でも、頭をクリアにしてもう一度聴いてみると、これはこれで良いと思えるように。 後半多用されるトレモロは相変わらずメロウだし、音が太く(ふてぶてしく?)なった事で邪悪さはむしろアップしていると思うし、CRAFTにも通じるリフの歪め方に拘った音作りやWATAIN、SECRETS OF THE MOON辺りに通じる低音質に頼らないどす黒い禍々しさなど、今までに無かった魅力も備わってきているように思います。
基本的にはオーソドックスなプリミティブブラックという感じなんですが、スローパートにちょっとFreezing Moonを髣髴とさせる部分があったり、Funeral FogやBuried by Time and Dustを意識しているのでは…と思わせるリフが出てきたり、全体を通してEuronymousの時代のMAYHEMの息吹が感じられるのが大きな特徴ですね。時折見せるオールドスクールな部分も、Dead在籍時のMAYHEMに近い雰囲気がありますし。
選曲は…「Pentagram」「Ad Majorem~」からは選ばれてませんが、名盤「Under the Sign of Hell」から3曲も選ばれている上、海賊ヴォーカルが聴ける「Profetens Apenbaring」が入ってるのが個人的にはツボ。Gaahlの威厳と悪意のある声でこんな威風堂々とした歌唱を聴かされて、惚れるなっていう方が間違ってます(笑)。ただ、収録時間は31分と短め。まあGORGOROTHの作品は大体これ位のランタイムが基本っぽいですが。
また、もう一つの大きな特徴としてはSEの多用が挙げられると思います。LADY OF THE EVENING FACEというアーティストが作っているようですが、ドローンやサンプリング等を駆使した音は、それだけ抜き出して拡大しても面白いものが出来そう。バンドの音と比べて音量が大きく、うるさく感じる所があるのは少し不満ですが、単なるサウンド・エフェクトに留まらないこだわりが感じられます。わざわざ「本編とインタールードにはキーボードは使われていない」と注意書きしているほどですし。
フューチャリスティックでスピリチュアルな感じのキーボードメロ、近未来の意思伝達手段を音にするとこんな雰囲気なのでは…という感じがしますね。ヴォーカルラインもキレ良くかっこいい。カンフーシャウトと共に歌われる「Nothing is impossible / Nothing is unreachable」というフレーズ、受験とか就職試験とか壁を前にしたときに聞いたら、パワーが沸いてきそうかも。
「The quest is never-ending / But you keep on growing / Paradise is at hand」「You're born in, you're born with / But still searching for it / In your head is the Promised Land」 …なんてポジティブで、確信に満ちてて、エネルギーに満ちた歌詞なんでしょうか。しかもこのフレーズがいっしょに歌いたくなるほどキャッチーに発せられるという。基本ブラックメタルなのに、聴くと体の奥からパワーが湧き上がってくるような曲。