メランコリックな泣きメロやアコースティックギターをフィーチャーし、叙情的な、ある意味で親しみやすい一面を見せたかと思えば、幽玄で不気味なキーボードを配したり、ブラックの得体の知れない邪悪なメロディを垂れ流し、人を寄せ付けない雰囲気を醸し出したり、まるで様々な表情を人知を超えた所で見せる自然を思わせる作風は、情景的にもスタイル的にもWOLVES IN THE THRONEROOM辺りと共通するものがありそう。
前2作では、叙情性と邪悪さに富んだリフが特徴のメロブラを演っていて、特に「Marching Order」や「Kill for Paradise」などでは、キャッチーと言ってもいいほどフックのあるリフが聴けましたが…やや薄めかつノイジーなプロダクションで、メジャーなメロブラよりも淡くて、抽象的な印象の彼らでしたが、今作はギターの音圧を上げると同時にメロディを聞き取りやすくする、ドラムの音量を適正かつ音の抜けを良くするなど音質面がより強化され、以前よりも大分聞きやすくなった感じがします。
「GO MY WAY!」「魔法をかけて!」なんて、歴史に残るアイドルポップス(「青い珊瑚礁」とか)と比べても、全く遜色のないインパクトを与えるメロディがあるし、「relations」「蒼い鳥」辺りのメロは(ポップスも行ける)クサメタラーも好みそうな哀愁があると思う。ゲームミュージックの作曲家が曲を書いているだけあって、打ち込みの緻密さ、凝り具合は一般的なポップスよりも上だと思う。「エージェント夜を往く」「私はアイドル」辺りのリズムトラックは聴いてるだけでテンション上がる。そのクオリティの楽曲が、初期状態で16(+α)曲×歌い手違い10(+2)人分あるという圧倒的な物量も凄い。
「Proclamation of War」のサビパートや「Liberation」の「♪be the end」のメロディ使いなんかは、わらべ歌などにも通じる日本の土着的な怖さのようなものが感じられますし、「Drown in a Whirl」はアメリカのゴス少女が好みそうなキッチュさと、メタリックなへヴィネスが同居した名曲。また「Forgive me」「The Voice」では歌謡曲顔負けの感動的な歌メロが聴けるし、軽快さすら感じる「Black Sky」も出色の出来。はっきりいって、この「1曲1曲の濃度」は、海外の一流のゴシックメタルバンドでも及ばないと思う。
…失礼ながら私はこれを聴いて、「やれば出来るじゃん!」と思いました。 かなりメタルから離れたアレンジなれど、ヴォーカルの歌唱力の高さは十二分に 伝わる「Wuthering Heights」、演奏の緊張感が素晴らしい「Call Me」、 ブラストを交え、シンフォニックに爆走するパートを絡めた「Child In Time」、 嵐に立ち向かうかのような勇壮さの「The Show Must Go On」など、1stの 中庸さが嘘のように、鮮やかな曲が揃ってると思う。とりわけCRADLE OF FILTH並に かっこよくエクストリームなパートを持つ「Child In Time」が素晴らしい。
「展開美」「構築美」で聴かせるシンフォブラックだと、まずCRADLE OF FILTHが思い浮かびますが、はっきり言ってCOFの新作よりもこっちの方が、聴き手の印象に焼きつく、インパクトとエネルギーを持った曲作りが出来ていると思う。私はこの作品で彼らを知りましたが、他のブログなどを見るに、耳聡い人は1stの時点で既にチェック入れてるみたいですね。私ももっと頑張らなければ…。