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Usher-to-the-ETHERさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 301-400

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HAPPY DAYS - Happiness Stops Here... ★★★ (2014-12-13 15:06:43)

2009年発表の3rd。
元はSelf Mutilation Servicesからのリリースでしたが、2013年に日本のMaa Productionsから再発されています。

これ、ホントに鬱ブラックを分かってる人が作った鬱ブラックって感じで、素晴らしいんですよね。鬱系って、例えば絶叫が裏返り過ぎて逆に滑稽だったり、メロディアス過ぎて絶望感が足りない、逆にメロディが薄くて面白くない、メタリック過ぎて抽象的ムードが薄い、アンビエントに寄りすぎててメタルである必要性を感じないetc…とか、本当に色々な陥穽のあるジャンルなんですよね。そのどれにも嵌まることなく、鬱ブラックの王道を貫いている辺り並々ならぬセンスの持ち主だと思う。

メロウさを過度に強調するのではなく、感情のさざなみを描写するかのようなトレモロ、鬱々としたミッドテンポを基調としつつ、単調になり過ぎない曲展開、感情表現が過度でなく、ブラック本来の凶悪さも感じさせるヴォーカル、チェコのTRIST辺りにも通じる、荒廃した精神状態を表すような、乾いた暗黒性を感じさせるプロダクション…と全ての要素が噛み合って、鬱ブラックとしての一つの世界観を築き上げているような感じ。鬱ブラック中の鬱ブラックと言っても過言ではないのではないでしょうか。

特に目新しい事をやっているわけではないのですが、このサブジャンルとしてはほぼパーフェクトに近い音なのではないでしょうか。褒めるところはあっても貶すところが取りあえず見つからないです。日本盤もリリースされたことですし、このジャンルが好きであれば買ってまず損はしないでしょう。


DARK INSANITY - Providence of Darkness ★★★ (2014-12-08 22:16:01)

2014年発表の2nd。
これ、今年のリリースの中でも激オススメです!

1stの時点では「和製CRADLE OF FILTH」と言われつつ、その実メロデスにかなり近いスタイルのメロブラを展開していましたが…今作はクオリティが鬼アップしただけでなく、作風がより確固たるものになったことで、前作以上に素晴らしい作品になっているように思います。国産ブラックの中でもかなり好きな音です。

まず耳を突くのがゴシック的耽美さの大増量っぷり。元からメロディにクラシカルな要素はありましたが、今作は泣き以上に美しさを最重要視しているような印象。小フーガをモチーフにしたと思しきトレモロリフなんか聴かされたら燃えない訳がありません。ピアノやオーケストレーションを大々的に取り入れたことも、耽美さを強めただけでなく曲のメリハリを際立て、より緊張感の増した展開を聴かせるようになったと思います。

また、前作でも個人的な評価の高かったメロディアス極まりないトレモロリフはそのままに、ギターの歪みを強くして得たノイジーさと、空間系のキーボードを合わせたアトモスフェリックブラック的なパートも取り入れるようになったり、ブルータルに攻めるパートでの攻撃性が強化されたりなど、ブラックメタルの要素も更に「濃く」なっている感じがします。

ヴォーカルも大分パワーアップした感じで、DARK FUNERALのCaligula氏を思わせるタメの利かせ方、腹筋を全力で使ってるような絶叫振りですが…Caligula氏が殺意100%だとすると、この作品のヴォーカルは欝や悲哀など色々な感情が入っている感じで、よりエモーショナル。単純な攻撃性ではCaligula氏に軍配が上がるかもしれませんが、この人の肺腑から様々な感情を搾り出すような悲痛さと、決してそれを滑稽に聴こえさせない太さのある歌い方は味があって本当に好き。

ゴシックにしろブラックにしろ、ジャンルを良く研究した上で作ったというのが伝わってくる作品。研究したという以上に、それを自分達の作品として見事に昇華してみせているのがほんと素晴らしいです。曲によってはBeneath the Howling StarsやBathory Ariaへのあからさまなオマージュも見受けられ、前作よりCOF愛がダイレクトに感じられるのもいいですね(笑)。邪悪さよりは耽美さや煌びやかさ、メロさを重視した作風なのでJUNO BLOODLUSTやHATRED ANGEL辺り好きな方にも大推薦。


A.M.S.G. - Anti-Cosmic Tyranny ★★ (2014-12-08 22:12:11)

2013年発表の1st。
GLORIA DIABOLIのメンバーによるバンドだそうです。バンド名は「Ad Majorem Satanae Gloriam(悪魔の更なる栄光のために)」の頭文字を取ったもので、GORGOROTHのアルバムタイトルにも同じフレーズが使われてましたね。

カナダのバンドながら、ショップの評では北欧の黎明期ブラックに強い影響を受けたバンドとのことでしたが、正にそんな感じのブラックメタルを展開してますね。ノイズによるオープニングが終わって、一発目のリフから既にDe Mysteriis~期のMAYHEMの香りが色濃く漂ってきてます。あからさま過ぎて思わず苦笑が漏れるくらいリスペクトしてる感じ。ギャーギャー喚く系ヴォーカルもWolf’s~期のMAYHEMっぽい気がしますし。

また、途中でやや唐突に不可思議なフレーズのサックスが挿入されたりなど、不気味さや不条理さを醸し出す展開がそこかしこに見えるのも、衝動に満ちた若いミュージシャンがそれぞれに邪悪さを演出するアイデアを持ち寄ってた黎明期ブラックの雰囲気に通じるものがある気がします。レーベルカラー(Profound Loreより発売)なのか、若干アンサンブルに前衛っぽい所があるのも、楽曲に緊張感をもたらしているように思います。

若干ノイズ部分が耳に痛い(自信があるのか、楽曲と不可分になってる)というのはありますが、北欧の空気感をそのまま再現したような、かなり良質なブラックメタル。オーソドックスだけどオーソドックス過ぎない匙加減が上手いです。


ARKHA SVA - Donusdogama: En Accrochant Le Mendiant Qui Tomba Du Trône De Dieu ★★ (2014-11-29 10:57:01)

2014年発表の4曲入りEP。
そのうち2曲は1分ちょっとのインストなので、ブラックメタル曲は実質2曲。トータルの演奏時間は約17分でEPとしてのボリュームはそれなりですね。

ARKHA SVAと言えば1stアルバム「Gloria Satanae」がフレンチブラックに通じるような不健康で耽美なメロディ、ソプラノのような超高音とリバーブの掛かった異様ながなり声を使い分ける、カリスマ性の高いヴォーカル、プリミティブブラックの魅力を完全に理解してると思われる、閉塞感のある、ノイジーながらメロディの良さを殺さない音作り…と、熱狂的な支持を得るに相応しい作品だっただけに、様々な音源集やライブアルバムを経ての新作EPとなると、かなり期待値も上がってしまう訳ですが…。

まずブラックメタルとしての完成度は相変わらず凄まじいです。人間の居住地が焦土へと変わっていく様だとか、疫病が蔓延して人が死に絶えていく様だとか、そういう破滅的な情景が浮かぶメロディセンスはやはり素晴らしいし、プロダクションがRawさを残しつつも厚みを増していて、そのメロディの苛烈さがより強調されている感じがします。ヴォーカルも超高音なのに滑稽さを微塵も感じさせない金切り声から、リバーブの掛かった悪魔としか思えない低音グロウルを使いこなし、表現力の高さは相変わらず。

なのだけど、聴き手に「何か凄いものを聴いている」と感じさせ、いてもたってもいられなくなる衝動を呼び起こすようなカリスマ性は、若干だけど薄らいでしまっているような感じもあるんですよね…単に私が1stの世界観に慣れすぎたのかもしれませんが。特に中音域でのクリーンヴォーカルの普通っぽさにはがっかり。最初聴いたときどこのB級歌い手かと…。このクリーンにも、例えばIhsahnやGarmのようなカリスマがあれば、おそらく更に信仰心を高めていたことでしょう。

国産ブラックやフレンチブラックが好きであれば買ってまず損はしないのは確かですが…正直これじゃない感を覚えた部分があるのも事実。神聖視されることが多いバンドだけにこんなレビューを書くと怒られるかもしれませんが…このバンドにはもっと圧倒的な存在でいて欲しいです。人間の側に降りてこないでいて欲しいというか。


DEVILMENT - The Great and Secret Show ★★★ (2014-11-27 09:58:48)

2014年発表の1st。
COFのDani Filthの新バンドと聞いて速攻で買いに走った人も多いのでは。
もちろん私もその一人です(笑)。

路線としては、COFでも演っていたシンフォニック・クラシカル・ヴァンピリックなブラックメタルをベースに、DEATHSTARSや一時期のSAMAEL辺りを思わせる、インダストリアル・ゴシックのテイストを加えた感じでしょうか。暴虐性やシンフォ度は本家よりも抑え目ですが、その分リフやリズムのグルーヴィさが増し、よりノリの良い音に仕上がっている感じですね。

こういう作風だと、Dani Filthの言語感覚の良さが凄く映えるんですよね。例えば一曲目後半「Burning in those angel eyes」からの一節は超邪悪なナーサリーライムみたいで、軽く口ずさむだけで何か洗脳されそうな気持ちよさがある(笑)。いつもの本家よりも歌詞のタッチは猥雑というかラフで、こういった言葉の響きの良さを凄く楽しみながら歌詞を書いてるんだろうな…という感じ。

今作は例えばインダストリアルな雰囲気の強い「Summer Arteries」や、エスニックで儀式的なムードを漂わせつつキャッチーな「Mother Kali」など、本家の作風と掛け離れているものほど魅力的に仕上がっているように思います。逆に「Living with the Fungus」など本家で演ってもおかしくない楽曲に関しては、正直本家の方がいいかな…とも思ったり。ともあれ今まで以上にDani様のヴォーカルの魅力が色濃く出た作品ですので、彼のファンならば必携のアルバムでしょう。


TOMORROWWILLBEWORSE - Down the Road of Nothing ★★★ (2014-11-27 09:58:05)

2013年発表の1st。
翌年に現在所属するレーベルAvantgarde Musicより再発されてますね。

イギリス産のポスト/シューゲイザーブラックとの事ですが…このサブジャンルの中ではこれ、かなり好みの音ですよ…!ALCESTやそのフォロワーのようなカタルシスではなく、ひたすらにグレイな閉塞感を感じるメロディ、そしてその閉塞感を殊更に強調するような、曇りのある音色のディストーション…いやあ、これ聴いてると気が滅入ってきますね(嬉)!!重いベースが纏わり付くような音作りも更に抑鬱的なムードを助長。

直接的な攻撃性を志向せず、あくまで陰鬱な情景を描くことに徹しているような作風や、時折神秘性を感じさせる音使いがあるのはポストメタル的なんですが、ブラックメタルから離れ過ぎないバランスも良いですよね。基本的に陰鬱なバンドサウンドが続き、ヴォーカルも変に線の細さのないがなり声なのである意味聴きやすく耳馴染みのいい音なんですよね。個人的には、「White Tomb」「Mammal」期のALTAR OF PLAGUESや、ASH BORER辺りと近い雰囲気を持ってるような印象があります。

ブラック好きが心地良く浸れるポストメタルとブラックメタルのバランス、陰鬱なメロディと音作りのセンスで酔わせてくれる、良いアルバムだと思います。ぶっちゃけ某所で半額セールだったのと、バンド名に惹かれて購入しましたがこれは相当に良い作品ですよ。お勧めです。


ASA-NOIR - Fall of the Idols ★★★ (2014-10-29 11:55:48)

2014年発表の1st。
フルアルバムとしては初ながら、日本盤もリリースされた作品。と言っても直輸入盤仕様で、輸入盤に長帯とその裏にバンドメンバーへのインタビュー記事を載せてあるという装丁。ちなみに発売日は今日です。私は入荷日である昨日買ってきて聴いてますが、これがシンフォニック・ブラックとしてなかなかの力作で良い感じです。

帯にはシンフォニック&メロディックブラックである事は明記されてますが、実はギターワークはブラックメタルからの影響はそれ程強いものではない気がします。リフはトレモロ中心ではなく、時折変則的なフレーズも織り交ぜつつ刻みリフが多めだし、リードギターがメロウなメロディを奏でる場面も多い。ブラック然としたがなりだけでなく、ナルシスティックな低音クリーンやダミ声を使い分けるヴォーカルも、ブラックの狂気や衝動性ではなく、あくまで世界観の語り部であることを重視している印象ですし。

ただ、トレモロリフフェチな私でも物足りなく感じないのは、ひとえにフレーズのセンス、ひいてはそれによって表現される世界観が素晴らしいからでしょう。特に、キーボードやギターが奏でる、ちょっとした装飾的なフレーズがツボに入る箇所がかなり多いんですよね。世界観のベースには北欧神話だけでなく、エドガー・アラン・ポーやH.P.ラブクラフトの作品等もあるようですが、そういった怪奇文学めいた雰囲気が演出されてると思う。メンバー曰く「Sakeでも呑みながら楽しんでくれ!」との事ですが、Sakeよりもワインやウィスキーの方が合いそうです(笑)。

どうしても日本盤が出るような作品って、ちょっと特別視してしまいますが…そうした期待を裏切らない良質なシンフォニック・ブラック。CLAYMOREもそうでしたが、こうした良質なバンドを発掘してくれると聴き手側としては凄く助かります。


DEATHRONIC - Duality Chaos ★★ (2014-10-29 11:50:53)

2013年発表の7曲入りEP。

フランス産の独りブラックのデビュー作という事ですが、これがかなり高品質なメロデス寄りシンフォニック・ブラックで驚きました。メロウなリードギター、刻みを多用したメタリックなリフなどバンド部分はかなりメロデスに近い感じですが、耽美なメロディ使いやソプラノの導入による耽美さの演出や、時折エスニックやインダストリアルな味付けが入る構成など、様々な要素を取り入れてドラマティックでシネマティックな音楽を構成しているという感じ。

独りブラックとしては音はなかなかに骨太で、ヴォーカルのグロウルもそれなりに迫力があって悪くないですね。個人的にかなり耳を惹いたのが、リードギターによるメロディ。特にオープニングが終わっての2曲目、まるでRPGのラスボス戦のような、哀愁が漂いつつもヒロイックなメロディを奏でていて、思わずグッと来てしまいました。このリードギターのメロディの傾向で、よりメロデスっぽく聞こえるように思うんですよね。

デビュー作ながら、メジャー志向かつかなりのクオリティのものを聴かせてくれる作品。邪悪さやアングラ感こそ希薄なものの、シンフォ系好きであればチェックしておいて損はないでしょう。


NEO GEO HEROES ~ Ultimate Shooting ★★ (2014-10-29 11:48:53)

2011年にSNKプレイモアがPSPでリリースしたSTG。
アーケード「KOF SKY STAGE」をベースに改良を加えた作品。
元になった「SKY STAGE」の方も収録されています。

縦スクロール・面クリア型の弾幕STGで、溜め撃ちにあたり、キャラクターごと・段階ごとに全く異なる効果のある「必殺技」や、敵弾消去や稼ぎなどの恩恵がある代わりに、敵の攻撃が激化する「挑発」、敵に接近して撃破することでスコアアイテムのランクが上がるなどのシステムがありますが、基本的にはオーソドックスなSTGですね。操作性も悪くないですし、SNKキャラを動かして弾幕STGする事自体がとても楽しいです(笑)。

ただ、難易度の調整方法だけは納得が行かないですね。難易度を最低まで落としてすら、4、5ステは東方のルナティックのスペルカードを余裕で上回る難しさの弾幕が出てくるのが…。ライフゲージ制(3回ミスでゲームオーバー)で、ミスってもボムが補充されないのも難度の高さに拍車を掛けてます。それに対する救済策が、無限コンティニューっていうのもどうかと。キャラゲーの側面も強いので、ストーリー見れるのは良いですけど…こういうゲームって弾幕を掻い潜れるかどうかのギリギリが楽しいのでは。その点、東方のノーマルや怒首領蜂の一周目は絶妙だったんですけどね…。

このゲーム、3ステくらいまでは本当に楽しいんですよ…弾幕も操作をミスれば死ぬけど、掻い潜れるかどうかのギリギリを攻めて来る感じで。でも後半は避けられない事が見た瞬間分かっちゃうようなものが多くて、ちょっと萎えます。この辺りを、難易度選択によってどうにか出来れば、良作だと思うんですが…。一応東方はExまでなら全作クリアしましたけど、なのに後半死んでボムを補充して撃つ作業になっちゃうんだもん。幾らなんでも難し過ぎですよ…。


VASSAFOR - Elegy of the Archeonaut ★★ (2014-10-27 22:36:32)

2012年発表の音源集。
未発表曲やリハーサル、BATHORY、BETHLEHEM、BEHERITのカヴァーなど、10曲入りで約75分とボリュームたっぷりの内容。

CDを再生し始めてまず、音作りのカルトさに圧倒されますね。明らかに意図的にやってる感じですが、包み込むような感触を持ったノイジーなギター、ヴォーカルやドラムにリバーブを掛け、得体の知れなさを増強し、低音を強調することでドスの効いた感触を醸し出すプロダクションが合わさると、疾走パートではウォーブラックさながらの衝動性、ミッド~スローパートではドゥーミーな質感を感じられ、芯のある邪悪さが表現されている感じ。

何気に大作主義なバンドで、10分前後の曲も結構多いんですが、大作曲を作るバンドにありがちなプログレッシブさやアヴァンギャルドさはほぼなく、ひたすらに暴力的で陰惨で密教めいた音が展開されている感じ。ただ、徹底して冒涜的な音像が貫かれている反面、メロディや叙情性などは敢えてオミットしているという印象で、その辺りは多少好みが分かれるかもしれません。ウォーブラック的な衝動性や、ドゥーミーな密教性こそブラックの醍醐味だと思う人は、充実した1時間15分が得られるのではないでしょうか。


DUSK (HUNGARY) - Deathgate ★★★ (2014-10-27 22:34:25)

2006年発表の4th。

TYMAH (TUMAN)や666絡みのメンバーによって結成され、コンスタントに活動を続け、2014年現在では7枚のアルバムを発表しているという、かなりアクティブなバンド。メンバー構成や活発な活動振りからも分かる通り、筋金入りのブラックメタルを聴かせてくれます。楽曲のタイトルも黎明期北欧ブラックへの憧憬が垣間見れて、また良い感じなんですよね。

路線としては、TYMAH同様直球でプリミティブ志向の強いブラックですが、最も異なるのは音作りのセンスでしょうか。アンプの音量ツマミを思いっきり捻ったような轟音が、無理矢理に邪悪なアンビエンスを感じさせる音。鬱テイストを感じさせつつ、悲哀よりも殺気が上回ったようなヴォーカル、黎明期北欧ブラックを思わせる、この手が好きなら思わずハッとするようなトレモロのメロディ、Rawな突っ走り振りが非常にかっこいいドラム、威風をも感じさせるようなミディアムパートなど、ブラックメタルとしてのセンスの良さは流石と思わせるものがありますね。

TYMAH同様、黎明期北欧ブラックが好きであればグッと来るであろう作品。個人的には、トレモロリフのセンスの良さと、鬱ブラックのエモーショナルさにプリブラ期DARKTHRONEの殺気を加えたようなヴォーカルにかなり痺れました。


CHARNEL WINDS - Der Teufelsbund ★★★ (2014-10-26 22:01:57)

2011年発表の1st。
BLOOD RED FOGやSATURNIAN MIST、ARVET絡みの人脈のバンドで、この作品はSATANIC WARMASTERのメンバーのレーベル(Werewolf Records)からのリリースという、ブラックとして品質保証のラベルが貼ってあるのも同様なアルバムですね。

ただ、CDを再生するとブラックとしては珍しい、いきなり速弾きを交えた、メタリックなソロが始まって若干戸惑いましたが…ギターソロやリードギターのフレーズも重視したメロディアスな作り、アルペジオやクリーンヴォーカルを効果的に取り入れた緩急付いた構成などもありつつ、ブラックらしいRawさや陰湿さもしっかり感じさせる作風で、経歴のハクに負けない仕上がりだと思います。

特に良いのが、ギターのメロディ面でのメリハリの付け方。ソロ部分では速弾きを交えたり、情感を込めて弾いたりして聴かせつつ、疾走パートのトレモロリフには邪悪さや陰湿なメロウさががっつり込められていたり、ノイズ交じりのアルペジオが抑鬱的な不穏さを醸し出していたり、ブラックの本分を全うしているのが素晴らしい。ヴォーカルのクリーンもナヨ声でなく、邪教の洗礼を受けた司祭が教徒を導くような、確信に満ちた声色で楽曲から浮いてないのも良いですね。

アングラなブラックとしては相当にメロウ/メロディアスな路線ではありますが、レーベル主のSATANIC WARMASTERやメンバーの関与するBLOOD RED FOGとも違うアプローチなのが面白いですね。アングラメロウなブラックが好きであればかなりお勧め。


TORMENTAL - Il Perpetuo Sconcerto Per La Realtà in Cui Mi Sveglio Ogni Giorno ★★ (2014-10-26 21:55:09)

2013年発表の1st。

リリースは割と最近、しかも知名度の高いレーベル(Pest Productions)からのリリースだというのに、何故だか新品が値下げされてたので、青田買いも兼ねてゲット。…確かにこれ、ディプレッシブブラックの中でも好みが分かれてしまいそうな作品かもしれませんね。この手の音楽性のバンドには音響志向の強いものが多いですが、この作品はそれが頭抜けて強く、良くも悪くもメタルとしての体裁を保っていないような感じ。

ドゥーミーなスローテンポに、浮遊感のあるアルペジオや、キーボードを重層的に重ねて閉鎖的な空間を演出する、アトモスフェリックでアンビエントな音作りですが、キーボードの音色が多彩かつセンスが良く、演出力はかなり高いと思う。ノイズやサンプリングをさりげなく使用してくるなど、前衛的な要素の扱い方も非常に巧み。ヴォーカルは悔恨や悲嘆の感情を込めて、裏返り気味に絶叫するタイプですが…個人的にヴォーカルに関しては、このタイプは若干食傷なので微妙かも…。真に迫ってるのは分かるけど…。

直接的に物悲しさを演出するというよりは、アンビエントな浮遊感のある音空間の中で、儚さだったりメランコリックさだったり、色々な感情が流れ込んでくるような作風。COLORLESS FOREST辺りよりも更に音像主義な鬱ブラック。結構尖った音だと思いますが、それだけに気に入る人は本当に気に入りそう。


DÄMONENBLUT - Das Tor Zur Hölle (2014-10-26 21:51:16)

2009年発表の1st。
SATANIC WARMASTERのメンバーによるレーベル、Werewolf Recordsより発売。

プリミティブブラックのアングラさと、ハードロックの豪放さを合わせた、地下臭いブラックメタルを展開。フィンランドの大御所、BARATHRUMを更にマニア向けにしたような感じでしょうか。リフにはメロウ系プリブラのような叙情性こそありませんが、グルーヴィなドラムとも相俟ってノリの良さが感じられますね。海賊もしくは山賊の親分系ブラックメタル。

ただ、個人的にこれが好きかといわれると結構微妙な線なんですよね…。野太いがなりに加え、ヤッハッハーと豪快に笑うヴォーカルを始め、野蛮な雰囲気は良く出てるんですけど、リフ・リズムのグルーヴィさもなんか楽しそうに聞こえてしまうというか。個人的にはブラックメタル、特にプリミティブな音作りをするバンドには陰湿さとか狂気を求めてしまうので、その点がちょっと物足りなく感じてしまいます。

好き嫌いはありますが、プリミティブ/オールドスクールなブラックがハードロック要素でノリの良さを増してる、そういった路線が好きであれば聴いてみてもいいと思います。アングラな雰囲気はしっかり出てますので。


ESEQUIEM - Contempt ★★ (2014-10-25 09:51:06)

2013年発表の1st。

「Masterpiece Distribution」ロゴがやけに印象的なレーベル、Behemoth Productionsからのリリース。このレーベルって、何気に良作が多い印象なんですが、本作もオーソドックスながら「外さない」ブラックを演ってますね。やや荒めの音作りに、ブラストビート中心の楽曲構成、叙情的なトレモロリフで聴かせる、ブラックとしては王道な音という感じがします。

特徴を挙げるとするならば、トレモロリフに含蓄されたメロディの叙情性がかなり高い事でしょうか。リフの摺り込む様なノイジーさとも相俟って、悲壮な雰囲気が立ちこめてます。個人的にはプリブラに近いスタイルながら、メロディの傾向からゴシック的な美しさを若干感じ取ったり。ヴォーカルもただがなるだけでなく、ダウナーな感情を込めるタイプで、全体的にこの手のオーソドックスなブラックとしてはエモーショナルな感触が強い印象ですね。

物凄く際立った個性があるタイプではないですが、メロディやムード作りの巧さなど、質の良いブラックを聴かせてくれる一枚。メロウなブラックが好きな方にお勧め。


THE OATH - Self-Destructed ★★★ (2014-10-25 09:48:09)

2010年発表の3rd。

これは面白いですね。ブラックメタル由来のトレモロリフを多用しつつも、泣きメロを奏でるリードギターや、楽曲に厚みをもたらす刻みリフなども重視したメタリックな音作りで、メロブラとメロデスの中間の音という感じですが…トレモロリフにはエモーショナルで儚げな雰囲気があったり、キーボードの音使いにやや前衛的なところがあったりなど、メロブラ部分にポストブラック的な感性が感じられるのが特徴。

特に2曲目のイントロなんて、如何にもシューゲイザー志向のブラックが静パートで取り入れそうな感じなんですよね。全体を通じ、トレモロリフのメロディはかなり強調されている上、キーボードの音色がプログレッシブな多彩さを見せているので、音としてはかなり派手な部類。ヴォーカルもクリーンがちょっとナヨく感じるものの、グロウルはかなり太いですし、アーティスティックな感性も強いですが、音作り自体は割と骨太。

楽曲により、様々な表情を見せ、聴き手を飽きさせないプログレッシブなメロブラ/メロデス。メジャー志向な音作りで興味深いことをやってると思いますので、気になった方は是非。前衛志向はあっても変に聴き辛くない音で良いですよ。


LENGSEL - Solace ★★ (2014-10-23 21:17:13)

2000年発表の1st。
バンドはこの作品を出した後に解散したものの、2006年に再結成した模様。

一言で言うならARCTURUSタイプのプログレッシブなブラックメタルでしょうか。緩急の付いた、知的な展開を見せる楽曲、キーボードを利用し、世界観を広げていく作風などかなり共通点の多いサウンド。ただしこちらは冒頭から印象深いトレモロリフが吹き荒れていたり、もう少しメタリックな色が強いイメージがありますね。ARCTURUSと比較するとケレン味が薄い代わりに、より強くメタルとしての魅力を打ち出してる印象。

ただし、楽曲そのものが持つプログレッシブで知性のある雰囲気とは裏腹に、プロダクションはノイジーかつ厚みのあるものなのも特徴ですね。正直、個人的にはもっと硬質かつクリアな、メタリックな音質が、もしくは逆に霧の掛かったようなオブスキュアな音作りの方が良かった気がします。どうも作風に噛み合っていない気がしてしまうというか…。ただ楽曲そのものは十二分に魅力的なので、知的でドラマ性の高いブラックが好きであればチェックする価値は大有りです。


SOMNOLENCE - As Midgard Weeps ★★★ (2014-10-23 21:13:29)

2008年発表の1st。

ABSURDのメンバーによるレーベル、Darker than Black発のブラックメタル経由アンビエント作品という事ですが、確かにLORD WINDやWONGRAVEN辺りのペイガン・アンビエントに通じる神秘性を醸し出す作風ですね。ただ、こちらはインダストリアル/エレクトロニカ要素もかなり強く、土着的な民族性よりもスピリチュアルな方面に足を踏み入れた音になっている感じがします。

重層的な音色で、空間を灰色に染め上げるようなシンセ、亡霊のようなコーラス、そして淡々とした打ち込みのリズムが絡み、聴き手の精神に直接語りかけてくるかのような音像を展開。上記のバンドと比較しても、日常を侵食してバンド側の描く情景を聴き手に見せ付ける力は、全く劣っていないと言えるでしょう。シンセと打ち込みの音色の相性が非常に良く、心地良く精神世界へのトリップを楽しめます。

ブラックメタル経由のアンビエント作品の中でも、没入度は非常に高い作品なのではないでしょうか。路線自体が結構マニア向けだと思いますけど、お勧めです。上記バンド以外にも、エレクトロ方面行ってからのULVERやMANESが好みなら心地良く聴けると思う。


PHLEGEIN - Silver Veins ★★★ (2014-10-23 21:08:51)

2013年発表の1st。

まず、オープニングの可憐なピアノの音色を聴いてCD間違えたかと思いました(笑)。意外なオープニングに面食らいましたが、本編はガチガチの真性でアングラなブラックですのでご安心を。…デビューEPでは良質かつ雰囲気もあるプリミティブブラックを演っていたんですが、個人的にはもう一声何かが欲しいと思ってたんですよね。この作品は、見事にその要望に応えてくれた作品でした。

根幹の路線自体は何ら変わりませんね。肺腑を吐き出すような真に迫ったヴォーカル、ノイジーなプロダクション、叙情的なトレモロ…と、プリミティブの様式を踏襲したブラック。ただ、今作ではギターノイズに「広がり」のようなものが感じられること、トレモロリフのメロディがより印象深くなったことなどで、若干アトモスフェリックな感触も強くなってきたように思います。これによって、楽曲のメリハリや、邪悪なムードなどがより浮き彫りになり、よりブラックとしての凄みを増したのではないでしょうか。一部儚くメロウなメロディが聴けたりもしますが、これによってむしろ神秘性は上がっている印象。

Northern Heritageのリリースを追っているほど「ハマってる」人であれば、まず買って損はしないと思う逸品。このレーベルから時点で安牌も良い所ですけど、期待以上のものを聴かせてくれるかと。


PERDITOR - Divine Riddles ★★ (2014-10-22 23:06:37)

2010年発表の1st。
2013年にDaemon Worshipにより再発。
97年に結成以来、デモやEPは出しているものの、フルはこれが初。

まずオープニングのSE、悲鳴がなんか気色悪くて飛ばしたいんですが…一曲目と地続きになっているので飛ばせません(笑)。それはそれとして、そのSEが終わった所で血腥さ全開の、エグいムードたっぷりのオールドスクールなブラックメタルを展開。スラッシュに大分寄った音ながら、如何にもDaemon Worshipが目を付けそうなドスの効いた邪悪な雰囲気があり、禍々しさは十分。

…この作品、とにかく音が「えげつない」という印象なんですよね。音量がBEHERITのベスト盤並に大きいことに加えて、音作りも泥臭さのある低音の効いたもので、それが合わさって異様な迫力を生み出してると思う。ヴォーカルも基本はドスの効いたがなり声ですが、時折唸るように感情を込めてるなど、異常性を感じさせるパフォーマンスで聴かせてくれます。

とにかく邪悪で冒涜的で、かつ迫力があるブラックが聴きたい…という方には正にうってつけの作品。個人的にはもう少しメロい方が好きではありますけど…ブラックの中でもかなりエグい音であることは認めざるを得ません。


DUNCAN EVANS - Lodestone (2014-10-22 23:04:20)

2013年発表の1st。

つい最近までA FOREST OF STARSに在籍していたHenry Hyde Bronson氏があのProphecy Productionsからリリースしたソロアルバムという事で、セールで安かったこともあり購入。ちなみに音楽性にブラックメタル要素は全くなく、自身のクリーンだけでなく一部女性ヴォーカルも導入した、アコースティック/フォーク路線。ミステリアスなジャケや女性が男性の首を斬ろうとしている内部アートワークからは、ダークな印象を受けますが、そんな事はなく叙情的な色で統一された作風。

ただこれ、個人的にはちょっときっつい作品ですね…確かに歌メロは豊饒だし、アコースティックギター主体の演奏でも、フレーズの巧さなのか一本調子には聴こえない辺り曲のセンスはいいと思いますが、如何せんヴォーカルの歌い方が…。基本的にイケメンボイス風ですが、変に力んだりしていて妙なねちっこさがあって、私としては苦手なタイプ。似た作風でもULVERの2ndみたいには行きませんね…。

という訳で、個人的にはお勧めとまでは言えない作品。まあそれは私がこのヴォーカルを苦手だからで、そうでない人が聴いたら評価はガラッと変わってくるのかも。


TOTGEBURT - Asche Unter Meiner Haut (2014-10-22 22:59:00)

2008年発表の1st。
2012年にRazedsoulとSelf Mutilation Servicesにより500枚限定で再発。

アーバンでアヴァンな作風が面白かった、スイスの変り種ブラックBLUTMONDのメンバーによる鬱ブラックという事で、これまた面白いものが聴けるのでは…と期待して購入しましたが…予想の斜め上とは、こういう事を言うんでしょうか(笑)。思ってたよりも独特な世界観を展開していました。ぶっちゃけ、私はちょっとついていけないと思うくらいに…(笑)。

タイプとしては、スラッジに通じるギターノイズや、空間を埋めるようなリバーブの掛かったベース、キーボードなどを組み合わせ、抑圧されたムードを演出する、音響系のディプレッシブブラック。そこにやたらと感情を込めて叫びまくる、エモーショナルで悲痛なヴォーカルが乗る…というと聞こえは良いですが、音数の少ない場面でヴォーカルが「泣き乱し」て何かを訴えるような部分が多くて、ちょっとげんなりしてしまったり…。作風が作風だけに、メロウなメロディは排除されてるので、その中でのこの某議員並の泣き乱しヴォーカルは結構キツいものがあります(苦笑)。

抑圧的な状況に晒され、二進も三進も行かなくなったような雰囲気自体は悪くないように思いますが…正直これは私にはマニアック過ぎるかも。鬱系の泣き叫びヴォーカルに心底共感出来ればお気に入りの一枚になるかもしれません。


PTAHIL - The Almighty Propagator of Doom and Despair (2014-10-22 22:52:10)

2012年発表の2nd。

HORDES OF THE LUNAR ECLIPSEやFOGのメンバーが関与するサタニック・ブラックと聴いて購入した一枚ですが…なんか想像してた路線と全然違いますね(笑)。オールドスクールで冒涜的なブラックのムードを、ドゥーム要素で更に強化したスラッシーでスラッジーなブラックメタル。熱量を持って引き摺るようなギターリフが、効果的に背徳感を煽るダーティな作風。何気にドラムの芯のある音が心地良く、それも宗教的恍惚を演出するのに一役買ってますね。

また、楽曲によってはドゥーム/スラッジ要素がかなり色濃く出たものもありますが、そういう場面ではメロディもサイケデリックさを増し、より恍惚感を高めているように聞こえます。ヴォーカルの放つカルト臭も凄まじいですね。がなりは歪みすぎて囁いているように聞こえるし、スラッシュ系の吐き捨てはやたらと苦しそうに詰まった感じで、楽曲の閉塞感をより助長してます。個人的には4曲目の「ウシウシウシッ!」で笑いました。アレッシーかよ!(笑)

ただこのバンド、自らの持つ世界観を音で表現しきっているとは思うんですが、個人的な好みとは外れるんですよね…。FOGはかなり好みの音だったので、こっちもと思ったんですが。ただ、「やり切っている」音だとは思うので、気になる方はチェックしてみては。


WORMREICH - Wormcult Revelations ★★★ (2014-10-21 19:33:16)

2014年発表のEP。

純粋なオリジナルのブラック曲は4曲と、通常のEPと同じくらいのボリュームながら、キーボードやサンプリング、グリッチノイズなどを使用して構築したSE的なインスト、他バンドのカヴァーも入っておりトータル約36分とボリュームはそれなり。と言っても、値段が普通に2000円したのでちょっと納得行かなくはありますが(笑)。カヴァー曲はDEATHSPELL OMEGAの「Malign Paradigm」という、やたら渋いチョイスなのが謎です(笑)。

…やっぱりカヴァー曲を入れるだけあって、当時(「Si Monumantum」期)のDEATHSPELL OMEGAと近い路線のブラックを演ってますね。DSOのあのアルバムにも禍々しさを感じさせる、宗教色の強いトレモロは頻りに使われていましたが、この作品は更にその部分を強調し、より閉塞的な雰囲気を追及したような作風ですね。極端な音作りやミニマルな展開に頼ることなく、展開やフレーズ自体の禍々しさでカルトな空気感を演出していく辺り、当時のDSOにも肉薄できる、暗黒音楽としての高いセンスを感じられます。基本ドスの効いたがなり声ながら、嘲るような笑い、もがき苦しむような呻きも使うヴォーカルもおどろおどろしさを強調。

ただし、どこか文学性や高尚さも感じられたDSOに比べると、こちらは汚らわしい冒涜性・背徳性をよりダイレクトに描いていて、聴き手にとって良くも悪くもよりアクセスのしやすい作風という気がします。暗黒音楽としてのクオリティは非常に高いので、非日常的な邪悪さを求めるブラック好きは是非。


GRAUZEIT - Tyrannei Der Tristesse ★★★ (2014-10-21 19:29:57)

2013年発表の4曲入りEP。
リリース元は鬱ブラックの総本山、Self Mutilation Services。

ドイツ産のディプレッシブ/シューゲイザーブラックとの事ですが…これ、鬱ブラックだよね!?と、一瞬怪訝に思ってしまいました(笑)。メロディ自体もメランコリックで儚さが強く、十二分に鬱ですし、それを絡めたトレモロやアルペジオを中心とした展開、絶望感を感じさせるがなり声など、鬱ブラックとしての要件は完全に満たしているんですが、メロディがかなり前に出ているお陰で、微妙に華やかな音に聴こえるんですよね。

もちろん、だから駄目という訳では全くなく、メロディ自体がシューゲイザー系のブラックとして非常に優れているせいもあって、私としては妙にツボに入ってしまったんですよね…。また、もう一つの特徴としては、打ち込みに理解がある事も挙げられますね。一部のパートではキーボードやアルペジオによるメランコリックなメロディに打ち込みドラムを合わせてますが、これがアーバンな鬱感を演出していてムーディなんですよね。バンドサウンド部分もかなり良かったけど、むしろこのパートはもっと好きかもしれないです。ほんと良い雰囲気出せてると思う。

EPにつき収録時間こそ短めですが、かなりの好内容。ひたすら沈み込むような鬱ブラックが好みの方には合わない可能性が高いですが、アーバンで雰囲気のある、メロディ重視な鬱/シューゲイザーブラック好きなら是非。


PLAGA - Magia gwiezdnej entropii ★★★ (2014-10-20 22:18:12)

2013年発表の1st。
実はこの作品も某所のセールで格安で購入できたんですが、投売りされるのは余りにも惜しい好内容ですよ、これ…。

内容としては、暴虐性よりも地下臭い雰囲気をより重視したような、オカルトめいた雰囲気漂うブラックメタル。音の作り方は非常に上手く、フレーズを聴かせるのに十分なクリアさを保ちつつ、地下臭い湿り気も感じさせるプロダクションはブラック好きであればかなり共感できるはず。トレモロと歪みのバランスの良さは、スウェーデンのCRAFT辺りに通じるものがあると思う。

その、トレモロリフのメロディが、また素晴らしいんですよね…。メロウながら、精神世界に踏み込むようなスピリチュアルな感触があるというか。ポーランドのバンドですが、桜の木の下に死体が埋まってる的な恐ろしさがあると思う。メンバーは同郷の、これまた高いメロディセンスを持つバンド、LEICHENGOTT絡みということで、このエグいまでのオカルティックなトレモロリフも頷けます。

また、単にアングラなブラックメタルというだけでなく、タメの利かせ方だったりメロディアスなリードギターのメロディだったり、時折オカルト系ハードロックバンドが演りそうなフレーズが出てくるのも特徴。泣きメロが横行する後半は若干メタリックになりすぎな気はするものの、前半部はブラックそのものが持つ禍々しさと合わさる事で、上手くメリハリの付いた音になっているように思います。決して禍々しさだけの一枚岩だけじゃない仕上がり。

これは定価で買ったとしても、それ以上の価値はあったと断言出来たであろう、かなりの良盤ですね。個人的にはよりオカルト性高いメロディが聴ける前半部が特に気に入ってますが、後半部の泣きメロパートもそれはそれでかなり高品質ですし、お勧めできる作品です。


SALIGIA - Lvx Aeternae ★★★ (2014-10-20 22:11:01)

2013年発表の4曲入りEP。

いきなり地獄へ落とされたような男の叫び声で始まる本作は、歪みとトレモロを巧みに組み合わせたリフ捌きと、プリブラらしい2ビート疾走をメインにしたブラックで、「Terror Propaganda」期のCRAFT辺りを思わせる作風。…が基本なんですが、このバンドはプリミティブブラックの様式を若干はみ出すような形で、オカルト、スピリチュアルな方向に足を踏み入れているのが特徴ですね。

抑圧された空間性を演出するような、アコギや歪んだアルペジオの使い方、それらをバックに取り憑かれたようなクリーンを聴かせるヴォーカルなど、プリブラのスタイルを踏まえつつも、それに囚われない前衛的な展開も見せるのが特徴で、それによって更に楽曲の不気味な儀式性は高まってますね。よく聴くと、プリブラ的なパートでもドラムや歪みの音色などが、聴き手を精神世界にトリップさせるよう、かなり練られているような印象も受けます。Rawなだけではない密教的な音。

トレモロリフの使い方、メロディの良さを始めとした、プリブラとしての基本部分がしっかりしてるので、前衛的なパートが良く映えますね。ヘタウマ不気味系のクリーンに抵抗が無く、プリブラが好きであればお勧めできるかと。関連バンドのDODENGELなどの雰囲気が好きな方は是非。


HELEL - A Sigil Burnt Deep into Flesh ★★★ (2014-10-20 22:03:35)

2009年発表の1st。
と言っても4曲入りで30分ないので、長さとしてはEPくらいですね。

一言で言うなら、「With no Human Intervention」期のABORYMの、ブラックメタルパートをかなり暴虐方向に解釈し、かつフランス産バンドらしいひねくれ感をプラスしたような、サイバー/インダストリアルブラック。打ち込みを採用し、時折暴虐方向に暴走するリズムセクションに、アヴァンギャルドなフレーズを交えたギターワークが乗り進行する、独特の雰囲気を持った作風。

特に所々で出てくる、前衛的なギターフレーズはかなり印象深いんですよね。機械が狂って、まるで泣いたり、パニックを起こしてるような音を出している…そんな風にも聴こえるフレーズがあって、かなり神経に来る。インダストリアルブラックらしく、シンセやサンプリング等を巧みに使い、アポカリプティックな雰囲気を演出するパートも多いんですが、このフレーズセンスと上手く噛み合い、この手としてもかなり濃密な雰囲気が醸し出されているように思います。

個人的には、ギターフレーズが独特なので、それが聴いていてかなり楽しかったですね。サイバー/インダストリアル/アヴァンギャルドに食指が働く人であれば買って損はないかも。流石Debemur Mortiからのリリースだけあって、カルトな魅力は折り紙つきです。


DANTALION - Return to Deep Lethargy ★★★ (2014-10-19 11:00:36)

2012年発表の4th。
ジャケやブックレットの「Letargy」は誤表記らしいです。

2004年にバンドが発足して以来、コンスタントにアルバムを発表し続けているだけあって、メロブラとして申し分のないクオリティのある作品ですね。モダンすぎずRawすぎず、ブラック好きのツボをくすぐる良い按配のプロダクション、ミッドテンポを重視しつつも、緩急付いたドラマティックな楽曲構成など、基本的な部分が高いレベルで纏まっている印象を受けます。

ブラックって他のサブジャンルと比べると、ソロを重視しない傾向がありますが、この作品はギターソロが楽曲の最も重要な部分を担っていると言っても過言ではないくらい、ウェイトが置かれているのが特徴ですね。少し鬱傾向の感じられるメロウなメロディから、ブルージーな泣きメロ、トレモロリフを交えた激情的なものまで、メロディのバリエーションが多く楽曲を更にドラマティックなものにしていると思う。ダンタリオンとは悪魔の名前を指す言葉ですが、宗教性よりも「感情の音楽」という感じがします。ヴォーカルも嘆き呻くような感情の込め方ですし。

ブラック特有の薄暗い雰囲気の中、叙情的なメロディが楽しめる、メロブラとしてかなり優れた作品。ソロを弾いていても陰りが強く感じられる辺り、メロデスとはノリが違う感じがするんですよね。私はこういう雰囲気が好きです。


BHAOBHAN SIDHE - Gas Chamber Music (2014-10-19 10:57:31)

2012年発表の音源集。

93年のEP「New Order」、96年の1stフル「Corpse Crater」、同年のデモ「Jinx」を収録したコンピレーション盤。バンドは「Jinx」デモ発表後は活動していなかったようですが、New Era Productionsもよくもまあこんなマニアックな音源を見つけてきましたね…。作品中でブラックメタルを演ってるのは「New Order」部分のみですが…93年といえば、MYSTICUMが結成された年。そんな時期のオランダで、MYSTICUMを更にマニアックにしたようなインダストリアル・ブラックを演っていたというのが驚き。

冷徹さを感じさせるマシンドラムに、蚊の泣くような、薄い音ながら確実に聴き手に耳障りさを感じさせるノイジーなギター、ギターの代わりにメロディを担うような、強調されたベースライン…これらが合わさると、非常に閉塞感の強い、不気味なムードが展開されてるんですよね。ヴォーカルもウィスパーと痰を吐くような声を混ぜたようなスタイルで、しょぼいギターの音色と(ある意味)見事に合致。面白いしカルトではあるけど…これに付いていける人は少ないのでは…(笑)。

ちなみに作品の大半を占める、残りの音源はやたら殺伐としたアンビエント/エレクトロニカ路線。ブラックから離れても、カルトでマニアックな雰囲気は変わりません。厚みのあるシンセが前に出る部分も多く、ある程度メロディアスではありますが…こちらもブラックパート以上に聴き手を選びそう。まあBEHERITが一時期演ってたエレクトロニカよりは大分分かりやすいですけど(笑)。

これ、音楽自体を底から楽しめるかは別として、この時期にこの場所で、こんな面白いことを演っていたブラックメタルバンドがいた、という資料的な興味深さはありますよね。正直マニアック過ぎて私も付いていけない感じですけど…(苦笑)。


1349 - Massive Cauldron of Chaos ★★★ (2014-10-17 11:35:48)

2014年発表の6th。

まず言いたいのは、激烈なリフとリズムの応酬を楽しむエクストリーム・メタルとしてはこの作品は満点の内容、という事ですね。1349って、ファストブラックとしては、オールドスクールな感触を強く残した作風のバンドだと思いますが、ひたすら暴虐に蹂躙を尽くすブラスト畳み掛けパートも、強烈なエネルギーを感じるスラッシーなパートも、このジャンルでも第一級の中の第一級といった説得力があり、素晴らしいの一言。

特にエクストリームメタル好きなら誰もが耳を奪われるであろう、Frostのドラミングは今作でも冴え渡ってますね。ファストさは極まってるしテクニカルなんですが、それを聴き手と共有するグルーヴ感がある気がします。極端なリズム構成でも、聴き手を問答無用で引き込むノリが出せるのは凄いと思う。カラッとしたクリアな音作りになり、陰湿さが減退したのは賛否ありそうですが、激烈なアンサンブルはよりよく楽しめるようになったと思います。

ただ、唯一個人的に気に入らなかったのは、メロディセンスの変質。例えば「Beyond the Apocalypse」の「Chasing Dragons」「Aiwass-Aeon」等で聴けた、霊障が起きそうというレベルを通り越して霊魂の呻きをそのままメロディにしたかのような、邪悪極まりないトレモロは今作では希薄。挙句にギターソロはヘヴィメタル的な熱さも強いですし…。良く聴けばこの邪悪な流れを汲むトレモロも無くはないんですが、「Beyond~」期と比較すると薄まったのは事実だと思う。

それを差し引いても、エクストリームメタルとして非常に優れた作品ではあるので、☆は3つですが…このプロダクションで当時のようなメロディで演ってくれたら、個人的にはもう完璧なんですけどね…。エクストリームメタルとしては満点でも、ブラックとしては90点台前半くらいかも。


LES FLEURS DU MAL - Schattenfeuer (2014-10-17 11:35:08)

おそらくボードレールが出典と思われる、「悪の華」を意味するバンド名、そしてドイツ語で「影の炎」を意味するアルバムタイトルに心を擽られて、中古で安かった事もあって購入。

路線としては、Rawでノイジーさを強調したバンドサウンドに、アトモスフェリックなキーが被さるアンビエントブラックで、精神が引き裂かれるような裏返った絶叫はあるものの、割とありがちな感じかな…と思ってましたが…。ストリングスの音色が、馬頭琴を思わせるちょっとオリエンタルな響きがあるのが意外。3曲目では亡霊的なコーラスを取り入れていたり、上モノの音色選びのセンスが結構面白い作品。

ただ、4曲目のアンビエントとかは正直音像が変わり映えしなすぎだと思うし、個人的には群を抜いた何かは感じられませんでした。バンド名やアルバムタイトルはお洒落でかっこいいですけど、評価はこの手としてはごく普通ですね。


英雄伝説 閃の軌跡Ⅱ ★★ (2014-10-17 11:32:40)

2014年に日本ファルコムがリリースしたRPG。
タイトル通り去年出た「閃の軌跡」の続編。

前作の伏線未回収のまま、丸投げで終わるエンディングは不満ながら、今後のストーリーで挽回できれば「飛び石」として納得できるものなのかも…と思ってましたが…。駄目でしたね(笑)。まるで風呂敷を広げるだけ広げて、その中でどれだけこじんまりとした展開が可能なのかを競うような、閉塞感漂うストーリーが展開されてしまっています…。

散り散りになった仲間を集めるだけでストーリーの半分の第1部が終了、第3勢力を自称しながら身内の救出を大義名分に正規軍の手伝いしかしてない第2部が終われば、もうストーリーの終盤って、おざなりにも程があるんですが。一応終章では話が大きく動きますが、前作の実習パートを圧縮して、今作の第1部第2部をダイジェストにすれば、十分1本に収まる内容だと思う。わざわざゲームソフト2本立てにするほどの話とは思えませんね。

また、各レビューブログやAmazon、mk2などの各種批評サイトで散々言われてるにも関わらず、強大な敵と対決し倒す→敵が実は本気出してなくてこちら側がピンチに→助けが入る、という流れのワンパターン振りが一向に改善できてない、むしろ悪化してるのも不満。強大な敵って倒す事で主人公達の成長を示すランドマークになったり、壁として立ちはだかる事でストーリーを盛り上げたりする役割があると思いますが、今作はどういう役割を果たしてるの?と疑問。敵の強大さを描いただけで、その先が何も無い感じ。

正直前作でⅦ組メンバーはちょっと飽きたな…と思ってたので、仲間メンバーが増えるのはかなり楽しみにしてたんですが…大半のキャラが一時的な参戦で、実質ストーリー部分ではⅦ組メンバーを使っていかなければならないのがかなり不満。ストーリーがほぼ終わった後日談でようやく好きなメンバーでパーティ組めますが、トヴァルやシャロン、アルフィン、トワ、アンゼリカ辺りはストーリー上無理なく戦闘メンバーに出来たのでは。Ⅶ組メンバーがストーリーの進行に必須ならサブ枠とかでもいいと思うし。

…なんでⅦ組メンバーに思い入れが持てないかというと、これも散々言われてますが「絆システム」の導入が原因かと。選んだキャラを掘り下げると言えば聞こえがいいですが、実際は選ばれなかったキャラは掘り下げがない、という事ですからね…。しかも主人公との絆イベントしかないし。どうせやるんだったら、スターオーシャン2のように戦闘メンバー同士ならどの組み合わせでもカップル成立可能とかすればいいのに、中途半端だと思う。見た目が好みなユーシスとアルフィンをくっつけたかった(笑)。製作者側が全く推してないカップルをプレイヤーの意志で成立させられるのとかは好きなんですけどね。現時点では微妙。

と、ここまで不満をだらだらと述べてきましたが、決して遊んでて楽しくないゲームではないんですよね。ロード時間は大幅に短縮され、戦闘モーションもある程度改善されており、前作のストーリー面以外での不満は概ね解消されてるかな、という印象。リンク相手と協力し、一方的に攻撃の出来るオーバーライズ、全EPを消費して発動するロストアーツなど、より爽快にバトルを進められるシステムが追加されたのも嬉しい。ロストアーツ持ちのキャラのターンにゼロアーツが回ってきたときのテンションの上がり具合は異常(笑)。ついつい雑魚に喧嘩売りまくってしまいます。

ぶっちゃけこのゲーム、戦闘メンバーの限定を含めたストーリー面以外での不満って、実はそんなに無いんですよね。ロード時間などのインターフェイスが改善されたお陰で、いつものファルコムらしい親切なプレイアビリティのある仕上がりだと思いますし。ただ、ストーリーRPGを自称してるのにストーリーが一番の不満点ってどうなんでしょう。福音計画って空の奇跡の時点で完遂してましたよね。ゲームを4本使っても全貌の分からない幻焔計画って一体…。もう盟主も計画とかどうでも良くなってるのでは(笑)。もしくは計画を薄く引き伸ばす事が目的とか。早く何とかしてください。


MYSTICUM - Planet Satan ★★★ (2014-10-16 23:31:31)

2014年発表の2nd。

前作「In the Stream of Inferno」から、フルアルバムとしてはおよそ18年振りとなる新作。ブラックメタルにマシンビートを導入し、インダストリアルブラックの礎を築いた事、独特のサイケデリックでカルトなムードを感じられる楽曲などから、大いにマニア受けしていたバンドだっただけに、新作の報を聞いて狂喜した人も多かったのではないでしょうか。私もショップの入荷情報見て速攻で買いに行きましたよ…無事手に入って良かったです(笑)。

肝心の音楽性の方は…「In the Stream of Inferno」期の路線を、大本は変えずシンプルかつクオリティを上げてきたような感じですね。まるで三・三・七拍子を魔改造したような奇妙かつ耳に残るリズムの「The Ether」を始め、独特のノリを醸し出すマシンドラムと、ノイズ質の粒子が精神世界へ誘うようなリフが絡み、強烈なサイケデリアを演出するインダストリアルブラック。

但し今作は前作やスプリット音源などで見られたような、アトモスフェリックなキーボードの導入がない代わりに、ギターリフの厚みが増していたり、マシンドラムの炸裂感がより強調されていたりなど、より本質的な部分が剥き出しになったような音作りがなされているように思います。音が太くなりクオリティ自体は上がった感じですが、相変わらず楽曲からはカルト臭がぷんぷん匂うのが素晴らしい。

…個人的な印象なので異論はあるかと思いますが、私は今作も含めたこのバンドの音源を聴いてるとプリミティブブラック期のILDJARNを思い起こすんですよね。こちらは妙なノリを感じさせるマシンドラム、ILDJARNはパンキッシュでシンプルなリズム構成とパーツ自体は異なりますが、どちらも聴き手をトランス状態に導く作用があるという点では共通してるかも。そういう意味で、ブラックの非日常性をマシンドラムに求めたこのバンドの視点は、まさしく慧眼と言えるのかもしれません。カルトな支持を得るのも必然と言えるでしょう。

かつてはかのEuronymousをも虜にしたという、彼らのユニークな音楽性。ブラックメタル黎明期より長らく間は開きましたが、その続きがここにあります。


WRONG - Memories of Sorrow ★★ (2014-10-13 11:22:48)

2013年発表の1st。

セールで新品が半額以下だったので、何かの巡り会わせだと思って予備知識無しに購入してしまいましたが、これがなかなか他に無いタイプのブラックで、何気に良かったんですよね。ロック要素も強い力強いミッドテンポ中心の展開に、適度にメロウなトレモロを交えつつ厚みのあるギターリフ、アンティークでお洒落、頽廃的な印象を与えるピアノを絡めてくる、どこかゴシックメタルにも通じる耽美なムードを感じさせる、メロディアスなブラックメタル。

ただし、ギターの病んだ精神のエネルギーが溢れているかのようなノイジーな音色、切迫し張り詰めた神経に触れるようなフレーズ作りなど、鬱ブラックに近い「人を寄せ付けない雰囲気」がある辺り、如何にもブラックメタルバンドらしい感性によって作られてると言えるでしょう。ただ、この雰囲気自体は好みなんですけど、バスドラがビキビキと甲高い音なのが若干興醒めかも。リズムは、一部(本当にごく一部ですが)Reinkaos期のDISSECTIONを思わせる強靭さもあって、悪くないんですけどね。

ブラックらしい病んだ閉塞感に、ゴシック的な耽美さが加わったようなユニークな雰囲気を持つ作品。プロダクション面で少し好みと外れる部分はありましたが、これはこれで良い買い物したかな、と思います。


THE STONE - Zakon Velesa ★★ (2014-10-13 11:19:50)

2004年発表の2nd。

セルビアというと、WATAIN辺りに通じるドス黒いブラックを聴かせるMAY RESULTや、メロディックブラックとして非常に完成度の高いBANEを始め、近年良質なブラックメタルの名産地になりつつある印象なんですが、このバンドはまだBANEが結成されてもいない、この時点で既にブラックとしてかなり良質な音を提供してますね。プロフィールを見てみると96年結成でMAY RESULTと並ぶ古株だとか。

路線の方は、MAY RESULTやBANEとは似て非なる、オールドスクールで純然たるブラックメタル。例えば初期~中期のGORGOROTHやSATYRICONなど、ノルウェーの黎明期のバンドってオールドスクールでピュアなブラックながら、土着的な叙情性も練り込まれてる事が多かった印象ですが、その当時の北欧ブラックの雰囲気を良く受け継いでる作風だと思います。アングラな湿り気と熱気、そして土着的メロウさが程よく交錯する音。何気にドラムの音やフレーズの作り方も好きです。極端に暴虐とかテクニカルという訳ではないですが、他のバンドよりグルーヴがある気がする。

これは黎明期ブラックの雰囲気が好きな人にはかなりお勧めできるブラックかと。良質なブラックの産地としてセルビアに注目してる人は、取り敢えずこのバンドも要チェックですよ。


ILLNESS - Planet Paranoia ★★ (2014-10-10 22:37:15)

2010年発表の3rd。

ジャケットの雰囲気からは全くそんな素振りは見せていませんが、意外なことにサイバー/インダストリアルなブラックメタルを演ってますね。CD再生してピコピコ音が流れたときはジャケとのギャップに結構驚きました。無機質ながら暴虐なマシンブラストに、ブラックメタル流儀の不穏なトレモロを乗せ展開していく作風で、「With no Human Intervention」期のABORYMに近い音でしょうか。

ヴォーカルはゲロゲロ感の強い、高めのがなり声でこちらも同じくABORYMのPrim Evil氏の「Generator」アルバムでのパフォーマンスに近いスタイル。彼の声に勝るとも劣らない殺気。…全体的に、かなりABORYMからの影響が強い感じですが、ABORYMが比較的前衛的な展開を見せていたのに対し、こちらはマシンブラストとトレモロにより焦点が当てられており、若干シンプルな構成。トレモロの終末感を感じさせるメロディのセンスが良く、それを映えさせる作風と言えると思います。

個人的には、ABORYMの「Generator」がツボった人にお勧めしたいアルバムですね。インダストリアルを取り入れながら、近未来的というよりは終末的なヴィジョンが見えてくるのが、如何にもブラックメタルらしい感性で良いんですよね。


PSEUDOGOD - Deathwomb Catechesis ★★★ (2014-10-07 10:33:05)

2012年発表の1st。
2004年より活動し、幾つかのデモやスプリット、音源集などをリリースしていますが、フルアルバムとしてはこれが初の作品みたいですね。

楽曲全体から感じられる暗黒臭、サタニックでおぞましい雰囲気は確実にブラックメタルに通じるものがありますが、音楽的にはデスメタルですね。デス系の中でも蹂躙力は圧倒的で、最早地獄絵図と言ってもいい世界観を展開。デス特有のうねりを伴いつつ、どす黒く塗り潰すようなリフ、アタック音の強いベース、重々しく迫力のあるドラミングが絡み合い、目に付く情景全てを灰燼に帰すかの如き轟音を聴かせてくれます。

音自体はブルータルデス顔負けの重さですが、この作品はミディアムも多用してますね。ただミッドテンポのパートでさえ、この余りにも壮絶な音作りのせいで怪獣スケールの大蛇がのたうつが如きヘヴィなグルーヴ感があり、ブラストで畳み掛け殺すパートより破壊力が落ちないのも素晴らしい。ヴォーカルのグロウルもドスが効き過ぎていて最早非人間的。怒り荒ぶる神を思わせるような、威厳のある怒号。

これはかなり素晴らしいですね。音のおぞましさや蹂躙力で言えば、INCANTATIONやIMMOLATIONと同列で語ってもいい領域に達しているのではないでしょうか。サタニックな雰囲気を纏うデスメタルが好みであれば是非。


KLAGE - Die Weihe des Eises ★★ (2014-10-07 10:31:08)

2008年発表の1st。
CD盤は約25分の大作1曲のみを収録ですが、アナログ盤は更に3曲多い仕様だとか。CD買ってから知りましたが、正直この仕様はどうなんでしょう…。私はアナログで聴く習慣がないので、結構不満が残るんですが…。

…仕様には文句タラタラですけど、肝心の内容自体はなかなか。ジャンル内のカテゴリーとしては、鬱ブラック寄りのアトモスフェリックブラックという感じでしょうか。音像をうっすらと覆うノイズ質が、正体をぼかすような幽玄さを醸し出す、ムードたっぷりのブラックメタル。このノイズ質の中から漏れ聞こえてくるようなトレモロのメロディには、鬱や儚さ、メロウさだけでなくどこか気品のようなものが感じられて、それが凄まじく胸を打つんですよね。壮麗なオーケストレーションで、突然スケールを増す大団円も意外かつ面白い。

まあ、後半のアルペジオパートがちょっと引っ張り過ぎだったり、音量が小さいプロダクションには若干不満を覚えたりはしますけど、ありきたりではない魅力のある作品である事は間違いないと思います。ちなみにバンド名には「クラゲ」の意味はなく(当たり前だけど・笑)、ドイツ語で「嘆き」を意味する単語だとか。


ALGHAZANTH - The Three-Faced Pilgrim ★★★ (2014-10-05 12:08:05)

2013年発表の7th。

このバンドは前々作にあたる「Wreath of Thevetat」を聴いていて、メジャーなメタルバンド以上にドラマティックでハイクオリティな曲作りと、ブラックメタルのダークな叙情性を両立させた、メロディック・ブラックの覇道を行くような作風で、かなり感銘を受けたんですが…今作は若干作風を変えてきてますね。若干鬱ブラック的なテイストが入ってきた感じでしょうか。

如何にもメロブラ然とした、土着的な叙情性を感じさせる、非常に魅力的なトレモロリフを主軸として、ドラマ性たっぷりに展開していくという部分は変わらないんですが、今作はアトモスフェリックなキーボードがバンドサウンドを覆うような場面が増えたこと、トレモロに込められたメロディの悲痛さが更にアップしている事で、より「哀愁」な側面がクローズアップされた印象。前々作の時点でこうしたパートはありましたが、メタリックな展開が減退しこうした部分によりスポットが当っているのが大きな違いですね。

巷のレビューを読んでみるとどうも賛否両論あるようですが、前々作がメロブラとして理想的なバランスだっただけに、それが崩れてしまった事に不満を覚えるのもまあ分からなくはないです。個人的には、相変わらず高品質なものを聴かせてくれますし、また別の魅力があるので賛否で言えば完全に「賛」の立場ですね。


DEVATHORN - Diadema ★★★ (2014-10-04 20:45:31)

2007年発表の1st。
2014年にDybbuk RecordsがSelf Mutilation Servicesと共同で再発。

かつてはDODFERDに籍を置いた事もあり、2012年にはACHERONTASに加入したというSaevus Helcath氏を中心に結成されたブラックという事ですが…関連バンドはギリシャ産ブラックでもかなり知名度の高いバンドですが、それらに匹敵するくらい魅力的な音源だと思います。

路線としては、ACHERONTASやFUNERAL MISTに代表されるような、宗教色の強く儀式的なムードを持つブラックを、もう少しスラッシュ色強く、オールドスクールな感触で仕上げた感じでしょうか。ブラストで攻めるだけでなく、スラッシュビートも多用した楽曲はある意味ノリの良さも感じられ、メリハリがあってストレートにかっこいいんですが、トレモロリフに込められたメロディは禍々しく密教的なのが良いですね。

何よりも楽曲の出来が良いのが素晴らしいです。特に3曲目、「Bleed Heaven Bleed」は、「The Merciless」期のAURA NOIRにも通じる熱気と、ACHERONTASやFUNERAL MISTを思わせるインテンスさが融合している、かなりの名曲。アングラな湿り気を残しつつ、Raw過ぎないプロダクション、ガルガルと喉を鳴らすような、独特のがなりを聴かせるヴォーカルなども、ブラックの禍々しさの演出に一役買ってますね。

これは再発されたのも頷ける、(アングラ音楽としての)高品質さを感じさせる作品ですね。基本オーソドックスな中に光るものを感じさせる、なかなかのアルバムです。


ANKRISMAH - Dive in the Abyss ★★ (2014-10-04 20:41:25)

2010年発表の1st。

タイプとしては、プリミティブブラックらしいRawな2ビート疾走を中心に、時折ドゥーミーなスローパートを挟み込んで聴かせるプリブラで、タイプとしてはCRAFT辺りに近いでしょうけど…ここまで刺々しい雰囲気の音楽、プリミティブブラックとしても珍しいのではないでしょうか。

元々プリブラってトレモロリフを多用する形式上、ある程度メロディアスになるものですけど…トレモロリフを弾いている間ですら、全くメロウに感じないくらい、音が荒廃してるんですよね。音質のノイジーさとも相俟って剃刀の渦に切り刻まれるような苛烈さ。1曲目から早速聴けるドゥームパートなんて、肉を一寸刻みで削がれるかのような、痛々しい殺伐感がありますし。

極度にひしゃげった声の、生々しい感情を剥き出したヴォーカルも相俟って、異常を来たした人間のささくれ立った精神世界を覗くかのような、人を寄せ付けない雰囲気の強い作品。厭人感・厭世感はこの手でもかなり強い音だと思います。


THY LIGHT - No Morrow Shall Dawn ★★★ (2014-10-04 00:54:44)

2013年発表の1st。

Pest Productions発、ブラジル産の鬱ブラックというプロフィール、そして一曲目のピアノメインのインスト「Suici.De.Spair」の、まるで自分の人生が勝手に美しい物語に置き換えられて完結させられるかの如き、致命的なまでにメロウな雰囲気から本編にも期待したんですが…期待以上なんですが、この作品。この手って掴みのインストが一番ムードがあったりする残念なことが少なくないですが、この作品は最初にここまで期待値を上げておいて、それ以上のものを提供してくれるという真逆のことをやっていて素晴らしいです。

鬱ブラックやシューゲイザーブラックって、全体の雰囲気や溢れ出る感情を聴かせるものも多いですが、このバンドは楽曲やフレーズで聴かそうという志向が非常に強いのが特徴ですね。例えば、2曲目「Wanderer of Solitude」は2本のアコギが可憐に絡むイントロから、ドゥーミーに引き摺るリフに、人々が黄昏の海に還っていく情景を思わせる、人類自体のエンディングテーマのような終末的メロウさを感じさせるメロディが乗る、儚く物悲しくもどこか破滅めいた雰囲気の本編へと展開する楽曲。

続く3曲目「No Morrow Shall Dawn」は特徴的なリズムと、連動する厚みのあるギターリフで聴き手を催眠状態に陥らせた上で、アンビエントなパートを経て魂を引き込むかのようなトレモロが渦巻く後半部で止めを刺す構成が非常にドラマティック。ラストの「The Bridge」は、アトモスフェリックな中にギターノイズが異物感を醸し出す導入部から何かを予感させますが、本編も精神が現世を少しずつ離れていくような雰囲気の中でメロウなメロディが応酬される、締めに相応しい雰囲気の曲。

…とこんな風に、どの曲を聴いても何かしら情景が浮かんできて、それに引き込まれてしまうんですよね。キーボードやギターの音色選び、儚く繊細で聴き手の印象に残るようなメロディなど、この手としても非常にセンスの高い作品だと思うんですよね。繊細なのに全体を通じて厭世的というか、現世を離れたがっているような浮世離れしたムードがあったり、ヴォーカルの叫びのロングトーンがかなり悲痛な響きだったりして、決して甘い作品とは言えないのも良いです。これは鬱系の中でもお勧めの逸品ですね。


MANIAC BUTCHER - Lucan - antikrist ★★ (2014-10-03 19:46:50)

96年発表の2nd。
私が持っているのは2009年に再発されたもの。
ちなみにチェコ産のバンドとしては90年代初頭から活動する古株で、一時期活動を停止していたものの、2009年から活動を再開しているようですね。

作風は、黎明期ブラック、特にDARKTHRONE辺りの影響をがっつり受けた、純粋過ぎるほど純粋なブラックメタル。閉塞的アンダーグラウンド臭が立ちこめていながら、それほど聴きづらくない音質、悪魔的なイメージを直接的に想起させつつ、楽曲をメロウに彩るトレモロ、オールドスクールな作風に特有の熱気など、如何にもプリブラといった感じの魅力に溢れてますね。

当時のDARKTHRONE辺りがやってたようなプリブラと比べると、ヴォーカルのがなりが地声混じりで、非人間的な恐ろしさよりも人間的な感情の昂ぶりを感じられるのが、若干異なるポイントでしょうか。…この作品、基本プリミティブ系ながら良く聴いてると最初期(アンビエント要素導入以前)のBURZUMやメロブラ期のDISSECTIONから影響を受けたと思われるフレーズがあったりして、聴いててちょっと微笑ましくなります(笑)。

ちなみに、2009年版には95年に行われたLiveのかなりRawな音源と、チェコの伝説MASTER’S HAMMERのカヴァーが入ってますが、本編終了後無音の後に2曲が再生されるという仕様なので、聴くのがちょっと面倒です(笑)。トラック分けしてくれてもいいのになぁ…。


MYSTHERIUM - Memoriał ★★ (2014-10-03 19:38:36)

2012年発表の3rd。

同郷のGRAVELANDはRaw路線を脱却し、アトモスフェリックで冷ややかな戦場の空気感を描くような独特のペイガンメタルの音を作り上げましたが、このバンドも近年のGRAVELANDを思わせるスケールの大きい、アトモスフェリックなブラックを演ってますね。ただ、こちらはメロディの傾向がゴシック・クラシカル寄りで華美なのと、バンドサウンドの主張が強めなのが大きな違いでしょうか。

バンドサウンドにオーケストラルなキーボードが大仰でクラシカルなメロディを乗せていく様は、個人的には少しだけFLESHGOD APOCALYPSEに通じる雰囲気も感じたり。ただ、バンドサウンドはブルータルではなく、悲壮感に満ちたトレモロリフを主張させつつ、ノイジーながら広がりを持って聴かせるもので、やはりアトモスフェリック・ブラックのそれという感じがします。あと女性ヴォーカル入りのオープニング曲が、何かやたらと怖いんですが(笑)。

アトモスフェリックな音作りながら、メロディの主張は結構強めかつゴシック・クラシカル傾向という、ちょっと珍しいバランス感覚で作られた作品。メロディがなかなか美しくて良いので、耽美派ブラック好きにお勧め。


PLEBEIAN GRANDSTAND - Lowgazers ★★★ (2014-10-02 22:35:04)

2014年発表の2nd。

レビューサイトやショップでの評価を見る限り、近年のDEATHSPELL OMEGAを始めとしたカオティックなブラック好きに大ウケしているようだったので、私も購入しましたが…なかなかに凄まじいですよ、これは。テクニカルさに裏打ちされた、混沌としながらも暴虐性の非常に高いリズムに、不協的で不安を煽るようなギターリフを乗せて畳み掛ける、ハードコア要素の高いブラックで、DSOの「Drought」アルバムと似た雰囲気がありますね。

ただしDSOが演出しているような形而上学や神学にアプローチするような深遠さはこの作品には希薄で、その代わりヒステリックに荒れ狂う精神の病巣をそのまま音に具現化したような、圧倒的かつ直接的な狂気が感じられますね。肺腑に残る空気を全て吐き出しながら一心不乱に絶叫を続けるような、狂気そのものといったヴォーカルも相俟って、ANAAL NATHRAKH辺りを想起させる、暴虐極まりないカオスな音になっているように思います。

前衛ブラックにも色々ありますが、これはアヴァンギャルド性やテクニックなどによって生じたポイントを、全部狂気とか攻撃性とかに振ってるようなサウンド。好みはあれど、誰が聴いたとしても圧倒されるような音ですね。


OTARGOS - Apex Terror ★★ (2014-10-02 22:31:03)

2013年発表の5th。

前作は未聴ですが、前々作「Fuck God-Diseased Process」はDEATHSPELL OMEGAが「Si Monumentum~」アルバムで描いた、宗教的暗黒美を引き継ぎつつ、もう少し北欧のオーソドックスなブラックに近付けたような印象だったんですが、大分作風が変わりましたね。音作りのクオリティが高いのは相変わらずですが、サイバー系にも通じるような無機質でインテリジェントな雰囲気があったり、エクストリームメタル的ヘヴィネスがより強調されたことで、以前よりも直接に宗教性や暗黒性を志向しなくなった感じがします。

この変化によって、「ありがちな感じ」からは大分遠ざかったように思います。例えば1曲目の、聴いているだけで耳から神経線維を引きずり出されそうなトレモロを始め、一般的なブラックではあまり聴けないような感覚の、でも耳を惹くフレーズが多いんですよね。それに加えて、3曲目の甘美な邪悪さが高揚をもたらすようなメロディ使いなど、伝統的なブラックらしい雰囲気もある程度重視してくれているのも良いですね。ただ、ブラック的甘美さが薄いパートが続く場面も若干だけですがあり、そういう部分では物足りなさを感じてしまったのも事実。

個人的には完璧な作品とは言えないんですが、他のブラックメタルバンドとは一味違う何かは確実にあるように思います。エクストリームメタルとして純粋に高品質ですけど、ある程度この手のブラックを聴いて、テンプレート的な音を理解してるともっと良く楽しめるかも。


ABORYM - Live in Groningen ★★ (2014-10-02 22:30:14)

2013年発表のライブ盤。
何故か2004年(Attila在籍時)の音源を今頃になって発表。
如何にも指紋が付きやすそうなメタリックなデジパックが目印(笑)。

これ程の知名度を誇るバンドとしては、正直プロダクションは微妙ですね。音がやや小さい上に、ギターの音作りがグシャッとしている感じ。ただ、クリアな音作りよりも楽曲の持つカオティックな雰囲気を浮き彫りにしていると思うので、却ってこうした音質の方が良かったのかも。ライブでもドラムが生になったりはせず、同期を流して演奏している模様。

しかし、こうして聴くとやっぱりこのバンド、楽曲が良いですよね。サイバーな要素を取り入れてるだけでなく、しっかりブラックメタルらしい不穏さが息づいているというか。時折入るトレモロのメロディがいちいちダークで素晴らしい。また、Attila Csiharのパフォーマンスも耳を惹きますね。いつものドスの効いた呪詛声はライブで更に悪魔的な響きを増してますし、彼独特の喉を鳴らすような喚き声も実にかっこいい。

私の好みからすれば、音質はWATAINやEMPERORが近年発表したライブ盤くらいがベストだったんですが、流石にそこまで望むのは贅沢でしょうか。マスターの音源が2004年ですし。とは言っても、当時の彼らの作品が持っていた不穏な空気感を、よりダイレクトに浴びれる作品なので、ABORYMが好きであれば購入する価値は大有りですよ。


VICARIVS FILII DEI - Non Cogitant Sed Tamen Sunt ★★★ (2014-10-01 20:08:39)

2014年発表の2nd。
バンド名は「神の子を代理する」という意味だとか。

この作品、Rawなブラックメタルの中においても、一際目立つような苛烈な音作りですね…。それこそULVERの「Nattens Madrigal」やNARGAROTHの「Regens~」辺りに匹敵する、耳を劈くようなノイジーさ。ただこのバンドが稀有なのは、ノイジーな中に響くトレモロリフのセンスが、これらの作品と比較しても劣らないほど素晴らしいことですね。メロウさや悲壮感に満ちていながら、ブラックらしい神秘性に満ちたメロディはブラック好きならば一聴で虜にされてしまうでしょう。

ただ、前述したバンドが極端に粗い音質とミニマリズムを融合させていたのに対し、このバンドの楽曲の展開は印象深いメロディを伴う疾走を軸に据えた、かなりドラマティックなもの。確かに、先人達の音の方がエポックメイキングだったとは言えるんですが、聴き手の好みによってはこちらの方をより気に入る可能性も大いにあると思います。割とマイナーなバンドながら、前述したような、ブラックメタルというジャンルのランドマーク的な作品にも肉薄出来る魅力のあるアルバムを作り上げたのではないでしょうか。

余りにも苛烈でRawな音は明らかに聴き手を選びますが、こういう辛口な音質でも行ける人は是非。メロディセンスは素晴らしいですし、鼓膜にダイレクトアタックな音ながら結構メロディを前面に出してくれるので、最初の印象よりは聴きやすく感じるかも。


啟示錄 - 神州賦 ★★ (2014-10-01 20:05:34)

2002年発表の1st。
同郷のCHTHONICが1stアルバムを発表した頃から存在したバンドで、1枚目のアルバムを残した後解散してしまったようですが、これはその唯一のフルアルバムとなる作品。

台湾のシンフォニックブラックと言うとどうしてもCHTHONICやANTHELIONと比較したくなりますが、このバンドは大分路線が異なりますね。前述のバンドがエクストリームメタルとしての暴虐性や緊張感に満ちたハイクオリティな作風を提示していましたが、このバンドは正直言ってB級な魅力があると思います。前述のバンドなど、メジャー志向なバンドにはない緩い魅力があるというか。

作風としては、暴虐性こそ高くないものの、リードギターによるメロウなフレーズ、はっきり聴こえるベースラインなどメロディアスなバンドサウンドに、ピアノやヴァイオリン、アトモスフェリックなキーボード、女性ヴォーカルなどを絡めて行く、オリエンタルな雰囲気漂うシンフォブラック。ぶっちゃけバンドの音はメタルとしてはパンチに欠けるんですが、逆にこのプロダクションのお陰でメロディの良さやオリエンタルな雰囲気が際立ってるかと。女性ヴォーカルが一瞬SOUND HORIZONかと思うようなメロディを歌う箇所もあったり、メロディセンスはなかなか。

ややマニア向けなのは否めませんが、アジアのバンドが好きであればチェックする価値大有りです。前述のバンドよりも「辺境」な音を出しているのが良いですよね。


SORCIER DES GLACES - Ritual of the End ★★★ (2014-09-29 14:43:11)

2014年発表の5th。
これは素晴らしいです。97年から活動するバンドで、既にフルだけで5枚も出しているベテランなのに、今まで知らなかったのを思わず恥じてしまうくらい素晴らしい。

CDを取り外すと、ケース下に「Primitive Cold Metal」とのキャッチコピーが記載されてますが、正にその言葉をそのまま音にしたかのような、寒々しさに満ちたブラックメタル。叩き具合によるスネアの音の変化まで伝わるような、やたら生々しい音のドラム、ややノイジーで刺々しいながら、厚みもあるリフの音色、それだけで聴き手を凍りつかせるかのように、鋭い声でがなるヴォーカル…と、「Primitive」の単語通りの、剥き身の衝動と向き合う事を聴き手に強いる音。この「こだわり」の感じられる音は、ケベック州のバンドならではといったところでしょうか。

そして「Cold」の単語も、恐ろしいまでの描写力で音として顕現させています。ブラックらしいトレモロリフにより情景を描いていくスタイルですが、メロディの魅力が凡百のバンドでは絶対に追いつけない領域だと思う。言葉通りの寒々しさを完璧に表現しつつ、神秘的・魔術的な雰囲気も併せ持っており、尚且つメロディだけを取り出したとしても、凄まじくエピックでドラマティック。正直感動すら覚えるセンス。これが厚みのある歪みリフと合わさると、ゆらめくような神秘性が感じられて、体の芯から凍てつくようなゾクゾクする感覚を味わえるんですよね。これがカルトブラックの魅力だと思う。

…正直、この素晴らしさを言葉で伝えられている自信は全くありません。なので、取り敢えず試聴とかでも良いので、是非聴いてみて欲しいところ。ブラック好きならほぼ確実にCDで買いたくなるんじゃないかと(笑)。特に後期のLUNAR AURORAのアルバムなど、日常を魔力で非日常に変えてしまうような、雰囲気作りが上手い作品が好きな方にもお勧め。


SLAKTARE - Love is Always Painful ★★ (2014-09-29 14:34:16)

2010年発表の4曲入りEP。
日本のHidden Marly、韓国のMisanthropic Artの共同リリース。
バンド自体はドイツ産で、何気にインターナショナルなリリースですね。

中心人物のMardroem氏はかつてNARGAROTHのライブメンバーを務めた経験もあるようですが、作風も大分影響を受けている感じがします。基本ミディアムテンポを保ちながら、トレモロリフやリードギターによりエモーショナルで儚げなメロディを紡ぎ上げていく、美しくも鬱なブラック。NARGAROTHの「Regens~」「Rasulka」辺りに通じる雰囲気がありますが、こちらの方が楽曲がコンパクトで分かりやすく、より身近な感情の感じられる音。

この作品、メロディといいヴォーカルといい、やるせない感情のダダ漏れっぷりが良いですよね。メロディの儚さは前面に出たトレモロの音色によって殊更に強調されているし、ヴォーカルもやり場のない怒りをぶつけるかのように、ストレートに「Fuck!」「Fuck you!」と叫ぶ場面がかなり印象深い。また、鬱/ポストブラックに属するような音ながら、ラストの曲はBURZUMの最初期のアルバムに入っていてもおかしくないような、刺々しく鬱屈したオールドスクールさがあってこれもまた違った魅力があると思う。

流石にドイツのバンドをアジアの2レーベルが共同でリリースという、面白いことになっているだけのことはあって、鬱で儚げな世界観を伝える力はジャンルでもかなり秀でているのでは。あと裏ジャケのMardroem氏がかなりイケメンなので必見(笑)。


INFINITY - Back to the Source (Summon the Black Flame) ★★★ (2014-09-29 14:31:07)

2012年発表の企画盤。
1stと2nd収録曲の再録6曲と、IMMORTAL、BATHORYのカバーを収録。
限定666枚。250枚限定で手書きナンバー入りデジパック盤もあり。

2ndを聴いた時は、黎明期~発展期の北欧産ブラックメタルバンド、例えばMAYHEMやSATYRICON、DISSECTION、IMMORTALなどのバンドが90年代半ばから後期にかけて発表していた、ジャンルの顔たる名盤群…それらに近いような雰囲気のある楽曲を演っているものの、癖のある辛口な音質で若干人を選ぶ仕上がりになっているような印象でしたが、その音質問題が改善された今作はブラックとして本当に非の打ち所がない作品になってますね。

上記のバンドを挙げられるほど、ストレートに北欧ブラックの路線を引き継いでいるのも素晴らしいですが、何より楽曲が良いです。例えば2曲目の「Autumn Storm」。オールドスクールで熱気を感じさせるリフ・リズムでテンションを上げつつ、甘美でメロウなリードギターを伴いつつブラストで離陸、一度テンポを落として「引き」を作りつつ、MAYHEMにも通じる邪気に満ちたトレモロ疾走に以降…という一連の流れは、完璧にブラックメタルの魅力を理解してる人の曲作りだと思う。どの楽曲もブラックメタルらしい寒々しさと邪悪さ、アンダーグラウンドな熱気、メロディックでドラマティックな構成と、このジャンルの魅力に溢れていて、本当に素晴らしい。

2ndを聴いた時、「これ音質が良ければ凄い事になるのにな…」と思ったんですが、こっちではその「凄い事」になってしまってます(笑)。これは文句なしにお勧め。素晴らしいです。枚数限定なのが非常に惜しい。


TORTORUM - Katabasis ★★★ (2014-09-28 20:21:11)

2014年発表の2nd。
バンド名の響きがGORGOROTHっぽいと思ったら、メンバーは実際にGORGOROTHのライブメンバーも務めているらしいですね。多分関係ないですけど(笑)。

路線としては、不協的に響く不気味なギターワークや、重苦しいミッドテンポも重視したダイナミックなリズム構成を交え、ドラマ性豊かに展開していく、典型的ながらハイクオリティなブラックメタルという感じですが…フレーズの端々から強烈で深遠な宗教性・オカルトめいた雰囲気を感じられるのが特徴ですね。この手の暗黒趣味な宗教色の強いバンドと言えば、フランスのDEATHSPELL OMEGAを始め、ドイツのCHAOS INVOCATION、ギリシャのACHERONTASやSEPTUAGINTなど、何故かブラックの爆心地たるノルウェー以外から現れる事が多い印象なんですが、ノルウェー産のバンドでこういう音を出しているというのが、意外といえば意外でしょうか。

ただ、店ではDEATHSPELL OMEGAの影響の強い音と紹介されており、実際私もそれに釣られて(加えて、レーベルがWorld Terror Committeeだった事もあり)購入したクチなんですが、ばっさり「DSO系」で括ってしまうには、少し抵抗のある音なんですよね。DSOは神秘性や前衛性が強く、ミステリアスな印象があるんですが、このバンドは衝動性や直接的な暗黒性をより強く感じられ、もっと邪悪さを身近に感じられるような音。こちらはスラッシーなリフ・リズムも多用されており、宗教色が濃い中にもオールドスクールな側面が垣間見れる作風のため、そういう印象になるのかもしれません。ヴォーカルの凄みの効いた叫びも、生々しい衝動に満ちている感じがしますし。

特に試聴もしないで買ってしまったんですが、やっぱりこのレーベルってハズレがないですよね。同レーベルのCHAOS INVOCATIONやACHERONTAS、ASCENSIONやORDER OF ORIASなどが好きであれば、このバンドも要チェックです。


PÕHJAST - Thou Strong, Stern Death (2014-09-28 20:14:27)

2012年発表の1st。
何気にSpinefarmからのリリースなんですね。

ジャケ的には、如何にもペイガンメタルっぽい佇まいですが…なんでしょう、むしろ実際の出音としては、山賊っぽいイメージがありますね(笑)。ハードロック色の強い、グルーヴィなリフとリズムでイカつくノリノリなサウンドを構築しつつ、おっさん風のダミ声がアジテーションするようなメロディをがなる感じで、正直一般的なブラックメタルからはかなりかけ離れた音だと思う。調べてみると関連バンドにはAJATTARAがいるようですが、ブラックからのかけ離れ具合では良い勝負かも。

確かに音作りとか、リフのフレーズとかに時折ブラックらしさは覗かせるんですが…う~ん、正直これは私の好みではないですね…。イカつい音ではあるんですけど、ネガティビティや禍々しさが感じられず、なんか健全な印象。特にヴォーカルの暢気な感じがちょっと…。一応ブラックとして認識はされてるようですが、私がブラックに求めるのは、こういう雰囲気じゃないかも。中古で激安だったので何となく買いましたが、これはかなり人を選ぶと思う。むしろブラックを中心に聴いている訳ではないメタラーの方が高く評価しそうかも。


KARG - Malstrom ★★★ (2014-09-26 22:41:41)

2014年発表の4th。

「プロビデンスの目」を象ったと思しきバンドロゴが目を惹き、中古で安価であったのとレーベルが有名どころだった事もあり、何となくでレジに持っていってしまったんですが…これは良いですね。タイプとしては鬱系に分類されるであろうブラックですが、葬式ドゥーム的凌遅系サウンドではなく、ロック的リズムも取り入れたドラマ性に富んだものでLIFELOVERやVIDHARR辺りに通じる音。

この作品は上記したバンドに見られるようなアヴァン要素は薄く、トレモロリフを中心とした「メロディで聴かせる」事を最重視したかのような作風。バンドロゴのおどろおどろしさとは裏腹に、儚さや哀愁の感じられるメロディのセンスは、鬱ブラックでもかなり秀でているように思います。人生に対するやり場のない怒りをぶつけるような、感情の篭もったハーシュなヴォーカルもあり、決して甘い雰囲気にはなっておらず、人生の儚さに思いを馳せつつウイスキー片手に睡眠薬を一錠一錠呷っていくような、絶望的で陶酔的なムードに満ちてます。人生愛好度でいったらLIFELOVERと勝負できるレベルなんじゃないでしょうか。

鬱ブラックとしては、今まで聴いてきた中でもかなり好みな音を出しているバンドで、思いがけない掘り出し物に大満足。絶望感やナルシシズムを感じさせつつ、メロディの美しさを重視した雰囲気が好きであれば、お気に入り盤になること間違い無しの良盤です。


AVERSION TO MANKIND - Suicidology ★★★ (2014-09-26 22:37:25)

元は2013年にデータで発表されていた1stアルバムの音源を、日本のレーベルであるMaa ProductionsがCD化して2014年にリリースしたものらしいですね。Maa盤には以前にリリースされたEP「Apotheosis」が丸々ボーナスで入っており、かなりお得。

一言で言うなら、閉塞感特化型のディプレッシブブラック。楽曲はバラエティに富んでおり、どす黒いエネルギーで塗り潰すかのごとき、低音も効いたリフが息の詰まるような感覚を演出しつつ、ブラストも使用し攻撃的な印象の「Shrouded in Thorns」が動の閉塞感を描いてるとしたら、歪みの少ないサウンドで、アルペジオの残響音が空虚に響く「Tripolarity」は静の閉塞感を描いている、とでも言えそう。

凶暴なバンドサウンドを挟む、澱んだアルペジオが凄まじく印象的なタイトル曲を始め、曲展開のパターンは少なくないんですが、どのパートを聴いても打破できない絶望感に彩られていて、精神が追い詰められていく感じなんですよね。音響志向が強く、リバーブの掛かりまくった絶叫ヴォーカルも楽曲の抑鬱的な雰囲気を更に助長。トレモロリフ含有度はそれほどでもないものの、リードギターは結構メロい部分多め。このメロディのセンスも暗くて素晴らしいです。

ただ、質量感を伴うリフの歪みや、残響音にまで気を配ったアルペジオの音など、音響にも気を遣っている割に、ドラムの音色がガチャガチャうるさいんですよね…。正直このせいで初めて聴いた時は楽曲そのものが非常に良質でバリエーション豊かな事に目が行かなかったですもん。本編の方が楽曲そのものは良いんですが、ドラムの音が普通な「Apotheosis」の音源の方が、聴き心地の良さは上。…聴き心地が世界観に嵌まれるかどうかに直結するジャンルだけに、どうしてこんな音にしたのか疑問。

そういう訳で、良い作品ではあるんですが、改善して欲しいポイントも残ってしまうアルバムでしたね…。と言っても似たような音になりがちなこのジャンルにおいて、しっかり楽曲ごとに差別化も出来ていて、かつ曲が魅力的なので☆は3つですね。この音に目を付けたレーベルの方、ナイスです(笑)。


SECRETS OF THE SKY - To Sail Black Waters ★★ (2014-09-26 22:33:21)

2013年発表の1st。

どこか耽美趣味の感じられるジャケのアートワーク、個人的に好きなバンドであるSECRETS OF THE MOONに似たバンド名に惹かれ購入したんですが…目論見通り(?)、SECRETS OF THE MOONやPORTA NIGRA辺りに通じる、知性的な雰囲気を持ったプログレッシブなブラックでした。特に事前知識とかなく勘と直感だけで買ってしまいましたが、結構当るもんだと自分でもびっくり(笑)。

幽玄でミステリアスな雰囲気を醸し出すアルペジオや、楽曲の持つ美しさを引き立てつつも、陰惨さを与えるヘヴィな引き摺り系リフを多用し、深遠なムードを描き出していく作風で、一般的なブラックというよりはゴシック寄りのドゥームに近い感じでしょうか。ウィスパーやクリーン、一部で女性ヴォーカルを導入しつつ、絶叫部分にはブラックメタルらしい獰猛さを感じさせるヴォーカルワークも良いですね。デス色の強かった頃のOPETH辺りにも通じる音だと思う。

ただ、凄く気になったのが、1曲目の2分23秒辺りで音飛びするんですよね。新品で購入、盤面に傷が無いのに、複数の環境で発生することから、おそらく仕様だと思うんですが…知的で構築性の高い作風で、音質もしっかり整えられているだけに、こういう単純な録音ミスがあると物凄く目立つんですよね。聴き手を雰囲気で酔わせる様な音なのに、一気に現実に引き戻されるようで凄く萎える。

メタルとしてのクオリティは申し分ないですし、1stの時点でしっかり知的でプログレッシブな構成を聴かせられる展開の上手さは評価出来るんですが…何だか惜しいです。


CREST OF DARKNESS - In the Presence of Death ★★ (2014-09-26 22:28:56)

2013年発表の6th。

このバンドの作品は初めて聴きますが…路線としては、デスメタル的なヘヴィネスとブラックメタル的邪悪さを上手く合わせた、マッシブで力強いエクストリームメタルですね。このバンドはかなり知名度の高いテクニカルメタルバンドCONCEPTIONのメンバーが絡んでおり、尚且つ93年より活動するキャリアの長いバンドであるというプロフィールのせいか、エクストリームメタルの中でも伝統的なメタル本来の熱さが強いように思います。

音質にしろフレーズにしろ、「キレがいい」という印象のアルバムなんですよね。ブラストで攻めるパートは暴虐に、ミディアムパートは重量感と躍動感を上手く両立させつつ力強く、刻みを多用するギターワークは厚みがありつつも、トレモロリフやソロを聴かせるべき部分ではかなりメロディアスに攻め…と、ツボを押えた曲作りがとにかく光ってる感じ。プロダクションもクリアさ・ヘヴィさどちらも兼ね備えた良質なもので、楽曲共々かなりハイレベル。

ただ、邪悪さで暴虐なエクストリームメタルながら、音楽としてごく真っ当なクオリティの高さ、メタル本来の熱さが前に出ているためか、ブラックメタルにありがちな陰険なムード、世を拗ねたようなネガティビティがあまり感じられない音なのが、私個人のツボからは若干外れるんですよね。とは言っても、間違いなく良盤以上だとは思うので、気になった方は是非。


HARVEST - Forgotten Vampyres of the Melancholic Night (2014-09-24 22:18:02)

2013年発表の1st。

店ではオーストラリア産の正体不明のブラックということでしたが、実はDROWNING THE LIGHTのAzgorh氏による独りプロジェクトらしいですね。自身が運営するレーベル、Dark Adversaryからの発売。ちなみにプロジェクトは既に活動を停止しているらしく、オリジナルフルアルバムとしてはこれが唯一の作品という事です。

路線としては、正にRawでポンコツを絵に描いたような、アングラ感丸出しのブラックメタル。紙ヤスリを思わせる薄っぺらくノイジーなギターリフと、生々しいミックスが逆に心地良いドラムが絡む音質、無理矢理エッジ感を出したような喉を潰す系のがなりが如何にもカルトバンドといった風情を醸し出してます。時折キーボードやアルペジオにサイケな要素が見えたり、教会音楽的な荘厳なオルガンが脈絡なく登場したりする辺り、衝動のままに曲を作ってる感じがして良いです。

故意にB級っぽさを出したような作風ですが、楽曲全体から伝わるオールドスクールな熱気やアンダーグラウンド音楽特有の陰湿なムード、ブラックメタルらしい荒涼としたトレモロなど、ポイントは押えられており「分かってる」ミュージシャンが作った音という感じ。マニア向けですが、この手のマニアなら共感する音ではないでしょうか。


INFINITY - The Birth of Death ★★ (2014-09-24 22:12:24)

2004年発表の2nd。

本編に期待しつつ、オープニングのメロウなアルペジオを聴いていると…突然雷の至近弾を喰らったかの如き、痛烈なドラムの一撃が!!…びっくりした、というか耳が痛いんですが(笑)。その後プリミティブブラック的なノイジーさを伴うギターリフが入ってくると、大分音のバランスはマシになりますが…やっぱり金物が地味に耳に痛い。この時点で、聴き手を選別している気すらします(苦笑)。

そんな訳で音作りは結構辛口なんですが、楽曲自体はブラックメタルとしてかなり良質なんですよね。例えば1曲目で言うと2分半くらいのリフなんかがそうですが、印象的なフレーズをトレモロリフに乗せるセンスに於いては、北欧の黎明期のバンド達にも劣らないとすら思いますもん。5曲目のリフとか、一部MAYHEMっぽい不穏さでかなり良いですし。民族調のアコギパートがあったり、土着的な暗黒性が色濃く感じられるのも高ポイント。やってる事は(やや粗いながら)ブラックの王道ですが、「ジェネリック」との批判を躱せるだけの質の高さがあるように思います。

オランダのバンドながら、初期のMAYHEMやGORGOROTHだったり、黎明期の北欧ブラックの空気感を上手く受け継いでいるように思います。Rawな音に耐性がない人には若干キツい音作りですけど、楽曲そのものがなかなかに良く、お勧めです。


ULVEGR - The Call of Glacial Emptiness ★★★ (2014-09-23 12:01:41)

2014年発表の3rd。
ULVER好きには何となく親近感の持てるバンド名ですね(笑)。

NOKTURNAL MORTUMの元メンバーであるOdalv氏のバンドという事で店で推されていたので購入。調べてみると、KHORSやYGGの現メンバーであるHelg氏も在籍している模様。完全にウクライナのペイガンブラック絡みの人脈のバンドですが、メロディに土着的な陰湿さは感じますが、あからさまな民族音楽要素の導入はなく、プリブラやメロブラに通じるような荒涼感のある寒々しいリフで聴かせる、ストレートなブラックメタル。

ただ、リフの寒々しさにプリミティブに通じるものはありますが、出音はヘヴィで、デスメタル的と言っても差し支えないくらい厚みがあり、所謂プリブラとは大分離れている感じ。ベースをゴリゴリ言わせた低音の聴いた音作りは関連バンドのKHORSにも通じるものがありますね。デスのグロウルに近いスタイルながら、ブラックの「sore throat」な壮絶さも感じさせるヴォーカルも実に威風がありますね。総じて、土着的な邪悪さを感じさせつつ、堂々とした佇まいを見せるマッシブな音。

個人的には、デスメタル的なマッシブさとブラックメタル的な土着性をハイレベルに両立させているバンドという事で、同郷のBLOOD OF KINGU辺りが好きな方にお勧め。関連バンドのペイガン勢とはまた違った趣の音ながら、こちらもなかなか聴き応えがありますよ。


SEPTUAGINT - Negative Void Trinity ★★★ (2014-09-22 21:44:00)

2014年発表の5曲入りEP。

ショップで「楽曲のレベルが高い」「DEATHSPELL OMEGA好きに推薦」とかなり高評価だったので、トレイラーを試聴してみましたが…即購入確定余裕でした(笑)。出音は典型的なブラックのそれですが、この作品、本当に楽曲やフレーズが素晴らしい。それに付きます。レベルが高いというのも良くある褒め言葉だと思いますが、この作品は「感銘を受けるほど」高いと思う。

まず楽曲の軸となる、フレンチブラック的な病的な暗黒性の中に、オカルトめいた神秘性や、サイコティックなおぞましさがブレンドされたかのような、メロディアスながら禍々しいトレモロリフはカリスマ性すら感じさせ、「どす黒い」なんて言葉が陳腐に感じるほど。このおぞましいリフが吹き荒れるだけでも感動ものの邪悪さですが、そこにKenose以降のDSOから影響を受けたと思しきカオティックなリフや、それだけでサタニックな空気感を演出する歪んだアルペジオを絡め、曲はドラマ性たっぷりに進行していきます。

禍々しさを極めるギターワークと相俟って、周囲の風景を蝕んでいくかのごときミディアムパート、ただ突っ走るだけではない、暴虐を振るいつつも「聴かせる」爆走パートなど、緩急の付け方も絶妙で、前述したように楽曲自体のレベルは高いにも関わらず、音質はプリミティブブラック的なRawさを若干残してくれているのが、また絶妙なんですよね。店で引き合いに出されていたDSOで例えるなら、3rdまでのプリミティブ志向やオカルト志向を残しつつ、以降のリズムを強調しつつカオスを演出するような、破壊的なリフ捌きも部分的に取り入れた感じでしょうか。

同じくDSOが引き合いに出されるバンド、例えばPLEBEIAN GRANDSTANDやDODECAHEDRON、THE PHANTOM CARRIAGE辺りとは毛色の異なる音で、こちらはアヴァンギャルドさよりも、プリミティブ色の強い音。とにかくフレーズの禍々しさが半端ではないため、即効性も高い。ダークな音楽に耐性がない人が聴いたら本能的な危機感を覚えるであろう邪悪さ。EPのため演奏時間は短めですが、かなりお勧め。素晴らしいとしか言い様がないです。


WORTHLESS LAMENT - Worthless Lament ★★★ (2014-09-22 21:37:27)

2014年発表の1st。

メンバーが関与しているCOLORLESS FORESTの作品がかなり素晴らしかったのと、国内のレーベルからのリリースという後押しもあって購入に踏み切りましたが、こちらもまた素晴らしいですね。優れたディプレッシブ・ブラックであることはCOLORLESS FOREST同様ですが、音響的な演出力に秀でていたあちらに対し、この作品はメロディの良さが特に際立っているように思います。

この作品、メロディにおける、「叙情・哀愁」と「鬱・絶望感」のバランス感覚が凄く良いんですよね。単に物悲しかったり、救いが無かったりするだけでなく、例えば不安感や嘆き、虚無感などの様々なネガティブな感情が、渦を巻いているような印象。その様をトレモロだけでなくリードフレーズも交えたギターワークで、非常に美しく描いてます。

鬱ブラックとしては展開に起伏もあり(疾走パートもある程度ある)、リードギターがメロディを担当する箇所の多い音像はメタリックとも言えるかも。こうした要素から、鬱ブラックとしてはかなり聴きやすい部類になると思うんですが、だからといってカルトでマニアックなバンドと比較しても、鬱感情の濃さでは全く劣りませんね。むしろ、今まで聴いた鬱ブラックの中でもトップクラスに素晴らしい作品だと思います。

ネガティブで美しい音が好みであれば、ジャンルのファン以外でも共感できそうな作品。こんな素晴らしい作品が国内のレーベルからリリースされたというのが、本当に嬉しい。でも帯コメントの「最悪な悪夢」って…馬から落馬的な?いくらバンドメンバーがロシア人で日本語分からないからって、ちょっとナメ過ぎなのでは(苦笑)。むしろ「美しい悪夢だぁ…」って感じ。首切り破沙羅的な意味で(笑)。


GRIMOIRE - À la lumière des cendres ★★★ (2014-09-21 12:17:52)

2010年発表の1st。

バンド名の「Grimoire」は魔術書を意味する単語ですが、出音としては自然崇拝系のアトモスフェリック・ブラックに近い印象ですね。若干篭もり気味なバンドサウンドに、神秘的な音色のキーボードが絡み、メロウで美しい情景を演出していく作風。この手としては、バンドサウンド部分にオールドスクールな色が強いのが、少し珍しい気もしますね。バンドサウンドの歪め方も、耳に痛くないRawさで個人的にはかなり好み。

もう一つ、特記したい事項としては、メロディが非常に美しい事ですね。バンドサウンドをヴェールで包むように、神秘性を与えていくキーボード、涙腺に来るような泣きも感じられるトレモロの相乗効果でメロウ度が半端なく高くなってます。3曲目のピアノインストの儚さなんかも絶品。調べてみると、CSEJTHEのメンバーが関与しているという事で、なんか納得。ただ音作りに癖のあったCSEJTHEよりも、こちらの方が耳に優しめな分、よりメロウさに特化した音と言えるのかも。

アトモスフェリック・ブラックに近い音ですが、抽象的ムードよりも、直接的に聴き手の琴線に触れるようなメロディを重視したタイプですね。メロディアスなブラックが好きであれば、チェックしておいて損はないバンドだと思います。


BARBAROUS POMERANIA - Bloody Mystery of War God ★★ (2014-09-21 12:15:04)

2011年発表の4th。

日本人からすると、「やたら攻撃的なポメラニアン」を連想して微笑ましくなってしまうバンド名ですが、実際は「ポメラニア」はポーランド~ドイツにかけての地域で、かつてポメラニア公国があった場所だとか。そんな地名をバンド名に掲げるだけあって、世界観はペイガン色が強く、漢臭く好戦的な音。ファーストインプレッションで抱くような可愛いイメージは全くありません(笑)。

作風としては、近年のGRAVELANDが近いでしょうか。そこまで主張の強くない音のバンドサウンドに、北欧の戦場の冷たい空気感が流れ込んでくるような冷たいキーボード、ペイガニズムを直接的に描写するようなSEが絡み、どこか神話的な景観を描くようなアトモスフェリックなペイガンブラック。

ただ、GRAVELANDが結構思い切って景観を描くことに徹してるのに対し、こちらはメロディやバンドサウンドにまだ主張が残ってる辺り、中途半端に感じる人もいるかもしれません。スラッシーだったりメロウだったりするリフワークは悪くないですし、メロディのセンスもなかなか(特にピアノが出てきた時のメロディアスさが素晴らしい)ですが、徹底度や特異さという点ではGRAVELANDに軍配が上がるかな、という感じ。

このバンドも、クサメロ的な部分からペイガンを追っている人よりも、土着文化信仰の強いバンドに特有の空気感が好きでこの手を聴いている人に勧めたい作風ですね。逆にこのくらいがペイガン的な景観とバンドサウンドのバランスとして丁度良く感じ、近年のGRAVELAND以上にハマる人も結構いると思う。


HAGL - Irminsul ★★★ (2014-09-20 21:24:43)

2011年発表の2nd。

バンドロゴやアートワーク等から、なにかマイナー臭というか、垢抜けなさみたいなものを感じていたんですが…音を聴いたら土下座して謝りたくなりました(笑)。これはメロディックさとブルータリティ、そしてアングライズムがバランスよく共存した、メロブラやペイガンブラックとしてかなりの良盤なのではないでしょうか。

ブラックメタルらしい寒々しいトレモロを基調としつつ、スラッシュメタル由来のキレの良さや、正統派メタル由来のドラマティックさも感じられるリフを聴かせる作風は、初期~中期DISSECTIONに近いでしょうか。ただしこちらは、ペイガニズムをテーマにしているからか、メロディに民族的な哀愁が感じられるのも特徴ですね。お祭り系の笛などの導入は無く、あくまで民族色はギターメロに練りこんで聴かせる感じ。

そしてDISSECTIONと異なるのは、こちらはデスメタル的なダイレクトなブルータリティもまた強い事。バスドラをバキバキ言わせつつカチ込むドラミングと、耳を圧迫するようなノイジーさで迫るギターリフが合わさると、音の壁に押し潰されるような迫力。初めて聴いた時は圧倒されてしまい、メロディが実に甘美である事に一瞬気が付かなかったほど。音に慣れ、冷静に聴くと楽曲がかなりドラマティックに作られてることに驚きます。

これはメロディック・ブラックやペイガンブラックが好きな人になら文句無くお勧めできます。これだけダイレクトに暴虐性を発揮しながら、それがペイガニズムから来るメロディックさをスポイルしていないセンスが素晴らしいです。演奏時間はやや短めながら、かなり満足度の高い一枚。


SAMMATH - Godless Arrogance ★★★ (2014-09-20 21:19:37)

2014年発表の5th。

バンド名の字面から何となくイカツイ印象を受けてたんですが、中身もばっちりイカツかった(笑)。大量の岩が山の斜面を転がり落ちるかの如き、聴き手を圧倒するようなブルータル極まりないドラミングに、多用される刻みリフが音に厚みと血腥さを加え、更なる暴虐に発展していく凶暴性の強いブラックメタル。イントロ無しでいきなり始まるので、訳も分からず問答無用で戦場に放り出されたような感覚に。

有無を言わさずぶっ殺す系の、ブルータルな音ではあるんですが、それが綺麗に整いすぎた音ではなく、リフのブラック特有の生々しいノイジーさも込みでなのが、また良いんですよね。決して甘くならない程度に、神秘性を感じるメロディをトレモロリフに込める辺りも上手いと思う。個人的には、何気にヴォーカルのギャーギャー喚くような声も好きなんですよね。悪魔が世界を呪う産声を上げているような印象で。

単にブルータルなだけでなく、ブラックとしての旨みもたっぷり乗った、良質なブラックメタル。まだジャンル初心者にはお勧めできませんが、このジャンルのノイジーさに慣れた人は是非。


KURSED - In the Labyrinths of Death ★★★ (2014-09-19 22:10:56)

2010年発表の1st。
既に脱退しているようですが、この作品ではドラムでTHE LAST KNELLやANIMUS MORTISのN. Onfray氏が参加。

デジパック内側の声明文に、「全ての形態の死のアートを支持せよ」とありますが、これは地でそれを実践しているような作風ですね。地下臭さを色濃く残した、ややノイジーでRawな音作りに、陰鬱さとメロウさの同居したトレモロが映える、鬱要素のかなり強いブラック。かつてのBURZUMソックリな裏返り系絶叫も、負の感情が込められていて胸を打ちます。

この作品、死霊を思わせるコーラスが入ってたり、基本は不気味さに特化した、鬱系の音なんですけど、何気にドラムがかっこいいんですよね。カンカンと抜けの良い音で存在感があるだけでなく、緩急付けた展開に合わせての押し引きが上手く、メリハリのある曲作りにかなり貢献してるように思う。鬱ブラックにありがちな、感情や情景の描写に終始するあまり、音としては実は退屈…みたいな事にはなっていないと思います。

マニアックな音楽性ながら、自己満足には終わらない曲作りのセンスがある作品ではないでしょうか。知名度はそれほど高くないバンドのようですが、鬱系としてはかなり良質だと思います。


DEADLY FROST - Voices from Hell ★★ (2014-09-19 22:07:56)

2012年発表の1st。
これまでにデモやスプリットは数多く出しているようですが、フルアルバムとしては初。

個人的に、このバンドの音を聴いて思い起こしたのはアメリカのABSUですね。スラッシュの影響を色濃く残した、刻みリフを多用しテンションの高い、ダーティな熱気を孕んだ感触はあのバンドと通じるものがあると思う。ABSUが時々演るような、痴漢にあった女の子の悲鳴を思わせる、ブラックにそぐわない素っ頓狂なハイトーンが聴けるのが、あのバンドを想起した大きな要因かもしれません(笑)。

ただし、ABSUはキレの良いリフ捌きと、テクニカルな演奏、持ち前の暴虐性で特に近年エクストリームメタルとしてはかなりメジャーな作風になってきていると思いますが、このバンドはRawで地下臭いムードや、カルトでインモラルな空気感を重視していて、プリミティブ志向が強めなのが大きな違いですね。メタルとしての完成度であれば圧倒的にABSUの近作ですけど、アングラ度という事であればこの作品の方が上でしょう。こちらの方が大分マニア度高め。

ちなみにポーランドの暗黒ブラックとして高い評価を得る、MGLAやKRIEGSMASCHINEのメンバーも関与しているようですが、こちらは邪悪さがサタニックで宗教的な雰囲気からよりも、アングラな熱気から来ている感じなため、大分聴き心地が違うのも興味深いですね。ダーティなブラックが好きな人にお勧め。


THE LAST KNELL - Æon Vmbra Genesis ★★★ (2014-09-18 20:51:22)

2011年発表の1st。

南米のブラックってオールドスクールなバンドが多い印象で、このバンドも少々プリミティブ的なRawさはありつつも、基本オールドスクールなブラックを演っているんですが…このバンドの音は、その「オールドスクールさ」が、凄く丁度良い按配なんですよね。昔ながらのブラックメタルのスタイルであることは間違いないんですが、MAYHEMの「De Mysteriis~」やGORGOROTHの初期作など、黎明期でもスラッシュと完全に分化され、固有のジャンルを築き上げつつあった時期のシーンの音に近い作風。

極端なノイジーさや反復だったり、過度なメロディアスさやブルータリティだったりに頼ることなく、ひたすらにブラックど真ん中の音を浴びせていく様はストイックさすら感じるほど。ただ、完全に黎明期ブラックの作風をなぞったという訳ではなく、カオティックなリフ捌きがあったり、ドスの効いた黒々しいムードだったり、WATAINやDEATHSPELL OMEGAが登場して以降、波及していったどす黒い瘴気漂う雰囲気も感じられる辺り、今風という所でしょうか。

ブラックメタルのジャンルの王道的な作風で、邪気や神秘性の濃さも十分。ブラックが好きであれば抗いがたい魅力のある音。派手ではないものの、かなり良い作品だと思います。


NOCTEM - Oblivion ★★ (2014-09-17 22:26:42)

2011年発表の2nd。

これはかなりレベル高いですね。デスラッシュ由来の突進力とメロディアスながらギラついたギターワークを軸に据え、ブラックメタル的な甘美な邪悪さを秘めたメロディ、デスメタル的なダイレクトなブルータリティと、エクストリームメタルの各ジャンルの良い所を上手く合わせたかのような、質の高い作品で、ちょっと前のトイズファクトリーなんかが聴いたらすぐにでも日本盤をリリースしそうな感じの、メジャー感のある音。所々で聴ける寒々しいトレモロに顕著ですが、メジャー感ありつつもブラックの甘美さも備えてるのが個人的にはツボ。4曲目の中盤のリフとか完全にEMPERORに影響を受けてそうだし。

エクストリームメタルとしては間違いなく一級品で、プロダクションも一聴してクリアかつヘヴィな、クオリティの高い音に聞こえはするんですが…実はこのプロダクションが一番の欠点かもしれません。ツーバスを使ったフレーズも多いんですが、バスドラムの音が腹に響くような低音ではなく、やたらビキビキした甲高い音で耳障りな無粋なものになっていて、はっきり言って台無しも良い所。この音のせいで、「暴虐」「激烈」といった単語よりも「うるさい」という言葉が先に浮かんで来てしまうんですよね…ここが改善されれば、間違いなく☆3つ付けるんですが。

まあ、そこ以外は特に文句のない、バランスの良いエクストリームメタルなので、十分にお勧めできる出来ではあるんですけどね。ブラック関連のレーベルでは、デス色の強いブラックを数多くリリースしてる、同郷のXtreem Music発の作品を追っている人などは特にグッと来そうです。


NON ESSENCE GENESIS - Genesis of the Fall ★★ (2014-09-17 22:20:01)

2013年発表の1st。
…ジャケ横にアルバムタイトルを書かない(ジャケ表にのみ記載)仕様はどうかと思います(笑)。一瞬セルフタイトルかと思って、それで登録しそうになりましたもん…。

黒をバックに、金色でバンド名とアルバムタイトルの書かれたジャケットのシックなデザインからは、なにやら気高そうな雰囲気が伝わって来ますが…実際はブラストビートを多用した、ややノイジーで凶暴なブラック。まああ激烈ブラックのAD HOMINEM絡みという事でお察しですが(笑)。この作品、ヘヴィメタルとブラックメタルとしてのバランスが、なかなか面白いことになっているように思います。

楽曲自体は、キメを多用したり、ブラストで畳み掛けるだけでなく、ミッドテンポのパートも魅力的に聴かせる緩急の付いた展開を見せたりして、ヘヴィメタルとしてのドラマティックさも申し分なし。しかしギターリフに極端に耳に痛い音ではないにしろ、摺り込む様なノイジーさがあったり、ヴォーカルが憎々しさを込めて噛み潰すような絶叫を聴かせたり、ブラック特有のカルト性も同時に醸し出している感じ。このバランスが、個人的にはかなり耳に心地良かったり。それなりにメロディアスではあるものの、メロディをあからさまに押し出さないのも、この作風には合ってると思う。

あと何気に3曲目、6曲目の打ち込みやキーボードを使ったインストの雰囲気が好きなんですよね。凶悪なバンドサウンドのパートと異なり、こっちはジャケのシックで暗黒なイメージに合ってると思う。ただ、6曲入りでうち2曲がインスト、トータル演奏時間が約25分という、フルアルバムとしてはやや少ないボリュームに若干物足りなさを覚えるかもしれません。それを考慮しても、良盤だとは思います。


中山七里 - ヒートアップ ★★★ (2014-09-16 10:04:34)

2012年にハードカバー、2014年に文庫化された小説。

文庫化にあたって再購入し、読み返してみたんですが、やっぱり中山七里さんの作品は面白いですね。ハードカバーでの最新刊「アポロンの嘲笑」にはかなりガッカリだったんですけど、この作品の文庫版を読んでそれを再認識しました。まず驚いたのは、麻薬取締捜査官が主人公という舞台設定ですね。今までの中山さんの作品って、作中において「音楽」が重要なキーになるものが多く、どこか上品な印象があったんですが…まさかこんな泥臭い刑事モノ(厳密には主人公は厚生労働省所属の公務員だけど)を書くとは…。

今までと舞台は大きく異なっても、中山さんの作品の特徴である、「キャラ立ちした登場人物」と、「スリリングな展開」、「リーダビリティの高い読み口」は変わらないのが素晴らしいです。今作も、麻薬の中毒性が効かない特異体質を持ち、おとり捜査も辞さない破天荒な捜査官の七尾や、暴力崇拝の匂いのしない、勤め人風ながら交渉術に長けた曲者の暴力団組員の山崎を始め、主要な人物はどれも漫画やドラマのキャラクターに通じる存在感がありますね。

ただ、今作は後半から良くも悪くも、アクションを中心とした映像的な展開になってくるので、麻薬を軸に様々な人間の思惑が絡んでくる、サスペンス的な展開を期待すると若干肩透かしに感じるかもしれません。とは言っても、アクションシーンでも窮地の切り抜け方に今までの伏線が生きていたりしますし、ラストには(やや唐突ながら)作者お約束とも言える「どんでん返し」もありますし、エンターテイメントとしてはやはり一級品であることは間違いないです。大ベテランの東野圭吾さんと比較されるのも良く分かりますもん。

電車で移動中に読んでると、思わず目的地を乗り過ごしそうになるくらい、夢中になって読める作品。東野さんや貴志祐介さん辺りが好きであれば、この中山七里さんの作品もかなりお勧め。取り敢えず「静おばあちゃん」の文庫化を待ち望んでます。


KAOTEON - Veni Vidi Vomui ★★★ (2014-09-16 10:03:14)

2011年発表の1st。

個人的に中東のブラックって、剣呑な雰囲気を持ってる事が多い印象なんですが、このバンドの作風は正にその印象に当てはまりますね。メンバーの写真を見なくても、如何にもイカツイ男どもが演ってるのが伝わってくるような、デスメタル的な攻撃性、スラッシュメタル的な炸裂感の強いブラックで、サタニズムを説くよりも凶器で殴り殺しにくるかのような音。

ただし、そんな剣呑さとは裏腹に、サウンドクオリティはかなり高く、抜けの良いドラムの音が楽曲の炸裂感を更に助長しているのが良いですね。時にハイなテンションでアジるようにがなり、時におぞましさすら感じるように呻き、時に鋭くノイジーな叫びを聴かせるヴォーカルの表現力もなかなかのもの。リリース元のOsmoseはデス色も強いレーベルという印象ですが、このダイレクトに攻撃性を伝える作風はレーベルカラーにも合致すると言えるでしょう。

エクストリームメタル好きであれば、聴いてて爽快感を覚えること間違いなしの作品。テンションの高さ、破壊力共に一級品ですよ。


ÆVANGELIST - Omen Ex Simulacra ★★ (2014-09-16 10:00:08)

2013年発表の2nd。

これ、カルト臭という点では他のデス/ブラックの追随を許さないものがあるのではないでしょうか。基本的には、低音の効いた、ドス黒く禍々しい雰囲気を醸し出す、サタニックなデス/ブラックという感じなんですが、それを圧縮し押し潰したような音作りが最大の特徴。この音作りのせいで、バンドの音が何やら訳の分からない、邪悪さのみを放つ黒い塊になってしまったかのように聞こえます。

パッと聴いた感じ、ひたすらに黒く塗り潰すような音の塊という感じなんですが、良く聴くとリフにデスメタル的な、ドロドロした蠢きが感じられるのがまたおぞましさを煽るんですよね。そこにクワイア風のサンプリングや、洞窟の底から響いてくるかの如き低音咆哮が重なり、より邪悪なムードを濃密さを増していきます。最早終末的な光景しか見えてこないというか、今正に恐怖の大王でも降臨してるんじゃないかってくらいドス黒い雰囲気。

他のサタニックなデスメタルと比べると、押し潰されたような音質でリフの輪郭が聞き取りづらく、直接的な攻撃性を若干減退させてまで暗黒ムードを演出している辺りは好みが分かれそうですが、少なくとも雰囲気の演出力は超一流レベルかと。調べてみたら、BENIGHTED IN SODOMのメンバー絡みのバンドという事で、このアンビエンス重視志向も納得。


ATRUM EXTEMPLO - L'Ira dell'Arcano Manto ★★★ (2014-09-13 22:43:31)

2013年発表の1st。
日本のレーベル、Hidden Marlyからの発売。

作風は、最早どこからどう聴いてもプリミティブブラック以外の何物でもないっていうくらい、立派にプリブラの要件を満たしたブラック。氷の礫が吹き付けてくる様を連想させるような、刺々しくノイジーでありながらメロディを殺さないリフの音色、そんなリフの音色に負けないくらい歪んだ、エグいがなりを聴かせるヴォーカル…完全に厭人感・厭世感剥き出しの音ですね。

ジャケなどは如何にも黒魔術の儀式でもやってそうな雰囲気ですが、そんなサタニックな禍々しさも感じさせつつ、私は北欧プリブラ的な「寒々しさ」も強く感じるんですよね。ラストのアルペジオが入る箇所なんて正に凍死寸前、エンディングのインストで走馬灯が見えそう(笑)。また、ノイジーな音質とシンプルな構成によるプリブラ特有の陶酔感を演出しつつ、ドラムが結構良い仕事してて聴き応えもあるのが良いですね。

もうプリブラ好きじゃない人は端から相手にしていないような感じの音ですが、この系統としてはかなりクオリティは高いんじゃないでしょうか。この手が好きじゃなければ回れ右、好きなら要チェック。ある意味分かりやすい音源かと(笑)。


SALTUS - Słowiańska Duma (2014-09-13 22:35:49)

99年発表のデモのCD化再発盤。
2001年と2004年、今までに二回再発しているそうです。

SALTUSと言えば、EMPERORのトリビュートアルバム「In Honor of Icon E」に「Curse you all men!」で参加したことで有名なバンドですね。今年出たEMPERORの1st再発盤の限定仕様にそのトリビュートが付属していたこともあって、結構このバンドの音自体を聴いた事のある人は多いんじゃないでしょうか。その音源や、近年の作品ではデス的なヘヴィネスやソリッドさを手に入れているようですが、この時点ではまだデモという事もあって、かなり荒削りな感じの音。

作風は、ペイガン方面に大分寄った感じのメロディックなブラック。ブラック特有の土着性が、サタニックな禍々しさではなく、ペイガン/ヴァイキング的な勇壮さに繋がっているタイプですね。…ぶっちゃけこの段階では、粗さやもっさり感が拭いきれていないし、SEやインスト曲の挿入の仕方も微妙(いきなりオープニングSEに3分使うとか…)ですが、粗いが故にトレモロが妙に味のある音色になってたり、なんかニッチな良さもあるんですよね。

正直、この段階では微妙の域を出るものではない気はしますけど…人によっては妙なツボに嵌まってしまうかもしれない、そんな魅力のある作品。個人的には、あの「味のある音色のトレモロ」の頻度をもっと上げて欲しかったです。


HAMMEMIT - Spires over the Burial Womb ★★ (2014-09-12 20:06:41)

2008年発表の、改名後は初となるフルアルバム。
EMIT時代も大量のデモやスプリット、音源集などをリリースしていたものの、フルアルバムは一枚のみだったようなので、実質的にはこれが2枚目という扱いになるのでしょうか。

改名前はブラックメタル/ダークアンビエントのバンドとして認知されていたらしいですが、この作品はメタル要素はほぼ皆無で、完全にダークアンビエント方向に舵を切ってますね。一応ディストーションギターの音色を加工したようなノイズも一部で使用してはいますが、基本はダークな音色のキーボードと、サンプリングなどを丁寧に組み合わせた、暗黒で頽廃的なアンビエント。

このアルバム、出音は完全にダークアンビエントながら、端々にブラックメタルへの敬意のようなものが感じられるんですよね。例えば1曲目のサンプリングの裏で密かに鳴っている、火花が散るようなノイズ、微妙にULVERの「Nattens Madrigal」っぽいんですよね。あのアルバムの、リフが入る前の微弱なノイズに似てる。4曲目の奥行きのある薄暗さは、1stや2ndまでのBURZUMがもう少し良い機材使ってたら、ブラックメタル曲の合間に入れそうな感じですし。

という訳で、確実にブラックメタル好きの感性には響くものがあるであろう作品。レーベルもブラックメタルとは非常に縁の深い、Total Holocaustですし。衝動性や攻撃性ではない「静の狂気」に触れてみたい方は是非。


SUN OF THE SLEEPLESS - Poems to the Wretches Hearts ★★ (2014-09-12 20:02:11)

99年発表の3曲入りEP。

私は未聴なんですが、ネオフォークのシーンでは相当知名度の高いバンドであるEMPYRIUMのメンバーによる別プロジェクトという事で、大分叙情的な音を想像してましたが…何の前触れもなく刺々しいノイジーリフの洗礼を受けて驚きました(笑)。ヴォーカルも憎々しさ全開の絶叫スタイルですし、全体的に音に人を寄せ付けないようなノイジーさが感じられます。

ただし、そのノイジーなリフには、出自から分かるような土着的な哀愁メロディがたっぷりと練り込まれていて、実は相当にメロウな音。アトモスフェリックなキーなどの導入もありますが、基本ギターによるメロディが強く、それがブラック独特の寒々しさを強く感じさせます。樹氷の林立する中で吹雪が吹き荒れているかのような、自然の猛威を音で描いているような作品。

ちなみにこの作品は何処から見てもブラックメタルのスタイルですが、バンドはこの後トリップホップやエレクトロニカ要素を取り入れ、実験的な方向に進んでいったらしいです。この路線でフルアルバムを作らずに路線変更したのは若干残念ではありますが、出来れば路線変更後の音源も聴いてみたいですね。この叙情性をエレクトロ路線で表現したらどうなるのか気になりますもん。


KRIEGSMASCHINE - Enemy of Man ★★★ (2014-09-11 19:44:45)

2014年発表の2nd。

基本的な路線としては、真性でどす黒いシリアスな雰囲気満点のブラックメタルで、レーベルで言うとAgoniaやWorld Terror Committee、Daemon Worship辺りが好みそうな感じ、関連バンドで言えばMGLAに近い音ではあるんですが…この作品はそれを踏まえつつ、ブラック特有の焼け付くようなリフをミッドテンポで聴かせることに特化し、より「どす黒い情景を描写する事」に重きを置いたような作風ですね。

疾走やメロウなメロディに頼らないスタイルですが、ドラムのそれだけでも邪悪さを感じられそうなダークなグルーブ感、リフのどす黒さの中に有機的な蠢きを感じられるようなグロテスクさなどもあり、この手の暗黒な音が好きであればまず退屈はしないであろうと思われます。ひたすらに黒く蠢くリフで情景を塗り潰しに掛かる様は、ストイックというか最早崇高さすら覚えるほど。出音は如何にも真性ブラックめいた黒さですが、情景描写という点ではある意味アトモスフェリックブラックと通じるものがあるかもしれません。

作風的にMASSEMORD(このバンドもメンバーが関わってますね)の「The Madness Tongue~」アルバムを思い出しますが、こちらの方が音に動きが多い分やや取っ付きやすいでしょうか。と言っても五十歩百歩でマニアックである事には変わりませんが(笑)。自身の持つ世界観を描くことに妥協せず徹底している事、描写のクオリティが高い事もあの作品と共通してますね。波長さえ合えばかなりハマれる作品です。


INFERNO (CZECH) - Black Devotion ★★★ (2014-09-11 19:39:52)

2009年発表の5th。

「チェコのINFERNOが素晴らしい」とは聴いてましたが、確かにこれはかなり良いですね。ブラックメタルとしての衝動性や宗教的な甘美さと、メタルとしてのクオリティを両立させた、どす黒く堂々とした音は「Sworn to the Dark」「Lawless Darkness」期のWATAINを思わせますが…こちらの方が甘美な邪悪さにおいて若干譲る代わり、よりオールドスクールで辛口に仕上がっている印象。直接衝動を叩き込んでくるような攻撃性の高さ。

こういうどす黒く真性な雰囲気を出すバンドは最近少なくないですけど、この作品はその中でも「楽曲の良さ」がかなり際立っているように思います。特にギターがメロウなメロディを奏でるインストの「Loyalty of Honor」から、EMPERORの「Ensorcelled by Khaos」へのリスペクトとも取れる、ブラックメタルの宗教的神秘性を流出させるようなリフを伴いつつのリフで幕を開け、ドラマティックに展開していく「Altar of Perversity」への流れは、この手のバンドはかなり聴いてるはずなのに、思わず深く感銘を受けてしまったほどかっこいい。

…もう、「この手」が好きならば買え、としか言い様がないです(笑)。邪悪で攻撃的な音楽、それを愛する人ならば買って後悔する事はないと思いますので。


MASSEMORD (POLAND) - The Madness Tongue Devouring Juices of Livid Hope ★★ (2014-09-08 20:09:54)

2010年発表の3rd。
関連バンドのNIGHT OF THE WORLDが素晴らしかったので、より古参のバンドであるこちらも聴いてみたんですが、こちらはかなり独特の世界観を持つブラックを演ってますね。

1曲で約35分という極端な構成も然る事ながら、その殆どをブラック特有のジリジリとした焼け付くようなリフと、破滅を告げる警報の如き不吉なメロディをミッドテンポに乗せて聴かせるパートに割いた曲作りも、世界観の演出への並々ならぬ拘りが感じられますね。「ただただ無残な光景が繰り広げられるだけの音」という感じで、ウォークマンで聴きながら歩いたら地面は焦土に、通行人はみんな死体に見えてしまいそうなドス黒さ。「大量殺人」を意味するバンド名は伊達じゃないです。

ただ、演ってる事はマニアックとしか言い様が無いですけど、それを表現する手腕の質は非常に高いです。ヴォーカルはNIGHT OF THE WORLD同様にドスが効きつつも切れ味の鋭い、狂気的ながなりで楽曲の残虐さを上手く強調してますし、ミッドテンポを力強く聴かせるドラミングも不穏さに説得力を持たせてます。ギターの音色はブラックらしいノイジーさですが、重さもありリフの醸し出す不穏なムードをより高めてますね。自身の持つ世界観を十全に表現できているという印象。

という訳で、世界観を表現する技法やセンスが足りないが故に、結果的にマニア向けになってしまうバンドとは真逆の、「確固たる信念を持ってこの音を出している」という雰囲気のある作品だと思います。マニアックなのは事実ですが、マニアでも満足できるという意味でマニア向けと言えるのではないでしょうか。


MASSEMORD (POLAND) ★★ (2014-09-08 20:08:46)

「大量殺人」を意味するバンド名を冠したブラックメタルバンド。
ノルウェーにも割と知名度の高い同名バンドが存在しますが、こちらはポーランド産。


COLORLESS FOREST - Those Who Come with the Rain ★★★ (2014-09-08 20:03:38)

2013年発表の2nd。

ミディアムテンポを中心に、ブラック特有のノイジーなギターリフと、アトモスフェリックなキーボードを融け合わせ、アンビエントな雰囲気を演出するブラックメタルで、手法としては昨今珍しくもないんですが…音の持つ重層感や、それによって演出される瞑想的で破滅的なムードなどは、似たような系統のバンドの中でも頭一つ抜けているのではないでしょうか。

このバンド、とにかく音による雰囲気作りが上手いです。まるでピアノの低音鍵盤をまとめてガーンと叩いた時の、あの腹に来るダークな響きの音を、引き伸ばしてバンドサウンドに絡めたかのような、音響に質量感が感じられるプロダクション。この音が、楽曲のネガティビティや神秘性に、強烈な説得力を持たせていて素晴らしいんですよね。ただ、音に膨らみがありすぎて若干音割れしているようにも聞こえますが…これはうちのスピーカーが悪いのかも(笑)。

アンビエントブラックってセンスや技量が足りないと、聴き手と情景を共有するところまで辿り着けなかったりするものですが、この作品はそんな凡庸なバンドとは一線を画してると確実に言えますね。優れたアンビエントブラック特有の、作品の世界観に取り込まれていくような感覚を味わえる一枚。これは是非ネットのストリーミングの試聴とかじゃなくて、しっかりCD音源で味わって欲しいです。


COLORLESS FOREST ★★ (2014-09-08 20:00:02)

ロシア産アンビエントブラック。
メンバーの別プロジェクトWORTHLESS LAMENTが今年日本のレーベルから1stをリリースした事も記憶に新しいバンドですね。


HATE PROFILE - Opus II: The Soul Proceeds ★★★ (2014-09-06 17:14:04)

2013年発表の2nd。
BLACK FLAME、DEAD TO THIS WORLD、JANVSの現メンバーでSLAVIAやDISIPLINにも在籍した経験を持つ、M:A Fog氏がドラマーとして加入してからは初のフルアルバム。

北欧ブラックに通じる暗黒性を感じさせつつも、ギラついた不穏さを漂わせるリフ、凶悪に歪みつつも切れ味鋭くがなるヴォーカル、音のクリアさが楽曲の冷徹なムードを強調するプロダクションなど、近年のSATYRICONを思わせるハイクオリティなブラック。SATYRICONはロックのリズムを取り込む事で新たなファンベースを獲得しましたが、こちらはブラストも多用する、よりダイレクトな攻撃性に重きを置いた音なのが大きな違いですね。

SATYRICONは「Rebel Extravaganza」で極端なスピードと無機質な感触で近未来的な世界観を演出、続く「Volcano」でダイナミックでキャッチーな方向へと変化していきましたが、この作品は正にその間にあるミッシング・リンクとなるような作風だと思います。案外、冷徹さと攻撃性のバランスの取れた、これくらいの按配が一番丁度良いというリスナーも多いのではないでしょうか。似た雰囲気を持つバンドとしてよくKHOLDも挙げられますが、個人的にはヴォーカルに憎々しさが篭もってる分、こちらの方が好みですね。

SATYRICONは最新作ではアナログな録音方法を試すなど、一般的なエクストリームメタル・ブラックメタルには無いこだわりも見せていましたが、こちらはエクストリームメタル本来の暴虐さが重視されているので、こっちをより気に入る人も少なくないのではと思います。クオリティも高いですし、まずは聴いてみて欲しいところ。


MYRD - Forbandet Fra Foedsel (2014-09-06 17:05:57)

2011年発表の2nd。

これ、CDショップから帰ってきて、戦果を確認がてらスピーカーで流し聴きしていた時は駄目だと思いました…なにぶん音が小さすぎて…。小さい音の作品アレルギーな私にはキツい作品なんですが、聴き返してみると存外に味が出てくるアルバムであるように思います。

ヴォーカルがMAKE A CHANGE…KILL YOURSELFやNOCTURNAL DEPRESSIONに関わっていた事からも予想される通り、鬱っ気の強い、Rawでミッドテンポ中心の、オールドスクールなブラック。ヴォーカルのやたら潰れた声質、小さな篭もった音のバンドサウンドといいやたら閉塞感の強い音。カビでも生えてきそうな薄暗さ。良く聴くと、アンビエント要素を強める前のBURZUMに影響を受けてると見受けられる箇所がある辺り、味があって良いんですよね。

…とは言っても、やっぱり音が小さいのは私としてはマイナスですね…。それを覆すほど派手なウリがあるという訳でもなく、基本的に地味めな音ですし。現時点ではマニア向けかもしれません。


NUMENOR - Colossal Darkness ★★ (2014-09-05 00:45:59)

2013年発表の1st。

シンフォニックなキーボードによる、ヴァイキングメタルにも通じるスケールの大きい華美なクサメロが、大仰なドラマ性を演出するエピックでメロディックなブラック。バンド名は指輪物語の中の五芒星の形をした島の名前から取ったらしく、ヴァイキングメタルそのものと比較すると、メロディは土着性よりもファンタジックな傾向が強い感じがします。

特筆すべきはそのファンタジックなメロディで、インスト明けの2曲目イントロのシンフォ具合から既に悶絶。そしてサビでクリーンに歌い上げられる、これまた大袈裟なメロディにまた悶絶。そもそも、この曲の「ジ・エターナル・チャンピオン」という曲名からしてクサいです(笑)。攻撃性もある程度備えており、暴虐な疾走と持ち前のクッサクサなメロディが絡む「Chronomancer」はアルバム随一の名曲。

ギターワークはどちらかというとメロデスに近く、リードフレーズやギターソロもキーボードに負けじとクサいです。ただ、ブラックとしてみるとリフに色気が足りない気がするんですよね…。特にキーボードが大仰なメロディを奏でたり、泣きのギターソロが入ったりしていないパートは、「なんでここでクサトレモロ来ないんだろう…」って感じで、結構不満も。

まあ、そう感じるのは私がトレモロリフフェチだからで、基本的には音もクリアですし、聴きやすい音かと。ファンタジックでクサいメロディが好きで、メロデスも行けるシンフォニック・ブラックファンであれば是非。


中山七里 - アポロンの嘲笑 (2014-09-05 00:44:06)

つい先日発売された新刊。
…彼の作品は新刊が出るたびに買ってるんですが、今まで、一度として面白くないと思った事は無かったんですよね…ですが今回初めて、「イマイチ」だと思ったかもしれません…。ハードカバー新刊で買ったんだし、ちょっとくらい批判してもいいですよね…。

まず今作、プロット自体が正直面白くないです。
原発作業員の同僚を刺殺し移送中に逃走、ある目的を持って原発を目指す邦彦と、それを追う刑事の仁科の二つの視点で物語が進行していく訳ですが…邦彦が原発に辿り着くまでの間に様々なトラブルに巻き込まれたり、人生を回想したりする展開が本編の8割を占める構成は正直どうなんでしょう…。読んでも読んでも原発を目指して移動してるだけで、ストーリーの停滞感が半端ないです。一応、刑事視点で事件の真相を追う部分もありはしますけど…。

今作は3.11直後の福島を題材にしているだけあって、原発作業員の苦境を描写したり、国や東京電力の対応の拙さを批判するような箇所もかなり多いんですが…エンターテイメント小説としては筆者の主張が、それも怒りを感じるような主張が前に出すぎてしまっていて、読んでて若干苦しい。安生正氏の「生存者ゼロ」を読んだ時にも思ったけど、政府の拙い対応振りを客観的に描くのは良いんですけど、地の文にそれに対する罵倒を書かれると、こっちとしては醒めるんですよね。

作者の主張を伝えたいがために書かれた、バリバリに社会派な小説ならまあ許されると思うんですけど、この作品は野犬や警官と格闘するアクションシーンがあったり、スケールの大きな真相があったりとエンタメな色も依然として濃くて、どうも食い合わせが悪い感じ。邦彦の悲惨な境遇を描いた回想パートの苦々しさもあり、正直読んでいて辛いものがありました。

と言っても、やはり一番の問題はストーリーの停滞感ですかね…。この人の作風なら、堤剛志やら公安部やらをもっと派手に動かして、ドラマティックにしてくれた方が良かったと思うんですけどね。彼の作品にしては珍しく、読者に驚きを与えるような「どんでん返し」もないですし。「エンターテイメントを書きたい」のか、「原発事故を批判したい」のかハッキリして欲しい。「エンターテイメントを通じて伝えたい」なら、その目論見は上手くいってないと思います。明らかにエンタメとしての質が他作より落ちてると思うので。

なんか色々口汚く書きましたけど、こういう事を書きたくなるくらい、彼の作品には期待してるんですよ…。そして今までその期待が裏切られたことは無かったんですよね。なので今作には結構がっかり。彼は東野圭吾さんに匹敵する作家になりうると思いますけど、東野さんの「天空の蜂」と比べると、エンタメ性と批評性を両立させる力はまだ及んでいないと言わざるを得ないかと。


NIGHT OF THE WORLD - Drive the Knife Deeper ★★★ (2014-09-04 19:10:37)

2013年発表の1st。

これは凄まじくかっこいいですね。現DECAPITATEDのドラマーで、MELECHESHのライブメンバーも務めたという、若くしてひとかどのキャリアの持ち主であるML氏や、FURIAやMASSEMORDなどポーランドでも知名度の高いブラックにも所属するNTR氏らによるファストブラックという事で、当然クオリティの高さが期待されますが…それを満たした上で、更に期待以上のものを聴かせてくれてると思います。

この作品、他のファストブラックと比べても、「キレの良さ」が段違いなんですよね。完全に元の声が分からないほどエグく歪ませつつ、歯切れ良いリズムで言葉を吐き出すヴォーカル、単に速かったり、暴虐だったりだけではない、テンションの高さを感じさせるドラム、スラッシュ由来の切れ味やダイナミズムをたっぷり含んだリフが上手く噛み合い、聴いていて血が沸き立つようなブチキレたファストブラックとして完成してます。

それこそCADAVER. INCや、同郷のバンドならINFERNAL WAR辺りを引き合いに出さないと並ばないくらい、ハイテンションでキレの良いファストブラック。このバンドは更に、トレモロリフにブラックらしい寒々しさや不穏さを込めてくれるので、メロディ面も決して手薄でないというのも良いですね。音質もクリアで、バンドサウンドの暴虐性を余すことなく伝えてくれますし、とにかく激しい音楽が好きであれば聴いておいて損はないと思います。ほんと素晴らしいです!


THE TRUE ENDLESS - Legacy of Hate ★★★ (2014-09-03 23:41:39)

2013年発表の6th。

一言で言うなら、「攻撃性」にパラメーターを極振りしつつ、クオリティの高さも備えたブラック。メロディを主張するよりもエクストリームメタル本来の苛烈さを叩き込むような攻撃的なリフ、蹴散らすような音色のバスドラムが心地良い、グルーブも感じさせつつ暴虐極まりないドラミング、ゴリゴリでえぐい音のベースが絡み、大地を焦土に変えるかの如き猛烈なテンションの高さで蹂躙していく作風。

潰れた声で憎しみを込めるようにがなるヴォーカル、バンドサウンドの暴虐を余すことなく伝えるクリアな音質もあり、ブラックとしては攻撃性がかなりダイレクトに表われている感じですね。ただし、攻撃性「極振り」で、「全振り」な音ではないのがミソでしょうか。リフはメロブラと比べるとかなり辛口なものの、一部にギターソロや管楽器、クリーンヴォーカルなどが取り入れられており、楽曲ごとに個性を出しつつ、メロディ面も決して弱いとは言えないのが良いですね。

前身バンド時代も含めれば約17年のキャリアがあり、フルアルバムだけでも6枚出しているベテランだけあって、暴虐ながら衝動性だけでは片付けられない完成度の高さもある一枚。攻撃的な音が好きであれば買って損はないでしょう。


THORNS OF BEAUTY - The Libra ★★★ (2014-09-02 22:17:38)

2011年発表の1st。
シンフォニックブラックをベースにインダストリアル要素も取り入れているという、国産バンドとしては珍しい作風のバンドですね。個人的な印象としては、良い所とそうでない所がはっきりしているアルバム、という感じですね。

まず特筆したいのは、どこか高貴さと自己陶酔感を感じさせるような、マイルドなクリーンヴォーカルですね。完全にEMPEROR期のIhsahnのスタイルに影響を受けている、声楽的で張りのある歌唱。マイルドなクリーンを取り入れるバンド自体は少なくないですけど、これくらい陶酔的で張りのある声は結構レアだと思う。このノーブルなクリーンボイスだけでも買う価値あり。時々おっさんめいたイガラっぽいダミ声でメロディ追うのは、まあご愛嬌で(笑)。

そしてシンフォニック・ブラックの生命線であるメロディのセンス、これがまた素晴らしい。こちらもIhsahnの影響を非常に強く感じられるんですが、ゴシックな美意識の感じられる、破滅的で美しい、クラシカルなメロディはEMPERORよりもPECCATUMのそれに近いと思う。曲の端々で取り入れられた、インダストリアルな意匠がメロディの美しく破滅的なムードを更に強調。聴いていてうっとり出来ます。

逆に悪い所は、インダストリアル要素を取り入れているせいか、バンドサウンドが硬質というか、いまひとつブラックメタルらしい色気を感じられない事でしょうか。リードギターが相当にメロディアスなのは良いんですけど、ブラックに求められるような寒々しさが感じられない、色気の無いギターリフはもう少しどうにかして欲しかったです。ここが良ければ文句なく絶賛なんですけどね…。

ただ、クリーンヴォーカルの声の作り方と、抜群なメロディのセンスが余りにも素晴らしいので、それを差し引いても☆3つを付けざるを得ません。邪悪というよりは、独自の美意識に満ちた世界観も、なかなか良いものがありますよ。


NAHAR - The Strange Inconvenience ★★★ (2014-09-01 03:30:19)

2013年発表の2nd。

前作では基本的にプリミティブブラックの形式を取りつつも、サイケデリックなアプローチを見せていましたが、今作ではスラッジ/ドゥーム方面に大きく接近、更にサイケで暗黒な路線へと舵を切ってきましたね…。暗黒なエナジーで塗り潰すような引き摺り系のリフと、やたら真に迫ったがなりヴォーカルが、純度の高い闇を生み出していくようなサウンドで、作風を変えつつも更に暗黒度を高めてきたという印象。

スローテンポが中心で、最早スラッジ要素がブラック要素より色濃いくらいの音ですが、ギターリフには元フレンチプリブラらしい色気のようなものがあるのが良いですね。神経が引き攣るようなフレーズ、どす黒い靄で包み込むようなフレーズなど、ノイジーな引き摺り系リフをベースにしつつしっかり変化を付けられている感じ。所々で聴ける、強烈なサイケデリックさを発散する、幻惑的なアルペジオも聴き所。

正直この作品はNAHEMAHメンバー関連バンドというイメージからプリブラを期待すると肩透かしもいいところですが、純粋に暗黒メタルとしてはかなり良い出来だと思います。所属レーベルのAvantgarde MusicはNORTT、ASOFY、THAWなど、ドゥーミーで暗黒な優れたブラックメタル作品を多数リリースしてますが、そのカタログにまたレーベルのネームバリューを高めるような、良質な一枚が加わったと言えるでしょう。


PEST (SWEDEN) - The Crowning Hprror ★★★ (2014-08-30 19:42:46)

2013年発表の4th。
これ、何気に凄くセンスの良い作品なんじゃないでしょうか。

路線としては、オールドスクールなプリミティブブラックを更に先祖返りさせたような感じで、ブラックとしては飛び道具とも言える正統派なヘヴィメタル/ハードロック要素を取り入れた音。クリーンなど取り入れることは無く、いかつくドスの効いたがなりをカマす硬派なヴォーカル、スウェディッシュらしい叙情を感じさせつつ、ホラーな色合いも濃いメロディセンスなど、暗黒メタルとしての妥協を許すことは無く、変に温くなったりすることなくHM/HR由来の熱気を取り入れられているのが素晴らしいと思う。

元々アングラなブラックって、曲を構成するパーツが限定されるだけに楽曲が似通ったものになりがちですが、その点この作品は上手く回避出来てますよね。如何にもプリミティブブラック然とした、寒々しいトレモロを伴う疾走に熱いリードギターを合わせてみたりだとか、メロデスにも通じるメロディックなリフを取り入れてみたりだとか、カルトブラックとしては意外すぎるレイドバックしたリズムがあったりとか、楽曲ごとにアイデアが込められていて聴いていて飽きないです。これら要素が邪悪さをスポイルしていないのがセンスの高さを感じさせますね。

プリミティブブラックの大家とも言える存在のDARKTHRONEも正統派メタルに回帰するような作品を出してましたが、そういう路線が好みであればかなりお勧め。DARKTHRONEが激萎え要素である「微妙クリーン」を取り入れてしまったので、個人的にはそれが無いこのバンドの方に共感を覚えますね。


GREY WATERS - Below the Ever Setting Sun ★★ (2014-08-26 23:23:22)

2010年発表の5曲入りEP。

WOODS OF DESOLATION、AUSTERE、GERMなど、鬱ブラック好きには知名度の高いバンドの関連メンバーによるプロジェクトですが、こちらはブラックメタル的な要素は殆どなく、メランコリックなメロディを大フィーチャーした鬱っ気のあるロックで、ヴォーカルもマイルドなクリーン。一般的なロックよりやや強めな歪みのギターと、そこに込められた哀愁深いメロディが鬱ブラックの出自を感じさせます。

流石に鬱ブラックで名を馳せたメンバーがやっているだけあって、ムードの醸し出し方のセンスは一級品。個人的にはOPETHの「Damnation」やGREEN CARNATIONの「The Acoustic Verses」アルバムの雰囲気を、ディストーション強めなギターによるアプローチでやっているような印象。ただこの2作に比べると、雰囲気の演出力は肉薄しているものの、ヴォーカルが若干喉締め気味なのがちょっと惜しいんですよね…。Mikaelくらいクリーンに人を酔わす力があると尚良かった。

EPを一枚出したのみで活動を停止した、短命に終わったプロジェクトですが、個人的にはこの路線かなり良いと思うんですよね…。雰囲気自体は関連バンドのGERMなんか近いものを持ってますけど、こちらはよりメタル離れし、メランコリーに特化した作風という感じなので、活動を停止してしまったのが惜しいです。


OIZYS - Hymns to the Furies ★★ (2014-08-23 23:02:05)

2010年発表の1st。

オーストリアの女性ブラックメタラー、Witch氏による独りブラック。今でこそ女性のブラックメタラーも珍しくないですけど、流石にこういう独りブラックは珍しいですよね。ブックレットの裏の猫の写真は彼女の飼い猫でしょうか。かなり可愛いです(笑)。…その下にトレンドへの反感を露わにした声明文を載せても、逆効果な気がしてしまいますが(苦笑)。

ブックレットの猫は可愛いですけど、やってる音楽は可愛さの欠片もない邪悪なブラック。ギターの残響音が渦巻き不気味な霊場を形成しつつ、霊性が垂れ流されるようなメロディと老婆魔女の囁きのようなヴォーカルが不気味さを更に増幅させる、オカルトめいた雰囲気漂う音。一応バンドサウンドの体ではありますが、感覚としてはアンビエント系のブラックに近い印象で、このカルトな音像の中にあっては鳴りの悪い、打ち込みっぽいドラムの音もむしろ味と言えるでしょう。

…プリミティブブラックや鬱ブラックって、一般的なメタルの価値観からはかなり離れたところに魅力があるジャンルと言えますが、この作品は更に一般メタルから遠ざかった価値観で作られているという感じがします。ブルータリティやテクニックを求めるのは全くお門違いな音ですが、オカルトめいた雰囲気を味わうにはかなり良い作品ではないでしょうか。


VOLUNTARIA - Solitary Songs ★★ (2014-08-23 22:58:30)

2010年に発表されたデモ「Solitary Songs to Leave This World Behind」を、改題してCD化再発したもの。リリースは鬱ブラックの名産レーベルSelf Mutilation Servicesから。このCD版も500枚限定。

鬱ブラックって、感情を込めて絶叫するヴォーカル、トレモロや平坦系、アルペジオなどによる鬱屈したメロディ、陰鬱さを強調する遅いテンポ…と、ほぼ形式が固定化されてるジャンルだと思うんですよね。その中で個性を出そうとすると、それらの要素を深く追求するか、もしくはそれらを踏まえつつ異なる音楽的要素を加えるかに分かれる印象ですが、このバンドは前者のパターンですね。

特にヴォーカルは、途中嗚咽しているように聞こえるほど感情を込めた叫びでありながらも、変に声が細くないのが良いですね。少なくとも、滑稽に聞こえないレベルで真に迫っていると思う。メロディも誰が聴いても陰鬱さを感じるような暗さに満ちており、鬱ブラックとしては及第点かと。作風自体は王道に忠実で、テンポを上げてオールドスクールに聴かせるパート、一部でのSEやキーボードの導入などもテンプレの範囲内と言った感じですね。

ただまあ、良質ではあるものの、テンプレを大きく超えるほど突出した魅力があるかというと微妙ですね…。鬱ブラックというジャンル自体が好きであれば、間違いなく共感を覚える音ではあるんですが…。個人的には、この手ならNARGAROTHの「Regens~」アルバムくらい、メロディが派手に鬱ってくれればもっと好みなんですけど。


東野圭吾 - マスカレード・イブ ★★★ (2014-08-23 22:55:03)

一昨日(2014/8/21)に発売された新刊。
発売日に買って速攻で読みました.

先日文庫にもなった「マスカレード・ホテル」の主人公であるホテルクラークの山岸尚美と、刑事の新田浩介が主役の短編を4本収録した、オムニバス形式の作品。タイトル作品は主人公二人の直接の絡みこそないものの、二つの視点で事件を見る形でなかなかにスリリング。前作の内容に直接繋がるのはエピローグくらいなので、先にこっちを読むのもそれはそれでアリかも。

…やっぱり東野圭吾さんの作品って、安定して面白いですよね。特に今作は短編集という事もあって、長編よりも語り口が軽妙で、それがエンターテイメント性をより強めてますね。「それぞれの仮面」における主人公と相談者のボケと突っ込み的なやりとり(山岸「(私は藁かよ)」)といい、「マスカレード・イブ」の狼狽しまくる容疑者といい、長編時にはあまりみられない、コミカルな描写が楽しいです。

今回はそういう作風もあってか、登場人物もやたらキャラが立ってますよね。ヤクザ顔負けの強面警官の本宮とか、悪を懲らしめるヒロインに憧れて警官になった穂積とかは漫画にしても良いキャラになりそう。また両主人公にしても、前作よりも若いせいもあり、仕事上で壁にぶつかったりしているんですが、その様がまた新しい魅力を引き出しているんですよね。

ほんと、読んでて単純に楽しい小説だと思います。買ってきて読み始めて、そのままエピローグまで休まず読んでしまいましたもん(笑)。この読者を掴んで話さないリーダビリティこそ、エンターテイメントなのではないでしょうか。


中山七里 - さよならドビュッシー ★★★ (2014-08-22 23:50:24)

2010年にハードカバー、翌年に文庫版で発売されたミステリー小説。

中山七里さんの作品はどれも素晴らしいんですが、漫画や映画にもなっているこの作品が一番有名でしょうか。彼の作品ってどれも読者を楽しませることを第一義に置いているかのような、エンターテイメント精神に溢れている事が特徴だと思うんですが、この作品は最も有名にして、最も良くその特徴が表われた本だと思います。

まず第一に特筆したいのは、漫画やライトノベル並に登場人物が「キャラ立ち」していること。大きな壁を乗り越えていく様が胸を打つ主人公を始め、万能に見えて、実はある苦悩を背負っている岬洋介、スピンオフ作品では主人公も張るカミナリ爺さん香月玄太郎、これはどう見てもツンデレな医師の新条など、キャラが良い意味で漫画っぽい。変にリアルに人を描く事でキャラが凡庸になるよりも、思い切った性格付けをしてる辺り、若い作家なのかと思いましたが、実は文壇デビューは48歳のときなのだとか。この瑞々しいエンタメ性と、若い作家にはない小説などを長く読み続けてきた経験が合わされば正に鬼に金棒というやつですね。

そしてストーリーも素晴らしい。なにが素晴らしいかって、この作家の作品の多くは話の中である「どんでん返し」がある事も特徴として挙げられますが、この作品はその「どんでん返し」の内容が、(ネタバレになるので書けませんが)一言で説明できるほどシンプルで分かりやすいことですね。勘の良い人なら読んでる途中で気付きそうですけど、もし気付いたとしてもそこに至るまでのサスペンスなどで十分楽しめます。また、ストーリーにおいて音楽が重要な位置を占めるんですが、その描写と、その描写を通じてのキャラの「凄さ」の描き方が、また良いんですよね。読んでると岬洋介は超人に思えてくるし、何やら凄まじい演奏が繰り広げられている気になってきますもん。ハッタリの利かせ方も随一だと思う。

私はこの人、東野圭吾さんと同じくらい、エンターテイメント作家として優れた人だと思うんですよね。この作品は後にシリーズキャラクターになる登場人物も多いですし、彼の作品の入門編としても良いんじゃないでしょうか。