてメロディック・ブラック的な冷たく叙情的なメロディもかなり取り入れているのが特徴ですね。オールドスクールな熱気と、ジャーマンメロブラの冷気を上手く両立させたような路線。

基本冒涜的でテンションの高い音なんですが、そこに不意に入ってくるメロウでエピックなメロディにハッとなるんですよね。ただ冷気を伴うだけじゃなくて、ドイツ産らしい厳かというか格調高い感じもあるのがミソでしょうか。メタリックなリフ捌きで、ミドルパートもしっかり聴き応えをもって聴かせる音作りとも相俟って、かなりドラマティックな作風。

多少アングラ臭も感じはするんですが、オーバープロダクションでもRAW過ぎでもない、丁度良くダーティな音質、鋭い声で時にタメも聴かせつつ喚きまくるヴォーカル等、どの要素もこの手のブラックとしてしっかり魅力的に作られてる感じで、総じて質の高い音と言えると思う。オールドスクール派もメロディ派も是非聴いていただきたい作品です。


NUMINOUS - Numinous ★★★ (2012-08-26 06:45:52)

2011年発表の1st。

数多くの良質なプリミティブ・ブラックの音源を世に送り出しているレーベル、Northern Heritageからのデビューアルバムとのことですが、またもや素晴らしいバンドを見出してきましたね…。
路線的には、ツタツタ2ビートで疾走するパートを中心に据えた展開といい、高音域のノイジーさを強調した、目の粗いプロダクションといい、典型的なプリミティブ・ブラックのスタイルを踏襲したものですが…リフやメロディ、音作りにしろ、このジャンルの中でも邪悪さや不穏なムードに特化したような作風が特徴。

不協的なリフにより、漫画等で主人公が猜疑心に囚われ、景色が歪んで溶け出していくシーンを連想するような、ドロドロした空気感を醸し出し、そこに闇が世界を覆い尽くしていくような、スケールの大きいどす黒さを感じさせるメロディをトレモロで挿入していくスタイル。ヴォーカルが低音がなりで、尚且つ埋もれがちなプロダクションになっているのも、深淵から呪詛が響き渡っているかのようで、邪悪なムード作りに一役買ってますね。プリブラの様式を踏襲しながら、緩急やメロディの濃淡でしっかりドラマ性を演出しているし、曲の質も非常に高いと思う。

一応フルアルバム扱いながら、1曲目のオープニングを除けば4曲で約30分という演奏時間の短さこそ残念ですが、これはNorthern Heritageのリリースの中でもトップクラスに素晴らしい作品だと思う。邪悪過ぎて逆にどこか厳かさすら漂っているような、ブラック特有のカルトな雰囲気に満ちた作品ですので、プリブラが行ける方には是非聴いて欲しい所。かなりお勧めです。


WEIRD FATE - The Collapse of All That Has Been ★★★ (2012-08-23 21:10:03)

2012年発表の1st。
個人的にも大注目のレーベル、Cold Dimensionsからのリリースという事で試聴してみたらかなり良かったので購入。全編通して聴いていてもやはり期待を裏切らない良いアルバムですよ、これは。

路線としては、氷の礫が吹き付けてくるようなザラついた質感のギターリフと共に疾走するアトモスフェリックなブラックで、同じレーベルに所属するBATTLE DAGORATHやMORTUUS INFRADAEMONI辺りにも近い音。但し、こちらはメロディに肉体を離れた魂がアストラル界を覗き見ているかの如き神秘性が感じられ、物理的な肌寒さというよりはもっと霊的な、悪寒めいた寒々しさの感じられるコールドブラック…という感じ。

基本は霊性の高い、幽玄でアトモスフェリックな音なんですが、抽象的で深遠なムードをしっかり保った上で、攻撃的な刻みリフであるとか、KRALLICEやDER WEG EINAR FREIHEIT並にメロディアスな、浴びせるようなトレモロリフであるとか、実体的なドラマ性を感じさせるフレーズもかなり多用しているのが特徴。そのせいかこの手のブラックでも最高クラスに劇的な仕上がり。魂が引き千切られるかのようなヴォーカルの絶叫もまた凄絶。

個人的に感動すら覚えたのは6曲目、「Manifest of the Crestfallen」ですね。冒頭のメタリックな攻撃性を剥きだしにしたリフを伴う畳み掛けからしてかっこいいですし、異様なくらいメロディアスなトレモロも物凄く印象に残る。フォーキッシュなキーボードをフィーチャーした叙情的なメロディや寒々しいアルペジオを突き破る刻みリフなど、展開の一つ一つがいちいちかっこよく、このハイクオリティな作品の中でも随一の名曲だと思う。

纏めると、アトモスフェリックで霊的なムードがありながら、メロディックブラック好きにもアピールするドラマティックな展開や劇的なメロディのある、素晴らしい作品と言えるでしょう。Cold Dimensionsがメロディック・ブラックを輩出するとこうなる…って感じですね。取り合えずレーベルCold Dimensionsの存在を気に掛けているようなリスナーであれば購入しても間違いなく損はしないかと。


ABSENTIA - OUR BLEEDING SUN ★★★ (2012-08-23 21:05:57)

2011年発表の2nd。
スペイン産のシンフォニック・ブラックとの事ですが…これは聴きやすくていいですね。シンフォブラックの中でというより、エクストリームメタルでもかなり聴きやすい音だと思う。

メロデスにも通じる刻みリフを多用し、ブルータル過ぎないミディアム中心のバンドサウンドに、ピアノやブラス、混声合唱を交えた壮麗なオーケストレーションによる耽美でゴシック的なロマンティックな美メロを乗せたシンフォニック・ブラックで、「Midian」期のCRADLEを大人しめかつメロディ重視にしたような、もしくはANOREXIA NERVOSAから暴虐性を引いて超聴きやすくしたような路線。

ヘヴィになりすぎない、しかしクリアである程度攻撃性もしっかり残した音作りとも相俟って、語弊を恐れずに言えば、リラックスしてメロディの良さに身を委ねながら、聴き入れるような作品。と言ってももちろんナマクラな音ではなく、ブラックメタルらしい寒々しいトレモロと高貴な邪悪さを感じさせるキーの絡みがあったり、空間的なキーが神秘性を演出するような部分もあり、全編を通してピリッとした緊張感が漂っているのが良いですね。

シンフォゴシック的な美しさ、メロデス的なメタリックなかっこよさがありつつ、シンフォニックブラックの華美さも備えた良い作品だと思います。メロディをしっかり聴かせてくれる良質なアルバムなので、ジャンル初心者にも割と取っ付きやすいかもしれません。


BESTIA ARCANA - To Anabainon ek tes Abyssu ★★★ (2012-08-18 17:56:46)

2011年発表の1st。
路線的にはいわゆるアンビエントブラックなんですが、これはDARKSPACEやVINTERRIKETなど、このサブジャンルの有名どころに匹敵する逸材かもしれません…。

NIGHTBRINGERのメンバー3人によるブラックとの事ですが、高音で弾かれる禍々しく不穏で不吉なトレモロをNIGHTBRINGERから引き継ぎつつ、アンビエント要素とプリミティブ要素をもっと濃くし、邪悪さに特化したような作風…と言った感じでしょうか。バンドサウンドで聴かせるパートでもアンビエント要素を絡めてくるのが特徴で、負の想念や腐った膿漿の渦巻くノイジーな闇の中から、トレモロリフによる邪悪極まりない旋律が聴こえてくるような音作りが成されていますね。

メタルのカタルシス等は無視してひたすらにジクジクと腐敗した毒素を垂れ流すかのような音で、NIGHTBRINGERよりも取っ付きやすさでは劣るものの、邪悪さでは更に上を行く音だと思う。この、世界が疫病に徐々に覆われ、緩やかに破滅していく様を実況中継しているような、終末観の漂う雰囲気はただごとではありません。1曲目後半など、メロディを敢えて消すことで、不吉トレモロとは少し違うアプローチをするパートも見受けられますが…そんなパートではDARKSPACEを思わせる暗黒空間も感じさせ、やはり邪悪さや病的さ、不吉さの演出へのセンスの高さを見せ付けてくれます。

アンビエント要素の強い音作りは多少マニアックかもしれませんが、これは非常にお勧めの逸品。不吉なトレモロの運ぶ凶つ風に吹かれながら、世界の終焉に思いを馳せる…そんなムードを味わいたい方は是非。素晴らしいです。


BESTIA ARCANA ★★ (2012-08-18 17:56:04)

NIGHTBRINGERのメンバーによるアメリカ産ブラック。
去年出た1stが凄まじく邪悪。邪悪さで言ったらNIGHTBRINGER以上かもしれません。


DARK LAY STILL - THROUGH HELL... ★★ (2012-08-18 17:52:55)

2009年発表の1st。
残念ながらフルアルバムはこの一枚のみで解散してしまった模様。

作風は1stの頃のABGAIL WILLIAMSやSOTHIS辺りを思わせる、DIMMU BORGIRの影響下にありそうなアメリカン・シンフォニックブラックですが…これらのバンドと比べると、ギターワークが邪悪さ・ヘヴィさよりもメロデス的な泣き・メロウさがより強い感じで、更に聴きやすい音と言えるかもしれません。ドラムの音量が控えめだったり、ギターの音作りをヘヴィにし過ぎていなかったり、メロディの優美な感覚が強調されている音だと思う。

もう一つ、特徴としてはヴォーカルがブラックメタル的なハイピッチのスクリームだけでなく、デスメタルのスタイルに近いグロウルも用いることも挙げられますね。一部ではガテラルに近いエグさも感じられますが…販促シールでDIMMU BORGIRだけでなく、BEHEMOTHやORIGINのファンにも勧めていたのはこのヴォーカルに因るところが大きいのかも。楽曲のクオリティも申し分なく、特に邪悪なメロディを紡ぐリフの上に甘美なピアノを乗せた6曲目は、うっとりするような暗黒美が感じられますね。

唯一無二となるようなオリジナリティこそないものの、星3つ付けても良い出来ではあるんですが…紙にゴムの突起を糊付けして、そこにCDの穴を嵌めるタイプの収納ケースは個人的に大嫌いなので星マイナス1個。これ、いつの間にかCD盤面に傷が入ってたりするんですよね…。歌詞やクレジットも読みづらいし。あと、イントロ等で聴かれるピアノが微妙な気がするんですが…あれは演出ですよね…(笑)。


TAL'SET - LA VIA DEL GUERRIERO ★★★ (2012-08-17 10:07:50)

2012年発表の1st。

イタリアのアヴァンブラックの、有力レーベルATMFよりリリースのデビュー作という事ですが、これはなかなか面白いアルバムですね。
基本的にはスラッシーなリフを上手く活かし、疾走パートでは激しく、ミッドテンポのパートではヘヴィに聴かせる、骨太なブラックメタル。クリアかつ厚みもしっかりある、質の高い音作りやスラッシュ/ハードコアの影響の強い、野太い怒号ヴォーカルも相俟って肉体的な攻撃性も強く感じられる音。そのメタリックに芯の通った音を軸として、様々な要素をブチ込んでくる作風ですね。

雄大なメロディを聴かせるシンフォニックなパートや、アコギやパーカッション、笛系のキーも用いたペイガン要素の強いパートなど、展開のバリエーションは多岐に渡りますが、ULVERの2ndを思わせるフォーキッシュなメロディの合唱まで飛び出した時はかなり驚きましたね…。展開はアヴァンギャルドなんですが、あくまでマッチョというかガチムチな実体的なパワフルな音が下敷きとしてあり、アヴァンブラックとしては取っ付きやすい音なのも特徴。メロディもファンタジックで印象に残りやすく、聴きやすさと展開の面白さを上手く両立させている感じ。

デビュー作ですが、妙にマイナー臭い音作りだったり独りよがりな展開だったりすることはなく、しっかりしたクオリティの高さがある作品。邪悪な感触こそ薄いものの、様々な要素を消化しつつストレートなかっこよさを聴かせる、良いアルバムに仕上がっていると思います。


FESTER - THE COMMITMENTS THAT SHATTERED...1991-1992 (2012-08-17 10:04:48)

2010年発表のコンピレーション盤。

91年の「The Introduction」と92年の「Water of Sin」に、ボーナストラックとして91年に行われたライブを3曲収録、79分近くとCDの収録時間ギリギリまで詰め込んだ音源集で、初期ノルウェー産ブラックのレア音源を多数リリースするKyrck Productionsからのリリース。ちなみに1000枚限定です。

ブックレットに詳細なバイオグラフィーが書かれていますが、それによるとこのバンドは音楽性やファッションからシーンに完全に受け入れられていたとは言えないものの、インナーサークルのメンバーとの関わりもあったようで、それを物語るエピソードとしては中心人物のTiger氏は自宅でHelveteの支店的な感じで物品を売っていたり、サークルメンバーと共にアスキムの鉱山に潜ったことがあったりなどが紹介されてますね。

ただ、ブックレットに彼らがシーンの深い部分に完全には受け入れられていなかった理由として、彼らは決して「Pure Black Metal」を演奏してはいなかった…と書かれている通り、スタイル的にはデスメタルの要素が強い作風なんですよね。低予算で作られた如何にもデモな音質や高音でのやけくそな絶叫はプリミティブ系に通じはしますが、曲自体はリフのドロドロした感触といいブラックの寒々しさよりデス的なおどろおどろしさが強い感じ。

スローパートの何ともいえない粘着質な薄気味悪さとかは良い感じなんですが、正直個人的にはこれを80分近く聴き続けるのは流石にキツいと思う作風。初期ノルウェーのシーンを知るための資料や、バンドの音源集としてはかなり優れたコンピレーションだと思います。マニア向けですが貴重なバイオグラフィーもありますし、ディープなデス/ブラックファンは持っておいてもいいかも。


STIGMHATE - THE SUN COLLAPSE ★★★ (2012-08-12 12:24:41)

2012年発表の3rd。
端的に言ってしまえば、DARK FUNERALやNAGLFAR辺りに通じる、ファストでメロディックなブラックなんですが…この手の中でも、代表格のバンドに肉薄するクオリティを持った作品ではないでしょうか。

DARK FUNERALを「業火系」と評しているレビューがありましたが、このバンドも同じ特性を持っていると思う。ブラスト中心の苛烈なリズムとノイジーで厚みのあるリフが吹き上がる地獄の業火の如き音の壁を生み、そこにメロディックで邪悪なトレモロで追い討ちをかけるような音で、ヴォーカルも炎に焼かれているかのような凄絶な絶叫をかましてくれます。

素晴らしいのは、DARK FUNERALやNAGLFARと比べても見劣りしないメロディの良さがあることですね。寒々しさとか禍々しさとか、この手の作風に必要な要素は当然持ってるんですが、それに加えて背徳的なムードであるとか、流出する悪のオーラであるとか、聴き手を悪魔の棲み家にトリップさせるような、もう一段上の邪悪さがある感じ。他のメロディックなジャンルではなかなか出てこない、如何にもブラックメタルといったメロディが本当に素晴らしい。

まだ知名度的にはマイナーなだけに、DARK FUNERALやNAGLFARの近作と比べると垢抜けなさはあるかもしれませんが、それを差し引いてもメロブラ好きには魅力的な一枚だと思う。邪悪なメロディとファストなリズムという、分かりやすいブラックの魅力が詰まっているので、このジャンルに入門してもう少し深い所も知りたいという方にもお勧めです。


SMARGROTH - The Arrival of Nectrotronian ★★★ (2012-08-10 18:58:10)

2009年発表の1st。

なんか良いバンドいないか探してるときに店で「掘り出しもの」としてプッシュされてて、何となく買ってしまったんですが、これは確かに良い作品ですね。ファスト派もメロディック派も美味しく戴ける、なかなかにハイクオリティなブラックメタルを演ってます。ファストな展開をかなり重視した作風が特徴で、特に4曲目は如何にもドゥーミーな曲が始まりそうなイントロなのに、10秒も経たずに疾走する割り切りっぷりがなんだか微笑ましいです(笑)。

そこに絡むメロディも特徴的で、北欧産と比べると寒々しさは抑え目で、もっと儀式的な印象。耳に残る、ある意味でキャッチーなメロディやリフはかなり多めなんですが、このバンドのメロディは湿り気や陰湿さが薄めで、少しドライな感触がある気がします。それがファストブラックとしてはヘヴィさには余り拘っていないような、低音や歪みの効きすぎない、聴きやすいプロダクションとの相性が良くてかなり聴き心地が良い音に仕上がってますね。

プロダクションといいメロディアスさといい、疾走重視型のブラックでも聴きやすい作品だと思う。スロヴェニア産のブラックという、プロフィールの物珍しさや、カプコンVSマーブルのシュマゴラスを思わせる親しみ深いバンド名で手を出しても、この手に興味があれば裏切られる事はない、しっかりしたクオリティのあるアルバムです。


VERDUNKELN - Einblick in den Qualenfall ★★★ (2012-07-27 20:46:15)

2007年発表の1st。

これはアトモスフェリックブラックの中でも、かなり陰鬱な雰囲気の強い作品ですね。聴いているだけで気が滅入ってくるような暗いメロディのアルペジオと、荒涼感を醸し出すギターノイズ、妙に粘着質な重っ苦しさを演出するベースが絡むと、まるで光の差さない荒廃し切った不毛の大地を、ただあてもなく歩き続けているような、全く救いのない情景が浮かんできますね…。時折入る儀式的なクリーンヴォーカルも、薄暗く湿ったムードを更に助長。

最も長い曲で17分を超える大作主義で、ミニマルな展開も多い作風ながら、メロディアスなリードギターが入るパートやメタリックな刻みリフを用いた、実体的なパートもあり、それが基本的に雰囲気重視の作風の中にあって上手くドラマティックさを演出出来ているように思います。1曲目の後半なんてメロディック・ブラックにカテゴライズしてもいいくらい、メロディの主張が強く聴きやすい。ただ、メロいパートでも重く影を引きずるような根暗さは変わらないのでご安心を。

関連バンドのGRAUPELやNAGELFARと比較しても、かなりダークなムードの強い作品だと思う。宗教的な邪悪さや感情的な悲痛さが暗さに繋がっているというより、もっと直接的に黒い情景そのものを描き出すような作風。CDショップのブラックの棚眺めてるとVINTERRIKETの近くに置いてある事も多いと思うんですが(笑)、ああいう情景的な暗さを好む方にはこのバンドもお勧め。


VERDUNKELN ★★ (2012-07-27 20:45:31)

ドイツ産アトモスフェリック・ブラック。
GRAUPEL、NAGELFARのメンバーが関与。


ABHOR - AB LUNA LUCENTI, AB NOCTUA PROTECT ★★★ (2012-07-27 20:40:38)

2011年発表の5th。

ある程度疾走パートも交えつつ、沈み込むようなアルペジオを取り入れた展開、ブラックらしいささくれ立った音のギターリフによる陰鬱なメロディのリフが、抑鬱的で閉塞感のある雰囲気を醸し出すブラックメタル。ムード的には鬱ブラックに近い湿り気がありますが、このバンドはキーボードを多用し、シンフォゴシック風味の味付けをすることで更に暗い空気感を演出しているのが特徴ですね。

ゴシック的な、耽美でアンティークな上品さを演出するピアノと、儀式に立ち会っているような、邪悪さも感じさせるオルガンの音色がメインに使われ、作りこそメロディアスなもののカルトで不気味な空気も強く感じさせる音。特にピアノを用いたパートは暗い情景が緩やかに流れていくような、非常に情緒のあるもので、COFよりも更に直接的にヴァンパイア的なものを想起させる音。同じホラー色強い音でもメタルのカタルシスの強いCOFと比べると、こちらの方がアトモスフェリックな感じですね。

流石に95年から活動しているベテランだけあって、一枚を通じて醸し出す空気感に全くブレが見られない作品。キーを多用したシンフォブラックでも、湿度の高い陰鬱なものを好む方にお勧めします。


ULVER - Childhood's End (2012-07-26 23:42:55)

2012年発表の60年代サイケデリック・ロックカヴァーアルバム。

ごめんなさい、ULVERの新譜だから買ったけど正直辛いです、このアルバム…(苦笑)
実際、「浮遊感がある」を通り越して、ずっと聴いていると魂がどこかに持っていかれそうな、現実から遊離していきそうな雰囲気のある音作りや、その音作りと一体化するような柔和さを感じさせつつも、確かな存在感のあるGarm氏のヴォーカルなどは、流石ULVERという感じで、やっぱり素晴らしいと思います。ですが…

カヴァー曲だから仕方ないですが、メロディが自分の好みとかけ離れてるんですよね…ULVERってオリジナル曲ではどんなに実験色を増しても、北欧産らしいダークな雰囲気は維持してくれてたんですが、この作品は全体的に明るくてブルージーな感じのメロディが多くて、この手のメロディが生理的に得意でない私にはちょっとキッツいです(苦笑)。そのメロディを歌うGarm氏の歌声自体はほんと大好きなんですが…。

ULVERの作品では珍しく嵌まれなかったアルバムですね…こういうアレンジでも、オリジナル曲とメロディの傾向が似た感じであれば多分聴きまくってますが…私にとっては微妙な作品。


INFESTUS - E x | I s t ★★★ (2012-07-26 21:17:23)

2011年発表の3rd。

これはかっこいいですね。
プロダクションはブラックとしてはクリアながら、常にどす黒い靄が掛かっているような陰鬱なムードの漂うものですが、メタリックな刻みリフも使い緩急付けて展開する、オーソドックスでドラマティックなメロディック・ブラック。陰影の濃いダークなメロディが、厚みのある音作り、知性を感じさせる展開によって肉付けされ、邪悪さや暗黒性の高さはしっかり維持しつつも、どこか上品で神秘的な仕上がりの音。

メロディック・ブラックのキモであるメロディも非常に上質で、作品を通じて常に重っ苦しい雰囲気が付きまとっている感じなんですが、その中で灼け付くような哀愁を感じるリードメロだったり、カタルシスを感じるような、鮮烈で毒々しいトレモロリフを仕込んできたり、かなり耳を惹くパートが多い印象。時折挿入されるアルペジオの使い方も、作品の持つ陰鬱な世界観に更に深みを与えているようで、同系統のバンドと比べてもかなり上手いと思う。

スタイル自体はオーソドックスなメロディック・ブラックながら、個人的にはLUNAR AURORAや初期SATYRICONを思わせるような、単なる邪悪さ・ダークさだけでない神秘性を感じる作品。現時点でもかなりハイレベルな作品だと思いますが、まだほんの少しまどろっこしい部分もあるのでそれを削って、分かりやすさや求心力が加われば、その辺りのバンドに比肩しうる音になるかもしれません。メロブラ好きには大推薦です。


BERRYZ工房 - シングル/カップリング/その他 - Cha Cha Sing ★★★ (2012-07-26 21:14:55)

タイのアーティストBird Thongchaiのカバー(原題は「ROW MAH SING)。
これは聴いた瞬間、耳を疑ってしまったんですけど…だって余りにも、私が「このグループにはこういう楽曲を歌って欲しい」って思う曲調そのままだったんですもん(笑)。最早カバーとは思えないほどこのグループの色に染まっている感じで、サビの「♪ちゃ~ちゃらっちゃちゃちゃらら、ちゃ~ちゃらっちゃちゃ~」を聴いてると、何もかもどうでも良くなってきます(笑)。最近ももクロとかBABYMETALとか、初聴で絶大なインパクトを残すグループが脚光を浴びてますが、この曲はインパクトではそれらグループの上を行くと思う。わざとらしいくらいにエキゾチックさを強調したアレンジ、大袈裟にコブシを回しまくったコミカルな歌唱も実に楽しい。世の中に名曲は数あれど、ここまで聴き手を楽しい気分にさせてくれる曲はなかなかないですよ。超お勧め。


アップアップガールズ (仮) - シングル/カップリング/その他 - アッパーカット! ★★★ (2012-07-26 21:14:06)

これは初めて聴いた時かなり衝撃を受けましたね。
元気系の曲が来そうなタイトルとは裏腹に、シームレスに繋がる歌メロがクールなトランス風の楽曲で、メンバーの歌声をカット&コラージュしてラップ風にしたパートがあったり、サビではミニマルなフレーズのピアノが幻想的な雰囲気を醸し出していたり、アレンジはちょっと前衛的な部分もあってそれがかなり強烈なフックになってますね。曲名はアッパーカットだけど(笑)。
このアレンジだけでもかなりインパクトがありますが、歌メロ自体もももいろクローバーの楽曲に通じるようなキャッチネスがあって恐ろしく求心力の高い曲に仕上がってると思う。特に「♪目指せチャンピオン アッパーカット」ってフレーズのメロディの流れが非常に綺麗。王道とは言いがたいですけど超名曲だと思います。


アップアップガールズ (仮) - シングル/カップリング/その他 - 夕立ち!スルー・ザ・レインボー ★★★ (2012-07-26 21:13:29)

「アッパーカット!」も相当なインパクトがありましたが、同曲と両A面扱いのこちらも負けず劣らず良い曲だと思う。打ち込みを多用したアップテンポな曲調で、ポップなメロディ遣いが取っ付きやすくキャッチーですが、2コーラス目入りの跳ねたフレーズやラスサビ入りなど、ピアノが印象に残る使われ方をしてて丁寧なアレンジ。歌唱力も安定していて、ロングトーンのユニゾンの綺麗さを活用したメロディ構成も上手い。タイトル通り雨上がりの空に虹が掛かる様子をイメージしてメロディを書いたのかもしれませんね。


FURIA (POLAND) - Marzannnie, Królowej Polski ★★★ (2012-07-21 22:11:15)

2012年発表の3rd。

ノルウェーの黎明期ブラックって、MAYHEM、EMPEROR、DARKTHRONE、BURZUMなどのバンドがブラックの基本的な形式を完成させる傍ら、その裏でTHORNSやVED BUENS ENDEを始め、BEYOND DAWNやTULUS、INFLABITAN辺りのバンドが独自の、アヴァンギャルドでグロテスクな作風を提示してきたという印象があるんですが、このバンドはポーランド出身で、2003年結成というプロフィールにも関わらず、後者の独自路線北欧ブラックのムードを色濃く感じさせるブラックメタルを演っていますね。

作風としては、灰紫の濃霧で覆われたような、ギターリフのノイズ質で抽象的ムードを演出しつつその中で何かが蠢いている感じの、オーガニックでグロテスクなフレーズを交えつつ展開していくアヴァンギャルドな路線。メタリックな重さはある程度保ちつつも、薄気味悪いノイジーさも感じさせるプロダクションも作風にぴったり。不穏を通り越して不吉な印象を聴き手に与えるような雰囲気が常に立ち込めてます。

かなりメロディアスなトレモロを含む疾走パートもあり、聴きやすい部分もあるにはありますが…途中ハンドクラップがやたら気色悪い使われ方してたり、疾走の裏でベースが催眠的なフレーズを弾いていたり、上記のバンド以上に捻じ曲がった感性が至るところで発揮されています。リバーブも掛かった、やたら太い声のヴォーカルにもどことなく異常な雰囲気が感じられ、生理的な嫌悪感に訴えかけてくるものがあると思う。

上記のバンド以外でいうと、メンバー的にも関わりがある、同郷のMOROWE辺りにも通じる雰囲気がありますが、こちらの方がもっとグロテスクでアヴァンギャルドな印象が強いですね。黎明期の個性派ノルウェー産ブラックが好きだった方、とにかく不吉でグロテスクな音楽が好きという方にお勧めです。


さくら学院 ★★ (2012-07-21 01:20:09)

>夢想家・Iさん

ぶっちゃけ名義はどうしようか迷ったんですが…
wiki見るとTwinklestarsがavexからシングルを出してたり、他のグループ内の派生ユニット(部活?)でもCDをリリースしているようなので、それら全てを一個一個別アーティスト扱いにしてしまうと煩雑になりすぎる気がするんですよね。さくら学院名義で全部纏めて見たり書き込めたりした方が便利かな…と。私としては、例えばメンバーが卒業してもBABYMETALが存続することが決定したり、なにか本体と切り離した活動である根拠が明示されたなら、改めて分けて登録するのがいいかな…と思います。

もちろんこのサイトがHM/HRに特化したものであったことを考慮して、BABYMETALのみ特別に分けて登録し、他の派生ユニットの楽曲の感想・レビューはこっちに書き込んでもらう、という形式も十分ありだと思います。取り合えず私は纏めた方が見やすいと思い、この形で登録しましたが如何でしょう。その辺りのご判断はお任せします。


BLACK FLAME - Septem ★★ (2012-07-19 21:12:01)

2011年発表の5th。

タイプとしては、デスメタルのダイレクトな暴虐性を取り入れてビルドアップした感じの、ファストパートに重きを置きつつヘヴィネスも重視したブラックメタルで、BEHEMOTHやHATE、RAVEN WOODS辺りを思わせる路線の音ですね。ヴォーカルもブラック的なハイピッチ絶叫でなく、低音のグロウル主体でかなりデスに近い作風。ハーモニクスを交えたギターワークも、緊張感を生み出していてかっこいい。

デスメタル的な刻みを多用した、荒々しいリフ捌きにブラック由来のメロいトレモロを仕込んでくるのはこの手のデス寄りブラックでは常套と言えますが、他の似た路線のバンドやメロブラ系のバンドと比較しても、メロディの陰鬱度が高いのが特徴。短く陰鬱で、印象的なフレーズをリフに込めて執拗に繰り返す様は何か鬼気迫るものを感じます。ヴォーカルの吼え方も、BEHEMOTH辺りと比べると勢いで譲るものの、何か恨みがましさのようなものが感じられる気がします。

数々のそれなりに知名度の高いバンドに関与してきた人物が主導権を握るバンドだけあって、基本的なクオリティは非常に高く、エクストリームメタルが好きであればすんなり入り込める作品。後は似た路線のバンドから一歩抜きん出るような、強烈な何かが欲しい所ですね。


BLACK FLAME ★★ (2012-07-19 21:09:32)

イタリア産ブルータルブラック。
DEAD TO THIS WORLDやJANVSにも籍を置き、SLAVIA、DISIPLIN、GLORIOR BELLI、MORTUARY DRAPEなど数多くのバンドに関わってきたM:A Fogらによるバンド。


さくら学院 - さくら学院2010年度~message~ - ド・キ・ド・キ☆モーニング (2012-07-19 21:05:01)

この曲目当てでアルバムまで買ってしまったけど…う~ん…別に悪くはないけど、後のシングル曲(「いいね!」「ヘドバンギャー!!」)と比べると、まだ吹っ切れていない感じがします。普通のキャッチーで明るくポップなメロディを持ったアイドルソングに、メタル由来のヘヴィな演奏を組み合わせた曲ですが…ただくっつけただけって感じで、かなり違和感がある。前述の曲のように、違和感をキャッチネスやフックとして聴かせられてたらまだいいんですけど。


NECRONOCLAST - Ashes ★★ (2012-07-16 22:18:50)

2011年発表の4th。

イギリスの独りブラックということですが、割とブラックとしては王道っぽい路線の作風ですね。初期MAYHEMの邪悪さや陰鬱さを重視しつつもある程度展開を設けた作風と、初期DARKTHRONEの靄が掛かったようなムードを掛け合わせたかのような感じで、ややプリミティブ志向に寄った音。アトモスフェリックなキーや甘美なリードギターを取り入れた部分もあり、ドラマ性もある作品。

また特徴としては、メロディの使い方に「Si Monumentum~」期のDEATHSPELL OMEGAを思わせる不穏さが強いことが挙げられますね。このメロ使いのせいで、スローパートは鬱系に通じる抑鬱的な雰囲気が、メロディを前に出すパートではどこか妖艶さを感じるような雰囲気が、上手く演出できているように思います。総じて安定したクオリティを持つ作品だと思う。

際立った個性は正直そこまで感じられませんが、逆に言えば変な癖もなくジャンルのファンであれば入りやすい作品だと思います。流石に入門には向きませんが、中級者以上の方にお勧め。


SIGRBLOT - Blodsband (Blood Religion Manifest) ★★★ (2012-07-16 10:32:40)

2003年発表の1st。
2009年にWorld Terror Committeeより再発。
CHAOS INVOCATIONやASCENSION辺りがそうなんですが、WTCが目を付けたバンドって恐ろしいクオリティの作品を出してることが時々ありますよね…この作品も聴いてビビりましたもん…。

メジャーバンドと比較するとやや粗めながら、メロディアスさもノイジーさも良い按配に邪悪さを醸し出してくれるギターリフや、疾走パートでは炸裂感を伴う、ややRAWな音色のドラムが噛み合って出来る、聴きやすくも生々しさも残る音質といい、ブラックの中でも宗教色の強いムードといい、苛烈な疾走を軸に緩急を上手く付けた展開といい、個人的にはFUNERAL MISTの「Maranatha」アルバムを強く想起させる音。

ただ、大きく異なるのはこちらの作品はフォーク/ペイガンからの影響が感じられることでしょうか。時々民族っぽさも感じられる、勇壮なメロディが奏でられたりもしてるんですが…普通こういう民族系メロが来ると雄大な自然の情景が浮かんで来たりしますが、この作品の場合余りにも音が邪悪なので蹂躙されて荒廃した大地みたいな、悲惨な情景ばかりが思い浮かびます。しかしこの叙情性は曲の中でいいアクセントになってると思う。

そしてFUNERAL MISTの一番のウリといえばArioch氏の表現力に長けたヴォーカルですが、こちらも歌い方やエフェクトのバリエーション自体は譲るものの、ダイレクトな邪悪さでは肉薄できるレベル。ギターノイズの下でもがき苦しむかのようながなり声で、まるで神の怒りに触れて全身を腫瘍で覆われた人間が、それでも神を呪う言葉を全霊を込めて吐きつけている感じ。恐ろしく不敬で、かつ本能的な恐怖を呼び起こすような表現力。

これは本当に素晴らしい作品。オリジナルを出していたレーベルは割と小さい所だったのに加え、今では閉鎖してしまったので、この作品を私の手の届くところに持ってきてくれたWTCには大感謝ですね。FUNERAL MISTやOFERMOD辺りの濃密な邪悪さを持ったブラックや、ペイガン志向のブラックが好きであれば是非。これはもっと知られて然るべき作品ですよ。


CULT OF ERINYES - A Place To Call My Unknown ★★ (2012-07-16 10:29:54)

2011年発表の1st。

個性派を多数輩出するベルギー産のブラックという事ですが…スタイル自体はスローパートも適度に設け、トレモロリフでアクセントを付けつつ緩急付けて展開する、北欧スタイルのブラックメタルという感じですが…ゴリゴリいうベースといい引き摺るようなノイズを伴うギターリフといい、妙に重苦しくのしかかるような音作りが成されているのが特徴。そのせいで特にスローパートでの閉塞感が凄まじく、6曲目ラストなどはヴォーカルの凄絶さも相俟って世界の絶望を一身に引き受けているかのよう。そこから一転して音が途切れる展開は絶妙的な気持ち悪さ(笑)。

ただ、マイナーバンドにありがちなんですが、大きく話題になるようなバンドと比べると「引き」のパートが大分弱いんですよね…。アトモスフェリックな音使いで死が迫ってくるような気味悪さを演出するパートや、トレモロリフが邪悪通り越して破滅的な情景を描き出すパートなど、聴かせどころとなる部分は非常に魅力的なんですが、アルバム全体を通して今ひとつ聴き手の注意を引き続ける力に欠ける感じ。ヴォーカルも最初ホイッスル気味の絶叫をしてますが…あんな声出せるならもっとガンガンに使った方がインパクトあるのに。緩急や抑揚を付けようとして却って出し惜しみに聞こえる感じも。

前述のように音作り自体に工夫も見られるし、フレットレスベースやパーカッションを部分的に取り入れていたり、一歩抜きん出るための努力はしてると思うんですが、いまいちそれが伝わりにくい印象の作品。この作品をリリースしたあと、Code666に移籍したようなので、もう少し分かりやすく秀でた部分を見せ付けるような、曲を通してのプレゼン能力の向上に期待したいところですね。


ANGMAR - Zurück in die Unterwelt ★★★ (2012-07-14 15:59:07)

2009年発表の2nd。

ANGMARというと、あのALCESTともスプリットを出した事で有名ですが…確かにそれも頷ける、シューゲイザー/ポストブラック勢にも通じる、儚げで浮遊感のあるメロディセンスを持った作風ですね。ただこちらはノイジーなリフや苛烈に疾走するパートも多い楽曲構成、憎しみを剥き出しに絶叫するヴォーカル等、よりブラック色が強い音で、ALCESTやLES DISCRETS辺りのシューゲイザー系のバンドの持つ幻想的なムードを保ったままがっつりブラックを演っているような感じ。

しかしこのバンド、本当に楽曲が優れてますよね。トレモロリフを一つ取ってみても、ただ儚くてエモーショナルというだけでなく、男性クワイアと合わさって異形の森が眼前に迫るような非日常的で、思わず畏れを抱いてしまうような感覚を演出してみせたり、ファストなリズムと合わさって身を切るような苛烈さを表現していたり、フレーズがいちいちドラマティックで、芸術的ですらあるんですよね…。

曲の構成も非常に上手く、特に20分を超える大曲の3曲目はかなり長めの時間をアコギパートに割いていたりしますが、凡庸なバンドが同じことをしたらダレてしまいそうなところ、このバンドは常に聴き手を世界観から離さないような、求心力の高さをしっかり保ててますからね…。むしろアコギだけでもずっと聴いてられるレベル。こういう「引き」のパートでも「押し」のパート以上の魅力を出せる辺り、本当に一流なんじゃないでしょうか。

アートワークもこのバンドの音楽を聴いていて浮かぶ情景そのままという感じなので、ジャケを見て、「この薄暗くて幻想的な森の中で心行くまで森林浴がしたい」と思った方は是非レジに持っていくことをお勧めします(笑)。メロブラ好きからシューゲイザー系好きまで必聴のアイテムですよ。


ANGMAR ★★ (2012-07-14 15:56:59)

フランス産ブラックメタルバンド。
ANNTHENNATHやQUINTESSENCEのメンバーも在籍。


モーニング娘。 - モーニング娘。'14 カップリングコレクション2 - 青春ど真ん中 ★★★ (2012-07-14 15:55:58)

モーニング娘。の10期メンバー(石田・工藤・佐藤・飯窪)による曲。
ようやくこの面子のそれぞれの声をしっかり聴く機会が出来た感じですが、思った以上に個性的ですよね。石田さんは今までのモーニング娘のイメージを継ぐような正統派な感じ、工藤さんは成長したら歌に色気が出そう、佐藤さんは「鈴を転がすような音色」って言葉そのままの声、飯窪さんは一生懸命な感じの高音が好感。可愛くハネた曲調も好みですし、カップリング目当てに購入した価値はありましたね。しかし、この歌詞の主人公が恋している相手…曲を聴く限り、学生服を着たつんく氏しか浮かんでこないんですけど(笑)。


モーニング娘。 - モーニング娘。'14 カップリングコレクション2 - 私の時代! ★★ (2012-07-14 15:55:00)

現モーニング娘。の年長組二人(道重・田中)による曲。
打ち込みのアップテンポなリズムでにぎにぎしく盛り上がる、曲調自体はかなり好き…なんですが、高歌唱力で安定した声の田中さんと良く言えば超個性派の道重さんは、サシで向かわせると声がぶつかってる気が…ここに正統派な亀井さんやアーティスト志向の高橋さん辺りが入るとバランスが良い感じなんですが、正直この二人だけの声の相性は微妙かも。


KVELE - DAWN OF THE IMPALER ★★★ (2012-07-11 20:47:35)

2010年発表の1st。

ここ最近買ったマイナーなブラックの中ではかなり個人的なツボに嵌まった音源。プリミティブ系統に通じるカルトで荒々しい雰囲気を撒き散らしながらも、もっとリフの音質やフレージングにメタルとしてのダイナミズムだったりヘヴィネスだったりを重視した作風で、ブラックの荒涼とした叙情性にメタル本来の力強さを上手く混ぜ合わせたような印象。ヴォーカルの絶叫も狂気的でありながら猛々しく、この音には合ってると思う。

ブラックメタルの寒々しさをしっかり感じさせつつも、時折グルーヴィにすら感じるリフ捌きが非常に魅力的で、聴いていると雄々しく進軍し大地を蹂躙する軍隊のようなイメージが浮かびます。メタリックで動的な感触とブリザードな寒々しさを両立させている箇所では、昔のDISSECTIONを思わせたりも。こっちはプリブラやオールドスクールの血が入ってる感じで、シンプルで大分荒々しいですけど。

単純にこのリフのフレーズといい、音質といい聴いていて心地良さを感じられるんですよね。フルアルバムにしては演奏時間は大分短めですが、昔のGORGOROTHもこれくらいだったし、まあ問題ないでしょう。


AMPULHETA - NEBLINA ★★ (2012-07-11 20:45:03)

2011年発表の6曲入りデモ。

ZERO DIMENSIONAL RECORDSより国産ブラックのデビュー作がリリースという事で話題になった作品で、各種レビューサイト/ブログでも割と好意的な反応を得てましたね。路線的にはモロにプリミティブなブラックで、邪悪なメロディは紡ぎつつも、ギターノイズによるヒリヒリした殺伐感を重視した音。血液をペースト状にして吐きつけるかのような壮絶なヴォーカルも聴き所ですね。

基本はノイズの荒れ狂う、RAW極まりないブラックなんですが、曲によって音作りが微妙に違うのも特徴。2曲目や4曲目は刃物のようなノイズの奥から破滅に誘うようなメロディが聞こえてくる感じですが、3曲目は高音域を重点的に責めるような金属的な感触が強く、6曲目はカルトバンドの一発録り音源のような荒々しい音。共通して金物以外のドラムがギターノイズに埋もれかけてる感じで、それが地獄の釜が煮えるようなイメージを持って聞こえてくるのが面白い。

SSORCやCATAPLEXY、MANIERISME辺りと比べるとちょっと外部へのアピール力という点で一歩譲る気はしますが、国産ブラックに注目してる方なら手を出して損なしかと。


AASGARD - Nekriki Mistagogia ★★ (2012-07-11 20:41:04)

1stと2ndの間にリリースされた6曲入りEP。2011年発表。

ギリシャの二人組プリミティブブラックということですが、路線的にはかつてのDARKTHRONEのようなミニマルで薄っぺらくノイジーな典型的プリブラをベースに、メロディをやや抑え目にする代わり、ミニマルな魅力をスポイルしない程度にメタリックなダイナミズムをリフに少し取り入れている感じでしょうか。しっかり荒涼感も出せてるし、ノイズに言葉が乗っているようにしか聞こえないヴォーカルも気合入ってるし、水準以上のクオリティはあると思う。

このジャンル、ドラムの金物の音がやたら響いてうるさいことは多いんですが、この音源はむしろ逆で、普通のこの手のバンドの音よりもちょっと低めで、それが妙に枯れた感触を演出しているんですよね。良く聴くとバスドラムの音色の抜けも独特で、リズムの音作りは割と特徴的。うっすらノイジーなギターとの相性も良く、ミニマルな展開の陶酔感を強めてると思うし、個人的にはこの音嫌いじゃないです。

メロディは少し控えめだし、この手に特有のミニマルさもあるし、この手が好きな方向けの音源ではありますが…5曲目のエピックなメロディ等、時折耳を引くセンスもあって悪くないと思います。ただ演奏時間短い割に、オープニングとエンディングにがっつり力を入れる構成はどうなんでしょう(笑)。


MARDUK - Serpent Sermon ★★★ (2012-07-08 23:31:32)

2012年発表の12th。

MARDUKってブルータルブラックにしては分かりやすい曲が魅力で、例えば「Panzer Division Marduk」のアルバムを通しての爆走とか、代表曲といえるであろう「World Funeral」「Azrael」辺りのキャッチーなメロディなど、「1フレーズで殺す」音楽性を持っているイメージなんですが…Mortuusが加入してからの2作目「Rom 5:12」辺りからもっとディープな方向に向かいだした印象で、この作品もその延長線上にある感じですね。

例えば2曲目の、ドラムは爆走しつつリフの音圧に変化を付けることで、雷鳴のような迫力を得ているアンサンブルなんかが象徴的なんですけど、以前よりも緩急の付け方だったりメロディの濃淡の按配だったりが、よりダイナミックかつオーガニックになっている印象なんですよね。加えて、今作では「Plague Angel」以前のキャッチネスも更に強調されている感じで、今までの彼らの作品の集大成と言っても過言ではない充実した仕上がりになっていると思う。

当然、Mortuusのブラック界屈指の表現力を誇るヴォーカル、Morganの荒涼感を聴き手の感覚にダイレクトに伝えるかのようなリフ捌き、暴虐でありながら死を感じさせる陰惨さも伴った曲調など、今までのMARDUKが持っていた魅力が発揮されていることは、言うまでもありませんね。ベテランらしいクオリティの高さも当然ありつつ、しっかり作品ごとに成長や変化が感じられるのは凄いと思う。これだけ縛りの多いジャンルで長く活動していて、アルバムが金太郎飴にならないというのは本当に偉大。改めてそれを感じた作品でした。


SRODEK - FORFALL ★★ (2012-07-08 22:24:42)

2011年発表の2nd。

鬱ブラックの中では、結構個性的な音を出してるバンドですね。
他の同系統のバンドと比べるとトレモロリフの使用頻度はかなり低めで、代わりに妙に温かくて太い音色のベースラインと、アコギやアルペジオを多用したギターワークを絡めて浮遊感を演出し、そこにノイジーなギターが更にレイヤーを重ね、閉塞感のあるムードを醸し出している感じですね。

トレモロリフと陰鬱なメロディで攻める、一般的な鬱ブラックは抑鬱された心情が伝わってくるようなものが多いんですが、このバンドはこの音作りに加えてシューゲイザー系にも通じる、温かみのあるメロディを交えてくる事も相俟って、壊れゆく精神を覗いているような感覚に陥りますね…。ヴォーカルがデス声というよりも、発狂した男が閉じ込められた独房から聞こえてくる怒声のような生々しい叫びなのもその感覚を助長してます。

鬱ブラック特有の物悲しさや精神に来る感覚を、他のバンドとは少し違う切り口で表現した作品だと思います。MORTUALIAやTHROUGH THE PAIN辺りの、このジャンルでも代表格より一歩踏み込んだバンドが好きな方にお勧め。


SRODEK ★★ (2012-07-08 22:23:56)

スウェーデン産ブラック。
SVARTI LOGHINのライブメンバーでもあるNekrofucker氏によるプロジェクト。


FURZE - Psych Minus Space Control ★★★ (2012-07-06 20:46:25)

2012年発表の5th。
変態系だけど何気にリリースはコンスタント(笑)。

前作はこれまでよりドゥーム・サイケ色が強くなった印象ですが、今作はラストの曲以外はインストにして、更にその路線を推し進めた感じですね。プリミティブブラック由来のアナログな歪みのギターやRAWに抜けるドラム、Woe J Reaper氏の歪んだ感性が練り上げるオカルティックに引き摺るリフのフレーズが枯れた薄暗い道を演出し、そこを時々半ば酩酊したような足取りを交えてとぼとぼと暗い方へ歩いていくような、相変わらず気色の悪さでは右に出るもののいないドゥーミーなブラック。

ただ、今作ではミニムーグやメロトロンなど、ヴィンテージな鍵盤楽器も取り入れた演出もあり、今まで持っていた彼の奇妙な感性に昔のプログレやサイケデリックロックに通じる感触もブレンドされているような印象。これによってサイケデリックな感覚はいっそう深みを増したような感じはするんですが、反面3rdの時のようなルーツの見えない、見えていても彼自身の感性の独自さが強過ぎて歪んでいる、そんな得体の知れない気味悪さはちょっと減退しているかも。まあラストの曲は相変わらず変な展開だし、今まででもかなり奇妙な曲だとは思いますが。

独特なブラックメタルの視点を持っているバンドだけに、個人的にはあんまりルーツ重視の方向に行ってほしくはなかったりするんですが、ドラッギーな感触は過去作と比べても最も高い作品に仕上がったと思います。聴き手を世界に引き込む力自体は上がってると思いますし、これならプログレ好きでも行ける…ような気がしないでもないです(笑)。


HELDENTUM - Waffenweihe (2012-07-06 20:43:16)

2003年発表の1st。

民族楽器の導入など派手な要素こそないものの、ヴァイキング的な朗唱やほんのりと民族っぽさの漂うメロディなど、基本ミディアムパートを重視したRAWなブラックながら、そこはかとなく漂うペイガンな感触に味わいのある作風ですね。門外漢にお勧めできるような分かりやすいウリには正直欠けるものの、ドラムのガチャガチャした感じなんか地味に味があって良かったり(笑)。

個人的にこの音源、メロディに繊細な部分はあるものの、「豪快」なイメージなんですよね…。まずヴォーカルの第一声の笑い声からしてやたらいかついし、人肉食って血塗れの口で叫んでそうな、やたら野蛮な叫び声もなかなかのインパクト。この迫力はヴォーカルが前に出たミックスのせいだけでなく、声そのものがデカいせいもあると思う(笑)。また、メロディを明確に聴かせる場面ではリードなりリフなりのフレーズを強調する音作りも何だか豪気な感じ。

正直もう一声なにかこのバンドならではと言ったものが欲しいんですが、まあ悪くはないかと。ABSURDやドイツのペイガン系の人脈追ってるなら持っておいて損はないかも。


HELDENTUM ★★ (2012-07-06 20:41:20)

ドイツ産ペイガンブラック。
ABSURDのWolf氏、WOLFSMONDのManagarm氏らが在籍。


DIE SAAT - Wir laden zum Feste ★★ (2012-07-06 20:37:43)

2006年発表の3rd。

まず1曲目の多重ヴァイキング朗唱によるアカペラがかっこよすぎですね。マイルドで男らしい野太い声で本編への期待を煽りまくりですが、本編でもしっかりヴァイキング朗唱をフィーチャーしたペイガンブラックを演ってくれてます。冷えた空気感や幽玄なムードを醸し出すアトモスフェリック系の音色、お祭り系のフォークメタルにも通じる華やかなストリングス、ピアノ系の音色などを場面によって使い分けるキーボードも良い仕事をしていて、かなりメロディアスな音。

ただ、激しく刻んでる時やブラスト爆走パート等はいいんですが、朗唱やキーボードが曲の主導権を握っているとき、時々リフに大味さを感じるのが惜しいんですよね…。リフの音自体はヘヴィで悪くないと思うし、ペイガン系特有のインパクトの強いメロディセンスも良い感じだし、そこだけクリアできればA級の音にグッと近づきそうな感じはするんですが…現時点ではフォーク/ペイガンメタルを愛好してる人にしか敢えてお勧めはしないかな…という感じ。

…とは言っても、分かりやすい民族メロは魅力的だし、ヴァルハラでエインフェリア達が戦いの士気を上げる歌を歌ってるようなクリーンはかなり素晴らしいので、この手が好きな方には十分お勧めできるかと。


DIE SAAT ★★ (2012-07-06 20:36:11)

ドイツ産ペイガンブラック。
ABSURD人脈ですが、NS的な思想は特にテーマにしてないそうです。


モーニング娘。 - ⑬カラフルキャラクター - One・Two・Three (2012-07-05 13:13:30)

なんと50枚目となるシングルで、売り上げや評価もかなり良かったようですが…個人的には微妙な感じ。だって歌メロにクサい箇所が全くないんだもん(笑)。まあ、インストだけでも心地良く聴けるトラックと、そこに過不足無く歌をはめてキャッチーに仕立てた、曲自体の質が高い事に疑う余地はないんですが、ギターが入ってない時点でメタル脳なリスナーには辛い(笑)。


モーニング娘。 - ⑬カラフルキャラクター - The 摩天楼ショー ★★★ (2012-07-05 13:12:48)

「この地球の~」と、(Berryz工房の)「シャイニングパワー」を足したようなアレンジの楽曲。ダンサブルなベースラインと多幸感をもたらすような華やかなブラスが耳を引く曲で、音だけ聴いててもメンバーがクールに踊る様が浮かんできそう。こういうファンク要素強い曲って何気にギターがかっこよかったりしますよね。この曲のカッティングの音色とかかなり好きです。つんく氏は自分の歌を入れたデモをメンバーに渡す事でも有名ですが、特にフェイク部分などメンバーの歌唱を通じて彼の歌声が浮かんでくるようで、聴いてて楽しいです(笑)


モーニング娘。 - モーニング娘。'14 カップリングコレクション2 - アイサレタイノニ・・・ ★★★ (2012-07-05 13:11:43)

モーニング娘。の9期メンバー(譜久村・鞘師・生田・鈴木)による曲。
試聴して良かったのでこれが入ってる盤を買いましたが…複数枚買いしないと全楽曲が聴けない仕様はどうかと…しかもせっかく各メンバーの歌唱をよく聴けるチャンスなのに。

で、楽曲の方は10thアルバムに入ってた「大きい瞳」の第2章って感じで、個人的にはモロにツボな路線。…というか入りのメロディがほぼ一緒な気が(笑)。歌メロはキャッチーですが、キーボードの方にちょっと捻ったメロディが入ってたりして聴き応えのあるアレンジ。特に「アイサレタイノニ…」の裏で鳴ってるピアノメロ、ゴシックドゥームからエレクトロニカ方面へ進んだ某フィメールゴシックの代表バンドの後期作品にありそうなメロで素敵過ぎる。歌的にはやっぱり鈴木さんの声が凄く好きですね、最初のロングトーンに込められた艶に思わずゾクッと来ました。まだ歌割少ないですけど、歌における潜在能力はメンバー1高いのでは。これからにも期待です。


VELDRAVETH - TEMPLE OF BLACK FLAME ★★ (2012-07-05 13:08:17)

2009年発表の2nd。

南米・ベネズエラ産のブラックということ以外よく分からないままジャケ買いしてしまったんですが…これが意外なほどにかっこいいです。オールドスクールでダーティなリフに、時折北欧産にも通じる寒々しさと、辺境っぽい泥臭さが上手く交じり合ったトレモロを組み合わせたスタイルで、心地良いRAWさのプロダクションも相俟ってブラック好きならすぐにでも受け入れられるであろう音。変にマニアックな感じもせず、この手では聴きやすい方かと。

時々ヴォーカルラインが余りにも単調だったり、歌詞がサタニズムのおどろおどろしく攻撃的な面ばかりを強調するものであったりするんですが、個人的には全くマイナスではないですね。むしろシンプルな攻撃性を率直に伝えていて好感触。
3曲目のメインリフのような、北欧のブリザードリフを南米の呪術で強化したような、邪悪で生々しいメロディのフレーズ、この高いセンスをコンスタントに発揮出来るようになれば南米産ブラックの代表作足りえる作品も作れてしまいそう。現時点でもRAWブラック好きなら買って損はない質はあると思います。


DEAD TO THIS WORLD - Sacrifice ★★★ (2012-07-05 13:00:08)

2011年発表の5曲入りEP。

最近のIMMORTALやIMMORTAL絡みのバンド(DEMONAZ辺り)って、ブラックの邪悪さやエクストリームネスがあるのは勿論なんですが、それ以上にヘヴィメタルとしてしっかり芯の通った作品をリリースしているという印象があるんですが…このバンドも例に漏れず、メタルとして非常に骨の太い、ストレートなかっこよさを感じさせるブラックを演ってる感じですね。

ただこちらはIMMORTALよりもスラッシュの影響がより強く出た曲作りで、展開はもっとコンパクトでキャッチー。取っ付きやすい音ではあるんですが、シーンの牽引者の矜持を見せ付けるかのような、明度も温度も同時に下げるような、邪悪なトレモロや妖艶なリードメロディも使い、それがキャッチーな曲作りの中で非常に映えてるんですよね。ただ叫ぶだけでなく、搾り出すような表現力を発揮するヴォーカルもなかなかで、分かりやすい邪悪さとかっこよさのある作品。

個人的には、IMMORTALやDEMONAZの直近のアルバムよりも気に入ってしまった作品。スラッシーな熱気とメタリックなかっこよさ、ブラックの邪悪さ寒々しさが互いをスポイルし合うことなく、見事に組み合わさった良質な音源。ちょっと演奏時間は短いですが、お勧めです。


DEAD TO THIS WORLD ★★ (2012-07-05 12:55:41)

IMMORTALを始め、NECROPHAGIAやGRIMFISTなど多くのバンドに参加し、ブラックメタルシーンに貢献してきたIscariahの在籍するバンド。IMMORTALよりもスラッシーな感触の強いブラックメタル。


SKOGEN - Svitjod ★★ (2012-06-30 20:32:22)

2011年発表の2nd。

ミディアムテンポを中心に、土着性や寒々しさを感じさせる、ペイガン要素の強い叙情トレモロで聴かせる、メロウで悠遠な雰囲気の漂うブラックメタル。ヴォーカルの絶叫が少し遠めで、ギターがややRAWなミックスも、情景的であることに拍車を掛けてますね。時折ヴァイキング的なクリーン歌唱、DISSECTIONにも通じるアコギなども取り入れており、かなりメロディアスな音。キーボードも使うタイプですが、お祭り系の音色を派手に鳴らす事はなく、あくまでアンビエンス重視な使われ方で、ペイガン系としてはかなり落ち着いた感じの作風。

この作品のキモはやはりリフによる情景描写でしょう。時々ヒロイックにすら感じるほど悲壮感やメロウさの強い、強力なフレーズをトレモロで紡ぐパートもあれば、暗雲が立ち込めるように刻み、厚みを出して暗黒性を演出するパートもあり、まるで自然の優しく雄大でありながら、突如として悪意を持って牙を剥くような、人の力の及ばない一面を表現しているかのよう。インパクトの強いフレーズとフレーズの繋ぎの部分が少し弱い感じも覚えなくはないんですが、このジャンルとしては十二分にドラマティックな音と言えるかと。

HELRUNARやNATAN辺りの、メロブラ要素の強いペイガンブラックが好きな方にはかなりお勧め。これらのバンドよりもより落ち着いた、風景を感じられるような音を出してると思います。


BEYOND THE DREAMS - In the Heart of Nothing ★★ (2012-06-30 20:29:21)

2011年発表の3rd。

これ、1曲目がNACHTBLUTの「Antik」を初めて聴いたときに匹敵する衝撃ですよね…シンフォブラックにこんな甘酸っぱいメロディ乗せるか、っていう(笑)。1曲目以外にこんな変り種な曲はないですが、モダンでスタイリッシュな質感のリフに印象に残るメロディのキーボードを乗せた、メロデス的なストレートなかっこよさの強いシンフォブラックで、決してインパクトだけに終わらないクオリティのある作品ですね。

ただ、このバンドはモダンなゴシックメタルの血も入っているせいなのか、時折ダミ声でリズミカルなヴォーカルがちょっとラップっぽく聞こえたり、リズムにダンサブルさを感じたりするんですよね…。その辺りにかっこよさを覚える人や、そもそもブラックの邪悪さに然程こだわらない人なら、逆に取っ付きやすく感じると思いますが、個人的にはシンフォブラックとしてはちょっと軽く感じてしまうかも。

とは言っても、メロディの煽情度、音作りのクオリティの高さなど、エクストリームメタルとしてはかなり高いレベルにある作品だとは思う。モダンでポップなゴシックやメロデスも聴いてる人で、それらとシンフォブラックの折衷に興味がある方は聴いてみてもいいと思う。


MYRKVIDS DRAUMAR - My Land's Blood (2012-06-25 04:44:44)

2010年発表の2nd。

ウクライナというとどうしてもペイガン系の強いイメージがありますが、このバンドもあからさまに民族メロを取り入れたりはしていないものの、メロディや世界観にどこか民族要素が感じられるスタイルですね。ミディアム中心で、トラッド風味でメロく勇壮なリードギターと刻みリフを伴いつつ進行していく展開は、メロブラというよりメロデスっぽくも思えたり。

ただこのバンド、アンサンブルだったりヴォーカルラインの乗せ方だったりに、妙な「間」のようなものが感じられるんですよね…。なんかいなたい雰囲気が出てるというか、掛けていると農作業が捗りそうな感じがするというか(笑)。ともかく今までに聴いた事のないような独自のムードはあると思う。そんないなたい雰囲気とは裏腹に、ヴォーカルがやたら鋭いデス声なのもミスマッチで変な味が出てます。

音質も悪くはないし、クオリティも低くはないと思うんですが…如何せん作風がニッチ過ぎて(笑)。正直どこに向けてお勧めすればいいのか分からないんですけど、ちょっと変わったブラックが聴きたい人は聴いてみてもいい…かも。


BORNHOLM - March for Glory and Revenge ★★ (2012-06-24 01:54:37)

2009年発表の2nd。

これ、相当クオリティ高くないですか…?
タイプとしては刻みリフとトレモロリフを巧みに織り交ぜ、疾走パートに重きを置きつつドラマティックに、時にテクニカルに聴かせるスタイルで、疾走パート重視だった頃のDISSECTIONや再結成後のKEEP OF KALESSINに通じる音。勇壮なブラス系、幽玄で雄々しいクワイア系のキーボードの導入など、ペイガン的な味付けもあり。

上記のバンドに比べると、ギターソロには殆どリソースを割かず、リフの暴虐性で責め立てる展開、メロディの叙情性よりも刻みの圧力を強く感じるリフのスタイル、ペイガン要素が触発する戦争ムード等の要素により、かなり好戦的に聴こえるのも特徴ですね。演奏もテクニカルで音圧高めなので、エクストリームメタルとしてストレートなかっこよさがあると思う。

ただ、暴虐に刻むリフの影でかなりメロウなメロディも取り入れていたり、丁寧かつセンスも悪くない曲作りが成されているとは思うんですが、上記バンドと比較すると初聴でのインパクトが少し薄い気も。その辺り見直して、初見の客をがっつり引き込むキャッチネスを身に付けてくれれば大化けするんじゃないでしょうか。現時点でも、マイナー物件としてはかなりお勧めのバンドです。