1stの時点では「和製CRADLE OF FILTH」と言われつつ、その実メロデスにかなり近いスタイルのメロブラを展開していましたが…今作はクオリティが鬼アップしただけでなく、作風がより確固たるものになったことで、前作以上に素晴らしい作品になっているように思います。国産ブラックの中でもかなり好きな音です。
こういう作風だと、Dani Filthの言語感覚の良さが凄く映えるんですよね。例えば一曲目後半「Burning in those angel eyes」からの一節は超邪悪なナーサリーライムみたいで、軽く口ずさむだけで何か洗脳されそうな気持ちよさがある(笑)。いつもの本家よりも歌詞のタッチは猥雑というかラフで、こういった言葉の響きの良さを凄く楽しみながら歌詞を書いてるんだろうな…という感じ。
今作は例えばインダストリアルな雰囲気の強い「Summer Arteries」や、エスニックで儀式的なムードを漂わせつつキャッチーな「Mother Kali」など、本家の作風と掛け離れているものほど魅力的に仕上がっているように思います。逆に「Living with the Fungus」など本家で演ってもおかしくない楽曲に関しては、正直本家の方がいいかな…とも思ったり。ともあれ今まで以上にDani様のヴォーカルの魅力が色濃く出た作品ですので、彼のファンならば必携のアルバムでしょう。
直接的な攻撃性を志向せず、あくまで陰鬱な情景を描くことに徹しているような作風や、時折神秘性を感じさせる音使いがあるのはポストメタル的なんですが、ブラックメタルから離れ過ぎないバランスも良いですよね。基本的に陰鬱なバンドサウンドが続き、ヴォーカルも変に線の細さのないがなり声なのである意味聴きやすく耳馴染みのいい音なんですよね。個人的には、「White Tomb」「Mammal」期のALTAR OF PLAGUESや、ASH BORER辺りと近い雰囲気を持ってるような印象があります。
ABSURDのメンバーによるレーベル、Darker than Black発のブラックメタル経由アンビエント作品という事ですが、確かにLORD WINDやWONGRAVEN辺りのペイガン・アンビエントに通じる神秘性を醸し出す作風ですね。ただ、こちらはインダストリアル/エレクトロニカ要素もかなり強く、土着的な民族性よりもスピリチュアルな方面に足を踏み入れた音になっている感じがします。
HORDES OF THE LUNAR ECLIPSEやFOGのメンバーが関与するサタニック・ブラックと聴いて購入した一枚ですが…なんか想像してた路線と全然違いますね(笑)。オールドスクールで冒涜的なブラックのムードを、ドゥーム要素で更に強化したスラッシーでスラッジーなブラックメタル。熱量を持って引き摺るようなギターリフが、効果的に背徳感を煽るダーティな作風。何気にドラムの芯のある音が心地良く、それも宗教的恍惚を演出するのに一役買ってますね。
一言で言うなら、「With no Human Intervention」期のABORYMの、ブラックメタルパートをかなり暴虐方向に解釈し、かつフランス産バンドらしいひねくれ感をプラスしたような、サイバー/インダストリアルブラック。打ち込みを採用し、時折暴虐方向に暴走するリズムセクションに、アヴァンギャルドなフレーズを交えたギターワークが乗り進行する、独特の雰囲気を持った作風。
ただ、唯一個人的に気に入らなかったのは、メロディセンスの変質。例えば「Beyond the Apocalypse」の「Chasing Dragons」「Aiwass-Aeon」等で聴けた、霊障が起きそうというレベルを通り越して霊魂の呻きをそのままメロディにしたかのような、邪悪極まりないトレモロは今作では希薄。挙句にギターソロはヘヴィメタル的な熱さも強いですし…。良く聴けばこの邪悪な流れを汲むトレモロも無くはないんですが、「Beyond~」期と比較すると薄まったのは事実だと思う。
前作「In the Stream of Inferno」から、フルアルバムとしてはおよそ18年振りとなる新作。ブラックメタルにマシンビートを導入し、インダストリアルブラックの礎を築いた事、独特のサイケデリックでカルトなムードを感じられる楽曲などから、大いにマニア受けしていたバンドだっただけに、新作の報を聞いて狂喜した人も多かったのではないでしょうか。私もショップの入荷情報見て速攻で買いに行きましたよ…無事手に入って良かったです(笑)。
肝心の音楽性の方は…「In the Stream of Inferno」期の路線を、大本は変えずシンプルかつクオリティを上げてきたような感じですね。まるで三・三・七拍子を魔改造したような奇妙かつ耳に残るリズムの「The Ether」を始め、独特のノリを醸し出すマシンドラムと、ノイズ質の粒子が精神世界へ誘うようなリフが絡み、強烈なサイケデリアを演出するインダストリアルブラック。
ジャケットの雰囲気からは全くそんな素振りは見せていませんが、意外なことにサイバー/インダストリアルなブラックメタルを演ってますね。CD再生してピコピコ音が流れたときはジャケとのギャップに結構驚きました。無機質ながら暴虐なマシンブラストに、ブラックメタル流儀の不穏なトレモロを乗せ展開していく作風で、「With no Human Intervention」期のABORYMに近い音でしょうか。
このバンドは前々作にあたる「Wreath of Thevetat」を聴いていて、メジャーなメタルバンド以上にドラマティックでハイクオリティな曲作りと、ブラックメタルのダークな叙情性を両立させた、メロディック・ブラックの覇道を行くような作風で、かなり感銘を受けたんですが…今作は若干作風を変えてきてますね。若干鬱ブラック的なテイストが入ってきた感じでしょうか。
Pest Productions発、ブラジル産の鬱ブラックというプロフィール、そして一曲目のピアノメインのインスト「Suici.De.Spair」の、まるで自分の人生が勝手に美しい物語に置き換えられて完結させられるかの如き、致命的なまでにメロウな雰囲気から本編にも期待したんですが…期待以上なんですが、この作品。この手って掴みのインストが一番ムードがあったりする残念なことが少なくないですが、この作品は最初にここまで期待値を上げておいて、それ以上のものを提供してくれるという真逆のことをやっていて素晴らしいです。
鬱ブラックやシューゲイザーブラックって、全体の雰囲気や溢れ出る感情を聴かせるものも多いですが、このバンドは楽曲やフレーズで聴かそうという志向が非常に強いのが特徴ですね。例えば、2曲目「Wanderer of Solitude」は2本のアコギが可憐に絡むイントロから、ドゥーミーに引き摺るリフに、人々が黄昏の海に還っていく情景を思わせる、人類自体のエンディングテーマのような終末的メロウさを感じさせるメロディが乗る、儚く物悲しくもどこか破滅めいた雰囲気の本編へと展開する楽曲。
ただ、店ではDEATHSPELL OMEGAの影響の強い音と紹介されており、実際私もそれに釣られて(加えて、レーベルがWorld Terror Committeeだった事もあり)購入したクチなんですが、ばっさり「DSO系」で括ってしまうには、少し抵抗のある音なんですよね。DSOは神秘性や前衛性が強く、ミステリアスな印象があるんですが、このバンドは衝動性や直接的な暗黒性をより強く感じられ、もっと邪悪さを身近に感じられるような音。こちらはスラッシーなリフ・リズムも多用されており、宗教色が濃い中にもオールドスクールな側面が垣間見れる作風のため、そういう印象になるのかもしれません。ヴォーカルの凄みの効いた叫びも、生々しい衝動に満ちている感じがしますし。
特に試聴もしないで買ってしまったんですが、やっぱりこのレーベルってハズレがないですよね。同レーベルのCHAOS INVOCATIONやACHERONTAS、ASCENSIONやORDER OF ORIASなどが好きであれば、このバンドも要チェックです。
一言で言うなら、閉塞感特化型のディプレッシブブラック。楽曲はバラエティに富んでおり、どす黒いエネルギーで塗り潰すかのごとき、低音も効いたリフが息の詰まるような感覚を演出しつつ、ブラストも使用し攻撃的な印象の「Shrouded in Thorns」が動の閉塞感を描いてるとしたら、歪みの少ないサウンドで、アルペジオの残響音が空虚に響く「Tripolarity」は静の閉塞感を描いている、とでも言えそう。
どこか耽美趣味の感じられるジャケのアートワーク、個人的に好きなバンドであるSECRETS OF THE MOONに似たバンド名に惹かれ購入したんですが…目論見通り(?)、SECRETS OF THE MOONやPORTA NIGRA辺りに通じる、知性的な雰囲気を持ったプログレッシブなブラックでした。特に事前知識とかなく勘と直感だけで買ってしまいましたが、結構当るもんだと自分でもびっくり(笑)。
店ではオーストラリア産の正体不明のブラックということでしたが、実はDROWNING THE LIGHTのAzgorh氏による独りプロジェクトらしいですね。自身が運営するレーベル、Dark Adversaryからの発売。ちなみにプロジェクトは既に活動を停止しているらしく、オリジナルフルアルバムとしてはこれが唯一の作品という事です。
他のサタニックなデスメタルと比べると、押し潰されたような音質でリフの輪郭が聞き取りづらく、直接的な攻撃性を若干減退させてまで暗黒ムードを演出している辺りは好みが分かれそうですが、少なくとも雰囲気の演出力は超一流レベルかと。調べてみたら、BENIGHTED IN SODOMのメンバー絡みのバンドという事で、このアンビエンス重視志向も納得。
SALTUSと言えば、EMPERORのトリビュートアルバム「In Honor of Icon E」に「Curse you all men!」で参加したことで有名なバンドですね。今年出たEMPERORの1st再発盤の限定仕様にそのトリビュートが付属していたこともあって、結構このバンドの音自体を聴いた事のある人は多いんじゃないでしょうか。その音源や、近年の作品ではデス的なヘヴィネスやソリッドさを手に入れているようですが、この時点ではまだデモという事もあって、かなり荒削りな感じの音。
基本的な路線としては、真性でどす黒いシリアスな雰囲気満点のブラックメタルで、レーベルで言うとAgoniaやWorld Terror Committee、Daemon Worship辺りが好みそうな感じ、関連バンドで言えばMGLAに近い音ではあるんですが…この作品はそれを踏まえつつ、ブラック特有の焼け付くようなリフをミッドテンポで聴かせることに特化し、より「どす黒い情景を描写する事」に重きを置いたような作風ですね。
「チェコのINFERNOが素晴らしい」とは聴いてましたが、確かにこれはかなり良いですね。ブラックメタルとしての衝動性や宗教的な甘美さと、メタルとしてのクオリティを両立させた、どす黒く堂々とした音は「Sworn to the Dark」「Lawless Darkness」期のWATAINを思わせますが…こちらの方が甘美な邪悪さにおいて若干譲る代わり、よりオールドスクールで辛口に仕上がっている印象。直接衝動を叩き込んでくるような攻撃性の高さ。
こういうどす黒く真性な雰囲気を出すバンドは最近少なくないですけど、この作品はその中でも「楽曲の良さ」がかなり際立っているように思います。特にギターがメロウなメロディを奏でるインストの「Loyalty of Honor」から、EMPERORの「Ensorcelled by Khaos」へのリスペクトとも取れる、ブラックメタルの宗教的神秘性を流出させるようなリフを伴いつつのリフで幕を開け、ドラマティックに展開していく「Altar of Perversity」への流れは、この手のバンドはかなり聴いてるはずなのに、思わず深く感銘を受けてしまったほどかっこいい。
ただ、演ってる事はマニアックとしか言い様が無いですけど、それを表現する手腕の質は非常に高いです。ヴォーカルはNIGHT OF THE WORLD同様にドスが効きつつも切れ味の鋭い、狂気的ながなりで楽曲の残虐さを上手く強調してますし、ミッドテンポを力強く聴かせるドラミングも不穏さに説得力を持たせてます。ギターの音色はブラックらしいノイジーさですが、重さもありリフの醸し出す不穏なムードをより高めてますね。自身の持つ世界観を十全に表現できているという印象。
ヴォーカルがMAKE A CHANGE…KILL YOURSELFやNOCTURNAL DEPRESSIONに関わっていた事からも予想される通り、鬱っ気の強い、Rawでミッドテンポ中心の、オールドスクールなブラック。ヴォーカルのやたら潰れた声質、小さな篭もった音のバンドサウンドといいやたら閉塞感の強い音。カビでも生えてきそうな薄暗さ。良く聴くと、アンビエント要素を強める前のBURZUMに影響を受けてると見受けられる箇所がある辺り、味があって良いんですよね。
WOODS OF DESOLATION、AUSTERE、GERMなど、鬱ブラック好きには知名度の高いバンドの関連メンバーによるプロジェクトですが、こちらはブラックメタル的な要素は殆どなく、メランコリックなメロディを大フィーチャーした鬱っ気のあるロックで、ヴォーカルもマイルドなクリーン。一般的なロックよりやや強めな歪みのギターと、そこに込められた哀愁深いメロディが鬱ブラックの出自を感じさせます。