基本的には「Subliminal Genocide」同様、アンビエンス志向の強い音なんですが、ギターのディストーションだったり、アルペジオの残響だったりに「弛み」のような物が感じられ、それが低く垂れ込める黒雲を思わせ、更に絶望的な音になってるんですよね。キーボードの使用頻度の増加、更なるヴォーカルの後退、バンドサウンドに溶け込み、かつ恐怖感を増加させるようなSEの導入などもあり、アンビエンス面では「Subliminal Genocide」よりも確実に一歩前進したという印象。「弛み」のある音に関しては、アヴァンギャルド志向が強いときのBLUT AUS NORDに近しいものも感じられます。
同じブラック/スラッシュでも、北欧のAURA NOIRやAUDIOPAIN辺りとは全くベクトルの異なる音。ダーティさを志向する向こうに対し、こっちはよりブルータルさを追求した作風ですね。エクストリームメタル好きならこの暴虐性は是非体験して欲しいところ。特にBEHEMOTHやAXIS OF ADVANCEなどが好きな方にお勧め。
1994年に発表された音源をリミックスした「Ned i Stillheten」に、SHININGのKvarforthとXASTHURのMaleficという豪華ゲストを呼んで制作された新曲「Solve et Coagula」を加え、2009年にKyrck Productionsよりリリースされた音源集。
まず1曲目は、新曲の「Solve et Coagula」ですが…鬱系にも通じるスローテンポを中心とした作風ながら、ところどころシンフォ要素を上手く挟んだ展開で、他に似たバンドを挙げづらいオリジナリティある音楽性。上品なはずのシンフォ要素が、恐く聴こえる辺り、感性が根底からブラックなんだろうな~と思います。SEの使い方も、LIFELOVER辺りに通じる不条理な恐さを感じられますし。
94年の音源において、SEや打ち込み、低音質を上手く利用し、倦怠の中で徐々に終末に向かっているような雰囲気を演出しているのを聴くと、彼らがその雰囲気を更に強めるためにジャズやエレクトロニカを取り入れたのは必然だったと思わざるを得ません。 そしてそれが実を結んだのが、ブラックの裏名盤「How the World Came to End」ではないでしょうか。
この曲もシンフォニックブラックメタル風。 3曲目と比べると、更にヴォーカルがDani Filth化してますね。特に「Cruelty and the Beast」期のDaniと声のひしゃげさせ方が大分似てると思う。でもサビメロはABIGAIL WILLIAMSやSIRIUS並みの派手さで聴かせて欲しかったなぁ。元々派手なメロですし。
モチーフはSLAYERの「Angel of Death」。 確かに、この速さはメロスピの疾走よりスラッシュの爆走に近いのかも。しかし、そこに乗るのはメロスピよりクサいシンセメロ。…DRAGONFORCEの音楽性を「まるで早送りしたよう」と表現されてる方がいましたが、この曲の「早送り感」はDRAGONFORCEでは相手にならない程強い。聴いててめっちゃ気持ち良いです。
しかし、この作品、ブックレットに「Enter the Realm of Cold Misanthropic Majesty」と書いてあって、実際その通りの音を出してるんですが、ブックレットのサンクスリスト的な部分にはドイツの有名バンドを始め、かなり沢山のバンド名が…。ほんとに人間嫌い(Misanthropic)なの(笑)?仲間いっぱいいるじゃん(笑)。
DISK UNIONにて掘り出し物として紹介されてて、興味を持って調べてみたら、サンフランシスコ出身のプログレデスメタルバンドで、WEAKLINGのメンバーが在籍し、更に所属レーベルがKRALLICEやCOBALTを輩出したProfound Loreという事が判明。そりゃ財布の紐も緩みますよね(笑)。
アルバムのラストを飾る曲ですが、Leo Figaro、Cafe Au Lait両氏の才能のぶつかり合いという面ではこの曲が一番ではないでしょうか。ギターリフも文句の付けられないかっこよさだし、キーも歌も最高にクサいし素晴らしい! …ほんと、頭から尻尾までバンドの魅力がぎっしり詰まってるアルバムですよね。収録時間はミニアルバム並ですが、並みのアーティストのフルアルバムなんか比較にならない程充実した内容の作品だと思います。
この曲は歌い方もメロディも、クサいだけじゃなく上品さや高貴さといったものが感じられる気がします。特に「♪I cry I try I fight to」部分の上品っぷりには聴くたびに悶えまくってます(笑)。リフの音は少し薄めですが、ゴリゴリの音にするよりこういう音色の方がフレーズのかっこよさが良く分かっていいですね。
前作と比べるとギターが聴きやすい音質になったんですが、そのお陰でバンドサウンド全体で表現する「妖気のうねり」のようなものが、よりリアルに感じられるようになった気がします。SATYRICONは、「Now, Diabolical」から「The Age of Nero」でキャッチネスを少し抑え、よりムードを重視した作風になったと思うんですが、その傾向を更に強めていくと、CODEの作風に近付くのかもしれません。摩擦リフと合わさってうねりを生むベース、情景に合わせて巧みに変化するドラミングなどアンサンブル全体からして素晴らしいんですが、Kvohstのヴォーカルもほんと良いですね。