「Renewing the Call for War」 ジギジギ系の金属質なノイジーさの中から、微かにメロウなメロディが聴こえてくるリフ捌きと、細かく脈動するようなベースライン、単調な打ち込みドラムが特徴の、カルト臭の半端ないプリミティブブラック。エフェクトの掛かりまくったノイジーなヴォーカルや、一頻り暴れ終わったら曲を閉じるミニマルな展開など、この手の中でも衝動性の高い音。時々疲れたように息を吐いてるようなヴォーカルは妙な味がありますね(笑)。どこか忙しないというか、細かい感じのするリズムの取り方は北欧勢とはちょっと違うポイントでしょうか。
「Playing with Toys that would have been Dangerous even for Plato’s Republic」 基本的には「Renewing~」と同路線の、衝動的なプリミティブブラックですが、若干曲が長くなったのと、メロディの煽情度が上がった事で少しだけエピックな感触に。ただ、ノイジーさが大幅アップし、MUTIILATIONの3rdや4thを更に耳に痛くしたような、物理的にキツい音質になってるので、カルト臭は更に増している印象。このパートでも忙しないリズムの取り方、たまに疲れたように息を吐くノイジーヴォーカルなど、味のある部分はしっかり引き継いでるのが良いですね。
「Himno a Jorge Rafael Videla」 このパートとボーナス2曲はシンセアンビエント。 サブタイトルの中に「オーケストラ」「ピアノ」「オーボエ」などの単語が散見される事からも分かる通り、クラシック風の美しいメロディを聴かせる作風。清浄さや荘厳さを感じる音像も美しく、さっきまで粗野なプリブラを演っていたとは思えない曲調。ちょっと音割れ気味な部分があるのは惜しいですが、やはりメロディは良いです。
しかも曲のバラエティに富んでいるだけでなく、例えば「Early Bird」ならモータウン風、「消失点」ならバラード、「co・no・mi・chi」なら歌謡ロック、「I NEED YOU」ならパンクなど、どの曲もガールズポップの中のその路線で言えば最高クラスの仕上がりなんですよね。加えてクラシックなロックのエッセンスを演奏の随所に感じさせながらも、打ち込みを上手く使ったポップさの演出や、少女マンガ的な世界観の、キラキラした可愛らしさ等も両立させているのがホント素晴らしい。
2011年発表のコンピレーション盤。 07年のCD「Impale Golden Horn」、10年のカセット「Forbidden Planet」を収録の二枚組。
「Impale Golden Horn」 こちらの音源は、メタル色は希薄…というかほぼ皆無な、ドローン/ポストロック路線ですね。ギターの残響音や電子音が絡み合い、心地良くサイケデリックな浮遊感を感じさせてくれる音。一部で登場するヴォーカルも全てクリーンで、マイルドな声質で歌い上げてます。ニューエイジ思想で言うところのアセンション…人間の魂が次の段階にステップアップする次元上昇を体感しているかのような、非常に神秘的で日常から切り離された、しかし心地良い感覚を体験させてくれる作品。
…これは、ぶっちゃけB’zですよね(笑) 歌の入りの直前のギターメロとか、A~BメロまではB’zのパロディっぽいアレンジになってる気がする。「ELEVEN」アルバムや「GREEN」アルバムに入ってそう。サビの穏やかながら饒舌なメロディはJanne Da Arcのバラードに通じるものがあるかも。メジャー系Jロック聴く人は結構気に入るんじゃないでしょうか。
一体何なんだ、この惜しいアルバムは… ペイガン要素も感じる叙情的なメロディを、トレモロリフに練りこんで疾走するメロディックなブラックメタルですが…ちょっと音質が酷いと思う。単に粗いならまだしも、微妙に(=ノイズ系・RAW系として楽しむには半端に)ノイジーな中で、トレモロが微かに聞こえるような、妙に煮え切らない音作り。ドラムはドラムでまるで「鬼女」期のCRADLE OF FILTHのような軽さ。
まだRAWブラックだった頃のKEEP OF KALESSINでヴォーカルを務め、現在でもMAREやCELESTIAL BLOODSHEDなどで活躍するGhash氏の新バンドという事で、何となく買ってしまいましたが…まさにその経歴から期待できるようなRAWブラック。ノイジーな音から邪悪なトレモロが滲み出してくるような作風は、特にMAREやCELESTIAL BLOODSHEDに近い音だと思う。
まず曲の方ですが、プリミティブブラックの様式を踏襲しつつも、トレモロリフにMAYHEMの1stのメロい部分(「Buried by Time and Dust」「De Mysteriis Dom Sathanas」辺り)に通じる、気温ではなく聴き手の体温を直接下げるような邪悪さが宿ってるんですよね。3曲目のアルペジオとSEが交じるインストでは、核戦争で残された廃墟に黒い雨が降り注いでいるような、破滅的な光景が相当な臨場感を持って浮かんでくる。相当なマニアが聴いても、他のバンドと十把一絡げに出来ない音だと思う。
その代わり、歌謡曲的哀愁メロディのダンサブルな曲、ファンクやトラッドなど、様々なジャンルを分かりやすく消化して提示した曲、コミカルで楽しいアッパーな曲、クラシックなロックにルーツを持つ曲などでは、常に結果を出してる感じ。前作はつんく氏の18番の哀愁ダンサブル路線に、グループの持つ洗練されたイメージが見事に嵌まった「Kiss me 愛してる」「会いたいロンリークリスマス」などの佳曲があり、アルバムの山場になっていた感じですが、その手の曲の少ない今作は少々平坦に感じてしまう。
まずはどの曲もキャラが立ってる、アルバムとしての充実度が素晴らしいですね。 モーニング娘の「12,スマート」「10 MY ME」辺りと並んで、つんく氏の作品の中でも1、2を争う出来だと思う。ただモーニング娘のアルバムがバランス重視だったのに対して、こちらは「一丁目ロック!」「ヒロインになろうか!」などパワーで押す曲、「女子会 The Night」「マジカルフューチャー!」などの哀愁系クサメロが堪能できる曲が多く、メタラー的にはより美味しいアルバム。「BOMB BOMB JUMP」「ガールズタイムズ」などアイドルらしい可愛らしい曲もあり、バラエティも豊か。
ただ、音質は悪くはないですが…マニア以外にも推薦できるドラマティックな作風の割には、いまひとつメジャーになりきれない感じの音作りはちょっと勿体無いかも。ただ、前述の疾走パートのカタルシスはタイトな音質にしすぎると薄れる気もするし、6曲目ではサブタイトルの「The Sound of thunder」を意識したようなプリミティブ寄りの音作りがされてたりするし、この音質は意図的にやってる可能性が高いですが。
バンドロゴは如何にもブラックメタルな感じで、レビュー等を見てみてもメロブラとして認識されてる事が多いようですが、ブラックメタル特有のトレモロリフは所々で使いつつも、路線としてはOPETHやBEFORE THE DAWN、BARREN EARTH辺りのプログレ要素の強い、メロディックなゴシックデスに近い音だと思う。ただしこちらはOPETHのような昔のプログレ風味が殊更強い訳ではなく、代わりにトラッドの哀愁感が強調された作風になってますね。
音質もしっかり整えられており、総じて丁寧に作られた作品だと思う。OPETHが結構売れてるようですが、BEFORE THE DAWNやBARREN EARTH、GREEN CARNATION等と一緒にそのファン層に向けて日本盤出したら結構売れちゃうんじゃないでしょうか。哀メロ・美メロ好きには自信を持ってお勧めできるアルバムです。