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Usher-to-the-ETHERさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 1401-1500

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Usher-to-the-ETHERさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 1401-1500

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ORCRIST ★★ (2012-02-01 20:40:49)

イタリアのブラックメタルバンド。
ISVINDのGoblin氏が在籍。


ORDER OF ORIAS - Inverse ★★★ (2012-01-29 23:45:45)

2011年発表の1st。
良質なブラックの作品を数多く出し、ブラック好きの間でも話題のWorld Terror Committeeよりのリリース。

タイプとしては、割とストレートなブラックメタルで、超メロウなリフだったり激ファストなリズムだったりといった分かりやすい特徴こそないものの、闇がふつふつと煮え滾るような、邪悪さをたっぷり含んだリフと、悪魔の代行者として相応しい威厳のあるがなりヴォーカルが、宗教的などす黒さを醸し出す真性な音で、作風としてはNED系のバンドに通じるものがあると思う。

スピリチュアルな雰囲気満点の作風の割に、刻みリフをある意味キャッチーに聴かせたり、長めのギターソロがあったりなど、メタリックなパートもかなり多く設けているのが特徴で、特にギターソロの邪悪と甘美が入り混じったメロディはほんといいセンスしてると思う。ヴォーカルの、如何にも憎々しげに言葉を吐き出すような、怨嗟すら感じさせる表現力も特筆もの。エフェクトのないFUNERAL MIST…というと褒め過ぎでしょうか。

音質もある程度整えられており、カルトな雰囲気の割には聴きやすい作品だと思います。際立って分かりやすい作品ではないので、初心者にはお勧めはしませんが、ある程度ブラックを聴いている方なら嵌まれるアルバムだと思います。


NINNGHIZHIDDA - Blasphemy ★★★ (2012-01-29 23:42:16)

97年発表の1st。
既に廃盤ですが、何気に日本盤も発売されていたらしいです。

これ、出たのは割と昔ですけど、相当クオリティの高い王道シンフォニック・ブラックですよ。メロデス・メロブラ要素の強い刻みとトレモロを駆使したドラマティックなリフワークに、クラシカルなキーが絡む、このジャンルのど真ん中を行く路線で、キーのメロディがダークではあっても、邪悪さより耽美さが強い曲調はCOFの「Midian」アルバムに通じるものがあると思う。あそこまで豪奢な作りではないですし、こちらの方が曲がコンパクトではありますが。

また、特徴としてはブラック特有の高音がなりと、デスメタルのスタイルに近い低音のグロウルをそれぞれ違うヴォーカルが担当している点が挙げられます。両者ともまずまず迫力のある声を聴かせてくれてると思いますが、特に低音のグロウルが切り込んでくるせいで妙にゴツい…というかイカツイ感じになってるのが面白いです(笑)。メロディや曲調はダークで甘美なのに。

音作りや展開が変にチープだったりということもないですし、今聴いても十分に質の高さが伝わるアルバムなんですよね。にも関わらず、イマイチ話題に上らないのは既に解散している事に加えて、バンド名が覚えられないし読めない、分かりにくいものだからではないでしょうか(笑)。EMPERORくらいシンプルな名前にしたら有名になってたかも(笑)。


GRIEF OF EMERALD - The Devils Deep ★★★ (2012-01-27 23:24:02)

2011年発表の4th。
かつては日本盤もリリースされるほど知名度があった彼らですが、前作を発表したあと暫くリリースのない期間が続き、今作は9年振りとなるフルアルバムだとか。

路線としては、邪悪なトレモロも多用するメロディック・ブラックに、荘厳なキーが絡むシンフォニックブラックで、DIMMU BORGIRほど大仰でもないし、COFほど正統派に寄ってもいない、LIMBONIC ARTほどアトモスフェリックでもない、今時ちょっと珍しいくらい衒いのない、ジャンルの王道的な音。5曲目でちょっとだけ前衛的な音色も取り入れてはいるものの、その王道振りが質の高さも相俟って聴いていて安心できる作品。

個人的にはこの作品のメロディセンスがかなり好きですね。シンフォ系ってどうしても派手なメロディになりがちですが、このバンドは荘厳さやクラシカルさはしっかり感じさせつつも、邪悪さや暗黒な感触をちゃんと残してくれているのが素晴らしい。キーボードの音色を使い過ぎていないのも、私的には好感触。聴いていて心地良いメロディと音像を、常に奏でながら展開してくれてる感じ。

また、日本盤も出た2ndを聴いたときは、「引き」パートの弱さを感じてしまいましたが、今作ではそれはすっかり解消されてるように思います。キーボードがよりメロディアスになったこと、バンドサウンドがメロディック・ブラックとしての説得力を上げたことで、1曲1曲を、そしてアルバム全体を頭から終わりまで、インテンスな雰囲気を保ったまま聴かせる力が備わったような感じですね。

最近シンフォ系って、ABIGAIL WILLIAMSの1stを筆頭に、どんどんクオリティの非常に高い作品が出てきてますが、このアルバムもその中でがっつり勝負できる質の高さがあるように思います。ブランクどころかかなりパワーアップしてますので。最近のシンフォ系ではTROLLの最新作など、邪悪さを残しつつメタルとしてのクオリティも高い路線の作品が好きな方にお勧め。


SEAR BLISS - Eternal Recurrence ★★★ (2012-01-26 00:30:55)

2012年発表の7th。
フルアルバムとしては5年振りとなる新作。

前作は管楽器の入った、スペイシー/スペースオペラ的で非常にクオリティの高いシンフォニック・ブラックでしたが、今回はかなりアトモスフェリックな方向に舵を切ってきてますね。疾走パートは全体の1割程度に留め、ねっとりしたベースラインや幻惑するようなアルペジオ、凝ったリフなどのアンサンブルで洗脳的なムードを醸し出す、プログレッシブな作風で、個人的にはARCTURUSの4th辺りに近い世界観を感じました。ただ、ARCTURUSの作品のような奇矯さはこちらにはあまりなく、ひたすらに世界観の中に沈み込んでいくようなシリアスな雰囲気が強いのが大きな違いですね。

作風こそかなり変化したものの、今作でも管楽器を取り入れたシンフォパートは健在。ただやはり使われ方がかなり異なっており、前作では壮大なスケール感を演出していたのが、今作ではアダルトな雰囲気だったり、頽廃的な空気感だったり、よりムード重視になっている印象。また、バンドサウンドによる情景描写は更に緻密になっている感じで、例えば2曲目冒頭の水音のSEと、幽玄なアルペジオが地続きの情景で繋がるところなんかは巧過ぎて溜息が出そうになります。

このバンド、アトモスフェリックな作風になっても、あまりアンビエントで雰囲気モノな方向には行かず、幽玄で洗脳的なムードをバンドのアンサンブルで醸成する、メタリックな音を崩していないのが素晴らしいと思う。録音状態もタイトで聴きやすいですし、濃厚なムードを醸し出すフレーズだけでなく、激しい刻みリフやブラックらしいトレモロ疾走なんかは普通にかっこいい。エクストリームメタルとして前衛的で破天荒な部分と、類型的で普遍性のある部分がバランスよく入ってる感じ。

ただ、欠点としては、作風の割に短いんですよね…曲もアルバム全体としても。特に曲はもう少しこの濃厚なムードに浸っていたいという所で終わってしまう時が多い感じ。まあそれを踏まえても素晴らしい作品ではありますが。前作が宇宙をスペースシップで往く感じだとすれば、こっちは魂が肉体からあくがり、宇宙を揺蕩っている感じでしょうか。今作も前作に続き、本当に良いアルバムですので必聴です。


ORDO OBSIDIUM - Orbis Tertius ★★ (2012-01-25 19:28:52)

2011年発表の1st。

DISK UNIONでトレモロリフ愛好家にお勧めされていたので、ついレジに持っていってしまった1枚。確かにトレモロリフ含有量の非常に多いブラックメタルなんですが、ドゥーム的な引き摺るようなギターリフ、灼けつくような物悲しさを感じさせるギターメロなどもあり、トレモロ一本槍な作風という訳でもないですね。ゾンビの腐肉が剥がれ落ちるかのごとく、ノイジーな音像の中で鳴り響くトレモロリフの使われ方といい、BURZUMのスタイルに近い発狂絶叫ヴォーカルといい、疾走パートは多いものの鬱ブラックに近いムードを持った作品。

トレモロリフは不気味に蠢くような使われ方が多いんですが、所々高音でキリキリした質感を強調させたり、メロディを浮き上がらせたり、聴かせ方のバリエーションもいくつか備えてますね。特にヤバいのはメロディアスさを前面に出すパートで、もう一歩踏み込んだらベタベタになってしまいそうな、非常に明瞭な哀愁を感じさせるメロディがかなりのインパクト。正直最初の音を聴いたときはこんな劇的なメロディを仕込むような感じには聴こえなかったんですが…このメロディはかなりの殺傷力。大作主義で、抽象的なムードも濃い作品ですが、そこだけ聴くとキャッチーとも言えるかも。

トレモロリフ重視の作風ではありますが、ポストブラックっぽさは希薄で、プリミティブ系や鬱系好きな人にお勧めしたい作品。特にメロディアスなものが好きな人向けだと思います。


EVIG NATT - Darkland (2012-01-25 19:23:05)

2010年発表の2nd。

ENSLAVEDやTHRONE OF KATHARSIS、THUNDRAなどノルウェーのブラックのメンバー/元メンバーが関与するゴシック/ブラックという事ですが、確かに女性ヴォーカルのゴシックにシンフォニック・ブラックのテイストを加味したような作品に仕上がってますね。曲によって演奏がほぼゴシック・ドゥームそのものだったり、メロブラっぽい疾走パートを設けてきたり、ゴシックとブラックの要素の配分を変え、聴き手を引き込むようなアルバム構成にしている感じ。

ただ、やや中性的な感じのする女性ヴォーカルの醸し出す、妖艶で耽美な世界観や、ドゥーミーなギターの音色が感じさせる灼けつくような哀愁などから感じる、仄暗い世界観は魅力的ではあるんですが…個人的にはちょっと纏まり過ぎている印象も受けるんですよね。普段からゴシック・ドゥームの緩やかに世界観に引きずり込むような音を好んで聴いてる人はかなりツボだと思うんですが、私としては5曲目や8曲目など、メロブラの要素が強い曲の方に惹きつけられたり。

個人的なツボとは多少違うんですが、音作りやアルバム構成などのレベルは非常に高いと思う。ブラックメタルより、初期THEATRE OF TRAGEDYやDRACONIANなどを好んで聴いてる人の方がハマれそうな音を出してると思います。


SHADE EMPIRE - Sinthetic ★★ (2012-01-24 19:22:19)

2004年発表の1st。
タイトルは「sin+synthetic」でしょうか。

タイプとしては、派手なキーボードを大々的に導入した、シンフォニック・ブラックですが…まず印象に残るのは分離の良い、カッチリとした音作りですね。多少ギターがノイジーではありますが、刻みリフも多用し、メロデスを聴く人にもアピール出来そうな音。インダストリアル要素も味付けに取り入れてますが、そのせいで更にカチッとした音に聴こえる。3曲目なんかはキャッチーなクリーンパートまで飛び出し、シンフォ系の中でもかなり聴きやすい音と言えるかと。

ただ聴きやすい音作りが成されていますが、なかなかマッシブで迫力のあるデス声を聴かせるヴォーカルといい、派手なオーケストレーションでバンドサウンドを荘厳に飾るキーボードといい、メロデスに寄り過ぎず、シンフォブラックとしてもガチなのが良いですね。日本盤を出してるバンドと比べても作品のメジャー志向性やクオリティは劣らず、あともう1要素なにかプラスαがあれば話題になってもおかしくない作品じゃないかと思います。個人的にはリフにもう少しケレン味みたいなものがあれば良かったかと思います。

普段ブラックを聴かない人にもお勧めできる、かなりキャッチーで聴きやすいシンフォニック・ブラック。逆にカルト志向のバンドが好みの方はちょっと物足りないかも。


REMINISCENCE - Nostalgia in Melancholy ★★ (2012-01-24 19:16:18)

2012年発表の1stデモCD-R。

MANIERISMEのJekyll氏のサイドプロジェクトの初音源という事ですが…展開やSEの挿入、音像の作り方など、プリミティブブラックとしては色々なアイデアを取り込んだMANIERISMEに対し、こちらは衝動的でRAWであることをひたすら追求したような作風ですね。やたらボリュームの大きい録音で、半壊したようなノイズ一歩手前のミニマルなブラックを展開する音は、ILDJARN辺りを聴いて耐性が付いてる人じゃないとかなり辛そう。

勿論、演っている人が同じなので、MANIERISMEとの共通点も多く、特に病気じみた中に独特の耽美さを感じさせる、毒々しいメロディはやはり特徴的。壊れかけた音作りのせいで病気っぽさが更に助長されてますね。歪んだ音の中から成仏できない地縛霊の呻きが聞こえてくるような、「ギエエエ」系のヴォーカルにもノイジーな割れ気味のエフェクトが掛かり、聴いてる方も正気ではいられなくなりそうな感じ。

個人的な印象としては、MANIERISMEの曲を未加工のまま、粗さを押し出す方向に進めたような作風だと思います。ぶっ壊れていながらもしっかり病的なムードを醸し出す辺り流石ですが、プリブラやノイズ系のブラックが駄目な人には拷問そのものでしょう(笑)。いかにも哀愁系の音を出してそうなタイトルで、メロディアスさの観点では強ちタイトル通りでないとは言い切れませんが、やはりその狂性に圧倒される感覚の方が強いですね。MANIERISMEよりも数段カルト志向な音。


THE IDOLM@STER JUPITER - Bang×bang ★★ (2012-01-24 01:33:48)

「恋をはじめよう」もそうだけど、寺島さん(の演じる天ヶ瀬冬馬)の爽やか系の歌ってなんか胡散臭く聞こえるんですよね…声質も歌い方もまごうことなきイケメンボイスなのに(笑)。ただ、どこかサッカー少年が歌ってそうな感じもあるので、意外とキャラには合ってるのかもしれません。


THORNIUM - Dominions of the Eclipse (2012-01-21 23:30:22)

95年発表の1st。
2011年にボーナストラック入りで再発。

黎明期の作品だけあって、典型的なブラックメタルのスタイル、かつRAWな音作りの作品ですね。線の細くノイジーなギターが精一杯に邪悪なメロディを紡ごうとし、それがパタパタしたドラムに乗る音はなんだか愛おしさが込み上げてきそう(笑)。スケールは違いますが、時折EMPERORやBURZUMの影もちらついたり。B級っぽいですけど、時折入るキーの音色の選び方に幽玄な感性が垣間見えたり、歪みきったヴォーカルはガチでかっこよかったり、聴かせどころもしっかりあるのが良いですね。

ちなみに再発盤は2011年にレコーディングした曲や、93年に発表したデモ音源が付いてきて、バンドの最初期から現在までの音を一気に楽しめるお得なパッケージ。ただ2011年の曲もトレモロリフが入るパートではメロディを前に出したりはしてるものの、低予算録音から土石流系の迫力ある音に変わっただけでやはりRAWな音像。ヴォーカルは以前の方がヤケクソで良かったかも。93年の方は水槽の中で録ったような篭もった音ながら、本編よりメロディは良く聴こえて良い感じ。

ULVERHEIMがかなり良かったのでこっちも買ったんですが…正直これはマニア向けかも。もう少し際立った特徴があれば、思いっきり印象が良くなりそうな作品ではありますが…低予算の録音の方が逆に好み、って方でないとちょっと厳しいアルバムかもしれません。


THORNIUM ★★ (2012-01-21 23:28:41)

90年代前半にThyph氏を中心に結成された、スウェーデンのブラック。
長い活動休止期間を置いたものの、現在も活動している模様。
1stの頃はUlverheim氏が根幹に関わっていたらしいですね。


ULVERHEIM - Nar Dimman Lattar ★★★ (2012-01-21 21:00:11)

2011年発表の1st。
バンド名が余りにも気になり過ぎて買ってしまいました…(笑)。

路線としては、刻みも交えた重々しいリフと、ガラガラに歪んだ、弦の一本一本が脈動する様子が伝わりそうな生々しいベースが、時折ロック色も感じさせるミディアムテンポ中心のリズムに乗る、重厚な雰囲気を湛えたブラックで、平たく言えば「Now, Diabolical」「The Age of Nero」期のSATYRICONに、オールドスクールな要素を加味した感じでしょうか。音作りも陰湿ながら重さがあるものですし、何気にギターソロが良いメロディを弾いてたり、 割とメタリックな音。ヴォーカルの貫禄のある絶叫も実にかっこいい。

このバンド、何気にリフのセンスがかなり良いんですよね…例えば、不穏で毒々しいメロディを、オールドスクールなリフに乗せつつ、それに血煙が立つようなテクニカルな刻みを混ぜたり、トラッド/フォークを酸で溶かして暗黒化したような、邪悪さと土着性を感じさせるトレモロを弾いたり、意外にもフックがある感じ、SATYRICONほどロック要素の強くない、陰鬱なムードも色濃い作風は一聴では割と地味な感じなんですが、実際に聴き始めるとなかなか聴き応えがあって、引き込まれてしまいます。

正直渋めの路線で、普段からブラックを聴いていない人にアピールするにはインパクトに欠けると言わざるをえないですが、ブラック好きなら心地良く聴けるであろう作品。個人的には大当たりの作品ですね。バンド名に惹かれて買って正解でした。


ULVERHEIM ★★ (2012-01-21 20:57:34)

ex-THORNIUMのメンバーによる、スウェーデンのブラック。
それにしても思い切ったバンド名付けましたね…元から使ってたメンバー名引き継いだだけとはいえ…。


VISTHIA - IN AETERNUM DELETI ★★★ (2012-01-20 22:57:16)

2011年発表の2nd。

ブラックメタルにインダストリアルを取り入れた路線ですが、このバンドはインダストリアル要素を曲の根幹にがっつり食い込ませながらも、ブラックメタルとしての攻撃性や禍々しさもしっかり残してある、取り入れ方のバランスの非常に良い作品ですね。

暴虐なブラストの中に機械音を交ぜてより無慈悲な感覚を助長したり、ノイズとサンプリング、トレモロが自然に一体化するような音作りで世界観を演出したり、マシンビートを前に出しつつ毒のあるトレモロで荒廃感を醸しだしたり、ブラックとインダストリアルの組み合わせ方がアイデア豊富、かつその比率も自由自在な感じ。それがブラックとしてはかなり整った音質とも相俟って、ダイナミックな展開に聞こえます。

何気にブラックらしいトレモロリフの含有率も高く、それに込められた宗教的なムードや毒々しさもまた素晴らしい。インダストリアル要素が荒廃した世界を演出し、そこに酸の雨が降り注いでいるような、破滅的なイメージが思い浮かびます。ただ作風がアヴァンギャルド方向に傾いているせいか、時折展開に勿体付けた部分というか、効果音的な音で引っ張る部分があるのが個人的にはあまり好きではないかも。それを差し引いても高品質で、面白い作品だとは思いますが。

RAW方向にしろアヴァンギャルド方向にしろ、ブラックってやりすぎててそのジャンルを好んで聴く人以外には分かりづらかったりするバンドも結構いたりしますが、この作品はエクストリームメタルとしての根っこがしっかりしてて、その上で個性を出している所が凄いと思う。ANAAL NATHRAKHやRED HARVEST辺りが好きな方には特にお勧め。


ABIGAIL WILLIAMS - Becoming ★★ (2012-01-19 23:44:59)

2012年発表の3rd。

店のコメントで「シューゲイザー・ブラックからの影響も…」みたいな紹介がされてて、まさかとは思いましたがここまで変化してるとは…。ギターリフはメタルのグルーヴよりもノイジーさを活かした音響・情景描写重視になり、儚いメロディも取り入れ、ミニマルな展開も多い大作主義路線に舵を切ったことで本格的にそっちの系統に近い音に。ヴォーカルも絶叫にしろグロウルにしろ、壮絶な声を聴かせつつも、音に溶け込み易い歌い方になっている感じがします。

今作ではメンバーにチェリストが加わり、要所でチェロによる格調の高い、クラシカルなメロディが聴けるのも特徴ですね。また、宗教的ムードを醸し出すような儀式的なパートがあったり、トレモロリフは儚いものだけでなく、ブラック本来の邪悪さが根付いたメロディを含んだものを弾いていたり、今まで演ってきたシンフォニック・ブラックやメロディック・ブラックの要素が噛み砕かれて、所々で顔を出すのが非常に興味深いです。かなり精神世界系の世界観に傾いてますが、ポストブラックと言い切るには、まだ実体的な禍々しさを残した音だと思う。

ぶっちゃけ前作は酷評に近い論調で批判してしまったし、今作も物凄くツボに嵌る作品という訳ではないんですが、彼らはこの作品を以って非常に面白い存在になったのでは…と思います。アルバム毎に音楽性を変えつつ、それまでの音楽性の影響も根強く残っている…という。前作聴いたときは半ば見限りそうになりましたが、この作品で一気にこれからの動向が気になるバンドになりましたね…。


吉川友 - One for YOU! - こんな私でよかったら ★★★ (2012-01-18 22:18:30)

これは試聴して衝撃を受けました。
これをバックにマスゲームでもやったら物凄くかっこよさそうなカッチリしたリズムに、休符やスタッカートを駆使し、リズミカルに仕上げかつ哀愁も忘れない、ウルトラキャッチーな歌メロが乗る曲。ヴォーカルもキレ良く歌う所と感情を込める所の押し引きを心得ている感じで、曲をしっかり魅力的に彩る歌を聴かせてくれてると思います。この洗練されていながらも哀愁のある世界観、フック満載どころかフックしかないような歌メロ、ほんとツボ過ぎて困ります(笑)。ポップスとして完璧な出来だと思う。
ちなみにアルバム発売の直前にリリースされたシングル曲ですが、アルバムに興味を持ってもらう布石として、これ以上ないほど優秀な曲だと思う。現に私が引っかかってしっかりアルバム買っちゃってますし(笑)。


吉川友 - One for YOU! - Sweetie ★★ (2012-01-18 22:17:33)

炭酸飲料のCMに使われそうな、弾けたポップ性を持つ曲。
サビの「Sweetie, Sweetie, Sweetie」のテンションの高い、張りのある溌溂とした歌唱がとても印象的。聴いている分には爽快感のある楽曲ですが、この部分とか踊りながら歌うには結構キツそうな曲だと思う(笑)。


吉川友 - One for YOU! - きっかけはYOU! ★★★ (2012-01-18 22:16:48)

これ、タイトル見たときはコミックソングなのかと思いました(笑)。アイドルの自己紹介ソング的な感じの…。でも実際聴くとリズミカルなメロディが頭に焼き付いて離れなくなるような、鮮烈なキャッチーさを持ったポップな楽曲。まずサビにインパクトがありますが、Aメロの後半がかなり歌謡曲っぽかったり(個人的には中島みゆき「愛情物語」を連想した)、ラスサビ前でファルセットを交えた繊細な歌唱が聴けたり、他の部分にも多くフックを設けた曲作りが成されているのがいいですね。


吉川友 - One for YOU! - Knight Flight ★★★ (2012-01-18 22:16:00)

どキャッチーな楽曲が3曲続いた所で、ようやくバラードナンバーの登場。パーカッシブなリズムに、メロウなキーボードが絡むトラックは、歌メロの美しさとも相俟って非常に耽溺性の強い音になっていると思う。しっかりその世界観の中で主役を張りつつ、曲の情景も浮かび上がらせるような、繊細なヴォーカルも素晴らしいです。


吉川友 - One for YOU! - Time to zone ★★ (2012-01-18 22:15:04)

頭サビで元気よく始まる、これまたキャッチーな楽曲。サビメロは物凄くインパクトの強いものという訳ではありませんが、清涼感のあるもので聴いていてとても心地良いですね。良く聴くとキーボードはかなりピコピコ系の音を使ってるんですが、変にテクノっぽくなりすぎず自然なポップさが感じられるアレンジのセンスもいいと思う。


吉川友 - One for YOU! - 会いたくなったら ★★ (2012-01-18 22:14:06)

余りにもベッタベタなバラード曲。メロディもアレンジもベタ過ぎて、最初歌詞が頭に入ってこなかったくらいですもん(笑)。いかにもいきものがかりとかが書きそうな、「The J-POPのバラード」って感じのメロディ。しかしそれはベタに聞こえるくらい普遍性が高い、豊饒なメロディでもあるという事なんですよね。何か大口のタイアップが付いたらスマッシュヒットしてもおかしくない曲だと思う。


吉川友 - One for YOU! - 水色 ★★ (2012-01-18 22:13:17)

後半戦開始に相応しい、溌溂系ポップ。この手の曲はアルバムに複数ありますが、この曲はギターを前に出したバンドっぽい(あくまで「っぽい」)アレンジでしっかり他の曲と差別化出来ているのが良いですね。サビに向かってテンションが上がり、鼓動を早めるようなリズム、ラスサビの一旦音が引いて4つ打ちを強調する展開など、リズムによってキャッチネスを強調するアレンジが良い感じ。


吉川友 - One for YOU! - ヒラヒラ星 ★★ (2012-01-18 22:12:35)

打ち込みを多用したアルバムの中でも、最もテクノ色の強い曲。
聴いていてサイバーな風景が思い浮かぶような曲で、ヴォーカルも音に溶け込むようなエフェクトが掛けてあって、音像の一つになっている感じですが、歌メロ自体はかなり哀愁強め。こういう作風で、ここまで歌メロに哀愁を込められるのはやはりJ-POPならではだと思う。歌謡曲とは違う、独特の切なさがある感じ。


吉川友 - One for YOU! - さよなら涙 ★★★ (2012-01-18 22:11:54)

アルバムの曲を順に聴いていった時、この曲が来たときもかなり衝撃を受けましたね…JANNE DA ARCの「I’m So Happy」を思わせるような、泣き成分満載ながらも非常にポップなサビメロが素晴らし過ぎる…初出はデビューシングルのカップリングらしいですが、幾らなんでも勿体無さ過ぎ。温存してシングル切れば良かったのに…。アレンジもピアノとワウギターが歌メロのメロウさを際立てた、ポップだけど湿り気もあるもので本当に素晴らしいと思う。これは名曲です。


吉川友 - One for YOU! - ありのままの I LOVE YOU! ★★★ (2012-01-18 22:11:12)

これも個人的に衝撃だった「こんな私でよかったら」に匹敵するほどの名曲だと思う。R&B風のリズムに、メロディアスなベースやピアノが絡むメロウなトラックからは、どこかアーバンで切迫した雰囲気が感じられますね。そこに艶のある、シリアスな響きのヴォーカルが乗り、曲調としてはダークと言ってもいいくらい。ですが歌メロがこれもシングル切れるレベルでフックのあるもので、歌モノの要素も強く、暗くなりすぎていないのも良いですね。聴きやすく、かつムードに浸れる名曲です。


吉川友 - One for YOU! - ハピラピ~sunrise~ (2012-01-18 22:10:18)

早朝の番組のタイアップが付きそうな、爽やかでポップな曲。
ただ、シングル曲なんですけど、個人的にはアルバムで一番好きじゃない曲かもしれないです(決して嫌いではないけど)。メロディもキャッチーだし、アレンジも丁寧だけどちょっと無難な印象。耳当たりが良い分、聞き流せちゃう感じがするんですよね。


吉川友 - One for YOU! - ハコの中のブルー ★★★ (2012-01-18 22:09:18)

もしプロモーションビデオを撮るなら夜の高速を飛ばすシーンを入れて欲しくなるような、スリリングな曲。フューチャリスティックなイメージを喚起するシンセと、疾走感のある歌メロがかなりかっこいい。…個人的には、土曜夜9時から日テレでやってるドラマの主題歌とかになったら凄く合いそうな曲だと思う。


吉川友 - One for YOU! - Make YOU! ★★ (2012-01-18 22:08:25)

J-POPのアルバムのラストってバラードで歌い上げて締めるか、希望を感じさせる爽やかな曲で終わるパターンが大半ですが、このアルバムは後者を選んだ模様。アニメのEDテーマのような、爽やかでキャッチーながら哀愁も含んだメロディが特徴ですが、このアルバムのEDテーマという感じに仕上げたのかもしれませんね。


吉川友 - One for YOU! ★★★ (2012-01-18 22:07:25)

2012年発表の1st。

今日発売(=昨日入荷)のアルバムですけど、もう感想書いちゃいます(笑)
ネットで最新シングルの「こんな私でよかったら」を聴く機会があって、衝撃を受けて調べてみたらこの曲を含むアルバムの発売が間近…ということで、まんまとアルバムを買わされてしまいました(笑)。その曲に対する「1聴き惚れ」が動機で買ったんですけど、思った以上に良い曲が多いですね。

まずアルバム曲の充実振りが素晴らしい。
シングルを中心に回す日本のポップス界の構造のせいか、シングルに派手な曲、アルバムに地味目な曲を入れるアーティストも少なくないですが、このアルバムはどの曲を取ってもシングル切れそうなキャッチネスがあるのが凄いと思う。「会いたくなったら」はベッタベタな売れ線バラードだし、「さよなら涙」「ありのままのI LOVE YOU!」はなんでシングルを切らなかったのが疑問なレベルの名曲。「Sweetie」「Time to zone」辺りも如何にもCMタイアップが付きそうなキャッチーさ。

アレンジも打ち込み中心ですが、溌溂としたポップなものあり、R&B調のリズムを取り入れたものあり、テクノ要素の強いものありでバラエティに富んでいて、カラフルな仕上がりのアルバムになっていると思う。バラードにしても幻想的なものとベタでポップなものを用意しているのが良いですよね。吉川さんのヴォーカルも、艶のある声質で、しっかり曲にあった歌い回しをしてくれているので、曲の世界観に入り込みやすいです。アイドルの中ではかなり歌唱力の高いほうなんじゃないでしょうか。

ただ、バラエティに富んでいるとはいえ、基本ポップスの王道を踏み外す事はないし、その路線の曲を打ち込み主体の硬質な音で14曲も続けて聴かされると、いくら曲の質は高くてもちょっと疲れてくる感じも。モーニング娘の新作がそうであったように、生音のロックや飛び道具系の曲、ファンク要素の強い曲などを取り入れて音像に変化を付けてくれると尚良かったかも。これを聴く限り、吉川さんの歌唱力なら十分対応できそうですし。

とは言っても、十分良いアルバムである事は間違いないですが。吉川さんは名前は知ってましたが、「こんな私で~」を聴くまでは曲を聴いた事がなかったので、正直不安もありましたが…予想以上にクオリティの高い作品で大満足。これは本当に、買ってよかったと言えるアルバムです。


KAULA - AVADHUTA GITA CHAPTER Ⅰ ★★★ (2012-01-16 20:51:43)

2011年発表の1st。

DISK UNIONの紹介でSKITLIVとBURZUMが引き合いに出されてたので、つい買ってしまった一枚なんですが…確かにノイジーに引き摺るスラッジ/ドゥームと、陰鬱なメロディの鬱ブラックを掛け合わせた作風は、その2バンドとかなり共通したものがありますね。ただ、鬱ブラックの叙情性というよりは、どこか荒廃した世界観を持っているバンドだと思います。

スラッジにしろ鬱ブラックにしろ、どちらの要素もかなり堂に入っている感じで、スラッジ部分は人間の神経が灼き切れるのを目視しているかのような、脳を侵すような音だし、時折入るトレモロもただ陰鬱なだけでなく、BURZUMの「Ea, Lord of the Depths」や「Spell of Destruction」辺りに通じる、聴き手に暗黒と対峙する事を強いるかのような、どこか神秘性も感じさせるものでかなりセンスがあると思う。

また、サンプリングやノイズ、キーボードを使ったアンビエントパートも入り、特にラストの曲は殆ど瞑想する為の音楽みたいな感じですが、全体的にノイジーな部分が多く、「静」のパートが多過ぎないのも良いですね。個人的に余程センスのいい音作りが成されていないと、静かなパートが続くアンビエントは退屈してしまうので…これくらいが丁度良いバランスだったり。

ちなみに、グロウルから絶叫、語りを使いこなして世界観を演出する、ヴォーカリストのRosyは女性のようですね。特に低音のグロウル、女性ならではの獣が息を潜めて獲物を狙うような、怒気を孕んだ獰猛さがあってかなり怖い。このバンドはヒンドゥー教の、カーリ(インドの神話に登場する戦いの女神)信仰をテーマにしているようですが、この人の女性的かつ獰猛な声のお陰で、そういうイメージも浮かびやすくなっていると思います。

私的にはBURZUMに通じるメロディセンスがかなり気に入ったので、もう少しトレモロリフで攻めるパートを増やしてくれれば…と思わなくもないですが、なかなかの良盤だと思います。鬱ブラック好きで、SKITLIVがドゥーム方向に寄りすぎていてちょっと辛い、けどスラッジの引き摺るギターノイズは堪能したい…という方にも推薦。


WINTERUS - IN CARBON MYSTICISM ★★ (2012-01-16 20:48:27)

2011年発表の1st。

レビューサイト/ブログ等で、優れたメロディセンスを持つ新人メロブラバンドが居ると聞いて購入しましたが、確かに噂に違わぬメロさですね…。イントロのメロウなインストから期待させますが、2曲目冒頭のDISSCETIONから殺気や邪気を抜きさって、牧歌的にかつクサくしたようなリードギターのメロディで早くも悶絶してしまいました(笑)。

しかもこのバンド、ポスト/シューゲイザー系のクライマックスシーンを思わせるような、儚くも激情迸るものであったり、ドイツ産ブラックのような打ち付ける氷の礫を思わせるトレモロだったり、メロディの方向性が曲によって違うんですよね。しかも曲がコンパクトに纏まっていて、メロディの美しさという美点のみを見せ付けて曲を終わらせる感じで、初聴でのインパクトを与える事にも成功していると思う。

ただ、色々なレビューで言われている通り、音質が悪い…というか曲に合ってない感じなのがネックかも。プリブラとかと比べると、特に聞き苦しい音という訳ではないんですが、各楽器が別個に鳴っているような、今一つ臨場感に欠ける音だと思う。ただライブテイクの焦点がぼけた感じの音は、幻惑するような雰囲気もあってこれはこれであり…なのかも。

良質のメロディセンスを持つブラックメタルに、ポスト/シューゲイザーブラックの感性を少し加えたかのような作風。個人的にはこのバンドは攻撃性とメロディアスさの按配が良い感じなので、あんまりポスト要素をこじらせて攻撃性を失う方向には進んで欲しくなかったり。


LILYUM - NOTHING IS MINE ★★★ (2012-01-14 20:47:08)

2011年発表の5th。

何気なく買ってしまったんですが、これは素晴らしいですね。
個人的には、2011年のベストアルバムの候補の一つに入ります。
路線としては、邪悪なメロディのトレモロリフを伴うミニマルな疾走パート多め、ノイジーな音質など、基本的にはプリミティブブラックの様式を踏襲している感じですが…色々音に工夫が凝らしてあって、普通のプリブラよりも大分暗黒ムードが強い仕上がりになってますね。

まず音質が結構独特で、リフのノイジーで視界を黒く染めるような音色の割に、メロディはしっかり前に出して聴かせ、ドラムも抜けが良い音で録音されている感じ。この音質が、聴いていて心地良いだけでなく、実体性というか質量感のあるダークさを感じさせてくれて、曲の説得力を増してると思うんですよね。ヴォーカルがやたらドスの効いた低音がなりで、エフェクトのせいで地獄から響く悪魔の声みたいになってるのも、更に音にハクを付けてると思う。

また、前触れなく突然疾走したり、執拗なまでに邪悪メロの篭もったリフを反復したり、プリブラとしては破格のスピードで狂走してみせたり、展開に微妙にパラノイアックな部分もあるのが特徴。展開に合わせて音響の操作もするタイプで、2曲目冒頭のリフの音量が増していくところなんかは、視界が闇に包まれる様子がリアルに感じられるよう。最近のSATYRICONの威風のある暗黒性と、昔のMAYHEMの儀式的な気持ち悪さを足したようなメロディセンスもあって、その2曲目は初めてDARKTHRONEの「Transylvanian Hunger」を聴いた時の様な衝撃がありましたね…。

プリミティブブラックの様式を踏まえながらも、センスとアイデアで邪悪さを演出する作風は、個人的にはCRAFTを思わせたり。流石にブラック聴かない人にまで勧められるほどオープンな作風とはいえませんが、普段からカルトなブラックも好んで聴いている人は間違いなく満足するのでは…と思います。


SVARTTJERN - TOWARDS THE ULTIMATE ★★★ (2012-01-13 22:54:02)

2011年発表の2nd。

まず裏ジャケに燦然と輝く「TNBM(True Norwegian Black Metal)」のロゴが入っている時点で、品質は約束されたも同然ですが…そのロゴの威光を裏切る事のない、むしろ更にハクを付けるような、ストレートかつハイクオリティなブラックメタル。緩急付けつつ疾走パート多めの作風ですが、カッチリしたドラムの音と厚みのあるリフなど音質の良さも手伝って、聴いていて単純に気持ちの良い音。リフは邪悪系トレモロだけでなく刻みも入れたもので、メタルとしての熱気もしっかり持ってる感じですね。

エクストリームメタルとして非常に質が高い音を聴かせてくれるんですが、それと同時に「ブラックメタルならでは」の魅力も大きいのが素晴らしいですよね。特に闇から粘液質の瘴気が這いずり出すかのような、邪悪なメロディのトレモロはブラック以外ではなかなか聴けないと思う。ヴォーカルもキレの良いがなり声で、普通にかっこよく聴きやすい感じですが、時々狂気を剥き出しに吠え立てたり、低音でかなりエグい声も出したりして、狂性も感じられる辺りやっぱりブラックらしいな…と思います。

ブラックって結構癖の強いバンドが多いですけど、この作品はメタルの、どのサブジャンルの好きな人に聴かせてもブラックメタルというジャンルの魅力が伝わるアルバムなんじゃないかと思います。音も整ってますし、初心者にもお勧めできる作品。


EX CALIGA - FIRST VISIONS ★★ (2012-01-12 00:55:45)

2002年発表の1st。
某所で中古がやたら安かったので、ジャケとタイトル等を見て、「これはブラックメタル、それもプリミティブ系だろう」と当たりを付けて購入。その勘は見事に当たったんですが…一体何なんでしょうか、この奇妙極まりない音は…。

音的には一応プリミティブブラックの様式を踏襲してはいる感じですが…遠近感の狂いまくった絵画のような、奇怪に歪んだ世界観を持ってる作品ですね。トレモロを含むリフやギターメロは音響処理のせいで妙に浮遊感のある音になっている上、フレーズ自体も宗教的な妖しさを感じさせるし、RAW音質の癖にドラムのミックスが変に凝っててアンバランスな立体感のある音像になってる。加えて所々に挿入される効果音のせいで世界観は更に歪んだものに。

アヴァンギャルド志向のミュージシャンがいたとして、彼にクスリでトリップした状態でプリミティブブラックを聴かせ、それをうろ覚えのまま再現してもらったらこんな感じの音になるのでは…みたいな、カルトでサイケな音。「Instinct : Decay」以降のNACHTMYSTIUMが、真っ当にプログレッシブな路線に行かず、ズレた方向に進み続けたらこんな音になっていたのかもしれません。間違いなく面白い音ではあると思います。

ただ、音楽性自体はユニークなんですが、録音状態が(粗いのは良しとしても)ちょっと弱めで、曲のフックに欠けるきらいがあるのが惜しいですね…その辺りクリアできれば、シーンの中でも存在感あるバンドになれそうなんですが。それは今後に期待…と思いきや、これ1枚で解散してるんですね…。如何にも続きそうなタイトルなのに、残念です。


SATAN'S HOST - POWER~PURITY~PERFECTION 999 ★★★ (2012-01-11 22:32:00)

2009年発表の6th。

1977年にパワーメタルバンドとして結成し、86年に1stアルバムを発表、一度解散して2000年にブラックメタルバンドとして再結成…というバイオグラフィーを聞いた時は、古くから活動してるバンドなだけに若いリスナーを置き去りにするような路線だったらどうしよう…とちょっとだけ危惧してましたが、全くの杞憂でした。クオリティがキャリアに裏打ちされた、しっかり今の音としてかっこいいブラックメタルを演ってます。

邪悪なトレモロリフ一辺倒でなく、甘美さもありながらサタニックな雰囲気を更に強めるリードギターのメロディ、オールドスクールなデスメタルのテイストを感じさせるドロドロした瘴気漂うリフも取り入れたスタイル。DISSCETIONは3枚目のアルバムでメロデス要素を強めリスナーを驚かせましたが、彼らがメロデスだけでなくオールドスクールデスの要素も同時に取り入れたら、こんな感じの作風になったのでは…と思わせる音。メタリックな重厚さを感じさせる音作り、メリハリのある曲調、サタニックな空気感の演出など、共通する所は多いと思う。こちらにも「Anti-Cosmic Creation」というフレーズが出てきますし。

地獄の鬼を思わせるようなヴォーカルの咆哮、リフやリードのフレーズの素晴らしさを際立てつつ、デス的なドロドロ感も残した良質なプロダクション、金太郎飴にならない展開の巧さなど、美点の多い…というか美点しか挙げられないようなアルバムなんですが、やはり際立ってるのはリフの素晴らしさですね。特にデス的な瘴気を撒きつつうねるようなリフ使いが素晴らしい。正直MORBID ANGELの新作よりも魔闘気の総量は上だと思いますもん。リフを聴いているだけでも非常に心地良いですが、それがメリハリの効いた展開の中で上手く用いられるのだからたまらないですね。

まだSATAN’S HOSTはこの作品しか聴いていないんですが、ブラックの名盤○選とかで良く選ばれるような作品と比べてもなんら遜色のない、素晴らしいアルバムだと思う。古参バンド故の懐古趣味や、ブラックメタル故のカルト主義なども特に感じさせず、魅力をストレートに伝える作品ですので、初心者の方も是非。


MORTE INCANDESCENTE - ...RELEMBRANDO UM TUMULO ESQUECIDO ★★★ (2012-01-10 23:52:07)

2010年発表の3rd。
関連バンドのSTORM LEGIONがなかなか良かったので、こっちも購入しましたが、このバンドも面白い音出してますね。

ザリザリしたノイズ分多めながら太い響きなリフと、ロックやハードコアのテイストを含む、ドカドカとハイテンションなリズムを上手い事合わせ、辺りのものを蹴散らすようなオールドスクールで攻撃的なブラックメタルを展開してます。ヴォーカルも何もないところに向かって最高にハイな状態で演説するかのような、狂気の篭ったパフォーマンスで作風と非常に良くあってますね。ただこのヴォーカル、かっこよくはあるけど癖が強いので一枚通して聴くとちょっとクドさがあるかも(笑)。

路線自体は攻撃的、かつ熱さや炸裂感を感じさせるものではあるんですが、反面メロディはかなり陰湿なのが独特なんですよね。聴き手の神経に障るような、焦燥感を煽るトレモロを仕込んできたり、闇から魔が溢れ出してくるような、ドロドロしたメロディを弾いてみせたり、テンションの高さとメロディにギャップがある感じで、それが死神が踊るような奇怪さを生み出していると思うんですよね。時々音圧を引かせてムード重視のパートを入れたりもしてますが、その使い方もかなり不気味ですし。

個性的だし雰囲気もあるし、個人的にはかなり気に入った作品。
この独特のテンションの高い気持ち悪さが聴いていて気持ち良いです(笑)。


STORM LEGION - DESOLATION ANGELS ★★ (2012-01-10 23:47:10)

2010年発表の2nd。

モノクロの髑髏ジャケからは何かプリミティブっぽい雰囲気が漂ってきますが、RAWさを残しつつもリフに音圧のある、重量感を持って疾走するブラックメタル。毒々しいメロディを仕込んだトレモロリフ、所々で存在感を示す甘美な邪悪さを伴うリードギターのフレーズなど、WATAINを想起させる作風。普段からブラックメタルを聴いている人であれば、何の抵抗もなく受け入れられそうな、ストレートな路線ですね。

…それだけだと、ムードもクオリティもかなり良質なブラック…で終わってしまいますが、このバンドはヴォーカルの存在感がかなり大きいのが特徴。絶叫というよりは…雄叫び系というんでしょうか、やたら野太い声で、時折地声を交えつつがなるタイプ。ヘラクレスとかコロッサスとか、ああいうマッシブな存在を想起させる声でかなりの迫力。鬱ブラック的な嗚咽絶叫も聴かせてくれますが、そういうスタイルを演っても声が細くならず、やはり迫力あるのが良い感じです。

流石にWATAINやDISSECTIONと比べると多少小粒な感じはありますが、ややマイナーなブラックメタルバンドの中では破格のクオリティの作品を出しているバンドだと思います。このジャンルの音源を常日頃から買い漁っている人なら持っていて損はないでしょう。


STORM LEGION ★★ (2012-01-10 23:44:59)

ポルトガル産ブラックメタルバンド。
ex-SIRIUSのメンバーも在籍してます。


LUX OCCULTA - Dionysos ★★★ (2012-01-09 00:23:36)

97年発表の2nd。

このバンドは後にアヴァンギャルド志向を強めていったらしいですが、この時点ではキーボードを効果的に用いたシンフォニック/アトモスフェリックなブラックメタル。誰かの死を悼むかのごとく、物悲しいメロディでバンドサウンドを包むキーボードと、妖しげなメロディを含有するギターワークが絡む、個性的かつ濃厚なムードを持った作品。ブラックの邪悪さよりも、ゴシックの美しさや妖艶な感触の方が強い印象。

アトモスフェリックな路線の割には、ギターワークなどがかなりメタリックで、聴き応えのある音に仕上がってるのも特徴ですね。ミディアムテンポを中心に重厚に展開していく作風と実に合っていると思う。メロディの美しさもあって聴き入ってしまう音なんですが、バスドラの音がパタパタいってて軽いのはちょっと不満。曲自体はA級だし、音もそう悪くないのに、そこだけB級ブラックみたいに聴こえるのが残念。

…とはいえ個人的にこの雰囲気の濃さはかなり好きなので、☆は3つで。音質に多少の不満はあれど、人を強烈に引き込む世界観を持っているので、かなりお勧めの作品です。


OLD WAINDS - Scalding Coldness ★★ (2012-01-07 21:33:07)

2005年発表の2nd。

個人的にロシアって良質のメロブラが多い印象なんですが、このバンドも質の高いメロブラを演ってますね。トレモロ疾走一辺倒でなく、メタリックな刻みやドラマ性のある展開も見せるオーソドックスな路線。金属質なノイジーさのギター、多少バタついた印象のあるドラムなど、RAWさを残しながらも分離の悪くない音質は、個人的にはかなり好み。「声の引き摺り方」が堂に入ったヴォーカルのパフォーマンスも良い感じです。

このバンド、ロシア産でありながら「Unholy Nordic Metal」を標榜してたりするんですが…確かに古参ノルウェー産ブラックの影響がそこかしこに見えるんですよね。例えばメタリックな刻みが、ただかっこいいだけでなく、エピックなムードに繋がっていく所などはENSLAVEDを髣髴とさせるし、3曲目などで見せる華麗さを感じさせるトレモロ疾走はUnder~期のGORGOROTHと通じるものがあったり。4曲目の暗黒テクノみたいな音楽性も、ノルウェーの先人の実験精神を受け継いだものなのかもしれませんね。

物凄くインパクトのある音と言う訳ではないですが、ノルウェーのブラックメタルの空気感を引き継ぎ、堅実に質の高いメロディック・ブラックを演っている感じ。ある程度メロブラを聴きこんでいる方ならかなり楽しめる作品かと。


AN AUTUMN FOR CRIPPLED CHILDREN - Everything ★★★ (2012-01-07 21:29:17)

2011年発表の2nd。

最初聴いたときはその壮絶さと、埋もれ気味のミックスのせいでほとんどノイズにしか聴こえなかったヴォーカル、トレモロを交えたノイジーなギターリフなど、ブラックメタルの様式を踏襲しつつも、キーボードやクリーントーンのギターが儚さ、浮遊感を演出する、今流行の(?)シューゲイザー/ポストブラック。メロウなフレーズを随所で聴かせるベース、ジャズっぽい柔らかく叩かれるドラムも、ノスタルジックな情景の描写に一役買ってますね。

この作品、他の同系統のバンドと比べると、儚さやノスタルジーの表現が力技っぽく感じるんですよね。キーボードが入ればそれが辺りをベタ塗りする勢いで哀愁篭ったメロや音色を奏でてるし、アルペジオもよく聴こえる、しっかり太い音で録音されている感じ。激情を表すようなノイジーなリフもまるで土石流のよう。…個人的にはこの手の音でメロディや音色が繊細過ぎると、余程曲作り・音作りの上手いバンドでないと、ちょっと退屈に感じてしまうときもあるので、彼らの作風は心地良く聴ける絶妙なラインだったりします。

シューゲイザー的な感性を持ったバンドの中でも、分かりやすくその魅力を伝えてくれる作品だと思います。個人的にはヴォーカルがブラックから離れてないのも嬉しいポイントだったり。この手の激情と儚さ、ノスタルジーが同居するポストブラックに興味を持ってる方は是非。


NASTROND - Toteslaut ★★★ (2012-01-07 21:24:32)

95年発表の1st。私が持ってるのは2010年に再発されたもの。

やはり初期ブラックだけあって、録音状態は良いとは言えるものではなく、ギターノイズがガリガリ言うRAWで癖の強いものですね。ただそのノイズが脈動するような音色のギターリフの間を縫って、ユルユルと幽鬼的なものを感じさせるトレモロが幽玄なメロディを奏でる音像は、カルトかつ神秘的、宗教的なムードがあって魅力的。巻き舌を多用した野卑ながなり声と、ミステリアスな語りを使うヴォーカルもカルトな雰囲気をより強いものにしてますね。

この音源で一番独特なのは、キーボードの使い方だと思う。
どこかの密教が解脱のための儀式を行う際に、後ろで流す音楽のようなSE的なものが中心ですが、メロディを弾かせるにしても「普通その音は選ばないだろ」みたいな妖しげな音を選んでいて、かなり耳に残る。8曲目は彼らのそんなオカルトな感性が発揮された、本格的な儀式アンビエント。

この密教の儀式を通じて宇宙の霊的存在だかなんだかと交信してそうな、妖しげな雰囲気はANGST SKVADRON辺りを髣髴とさせたりもしますが、あちらほどアヴァンギャルドな作風ではなく、あくまでRAWブラックを貫いているのがポイント。だからこそ、ジャンルの混交が激しくなり、アヴァンブラックも珍しくなくなった今聴いても「このバンドサウンドにこの音色のキーを乗せるか!」っていう衝撃があるんですよね。

アヴァンブラックやポストブラックって、ブラックとしての様式や感性を半ば放棄して独自の道を行くバンドが多いですが、このバンドはがっつりブラックの様式を守りつつ、前衛的な個性を出している所が面白いと思う。初期ブラックですが、ポストブラックが一定の評価を受けている今聴いた方が、実は楽しめる作品なんじゃないかと思います。


陰陽座 - 鬼子母神 ★★★ (2012-01-06 20:02:19)

2011年発表の10th。
瞬火氏の執筆した脚本「絶界の鬼子母神」を下敷きにしたコンセプトアルバム。

私はこの作品、何度か聴いてから脚本を読む…という楽しみ方をしましたが、まず言いたいのはアルバム単品でも素晴らしい…という事ですね。明確なコンセプトがあるぶん、恒例の明るいエンディング曲がなく、お祭り曲がアルバム半ばに入っていたり、全体的に仄暗いムードで統一されている感じがしたりはしますが、音自体はキャッチーに疾走するキラーあり、美しいバラードあり、おどろおどろしい雰囲気の曲もありで、いつもの陰陽座のアルバムとして違和感なく聴けるようになってますね。

路線的には、お祭り曲の「鬼拵ノ唄」を除けばあからさまな和メロは少なめで、堅実なクオリティがあり前作の延長線上とも言えますが…音の説得力が前作よりも明らかに上がってると思う。特に「産衣」「膾」辺りは、歌メロは派手とは言えないものの、鬼気迫るような表現力のお陰で初期のクサい歌メロの曲(「陰陽師」「桜花の理」辺り)以上に魅力的に聴こえる。この手のバンドにはまず歌メロのインパクトを求める嗜好の私が聴いてですら、そう思わせる説得力。

アルバムの構成としては、脚本における各シーンをそれぞれ楽曲で表現していく…という手法で、脚本を読んでから聴くとストーリーが分かるだけでなく、より曲を映像的に、臨場感を持って楽しむことが出来ますね。鬼の棲む山や村外れの洞穴の空気感、「鬼子母人」のカリスマ性や狂気などが音を通じてリアルに伝わってくる感じ。ただ脚本無しにはストーリーの構成が分かりづらい…というより分からないので、ブックレットに簡単な注釈くらいは載せても良かったかも。

脚本のストーリーも、思った以上に楽しめました。予備知識無しに「鬼拵ノ唄」を聴いたときは、「客人(マレビト)を贄にして豊作や繁栄を願う儀式なんて、和風ホラーではありがちだよな…」と思ってナメてたんですが(笑)、実際読むとそれが行われ、続けられる理由づけが物語の大きな伏線になってて、読み物としてもかなり楽しめました。この辺り語りすぎるとネタバレになるので辛いです(笑)。…ただ、主役にしろ敵役にしろ、どの人も瞬火さんの分身みたいな印象があります…当たり前と言えば当たり前ではありますけど。

リキの入った作品であり、陰陽座のディスコグラフィーの中でも圧倒的な存在感を放つであろうアルバムだと思います。ただ、ここまでガチガチなコンセプトアルバムやってこの安定感というのは、個人的には良くも悪くもあるんですよね。この作品を聴いて、このバンドに180度予想を裏切るような音楽は期待できないと確信してしまったというか…ただ同様に、期待を裏切らないクオリティのものを常に届けるバンドである事も、同時に確信したわけではありますが。


HELLEWACHT - EUVELE DAEDEN (2012-01-05 23:13:57)

2009年発表の1st。

THRONUM VRONDORでもなかなかにユニークなプリミティブブラック観を提示していたVrondor氏がベースを担当するバンド…との事ですが、こちらのバンドでも結構個性のある音を出してますね。音的にはオールドスクールで、メロディ薄めなリフを軸に展開する、粗い音質のプリミティブブラック。ギターの音色が粗く篭った音質、ガーガー絶叫するちょっと鳥っぽい感じのヴォーカル等、正直B級っぽい音ではあると思う。

ただ、音像は割と個性的で、それが魅力になってると思う。
粗めのリフの音色と低音にユルユルとメロディを垂れ流すベースの音色が合わさると、チープながら妙な引力が発生しているような、何故か惹き付けられる音になってるんですよね…。時折ぼた雪を思わせる、「軽い重量感」のある刻みを入れて来ますが、そうなるとそれが更に強調される感じ。この変な引力に引き寄せられる感じは、イヤフォンよりもスピーカで聴くとより強くなる印象。

正直マニア向けの音源だとは思いますが…個性派の多いベルギーのシーンを追ってる方ならこのバンドもチェックして損はないんじゃないでしょうか。


HELLEWACHT ★★ (2012-01-05 23:13:10)

ベルギー産ブラックメタルバンド。
THRONUM VRONDORのVrondor氏が在籍。


IGNIS URANIUM - AZIMUTH NUCTEMERON FREQUENCY ★★ (2012-01-05 23:08:03)

2009年発表の1st。

ショップの紹介だと「ドイツ産のアヴァンギャルドブラック」とありましたが…スタイル自体はそこまで変態系じゃない、ストレートなブラックメタルですが、そこかしこからアヴァンギャルドな感性が滲み出てくるような作品ですね。まず耳に残るのがドラムの音。バスドラの抜けが妙に良いパーカッシブな音色で、切り返すようなフレーズを多用したドラミングはどこか軽快な感じも。プリブラのミニマルな2ビート疾走の酩酊感ともオールドスクール系のドカドカした音ともまた違う、変な心地良さのある音。

そこに乗るリフもまた、普通のブラックメタルとは少しずれた感性を持ってる感じですね。プリブラっぽい平坦系のリフを弾いていても、毒の粒子を撒き散らしているような感触があるし、トレモロに乗るメロディも邪悪さや寒々しさではなく、得体の知れない薄気味悪さという感じ。全体的に気持ち悪いメロディ多めですが、ラストの曲なんかはその気持ち悪さがフックに聴こえるほど。また、声帯を痛めつけるようなヴォーカルのがなりはかっこいいし、曲のムードとも合ってるんですが…小さいおっさんが泣きながら歌ってるようなクリーンは微妙ですね…まあ気味悪さを出すのに貢献はしてますけど…。

非ブラック的な価値観におもねったり、他ジャンルの音を安易に取り入れたりすることなく、あくまでブラックメタルのスタイルの中で個性を出した作品。ちょっと変わったブラックが好きだけどブラックから外れすぎると嫌…という人にもお勧めです。


L'ACEPHALE - Malefeasance (2012-01-05 00:21:01)

2009年発表の1st。

DISK UNION1発のブラックメタルガイドにも載るなど、一定の評価を得ているアルバムで、ガイド本によると「ノイズやアンビエントを含有する実験的ブラックメタル」的な感じで紹介されてましたが…実際聴いてみると思った以上に人を選ぶアルバムですね、これ。作風的にブラックメタルがメインではなく、あくまでノイズ/アヴァンギャルドのアーティストがブラックの手法も表現の一部として取り入れた…くらいの比率。

ブラックメタルが直接的に取り入れられている箇所と言えば、プリミティブ系のトレモロリフと絶叫がアンビエントに溶け込んだ3曲目や、ノイズに塗れた絶叫が聴ける4曲目くらいでしょうか。ただ全体的に密教じみたムードは漂っているので、雰囲気や空気感自体はブラックメタルと通じるものがあると思う。

また、曲によって表現の手法がガラッと変わるのも特徴ですね。AMORPHISと題材が同じとは思えない、カレワラを取り上げた1曲目では儀式めいた世界観を演出し、続く2曲目の友川かずき「一人盆踊り」のカヴァーではアコギとリズムの絡みと持続音で幽霊の出る柳の木が風に靡く様な不気味さを醸し出してます。4曲目では後半5分以上に渡ってブズーキっぽい楽器のソロがあったり、何でもありな感じ。

…ただ個人的にはやっぱりブラックメタル要素が少な過ぎる印象なんですよね。ムード自体は決して嫌いではないんですが。GNAW THEIR TONGUESやMZ.412、NORDVARGAR辺りのノイズ/アンビエント要素を含むバンドの音楽が、普通のブラックメタルよりも好きという方にのみお勧め。


FRIGUS ET OBSCURUM - VOL. 1 ★★★ (2012-01-05 00:06:40)

2009年発表の1st。

微妙に装丁がチープ(ジャケのタイトルが「Vol 1.」になってる)だったり、オープニング曲がありがちな感じのアンビエントだったので、「これは掴まされたか…」と思いかけましたが(笑)、本編はかなり良質なメロディック・ブラックだったのでひと安心。オールドスクールなリズム展開の曲や甘美なベースラインを持つ曲等も取り入れ、変化を付けつつも、基本はメロいトレモロリフとともに疾走する、コールドブラックな路線。

このバンドも、何気にメロディのセンスが良いんですよね。場面によって寒々しさであるとか物悲しさ、邪悪さ、毒々しさなど様々な色をトレモロリフのメロディに込めている感じで、7割型トレモロ疾走ながら飽きずに聴ける作品になっていると思う。アングラ感のあるヴォーカルの狂犬的ながなり、プリブラっぽさもありつつ、チープになりすぎず割と聴きやすい録音状態等も良い味として聴けます。

個人的な印象としては、DARK FUNERALを2ビート疾走主体にして地下に潜らせたような作品。メロディセンスが良く、マイナー物件の中ではかなりお勧めできるバンドです。


DOODSDREK - DOODSDREK ★★ (2012-01-05 00:02:54)

2010年発表の1st。

LUGUBRUM関連のメンバーが演っている、ベルギーのブラックメタルデュオ…とのことですが、そんなプロフィールから予想される通りの個性派な音を出してますね。路線自体はガリガリしたRAWな響きのオールドスクールなリフを中心に展開し、ヤケクソ気味なヴォーカルががなり立てるプリミティブに近い音で、LUGUBRUMと比べればまだまともにブラックメタルしてると言えますが…やはりそれでは終わりませんね。

この作品で最も印象深いのが、そのヘンなドラムの音色。立て付けの悪い雨戸が暴風雨に晒されているかのような、やたらパーカッシブ…というよりもバタバタした音。まるで木で作られたドラムを叩いているかのよう。この音が、ブラスト時には他のバンドでは体験できないような妙な気持ちよさを、ミドルパートでは妙な酩酊感を生んでるんですよね…まあ、どっちも「妙な」という形容詞が付きますけど(笑)。

音質的に、リフが歪みを引き摺るような音色で、その分メロディがやや聞き取りづらくなってはいるんですが、ドラムの音色との相性はかなりいいと思う。特にミドルパートの酩酊感は、このリフとドラムの音の兼ね合いによって生まれている感じがします。最近のLUGUBRUMほどブラックの価値観から外れてる訳ではありませんが、かなりの個性派。LUGUBRUMを楽しめた方はこっちも聴いてみてもいいかも。


SANGUIS - Infernum infinitum ★★★ (2012-01-03 23:22:05)

2004年発表の2nd。
某所のセールで格安で買えたんですが、これ、素晴らしいですね。

1stの頃のDISSECTIONのドラマティックでメロディックな路線をベースに、DARK FUNERAL辺りのトレモロリフ中心のファストブラックの要素を加味したような、非常に完成度の高いメロディック・ブラック。この作品で個人的に特筆したいのは、メロディック・ブラックとして非常に均整の取れた作風ということですね。

まずメロディはかなりメロウで、時にはダーク・ファンタジーの主人公でも登場しそうな、エピックでかっこいいメロもあったりもしますが、同時に邪悪さや寒々しさも発散していて、決して甘くなり過ぎないのが良い感じ。ヴォーカルもキレが良すぎて狂気が感じられない事もなく、と言って狂い過ぎて本来の役目を見失う事もなくで、この手の作風に非常に良く合う声だと思う。

起伏の付いた、ドラマ性の強い展開ながら1曲をコンパクトに纏めた曲構成、ムードを殺すほどヘヴィでなければ、チープに感じるほど薄くもない音作りも良い按配だと思う。個人的な好みとしては、バスドラムの音がちょっと気に入らなかったりはしますが、まあ全然許容範囲内。「これぞメロディック・ブラックだ!」と言いたくなるような、この手が好きな人のツボを突いた作品。

正直、もうメロブラというサブジャンル自体完成されてるのもあって、このアルバムが歴史的名盤や初心者が第一に聴くべきアルバムとして推される事はないと思う。でも個人的にはDISSECTIONの1stにも肉薄するくらいの良いアルバムだと思うんですよね。1曲1曲の個性ではまだ及ばないかもしれませんが、聴いていて非常に快い作品。


SANGUIS ★★ (2012-01-03 23:21:32)

オーストリアのブラックメタルバンド。
超絶ファストブラックで有名なASMODEUSのメンバーも絡んでます。


CHRIST AGONY - NocturN (2012-01-03 23:14:55)

2011年発表の8th。

「Satan’s Wept」ではそのエキゾチックなメロディセンスを聴かせ、「Lucifer’s Horn」ではBEHEMOTHを思わせるファストブラック路線と、かなり異なる作風ながらどちらも魅力的だったMOONのCezarが本籍を置いてるバンドの最新作ということで、相当期待しながら購入しました。が…う~ん、正直微妙かもしれません…。

路線は、BEHEMOTHのInfernoをドラマーに迎えた、ミディアムテンポ中心で重々しいドラミングの上に、デスメタル色の強い、刻み多めのヘヴィで音圧の高いリフを乗せ、ヴォーカルが悪意を込めてがなる、非常に重厚なデス寄りのブラック。タイトでクオリティの高い音作りといい、ベテランの貫禄が滲み出てくるような音。

…で、質自体は非常に高いと思うんですが…アルバムを通じて余りにも「重厚さ」に頼り過ぎてるきらいがあるのがちょっと…。ミドル中心なのはいいけど、それならドロドロ感であるとかリフのフックとか、何かプラスαが欲しいんですよね…。リフやリードにCezarならではの妖しいメロディが込められてるパートはかなり魅力的なんですが。

ちょっと酷評に近いですけど、悪い作品ではないと思います。フルアルバムだけで8枚も作ってるベテランだけある安定感ある作品だと思いますし。ただ個人的にはメタルには安定感よりも、個性とかフックが欲しいと思ってしまうので、今作は微妙に感じてしまいました。


THY HASTUR - The Ancients ★★ (2012-01-03 09:22:45)

2010年発表の3rd。

ブルータル路線やペイガン/NS系が多い印象のポーランドですが、このバンドはキーボードを多用し、荘厳な空間を演出するシンフォニックなスタイル。少し音圧控えめな感じのバンドサウンドを、どこか宇宙的で、非日常の世界へアクセスするようなキーボードが包む、神秘的なイメージが浮かぶ音。個人的にはバンドの音が抑え目で、メタルとしては中音域に少し物足りなさを覚えるくらいなのが、逆に良い味だと思ったり。キーの音色やメロディとも相俟って、より日常から乖離した音に聴こえるんですよね。

但し、ミステリアスでアトモスフェリックさを感じさせる作風ながら、意外にもギターにメロデスにも通じるようなメタリックさがあるのも特徴ですね。キーボードに主役張らせてる時でも結構印象的なフレーズを弾いてたりするし、トレモロやリードに込められた泣きメロもグッド。6曲目ではキーボードを敢えて入れず、メロディックブラック的なスタイルで聴かせますが、こういう作風でもなかなか魅力的に聴かせられてると思います。

現時点ではキーボードの音色の選択とギターのメタリックさの合わせ方に、個性を感じはしますが、まだスペシャルな音…というところまでは行ってない感じがします。とは言え、このジャンルが好きな人ならばほぼ確実に楽しめるクオリティはあると思いますので、シンフォブラック好きには推薦。


BLOODTHORN - Onwards Into Battle ★★ (2012-01-03 09:17:25)

99年発表の2nd。

ベルセルクやバスタードのような、ファンタジー系漫画の1シーンを切り取ったようなジャケットが、なにかエピックなものを予感させますが…その期待を裏切らない、ダイナミックでシンフォニックなブラックメタル。ブラックらしいノイジーさだけでなく、太さや迫力もあるリフで音に厚みを出しつつ、そこにチャーチオルガンやピアノ等多彩な音色のキー、女性ヴォーカル等を乗せドラマ性たっぷりに展開する作風。

ただ、良質なシンフォニックブラックであることは間違いないんですが、どうもリフが今一つ耳に残らないのがネックなんですよね…。トレモロリフや泣きメロを弾いてる時は良いんですが、キーボードが前に出されてるときに裏方に回りすぎな感じ。敢えて薄い音でアンビエント感出すとかならまだしも、これだけ音圧出してるんだし、もっとカラミに聴き応えがあれば良かったと思う。

とは言っても、聴いているとファンタジックでダークな世界観が浮かぶような、豊饒なメロディセンスの発揮された良盤だとは思います。ちなみにこの時点でギターの音色がかなり音圧のあるものであることからも予想されるとおり、バンドはこの後デスメタル色を強くしていった模様。


CURSE - SLAUGHTER OF THE STARS ★★★ (2012-01-02 22:09:40)

2006年発表の2nd。

この作品、ブラックメタルであることは100%間違いないんですが…どのサブジャンルに入るかが特定しづらいような、拡散した音楽性を持ってますよね。オールドスクールなリフで攻めることもあれば、キーボードを取り入れシンフォな音像を演出してみせたり、アルペジオを上手く使って幻惑的な空間を作ったり、プリブラっぽく疾走してみせたり…2曲目なんかはクリーンヴォーカルを取り入れ、CODEに通じるような妖しい世界観も。

ただ、拡散し過ぎてブラックから離れない、アルバム全編でしっかりブラックとしての筋を通すような作風で、かつ邪悪さや妖しさ、神秘性、ダーティさなど出したい雰囲気に合わせて的確にメロディや音像を提供できるセンスがあるのが素晴らしいですね。ヴォーカルが少し浮いてる感じですが、悪魔の言葉を預かる司祭の声が上から響くようで雰囲気出てると思う。プリブラよりながら低音域をスカスカにしない、ダーティな音質もカルト性を演出。あとはドラムの音、特にバスドラが少し貧相な音なのを改善してくれれば言うこと無しなんですが…。

アイスランドってあまりブラックのイメージがないですが、メンバーが相当このジャンルに入れ込んでるのが伝わってくるような力の入ったアルバムだと思う。個人的にはNACHTMYSTIUMの「Instinct : Decay」アルバムに通じるような、拡散すれども邪悪さをキープできるセンスの高さを感じる作品です。


UNHOLY TRINITY - OMNIMALEVOLENCE ★★ (2012-01-01 16:31:54)

2005年発表の5曲入りEP。

時期的には関連バンドのNACHTMYSTIUMが独自路線を取り始めた頃ですが、こちらではほぼオーソドックスなプリミティブブラックを展開していますね。この手にしてはリフの音色が厚めで、ノイジーながら音が割と整理されている感じでプリブラとしては聴きやすい方。悪魔が身悶えしながら叫ぶような非人間的ヴォーカル、神秘性や荒涼感を伝えるトレモロ等、曲の質の方も悪くないですね。

1曲目を聴いて驚いたんですが、このバンドはトレモロによるメロディの伝え方に独特の手法を持ってますよね…アトモスフェリック系のキーボードと聴き紛うような、浮遊感のある音色で、メロディとも相俟ってなにか神聖な雰囲気…というか、神聖さを敢えて出す事で逆説的に冒涜性を演出している感じ。1曲目で聴けるこのトレモロの音色、ほんと独特で好きです。

ただ、惜しむらくはこの音色が1曲目以外ではあまり聴かれない事でしょうか…それでもオーソドックスなプリブラとしてレベル高い事は確かなんですが、せっかく他のバンドと差異を付けられるワザを持っているのにそれを前面に出していかないのは勿体無い。全曲の要所でこういう音使いしてたら、個人的には☆3つ献上確定なんですが…。


UNHOLY TRINITY ★★ (2012-01-01 16:31:13)

NACHTMYSTIUM絡みの人脈によるブラックメタルバンド。
中心人物のAamonael氏がAVICHIに専念しているため、現在は休止中。


SAPTHURAN - ... In Hatred ★★ (2012-01-01 16:26:19)

2005年発表の1st。

バンドロゴやアルバムタイトルがジャケのイラストに同化しかけてるみたいな、チープな印刷がまず目を引きますが(笑)…中身も当然の如くRAWでプリミティブなブラックメタル。ノイズ成分多めながらメロディを前に出すべき場所では前に出す音像、音が割れる寸前の絶叫ヴォーカル、ミニマルな展開とこの手に必須な要素は大体満たしてる感じ。ただ、このバンドはこの手の中でもミニマリズムの取り入れ方が上手いように思います。

例えばメロウなメロディやファストなリズム等が取り入れられたパートはかなり多めなんですが…聴き始めはそれらの「メロウさ」「ブルータルさ」を直接的に楽しめるんですが、執拗に繰り返されていく内に、なんとも言えない不安感を感じるんですよね…フレーズの繰り返しを通じて聴き手の気力を奪っていく感じ。トラッドっぽいメロで始まる2曲目やメロウさの中に妖気を感じる5曲目など、メロディのセンス自体は上質ですが、全体的にどこか人を寄せ付けないムードがあると思う。

個人的にはアンビエントやオールドスクールでないBURZUMの曲(「My Journey to the Stars」や「Ea, Lord of the Depths」など)に通じる雰囲気があると思う作品。裏ジャケで標榜してる「Misanthropic Black Metal」、その言葉のままの音を出してます。


SAPTHURAN ★★ (2012-01-01 16:25:37)

アメリカの独りブラック。
LEVIATHANともスプリットを出した経験のあるバンド。


TORRENT - Between the Stones ★★ (2012-01-01 01:49:32)

2004年発表のEP。

…ブラックの中でも割とマニアック(かつマニア内で高い評価を得ている)なバンドのメンバーがサイドプロジェクトでブラックメタルやったら、まあこうなるよね…って感じの音ですね。最早ブラック好き以外に聴かせる気ゼロな、まるで嵐の音をそのままサンプリングしたようなザーザーしたかなりRAWなブラックメタル。ヴォーカルもノイズ一歩手前な絶叫で、音質に溶け込んでますね。

但し、縛りが多く、リフやメロディのセンスがないと高評価は期待できないプリブラのシーンで活躍する面子が演ってるだけあって、2曲目のラストや4曲目などで聴けるトレモロの悲壮なメロディはかなり上質。他のパートでも、ザーザーした歪みの中にうっすら聴こえるメロディが結構良かったりして、メロ過ぎず辛口過ぎずのバランスは良い感じだと思う。勿論、普段プリブラ聴く人基準ですが…。

正直KanwulfとAkhenatenのサイドプロジェクトという予備知識を持って聴くと、何の意外性もない作品だと思う…けどテンション高いドラムもかっこいいですし、あんまりそれぞれの作風からかけ離れた作品出すのもどうかと思うので、これはこれで良いEPだと思います。


TORRENT ★★ (2012-01-01 01:48:46)

NARGAROTHのKanwulfとJUDAS ISCARIOTのAkhenatenのサイド・プロジェクト。
2004年にNo Coloursより一枚のEPを残して活動を停止した模様。


SELBSTMORD - Some Day the Whole World... (2012-01-01 01:43:39)

99年発表デモを2001年にCD化して再発したもの。
ちなみにこのタイトルは「...will Belong to us!」と続きます。

まず聴いてみて音質の酷さにビックリしますね(笑)。
VLAD TEPESやBELKETRE辺りの音質の作品が聴ける…だけでなく、そういう音質の作品を「好き」と言える人にしかお勧めできないような、プリブラの中でもかなりRAWな部類の音質。ヴォーカルは埋もれてるし、なによりスカスカ感が凄い。高校の文化祭の音楽室ライブをICレコーダーで適当に録ってもここまで酷くならないと思うけど(笑)…一体どんな方法で録音してるのか…。

しかし、関連バンドのメンバーがポーランドのNSブラックの枢軸と言っても過言ではない面子だけあって、楽曲の方の質はしっかりしてますね。リフに篭められたメロディに、メロウさだけでなく、しっかり「闇」を感じ取れるのが素晴らしい。作風は完全にプリミティブですが、展開はミニマルでなく緩急付いたもので、リフにも変化が付けられているので、彼らのメロディセンスに共感しつつ低音質を脳内補完出来ればかなりドラマティックに聴こえる作風だと思う。

…とは言っても、流石にこれはちょっと人に勧められる音源ではないですね…ILDJARNやDARKTHRONEと違って意図的な演出と汲み取れない感じの、普通に低音質…みたいな音像が私にもキツい(笑)。逆にその辺りにリアリズムや魅力を感じる人には大推薦。


SELBSTMORD ★★ (2012-01-01 01:42:35)

OHTARやDARK FURYのメンバーが絡むポーランド産NSブラック。
バンド名はドイツ語で「自殺」の意味。


HORTUS ANIMAE - Waltzing Mephisto ★★ (2011-12-29 22:55:07)

2003年発表の2nd。

アルバム始まって間もなくの、アトモスフェリックなキーボードを鋭利なトレモロ疾走で切り裂いていくパートや、メロデス風のメタリックな刻みリフを聴いて、「このバンドはこんな感じか。なかなか良さそう」とか思ってましたが…良くも悪くもその時の予想は外されましたね。パートによってシンフォ要素の取り入れ方がガラッと変わる、ややアヴァンギャルド寄りのシンフォブラック。

前述のアトモスフェリック系以外にも、クラシカルな音色でクッサいメロディをバラ巻いて見せたり、シアトリカルで前衛的なムードを醸し出して見せたり、キーの使い方のパターンが多く、曲の展開は非常にドラマティック。…曲によってはキーボードを完全に脇に追いやって、メロデス/デスラッシュ寄りの曲まで演ってたりしますし、千変万化という言葉が似合う作風だと思う。

中でも驚いたのは、MAYHEMの「Freezing Moon」のカヴァー。IL BALLETTO DI BRONZOの「Lerzo Incontro」とMIKE OLDFIELDの「Tubular Bells」を含むという形式にも驚きますが、まさかMAYHEMのリフにピアノの合いの手が入る、シンフォなカヴァーを聴かせるとは…。「シンフォはブラックと認めない」みたいな人が聴いたら怒りそうですが、これはこれで非常に面白いので個人的には全然アリ。

ただ、曲自体やシンフォ要素の取り入れ方のセンスは高いと思うんですが、色々拡散し過ぎてて徹底してない感があるのが個人的にはネックかも。不条理系な音にしてはメタリック過ぎるし、宗教的というにはメロディが綺麗すぎる、という感じで。ただユニークな音を出している事は確かですので、個性派好きは是非。


CAVUS - Fester and Putrefy ★★ (2011-12-29 22:51:44)

2010年発表の1st。
一曲でex-MAYHEMのBlasphemerがゲスト参加。

1枚目のアルバムながら、かなり邪悪度の高いブラックメタルですね。
メロディ感の薄い、オールドスクールな響きを残したリフと、ガリガリ言うベースの音色が組み合わさって出来る音は、多少聴き疲れのする音ながら腐食部分が広がっていくような、妙な不気味さを漂わせていてムードは濃厚。ヘヴィさは強くない代わり、炸裂感のあるドラムの音色も曲の雰囲気を煽っていて良い感じ。

あと、個人的にはヴォーカルの表現力の高さを評価したいですね。基本的にブラックメタルの王道的ながなりスタイルですが、TRIUMPHATORでのAriochにも通じるような、ウゾウゾした薄気味悪さも感じさせる声で、異常な感じが漂ってるのがグッド。1曲目のオープニングから男が悪魔の子を出産してるような、狂気と表現力を見せ付けるパフォーマンスを聴かせてくれてます。

…個人的な印象では、WATAINやCRAFTと、初期BURZUMの中間くらいの音…という印象の作品。ただ上記のバンドと比べると、ちょっと曲のフックが弱い気がしますが…その辺りをクリアしたら、ブラックを相当聴きこんでる人にも強烈なインパクトを残せるバンドになるのではないかと思います。


PENSEES NOCTURNES - Grotesque ★★ (2011-12-27 21:12:21)

2010年発表の2nd。

シンフォブラックの中でも、かなり変り種な音を出しているブラックですね。カルミナ・ブラーナの最初の部分を更に世俗的にしたような、大仰かつ演劇的・劇場的な非ブラック的シンフォパートや、ジャジーなリズムにチェロなどによる優美なメロディを乗せたクラシカルなパート等を、SE的な使い方だけでなく、本編にもがっつり仕込んでくる、他にないタイプのアヴァンギャルドな作風。

ただし、そういったパートの大仰さに比べると、ストレートにブラックしてるパートでは意外にもクラシカルなキーボードよりメロブラ的なトレモロリフを主軸とする展開が多いのも特徴。ただヴォーカルの半泣きで歌っているような、しかし太い声質のデス声と、妖しいオペラ調の声を使い分けるパフォーマンスもあって、やはりどこか捩くれた印象が残る音ではありますね。

シンフォブラックの中でも、メロディやシンフォ要素の取り入れ方はかなり派手な部類に入る音…ではあるんですが、それが超自然的な方向や宗教的な方向にはあまり向かわず、どこか通俗的で不条理なムードが濃厚で、そこが強烈な個性になっている感じですね。聴いていると、暗黒の劇場に引きずり込まれ、無理矢理道化の役を演じさせられるような、そんな奇怪さの漂う作品です。


DECAYED - Chaos Underground ★★ (2011-12-27 21:09:53)

2010年発表の8th。

90年代初頭から活動しているブラックメタルバンドで、もう8枚目のフルという事ですが…とてもそうは思えないようなダーティなスタイルのオールドスクールな音ですね。洗練されていない…というよりも、「洗練された洗練されてなさ」という感じ(笑)。全くメロディックでない、粗いリフの質感とか、意外にも抜けがよく心地良く聴けるドラムの音色とか、全て分かってて作ってる感じ。

時折入るリードギターの狂ったようなフレーズに、「熱さ」を感じることはあっても、それが過ぎて「明るく」ならないバランスの良さが良いですね。初期BEHERITなどに通じる地下臭さを常にキープしてくれている感じ。ちなみに、13曲目以降は98年作品のリマスター音源らしいですが…この頃から基本的な作風は殆ど変わってないですね(笑)。これからも変わりそうもないバンドだと思わせる、頼もしさのある音源です。…とか言ってBEHERITのような方向転換したらそれはそれで面白いですが(笑)。


STUTTHOF - And Cosmos from Ashes to Dust ★★★ (2011-12-26 22:52:39)

2004年発表の2nd。
2011年にボーナスディスク付き2枚組で再発されてます。

今年新作もリリースした、ACHERONTASのメンバーがかつて演っていたバンドという事ですが…音質や展開等にプリミティブ寄りな部分こそあるものの、当時からオカルトでカルトな雰囲気を濃厚に漂わせつつ、印象に残るメロディを配したドラマティックなブラックをやってますね。ただ、メロデスっぽい泣きメロとNED系に通じる邪気を含むメロが混在するACHERONTASのメロ使いと比べると、この作品は「Nemesis Divina」期のSATYRICONを思わせる寒々しく邪悪なメロディが多く、ブラックメタルとしてよりストレートな印象。

また、音質はメロディが聴こえなかったり、耳に痛かったりといった聴きづらさは感じられないものの、時々ドラムの音が埋もれ気味だったり、お世辞にも良好とは言えない…んですが、その埋もれ気味のブラストが、真っ暗闇にひたすら落ちていくような感覚を覚えさせるんですよね…そこにトレモロリフによるメロディが被さると、その暗闇の底で超自然的で邪悪な何かが手招きしているような、非常に薄気味悪い、ブラック好きにとっては心地良い音像に…これはたまらないです(笑)

またヴォーカルもACHERONTAS最新作で見せたような異様な表現力はまだないものの、語りなどを入れてムードを出しているのがいいですね。個人的にこの人の語りのときの声がかなりツボだったりします(笑)。また、オープニングSE等ブラックメタルパート以外もこの頃から非常に凝ったものを作っていて、この路線で儀式アンビエント一枚作ったら結構需要ありそう…と思えるほど。…っていうか、最初聴いたときオープニングが凝りすぎててちゃんとRAWブラックが始まるのか不安でしたもん(笑)。

HM/HRの視点で見たら明らかにACHERONTASの最新作の方がクオリティが高いと思うんですが、単純に聴いていてうっとり出来る音になってるのはこっちですね。多少音質がRAWでも構わない、かつブラック特有の甘美な邪悪メロディが好きな方は必聴かと。


NYSEIUS - Militiae ★★★ (2011-12-26 22:48:21)

2010年発表の1st。
SVARTI LOGHIN等のリリースで注目を集めるイタリアのレーベル、ATMFよりリリース。

…レーベルのCDを買うと同封されているバンド紹介文によると、「フランスのオーソドックスなブラックメタルで、WATAINやDEATHSPELL OMEGA、ANTAEUSが好きな人向け」とありますが…ブラックメタル好きならそのコメントからもう殆ど予想が付くような音ですね。北欧譲りの荒涼としたリフを中心に展開する、真性の香りがプンプンするブラックメタルで、ヴォーカルも中~高音の喚きスタイルながらどこかドスも聴いていて申し分なしの迫力。

基本は硬派かつストレートなブラックメタルなんですが、時折メロディ要素をがっつり前に出してくるのも特徴ですね。しかもそれが非常に効果的に使われていると思う。2曲目の2本のギターがトレモロでメロウなメロディを弾き、それをキーボードが引き取る構成や、3曲目の「悪のクラシック音楽」を奏でているが如き甘美な邪悪リフなど、印象に残るメロディが巧く使われることで、出音だけでなく曲そのもののクオリティが非常に高くなっている感じ。

WATAINや中期DSOの邪悪さに中期SATYRICONのドラマ性を足した感じ…というと褒め過ぎでしょうか。ただ、6曲入りで1、6曲目がインストのため、実質的にブラックメタルのパートは4曲32分弱と短めなのが惜しいですね。このクオリティの曲ならもっと聴いていたいと思いますもん。


AVE MARIA - CHAPTER Ⅰ ★★★ (2011-12-23 20:34:27)

2011年発表の1st。
ブラックっぽくないバンド名ですが、かなり強烈な作品ですね。

まず小フーガをモチーフに、バンドサウンドが不条理で不気味な音を演出するオープニングから只者でない感が半端ないですが、本編は更に濃い。聴き手を洗脳するためだけに、ジャズを通過しました的な気色の悪いグルーヴのあるドラミングに、血に染まったぼた雪を思わせる刻みリフが絡みつく音像だけで、もう邪悪さは特濃。疫病を振りまくようなメロディセンスも、そのムードに拍車を掛けてます。

普通、こういうエクスペリメンタルなヴォーカルって奇矯だったり、不気味なパフォーマンスをすることが多いですが、このバンドは泣き気味に叫んだり咳き込んだりはするものの、基本的に真性ブラック譲りのがなり声なのが特徴で、ブラックメタルとしての攻撃性や邪悪さをしっかり貫いているのが素晴らしいんですよね。時折リードギターのメロディに最近のWATAINのような、甘美な邪悪さも感じられますし、1枚目のアルバムにして一級品の音を出せていると思う。

タイプとしては、LUGUBRUMやVED BUENS ENDE辺りのアヴァンギャルドブラックと、WATAINやCODE、CRAFT辺りの北欧ブラックメタルを掛け合わせた感じでしょうか。エクスペリメンタル系の持つ不条理で気色悪いムードと、ブラック本来の残忍さや宗教的な雰囲気を両立させてる作品ですので、ブラック好きは是非。バンド名でスルーするには余りに惜しい世界観を作り上げているバンドです。


ASCENSION - Consolamentum ★★★ (2011-12-23 20:30:46)

2010年発表の1st。

某所で嘘みたいに安い値段で売っていて、ジャケの宗教色溢れるムードもあってつい買ってしまったんですが…明らかに名盤クラスのブラックメタル作品で自分の選球眼がちょっと怖くなりました(笑)。しかし、売値がアレなら買取値はいくらだったのか…それでこの作品を売るとか信じられない(笑)。私がおいしく頂きました。

路線としては、DEATHSPELL OMEGAの「Kenose」アルバムを思わせる、カオティックで不協的なメロディを多用した、濃密な宗教的ムードを醸し出すブラックメタルですが、DSOと比べるとこちらはアヴァンギャルドな感触は強くなく、オーソドックスなブラックに近い感じ。トレモロで疾走するパートはメロブラっぽさも。到底新人とは思えないほど、質の高さもムード作りの上手さも非常に優れた作品。

特に北欧的なメロウさとは少し違う、背筋が寒くなるような不協的なメロディの使い方が非常に巧みで、特に特別な事をやっていないパートでもどこか儀式めいた恐ろしさがありますね。WATAINのErik似のドスの効いたがなりに加え、悲鳴ホイッスルもアクセントで使うヴォーカルの表現力もベテランバンドのそれを軽く凌ぐレベルに達してると思います。…というか単純にこの手のヴォーカル好みなんですよね(笑)。

あと個人的に特筆したいのは音作りですね。ブラックメタルとしてはクリアで、割と聴きやすい音質でフレーズのセンスの良さが際立っているのも素晴らしいんですが、重すぎず軽すぎずなドラムの音が私的にかなり好み。イヤフォンで聴くとある意味での軽快さも感じたりするんですが、しっかりと迫力も伴っているのがグッド。

結成自体が2007年なので、新人バンドの初のアルバムということになりますが…いきなり「脅威の新人」として話題になってもおかしくないレベルの鬼クオリティ。取り合えずこのジャンルで何か良いバンド探している方はチェックしてみてはどうでしょうか。


GORGOROTH - Under the Sign of Hell 2011 ★★★ (2011-12-23 20:27:56)

過去の作品を2011年に再レコーディングしたもの。
BURZUMも過去作の再録やってるし、流行ってるんでしょうか?

…GORGOROTHのInfernusと言えば、ブラックメタルに於いてはベテランでキャリアもあって、実力も認められてて、彼が関わったものはブラックメタルとしてのクオリティが保証される…くらい認められてるミュージシャンだと思いますが、良くも悪くも腕利きのベテランバンドが作った作品という感じになってますね。

まず音質は、オリジナルで特徴的だった炸裂感をある程度残しつつも、ブラックメタルとしてはかなりクリアに仕上げてきた感じ。聴きやすいけど、少し薄味に感じるかも。ヴォーカルに関しても似た印象で、オリジナルの音が割れても全く頓着しなさそうな狂気の叫びとは異なり、しっかりブラックメタルのシンガーとしての仕事を全うしている、みたいな感じ。やや粘着質な絶叫はかっこいいし、呪怨風のエッジボイスを使ってみせたり、前任者に劣らない威厳のクリーンボイスを披露したり、悪くはないと思う。

ただ、やはりオリジナルの「天才が勢い一発で作りました」みたいな衝動性は多少薄れてしまっているのは確かだと思う。個人的にはオリジナルの方がそういう点で好みなんですが、まあそれは人それぞれでしょう。こっちを先に聴いた人は、メタルとしてのクオリティや安定感が高いこちらの方を気に入るかもしれませんし。曲の方はオリジナルが多くの人が名盤と認めた作品だけあって、今でも一級品で通用するブラック(っていうか、改めて聴くとこのクオリティは異常)なので、オリジナルを聴いてない方にも聴いて欲しい所。


HORNED ALMIGHTY - Necro Spirituals ★★ (2011-12-23 20:24:03)

2010年発表の4th。

このバンドもオールドスクール路線のブラックメタルを演ってますが…ハードコア経由の炸裂感重視の方向や、ダーティな音質での冒涜的路線には行かず、デスメタルのヘヴィさを取り入れて肉体的な攻撃性を強化してきた感じですね。メロディアスでない、硬派なリフは重い音質で説得力を増し、ゴリゴリ言うベースも脈動する邪悪さを表現しているかのよう。ファストブラック程速さ重視ではないものの、非常にブルータルに感じる音。

また、ブラックメタルのがなりにデスメタルのグロウルのドスの効かせ方をプラスしたような、ド迫力のヴォーカルも個人的には特筆したいところ。単に声が野太いだけでなく、喚きやタメの効かせなど、表現力も(邪悪方向に)豊か。この声が音の持っているフィジカルな邪悪さを、スピリチュアルな方向にも押し上げているように思うんですよね。聴いていて惚れ惚れするような声。

出音の迫力はエクストリームメタルとしてもかなりのもので、名門Candlelight産らしいクオリティの高い作品に仕上がっていると思う。流石にメロディック好きには勧められませんが、ぶった斬られる様な一撃が欲しい方は是非。


DARKESTRAH - Epos ★★★ (2011-12-21 23:19:14)

2007年発表の3rd。
33分の大作1曲のみを収録した作品。

…まずオープニングの、波音が2分半続くだけのオープニングにちょっとうんざりしてきましたが(笑)、本編が始まったらその勿体の付け方がどうでも良くなるくらい心を動かされましたね…。最初の、寄せて返す波のようにじわじわと浸食するような、メロウ極まりないギターメロからして素晴らしく、涙腺の弱い人だったらこのメロディだけで目頭が熱くなりそう。

そしてその物悲しいメロディに更に陰りが差したところで、ヴォーカルも入り疾走!この展開が非常にドラマティック。ヴォーカルは鬱系のように裏返ったりはしないものの、ヒステリックなハイピッチ絶叫スタイルで感情むき出しな感じが情感豊かなメロディとマッチしてると思う。途中からチェロによるメロディも入ってきますが…これがペイガンというより、映画の廃墟や人死にのシーンで流れるような、陰鬱かつどこか上品なものでまた素晴らしいんですよね。

そしてSEを挟んで後半は、「ミョーン、ミョーン」という謎のSEとハンドクラップによるちょっとアヴァンギャルドなパートを挟んだ後、シンセも入りより雰囲気が濃密に。曲が終わるまで、このメロブラでも最上級なメロウさ・物悲しさを保ったままで、大作ながらラストまでしっかり緊張感を持って聴ける感じ。ただラストの波音SE4分間耐久は余韻に浸るにしても長過ぎですが(笑)。

中盤の必要性が疑問視されるアヴァンギャルドパートや、波音のSEが長過ぎる事を除けば、非常にメロディックで情感に満ちた、ドラマティックな作品であると思う。ベクトルは違えど、メロウ方向に専念したときのNARGAROTHくらいメロウ。メロディアスなブラックメタル好きにとっては名盤と言えるクオリティだと思います。ちなみにこの作品はNo Coloursから出てて、現在はOsmoseに移籍したようですが…これを聴くと、引っ張りだこになる理由も良く分かります。


ACHERONTAS - Vamachara ★★★ (2011-12-21 23:15:57)

2011年発表の3rd。
STUTTHOF時代からAcherontas氏が関わってきた作品としては5枚目。

今年の春に出たEPが個人的にかなりツボに入り、凄く期待していたんですが…まずいかにもバンドの標榜するオカルトっぽい世界観が表現された、凝ったオープニングで更にその期待が高められますが、2曲目の冒頭を聴いて一瞬「アレ?」ってなりました。メロディがやけにはっきり聴こえる音像だし、泣きのリードギターまで入ってるし、まるでメロデスっぽい…。

まあEPにもメロディアスなパートはあったし、音質の歪みやヴォーカルエフェクトが少し減ったせいでそれが強調されるようになっただけ…ではあるんですが、良くも悪くも聴きやすくなった印象。ただ曲の方はやはりメロウなメロを書かせても抜群だし、NED系に通じる邪悪で密教的な雰囲気もしっかり醸し出せてるし、「Ohm Krim Kari」ではパーカッションやアコギを導入した、本格的に儀式的ムードを追及するなど、相変わらず魅力的であることに翳りはありませんが。

ただ、泣きメロが増えた事、音が聴きやすくなった(一般のエクストリームメタルよりややRAW、程度)事で、受け入れられやすい音になった感じはしますね。その分、EPの血の儀式の祭壇の饐えた匂いまで漂ってきそうなムードはほんの少しだけ減衰傾向かも。それでも曲はかなり良いと思うし、☆は3つ付けざるを得ないですけど…やっぱり個人的にはEPの音作りをそのまま引き継いで欲しかったところ。


WELTBRAND - Control Division ★★ (2011-12-20 23:23:43)

2010年発表の3rd。
このバンドは初聴ですが、かなり強烈なファスト/ウォーブラックですね。

目の前にあるもの全てをぶち壊すような、苛烈なテンションのファストブラックをベースに、ハードコアのガチムチな肉体性をぶち込んでドーピングを施したような、凶暴極まりない音。ファストブラックの体感速度が麻痺する一歩手前の豪速も、ハードコアの炸裂感を感じられる速さも、共に過不足なく取り入れられ、相乗効果で更に凶悪な攻撃性を手にしている感じ。

リフも時折トレモロで毒の効いたメロディを挟んだりしてはきますが、基本オールドスクールな感触が強いものが多めで、聞き手を磨り潰さんとする迫力があるのが良いですね。また、ドラムの音質に結構癖があるのも特徴で、特に一打ごとに相手の骨をへし折るかのようなバスドラの音の響きがかっこいい。リフの圧迫感とも相俟って、聴いてると戦火の中に問答無用で叩き込まれるような感じを受けます。

ファストブラックの中でも、速さだけでなく野蛮さや好戦的な感覚を強く押し出している作品。なにかガツンとくる強烈な音を探している方にお勧めです。


FEIGUR - Ⅱ, Desolation ★★ (2011-12-20 23:16:49)

2010年発表の1st。
「Ⅰ, Pestilence」に続く2作目となる作品らしいです。

鬱ブラックって、音像に工夫を凝らして聴き手を陰鬱な世界観に引きずり込もうとするバンドが多いですが、このバンドも音作りは結構拘っている感じですね。ギターのディストーションとアトモスフェリックなキーボードの混ざり合った音は、どこか鏡面を思わせ、そこに鬱々としながらも儚げなメロディが反射するように鳴り響いて作られる音は、単に悲壮感があるだけでなく、幻想的な感じ。

ただヴォーカルは鬱ブラックに典型的な、裏返り気味の絶叫で壮絶といえば壮絶なんですが…。ちょっとこの手には食傷というか、鬱系を普段から聴いてる人にとっては感情表現が想定の範囲内な感じなのが惜しい。痛絶な感情が込められてはいるんですが、「ここまで悲痛な声が出せるんだ…」くらい振り切ってくれれば尚良かったと思う。裏返り成分の少ない4曲目が個人的には一番好みだったりしますし。

とは言っても、メロディ、音像共に聴き手をしっかり世界観に惹き込む力のある作品ですので、儚く美しく、悲壮感のある鬱ブラックを求めている方にはお勧め。なかなか良質なアルバムだと思います。


STYGGELSE - Heir Today God Tomorrow ★★★ (2011-12-19 22:19:53)

2010年発表の1st。

このバンドもブラックメタルにハードコアのテイストを加味したスタイルを演ってますが…個人的に、この手のバンドってブラックから逸脱するほどハードコアの要素が強いと「ちょっとなぁ…」と思ってしまうことが多いんですが、このバンドは取り入れ方の配分的にかなり好みですね。

確かにドラムに炸裂感があったり、リフがオールドスクールでダーティなノリの良さを含んでいたりはするんですが、同時に邪悪が脈動するかのようなドスの効いた漆黒さも醸し出していて、雰囲気は真性ブラックそのもの。ある程度立体的で迫力がありながらも、プリブラのRAWさを失わない音質も良い感じ。また、メロディは北欧のカルトブラック特有の陰湿さが感じられて、それが邪悪さを更に際立てているのが良いですね。

ヴォーカルも地声交じりのがなりスタイルながら、ハードコアの熱さよりもWATAINやOFERMOD辺りに通じる禍々しさが伝わってくる声で、私的にも好み。そうした諸要素は元より、何よりプリミティブブラックの催眠的なムードが失われていない、むしろ強化されているというのがなにより素晴らしいと思う。ただ個人的な好みを言えば、メロディの陰湿さが秀逸なだけにあと2割くらいメロディ分を増量してくれれば言うことなしだったんですが。

ショップのコメントでは「マニア向け」と書かれていたので、結構身構えて聴いてしまいましたが、カルトなりの質の高さがあってそこまで敷居の高いアルバムではないと思います。DARKTHRONEは3部作より最近の音源より、ハードコアテイストを取り入れ始めの「Sardonic Wrath」「The Cult is Alive」期こそ至高だと思う方は特にハマるのではないでしょうか。


AURORA BOREALIS - Time, Unveiled ★★★ (2011-12-19 22:12:44)

2002年発表の3rd。

まず出音が、近年のエクストリームメタルにしては迫力の足りない、RAWブラックというには整い過ぎている、半端にチープな「2002年にこの音質はどうなの?」という感じの音像に、実声をあまり使っていないような、喉を痛めそうなデス声が乗るメロディック・ブラックで、それだけ聴くと微妙な感じがするんですが…そんな音像とは裏腹に、曲のクオリティが非常に高いのがアンバランスで面白いですね。

例えばブラックメタルにしても混沌としたメロディをトレモロに乗せたり、バンド名通りのコズミックなメロディをメロデス風のリフで聴かせてみせたり、カオスなメロディを伴いつつファストブラック並のテンションで疾走したり、各パートがいちいちかっこよく、印象に残るんですよね。展開は多少唐突だったりしますが、それも音像と曲のクオリティのアンバランスさ同様、ギャップが味になっていて良いと思う。

この作品、音像を整えれば本当に一流のエクストリームメタルになりそうな感じなんですが…敢えてチープめな音像にしてるのか、予算や機材の問題なのかが気になりますね…。ただ、近年のエクストリームメタルの音圧志向にうんざりしている人にも聴きやすい音質で、しっかりエクストリームメタルならではのかっこよさを伝えてくれるアルバムではあるので、これはこれで良い作品だと思います。


AKERBELTZ - A Wave of Darkness ★★★ (2011-12-19 22:07:02)

2000年発表の1st。

適度にローファイな音質で寒々しさ、仄暗さを伴うリフと共に疾走する、「これぞプリミティブブラックだ」と言いたくなるくらい、プリブラとしてのツボを押さえた作風ですね。ヴォーカルも喉を潰しそうなひしゃげまくった絶叫で、普通のデスボイスよりも獰猛な感じにカルトなプリミティブブラックらしさが感じられてグッド。

特徴としては疾走パートがファストブラック並にテンションが高めなんですが、これがファスト系のヘヴィな音ではなく、プリミティブ系の平面的な音と合わさる事で、カルトなジャンルならではの魅力が出ているように思います。単に迫力があるというよりは、全てが暗黒に吸い込まれていくような、どす黒いムードも醸し出されている感じ。このジャンルが好きなら確実に聴いててうっとり出来ること請け合い。

ローファイながら曲の魅力を損なわない、むしろ引き出す音質、仄かにメロウなリフ、カルト性を感じさせるヴォーカルと、このジャンルにおけるクオリティはしっかり備えている作品。プリミティブブラックが好きな方なら買って損はないかと思います。


WEREWOLF - The Order of Vril ★★ (2011-12-18 17:39:27)

2009年発表の2nd。

CDを再生すると、まずRAWでオールドスクールな感じのリフ捌きと、ギエエ系のひしゃげたヴォーカルが出迎えてくれ、「なるほど、このバンドはこういう路線か…」とストレートなプリブラだと理解しかけたんですが…意外にもそこにクワイアやチャーチオルガン系の、荘厳なキーボードを重ねてきました。しかもアルバムを通じてこの2つの使用頻度はかなり高く、常に雰囲気を演出している感じ。

ただ、ちょっと異質だと思うのは、ここまで高い頻度でキーボードの装飾を用いておきながら、あまり(というか殆ど)これらがメロディらしいメロディを弾かない事ですね。ペイガン思想を持ったバンドらしく、民族っぽい叙情性を込めたメロディや、北欧プリブラ風の荒涼感のあるメロディも出てきますが、その殆どはギターの方に振ってる感じ。キーはあくまでムードの演出に用いている辺り、なんだか硬派な感じがします。

基本的にはプリミティブブラックのスタイルですが、クワイア風のキーは近年のGRAVELANDのような異教的スケール感をもたらしているし、チャーチオルガンも冒涜的に響いていて結構独特の雰囲気を持った作品だと思う。個人的にはアルバムを通じてもう少し変化が欲しかったところですが、まあ根がプリミティブブラックなので全然OKでしょう。


WEREWOLF ★★ (2011-12-18 17:38:42)

ポーランド産ペイガン/プリミティブブラック。
No Coloursより2枚のアルバムをリリースしています。


SICULICIDIUM - UTOLSO VAGTA AZ UNIVERZUMBAN ★★ (2011-12-18 17:35:21)

2009年発表の1st。

某来日未遂バンドのお陰で個人的に印象が良い国、ルーマニア発のプリミティブブラックということで、中古で安かったということもあり購入。出音的には、衒いのないプリミティブブラックで、オールドスクールな感触のあるミディアムテンポを中心に展開する、極端な疾走やメロウさなどは抑えられた、この手にしては割と地味で、かつ辺境っぽさが残っている音。

…なんですが、リフにやりすぎない程度にメロウさが感じられて、それが毒霧を噴出するようなノイジーな音質と合わさるとプリブラ好きとしてはなかなか浸れるんですよね。ヴォーカルはAttila系の念仏声で、曲の無骨さとも良く合っていると思うんですが…私的にはもっと呼気多めでドスを効かせてくれた方が好みかも。スタイルの割に発声が安定しすぎててカルト性に欠ける印象も。

正直、このジャンル(プリミティブブラック)が好きな人向け以外の何物でもない作品で、広く勧める事は流石にできませんが…この淡いメロウさ、なかなか悪くないので興味がある方は聴いてみては。


LICHIUM - FROZEN TAMORI ★★★ (2011-12-17 22:29:01)

2011年発表の1st。

…これ、最初店頭で見かけたときは「絶対メタルの熱さ(とそれに付随するある意味でのダサさ)をパロった、ブラックユーモア系のバンドで、出音的にエクストリームメタルではないだろうな…と思ってましたが、まさかブラックメタルだったとは…。いつも参考にしてるブログで取り上げられてて、慌てて買いに走りましたよ。…取り合えず在庫残ってて良かった…。

インスト明けの2曲目から、初期DISSECTIONや中期SATYRICONを髣髴とさせる、冷たくメロウなトレモロリフを多分に含んだ、ドラマティックな構成の名曲で早くも「買って良かった」とガッツポーズ。雰囲気系のキーボードや地縛霊風コーラスがまた妖しくていいんですよね。この曲、メロディ面だけでなく、構成の上手さでもそれらバンドに肉薄するレベルにあると思う。

アルバムを通して基本北欧風のメロブラを演ってますが、混沌としたメロディを伴って疾走したり、荒涼としたリフと笛系キーボードを合わせたツンドラ系ペイガンブラックを展開してみせたり、ともすれば金太郎飴になりがちなこのジャンルの中で、上手く曲を差別化出来ていると思う。メロディの良さもあって、聴いていて飽きないアルバムになっていると思います。

…と、ここまで書くと「良質なメロブラなんだろうな」と思われるかもしれませんが、実は歌詞やコンセプトがぶっ飛んでる(かつネタやユーモアを多分に含んでいる)のも大きな特徴。ゴルフメタルを名乗り「田森倶楽部」「兄は決して働かない」といった曲を演る…これで良質なメロブラを予想しろって方が酷ですよ(笑)。8曲目なんかハイクオリティなブラックが謎のコントで挟まれるという前代未聞の迷曲ですし。

ただ、ネタ自体は面白いんですが、時々ネタっぽさを強調してあざとくなってるのが惜しいんですよね…。4曲目の「お父さんだよ」の語りとか、6曲目のクリーンとか正直素人のカラオケレベル。この辺りがマジで怖気を震うような声色の語りだったり、IhsahnやSimenクラスのクリーンだったりしたら、逆にネタとしても徹底してる感じで更に良かったんですが。

取り合えずブラックメタルの音にユーモアを持ち込むのが嫌でなかったり、「音楽は作り手のリアルライフと直結してるべき」みたいな信条を持っていないのであれば、チェックする価値は十二分にある作品。まあブラックメタルのパロディといえばパロディかもしれませんが、作曲面ではパロディという枠を遥かに超えたクオリティを見せてくれてますので、気になった方は是非。


NADIWRATH - Nihilistic Stench (2011-12-17 22:22:32)

2011年発表の1st。

…近年のDARKTHRONEやMONGO NINJAなど、パンク/ハードコアとブラックメタルを融合させているバンドは数多くありますが…このバンドの場合、最早ブラック部分がハードコア部分に乗っ取られてしまいつつあるくらい、ハードコア要素が強い作風ですね。やたらグルーヴィでノリッノリなリフとリズムの絡みは、部屋で聴いてても体を動かさないのが困難なほど(笑)。特にリフは前述のバンドよりも遥かにブラック離れしたノリがある感じ。

最早「ハードコアにプリミティブブラックの地下臭い音像と、厭人的なヴォーカルを加えて凶悪化させた感じ」みたいな音楽性ですが、時折鬱ブラックに通じるような、非常に陰鬱なパートを入れてくるのも特徴。しかもその時のヴォーカルが、誇張でなく「ウワアアアアアアアアアアン」みたいな泣き声で、ちょっと気持ち悪いくらい感情篭ってます(笑)。流石DODFERDのメンバーだけあって、憎も哀も表現の仕方が振り切れてますね…。

パンキッシュなパートも、鬱なパートも異様なほどの濃さで聴かせてくれる作品ですが…4曲目や8曲目など、メロディアスなパートを含む曲では意外なほどメロウなメロディも聴かせてくれるのが、また「濃い」んですよね…。特に4曲目なんか初期EMPERORを思わせるメロディでかなり不意を突かれた感じ。

正直聴き手を選びまくるアルバムだと思う。DODSFERDのパンキッシュな部分を拡大した作風とも言えますので、その辺りのブラックが好きな方にはお勧めです。個人的にはちょっとやりすぎって感じも(苦笑)。


NADIWRATH ★★ (2011-12-17 22:21:35)

ギリシャ産ブラックメタル。
DODSFERDやRAVENCULTのメンバーが関与してます。


BEATRIK - Requiem of December ★★★ (2011-12-17 22:19:02)

2005年発表の2nd。

ビータリカみたいなバンド名からは連想しづらいですが(笑)、かなり高品質な鬱ブラックを演っているバンド。スローに聞かせるだけではなく、時折疾走も挟むタイプですが…1曲目の疾走パートから早速やられました。ここだけ聴くと音像はほぼメロブラなんですが、トレモロで弾かれるメロディが、苦悩する内に人生がより悪い方向に向かっている様を実況中継しているような、ネガティビティ放出しまくりのものでかなり素晴らしい。

当然疾走パートだけでなく、ドゥーミーに進行するパートも魅力的。鬱メロディをたっぷり含んだアルペジオを中心に、丁寧にネガティブフレーズを紡ぎながら曲を展開していきますが、これがもう聴いてると生きる気力を奪われて諦めの気持ちと共に目を閉じたくなってくるんですよね(笑)。ヴォーカルが悲鳴系ではなく、鬱系としてはやや低めのがなりスタイルながら、感情が抑えきれない感じな声なのも鬱感覚に拍車を掛けてます。

また、曲の展開における、鬱ブラックらしい演出の巧さも個人的には高ポイント。3曲目の後半、小川のせせらぎのSEにアルペジオとがなりが絡むパートは、現世への執着を残したまま今正に三途の川を渡らんとする様が浮かんでくるし、曲間のオルガンは(ベタだけど)「パトラッシュ、僕もう疲れたよ…」的な、礼拝堂で息を引き取るようなシーンを想起させます。

鬱ブラックとしてはあまり音響・アンビエント方向には行かず、曲展開の構築性やメロディのネガティブさで勝負するスタイルなので、鬱系はメタルから逸脱し過ぎているバンドが多くて敬遠している方にもお勧め。ごく丁寧に作られた鬱ブラックという感じの作品です。


DOOMSDAY SUITE - THE WORLD APOCALYPSE ★★★ (2011-12-16 20:41:47)

2011年発表の1st。

取り合えずDesolate氏の新プロジェクトと言う事と、インスト作品であると言うことだけ予備知識がある状態で購入してみましたが…1曲目を聴いた感じ、WONGRAVEN(SATYRICONメンバーの演ってるアンビエント)辺りに通じる、シンセアンビエントかな…と思いましたが、2曲目以降はノイジーなリフや激速(打ち込み)ドラムも入る、がっつりブラックメタルな作風でした。

音像的にはアトモスフェリックで厚みのあるキーボードと、ややノイジーなギターリフが神秘的な空間を作り出す、GRAND EXTREME BLACKにも通じるものですが、このプロジェクトではそこにかなりメロディックなリードギターが入るのが特徴。しかも、一部に入るとかそういうレベルではなく、もう殆ど曲の中核を担っているという感じ。速弾きやトレモロも交えてメロウなフレーズを弾きまくってます。

…しかしこれが本当に素晴らしいんですよね。GEBでも証明している通り、Desolate氏は聴き手を日常から乖離した、ブラック特有の神秘的な世界に惹き込むようなアトモスフェリックな音を作り出すのが上手いですが、それに意識を持っていかれつつ、繊細で上品、しかし邪悪な彼特有のメロディセンスをたっぷり含んだリードギターを聴かされるわけですからね…これは正直聴いてるだけで至福って感じです。

これ、その時の気分によっては本家より好きかもしれないです。特にメロディック派にとっては、インスト作品だからといって敬遠するにはあまりにも勿体無い作品だと言えるでしょう。


DOOMSDAY SUITE ★★ (2011-12-16 20:40:57)

様々な独りバンドを動かすDesolate氏の新プロジェクト。
こちらはヴォーカルレスのシンフォブラックを演っている模様。


EARTH GODLESS - DEMONICATE ★★★ (2011-12-16 20:36:14)

2011年発表の6曲入りデモ。

GEBのDesolate氏による、シンセレスのブラックメタルプロジェクトという事で、ABYSS INFERNOとはどう差別化していくのか楽しみでしたが…緩急つけた展開と、リードギターも用いある程度メタリックさが強めだったABYSS INFERNOと比べると、こちらは本家GEBがシンセで神秘性を出すところを、リフの歪みとメロディで演っているような、よりアトモスフェリック・ブラックの価値観に近い音を出している感じですね。

ただし、多くのアトモスフェリック・ブラックのように情景描写に徹し過ぎることはせず、このプロジェクトでも緩急やメロディの濃淡によってドラマ性が演出されていて、マニア以外が聴いてもストレートにかっこよさが伝わる音に仕上がっていると思う。ABYSS~で気になった作り物っぽいヴォーカルエフェクトも、大分改善されている感じで魔王のような低音咆哮が曲のムードを更に邪悪なものにしていますね。

そして他のプロジェクトでも散々証明済みではあるんですが、やはり特筆したいのはDesolate氏のメロディセンスですね…。単に寒々しいというだけでなく、不吉さだとかメロウさだとかを含んでいて、時にはDISSECTIONの2ndに肉薄すると思わせるところも。贔屓目かもしれないけど、北欧の「メロウなプリブラ」のメロディよりも、国産らしい即効性がある気がします。

そういう訳で今までのDesolate氏の作品を追っている方なら間違いなく買いの一枚。そうでなくてもメロブラ好きならば買って損をすることはまずないと思われます。デモということでお値段も手頃ですし。


EARTH GODLESS ★★ (2011-12-16 20:35:28)

GRAND EXTREME BLACKのDesolate氏による別プロジェクト。
こちらはシンセを使わないスタイルのブラックメタル。


XOLOTL - Xolotl ★★★ (2011-12-12 22:11:18)

2009年発表の1st。

先日名門Candlelightよりアルバムを出し、徐々に評価をされているメキシコのペイガンブラック、YAOTL MICTLANのメンバー3人によるサイドプロジェクトということですが…これはヤバイですね。YAOTL MICTLANもかなり良かったんですが、個人的な好みではこちらの方が好きかもしれません。

タイプとしては、少しペイガン要素入ったプリブラという感じですが…まずは根幹となるプリブラの部分が非常に魅力的。攻撃的なリフと共にドカドカ疾走するドラムの、視界に入るもの全てを蹴散らしながら突進するようなテンションが本当に素晴らしい。ヴォーカルもWLA期のMAYHEMっぽい、自分の血でうがいしながら絶叫してそうな非人間的なエグイ歪み方で個人的にはどストライク。

また、このバンドはYxMx関連らしくペイガン要素も取り入れてるんですが…それをメロディに殆ど反映させないスタイルがユニークだと思う。笛などを導入しないのは元より、リフのメロディも普通にオールドスクールだったり、北欧っぽかったりプリブラの価値観準拠な感じ。時折密教の儀式で、僧が錫丈を打ち鳴らしてるかの如きパーカッションが入りますが、これが曲の妖しいムードをかなり盛り立ててる。プリブラって音像的にかなり縛りが多いジャンルだけに、こういうアクセントがあると凄く映える。

ドラムとヴォーカルが凶悪で、聴いていて単純に気持ちいいプリブラであると同時に、このバンドならではというオリジナリティもあって素晴らしい作品だと思う。Candlelightから作品をリリースした事でYxMxをチェックした方も多いと思われますが、こちらも聴いておいて損はないですよ。


DANNAGOISCHD - Emm dichdâ Ondrholz ★★ (2011-12-12 21:50:52)

2009年発表の1st。

VINTERRIKETのメンバーが独りで演っているフォークメタル…という触れ込みで買ってみましたが、実際はメタルの要素は殆どなく、ほぼ(ネオ)フォーク/アンビエントと言っていい路線。生っぽい響きのドラムにアコギや笛などによるトラッドメロ、朴訥としたクリーンボイスが乗り、自然音のSEが素朴な雰囲気を演出する作風…ですが、たまにブラックに通じるダークアンビエントパートもあるのが特徴。

しかしやはりアトモスフェリック・ブラックとしては第一級のVINTERRIKETを動かしているだけあって、音で景色を描くのが上手いですよね。聴いてると森林を流れる川のほとりでテント張って暮らしている気分になるような、妙な生活感がある感じしますもん。また低めの声でメロディを歌うノーマルボイスも非常に魅力的で癒されます。時折ちょっと滑稽な感じの掛け声も入り、小さな盛り上がりを見せるのも良いですね。

…そんな長閑な音なのにダークアンビエントパートが入るのが意外といえば意外ではあるんですが、自然的な世界観を描き続けた後だけに、ダークで超自然的な音が来ても音の風景的には地続きに聞こえたりもするんですよね。この辺りの演出のセンスの良さは流石と言ったところでしょうか。

ただ、この作品かなり人を選ぶとは思います。まずブラックメタル要素がほぼ排されているし、フォーキーではあってもクサくはなく、素朴なムード重視なのでキャッチーさも少なめ。音で森林浴をして、癒されたい方にはかなりお勧めできる作品です。


OBSCURO - Where Obscurity Dwells ★★ (2011-12-11 21:45:34)

2008年発表の1st。

スウェーデン産RAWブラック、しかもNoktu社長のレーベル(Drakker Productions)からリリースという時点で完全にリーチ掛かってますが(笑)、期待通りのカルト音源で大満足。路線は当然プリミティブブラックですが、極端な疾走やトレモロリフによるメロウさは敢えて抑え、淡々とした2ビート疾走をメインにした渋い作風なのがまたいいですね。

音質はMUTIILATIONの4th辺りを大分マイルドに整えたような、蟲の羽音系ノイズを多分に含むリフにRAWなドラムが絡む感じで、この音が摺り込むようなギターリフとよく合ってるんですよね。時々ダンジョンの奥底から聞こえてくるような、薄暗く湿ったメロディも出てきますが、この独特のジリジリ感と合わさると壊れかけたスピーカーから音が出てるような、妙に深い味わいのある音になっている気がします。

メロウ系のプリブラや、ドラマ性重視の作風のバンドと比べるとこのバンドはより(洗脳的な)聴覚上の快感を重視してる感じですね。「正しくカルト」な音源だと思う。一緒に買ってきたTODESSTOSSが「カルトの道すら外れたカルト」だったので、こういう作品を聴くとなんか安心してしまいます(笑)。プリブラ好きなら安心して心地良く聴ける音かと。


TODESSTOSS - Wurmer Zu Weinen (2011-12-11 20:22:54)

2008年発表の2nd。

AURVANDIL等を輩出したレーベル、EISENWALD発のアヴァンギャルドブラックということで興味を持ち、買ってきたんですが…これは正直人を選ぶアルバムですね。かなりカルト度高いので覚悟を決めた方にのみ勧められる感じの作品。

作風は、時にプリミティブっぽかったり、ノイズめいた音色のリフで空間を埋めたり、前衛的なキーやサンプリングを取り入れたりなどの展開を見せるブラックメタルを「バックで垂れ流しつつ」、ヴォーカルが狂気の一人芝居を行う…みたいな音。音量のバランス的にもヴォーカルの気色悪過ぎるパフォーマンスを後押しするために、ブラックメタル要素のある演奏がある…という感じ。

曲自体だけでも奇妙なんですが、このヴォーカルのパフォーマンスはかなりヤバイ…というかもうグロイです(笑)。曲によってパフォーマンスの種類は変えてきますが、人生に絶望した男が泣き笑いしながら叫んでいるようだったり、肝試しのお化け役と驚かされ役と効果音役を一人でやっているようだったり、どれもマジに何か精神に病巣を抱えてるんじゃないかと心配になる声。

例えばSILENCER、MALVERY、SORTSINDなどイカレたヴォーカルで半ば伝説と化しているバンドがありますが、そういうバンドを好む人が聴いてもこれは厳しいんじゃ…と思います。まずヴォーカルのパフォーマンス最重視みたいな曲作りもマニアックですし、そのヴォーカルも狂気が「かっこよさ」に向かわない、気持ち悪さ重視のタイプですし…。私的にも正直辛い(笑)。「お勧めしません」と書いて逆に惹かれる方は自己責任でどうぞ。


BESTIAL MOCKERY - Christcrushing Hammerchainsaw ★★ (2011-12-05 20:47:15)

2002年発表の1st。
再発盤はCDトレイが赤くてなんとも禍々しい(笑)。

音的にはスラッシュやハードコアの要素が強い、オールドスクールなブラックメタルですね。ジャギジャギした感触のリフと、ブンブンいうベース、時折入るイカレ系のギターソロなど、出音がことごとくテンション高い感じで聴いていて爽快。演奏時間はフルアルバムとしては26分とかなり短めではありますが、スカッと聴ける感じがいいと思う。

スラッシュ/ハードコア寄りのブラックの中では、ダーティな雰囲気だけでなく冒涜的なムードもまた強いのが特徴。出音的に最近のDARKTHRONEを思わせる炸裂感や、AURA NOIRに通じる熱さも持ち合わせてはいるんですが、そこに初期BEHERIT的なやぶれかぶれな冒涜性も加わっている感じ。ヴォーカルがプリミティブ系っぽい形振り構わないがなりで、スラッシュ/ハードコアよりも純粋なブラックのスタイルなのも個人的には好み。

しかし、これだけサタニックで冒涜的で、破壊衝動の詰まったような作品を出しておきながら、レイシズムに対して反対の立場を取っているのが意外な感じではありますよね。アンチNSのコンピレーションにも参加した経験があるくらいだとか。


MENACE RUINE - Cult of Ruins ★★★ (2011-12-05 20:43:28)

2008年発表の1st。

ノイズ/アヴァンギャルド/プリミティブブラックの名産地、ケベックよりお贈りする前衛ブラック…ということで期待して聴いてみましたが、このバンドもかなりキてますね。ブラックとノイズ/ドローンを掛け合わせた作風ではありますが、曲によってはリフの代わりをノイズにさせていたり、リズムがインダストリアルっぽい打ち込みだったり、かなりブラックからは逸脱した音。ヴォーカルが入っても絶叫パートは少なめで、ミステリアスなムードを高める妖しいクリーンが多めだったりしますし。

ただ、音楽的にはメタルをかなり外れた音ながら、演出する雰囲気の価値観はブラックメタルから殆ど外れていないのが素晴らしいですよね。ハーシュノイズ以外にも風の音のようなノイズなど、SE的な音色の使い方も上手く、聴いてると暗黒が視界の真ん中にあってそこに全てが吸い込まれているような空恐ろしい風景が浮かんでくる。人間の魂や生霊も引き込まれていきそう。ギターでメロディを弾いてても、神経線維を弦に使ったかのような不気味さがあって、マイナスオーラ出まくりな感じがツボに嵌まります。

アヴァンギャルドながら、あまり小難しいかったり、変に高尚だったりな方向には行かず、ブラック特有の薄気味悪いムードをしっかり追求している作品。ポスト系のちょっと洒落たムードが苦手な方でもこれは行けると思います。


THURISAZ - Circadian Rhythm ★★ (2011-12-05 20:39:43)

2007年発表の2nd。

どうもカラオケに配信されるくらい人気の、名前の似たヴァイキングメタルバンドがいるせいで微妙に割を喰ってる感じがするんですが(笑)、このバンドもなかなか高品質なシンフォニックブラックを演ってますね。刻みを多用したメタリックな感触のリフに、荘厳なキーボードを丁寧に絡めてドラマティックに展開する作風。

キーだけでなくリードギターにも結構メロディ振ってるんですが、この音色がアトモスフェリックなキーの音との相性バッチリでかなりかっこいい。メロディそのものも単にクラシカルなだけでなく、古代の遺跡を思わせる神秘性や妖しさがあって、どことなくゴシックな風味も。まろやかなクリーンヴォーカルを入れてるのも、ドラマ性や妖しさを更に強調する結果となってますね。

物凄く個性的、と言う訳ではないですが、クオリティ自体はかなり高いシンフォニック・ブラック。あと少しで抜きん出られそうな気はするんですが、現状でもそれなりに聴き応えのある作品だと思います。


NINE COVENS - ON THE COMING OF THE DARKNESS ★★ (2011-12-02 20:23:37)

2011年発表の1st。
ENSLAVEDのGrutleがゲスト参加。

Candlelightがブラックメタルシーンに送り込んだ新たな刺客ということで、チェックしてみましたが、なかなか良いですね。ザラザラした質感のリフといいガラガラに歪みつつも太い声質でがなり散らすヴォーカルといい、出音はほとんどプリミティブ・ブラック。ただ展開はそれほどミニマルではなく、ファストな畳み掛けやオールドスクールな疾走を交えたそれなりにドラマ性のあるものだし、音質も意図して粗さを出してる感じで割と聴きやすい音。

仄暗い光景を想起させるような、抽象的なムードを含んだトレモロリフのメロディも特徴的で、それがザラついた音質の中から聞こえてくると本当にジャケットの通りの、暗く神秘的な光景が浮かんできそうな感じですね。鬼火の如き音色でメロディが奏でられる4曲目や、メロディの仄暗さが「儚さ」まで高められ、シューゲイザーブラック的な雰囲気を演出する7曲目などは、特に彼らのメロディセンスが色濃く出ていると思う。

物凄く強烈な個性みたいなものはまだ感じられませんが、しっかりと作り込まれたプリミティブ・ブラックという感じの作品で、この手が好きならすんなり受け入れられそうな音。ちなみにCD買ったら歌詞カード、全く同じものが2枚付いてきたんですが…これは仕様でしょうか(笑)。Candlelightの作品を買うといつも付いてくるメタルTシャツの案内も2部入ってましたし(笑)。