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山本弘 - プロジェクトぴあの ★★ (2014-08-22 23:48:27)

つい先日(今週の頭)発売されたSF小説。

同作者の「地球移動作戦」の前日譚に当たる話で、宇宙技術に革新をもたらした装置「ピアノ・ドライブ」の製作者である、結城ぴあのという人物の物語。ちなみに「地球~」のストーリーを踏まえていないと意味不明になる箇所とかは特にないので、そちらを読んでなくても問題なく楽しめます。新刊と繋がりがあるという事で「地球~」を同時購入した人は、むしろ先にこっちを読むのもアリかも。「地球~」の冒頭はある意味盛大な(そして公然の)ネタバレですし。

…実は私は、どうもガチのSF小説って苦手なんですよね。宇宙が舞台となるSFって、例えば宇宙船だとか宇宙ステーションだとかの描写だったり、宇宙の航行を可能にするための理論だったりに文章を割いてる事が多くて、ぶっちゃけ読んでて面倒臭くなっちゃう。映像ならともかく、小説ならもっとドラマ的なものが読みたいな…って感じで。その点、この作品は私でも楽しめるSFでした。そういうガジェットの描写も(大いに)あるんですが、基本的に結城ぴあのがどういう人物で、どのような人生を生きたか、という物語なので。

この作者は、例えば「アイの物語」「去年はいい年になるだろう」のアンドロイドの思考様式だったり、「神は沈黙せず」の超常現象の理由など、一般とは異なる価値観を提供したり、既存の価値観を引っ繰り返す事でセンス・オブ・ワンダーを提供するのが上手いという印象なんですが、この作品でもそれは存分に発揮されてますね。

特に「人間とは異質の考え方をする突然変異体」だと割り切って描かれたという「変なヒロイン」結城ぴあのの他キャラとの対話のシーンはかなり面白かったです。語り手である昴との会話における全く共感できない倫理観だとか、同期アイドルとのボケと突っ込みみたいな会話だとか。トーク番組出演時の「穴に入れるのが目的だ」は危うく吹き出しそうになりましたもん(笑)。あとラストの昴との絡みも好きですね。ああいう行為で心変わりする展開がどれだけ多いか、そしてどれだけ萎えるか…。そのお約束への萎え感情を作者は心底理解していて、アンチテーゼとしてああいうシーンを入れたんじゃないでしょうか。

この小説、作中で展開される理論が難解(東野圭吾氏の「超理系殺人事件」を思い出した)なんですけど、高校の物理や数学で躓いていた私にでも読めるような配慮が成されているのが良いですね。科学的説明の部分を読み飛ばしても支障なく楽しめるように書かれているというか、極端な話、「天才なヒロインが物理法則を覆すような発明をして技術革新を起こした」くらいの認識でも大丈夫な感じ。文章はむしろ読みやすく書かれてますし、理論的な部分が書かれてる事で、分からない人間にも「なんとなく凄そう」というのは伝わりますし(笑)。上手い事ハク付けになってると思う。

…と言っても、話が大きく動き、結城ぴあのが持っている「価値観」の描写が少なくなり、本格的にSF的になる後半部は(自分の好み的に)ちょっと辛い部分があるので、☆は2つ。それにしても、この作者の作品でアイドルを扱うと、毎回ヴァーチャルアイドルがリアルアイドルを駆逐する描写がある気がするなぁ…。そしてヴァーチャルのリアルへの優位性の描き方は毎回なんかズレてると思う。


BOTANIST - IV: Mandragora (2014-08-22 21:34:47)

2013年発表の4th。

ショップの紹介で、シューゲイザー/カスカディアン系のブラック好きにお勧めされていたのと、セールで安かったこと、「植物学者」というブラックとしては意外性のあるバンド名に惹かれ購入したんですが…なんか、バンド名以上に音楽性が奇妙で、人を選びまくる感じですね…ぶっちゃけて言うと、私は若干付いていけてないです(苦笑)。

最大の特徴はギターの代わりにダルシマーを使用したというリフの音作りで、これがシューゲイザー系の轟音やスラッジ系の引き摺りとも異なる、悠遠で迂遠な音色を奏でてます。それが妙にパーカッシブなチャカポコ言うドラムと絡み、まるでアジアの密教の儀式に立ち会っているかのような、宗教的なムードを醸し出してますね。…密教的な割に、暗黒っぽさや邪悪さがあまり重視されていないような雰囲気で、ひたすらに不条理さだけが膨れ上がっていくような感じ。

前衛的な音で、宗教的な音であっても、直接的な邪悪さを指向してない辺り、好みが分かれると思うんですよね。私は正直イマイチ好きになれないんですけど、ハマる人はそれこそこの音の中に深遠なものを見出すくらいにハマりそうです。


GEHENNA - Unravel ★★★ (2014-08-19 19:48:53)

2013年発表の7th。

前作では当初シンフォニック・ブラックとして評価が高かったバンドとは思えない、不穏な真性ブラック路線で、初期とは異なり、かつ初期並かそれ以上に魅力的な作風を提示してくれましたが、今作は前作で提示した「不穏な真性ブラック」という部分自体は変えることなく、また違った情景を見せる事に成功したアルバムだと思います。

前作はどす黒くダウナーなメロディを孕むリフと、Frostのテクニカルでキレの良いドラミングを生かしたクリアな音質で、戦争状態の重苦しく破滅的な雰囲気と攻撃性を両立させていましたが、今作はリフがどす黒さを残しつつ、よりノイジーかつ有機的なドロドロさを加味したものに変化し、音質も前作ほどドラムが前に出ず、ムードを重視する傾向が強まったように思います。

更に前作よりもミッドテンポによるおどろおどろしいパートが増えた事もあって、聴いていて黒魔術的なおぞましさを感じるような作品に仕上がったように思います。ストレートな攻撃性は若干減退しましたが、よりダイレクトにサタニズムを描いているような印象ですね。前作を聴いた時は、スタイルとしてかなり完成されているように感じたので、そこからどう発展させるか興味深かったんですが、「こう来たか」という感じです。

不穏で、邪悪で、ダウナーかつ、メタルとしての質も高いブラックメタル…音の傾向自体は前作と然程変わりませんが、音を通じて感じられる情景にはかなり違いがあるのが面白いです。戦火の中に黒い影が見えるような前作の作風を踏まえると、今作の中世の絵画風のジャケは意外に思えたんですが、音を聴いてみて納得。前作も印象に残る、素晴らしいアルバムでしたが、こちらも負けず劣らず良い作品だと思います。


CSEJTHE - Réminiscence ★★★ (2014-08-19 19:42:51)

2013年発表の2nd。

冒頭の、音が割れまくりのチャーチオルガンのSEで若干イヤな(?)予感が走りましたが、本編を聴いてその予感は的中。何なんだ、この暴力的な音像は!イヤフォンで聴くと、耳孔内に限界を超えた音の濁流をぶち込まれるかのような轟音。ULVERの3rdのような「耳に刺さる」系のノイジーさではなく、ノイジーながら「物量で攻めてくる」ような印象を受ける音。ノイジーなリフの音が膨らんで、常に割れる寸前になっているかのような感じ。

ただこの作品、他のポスト・シューゲイザーブラックと比較しても、トレモロによるメロディの美しさは群を抜いているように思うんですよね。バンド名にバソリー伯爵夫人の居城の名を冠している通り、中世の歴史をテーマにしているようですが、この悲壮感に溢れた美メロは見事にそれを体現してますね。一聴でリスナーを引き込めるだけの力のあるメロディを書けるセンスが、本当に素晴らしい。

最初は耳が破裂するような圧迫感を覚えた音質も、普段からRaw音質のブラックに親しんでいる聴き手であればすぐに馴染めてしまうだろうし、むしろこの美メロを引き立てていると思えばそんなに悪くないかもしれません。ディプレッシブ、ポスト・シューゲイザー系のブラックが好みで、ノイジーな音質が苦でなければ是非。かなり良いアルバムですよ。


SORGELDOM - Inner Receivings ★★ (2014-08-16 21:40:20)

2010年発表の2nd。

元はWHIRLINGのJododen氏による独りアコースティック・プロジェクトとしてスタートしたらしいですが、ここで聴けるのは北欧産らしい叙情的なトレモロリフを多用した、メロディアスでかつドラマティックなブラックメタル。中世的なメロディの使い方を始め、フレーズの端々にメロディック・ブラックの名盤であるSATYRICONの「Nemesis Divina」アルバムからの影響を感じ取れるのは気のせいでしょうか。

この作品がNemesis Divina」を始めとしたメロブラと異なるのは、ポストブラック的な側面もかなり強い事ですね。アルペジオにうっすらとトレモロの残響を重ね、美しくも現実から遊離したような感覚を味合わせるパートなんて、殆どシューゲイザー路線のブラックを聴いているかのよう。ただし、ブラック本来の凶悪さもしっかり根付いており、メロディック・ブラックの魅力をスポイルしてまでこれらの要素を取り入れている訳ではないのが嬉しい所。

メンバーが関与したバンドを見てみると、KAOS SCRAMENTUMやGRIFTTESKYMFNINGなどの如何にもな北欧ブラックの王道を行くようなバンドや、BERGRAVENやDE ARMA、WHIRLINGなどのポスト色強いバンドが並んでますが、これらの関連バンドから割と想像しやすい音なんじゃないかと思います。王道なブラックとポスト要素を上手く両立させた好盤。


Child of Light ★★★ (2014-08-16 21:35:55)

2014年にフランスのゲーム会社Ubisoftから発売されたRPG。
様々な機種で発売されており、現在のところPS3、4、VITA、XBOX 360、One、WiiU、Windows版がリリースされている模様。ちなみに本編のみなら価格は約1500円で、一般的なJRPGと比較するとややストーリーは短めなのを差し引いても、かなりリーズナブルな値段設定。私はVITAのDL版スペシャルパックを購入しました。

元は海外のゲームのローカライズと言う事ですが、このソフトを制作するにあたって日本のRPGやアニメ等をかなり参考にしたらしく、国産RPGとそう変わらない感覚で遊べるのが良いですね。絵本風のファンタジックなグラフィック、その情景に見事に調和したBGM、主人公のパートナーである、ホタルのイグニキュラスの「光」を利用した謎解き、タイムライン制を採用した戦闘など、RPGの王道をがっつり押えた上での工夫が成されており、下手な国産フルプライス作品よりもRPGとして全然出来が良いと思う。

特筆したいのは、探索パートにおけるアクションの楽しさですね。序盤を過ぎた辺りから空を飛べるようになるんですが、この飛行移動がアクション性が強くてかなり楽しい。棘の壁の間を上手くすり抜けたり、イグニキュラスの発光で敵を怯ませつつ、華麗にバックを取ったり…。ちなみにお金の概念はなく、パーティの強化はオキュライ(宝石)を合成しての装備と、スキルツリーでのポイント割り振りによるスキル獲得で行うんですが、こういう仕様にしたことでアクションや戦闘以外に割く時間が少なくて済むのも、個人的には歓迎したいですね。

ストーリーも変に演出がくどくてプレイヤーの操作不能時間が長かったりということがなく、全体的に「プレイしての楽しさ」が最重要視されている印象。敵の行動を阻害する事が重要になる、単なるごり押しでは勝てない戦闘システムも楽しいですし。ダメージを食らう度にいちいち王冠を落っことす主人公や、伸び上がって攻撃を躱すピエロなど、キャラクターの動きも可愛らしくて見てて飽きない。探索パートで敵の背後を取る楽しさもあって、ついつい雑魚には喧嘩を売りまくってしまいますね(笑)。

少し残念だったのは、原語が日本語でないため、所々で会話が不自然な所でしょうか。原語では押韻がされたり、上手いシャレが炸裂してるんだろうな…と脳内変換が必要な所が若干あったかも(特にルベラの言い間違い関連)。まあ、翻訳の不自然さが逆にファンタジー世界っぽさを出していて、「味」と捉えられなくもないですけど。あとは戦闘に参加できるメンバーが二人のみというのはちょっと寂しい気がするのと、課金アイテム(スペシャルパックには初期状態で付いてくる)は微妙なのが多いのが、少々不満だった点でしょうか。特に課金アイテム、ゴーレムを仲間に出来るものや主人公のカラーバリエーション、ステ上げアイテム集はともかく、オキュライ集はわざわざ課金してまで付けなくてもいい気が。プリンセスストーンとは言わないまでも、せめて上位のオニキスやダイヤモンドくらいは欲しかったかも。

近年、ワイルドアームズシリーズも続編の噂を聞きませんし、幻想水滸伝シリーズは凋落気味ですし、ゲーム業界にRPG分が足りないと思うんですよね(DRPG、SRPGは結構あるのに)。そんな中で、こういう長年続いているシリーズ物でない、良質でRPGの王道を踏まえている作品が出てくれるのはかなり歓迎したいところです。値段も安いですし、RPG好きであればお勧め。


IN MEMORIUM - From Misery... Comes Darkness ★★★ (2014-08-13 22:39:30)

2003年発表の1sr。

これ、凄まじいです。ちょっと検索して、あまりレビューがないことに驚きましたもん。…路線としては、刻みリフとトレモロリフを組み合わせてブリザードの如き寒々しさを演出する、DISSECTIONやNAGLFARの手法を踏まえつつ、キーボードを利用した中世的な雰囲気作り、スラッシュに先祖返りしたような凶悪で狂気的な疾走パートなどを盛り込んだ、ドラマティック極まりないメロディック・ブラック。

パートによってはそれこそDISSECTIONやNAGLFARよりもメロデスに近かったりしますが、メロディに込められたサタニックさ、音の分離はしっかりしつつ、若干ノイジーな生々しさを残したプロダクション、闘争本能剥き出しでがなるような凶悪なヴォーカルなど、メロデスのメタリックさとブラックの美学をバランスよく共存させている感じなんですよね。メロブラって、「これならDISSECTIONの1stとか、ジャンルのクラシックとされる名盤を聴いていた方が良いわ」と思ってしまうものも少なくないですけど、これはそう思わせないだけのクオリティが、間違いなく備わっている素晴らしいアルバムだと思います。

私としては中古で安かったので何気なく購入し、聴いて結構な衝撃を受けたんですけど、素性を調べてみたら既に解散してしまっているようですね…。それが心底惜しまれるような、良いアルバムだと思います。メロディックでドラマティックなブラックを求める方は是非。


SAN LA MUERTE - Lipreading of the Dead ★★ (2014-08-13 22:34:51)

2013年発表の6曲入りEP。

「聖なる死」を意味するバンド名、赤黒いアートワークからは何となくフレンチブラックのような、病んだ音を想像していましたが、全然違いました(笑)。オーストラリア産のバンドですが、出音は南米産のウォー・ブラックのようなダーティさの込められたオールドスクールなブラック。ズンズンと刻まれるリフはなかなかに圧迫感がありますね。

バンド名は南米のカルト宗教の名前でもあるらしいですが、由来通りのカルト性に満ちた音だと思います。低音で呻くようなヴォーカルを重ね、どこか洗脳的な雰囲気を醸し出したり、真っ黒い靄の立ちこめるようなドスの効いたRawさのあるプロダクションだったり、出音の全てが「おぞましさ」に直結しているような音。メロディも赤黒く、生贄の儀式に立ち会うようなグロテスクさ。

ダーティでおぞましい音ながら、メロディアスな部分でアクセントが付けられており、カルトなだけではない展開も見せてくれる作品。ややマニアックな印象を受けますが、オールドスクールなブラックが好きであれば。


HINSIDES - Universe Aspire in Mysticism (2014-08-13 22:32:36)

2010年発表の2nd。

…一言で言ってしまえば、プリミティブ(Raw)ブラックとアトモスフェリックブラックの良い所取りの作品ですね。プリミティブ系に通じる2ビートでのツタツタした疾走を中心に、緩急付けたドラマ性を持たせて展開する、如何にもなブラック。ヒリヒリした、刺々しいノイジーさを演出する音質が、リフの寒々しさをより強調しつつ、バンドの音にオブスキュアな感触を加味する作風。

ほんとに「如何にも」って感じの音なので、普段からブラックメタルをメインで聴いているリスナーに取っては、家に帰ってきたような落ち着きを感じるのではないでしょうか。ただ、ブラック好きには耳馴染みの良い音ながら、何か他のバンドと比べて突出したものがあるかどうかというと少し疑問も。刺々しい音は勢いも感じさせ、「やってやんよ」的な攻撃性の高さが感じられるのは良いんですけど。

という訳で、悪くはないけど個人的には後一歩という感じでしょうか。渋い作品も嫌いではないですが、やはり何か際立ったり尖ったりしている部分が欲しい所。


A HILL TO DIE UPON - Holy Despair ★★★ (2014-08-12 18:46:27)

2014年発表の3rd。

何となくバンド名がかっこよかったので興味を惹かれたんですが、これがかなりハイクオリティな作品で驚きました。簡潔に言えば、WATAINの骨太さや邪悪さ、KEEP OF KALESSINのメタリックさに加えて、中期BEHEMOTHの攻撃性を上手くミックスさせたようなメロディック・ブラック。例に挙げたバンドからも分かる通り、アングラ度はそこまで高くはないものの、ヘヴィメタルとしてもがっつり聴かせる質の高さのある音。

音作りそのものがそんな感じなのと、押韻をしっかり行い、印象的に聴かせるヴォーカルライン、ヴォーカル自体のドスの聴いたキレの良いデス声のせいもあって、ブラックとしては1曲1曲のキャラが立っていて、尚且つキャッチーに聞こえます。ブラック特有の甘美さ・邪悪さを伴うトレモロ、うっとりさせる美メロのリードなど、メロディセンスが良いのみならず、その楽曲への切り込ませ方も巧みで、曲自体のレベルもかなり高いと思う。

ただ、それぞれの曲に文学作品からの引用を付けたり、単なる宗教性だけでない文学性を演出しようとしているように思うんですが、それが音楽面では必ずしも良い方向に反映されているとは言いがたいのがネックかも。ミッドテンポ中心かつ女性ヴォーカルを取り入れたりなど実験要素の強い後半部は、高尚さを狙って却ってダレを生んでるような部分も。一枚通じて後半のような感じだったら多分☆は2個にしてたかと。

…とは言っても、それを差し引いても☆3つ付けたくなるような良い作品ではありますけどね。後半部も印象的なヴォーカルラインと、メロディアスな部分でのメロディはやはりかなり魅力的ですし。ともあれ、ハイクオリティなメロブラを探している人なら是非。


BLOOD RED FOG - Death Cult ★★ (2014-08-10 13:29:34)

2012年発表の編集盤。
同年に発売されたEP「Death Cult Ⅰ」「Death Cult Ⅱ」を纏めたもの。

一言で表すなら、ミッドテンポ中心のRawブラックをベースに、VED BUENS ENDE的なグロテスクなオーガニックさを一滴垂らしてより異形性を強めたような、独特のムードのあるブラックメタル。どこか頭のネジが飛んでるような、ダウナーな狂気を孕んだ声でがなるヴォーカルや、ファジーな音色のディストーションはかなり強烈なカルト性を感じさせますが、漏れ聴こえてくるギターのフレーズは意外にもメロディアス。

この作品の場合、そのメロディアスさが、全然聴きやすさとかマイルドな方向に作用していないのが良いんですよね。音の狂気をより濃くするような、ギラついた感触の強いメロディ。ギターリフの音色とも相俟って、どす黒い靄の中に大量のカミソリが隠れているかのような、悪意的なムードが演出されているように思います。ブラックとしてもかなり毒気の強い音。

ごく分かりやすい凶悪さがある訳ではないので、取っ付きやすいとはお世辞にも言いがたい路線ですが、徐々に凶器が伝染していくような閉塞的な恐怖感を感じさせる雰囲気作りはかなり良い感じだと思います。カルト志向のバンドが好みな方に。


LIK (LEKAMEN ILLUSIONEN KALLET) - Lekamen Illusionen Kallet ★★★ (2014-08-10 13:14:20)

2007年発表の3rd。

関連バンドに目を通してみると、ARMAGEDDAを始め、BERGRAVENやWHIRLINGなど、スウェーデンのオカルト系・スピリチュアル系なグロテスクなブラックを演ってるバンドが名を連ねている時点で、音楽性の方は「お察しください」って感じですね(笑)。このバンドも当然その流れを汲んでおり、地下で密やかに行われる、淫蕩で変態的な儀式をこっそり覗くかのような、妖しいムード満点のアヴァンギャルドブラックが展開されています。

路線としては、VED BUENS ENDE辺りが近いでしょうか。あのバンドの持つ有機的な薄気味悪さを殊更に強調したような、ミッドテンポ中心で妖気漂うメロディを聴かせる、ダウナーで如何わしい音。個人的には、その如何わしさをより強調するようなヴォーカルがなかなかにツボですね。デス声ではなく、マイルドなクリーンやウィスパーで聴かせるスタイルですが、クリーンは朗々としていて「良い声」なのに、この音と合わさるとなんだか変態的に聴こえてきます(笑)。紳士を通り越して変態紳士的というか(笑)。

この如何にも妖しげなムード、個人的にはかなりツボなんですよね。明らかに聴き手を選ぶ音というのは分かってるんですけど、それでもお勧めしたくなります(笑)。でも購入は自己責任で。


HERESIARCH SEMINARY - Dark Ages of Witchery ★★★ (2014-08-09 22:17:13)

2010年発表の1st。

SATANIC WARMASTERの名作「Carelian Satanist Madness」の頭2曲をカヴァーするという、偏愛っぷりに興味を持って購入しましたが、これがなかなか良質なプリミティブブラック。当然のようにSATANIC WARMASTERから強い影響を受けたようなメロウなプリブラで、SxWxの作品で例えるなら1stのプリブラとして分かりやすい衝動性と、3rdのドラマティック・メロディックさを上手く折衷させたような感じでしょうか。流石にインテンスさでは一歩譲るように思いますが、単なるフォロワーで片付けられない質の良さがあると思います。

ヴォーカルも(SxWxの)Werwolf氏を意識したような喚き声ですが、このヴォーカルは更に悲痛さ・壮絶さを感じさせるホイッスル気味の絶叫と、地の底から響くような低音でのタメなどを使い、単なる模倣でないスタイルを構築してるのが良いですね。個人的にはこっちのヴォーカルの方が好きかもしれません。ちなみに、SxWxのカヴァーは、「Vampiric Tyrant」ではキーボードを使用していないため、原曲よりドラマ性では一歩譲る感じがあるものの、音質の癖がオリジナルより少なめなこと、ヴォーカルのキレが良いこともあり、なかなか良い出来だと思います。ただ、この2曲がラストにある事で、「やっぱりSATANIC WARMASTERって良い曲作ってるよなぁ…」と思わされてしまうのは、正直どうなんでしょう(笑)。どうしても「フック」の面でまだ差があるように思ってしまうというか。

とは言っても、プリミティブブラックとしては超が付くほど良質。ちなみに音だけ聴くと如何にも国で言うとフィンランドとか、レーベルで言うとNorthern Heritage辺りを連想してしまいそうな感じですが、実はロシア産かつSelf Mutilation Services発という意外さ。ちょっとイメージと違いますけど、良質なブラックであることは間違いないので、北欧プリブラ好きであればお勧め。


PROGENIE TERRESTRE PURA - U.M.A. ★★★ (2014-08-09 12:08:06)

2013年発表の1st。

アンビエンスを重視したキーボードや、サイバー・インダストリアルな要素を取り入れ、近未来的な雰囲気を演出する、アヴァンギャルドなブラック。サイバー要素は味付け程度ではなく、時折バンドサウンドよりそちらがメインになる展開すらあるくらい、楽曲の芯にまで食い込んでいる感じですが、バンドサウンドも音質・フレーズ共にしっかり骨太に作られており、全く疎かになっていないのが良いですね。

この作品、あるレビューサイトにて、サイバー系なのにBURZUMが引き合いに出されていたのが、購入の最後の一押しになったんですが…実際に聴いてみて、割と納得出来る意見だと思いましたね。まずバンドの音と、アトモスフェリックな音色が交じり合い、聴き手を世界に惹き込んでいく導入部はBURZUM屈指の名盤「Hvis~」を髣髴とさせるし、演出している情景は全く違えど、アンビエンスとバンドサウンドを組み合わせて世界観を演出する手法は若干共通していると言えなくもないと思う。

更に敢えてハードルを挙げるような事を言ってしまえば、BURZUMのかの名盤と比較しても、バンドの演出しようとしている世界観に聴き手を惹き込んでいく力は、全く劣っていないようにすら思うんですよね。音作りがソリッドで、ブラストパートなんかはかなり迫力がありますが、その暴虐の中からふと見えてくるフューチャリスティックな情景にうっとりとなります。サイバー要素が前面に出ている時も、音作りが立体的で、説得力を持って世界観を演出できているのが素晴らしい。

レビューサイトではジャンルを表す単語として「サイビエント」という言葉が使われていましたが、正にそれをバンドサウンドと合わせた感じの音。私はこれ、「サイバーなブラック」が話題に上ったときに、真っ先に名が挙がるようになってもおかしくないくらいいい作品だと思います。お勧めです。


GEVURAH - Necheshirion ★★★ (2014-08-09 12:01:58)

2013年発表の5曲入りEP。
MALIGNのカヴァーが入ってる辺りかなり渋いです(笑)。

様々な暗黒メタルを扱いつつ、アトモスフェリックブラックやポストブラックの名産レーベルとしても名高い名門、Profound Loreからのリリースですが…ギターリフの、空間志向があるというか、バンドのアンサンブルの一つとして機能しながらも、周りの空気を蝕んでいくような感触は、如何にもこのレーベル発のバンドらしいと言えるかもしれません。ブラックの禍々しいトレモロが、より血腥く聴こえるようなどす黒い音色。

このバンドはレーベル名通りの「深遠さ」を、全力で邪悪方向に傾けているのが素晴らしいですよね。特にリフ、空間的でありながら、変に高尚な方向に行こうとしない、ひたすらに冒涜的であろうとする意志すら込められているかのよう。NED系のバンドを追っていた人なんかは、このリフだけでグッと来ると思う。野太くドスの効いたがなり声も、地獄から響いてくるようなおぞましさを感じさせてくれます。

ドス黒い系のブラックメタルを愛聴する人であればかなりお勧めの逸品。レーベルメイトで言えば、LEVIATHANを始め、AVICHIやCOBALT、PORTAL、THE HOWLING WIND辺りが好みの方なら、おそらく波長が合うのではないでしょうか。


CREPUSCULUM - Illuminatus ★★★ (2014-08-07 22:29:03)

2013年発表の2nd。

ポーランド産のバンドながらノルウェー産のバンドに通じるような土着性と、寒々しいメロウさを込めたトレモロ、スラッシーな疾走を中心としつつ、緩急付けてドラマティックに聴かせる構成、ブラックとしてはクリアなプロダクション…と、かなりハイクオリティなメロディック・ブラックで、個人的にはメタリックなかっこよさにブラックらしい土着的な邪悪さと凶悪さが上乗せされた感じから、近年のノルウェーのRAGNAROK辺りに近い印象を受ける作品。

初期MAYHEMの邪悪さと、DARK FUNERALの凍てつくメロウさの中間を行くようなメロディセンス、時におぞましさすら感じさせるヴォーカルのがなりなど、ブラックとしてのカルト性を演出しつつも、抜けの良い乾いたドラム、刻みリフもしっかり魅力的に聴かせる厚みのあるリフなど、音作りはしっかりとメタルの魅力が息づいている感じで、かなりバランス感覚は良いと思う。敢えて粗を探すとすれば、トレモロや疾走を用いない、ミッドテンポで威風を感じさせるべきパートでの凄みが、若干足りない気がするくらいでしょうか。少なくとも良盤以上の出来だと思います。

これ、ぶっちゃけ裏ジャケのレイアウトが物凄くそれっぽかったので衝動買いしてしまったんですが、思った以上に良いアルバムで満足。やっぱりパッケージが醸し出す雰囲気って重要ですよね。手に取りたくさせるのも大事かも。


VENEROR - Percussimus Foedus cum Morte ★★★ (2014-08-07 22:22:44)

2013年発表の1st。

これは不思議な雰囲気のある作品ですね。
使っているパーツ自体は、メロディアスに楽曲を彩るトレモロリフ、ブラストビートを多用した苛烈極まりないリズム構成、歪み切ったがなりヴォーカルと、どこを切り取ってもブラックメタルでしかない…という感じで、トレモロのメロディが前面に出ており、ブラックとしてはメロウで聴きやすい路線の作風ですが…。

個人的にはこのアルバム、邪悪さよりも神秘性というか、語弊を恐れずに言えば「神聖さ」のようなものを感じるんですよね。メロディに他のブラックで聴かれるようなおどろおどろしさが希薄で、アトモスフェリックな感覚が強いからかもしれません。しかしアンビエント志向を持たず、時折DISSECTIONリスペクトと思しきパートすらある、バンド感の強い音というのがまた興味深いです。

おどろおどろしくはないけど、オカルティックな深遠さは感じられるという、ちょっと変わった雰囲気を持つ作品。クオリティも高いと思いますし、何より個性的なのが良いですね。


宮部みゆき - 長い長い殺人 ★★★ (2014-08-07 22:18:33)

1989年から1992年に渡り小説誌で連載され、文庫化されたミステリー小説。感想を書こうと思って検索してみたら、意外にも昔の小説なんですね。でも今読んでも古さを感じさせない面白さがあります。

内容は、端的に言えばある保険金殺人を、何人かの関連人物の財布を擬人化し、その視点で見た、オムニバス形式のミステリー。一見奇を衒ったような試みですが、これがストーリーの面白さを演出するのに非常に効果を発揮してるんですよね。財布の持ち主と事件との距離感も様々なら、持ち主と財布の距離感も様々。その10者10様の視点の違いが、読んでいて飽きさせない楽しさに繋がっているように思います。

また、10話+エピローグという構成で全体の大きな話を語る流れになっているんですが、1話ごとに視点が変化するからか、1話1話が独立して読んでも楽しめるような、起承転結のある話になっているのが素晴らしい。入り組んだ人間ドラマが繰り広げられる話や、ミステリーらしいドンデン返しのある話、サスペンスな緊迫感のある話など、エンターテイメント性を大盤振る舞いで発揮してくれている感じ。文体も財布の個性に合わせて変わりますが、どの話においても基本的に軽妙で読みやすいです。

宮部さんは現代物だけでなく、時代物からファンタジーまで幅広く書く、多筆な人ですけど…これはエンターテイメントとしては最高傑作の一つなんじゃないかと思います。どうも最近の宮部さんは、現代物で奮わない(「ソロモンの偽証」も「ペテロの葬列」も微妙だった)感がありますけど…願わくば、こういう分かりやすくエンタメした作品をまた書いて貰いたいものです。


東野圭吾 - マスカレード・ホテル ★★★ (2014-08-07 22:17:32)

2011年にハードカバーで発売された小説。
2014年に文庫版も発売。

実は以前ハードカバーを読んでましたが…もうすぐ関連作品「マスカレード・イブ」が発売される事もあって、予習の意味も兼ねて文庫版も購入・読破しましたが、やはり面白いですよね。東野さんの作品って、作品の質が凄く安定しているというか、どれをハードカバーの新品で買ったとしてもお値段以上に楽しめた感があるのが素晴らしいと思う。そんな東野さんの近年の作品の中でも面白い小説だと思います。

ホテルのフロントマンに扮して潜入捜査をする刑事である新田浩介と、彼の教育係的な立場であるホテルのスタッフの山岸尚美という、立場の異なる二人が主人公なんですが、この主人公の立場の違いが作品をより面白いものにしてると思う。職業意識の違いゆえに擦れ違ったり、歩み寄ったりしながら成長していく様は、サスペンス・ミステリーな色の強い作品に、ある意味ビルドゥングスロマン的な側面を与えてるように思います。それをエンタメらしい爽やかさで読ませてくれるのが素晴らしい。

まあ、最初は客を威圧してたくせに、何日かで外見上分からないくらいホテルマンの業務をこなし、悪意のある客にすらバレない新田は余りにも優秀過ぎる気もしますし、彼の潜入中に偶然彼とかつて因縁のあった相手がホテルを訪れ、その男の行動が事件のヒントとなる展開なんかは若干ご都合主義に感じなくもないですが…変にリアリティを追求するよりも、魅力的なキャラ、ドラマティックな展開を重視している感じで、エンタメとしては大正解だと思います。個人的には、事件が佳境に入ってからのスリリングな部分も好きですが、それ以上に前半の色々な客に対応する部分が好きですね。それを通じて主人公二人のキャラを浮き彫りにする辺りホント上手いと思う。

東野圭吾さんの作品はどれを読んでもそう損だと思うことはないと思いますが、近年文庫で出た中ではこれがお勧め。相変わらずしっかりエンタメしてて素晴らしいんです。


LES CHANTS DE NIHIL - Ma Plus Douce Vermine ★★ (2014-08-05 20:50:13)

2009年発表の4曲入りEP。
と言っても一曲が長く、トータルの演奏時間は50分を超え、ほぼフルアルバムと言っていい内容。

作風としては、スローテンポを基調にノイジーなリフ、ネガティビティに満ちたメロディ、喉が張り裂けるような絶叫ヴォーカルと、鬱系の用件を満たした陰鬱なブラックメタル。ただ、このバンドはチャーチオルガン系やアトモスフェリック系のキーボードを多用し、アンビエンス重視の指向も持っていて、抑鬱的な感情をそのまま描くというよりも、頽廃的なアートを演出しているような感覚が強いです。

…もちろん、頽廃アートな雰囲気は十二分に醸し出せており、そういう音源としては申し分ない出来だと思うんですが…鬱ブラックのレビューで言うのも何なんですが、2曲目のタイトルトラックのトレモロ・疾走パートが余りにもかっこいいんですよね(笑)。このバンドの持つ頽廃芸術っぽい雰囲気が、ブラックの典型的な様式であるトレモロ疾走と合わさると、個人的には悶絶モノ。ぶっちゃけ、このバンドがスローなパートを中心で楽曲を作っていることを勿体なく思うくらいです(苦笑)。

バンド名はフランス語で「虚無の歌」でしょうか。そのかっこいい名前に惹かれて購入しましたが、名前負けしないセンスの良さがある音源だと思います。ただ、全編疾走にするのは本末転倒にしても、もう少し疾走パートがあっても良かったという気はします。


DEATHROW (ITALY) - Desolating Cosmic Intuition ★★ (2014-08-05 20:35:05)

2011年発表の3rd。

この「死刑囚の列」を意味する単語を冠したバンドといえば、80~90年代に活躍したジャーマンスラッシュのバンドの方が知名度が高いようですが、こちらは現在も活動するイタリアの鬱ブラック。葬式ドゥームのような極端に遅いテンポではなく、ミッドテンポを中心で展開する作風で、様々なバンドを渡り歩いてきた経歴を持つThornsことGionata Potenti氏による独りバンドだけあって、ジャンルの王道ながら外さない音。

実は鬱感情を華々しく込めるようなトレモロリフはメインではなく、平坦に刷り込むようなリフが中心の作風で、ぶっちゃけて言うと少々地味めな作風…ではあるんですが、リフは取り立ててフックがあるという訳ではないものの、誰が聴いても鬱れるような分かりやすい陰湿さが込められているのが良いんですよね。地味目だからといって、聴き手に鬱感情を共有させる力まで弱い訳ではない(むしろジャンル内でも強めだと思う)辺りが、流石歴戦のブラックメタラーという感じでしょうか。

根の深いネガティビティが実に分かりやすく詰め込まれた作品。好き者ならば心地良い鬱感情に浸れるアルバムです。真っ暗な海をいつまでも独りで眺めているような感じ。


それゆけ!ぶるにゃんマン Portable~とりもどせ!あいとせいぎときぼうのつにゃ缶~ ★★★ (2014-08-04 23:09:19)

2012年にPSPで発表された横スクロールSTG。
ベスト版が出てるせいか、VITAでもDL版を安価で購入できます。

…パッケージを見てみると、猫耳にブルマ、スクール水着、メイドといわゆる「萌え属性」を盛り過ぎて、逆に訳の分からない事になったキャラクター達が描かれ、更にこのふざけたタイトルですからね…一体、誰がこれでこのゲームが面白く、そして遊びやすいシューティングゲームという事が分かるのでしょう…(笑)。私も友人から教えられたときは「冗談でしょ(笑)」みたいなリアクションしてしまいましたが…マジでした。

内容は、ごくシンプルな面クリア型横スクロールSTG。通常ショットと、移動速度が低下する代わりに攻撃力の上がるレーザー、ストックアイテムを消費して画面全体を攻撃出来るボムを駆使し、ステージ最後のボスを倒せばクリア…という、触ってすぐに楽しみ方の分かるゲーム内容。ショット強化の概念はなく、道中のアイテムを取る事でキャラクター毎に異なる性能のオプションが最大2つまで付けられる仕様。ミスをするとオプションがリセットされるのが地味に辛いです。

このゲーム、スコア稼ぎやステージ攻略にも、変に尖った所がないのが良いんですよね。STGにありがちなランク調整など、回避や攻撃と関係のないパターン作りも必要ないし、スコアも点アイテム(小判)を画面外に逃さず取り続ければ得点の倍率が上がるという分かりやすいシステム。点アイテムはそれを出す敵を倒した時点での自機の位置に向かって来るので、上手く回収できるパターンを考えるのも楽しいかも。ちなみにエクステンドはスコア制ではなく、道中のアイテムを取る事で発生するので、取り敢えずクリアを目指すだけなら高得点を目指す必要がないのも良いですね。

他にはグレイズでのショット強化(難易度ノーマル以下なら画面がスローになる効果付き)、中型以上の敵撃破時の爆風での弾消しなどのシステムも。敢えて敵弾にカスり、スロー効果を発生させることで逆に事故を防ぎつつ、強化したショットを打ち込んだり、爆風の発生する敵を至近距離で撃破することで周りの安全を確保したり、その場その場での判断力が試されるのが非常にスリリングで楽しい。爆風での弾消しは効果音も爽快で気持ち良いです。特に5ボスは印象的なステージBGMと、ボスの弾幕と爆風の効果音が相俟って、「脳汁垂れ流し」間違いなし(笑)。

また、ちょっと変わってるのが、ゲーム開始時にネームエントリーしてファイルを作り、ステージクリア毎にゲームの進捗状況と残機・ボムの個数がセーブされるという仕様。なのでオートセーブオンだと、ボスにギリギリで勝利すると詰みます(笑)。まあ、ベストな状況になるまでリセットで粘れるので、初心者への救済措置にはなってますけど。私的には、事故死の多いハード7面道中を何回でもやりなおせるのは有難いんですが、通しプレイをしようとするたびにネームエントリーがあるのは若干面倒。デフォルトのネームもださいですし…。

若干不満があったのは、イージーにしてもあまり難易度が変わらないことでしょうか。敵の固さと弾速が違うくらいで、敵の攻撃パターン自体はほぼ一緒ですからね…。宣伝文句にあるように、STGが難しそうに感じる人でも満足…と言うほど簡単でもない気がします。まあ初心者向けに調整された機体がズバ抜けて高性能なので、その機体を使えばかなり楽にはなりますが。後は、ボムやレーザー(実質的な低速ショット)をLRに設定できないのが、地味に不便かも。

…でも、最大の問題点(というか不満点)はサントラが限定盤同梱のみで、単品で発売されていない事でしょう。オタ芸風の掛け声が熱い、ハイパーハイテンション&ハイパーキャッチーなアイドルソング「ねずみがイチバン」を始め、空を衝くような、飛翔感のある歌メロが特徴のポップス「青空の唄」、ダウナーでおどろおどろしい雰囲気をコミカルに演出する「悪猫退散」など、ちょっとビックリするくらい名曲揃い。特に「ねずみがイチバン」は、アイドルソング・アニメソングとしても凄まじく良い出来だと思うんですが、どうでしょう。

歌モノ以外にも、これからドタバタ劇が始まるような汎用ボス曲、プログレッシブな感性を染み込ませた6面道中曲などを初め、どの曲も印象に残る。何気に会話パートとかの曲も良かったりしますし。ちなみに5面道中曲は、名EP「Alice in WONDER HALLOWEEN」を作り上げたミュージシャンである星名優子氏、サークル「うたのは」を主催する小鳥遊まこ氏という、同人音楽シーンではひとかどの地位を得ているシンガーが参加していて、個人的には激アツな人選。サントラ買わせて下さいお願いします。

特にメタラーはパッケージや演出の面で眉を顰める人が多そうですし、敢えて強硬に勧める事はしませんが、私はめっちゃ楽しめました。宣伝では非常に面白いゲームに見えたのに、ストーリーが丸投げエンドや製作者のエゴで台無しだったり、フリーズやロード地獄など商品以前の問題だったり…最近のゲーム業界って、そんな事が日常茶飯事な印象ですが、このゲームはどこからどう見ても地雷なのに、実際やってみるとかなり面白いという、ある意味時代に逆行する作品(笑)。萌え的なパッケージが気にならない人、もしくはむしろ好きな人であればプレイして損はないと思います。


SOMNIA - Above Space and Time ★★★ (2014-08-03 00:17:38)

2012年発表の1st。

バンド名はラテン語のsomnium(「夢」の意)の複数形でしょうか。どこか女性的な響きを持つ単語を冠したバンド名ですが、出音は繊細さを垣間見せるパートはありつつも、基本的にヴァイキング的な野太さ・力強さを感じるブラック。時折プログレッシブな側面を見せつつ、キメやメロディのハモり、ギターソロなどを多用した、ブラックとしてはロック的なバンド感やダイナミズムを感じさせる音。ヴォーカルのがなり声も太さがあってかっこいいです。

リフには漢達の悲哀を滲ませるような、民族的なメロウさも込められており、近年エクストリームメタルとしての強靭さを増したKHORSや、「Isa」「Ruun」期のロック色強い頃のENSLAVED辺りに通じる雰囲気を持っていると思います。ブラックとしてはメジャー志向がやや強めの音に思えますが、「Like Ashes」の冒頭など、端々にメロウ系プリミティブブラックに通じるような、邪悪で叙情的なトレモロも聴けるのがまた良いんですよね。聴き手を突き放さないけど媚びもしない、絶妙なバランスの作風だと思います。

日本のレーベルから出てることもあって購入してみたんですが、確かにこれは良いですね。「その他」に埋没しない魅力のある音を出してると思います。聴き応えのある、メロく力強いブラックを求めている方は是非。


NOVAE MILITIAE - Affliction of the Divine ★★ (2014-08-03 00:12:35)

2011年発表の1st。

最早ブラックメタル界隈ではDEATHSPELL OMEGAはひとかどの存在になっているせいか、「DSOに通じる作風」とか「DSO好きにお勧め」とか書くと、それだけで宗教的な邪悪さがあり、カオティックさ、アーティスティックさ、前衛性、文化性など、単なる邪悪さ以上の何かも備えたブラック…というのが概ね伝わるので、音源を探したい側としては助かりますね(笑)。このバンドも、そんな感じの売り文句に釣られて買ってしまいました。現時点ではメンバーの写真や名前等の情報を公開していない辺り、バンド側も意識しているのかもしれませんね。

この作品はDSOで例えるなら、まだプリミティブ・ブラックとしての側面を残していた「Si~」アルバムと近い雰囲気を持っているように思います。ただキリスト教が根付いていない日本人には完全には理解できそうにない世界観、プリブラベースとしては最高峰のドラマ性を演出し、描写が丁寧だった「Si~」と比較すると、こちらはノイジーなリフの音色の凄みで力押しするような部分が多く、そこを衝動的で良いと好意的に捉えるか、大味と捉えるかで評価が変わってくるかもしれません。ジャケットのイラスト通りの、赤黒く血腥い音は、DSOよりも生々しい凶暴性に特化しているという印象。

ただ、折角ダイレクトに伝わるような血腥さを演出できているのに、ありがちなノイズ・アンビエントに尺を割いていて、若干ダレるのが勿体ないんですよね。ドス黒さに覆われた中、酸化した血液の饐えた匂いが漂ってくるようなカルトな雰囲気は好きなんですが。悪くはないですけど、若干マニア向けという気もします。


REVELATION'S HAMMER - Revelation's Hammer ★★★ (2014-08-01 22:43:24)

2013年発表の1st。

ドラムにサポートを入れているものの、基本はACCUSER氏による独りブラック。独りブラックとしては珍しく、鬱系やポスト系などの作り手の自意識と作品の魅力が直結するようなタイプではなく、WATAINやDISSECTION辺りが引き合いに出される、バンド然としたややメロディックなブラック。音質や楽曲のメリハリの付け方など、エクストリームメタルとしてもかなり質の高い音で、自己満足っぽさは全く感じられないです。

実はこのアルバムを買ったきっかけは、店頭での解説文に上記のバンドに加えて、EMPERORが引き合いに出されてたからなんですよね。WATAIN系のドス黒い系のメロブラで、EMPERORとは珍しい…と。で、実際に聴いてみた印象としては、強ち誇張でもないかな…と思います。例えば一曲目の2分30秒くらいのパートを始めとして、「Anthems」期のEMPERORに近いような、神秘性を帯びたリフが、ちょくちょく聴けたりします。

ただ、シンフォニックな要素は全く無いので、比率で言えばWATAINやDISSECTIONが9、EMPERORが1くらいの分量だと思います。こうした強力に耳を惹く部分がありつつ、上記メロブラバンドのような邪悪トレモロと、時々ノリの良いオールドスクールさも交えた、やや長尺ながら飽きさせない展開の上手さも備えてるので、新進気鋭のブラックメタルバンドの中でも抜けたクオリティの高さを実現出来てるように思うんですよね。

店のコメントを信じて買いましたが、これは大正解でしたね。クオリティが高くても、同じような音になってしまいがちなジャンルの中で、「おおっ」と思わせるものがあるのが素晴らしいです。その上でしっかり質も高いという。これは買いですよ。


MEANS TO AN END - Weathered by Time (2014-08-01 22:36:16)

2010年発表の1st。
鬱系やポスト系好きなブラックメタルファンにはお馴染みのPest Productionsからリリースされましたが、これを出した後にバンドは活動を停止している模様。

一曲目が雰囲気物のインストで始まることは鬱ブラックとしては珍しくないですが、この作品はその中でもかなり良いムードが出せてますね。ピアノメインの、美しくも頽廃的な楽曲で、アンティークな装飾の施された部屋が、主を失って物悲しいモノクロームに染まっているような情景を思い浮かべました。この繊細な情景で、本編への期待も高まるというものですが…。

肝心の本編は、個人的な趣向からするとちょっと微妙。陰湿さや絶望感など、鬱ブラックとしては及第だと思いますが、私はわざとらしいくらい暗いメロディが好きなので、これは若干地味めに感じるかも。ヴォーカルは振り絞るような叫び声で、時々野々村竜太郎氏なみの感情を込めて叫んでくれるので結構好きですね。張り裂けそうな感じがグッドです。

有名レーベルの作品らしく、一定のクオリティはしっかり保った、良質な作品だとは思うんですが…冒頭を聴いて、上がりまくった期待値を上回るほどでは無かったかもしれません。冒頭のインストくらい分かりやすいメランコリックさが、本編にも欲しかったところです。


SCHAMMASCH - Contradiction ★★ (2014-07-29 21:58:42)

2014年発表の2nd。
TRYPTICONやSECRETS OF THE MOONのメンバーがゲスト参加している、新進気鋭のバンドとしては何気に豪華な作品。

神秘的な雰囲気を発しているジャケットと、前衛的な要素も含むブラックという触れ込みから、単純な邪悪さだけではない、スピリチュアルで形而上学的な領域に踏み込んだどす黒さの音を聴かせてくれる事を期待していたんですが、概ね期待通りですね。厚みのあるプロダクション、ドゥーミーで凄みの聴いたスローパートに重きを置いた展開、不協的で精神をダイレクトに汚染するような、どす黒く有機的なリフ、厳かに呪言を紡ぐようなヴォーカルが、蠢き侵食するような暗黒性を演出する、深遠な雰囲気のあるブラックメタル。

楽曲に取り入れられた前衛要素が悉く邪悪さに直結しているのも特徴で、スラッジに通じる音響処理が施されたリフであったり、宗教的なトーンを帯びた霊的なクリーンヴォーカルなんかはその典型ですね。1曲目のみですが、この手としては珍しくスパニッシュなアコースティックギターが用いられていますが、そんなアレンジでさえ何か禁忌の扉が開かれる前兆のように聞こえ、全編を通じて「黒い」ムードに覆われているのが感じられます。

ただ、こういうスピリチュアルで形而上学的なレベルの邪悪さを感じさせるバンドとして、真っ先に上がるのがDEATHSPELL OMEGAですが…DSOと比べると若干勿体を付け過ぎな風にも思えるんですよね。DSOで例えると「Kenose」のイントロ部分とか、「Fas」の静的な部分がやたら長い感じ。そもそもCDを二枚組にした上で、取り出しにくい紙ジャケットに放り込んだ時点で勿体付けすぎで鼻に付くし。ラストの曲をもう少し展開短くして、一枚に収めた上で取り出しやすい普通のケースに入れてくれたら、星3つ付けてたんですが。

とは言っても、神秘性や精神性を感じられるまでに邪悪さが濃いパートに関しては、DEATHSPELL OMEGAに肉薄する魅力があるように思うんですよね。DSOを始め、INFANDOUSやFYRNASK、NOVAE MILITIAEなど、精神を侵すようなどす黒さを演出しているバンドが好みであればお勧めです。せめて装丁が普通であれば…ホントこういうCDに傷が付く系の仕様嫌いだわ。


山本弘 - 神は沈黙せず ★★★ (2014-07-29 21:52:42)

2003年にハードカバーにて発表された小説。
2006年には上下巻仕様で文庫化もされています。

この人の小説はこの作品で初めて読んだんですが、衝撃を受けましたね。こんなアイデアをこんなスリリングに見せてくれる作家がいたんだ!と。小説にしろゲームにしろ、本当に優れたエンターテイメントって、その面白さを他の人にも知ってもらいたくていてもたってもいられなくなるような衝動に駆り立てる力があるものですが、私にとっては正にそんな作品でした。

「世界が実は××である」というネタ自体は、ちょっと読書好きな人ならすぐにでも似たような設定の話を幾つか挙げられるくらい良くあるものですが、その掘り下げ方が「良くある」というレベルを明らかに逸脱していて、そこが非常に面白い。例えば、世界の軋みの一例として、「パイオニア減速問題」や「ウェッブの網目」など、虚実織り交ぜて具体的な現象が挙げられているんですが、これらの例とストーリー展開が相俟って異様なリアリティが生まれていて、読んでて引き込まれるんですよね。良い意味で、ハッタリをかますのが凄まじく上手いというか。

更に、そのネタが暴かれて、それで終わりという訳ではないのが素晴らしい。世界の仕組みが分かった事によって、超常現象の起こる理由から宗教の興る理由、人間、ひいては世界の存在する理由まで、あらゆる事柄に納得の行く理由付けがされてしまうのが、怖くも興味深く面白い。「何故、今、世界の仕組みが暴かれたのか」そのタイミングにさえ必然性がありますからね。また、「記号着地問題」などの脳科学的分野に踏み込んだり、一見理不尽な話に思える聖書の「ヨブ記」に一つの合理的な解釈を試みたりなど、様々な方向から読み手の好奇心を刺激してくれます。ある意味、非常にサービス精神旺盛な作品だと思う。

ただ、これ以上ないくらいに好奇心を満たしてくれる作品ではあるんですが、かなり灰汁の強さもあるんですよね。まず一つは、情報量が過多な事。超常現象の事例を長々と羅列した箇所とか、どうでもいいようなマヤ歴の単位とか、リアリティを持たせたいのは分かるけど、正直読み飛ばしの対象でしかないです。南京大虐殺のようなタッチーな問題に敢えて触れる必要性も、はっきり言ってあまり感じられなかったかも。この部分も、ストーリーの大筋と関係ない資料がズラズラ並べられていて若干うんざりしますし。

個人的には、主要な登場人物がいまいち好きになれなかったのもマイナスですね。ヒロインの優歌は占星術の衰退を喜んでいたりなど、非合理的な考え方の人間を見下している感じが鼻に付くし、その親友の葉月は本音の出し方がわざとらしくてリアリティに欠ける感じがします。信念を否定され、希望が断たれてもその直後に好奇心から災害を見に行っちゃう強メンタルな加古沢や、真実と幸福の間で苦悩する姿が印象的な大和田氏なんかは、良いキャラクターだと思うんですが…。どうも主要なキャラの性格付けはストーリーありきでなされている印象が拭えません。

ともあれ、人に話したくなるほど面白い小説だったのは間違いないです。既読の人向けに言えば、この小説は非常に感染力の強いミームと言えるでしょう(笑)。この人の本って、何かしら好奇心を満足させてくれる要素があって好きなんですが、これはその中でもその部分にパラ全振りしたような傑作だと思います。お勧めです。


BEYOND YE GRAVE - Ester Panim ★★★ (2014-07-27 09:57:08)

2012年発表の3rd。

実は国内のレーベルからのリリースという事もあって、購入してみましたがこれがかなりハイレベルなメロディック・ブラック。ロシア産ながらNAGLFARやDARK FUNERALなど北欧勢に通じる、寒々しいトレモロ疾走を軸に据えつつ、刻みリフを用いたノリの良いパートも挿入するドラマティックな路線ですが、プロダクションがクリアかつ重さもしっかりあるので後者のようなパートも心地良く聴かせてくれますね。エクストリーム・メタルとして純粋に質の高い音と言えると思います。

また、このバンドの特徴としては、所々で正統派メタル的というか、ハードロックに通じる哀愁を感じさせるパートが出てくる事でしょうか。疾走パートでの暴虐さ、邪悪さ、寒々しさの撒き散らし振りからすると意外な感じではあるんですが、こういうパートがあるお陰で更にドラマティックさを増し、より聴き応えのある作品に仕上がっているように思います。ブラックらしい疾走がガチだからこそ、こういう要素を入れても半端にならないというか。

ロシアや東欧のバンドによくあるマニアックさ、辺境っぽさはなくかなり取っ付きやすいメロディック・ブラック。聴きやすい音ながら、ブラックの醍醐味である邪悪で寒々しいメロディを湛えた疾走を味わえる辺り素晴らしいです。


VERDUN - Sov Du Lilla Samvete ★★ (2014-07-27 09:51:53)

2011年発表の1st。
元はテープだったものをSelf Mutilation ServicesがCD化し再発。

タイプとしては、ディプレッシブ・ブラックの典型と言ってもいい作風だと思います。ノイジーに作られた音が「ズン…」と沈み込むような質感を演出し、そこに生きる気力を奪い去るかのような、鬱力高いメロディを挿入していく音。メロディには陰鬱さだけでなく、物悲しさも多分に含まれている感じで、かなり「聴かせる」音だと思います。

そしてSILENCER辺りとは別のベクトルでインパクトのあるヴォーカルも必聴。ただ叫ぶだけでなく、涙目で悔しさを噛み締めているかのように呻いてみせたり、人生を諦めたかのようにブツブツ呟いたり、ある意味表現力はかなり高いヴォーカルだと思う。感情を込め過ぎたせいで、裏返ったりヨレたりする辺りが生々しくて良い感じです。

ディプレッシブさの裏にメロウさも滲ませる楽曲も悪くないですし、ヴォーカルはこの手の鬱系のブラックの中でもインパクトありますね。BURZUMやXASTHUR、SHININGなどの基本バンド、TRISTやHAPPY DAYS辺りの一歩踏み込んだバンドを聴いて、まだ飽き足りない人は聴いてみてはいかがでしょう。


HAVOC (BRAZIL) - Destroy the Planet ★★★ (2014-07-23 21:31:07)

2012年発表の2nd。

南米産のブラックで、レーベルもHammer of Damnationとなれば、ダーティでオールドスクールなブラックを連想しそうですが…このバンドはかなり北欧産に近い、しかも北欧産に勝るとも劣らないクオリティのブラックを演ってますね。各レビューやショップのコメントでも評価が高かったんですが、実際聴いてみたら予想していた以上に素晴らしかったです。

DARK FUNERALなどスウェディッシュ勢に通じる寒々しさや、(De Mysteriis期の)MAYHEMを思わせる、ノルウェー産ブラック的土着性の強い禍々しさを込めたトレモロ、フィンランドのプリブラに通じるオールドスクールな勢いなど、北欧の各国のバンドの影響を受けつつも、良いとこ取りで消化・昇華する楽曲作りのセンスが、まず素晴らしいんですよね。北欧の評価の高いバンドの中にあっても、埋没することなく輝ける器を持っているのではないでしょうか。

また、単に北欧産のバンドの作風をなぞるだけでなく、南米産らしいRawで衝動的な勢いがあるのも良いんですよね。ノイジーに切り込むプロダクションや、リバーブの強めに掛かった絶叫ヴォーカルによるカオティックで破壊的なテンションの高さと、北欧バンド由来の邪悪さが合わさると、個人的にはドイツのKATHARSISの「VVorldVVithoutEnd」アルバムに通じる荒れ狂ったカルト性を感じます。問答無用で殺しに掛かる衝動性や、音作りのRawさはあれど演奏自体はタイトですし、楽曲のクオリティは非常に高いと言えるかと。

ブラックメタルの中でも「狂気に圧倒される感覚」を味わえる、稀有な一枚だと思います。これはかなりお勧め。


WEHRHAMMER - Wir Ziehen in Den Krieg (2014-07-23 21:08:12)

99年発表の1st。
2011年にNebelklangにより再発された盤を購入しました。

基本的には、紙を引き裂くような、バリバリしたノイズの乗せ方に、スラッジにも通じる響きを感じさせるリフと、かつての(DARKTHRONEの)Nokturno Culto氏のがなりを、より喉に負担を掛ける方向に突き詰めたようなエグエグしいがなりが、強烈な衝動性を感じさせる、オールドスクールな要素強めのブラックメタル。

このバンドは安易に寒々しいトレモロ疾走パートを挿入する事を避けているのか、展開に結構工夫が見られるんですが…その工夫が、逆にマニアック度を上げてしまっている感じですね…。音数を少なくして、隙間を感じさせる音作りにしてみたり、ノイジーさを殊更に強調してみたり…。普通にメロディアスなパートでは、ペイガン系に通じる叙情性があって悪くないんですが。特に5曲目「Brentt sie nieder」辺りは自己満足っぽさを感じてしまう。

…というレビューを書いたんですが、ブックレットを見てみたら、そのペイガンメロが多く、ノイジーさも抑え目になり聴きやすくなってる9曲目以降はボーナストラックで、主に2009年の音源が中心なんですね。ボーナスの方は、元々1stの時点で発揮されていた凶暴性や衝動性と、聴き手を意識した曲作りが上手く共存できている印象で、より魅力的になっていると思います。…と言っても、マニア以外にはまだお勧めは出来ない…かも。


KORPBLOD - Uråldrig Samklang ★★ (2014-07-23 21:03:39)

2009年発表の1st。
最初の盤は自主制作で100枚が刷られたのみでしたが、後にEwiges Eisが再リリース。
こちらは500枚限定で、手書きナンバー入りの仕様。

吹雪に巻き込まれるが如き、ノイジーさを強調したプロダクション、獰猛さを隠そうともしない、歪み切った絶叫を聴かせるヴォーカルなど、荒々しさも目立つブラックメタルですが、同時にミディアムテンポの多い、ゆったりとした展開を好む曲作り、10分超えの楽曲も多いアルバム構成など、アトモスフェリックさも強い音ですね。寒気を感じるような、邪悪な霊気が垂れ流されているようなトレモロリフは、音質とも相俟って「如何にも」な雰囲気が出せているように思います。

ペイガン系と言い切るには余りにも陰鬱なサウンドなんですが、楽曲の端々でペイガン風の意匠が垣間見えるのも大きな特徴ですね。アコギや男女クリーンヴォーカルを使い、民族音楽をやたらダークに解釈したような部分なんかは、かなり印象深く耳に残る。薄暗く気味の悪い霊山で降霊術でもやってるんじゃないかという感じ。ただ、邪悪なアトモスフィアを放出しまくりの音に、何故か小鳥の囀りを重ねてくるところとかは、若干シュールに聴こえてしまいますが…(笑)。

ジャンル初心者にもアピール出来る分かりやすさに欠けるあたり、悪く言えば地味目な音ではありますが、霊気をジクジクと垂れ流すような、不気味なメロディ使いは個人的にはかなり好きですね。ある程度このジャンルにハマっている人向けだと思います。


シャリーのアトリエ~黄昏の海の錬金術師~ ★★ (2014-07-23 21:01:30)

2014年発表の、アトリエシリーズ最新作。
「黄昏」シリーズとしては3作目ですね。

携帯機用の作品等も合わせれば20作品ほど出ているシリーズだけあって、根幹となるシステムである、錬金術によるアイテム練成は面白く、そして洗練されてますね。どの素材を使うかだけでなく、素材を投入する順番、素材投入時に使うスキル等で結果が大きく変わってくるので、強いアイテムを作るのに頭を悩ませるのが楽しい。特に今作、同じ属性のスキルを同じ属性の素材に使い続けると、ボーナスが発生する「チェインシステム」が採用されているんですが、これは非常に強力な代わりに、大きなボーナスを狙い過ぎると本当に使いたかったスキルを使う枠が足りなくなったり、値が大きすぎて狙った属性値を超えてしまったりするので悩ましいです。それだけに、試行錯誤の末狙った効果のアイテムを生み出せたときの喜びもひとしお。

また、滅び行く大地を舞台とした「黄昏」シリーズは、シリーズ自体が今までのアトリエと比べると、一般的なRPGに近い世界観を持っていると言えますが、今作は今までのような日数制限が撤廃されているため、更に一般的なRPGに近づいた印象。元々「世界を救う」系RPGのカウンター的な側面もあったシリーズだけに、これには賛否あるようですが、個人的には「こういうのもアリ」って感じですね。拠点でのアイテム自動補充などと合わせてヌルく感じる人もいるようですが、素材集めや敵狩りを気持ちに余裕を持って出来るのは良いと思う。若干、トラベルゲート(拠点へワープ)やアイテムの回数制限といった要素が死にシステム化してる気はしますけど…。この辺りは、ユーザーに挑戦するのではなくて、「楽しんでもらう」という事を重視した結果なんじゃないかと。いつでもゲーム難易度の変更が出来る辺りからも、そういう意識の強さが伺える気がします。

ただ、バグや調整不足が目立つのがネックですね…。最も酷いのは、「ゲームを終了する」もしくは「電源を切る」などの動作を行おうとすると、本体が不正に終了し、ファイルチェックが始まる事があるというバグ。一応、タイトル画面に戻ってから終了すれば起こりにくくはなりますが、絶対ではないですし。あとストーリー中に挿入されるミニエピソードが、時々本編の進行具合と同期していない時があるのも気になりますね…。広く、モンスターや採集ポイントのシンボルが多数あるマップだと処理落ちしたり、動作が若干重いのも気に掛かるところ。

間違いなく面白いゲームである事は断言出来るんですが、細かいところにアラがある…というより、未完成の状態で発売されてしまったような印象を受けるゲームなんですよね。特に再現性が高い上に、本体やハードディスクに負担を掛けるバグを放置したまま発売するのは如何なものかと。去年の閃の軌跡のロード地獄とか、聖魔道物語のバグだらけ振りとか、最近パッチがあることに甘えているメーカーが多い気がします。DLCに頼り切った作品や、ストーリーを丸投げする作品などにも言えることですが、ゲームは「店頭で購入した時点で十全に遊べるものであって欲しい」んですよね。これは多かれ少なかれどのユーザーも思ってる事だと思うので、メーカーはそれに応える努力をして欲しいです。


VIDHARR - Cryo ★★★ (2014-07-13 17:57:10)

2013年発表の2nd。
日本のレーベル、Zero Dimensional Recordsからの発売。

鬱ブラックにはSHININGやFORGOTTEN TOMBなどを始めとして、豪速や激遅などの極端なリズムに頼り切らない、ロック的なリズムを取り入れたバンドも少なくないですが、大雑把に言えばこのバンドもそんな中の一つですね。ロックのダイナミズムを取り入れたリズム構成、ハードロック的な意匠の取り入れられたアレンジが、妙に血の通った絶望感を演出する音。部分的に取り入れられた女性ヴォーカルによるクリーンも、楽曲に漂う不条理なムードを強調。

何気にこのアルバム、音質がかなりヘヴィなんですよね。特にブラックの生々しさを残しつつ、低音の効いたギターの音色がインパクトあります。鬱ブラらしい感情を込めつつも、ドスを効かせるべき箇所ではブルデスのヴォーカル並に野蛮な響きを帯びるデス声とも相俟って、威圧的な雰囲気。このヘヴィさと、ロック要素を取り入れたバンド特有の、揺らすようなリズムが合わさると、酩酊感すら覚えるんですよね。どす黒い音の、その真ん中にいるような臨場感を味合わせるような音。

ロックのリズムを取り入れたが故の、メリハリのある楽曲構成、ヘヴィさも軽視しない音作り、女性ヴォーカルの導入など、ある意味「聴きやすさ」を覚える音かもしれませんが、鬱ブラックとしての陰鬱さをしっかり残しているのもまた良いんですよね。特に腐食を広げるような、鬱感情で塗り潰すようなトレモロのメロディは、鬱ブラックを好んで聴いているようなリスナーならば問答無用で心を動かされるはず。これがあるからこそ、作品全体がピリッとした緊張感を保っているんじゃないでしょうか。

宗教的な邪悪さというよりは、感情の生々しさを描写する事に重きを置いたような作品だと思いますので、その手が好きであればお勧め。ちなみにCDトレイを外したところのアートワークが結構キテるので注意です(笑)。


MORTUARY DRAPE - Secret Sudaria ★★ (2014-07-13 17:51:28)

97年発表の2nd。
2011年にDark Descent Recordsよりリイシュー盤が出てます。

…で、私はそのリイシュー盤を購入したんですが…これ、本当に2011年の再発なんですよね?そうとは思えない程録音レベルが小さく、他の同年代のブラックを聴いた後そのまま再生するとこそばゆいような音量で再生されるんですが…音の小さい作品が嫌いな私としては、大分この時点で心証が悪くなりましたね…(苦笑)。ただ、肝心の音楽性の方は悪くないです。再発されて然るべきかっこよさを持つブラックだと思います。

路線としては、スラッシュや初期デスメタルからの影響の色濃い、オールドスクールなブラックメタル。この手のバンドらしい、衝動を感じさせるスラッシーな疾走パートを主軸に展開していく作風ですが、緩急付けた曲作り、ベースも絡めつつのオカルティックなメロディ使いなど、どこか「鮮やかさ」も感じられるんですよね。決して一本調子にならないかっこよさがあると思う。ヴォーカルも、スラッシュの吐き捨てヴォーカルの影響の強いリズミックなスタイルですが、歪ませ方・ドスの効かせ方がかなりエグく、プリブラや鬱ブラックのヴォーカルに負けない邪悪さ。

衝動的で活き活きとした中にも、オカルトな邪悪さが確かに根付いた作品だけに、音の小ささだけが悔やまれますね…。この手の音は多少音が割れてもいいから、大音量で聴かせる事に拘ってほしいところ。BEHERITのベスト並に音圧高かったら☆3つだったかも。


ARS MACABRA - III ★★★ (2014-07-12 11:04:34)

2013年発表の3rd。

これ、相当良い作品だと思いますよ。
暴虐なブラストや、邪悪なトレモロ、狂性に満ちた絶叫ヴォーカルなどブラックの王道部分もガッツリと押さえつつ、緩急付けたドラマ性に富んだ展開、時にゴリゴリと厚みを演出し、時にメロウさを強調するように絡むベースなどを武器に聴かせる、高品質なブラックメタル。クオリティの確かさはありつつも、ややRawで湿り気を残したプロダクションなど、メジャーバンドとは一線を画したムードがあるのも良いですね。

英語の「macabre」(「気味が悪い」の意)という単語には、「死を思わせるような不気味さ」のニュアンスが篭もっているらしいですが、正にそれを体現するような、トレモロのオカルトめいたメロディが実に素晴らしい。この作品、前述したようにベースが結構目立ってるんですが、それがメロディの陰影を濃くするように働いていて、より不気味さが強調されているんですよね。どういう音楽を嗜好するリスナーが聴いたとしても、邪悪さや不気味さ、陰湿さが感じられるであろう、ピントのしっかり合った音を出しているように思います。

高品質ながらメジャー志向な音とは敢えて相容れない雰囲気を醸し出しているブラックと言うことで、個人的にはACRIMONIOUSやOFERMODなどのバンドや、レーベルで言えばDAEMON WORSHIP関連のバンドに近いものを感じるんですよね。この手の邪悪さに徹したブラックが好きであれば買って損は無いでしょう。特にブラック特有の禍々しいメロディが好きな方にお勧めです。


ATHERIA - Echo from Another Kingdom & Spectral Regression ★★ (2014-07-08 22:25:00)

2012年と2013年に発表されたEPを2枚カップリングした再発盤。
なんと国内盤仕様が発売されてます。

これ、最初聴いた時は驚きました。NEPTUNE TOWERSなどを思わせる、宇宙的アンビエントに、耳が痛くなるようなノイジーなブラックを足したような音で、一応ミステリアスだったりクラシカルだったりするメロディは耳を惹くし、音像も捉えようによっては神秘性や深遠さを感じられるものではありますが…国内盤がリリースされる作品としては、余りにもニッチというか、マニアックというか…(笑)。

ただ、後半の「Spectral Regression」を聴いて、「さもありなん」と思いましたね。ノイジーなギターと絶叫ヴォーカルが引っ込み、よりキーボードの音像と溶け合うようなミックスになってるんですが、この音でのプリミティブな疾走が非常にかっこいい。特に「Neverending Hypnos」はディープな音像とシンプルな疾走が上手く組み合わさった名曲だと思う。そしてこの後半部でバンドの世界観に慣れてくると、前半部もいつの間にか然程抵抗無く受け入れられるようになってるんですよね。楽曲のタイトル通り洗脳されているのかも…(笑)

確かにニッチではありますが、それだけでは終わらない味わいがある良盤だと思います。ただ、前半と後半で音量がかなり違うのだけはやめて欲しかったなぁ…。


WORMLUST - The Feral Wisdom ★★★ (2014-07-06 10:53:38)

2013年発表の1st。

これはかなり凄まじい…一言で言うなら、BLUT AUS NORDが持つ暗黒趣味的で捻じくれた実験精神と、FYRNASKが持つどす黒いアンビエンスを掛け合わせたような、尋常でない禍々しさを発散するブラックメタル。ブラックの持つ特性として「邪悪さ」「暴虐性」など、色々な要素が挙げられますが、この作品は「異形性」に特化したような作風。

まずギターワークの前衛性と、そこから生み出される禍々しい雰囲気が素晴らしい。脳髄を冒す毒素を帯びた電波でも含まれているんじゃないかと思うような、引き攣ったトレモロと、聴覚を通じて聴き手の筋肉を弛緩させるかのごとき、BLUT AUS NORD的な奇妙なエフェクトの掛かったフレーズなどの波状攻撃で、サイケデリックで毒々しく、どす黒い異形の空間を形成。

生温かいようなメロディを奏でるベースも何気に主張しており、まるでまだ体温の残る屍体に触れているかのような気色悪さが演出されてますね。ひたすら絶叫を繰り返すヴォーカルは空間全体に響くような処理が施されており、殆ど何かの祟りのような雰囲気。特に後半アンビエント要素が濃くなりますが、アンビエント要素の強い部分でも荒廃したムードが強く、暗黒主義は徹底されている感じ。

不気味さで言ったら前述のバンドとタメを張れるような、超一流の物があるように思います。ちなみに以前はWOLFHEARTというバンド名で活動をしていたようです。…こんな全力でマイナス方向に向いた音を出すからには、改名して正解といえるでしょう(笑)。


CLAYMORE - Vengeance is Near ★★★ (2014-07-05 23:17:50)

2013年発表の2nd。
今年に入り、なんと日本盤がリリースされましたが…これ、日本盤のリリースを決定したスタッフにはグッジョブと言わざるを得ないですね。この素晴らしいシンフォニック・ブラックを日本のシーンに知らしめた功績は大きいと思いますよ。

この作品でまず特筆したいのは、「シンフォニック・ブラックとしての音のバランス」が物凄く良いんですよね。ストリングスやクワイアの音色を用いたキーボードは、バンドサウンドを包み込み壮麗さを醸し出しますが、ギターも埋もれることなくクサメロを主張、ベースもしっかりメロディの連に絡んでくる音作りが素晴らしい。クリアながら、「ヘヴィネス質」が抑え目で、「メロディ質」が前面に出されたプロダクションも、こういう楽曲には完璧に合っていると言えるでしょう。オーバープロデュースの陥穽に嵌まらない、ナイスな音作りです。

そしてシンフォ系の生命線であるメロディセンスですが、これもまた素晴らしい。クラシックに強烈に影響された、クサ過ぎるオーケストレーションがたまりません。特にタイトルトラック、「復讐の時は近い」なんておどろおどろしいタイトルなのに、ヴィヴァルディの「春」をモチーフにしたと思しき、鬼のようなクッサいメロディをブチ撒けてきますからね…この曲などは、SIGHの「Hangman’s Hymn」並のクサさだと思う。この主題で盛り上げて行くアルバムフィナーレは、クサメロ好きには最早感動もの。アルバム全体を通じても、クサさ、華美さ、スケールの大きさの揃った素晴らしいメロディセンスが発揮されてると思います。

クラシカルで壮麗なメロディのキーボード使いも素晴らしいですが、ギターリフで攻めるべきところは攻める辺り、単にスケールの大きい、クオリティの高いだけでない、メリハリの付いた楽曲作りが出来ているのもまた凄い。ただ、弱点を挙げるとするならば、オッサンが咳払いをするような、邪悪さや暴虐さを感じさせない、喉の詰まった感じのするデスボイスでしょうか。ヴォーカルライン自体はパーカッシブで楽曲のメリハリ感を強調していたり、時々エグいグロウルを重ねたりしていて、ヴォーカルに関係する要素全てが駄目というわけではありませんが…正直このメインヴォーカルの音色は苦手。

ぶっちゃけバンドロゴが微妙な事もあって、日本盤がリリースされていなかったら手を出していた確率はかなり低かったかと思います。ホントにこの日本盤リリースは有難い。ちなみに、対訳や解説の付いたブックレットは入っておらず、日本盤らしい仕様といえば帯くらいのものですが、その分なのか一般的な日本盤よりは若干値段は安め。2013年と2014年のどちらにカウントすれば言いか分かりませんが、どっちにしろ年間ベスト候補となり得るような作品。素晴らしいです。


CLAYMORE ★★ (2014-07-05 23:17:02)

ブルガリア産シンフォニック・ブラック。
90年代の終わりに結成され、遂に今年日本盤デビューを飾りました。


THANTIFAXATH - Sacred White Noise ★★★ (2014-07-03 21:20:23)

2014年発表の1st。
これ、今年聴いたブラックの中でもベスト候補かもしれません。

まず特記しておきたいのは、このバンドが優れた「トレモロリフ師」であるという事ですね。例えばドップラー効果の如き音程変化を取り入れ、より悪意的で非日常的な音色を実現してみせたり、粗いノイズと高音のトレモロを組み合わせることで宗教的恍惚感や浮遊感を演出したり、メロディの起伏に合わせトレモロのオン/オフを巧みに切り替えることで、傷口に蛆虫が蠢くかのようなおぞましさを醸し出したり…トレモロの使い方一つでもかなりのアイデアが用いられており、しかもそのどれもがベクトルが「邪悪さ」の方向を向いてるんですよね。

トレモロリフのフレーズ自体のセンスも群を抜いていて、例えば「Panic Becomes Despair」で聴ける、作中ではストレートに寒々しさを表現するメロディは、「Transylvanian Hunger」期のDARKTHRONEや初期SATANIC WARMASTER、初期SARGEIST辺りの、プリブラの代表格と言える作品群のそれと比較しても、劣るものではないように思います。また、神経をダイレクトに攻撃するようなメロディの使い方など、トレモロ以外のギターワークも相当に前衛的かつ邪悪。

こうトレモロの使い方の巧さを強調すると、所謂ポストブラック的な音を想像するかもしれませんが、このバンドの作風はあくまでRawでカルトなブラックメタルの悪意性に基づいているのが素晴らしいんですよね。アンビエントやドゥームのエグみを味付けとして取り入れるなど、暗黒性の追求に余念がない一方、ブラストで攻め立てる展開も多く、ブラック本来の攻撃性も十分ですし、鬱系に通じる感情の込め方をしながら、ドスの効いたがなりを聴かせるヴォーカルもかなりの邪気を発してます。湿り気のあるノイジーさで閉塞感を感じさせつつ、トレモロの音色をスポイルしない音作りも上手い。

前衛的な側面が、全てにおいてブラックメタル特有の悪意的な神秘性に反映されているような、邪悪極まりないアヴァンブラック。DEATHSPELL OMEGAやLUNAR AURORAなど、神秘性を重視してるブラックって、聴いてるだけで時に何らかの神秘体験でもしたような気持ちにさせてくれるものがありますが、これもそんな中の一枚。音としては、頭抜けた邪悪さを持つトレモロ繋がりで、NIGHTBRINGERやINCURSUS辺りが好みな方はツボなんじゃないかと思います。かなりオススメ。


MONTE PENUMBRA - Heirloom of Sullen Fall ★★★ (2014-07-03 21:19:06)

2013年発表の1st。

邪悪なブラックを世に送り出し続ける優良レーベル、DEAMON WORSHIP発のアヴァンギャルドブラックという触れ込み、セールで安くなっていたこともあり購入。…一言で言うなら、VED BUENS ENDEの流れを汲むブラックメタルですね。暴虐性や寒々しさなど、他の多くのブラックが持つような特性はあまり重視しておらず、代わりに沼地に引き込まれていくかのようなドロりとしたバンド・アンサンブルで聴き手の精神をジクジクと汚染していくかのような音。

VED BUENS ENDEがどこかサイコっぽい雰囲気を漂わせていたのに対し、個人的にはこちらはオカルトめいたおどろおどろしさを感じるんですよね。絶叫するだけでなく、生気のない声で語りかけるようなヴォーカルも楽曲の不気味さを助長。レーベルがレーベルだけに、VED BUENS ENDEやVIRUSよりも、ストレートなブラックの色が濃く、これらのバンドが持つ不条理さだけでなく、ブラック本来の邪悪さも両立させている印象。

悪夢をそのまま音にしたかのような、不気味で湿り気の高いアヴァンギャルドブラック。ブラックメタルフリークであれば、これを聴きながらむしろ安眠できるかもしれません(笑)。


コープスパーティー ブラッドカバー ★★ (2014-07-03 21:16:02)

私はPSP版(2010年発売)が約1000円でダウンロード出来るキャンペーンがやっていたので、そちらを購入したんですが、実は96年が初出の作品だったんですね。結構メディアミックスとかもされているみたいなので、もっと最近だと思ってましたが…確かに、携帯電話とかの描写が一昔前って感じだったかも。

個人的な評価としては、確かに怖くて面白くはあるけど、若干…というか大分不親切さも残るゲーム、という感じですね。システム上、シナリオ前半の行動が元で後半にバッドエンドを迎える可能性もあるのに、クイックセーブ/クイックロードが無いのは正直快適とは言いがたい。文章スキップすらないので明らかに既知バッドエンドを迎える事が分かってもすぐにはリトライ出来ません(苦笑)。逆にこれらの機能と、探索時のダッシュが実装されていれば名作として扱われてもおかしくないと思います。

このゲーム、恐怖を感じさせるための演出がやたら凝ってるんですよね。異空間からの脱出を目指し、廃校内を探索し手がかりを集めていくゲームですが、至る所に「何か」があったと思わせる痕跡があるのが怖い。例えば洗面台に抜け落ちた歯が、歯肉が付いた状態で散らばっていたり、トイレの便器に大量の血がぶちまけてあったり…。こういうの、寝る前とかに思い出すと、頭が勝手にそこに至るまでのストーリーを妄想して、悪夢見そうになるんですよね…。ストーリー上、首吊りや目を抉られる、内臓をぶちまけて死ぬなど直接的なグロもあるんですが、実は本当に怖いのはこういう小さい描写の積み重ねだと思う。性質悪いです(笑)。

更に怖さに拍車を掛けているのが、キャストの熱演…というか怪演振りですね。ゲームの性質上、キャラクターが殺されたり正気を失ったりする展開が多いんですが、演技が真に迫ってるせいで思わず飛ばしたくなる怖さ(笑)。バッドエンドで生き埋めにされる展開とか、マジで埋め殺されてそうな声出してるんですが…。某霊媒体質の少女がパーティーから外れた時なんて、「ああ、これ絶対ヤバい反応返ってくるけど、話しかけないとストーリー進まないんだよな…」とかビビります(笑)。これ、やった人なら分かってくれるはず。

他のレビューなどを読むとストーリーが絶賛されてますが、個人的にはホラーとして楽しめはしたけど、目から鱗が落ちるほどではなかったかな…という印象。むしろメインストーリー自体よりも、極限状態に置かれた人間のドラマが非常に面白かったですね。不安から、些細な事でも仲違いを起こしてしまったり、精神の安定を求めて異常な行動を示したり、隠し持っていた生来の凶暴性が異常に亢進したり…。勿論そんなマイナス面だけじゃなく、絶望的な状況下での献身や、立ち向かう勇気など熱い部分もあって、非日常ならではのドラマティックさが演出されています。

ただ、やはりストレスの溜まる仕様もあるので、万人にお勧めとは言えないですね。元が古いゲームとはいえ、移植時にどうとでも出来たはずなので。ぶっちゃけフルプライスで購入してこのゲーム性なら高く感じてたと思います(笑)。1000円ちょっとだったので、まあ値段以上は楽しめましたが…。あと個人的に微妙に納得行かないのは、青の幽霊は安全、赤の幽霊は危険…みたいに言われてたのに、大抵青く発光する幽霊がバッドエンドの原因な事ですね(笑)。一体なんなんでしょう、このミスリード…。


KRYPT - Preludes to Death ★★★ (2014-06-29 23:54:02)

2008年発表の1st。

一時的に活動停止状態にあったTSJUDERのメンバーにより結成されたという経歴、そして裏ジャケに燦然と輝く「True Norwegian Black Metal」のロゴ…この時点で、混じりっ気のないピュアなブラックメタルを演っているのは容易に予想が付きますね(笑)。TSJUDERと比較すると、こちらはブラストでの暴虐な爆走の頻度は抑え目な代わり、オールドスクールなミッドテンポやスラッシーな疾走をより多く取り入れている感じ。

このバンド、流石に「TNBM」ロゴを掲げるだけあって、音作りが「分かってる」んですよね。オールドスクールなリフの中にアクセントとして用いられるトレモロは、ノルウェー産特有の土着的な邪悪さを帯びているし、プロダクションも綺麗過ぎず、ブラックの生々しさを残した上で聴きづらくない音で良質。オールドスクールな作風に上手くマッチした音質だと思う。バンドの勢いがダイレクトに伝わってくる。ヴォーカルもただがなるだけじゃなくて、気合というか怒気が伝わってくる感じで良いですね。

This is Black Metalとでも言いたくなるような、ジャンルのど真ん中に位置するような音。普段からノルウェー産ブラックを聴いている人は初めて聴いた気がしないんじゃないでしょうか。威厳も伴っていてなかなかの好盤です。


UNDER THAT SPELL - Black・Sun・Zenith ★★ (2014-06-29 00:11:19)

2011年発表の2nd。
残念ながらこのアルバムのリリース後バンドは解散している模様。

Metal Archivesで調べたんですが、このバンドはメンバーがドイツのペイガン/メロディックブラックとしては割りと知名度の高い、HELRUNAR絡みなんですね。そのせいか、主にトレモロリフによって奏でられるメロディには、神秘性や叙情性が強く押し出されているという印象。これがノイジーなトレモロを伴う、寒々しい音像と合わさると更に神秘性を増すんですよね。

メロディは幽玄さやメロウさの感じられるものですが、暴虐性もガチ。体感速度をぶっちぎるブラストをメインに据えたリズム構成は完全にファストブラックのそれですし、音像の中を木霊するように絶叫するヴォーカルの声もかなりエグい。若干、ミドルパートが淡白な傾向があるようにも感じますが、ツーバスのフレーズを上手く仕込んだり緩急の付け方は巧み。

メロディアスさと暴虐性という、ブラックの分かりやすい魅力を詰め込みつつ、神秘的なイメージも感じさせる作品。サウンドのクオリティも高いですし、これであともう一つ抜きん出た何かがあれば…という感じです。まあ、残念ながらバンドは既に活動をしていないようですが…。


山本弘 - 詩羽のいる街 ★★★ (2014-06-29 00:07:33)

2008年に単行本として出された小説。2011年に文庫版も出てます。

お金や家を持たず、人との繋がりの中で暮らす女性、詩羽。人と人とを繋げる触媒としての才能を持ち、「人に親切にする事」を生業として生きる彼女の、日常や人々との触れ合いを描いた作品。ぶっちゃけあらすじだけ読むと、そこまで好奇心を掻き立てられるような感じはしないんですが…これ、滅茶苦茶面白かったです(笑)。

まず言いたいのが、これは「物凄く贅沢な小説」だという事。
作中に登場する作品が、それだけで単行本出せそうなくらい面白そうなんですよね。例えば、幽体離脱の能力を持つ少女が、あるきっかけで大気圏外に人々の叶わなかった想いの残滓が漂う場所を見つける「衛星高度の魅祐姫」や、ほぼ全能の力を手にした少女の顛末を描いた「戦場の魔法少女」は、筋書きだけ読んでもエンターテイメントとして非常に面白く、かつ教訓も含んだもの。

しかもこれらの作中作品は、作者や読者などのキャラクターの心情と絡めたり、物語における重要な伏線となったりしながら、その内容が語られるんですよね。特に「戦場の魔法少女」は、その壮絶なストーリーを思いついた発想力と、それを本編の展開と絡めてグイグイ引き込んでいく筆力に感嘆。最初は、こんな面白そうなストーリーを作中作品だけで終わらすのは勿体ない…と思ってたんですが、再読したら、これは最高の素材を最高の方法で調理したと言えるのでは…と思うようになってきました。

もうひとつ大きな魅力としては、キャラクターの会話などに筆者の主張や、思ったであろう事が滲み出ていて、エッセイ小説的な楽しみ方が出来る事ですね。第1話での編集者が漫画をスポイルする事についてや、商業出版のボッタクリ振りなどを始め、そこだけ読んでも興味深いと思えるような箇所もかなりあります。第3話の「『今まで通りの生き方を続ける事』が人生の目的になってしまっている人」という表現なんて、正に自分の事を言い当てられたようでドキリとしました。

個人的に地味に共感できたのは、第1話の主人公がパソコンの不具合を診るパートでの、喫茶店マスターとの会話。「不正な処理を行ったので強制終了されます」じゃないだろ、「申し訳ありませんが、このプログラムは不具合が生じたので終了させて頂きます」、だろ。…全くだ(笑)。エンタメ作品って、筆者の主張が過ぎると辟易してしまう事も多いですが、この作品はむしろ主張が強く出てる箇所の方が面白いと思ったり。「衛生高度」の魅祐姫と城主の会話とかはその典型ですね。あそこは共感というか、グッと来ました。

ただ、詩羽のキャラやその日常を描く、優れた導入部である第1話、自殺しようとしている少女を止めようと奮闘する第2話、悪意を街にバラ撒く人間との対決を描いた第3話に比べ、お祭りのオリエンテーリング中心の第4話が、いまいち盛り上がりに欠けるのは個人的には不満かも。まあ、第4部も今までの物語を踏まえた上での心情描写や、オリエンテーリングの謎解きがとある伏線になってたりといった仕掛けがあって、面白いといえば面白いですが。第3部までにはしっかり感じられた、エンタメとしてのスリルが若干足りないというか。

一本の小説に、ライトノベル数冊分のストーリーとエッセイをぶち込んで、尚且つハートフル(not onlyハートウォーミング)なエンターテイメントとして成立させた、盛り沢山で素晴らしい作品。これを読んで、これからこの人の新刊はなるべく出たらすぐ買おう…と思いました。確かに筆者の主張が強く感じられる分、説教臭いという意見も分かるんですけど、説教自体が面白くて聞き入ってしまう感じです。あと読後にポトフが食べたくなります(笑)。


高野和明 - ジェノサイド ★★ (2014-06-26 01:43:11)

2010年より雑誌で連載が開始、2011年に単行本、2013年に文庫版という形でリリースされた小説。私は安生正氏の「生存者ゼロ」を読み終えて「何か面白そうな本ないかな?」と探していてつい手に取ってしまったんですが、この小説も「生存者ゼロ」同様に、人類が滅亡の危機に晒される作品。なんか壮大なスケールの話が読みたい気分だったのかもしれません(笑)。

この小説、結論から言えばかなり面白かったです。
特に人類滅亡の原因となりうるものの正体が明かされたときには、センス・オブ・ワンダーを感じられて凄くゾクゾクし、「これが小説を読む醍醐味だ」とも感じました。また、作中でのエピソードの挿入も上手く、人類滅亡の要因を研究した資料「ハイズマン・レポート」はここだけ読んでも興味をそそられるし、余りにもむごい少年兵の生い立ち、及びその救いのない結末はハリウッド的なエンタメ感に溢れる作品に、ピリッとした緊張感を与えてると思う。読者を引き込み、ページを捲る手を止まらなくさせるような、エンターテイメントとして非常に上質な作品だと思います。

ただし、やはり不満点も幾らかあるんですよね…。
まず余りにも自虐史観に立ちすぎてるという批判が目に付きますが、これは自国の汚点を敢えて描く事で、読み手に当事者感を与えたかったのではないかと。確かに娯楽作品としては押し付けがましさを感じなくもないですが、話全体から見れば枝葉に過ぎない部分だしまあ良いです。文章は読みやすいですが、専門的記述は若干クドめかもしれません。蛋白質の構成とか説明されてもピンと来ないし、ピンと来なくてもストーリーを追うのに全く問題無いので、もっと簡潔に出来たのでは、とも思いますね。でも、イラク戦争を石油利権で片付けてるのは、乱暴だけど娯楽小説としては許されるのかも。背景を何ページにも渡って長々と説明されても本筋から外れるし。

ただ、伏線の張り方が不十分なのは頂けない。主人公が韓国人の留学生を相棒にするにあたり、日本人と韓国人の関係について罪悪感を持っているようなエピソードが挿入されるのに、それが留学生との関係に於いて何も反映されていなかったり、コンゴに向かう傭兵達は多大な犠牲の上に選び出されている筈なのに、今ひとつこの4人である必然性が薄く感じられたり…。また、粗暴な日本人兵「ミック」と優秀過ぎて主人公を食ってる留学生「正勲」は、明らかに掘り下げが足りていないように感じます。特に正勲は活躍の割にバックボーンが薄いせいで物語を進める為のコマの様に思えてしまう…。

もう一つ不満だったのは、「人類の脅威となりうるもの」の正体自体は非常に興味深かったんですが、その描写や人類に対しての攻撃方法、人類からの自衛方法が期待してたよりも陳腐に感じられたのが残念。この辺りの描写を、例えば貴志祐介氏の「新世界より」の世界の変容の仕方であるとか、山本弘氏の「アイの物語」「去年はいい年になるだろう」に於けるアンドロイドの思考・行動様式くらい、緻密かつ知的好奇心を煽るように描いてくれていれば、個人的には大傑作だったんですが。まあ、アレが人類の脅威となるという発想と、それを絡めた壮大なストーリーだけでもエンタメとしては傑作とは思いますが。

確かに面白かったんですが、貴志祐介氏の「天使の囀り」「新世界より」を読んだ時のような、この話の面白さを一刻も早く誰かと共有したくなり、いても立ってもいられなくなるようなあの感じ、それが得られたとは言えないですね…。その感覚を求めて小説を買ってるんですが、最近でそれに近い感覚を得られたのは山本弘氏の「神は沈黙せず」くらいでしょうか。ぶっちゃけ貴志氏の新作「雀蜂」も微妙な内容だったし…。そういう感覚を味あわせてくれる小説を知ってる方がいたら、是非私に教えて頂きたいです。


DIVINE CODEX - The Dark Descent ★★★ (2014-06-22 13:18:46)

2011年発表の2nd。

BEHEMOTHやARKHON INFAUSTUSなどを始め、デスメタル的な重さ・禍々しさを取り入れるブルータルブラックは多く存在しますが、これはその中でも素晴らしい逸品と言えるのではないでしょうか。基本的には、ある程度の緩急は付けつつも、暴虐なブラストと重々しいリフで殲滅する、直接的なブルータリティを叩き込むような凄絶なブルータル・ブラック。

このバンドは更に、そこにアトモスフェリック・ブラックのバンドがやるような、神秘的な魔的トレモロリフを被せてくるのが特徴なんですが…これが凄まじくかっこいい。単にメロウとか邪悪とかじゃなくて、どこかカリスマ性を感じさせるのが素晴らしいです。また、ヴォーカルも低音中心ですが、ただのグロウルではなく、Attila Csihar的な呪わしさを感じさせてくれる雰囲気のある声なのがまた良いです。

単にブルータルブラックとしてクオリティの高い音を出しているというだけでなく、凡百のバンドでは持ち得ない「カリスマ性」の感じられる稀有な作品。激オススメです。


SNAI~GALA - Kristallen ★★ (2014-06-22 13:13:33)

2008年発表の2曲入りデモ。
トールケース仕様は81枚、通常仕様は227枚限定。

このトールケース仕様が安価で売られていたのと、銀色のラメの入ったケースがお洒落だったので購入してしまったんですが、この1曲目が雰囲気物のブラックとしてはかなり優秀。どこかぶよついたような低音と、人生に疲れたようなスローテンポのリズムの上を、神秘性と鬱感情の入り混じったトレモロを執拗に繰り返していくスタイル。約15分の長尺曲ですが、トレモロのメロディが良いので思わず時間の感覚を忘れてしまいそう。バンドサウンド主体ながら、アンビエント・アトモスフェリック志向が強く滲み出た、マニア向けながら良曲。2曲目はNEPTUNE TOWERSやVINTERRIKET辺りに近い雰囲気の、効果音を交えたブラック・アンビエント作品。メロディより音響重視な感じですが、正直こっちはこの手としてはごく普通な印象。

限定枚数は厳しめですが、プレミア価格で購入する価値があるかというとちょっと微妙かも。1曲目は割と良い感じなので、通常のEPの価格であれば、マニアならば買って損はない…かも。


安生正 - 生存者ゼロ (2014-06-22 13:07:39)

2013年に単行本で発刊され、翌年に文庫化された小説。
「このミス」大賞シリーズという鳴り物入りの刊行。

この小説、読んでる時はそれなりに楽しかったし、災害のスケールが膨れ上がっていく描写にはスリルを感じもしました。ネタバレになるので書けませんが、中盤に物語の根幹に関するどんでん返しがあり、それがあるからこそのスペクタクルでスケールの大きい展開も面白かったと思います。ただ、色々なところで詰めが甘いように思うんですよね…。

まず、無意味に風呂敷を広げ過ぎ。この世界観では、大量絶滅の兆候が現れると、「神」が絶滅すべき運命の種族の誰か(主に兆候となる現象に立ち会った者の中から選ばれる)に語りかけ、その種族の行く末を委ねる「御使い」とする…みたいな設定があるんですが、これは単に「大量絶滅」という自然現象の前兆を、人間の文化や感性で解釈するとこうなるのか、それとも実際に地球意志的な超自然の存在である「神」が存在するのかが曖昧。

更に「『御使い』が絶滅すべき種族から選ばれる理由」や、「『御使い』が『神』の業を肯定的に捉える理由(作中の予言では、『御使い』は『神』の言葉を『あなたの裁きは真実で正しい』と肯定する)」など、読者として最も気になる謎がぼかされたまま終わるのが納得行かない。

一応、作中では何人かが「御使い」(候補?)として見出されるのですが、一人はその重さに耐え切れず早々に退場、一人は薬物で人格が変異し無批判にそれを受け入れ、もう一人は結局最後までそれが何だか良く分かってない…と散々。普通こういう場合、全てを理解した上で受け入れるキャラを用意する事で、そのキャラの理解や心情の動きを通じ、読者と謎の解明を共有していくのでは…。もっと上手い謎解きの方法があれば勿論そっちの方がいいですけど、結局納得の行く答えのないまま終わってしまいますからね…。

第2に、キャラクター造型が甘い。ご都合主義としか思えないタイミングで登場する弓削、無能を絵に描いたような政府陣は特に酷いと思う。特に政府陣、例えどんな政党が政権を握ったとしてもあそこまでの無能は集まらないと思う。政治家を無能に描く事で、災害への対応が後手に回りがちなのを批判したつもりなのかもしれませんが…その無能さの描き方が余りにも現実離れしているので、逆に滑稽に見える。保身に走る権力との対決も描きたかったのかもしれませんが、そこで描かれるべき権謀術数が描かれず、ただ駄々を捏ねるだけの相手ではエンタメの敵役としては役者が足りないと思う。

第3に、展開の詰めが甘い所が見受けられる。例えば、災害の犠牲となった人々が、体を掻き毟ったり倒れ込んだりすれば、確実に何らかの痕跡が体内に残る筈なのに、本職の研究者が解析してもなかなか解明できない。せめて痕跡が残らなかったり、解明できないことに合理的な理由付けが欲しかった。また、災害への解決法が偶発的過ぎて、せっかくのスペクタクルなクライマックスの筈なのに、カタルシスが弱い気がする。「そんな手があったか!」じゃなくて「え?それで解決しちゃうの?」っていう感じ。あと文章自体も読みやすいとは言えないかも。地の文の筈なのに妙に主人公サイドに肩入れしたり、専門的な事柄が要約されずに冗長に説明されてたり、微妙に配慮に欠けるんですよね。

素人目には、専門的な記述は簡潔にして文章量を減らし、代わりに「二つ目の第5の鉢」=「下弦の刻印」と人類の対峙や、「神」「御使い」が暗示するものの解明、及びそれらとの対決なんかを盛り込んで、第2第3のクライマックスを設けてみたり、政府をもっと有能に描き、「主人公勢vs政府vs災害」ではなく「主人公勢&政府vs災害」の構図にして、人間の知性と災害との知恵比べ的な側面をより強く打ち出したりした方が面白かったように思うんですが…。まああくまで素人の意見です。プロの編集者的にはこっちの展開の方が面白いと判断したのでしょう。でもこの謎の解明されなさはちょっと…。

…とまあ、批判ばかりしてしまいますが、中盤までの災害の真実を追う展開はかなり面白かったし、富樫の息子の死が実は大きな伏線になっていたのも興味深く楽しめました。ただ、中盤までの展開を読んで期待したほど、納得の行く後半部ではなかったな…という印象があるのも事実。例えば貴志祐介氏の「ISOLA」や「天使の囀り」のように、伏線を回収しつつ、作中の謎に明確な答えが出るような展開を期待していたんですが…それに答えられていれば、個人的には名作になったかもしれないんですけどね。ミステリーの魅力は伏線の回収にこそあると思うので。

ちなみに、参考文献が災害の原因及びその対処法へのネタバレになってますので、この本を読むときは後ろから読むのは絶対の禁忌です(笑)。


みんなのテニス ポータブル ★★★ (2014-06-19 23:56:40)

2010年にソニーがPSPで発売したテニスゲーム。
ダウンロード版もあるのでVITAを持ってればプレイ可能。

寝る前のちょっとした気晴らしに出来て、安価なゲームソフトを探してて、たまたま目に付いたので購入したんですが、これがかなり面白い。就寝前の時間どころか休日をまるまる費やしてしまったくらいにハマりました(笑)。元がテニスというルールの完成されたゲームで、レスポンスが良く、直感的にキャラを動かせる操作感が加われば、面白くないわけがないですね。取り敢えずある程度のルールを把握していれば、最初の試合から十分にゲームの楽しさを満喫できるでしょう。3頭身のキャラも愛嬌があって良いです。

面白いのが、インパクトのタイミング。遅いとカメ、早いとウサギ、ジャストだと音符マークが表示されるという、「みんなのGOLF」同様の仕様ですが…みんゴルでは「ウサカメ」を出すメリットが無かったんですが、こちらでは敢えてジャストでない箇所で打つことで、急な角度が付いたり、相手の虚を付いたタイミングになったりするので、強ち「ウサカメ」も無駄ではないのが面白いです。狙い過ぎると角度が付き過ぎてアウトになったり、タイミングがズレすぎ(髑髏マーク)でとんでもない方向に飛んで行ったりするので、基本はジャスト推奨…というバランスが絶妙。強敵相手に追い詰められて駄目もとで打ったボールがライン際ギリギリでインした時とかガッツボーズもの(笑)。

また、ゲーム全体を通じて積極的にプレイヤーを楽しませようとする意欲が感じられるのも素晴らしい。まずは難易度ですが、ゲーム前半は敵がかなり弱く、操作感に馴染みきれてなくても何とかなってしまいます…が、後半はこちらの動きに対応してきますし、ラスボスクラスになると甘い球はほぼ確実にスマッシュ打たれるのでなかなか歯ごたえがあります。この難易度の変遷も上手い。後半やラスボスもゲームを一通り遊んで操作に慣れれば無理ゲーという訳ではなく、三回同じ相手に負ければ相手の段位(=難易度)が下がるイージーモードが解禁されるので、ストーリー進めやキャラ開放にストレスが少ないのも良いですね。イージーモードが相手の段位が下がる(=勝っても自分の段位が上がらない)くらいで、ペナルティが無いのもいいと思います。

単に敵を倒していくというだけでなく、フィールド上の人物と会話したり、宝箱からアイテムを見つけたり、ショップでコスチュームやラケットを購入したりといった、RPG風の仕様も面白いですよね。操作キャラによって会話が変わったり、対戦を申し込めたりなども芸が細かくてグッド。あとこのゲーム、コスチューム選びが滅茶苦茶楽しいです(笑)。男女で使えるパーツに殆ど差がないので、サラリーマンのオッサンに甘ロリ+ガスマスク+戦国武将のノボリみたいなイカれたコーディネイトも余裕で可能。私的には髑髏マスクとサンタの髭、王冠、王様の服辺りのコーディネートが好きですね。リッチとかワイトキングみたいな高位アンデッドぽくてかっこいい(笑)。

不満だった点は、コートの仕掛けがただのストレス要因でしかない点ですね。特にイラついたのはラグーナアイランドの床。修理跡っぽい箇所に触れるとたたらを踏む感じで一定時間行動不能になるという仕掛けですが、最初ただの模様だと思ってたので何故突然操作不能になるのか分からずイライラ…。タネが分かっても凄まじく邪魔。ラスボス撃破後に戦える相手でこのコートに来たときはげんなり。まあ、プレイに影響が出るようなギミックのあるコートはごく僅かなのが救いですが。

ちなみに今はベスト版が出てて、値下げが敢行されたこともあってDL版を1500円以下で買えてしまいます。正直この内容でこの値段は凄まじくお買い得。買ってすぐに楽しめるシンプルさと、のめり込める熱中性のある非常に楽しいゲーム。興味を持った方は是非。ほんと面白いです。


NOSTALGIE - As Life Disappears ★★ (2014-06-19 22:58:17)

2011年発表の4曲入りEP。
と言っても1曲が長めで、約30分とEPとしてはボリュームは割と多めですね。

関連バンドに名うての鬱ブラックバンドが名を連ねていることからも分かる通り、このバンドもその流れを汲む作風ですね。遅めのテンポとノイジーな音作りで精神を侵食しようとする構成、ガラガラに歪み切り、凄みを感じさせるがなり声を聴かせるヴォーカルと、鬱ブラックの様式を踏襲した音で、ノスタルジー通り越して絶望感すら漂っている感じ。

ただこの作品、絶望感だけでなく、ポストブラックのバンドが持つような神秘性や儚さも同時に感じさせるんですよね。例えば敢えて歪みの少ない音でトレモロを奏で、鈴の音のような非日常性を感じさせる音色を演出したり、若干ブルージーに感じるような渋めのメロディがあったり、メロウさを演出するのにかなり工夫している印象。このトレモロとアルペジオの組み合わせがなかなか神秘的で良い感じです。

鬱系ですけど、自己満足的なマニアックさはあまり無く、神秘的で非日常的な世界観を上手く演出出来ている作品。この手が好きであれば買っても損はないかと。


NOSTALGIE ★★ (2014-06-19 22:56:07)

カナダのAbleben氏を中心に、アメリカのA. Morbid氏(HAPPY DAYS, PRETEEN DEATHFUK等)、フランスのLord Lokhraed氏(NOCTURNAL DEPRESSION等)らによって結成された、様々な国籍のミュージシャンが集まった鬱ブラック。現在ではメンバー構成がかなり変わり、BLACK HATEやLUPUS NOCTURNUSなどでの活動でも馴染み深い、メキシコのB. G Ikanunnaらが在籍している模様。


STORMNATT - The Crimson Sacrament ★★ (2014-06-19 22:50:22)

2009年発表の2nd。

大もとにあるのは、DISSECTIONやWATAIN辺りを代表とする、ブラックの湿り気や宗教的な雰囲気、邪悪さや寒々しさなどを感じさせつつ、Rawさではなく構築性も感じさせるメロディック・ブラックだと思うんですが…それらのバンドの影響を踏まえつつ、楽曲のより多くの部分をメロディアスなトレモロで多い、更にメロウさを強調したような作風ですね。

このバンドの場合、メロディから感じるのは邪悪さや寒々しさよりも、神秘性や儚さなんですよね。敢えて聖歌を思わせるような、神聖さを感じさせるメロディを用いる事で逆説的にそれらを汚している感じでしょうか。メロブラではこの手のトレモロをクライマックスで用いたりする手法が多いですが、このバンドは全編通じてそんな感じ。ただ、メロいのは良いんですけど、個人的にはDISSECTIONやWATAINと比べると起伏が少ないかな…という印象も。贅沢な悩みですけど。

と言っても、プロダクション、リズム、ヴォーカル等基本的な要素はブラックの様式をがっつり踏襲しているので、決して半端な雰囲気ではありません。それでいてポストブラック勢以上にメロディアスなので、メロウ派はチェックしてみては。


NAE'BLIS - Beyond the Light ★★ (2014-06-19 22:45:13)

2004年発表の1st。

刺々しく、人を寄せ付けないムードのノイジーなプロダクションに、儚げなアルペジオやメロウなベースライン、泣きの篭もったリードメロやアトモスフェリックにバンドを包み込むキーボードなどを交え展開する、鬱要素の強いミッドテンポ中心のブラック。絶叫するヴォーカルをやや引っ込み気味にし、音が割れたようなノイジーなリフを前に出したプロダクションが結構独特で、メロウながら厭世的なムードが色濃く出ていますね。

ただ、基本的に刺々しい音作りながら、キーが入るパートや妙な味のあるドラムと共に疾走するパートなど、音数が増えるような箇所では相対的にノイジーさが軽減されて良い感じに。また、アルペジオのフレーズは鬱ブラックの中でもかなり秀逸な方で、聴き手を徐々に俗世から切り離していくような魅力がありますね。中でも前半部をヴォーカルとキー、アルペジオのみで聴かせ、儚さを強調した「…and I shall exist no more」は異色で出色の出来。他の曲では世を疎んじて苦悩していた感じですが、これは既に召されかけてます(笑)。

2004年というとまだポスト/シューゲイザー志向のブラックって一般的では無かったように思いますが、これは鬱感情メインながら若干そういったテイストも入っている気がします。何気に疾走パートの使い方も面白い好盤だと思います。


ORENDA - The Funeral ★★ (2014-06-16 23:59:33)

2007年発表の2nd。

発売元がNo Colours、ブラックメタルのディスクレビュー本でも取り扱われていたアルバムで、ある程度有名な作品なのかもしれませんが…出音はかなりマニアック。まず耳を刺す系の鋭さではなく、押し潰されるような抑圧的な感触の強い、ザーザーしたノイジーリフの支配するプロダクションがかなり強烈。暴虐さよりも聴き手をトランスに導く事に重きを置いたような、シンプルな疾走を中心としたリズム、それを軸としたほぼ最低限の展開など、カルトなプリミティブブラックの様式を踏襲。

ただ、ノイズの中から幽かに漏れ聞こえてくるようなメロディの使い方がかなり上手く、決してマニアックなだけな作品になっていないのも特徴ですね。ノイズの雪崩に押し潰され、意識が遠のく中で僅かな光の明滅を見ているような感じ。それを奏でるトレモロやキーボードの音色自体もかなり神秘的なんですが、極端なプロダクションがその神秘性を底上げし、更に魔的なムードを高めている感じ。ヴォーカルが今にも死にそうな感じの呻き声なのもムード作りに貢献してますね。

確かに内容的にはマニア向けと言える作品ですが、「こういう音」が好きなマニアであれば納得頂ける作品かと。


HINSIDIG - Bak og forbi... ★★★ (2014-06-16 23:47:05)

2009年発表の5曲入りデモ。
Pest Productionsから1000枚限定でリリース。演奏時間は32分程度。

Pest Productionsが目を付けることからも察せられると思いますが、幽玄なアルペジオやアトモスフェリックにバンドサウンドを包むキーボード、メロウに掻き鳴らされるトレモロなど、エモーショナルな情景を描き出す「ポスト」要素の強めなブラックメタル。この手のバンドって、最早ブラックよりシューゲイザーに近い音を出してたりしますが、このバンドはこの時点ではブラックに両足突っ込んだままという感じの出音。

楽曲自体は深山幽谷を感じさせるような、湿り気のあるアトモスフィアの強い感じなんですが、実はバンドサウンドは若干Raw。時にテープ起こしっぽい歪み方をしている辺りリアル。ただこの音が、情景に深みを与えているような気もするんですよね。また、トレモロに込められたメロディは、儚さやメロウさだけでなく北欧産らしい土着性も感じられたり、ヴォーカルが引き千切るような歪み切った絶叫を聴かせてくれたり、やはり「ポストブラック」と言い切るには、北欧ブラックの感性がかなり強く出ている印象。

デモという位置づけですが、それなりにボリュームはありますし、何よりしっかり狙ったであろう世界観を提示出来ているのが好印象です。レーベル買いしても損はないかと。


CHTHONIAN - The Preachings of Hate Are Lord ★★ (2014-06-16 23:41:24)

2010年発表の2nd。

ショップではFINNTROLL絡みという事もあって、結構大きく扱われていたような記憶があるんですが、そのイメージを引き摺ってると最初の一音でぶっ殺されますね(笑)。時折グルーヴのあるパートも交えて起伏を付けながらも、基本的にはデスメタル由来の禍々しいリフと暴虐極まりないブラストビートで殺しに来る、暴虐極まりないブルータル・ブラック。

クリアながら、泥臭い重さも持ったプロダクション、デス的な「うねり」を伴いつつ、邪悪さを発散するリフ、野太い咆哮を聴かせる力強いヴォーカルなど、どの要素を取ってもエクストリームメタルとしてかなりハイレベル。FINNTROLLのネームバリューで買ってしまったなら、妖精の宴だと思って近づいたら蛮族の虐殺・略奪の真っ最中だった…みたいな印象を受けること請け合い(笑)。こっちは陽気さとか無いですもん。あったとしても犠牲者の血を浴びてハイになってる感じ。

ネームバリューと関係なく、殺気に満ちた暴虐メタルとしてはかなり良い線行ってると思う音。暴虐だけど、一本調子にならないダイナミックさが良い感じです。


CHTHONIAN ★★ (2014-06-16 23:37:13)

フィンランド産デス/ブラックメタルバンド。
FINNTROLLのメンバーが在籍していることでも有名。


GRONDHAAT - Humanity : the Flesh for the Satan's Pigs ★★★ (2014-06-15 13:47:14)

2011年発表の1st。

音の方は、どこか湿り気を感じさせる、ノイジーさの強い音色のトレモロを伴い、シンプルに疾走していく、「如何にも」なプリミティブ・ブラックですが…レーベル(Ketzer)がVINTERRIKETやCIRITH GORGORなどある程度有名なバンドの作品をリリースしてる所だけあって、この手としてはかなりツボを突いた作品なのではないでしょうか。

この作品、トレモロリフを多用しているだけあって、よく聴くとメロディアスな側面もあったりするんですが、パッと聴いての印象が全然メロウじゃないのが面白いですよね。それくらいメロディが陰湿。厳かに呪いの言葉を吐き続けるように呻くヴォーカル、地下臭く湿ったプロダクションもあり、その陰湿さは更に強調されてます。中盤にBEHERITの「The Gate of Nanna」のカヴァーを挿入してますが、原曲からして密教的なムードの強い楽曲だっただけに、全く違和感なくハマッていますね。

聴いているだけで肩が重くなってきそうな、根暗なムードに特化したようなダウナー系プリミティブ・ブラック。これを流しているだけで部屋がカビ臭くなってきそうです(笑)。


ANCIENTBLOOD (VINTERTHRON) - The Profane Hymns of the Sovereign Darkness ★★ (2014-06-15 13:42:48)

2002年発表のデモを、2007年にCD化して再発したもの。

なんか作品タイトルがかなり大仰ですが、音楽性の方はむしろシンプルな、オールドスクールでRawなブラックメタル。スラッシュからの影響が強く、しっかりと起伏を持って聴かせるリフはGORGOROTHやCARPATHIAN FOREST、TAAKE辺りの北欧バンドの影響が強そう。ただし北欧的な叙情性やメロウさはかなり控えめで、代わりに南米産らしいダーティな熱さが強い感じですね。意外にもヴォーカルは鬱系によくあるタイプの裏返りながらの絶叫ですが、こういう楽曲だと悲観的な感情よりもヤケクソさの方が強く伝わってきますね。

南米のアングラな熱気を上手くCD盤に封じ込めたような、衝動性の高い作品。演奏時間は約17分と短めですが、その分熱気は伝わってきます。そしてバンド名はこっちの方が分かりやすくて良かった気が…。


ANCIENTBLOOD (VINTERTHRON) ★★ (2014-06-15 13:40:47)

ブラジル産ブラック。
現在はVINTERTHRONと改名。


ANIMUS MORTIS - Atrabilis (Residues from Verb & Flesh) ★★★ (2014-06-14 17:55:25)

2008年発表の1st。

南米産のブラックというとRaw、オールドスクール、スラッシー、ダーティ、プリミティブ…など、いわゆる衝動性の高さを表すようなキーワードが浮かんできますが、このバンドはチリ産ながらその辺りとは一線を画した、魔的で神秘性の高い、ドス黒い邪悪さの渦巻くブラックメタルを展開。個人的には、ギリシャやドイツのカルトなバンドがこういう音を出しそう…という印象なんですよね。

ツーバス、ブラストを駆使し暴虐の限りを尽くすリズムの上に乗るリフは、トレモロを多用していながらメロディ成分を前に出さず、ノイジーな質感が強調されているんですが、これが凄まじく邪悪。ノイズの中からメロディがうっすら聴こえてくるような音作りは、メロディそれ自体の禍々しさとも相俟って、「魔」と対峙するような凄みを発してます。また、箍が外れたように絶叫するヴォーカルに、深めのリヴァーブが掛かっているのも、聞き手を非日常の世界に没入させるのに一役買ってますね。

あるレビューでは、この作品を批評するのにLUNAR AURORAが引き合いに出されてましたが、私もまず似た雰囲気を持つバンドとして浮かんだのがLUNAR AURORAでした。巨大な影が横切るかのような、不安が加速していくような魔性なムードが、あのバンドの「Mond」アルバムと共通してると思う。これは邪悪さに惹かれる人であれば、確実に何かしら感じるものがある作品ではないでしょうか。かなりお勧めです。


FJOERGYN - Jahreszeiten ★★ (2014-06-14 17:51:55)

2009年発表の3rd。

ドイツ産のエピック/アヴァンギャルドブラックとの事ですが、基本ブラストも交えたエクストリームな音作りながら、フォークやクラシックの影響の見えるキーボードが華やかに楽曲を彩りつつ、マイルドな男性クリーンヴォーカルも交え知的に展開していく作風は、スウェーデンのVINTERSORG辺りに近いでしょうか。あのバンドの、フォーク色薄め、プログレ色濃いめの時の作風と大分近い雰囲気があると思います。

特筆したいのはメロディの豊富さですね。バンド紹介で「エピック」の冠が付くだけあって、幻想的でドラマティックなメロディが中心ですが、楽曲によってはクラシックの交響曲の大団円のようなエンディングがあったり、ポストブラックのクライマックスの如く儚いトレモロとブラストを組み合わせたパートがあったり、かなり耳を惹く部分が多い印象。ただ、ギターが泣きメロを奏でるパートも多く、メタルとして地に足が着いた音作りがされており、過度にアヴァンな方向へは行っていない感じ。

VINTERSORG、SOLEFALD、SOURCE OF TIDEなどの、暴力性よりも知的さや構築性の高いバンドが好みな方にお勧め。派手なメロディもあり決して取っ付きづらい音という訳ではないと思います。


OSCULUM INFAME - Manifesto from the Dark Age ★★★ (2014-06-13 19:27:13)

2010年発表の音源集。
94年発表のデモ「Sadomatic Impure Artgoat」、95年発表のデモ「I’a Aem’nh S’hat’n」、96年発表のFUNERALとのスプリットに収録された2曲を纏めたコンピレーション盤で、イントロ等を含めて14曲となかなかのボリュームのある作品。

「Sadomatic Impure Artgoat」
まずこの音源がかなり素晴らしいです。1994年といえばMAYHEMの「De Mysteriis Dom Sathanas」やDARKTHRONEの「Transylvanian Hunger」などの伝説的なアルバムがリリースされた年でもありますが、これらノルウェーのブラックから良い影響を受けているな…というのが伝わる作品。リフに込められた陰湿で呪わしい雰囲気はMAYHEMに、Rawで衝動性の高い、シンプルな楽曲構成はDARKTHRONEにそれぞれ通じるものがあり、フランスのバンドながらノルウェー産ブラックの衝撃をそのまま体現している音楽性と言えるように思います。フレンチブラック好きも北欧ブラック好きにもお勧めできそうな音。

「I’a Aem’nh S’hat’n」
こちらは「Sadomatic~」で提示した音楽性をある程度踏襲しつつも、良くも悪くも変化してますね。時にリフとユニゾンしたり、時にRawなバンドサウンドを包んだりする、アトモスフェリックでオカルト性の高いキーの音色は、BURZUMやEMPERORの影響でしょうか。こちらはプリミティブ指向なためそのどちらとも異なる音に仕上がってます。また、ノイジーさがより強調され、生々しさだけでなく金属質な感じも帯びてきたように思います。メロディにはフレンチ産らしい不吉さが強くなってますが、個人的には「Sadomatic~」の方がシンプルで好みかも。尚、スプリットの音源もこの路線を引き継いでますが、音像や楽曲の展開がより苛烈になっている感じ。

あと全音源において特筆したいのが、ヴォーカルの素晴らしさですね。当時のNocturno Culto氏並に「歪み」の強いがなり声ですが、彼よりも更にヤケクソ感の強いパフォーマンスを聴かせてくれます。ブラックのヴォーカルの中でも「邪悪さ」「衝動性」はかなり強い声だと思う。マイクを噛み千切りそうな程の狂犬振りが凄まじい。

ぶっちゃけノルウェー産バンドの影響受けまくりではあるんですけど、ここまでしっかり邪悪さを演出できていればぐうの音も出なくなりますね。フレンチブラックの古豪の底力を見せ付けるかのような一品。特に「Sadomatic~」は必聴ですよ。


μ's - μ’s Best Album Best Live! Collection II - どんなときもずっと ★★★ (2014-06-13 01:44:55)

これ、初聴時のインパクトはそれ程ではなかったんですが、3~4回聴いたら実は凄い名曲なんじゃないかと思えてきました。アップテンポだけど、心が温かくなるような雰囲気があるというか…「ほっこりアップテンポ」という稀有な属性を備えた一曲(笑)。何気にピアノソロやストリングスアレンジがクサかったり、ベースがかなり目立っていたりアレンジも凄く良い仕事してます。正直、この温かい中にもアイドルらしい溌溂さもある世界観は、批評精神で分析するもんじゃないな…とも思ってしまいますけど(苦笑)。


μ's - μ’s Best Album Best Live! Collection II - だってだって噫無情 ★★★ (2014-06-13 01:43:51)

μ'sの楽曲の特徴として、特にアップテンポな曲に於いては、王道から外れた楽曲でも王道曲並のポピュラリティを感じられる…というのがあると思うんですが、この曲は正にそれ。レトロなメロディが特徴な楽曲で、「微熱から~」「硝子の花園」が昭和ならこちらは大正っぽい感じ。哀愁に満ち満ちているけど、アニメソングらしい高揚感もあるのが素晴らしい。実は私も、戦場に赴く男の背中を、桜吹雪の中で見送ってる…みたいな映像が浮かんできてしまいました。μ'sはカップリングが表題曲以上の名曲である事が結構な頻度であるのが困ります(笑)。


MOURNING FOREST - De la Vermine ★★★ (2014-06-12 23:12:22)

2010年発表の2nd。

前作が「哀しみの影と…」のタイトルで日本盤リリースされた事もあって、フレンチブラック勢でも知名度の高いバンドですが…聴いてみると注目の理由も頷けますね。若干金属質なRawさを残しつつ不快でない歪ませ方のリフ、そのトレモロリフが奏でるメロウ極まりないメロディ、ガラガラに歪んだヴォーカル…と、正しく「メロウなプリブラ」してて、かつメロディや(プリブラとしての)音質・展開がしっかりしている作風。

マニアも満足させつつ、初心者にもジャンルの魅力を分かりやすく伝える質があると思いますが、更に魅力的なのはメロディの傾向。北欧バンドの醸し出す土着的な邪悪さや寒々しさとは異なり、このバンドのメロディは耽美さや儚さ、哀愁、毒々しさなどが入り混じったドラマティックなもの。こういった特性を持つメロディを多用するブラックメタルバンドはフランスに多い印象ですが、中でも分かりやすくそれを感じさせてくれる作品ですね。

ジャンルとしての魅力、出身地域ならではの魅力をどちらも高いレベルで伝えてくれる作品。Les Legions Noires作品などを通じてフレンチプリブラの魅力の虜になった方だけでなく、このジャンルに挑戦してみようと思う方にもお勧めです。


学校であった怖い話S ★★★ (2014-06-12 23:11:21)

元は95年にSFCで発表されたノベルゲームを、翌年にグラフィックやサウンドに手を加えた上でPSに移植したもの。現在ではどちらもプレミアが付いてしまっているようですが、現在はPS3、PSP、VITAのアーカイブやWiiのバーチャルコンソールでDL販売されているので、かなり手に入れやすくなりました。

これ、小学生くらいの頃に親戚の家でプレイして、すごく面白かった印象があったのでダウンロード購入したんですが、今やっても素晴らしいですね。6人から学校にまつわる怪談を聞いていくという構成ですが、話を聞く順番や話の中で表われた選択肢を選ぶことで、その内容がガラッと変わるのが特徴。

とにかくこのゲーム、話のバリエーションや展開が凄まじく豊富なんですよね。もう何周もしているはずなのに、プレイするたびに見た事の無い展開になって驚きます。飽きて一旦このゲームを止めても、思い出した頃にまたプレイすると新しい展開に気付いたりという事もあるので、かなり末永く遊べるゲームと言えるでしょう。

ただ、昔のゲームなので、バックログがなく読み飛ばすと再読不可、同じ話の展開になっても既読スキップは出来ないなど、若干システム面では洗練されていない感じ。また、攻略無しではほぼ見る事が出来ないシナリオがあるのも微妙かも。あと個人的に特に男性陣はSFC版のキャストの方が良かったなぁ…新堂のイケメン振りとか風間の食えない振りとか。

個人的にはサウンドノベルとしては「かまいたちの夜」に並ぶくらいの傑作じゃないかと思います。ぶっちゃけ歳を取った今では怖いとは思わないけど、話がどう転がるかというワクワク感は今でも凄く感じられますもん。ゲームアーカイブもしくはバーチャルコンソールに対応するゲーム機を持ってる方は是非。このボリュームで約600円は犯罪的な安さですよ。


英雄伝説 閃の軌跡 (2014-06-12 23:08:30)

2013年に日本ファルコムがPS3、VITAでリリースしたRPG。
最近になって続編の「閃の軌跡Ⅱ」の発売が発表されましたね。

まずこのゲーム、JRPGとしてはひとかどの評価を得ている「軌跡シリーズ」(「空の軌跡」より繋がる一連の作品群)の目下最新作であり、RPGとしての面白さはしっかり備えている事は確かと言えるでしょう。クォーツやオーブメントによる魔法システムに変更があったり、敵の弱点を突き体性を崩す事が重要になる戦闘システムが追加されたりなど、若干の変化や進化はありましたが、ゲームシステム自体は相変わらず安定して遊びやすく作られていますね。このシリーズ特有の、同じモブキャラでも時期によって会話内容が変わるやたらテキストデータ多そうな仕様ももちろん完備。

ですがこのゲーム、色々と作りが甘いせいで、シリーズファンの期待は残念ながら満たせていないように感じるんですよね…。少なくとも、私はかなりの不満がありました。まずはロードが恐ろしく長い事。今回は帝国の士官学校が舞台なんですが、校舎から出たり入ったりするだけで凄まじく長いロードが…。現在はパッチでかなりマシになったようですが、快適にゲームをプレイさせる事に定評のある日本ファルコムらしくないですね…セルセタは気にならなかったのに。ネオジオCDプレイ済みの私でも長く感じるんだから相当ですよ(笑)。ロードが嫌で、なるべく広いマップには出ないよう心がけていましたが、ユーザーにそんな風に気を遣わせるのは今時のゲームとしてどうかと。

もう一つ大きな不満は、進展しないストーリー。詳しく語るとネタバレになるので避けますが、ゲームを通じて対立していた組織との決着も付かず、仲間の抱えていた謎も分からないまま、新たな謎を提示して終わる…というエンディング。今回はエレボニア帝国という、余り描かれてこなかった地域が舞台ということで、例えば結社の進める計画であるとか、シリーズ全体の根幹に関るような要素が大きく動き、良い意味でプレイヤーを翻弄してくれる展開を期待していたのですが…なんか随分とこじんまりしてしまった印象。新しいプラットフォームに移った事ですし、景気良く話が展開されると思ったんですが、実際に感じたのは「出し惜しみ」という言葉。

他にも、「モーションが微妙」「絆システムのせいで却ってキャラの関係性が希薄に」なども批判されているようですが、個人的には別にそれは些細な事でしかないです。長いロードはゲームプレイの楽しさ、ストーリーの出し惜しみはワクワク感…と、ゲームをプレイする動機の根幹それ自体に関わってきますからね…。
もしかすると、この作品は次回作への「飛び石」的な作品なのかもしれません。長いロードはパッチによって改善できたわけですし、シナリオライターの力量によっては「今作があったからこそ、シリーズ全体が素晴らしいものになった」と思わせることも出来ると思います。尤も、これ以上出し惜しみするようなら正直付いていけなくなりそうですけど。そろそろ軌跡シリーズは出来うる限りドラマティックに風呂敷を畳んで、英雄伝説シリーズの新編に移行しても良いんじゃないでしょうか。もちろん軌跡シリーズで得た事は活かしつつ。


SATAN'S ALMIGHTY PENIS - Into the Cunt of Chaos ★★ (2014-06-11 11:20:15)

2004年発表の1st。

バンド名に男性器、アルバムタイトルに女性器の入った命名センスからして、如何にもプリミティブで暴力的で、猥雑なブラックを演っていそうな感じがしたんですが、良い意味で裏切られました。ベースが衝動性に満ちたブラックメタルであることは間違いないんですが、そこにアヴァンギャルドな要素も持ち込み、独特の世界観を形成している構築性もまた高い音。

基本的には寒々しいリフに、スラッシュを過激化させたようなリズムとオールドスクールなブラックが根幹にあるんですが、時折フリーキーなアンサンブルが出てきたり、妙な音色を足してみたりなど、テンプレートに無い展開をかなり取り入れてる感じ。特に7曲目、リフを消失させつつ引っ張る展開なんかは、なにか足場を踏み外してしまったような不安感を覚えさせます。

独特のひねくれ感のある作品ですが、そのひねくれ感が独り善がりでない、共感出来る者になっているのが良いですね。まあ、「なんでこの音楽性でこのバンド名なんだろう…」とは思いますが(笑)。そこが一番ひねくれてるのかも。


LUTOMYSL - De Profundis ★★ (2014-06-11 11:14:21)

2008年発表の6th。

ウクライナというとアンダーグラウンドなペイガン・フォークブラックの名産地という印象が強いですが、このバンドはあからさまにフォーキーなメロディは使わないものの、リフに込められた身を切るような哀愁がペイガン系に通じるものがありますね。ヴォーカルが鬱ブラック風の、裏返り気味のスタイルである事もあって、アルバムを通じて常に悲壮な感じがします。

ノイジーに歪んだリフにシンプルな疾走というスタイルは、ストイックで無骨なイメージがありますが…良く聴くとリフのメロディにはかなり起伏や展開が設けられてますね。基本暗めながら時に儚げな雰囲気すら感じさせるメロディ使いは、音像の歪め方とも相俟ってシューゲイザー寄りのブラックを好む人にもアピールするかも。一見地味ながら、実は叙情に満ちた良質なアルバムだと思います。


FINAL FANTASY Ⅳ Complete Collection ★★★ (2014-06-11 11:11:58)

SFC時代にスクウェアが残した超名作「ファイナルファンタジー4」をリメイクし、そのアフターストーリーであり、携帯アプリやWiiウェアで展開された「FF4 The After 月の帰還」を追加した上、その二つを繋ぐ「インタールード」を加え2011年にPSPでリリースされた作品集。現在PSストアで2000円ちょっとで買えるのと、VITAで64Gのメモリーカードを購入し、容量に余裕が出来た事もあり買ったんですが…これ、ホント素晴らしいですよ。

まずFF4の方ですが…これは元々が超名作だったこともあるんですが、それが更に遊びやすく改良されてますね。ドット絵が描き直され、全体的にグラフィックが綺麗に、見やすくなっていたり、街やダンジョンでのダッシュの追加、戦闘での倍速オート機能追加などが行われた事でサクサク進めるようになっていたり、より快適なプレイが出来るようになってます。純粋に遊んでて楽しく、「RPGの楽しさってやっぱこうだよな…」と思わせてくれます。

また、ラストバトル直前にパーティの入れ替えが出来るようになっていたり、そのメンバー専用の装備が手に入る追加ダンジョンがあったり、原作を遊んでいたファンにも嬉しい追加要素があるのがまた素晴らしいです。原作やってるとギルバートにもっと活躍の場を与えたくなりますが、この仕様なのでそれが叶います(笑)。ただ、セシル以外全員入れ替えの新メンバーパーティで組むと「盗む」要員がいなくなるのが、若干辛いところではありますが…。

ただ、ここまでしっかりリメイクしてくれるなら、アイテム管理のシステムも「ジ・アフター」基準にして欲しかったですね。それだとデブチョコボがいらなくなるので、まあ仕方ないのかもしれませんが…。あと、SEが全体的に劣化気味なのも気になる。エクスカリバー系の小気味良い斬音、ファイガのこんがり焼けました感、バイオの奇妙な音…みんな何処へ行った…。特にバイオは道中使用頻度の高い黒魔法なだけに、音の劣化が凄く気になる…。まあその辺りを考慮しても、超良質なリメイクであることに変わりはありませんが。

「インタールード」は正直おまけのようなものですが、「ジ・アフター」の方もかなり面白かったですね。幾つかのキャラクター毎のストーリーが展開され、最終編で集結するという内容ですが、キャラ毎のストーリーが一日一本進めるのに丁度良いくらいの長さなのが良いです(笑)。ダレずにメリハリを持ってプレイできる。

システムは本編のものをほぼ踏襲してますが、バンド技(キャラ同士の協力技)があったり、矢の仕様やアイテム管理の仕様などが変更され、より楽しく、遊びやすくなっている感じ。こちらではドロップ率を上げる装備や、ドロップのレア枠を上げる装備なんかもあるので、原作で入手が至難の業だったモンスター召喚術が割りと手に入りやすくなっているのも良いですね。ノータイムで発動、消費MPも少ない「ボム」が何気に優秀だったり。

最終編では当然好きなパーティを組めますが(セシル・セオドアですら外せる)、どのキャラでパーティを組んでも進められるバランスの良さが素晴らしい。例えばレア装備無しでは一見貧弱なカルコやブリーナでも、アサシンダガーと最後の服を手に入れた頃から雑魚散らし要員としてかなりの活躍をしてくれます。そしてギルバートがストーリーでもバトルでも活躍してくれるのが嬉しい所(笑)。

ただ、こちらは結構不満もありますね…。まずキャラ編では一定のレベル以上に育てられない仕様がどうも肌に合わないし、最終編は好みのパーティで進められる時間短か過ぎだし、そこまで進めると後はダンジョンをひたすら降りていくだけでワールドマップには戻れず、一部のアイテムを手に入れるのが物凄く困難になるのも不満。前述のドロップ率やレア率拡張装備がその「一部のアイテム」に該当しますが、これら無しでフェイズ系狩るのは苦行以外の何物でもないと思う。早く好みのパーティを組みたいが故の拙速プレイは後で泣きを見ます。

若干不満点も書きましたが、それはあくまで満足した上で更に「ここがこうだったら良いのに」という程度で、ここ数年でプレイしたRPGの中でもトップクラスに満足できた作品です。スクウェアは映像にこだわってばかりというネガティブなイメージがありましたが、この原作より更にプレイアビリティを増したリメイクは、それを覆すだけのものがあると思います。これが2000円ちょっととか安過ぎです。原作をやった方もそうでない方も是非。これが日本の誇るRPGです。


MAYHEM - Esoteric Warfare - Psywar ★★★ (2014-06-09 20:48:21)

先行して公開された曲だったせいか、MAYHEMのエクストリーム・メタルバンドとしての実力を分かりやすくプレゼンするような楽曲に仕上がってますね。歯切れ良く印象的なフレーズを吐き捨てつつ、お馴染みの呪詛を聴かせるヴォーカルワークもそうだし、一聴でかっこいいと思えるキレのいいアンサンブルもそう。ただ暗黒メタルとしては随分カラッとした感じだと思う。


MAYHEM - Esoteric Warfare - Watcher ★★★ (2014-06-09 20:47:16)

アルバムの1曲目ですが、これを聴いて新ギタリストのTelochがHellhammerと斬り結べる実力者であること、Blasphemer加入後のMAYHEMに特有の、テクニカルな中に冷徹な暴力性を含む雰囲気が引き継がれていることに安心した方も多いのではないでしょうか。特にラスト、若干そこに行くまでのタメが長く感じますが、カリスマが流出していて非常にかっこいい。


LOTUS CIRCLE - -Caves- (2014-06-09 20:43:12)

2012年発表の2nd。

ブラックメタルに由来するジリジリと歪んだノイズと、ドゥームメタルから来るうねりのある低音の持続音を組み合わせ、ただただどす黒く狂気的な音像を提供する作風で、徹底して音像を追及するような展開のせいか最早音がメタルの形を失っており、純粋なノイズ/ドローン/アンビエントにかなり近づいた感じですね。

曲の展開を追うというよりも、耳孔をこじ開けて侵入するかの如きノイズと、精神異常を誘発するような黒い低音ドローンの描き出す波形を感じさせるような作風で、電波な音というのを通り越して毒電波そのものって感じです。一応、ブラック的な絶叫や呻き声が一部に入ってますが、メタルのヴォーカルというよりはこの電波に精神を侵されて苦悶する人間の声のよう。

ノイズ要素を取り入れたバンドって、それが実は耳に快い音だったりしますが、このバンドのそれは刺々しく、身の置き所のないような不安感ばかりが増していく感じですね。ダークな音は好きですけど、ここまで徹底されると若干辛いかも…。


LOTUS CIRCLE ★★ (2014-06-09 20:41:42)

ギリシャ産ドローン/ドゥーム/ブラック。
1stをNykta、2ndをDusktoneからリリースし、現在はSelf Mutilation Servicesと契約しているらしいです。レーベル的にはかなりのエリートですよね。


WHEN MINE EYES BLACKEN - When Mine Eyes Blacken (2014-06-09 20:39:44)

2009年発表の1st。
残念ながらこのアルバムをリリース後、活動を停止した模様。

作風的には、如何にもSelf Mutilation Services所属バンドらしい、鬱ブラックの典型という感じですが…マニアックな作風のバンドの多いこのジャンルでも、ここまでストイックな作風も珍しいと思う。緩やかに命が削られていくかのような、ジリジリとしたノイジーなリフ、或いは生きる希望を奪い去っていくような陰鬱なアルペジオと、喉が張り裂けそうな裏返り気味の絶叫を従え、ひたすらに淡々と進行していく、愛想が無いにも程がある作風。例えて言うなら、チェコのTRIST辺りをもっとマニア向けにした感じでしょうか。

分かりやすく印象に残る叙情鬱メロ?劇的な展開?実験要素?何それ美味しいの、とでも言わんばかりに、鬱ブラックとして削ぎ落とされた音。芯があるというよりは、むしろ芯しか残っていないような…。正直私ももうちょっと引っかかりがある方が好みなんですが、ある意味物凄く分かりやすい音と言えるのかもしれません。メロディが分かりやすく鬱ではなく、淡々としている分リアリズムを感じる人も多いかも。


DARK RING - Reborn from the Inferno ★★★ (2014-06-05 23:20:06)

2013年発表の1st。

中国産、しかもかなり若手のシンフォニック・ブラックメタルという事で、ぶっちゃけ物珍しさから購入してしまったんですが、これがメジャー志向のかなりクオリティの高い音で驚きました。オリエンタルさや辺境っぽさはなく、ストレートに煌びやかなシンフォブラック。オーケストレーションを用いた音像やクラシカルでクサいメロディセンスのみならず、暴虐なバンドサウンドの面でも全てにおいて「派手」な感じのする音、そんな印象を受ける作品。

メロデスにも通じる、メタリックでメロディアスなギターワークを交えて展開するバンドサウンドは取っ付き易くもありますが、爆走パートでのカチ込みっぷりが凄まじい。暴走感を演出するオカズを入れつつブラストで攻め立てるドラムがかなりかっこよく暴虐。若干バスドラの音が好みじゃないんですが、音の抜けは悪くなく、プロダクションはバンド全体で見ても割とクリア。

オーケストレーションを始めたメロディの使い方も当然の如く派手で、美メロ大仰メロの大判振る舞いという感じ。中国のバンドながら(だからこそ?)、ヨーロッパ風のロマンティシズムを感じます。特に「Glory of the Warrior」のクリーンヴォイスで歌われるパートには、思わず「騎士道精神」という単語が頭に浮かんでしまいました(笑)。ちょっと惜しかったのは、ヴォーカルワークに妙に印象に残る部分があったのに、ブックレットに歌詞の記載が無い事でしょうか。「Unchain」とか、ホント「妙に」印象深いんですよね…。

シンフォニックブラックって、テンプレートがほぼ出来上がってるようなジャンルで、録音技術も進歩してるせいか、1枚目の時点でクオリティの高い音を出すバンドが少なくないですが、それに加えて「味」もある音だと思います。それも如何にも中国とかアジアのバンド的なオリエンタリズムじゃない「味」なのが面白い。聴き手を置き去りにしない愛想の良さもあってお勧めですよ。


DARK RING ★★ (2014-06-05 23:19:23)

中国のシンフォニック・ブラック。
2012年結成と若いバンドですが、かなり質の高い音を聴かせてくれます。


MAYHEM - Esoteric Warfare ★★★ (2014-06-03 23:15:08)

2014年発表の5th。

Euronymousを失って以来、メインのコンポーザーであり続けてきたギタリスト、Blasphemerが抜けてしまうというまさかの事態が発生し、今後どうなるのか非常に不安でしたが…NIDINGIRやTHE KONSORTIUMに在籍し、1349やGORGOROTHのライブメンバーも務めてきたTeloch氏を迎え、こうして新譜を出してくれました。その日本盤が今日発売され、取り合えず4、5回聴いてみての感想です。

今までのアルバムを例に出すなら、「Chimera」が最も近い作品でしょうか。メンバーのスキルの高さが生み出す圧倒的な暴虐性と、暴力的な衝動性だけではない、高い構築性を有した、エクストリームメタルとしてごく真っ当に超高品質な作風。前作「Ordo ad Chao」ではプリミティブを変な方向に解釈したような妙な音質が賛否あった(私は駄目でした)んですが、今作は音質もちゃんと迫力があって良いです。

そしてギタリストが変わっても、アンサンブルの壮絶さは変わりませんね。特にドラムとリフの絡みは達人同士が切り結ぶような緊張感。Hellhammerのドラミングは凄まじいなんて言葉では言い表せません。メタルに全く興味ない人でも「すげえ…」となるのでは。今作は「Chimera」よりもより「膨らみ」が感じられるような音作りになっているせいもあって、暴虐の渦に頭から飲み込まれるような迫力を感じました。

Attilaのヴォーカルも、「呪詛的」というレベルを遥かに超えた表現力を見せ付けてくれますね。声帯が軋るような、ホイッスルを思い切り歪めた様な金切り声は、鬱ブラ的な感情ではなく、人間ではない何かの鳴き声のようにも聴こえます。低音もよりゲロ度に磨きが掛かった印象。一部では「声」というものが融解して別種の何かになっているような、これまた非人間的なヴォーカルワークが聴けます。

ただ、メンバーのスキルや経験によって、メタルアルバムとして素晴らしいものに仕上がってるとは思うものの、やはり楽曲面ではメイン作曲家が抜けた大きさも感じてしまうんですが…。特にドゥーミーに進行する部分に若干ダレを感じるため、スロー~ミドルなパートの緊張感は「Chimera」アルバムの方が勝っているように感じたり。まあ、この辺りは聴き込むと印象が変わってくるのかもしれませんが。

後は歌詞ですが…1stでブラックメタルの原風景を植え付け、2ndでおそらく第三次世界大戦及びポストウォーのコンセプトを緻密に描き、3rdではサイコな世界観を描いてきたように思うんですが…今作のワードを拾っていくと「ケムトレイル」「アセンション」「第四種接近遭遇」「Milab (軍によるアブダクション)」等、疑似科学的なモチーフが頻出。…MAYHEMってこんなバンドだったっけ?英語に堪能でない私が言うのも説得力がないですけど、正直MAYHEMにこういうガジェットを持ち込んで欲しくなかったなぁ…。「Throne of Time」で描かれるディストピア感とかは、今ひとつシリアスさに欠けるように感じてしまう。

…と言っても歌詞が気になるくらい好きなバンドという事でもあるし、やはりベテラン…というか達人が集まり、それをエクストリーム方向に指向性を持たせてぶっ放したような音は非常にかっこいい。今の時点でMAYHEMの作品で一番好きかどうか聞かれたら「否」ですけど、まあ☆3つ付けるのに吝かではないです(笑)。


DESCENDING DARKNESS - Seelenruhe ★★★ (2014-06-02 20:49:20)

2011年発表の1st。

この作品、リリースに鬱ブラックの悪の枢軸Self Mutilation Servicesが関わっている(Ashen Productionsとの共同)割には、ディプレッシブな要素はあまり無いですよね。むしろRawに歪んだノイジーなプロダクションと、自棄くそ一歩手前のような破壊衝動に任せてカチ込む、プリミティブでブルータルな作風。フランスのANTAEUSやHAEMOTHが浮かんでくるような、暴力的な雰囲気に満ちた音で凄まじくかっこいい。

一応、アルバムタイトルはドイツ語で「魂の平穏」という意味らしいのですが…むしろ精神をカミソリで直接ズタボロにされるかのような刺々しさの強い音で、アルバムタイトルとは何だったのか…という疑問が浮かんできますね(笑)。楽曲の持つ殺意全開なムードと、刺々しくノイジーなプロダクション、ガラガラに歪んだ殺る気満々のヴォーカルと、各要素が上手く絡み合いかなりのカルト性を放ってます。

このかっこいいけど、近づいたらぶっ殺されそうな人を寄せ付けない雰囲気は、ANTAEUS辺り好きな人はかなり共感できるのではないでしょうか。とにかく作品に込められた破壊的な衝動に圧倒される一枚。当然お勧めです。


LIGHTNING SWORDS OF DEATH - Baphometic Chaosium ★★★ (2014-06-02 20:43:51)

2013年発表の3rd。

デスメタル的なヘヴィさを内包しつつ、整った音で攻撃性をダイレクトに伝えるプロダクション、ブラックメタルらしい邪悪さを感じさせつつも、ドラマ性にも重きを置いた展開と、非常にクオリティの高いデス/ブラックメタル。ヴォーカルも悪魔に魂を売ったかの如き禍々しさ。レーベルがMetal Bladeという事もあってか、結構ショップでも推されてた気がしますが、これは予想以上に素晴らしいですね。

この手のハイクオリティな音って、高品質な代わりに尖った部分を失ってしまうケースが少なくないんですが、このバンドはその真逆ですね。ブラック由来の、邪悪さが煮え滾るようなトレモロも、整った、低音の効いた音質でよりドス黒さに説得力を持っている感じ。ギラついた邪悪さが感じられるというか。3曲目の「Psychic Water」なんかはうねりのあるリフで磨り潰すような凄みのある曲で、質が高い音を出しているだけのバンドには出せない音…という感じの凄絶な雰囲気。

アグレッションに満ちた、クオリティの高い音の裏に、悪魔の群れが蠢いているかのような、インテンスで禍々しいムードを常に発散させているような作品。クオリティも高いですが、それ以上に邪悪さが高いというバランスが素晴らしい。これはかなりお勧めです。


INCURSED - Fimbulwinter ★★ (2014-06-02 20:38:41)

2012年発表の2nd。

キーボードや笛、ストリングスなどによる民族的クサメロと、メロブラよりはメロデスに近いギターワークなど、EQUILIBRIUMやELUVEITIE、FINNTROLL辺りの流れを汲むフォーク/ペイガンメタル。ヴォーカルもデス声メインで、エクストリームメタルらしい激しさこそあるものの、邪悪さや思想的な過激さは殆ど感じられず、代わりにクサメタラーを悶絶せしめるドラマティックさが重視されている感じ。スペインのバンドなのに「Finnish Polkka」なんて曲もあります(笑)。

1曲目のインストから映画音楽さながらのスケール感で迫ってくるなど、この手としてもドラマ性を感じさせる「広がり」を重視しているような印象があります。EQULIBRIUM辺りよりもダイレクトなクサさは抑え目ですが、代わりにこのスケール感のある広がりで勝負に行っている感じ。ただし上記の「Finnish Polkka」など、一部で上記のバンドに勝るとも劣らないクサさを発揮している場面も見受けられるのが良いですね。

ややマイナー臭があるのは否めないですけど、メロディの良さは十分に及第点かと思います。


PENDULUM - Les Fragments du Chaos ★★ (2014-06-01 13:16:46)

2012年発表の1st。

トレモロリフやアルペジオに込められた、叙情性だけでなく、精神を汚染していくような悪意を感じるメロディ、切羽詰ったような感情と、他者を害そうとする意志が伝わるような、ドスが効きつつも壮絶な絶叫を聴かせるヴォーカル…と、如何にもカルトなフレンチ・プリミティブブラックという感じの音ですが、この手のカルトな音としてはかなり良質な音源ではないでしょうか。

リフの音色こそノイジーでプリミティブ然としてはいますが、ドラムには迫力もあり、決して薄っぺらという訳ではない音作り、精神を冒す毒素が渦巻くようなミッドパートも取り入れた楽曲の展開など、カルトではあってもローファイではない感じ。禍々しさ重視ながらドラマ性もある作風は、MOURNING FORESTをメロウさではなく、悪意的ムードに特化させた感じというと近いでしょうか。

物凄い名盤だとか、他に無い個性がある作品という訳ではありませんが、フランス産らしい毒々しさがあって良作だと思います。ブラックを聴く事が日常の一部になっているようなマニアな方にはお勧めできるかと。


PENDULUM ★★ (2014-06-01 13:14:13)

Hass Weg Productionsに所属する、フランスのブラック。
MIND ASYLUMやMOURNING FORESTなど、それなりに知名度の高いバンドのメンバーも参加。結成は2009年と比較的新しいバンドですね。


SKELETAL AUGURY (骸骨占卜) - Victory of the Holocaust ★★ (2014-06-01 13:11:27)

2009年発表の1st。

Pest Productionsってポストブラックに強い印象があるんですけど、こんなバンドも抱えてるんですね。インスト明けの2曲目から、シンプルだけどやたらに主張の強いメロディを奏でるトレモロと、わざとらしいくらいに馬鹿速いドラムロールが絡む、洗脳必須な強烈な印象を残すブラックを展開。どこか作り物っぽい感じも、B級めいた魅力があって悪くないです。インパクトは大事ですね。

ただ、上記したような路線はむしろ例外的で、基本はスラッシュがベースにあるオールドスクールなブラックメタル。中国産のバンドですが、北欧のバンドのような土着性も感じられ、こちらも悪くないです。リフの無骨な歪め方の目立つプロダクションとか、ヴォーカルの喉痛めそうな叫び声とか、こちらも若干B級っぽさを感じますね。良い味出してると思います。

また、楽曲と楽曲の間をホラー系のSEで埋めているのも特徴の一つなんですが、何故か3曲目のSEにはゴジラの鳴き声が…(笑)。そんな所も含めて、なんか憎めないというか、愛嬌のあるバンドだと思います。


SKELETAL AUGURY (骸骨占卜) ★★ (2014-06-01 13:08:35)

2008年に結成された、中国産ブラック/スラッシュ。
Pest Productionsに所属。


ひなのふわふわドリーム☆ ★★★ (2014-06-01 13:04:54)

同人サークル「ですのや☆」が制作した、パズル/アクションゲーム。

これ、傑作じゃないですか?こういうゲームがやりたかった!
内容としては、触れると重力の方向が変化する矢印オブジェクトが点在するステージを進んで行き、ゴールを目指すパズル要素の強いアクション。通常のゴール以外にも、ステージに散らばる黄色の星アイテムを回収する事で開放される隠しゴールもあり、そちらは通常ゴールよりやや難度が高め。ステージの攻略に特定の順番はなく、入るゴールによってルートが変わるという仕様。

この「重力の方向を操作する」というアイデア、本当に素晴らしいと思います。今まで天井や壁だった部分が歩けるようになったりするのは面白い操作感だし、重力に流されつつ敵を避ける、さながらスクロール方向の変化する弾幕STGのようなステージがあったり、重力操作で足場になるオブジェクトを狙った箇所に落としたり、アイデアをフルに活用したステージの作り方が楽しい。一見無理そうに見えるステージでも、試行錯誤を繰り返すうちに攻略法が見えてくる難易度も絶妙だと思う。一周クリアで物足りない人向けに全色の星アイテム回収クリアとかも出来ますし。

トライ&エラーを繰り返して進めていくゲームですが、それがストレス無く出来るように配慮されているゲームデザインも良いですね。足場にするべき敵を倒してしまったり、自機や足場を脱出不可能な窪みに入れてしまったなど、結構「詰み」の状況になるケースも多いんですが、残機の概念を排し即時リトライ可能な仕様のお陰で、快適にステージ攻略に専念できます。ステージによってはルートを把握した上で最速で行動しないと間に合わないような、ややアクションの腕が要求される箇所もありますが、自機の操作性が良いのでやっていて苦にならないです。インリョクちゃんをやった後だと自機が思い通りに動いてくれる事に感動してしまいます(笑)。

後はこのゲーム、何気に音楽が素晴らしいんですよね。重力の流れる方向の変化する、不思議な夢の中という設定ですが、どこか優しく包まれるような温かみがあるようで、日常から離れた怖さもちょっと混じっているような、不思議アンビエントな音楽が巧みに世界観を演出していると思う。何気にサントラがリリースされるのを心待ちにしているんですが…もし委託されるなら絶対に買いに行きたいと思います。日常を忘れて、心が癒されるようなサウンド。この音のお陰で、ゲームの世界観に没入できるんだと思う。

不満点は…ステージとステージの繋がりが良く分からない事。パッケージには、それがウリであるかのように書かれてますが…漫然とプレイしてると「またここか!」という思いを何度と無く味わう事になります(笑)。一応、各々のステージには難度の違う2種類のゴールがあるんですが、エンディングに辿り着くまでには隠しゴール必須なので、結局はアクションの腕がある程度は要求されてしまう感じ。後、実質4つのステージをノーミスで一息にクリアしないといけない、最終ステージの仕様は若干鬼畜…というかやり直しめんどい(笑)。

これは本当に面白かった。絵柄は萌え系っぽいですが、あまりそれが辟易するほどどぎつくないもの良いと思う。出来れば、VITAや3DSとか携帯機に移植されて欲しいんですけど、流石に無理でしょうか…。こういうゲームを寝る前とかのちょっとした時間にプレイできたら最高だと思うんですが。あと早くサントラをリリースして欲しいです(笑)。


THEOSOPHY - ...Out of Decades (2014-06-01 00:49:46)

2010年発表の1st。
KORROZIA METALLAというバンドの「Phantom」という曲と、DISSECTIONの「Where Dead Angels Lie」のカヴァーを収録。デジパック盤は限定50枚らしいですが、販売元がNo Coloursで、ここまで厳しい限定数なのに何故か中古で安く入手できました。

ロシア産で、ペイガンやプリミティブ系統に強いNo ColoursからCDを出しているというプロフィールの割に、作風自体は北欧、特にノルウェー産ブラックの流れを汲むストレートなブラックメタルですね。オールドスクールなミッドテンポの使い方とか、如何にも黎明期ブラックの音を意識している感じで、余分なものの無い硬派な音に仕上がってると思います。無骨さを残しつつ厚みもあるプロダクションも良いですね。

ただ、個人的には硬派過ぎるんですよね…。叙情トレモロ全開な「Forest Legion」辺りは別ですが、全体的にケレン味に欠けるというか。通して聴いてると、ラストで如何にDISSECTIONの「Where Dead Angels Lie」がフックに満ちた名曲かを見せ付けられてしまうので、THEOSOPHYのアルバムとしてはちょっとどうかと思う構成ですね(苦笑)。まあこの飾らなさが良いというのも分からなくはないですけど。

バンド名は示唆に富んでいてかっこいいんですが、中身は良く言えば硬派、悪く言えば地味な音。根っからのブラック好き以外には勧めづらい作品かも。


BLAZBLUE CHRONOPHANTASMA ★★★ (2014-06-01 00:46:38)

アークシステムワークスの展開する格闘ゲームシリーズ「BLAZBLUE」シリーズの現時点での最新作で、アーケードで稼動したのは2012年。翌年にPS3、翌々年にPS VITAにも移植されており、私はVITA版をプレイ。BGMにHR/HM調のものが多く、アレンジをかのGALNERYUSが担当した楽曲があるなど、一部のメタラーの間でも有名。ストーリーのキーワードで「アークエネミー」とか連呼されると、なんかニヤニヤしてしまいます(笑)。

GUILTY GEARシリーズのスタッフによる作品らしく、コンボが重要になってくるゲーム性なんですが、詳しいチュートリアルを設けたり、オートガード・オートコンボ機能のついた初心者向けモード(スタイリッシュ)を用意したりなど、格ゲーマーではないけど興味はあるようなプレイヤーにもしっかり配慮した作りになっているのが良いですよね。スタイリッシュは相手との距離によって自動でコンボ選んでくれたりするので、結構便利かも。勝手にゲージ使用技に繋ぐのは微妙ですが…。

CPU戦の難易度も初心者への配慮がされている感じで、最低レベルならC攻撃を振ってるだけで結構勝ててしまったりしますし、デフォルトでも基本コンボが出せるくらいならクリア可能だと思う。初心者がコイン投入して2試合勝ち抜ければ御の字だった、昔のSNK格闘ゲームよりは、CPU戦に限って言えば全然易しくなってると思う。コマンド表を開くと技の性質も同時に見れる点も、地味だけど凄く親切な作りだと思います。

ただ、仕方ないことではありますが、初見でもすぐにキャラを動かせたスト2時代と比べると、出来る事が増えた分、キャラを動かすのに覚える事も増えた感じ。ある程度動かさないとキャラごとの立ち回り方が分からないような仕様は、キャラ毎の個性は立たせてはいるんですけど、初めてシリーズに触れた人は煩雑に感じるかもしれません。この「ある程度」がスト2時代より遥かに長くなっているというか。

あと、個人的に最大の不満点は効果音ですね。特に攻撃がヒットした時の音がなんかモッサリしてるというか、爽快感が全くないというか…。龍虎の拳でビルドアッパーが決まった時の音や、サムスピで大斬りが決まった時の音…あれから20年くらい経ってるのに、なんで今更こんなしょぼい音なのか。ぶっちゃけヒット音の爽快感はスト2と比べても天と地。同社のアルカナハートもそうですが、もう少しなんとかならないんですかね…。コンボゲーだから一発の音が重すぎると鬱陶しくなるのは分かりますけど。

他には…どうもこのゲームのストーリーって、思わせぶりで煙に巻かれてる印象だったんですが、今回は具体的に色々動いてるので満足。特にレリウスが理解できる目的を持って動いてたのが分かって良かったです。あと、携帯機やパッドで4つボタン同時押しを咄嗟にやるのは無理だろ…とか、色々ありますが概ねこんなところでしょうか。私もそこまでやりこんでいる訳ではないですが、丁寧でやり応えがあって良いゲームだと思います。


どぎめぎインリョクちゃん (2014-06-01 00:43:53)

「BLAZBLUE」シリーズでお馴染みのアークシステムワークス社による、3DSのダウンロード専売ゲーム。「矢を放ち、着弾した2点に引力を発生させ、敵やアイテムを引き寄せてぶつける事が出来る」「矢が2本とも引き寄せられない物(壁など)に着弾した場合、その2点間に自機を弾くトランポリンを一定時間形成する」という能力を持った自機を操り、ステージの敵を倒していく、主人公がキューピッドである事を上手く生かしたゲームデザインの面クリア型アクションゲーム。

…こんなにも、「惜しい」ゲームは初めてかもしれません。これ、ちょっと改善すれば、個人的には大名作なんですけどね…。まずキューピッドの性質を利用したゲーム性自体は素晴らしいアイデアだと思います。何匹もの敵を巻き込んで衝突させたり、垂直の穴をトランポリンを連続して形成することで登ったり、プレイヤーが色々工夫してステージを攻略できるシステムは本当に良く出来てると思う。

ただ、操作性が最悪なんですよね、これ…。ジャンプの軌道が余りにも制御しにくい。高さの調節はやりづらいし、空中での軌道の制御はほぼ不可能。かなり慣れてこないと、安定して狙った地点に着地することすら出来ません。…こんな基本動作に習熟が必要な操作性もどうかと思いますが…更に悪い事に、多くのステージでは接触するとダメージを受ける棘が地面に敷き詰められてたりしますからね…。どうしろと。ぶっちゃけ同人やフリーゲームのアクションでもここまで操作性が酷いのは珍しいと思う。

これ、現時点では500円でもちょっと高いと思いますけど、操作性をまともにして、クリアしたステージを自由に選択可能とか、性能の違う自機や装備のバリエーションを付けるとか、ストーリーが追加されるとか、何らかのオプションが付いたアッパーバージョンが出たら2000円くらいでも買うと思う。ただ、操作性についての他ユーザーの評価が高かった場合に限ってですが…。


GRISATRE - L’idée de Dieu ★★ (2014-05-31 09:57:02)

2010年発表の1st。

目の細かいノイズ質を含む、アンビエンスを重視したギターリフが、鬱々としたスロー中心のテンポに乗せて展開され、じめじめした質感と共に視界を塗り潰すような鬱ブラック。あくまで基本はバンドの音で聴かせるスタイルながら、鬱く美しいインストパートを挟み込む構成、空間的なノイズの使い方など、アンビエント志向がやや強めな音。リバーブ掛かったヴォーカルも、闇の底から響いてくるようですね。

そしてそのドス黒く、湿り気のある音の空間が演出された中での、メロディの聴かせ方もかなり上手いです。アルペジオが破滅を緩やかに告げる鐘の音にも聴こえますし、トレモロは嘆き悲しみ暮れる精神の代弁をしているかのよう…。この辺りアンビエント志向な感性がプラスに(感情的にはどマイナスですけど・笑)働いていて、似た作風の多いジャンル内でも無個性な音にはなっていないのではないでしょうか。

鬱ブラックの中では情景的で、内省的な雰囲気の強い繊細な作風と言える音だと思います。狂気よりも悲しみや陰りといったキーワードが浮かんでくるような作品。


ACROSOME - Dementia Praecox ★★ (2014-05-31 09:52:16)

2011年発表の8曲入りEP。
ジャケ裏の曲名リストを見た時はフルかと思ったんですが、1曲が短く全体を通して約23分というランニングタイム。ブラックパートが短いため、実際の演奏時間以上に物足りなさを感じるかも…。

ジャケの某ムササビ系ガンシューティングゲームのメーカーロゴのような(笑)仮面が象徴的ですが、鬱な感情というよりはサイコで狂気的な雰囲気の強いブラックメタル。どんよりと澱んだ空間が展開されるような、ある意味で「広がりのある」ドゥーミーなリフが抑鬱的なムードを作り、そこに神経を侵すような、情緒不安定になりそうなメロディを流していくような音。

潰れた喉から発せられる呻き声のようなヴォーカル、サイコな雰囲気を助長するSEなどと同様、雰囲気を出すのに一役買っているのがギターのフィードバック音。これが精神の脆い部分を引っ掻いていくかの如く、イヤな感じを醸し出していてグッド。ただ、フィードバック音とヴォーカルのみで展開される4曲目は、わざとらしいというか、ちょっとやり過ぎててクドく感じてしまいますが…。

ブラックメタルパートに於ける、ブラックの様式をキープしつつのサイコな雰囲気の演出が秀逸だっただけに、ブラックパートはもう少し長くても良いんじゃないかな…と思います。精神に来る、アンビエンス重視の鬱ブラックを求める方に。


SÚL AD ASTRAL - Súl Ad Astral ★★★ (2014-05-29 10:20:28)

2013年発表の1st。

ブラックの本来持つ邪悪さや悪魔崇拝的ムードではなく、トレモロリフの繊細な響きや、ギターリフのオブスキュアさを醸し出す歪んだ音色、ファストなリズムのもたらす酩酊感などの「様式」を借り、神秘的で非日常的な世界観を描き出す、いわゆるポスト/シューゲイザー・ブラックな作風ですが…この手のバンドの中でも、ブラックの様式を非日常感や儚さといった要素に上手く結び付けられているのではないでしょうか。

特に素晴らしいと思ったのは、トレモロリフの音色ですね。高音域でキリキリ言わせるような音色を多用しているんですが、これが意識の底に響いてくる鈴の音のような、何とも言えない幻惑的で神秘的で、非日常感に満ちた雰囲気を醸し出していて素晴らしいんですよね。こっちは邪悪さとか全く意識していないと思いますが、日常からの乖離の度合いはLUNAR AURORAの傑作「Andacht」アルバムにも匹敵するかもしれません。

そのトレモロが、普通の音域でのトレモロとハモらせたり、曇った音色のリフと合わせたりなど、様々なパターンで使われ、楽曲の主軸として使われているような曲作りも素晴らしいです。楽曲自体が、ブラストビートを多用していたり、ヴォーカルも必死な感じの絶叫中心だったり、脱ブラックし過ぎていないのも良いです。ただクリーンヴォーカル、2曲目は溜息を付く様なアンニュイな感じで良かったのに、8曲目ではなんか妙に元気になってしまってるのがちょっと残念。

これはポスト/シューゲイザー系列のブラックの中でも、リスナーを自身の世界観に没入させる力の強い作品だと思います。トレモロフェチな方、幻想的な世界観が好きな方は買って損はしません。


BEGRIME EXEMIOUS - Impending Funeral of Man ★★★ (2014-05-29 10:17:58)

2010年発表の1st。

土煙を上げるような、泥臭い音色のギターがスラッシーなリフを奏でつつ、暴虐性よりもダイナミズムやノリの良さをより重視したようなリズムで展開していく、ダーティでデスメタルの要素も強いオールドスクールなブラックで、この手の中でもバーバリックな雰囲気の強い音…という感じですが、動きのあるドラミングが凄まじくかっこよく、それが作風に於いての個性になってますね。

例えばブラストやツーバスが超速だったり、分かりやすく暴虐なプレイではないんですが、リフと同期して盛り上げたり、パーカッシブに楽曲を盛り上げたり、かなり存在感のあるドラムを聴かせてくれます。どこか華麗な印象もあり、さながら蛮族の儀式に於ける舞曲といった感じ。憎悪を吐き出すようなヴォーカルが狂戦士だとすると、その狂気をこのドラムが煽り立てている…みたいな印象があります。

ウォーブラックにも通じる、ダーティで衝動的なムードが存在感のあるドラムと上手く噛み合い、この手としてもトップクラスに近いかっこよさを醸し出している一枚。ほんとこのドラム心地良くかっこいいのでオススメ。


ルーンファクトリー4 ★★★ (2014-05-29 10:13:30)

2012年に3DSで発売されたRPG。

元は「牧場物語」の外伝から派生したゲームで、畑で作物を作ったり街の人々と交流したりといったシミュレーション要素を、戦闘やストーリーと同様に重視したゲーム性で人気を博しているシリーズの4作目ですね。同シリーズは「2」をプレイ済みだったんですが、色々荒い所が見受けられた「2」と比べると、格段に遊びやすくなっている印象。街の人との会話パターンが凄まじく増え、生活観がぐっと増した点や、スタイルに合わせて様々なスキルを使用でき、戦闘が面白くなった点は特に評価したい所。

このシリーズのウリでもありますが、やはり自由度の高いゲーム性は良いですね。ストーリーの進行に殆ど期限が無いので、例えば一日中釣りをしていたり、ダンジョンに潜っていたり、薪拾いに精を出したりしていても全く問題ありません。畑も仲間モンスターにある程度任せても、自分できめ細かく見てもいいですし、プレイヤーの数だけプレイスタイルがあるという感じ。取り返しの付かなくなるような要素も少ないので、リセット吟味せずに試行錯誤出来るのもストレスレスな作りで良いです。

ただ、非常に面白く、時間を忘れて(休日の前とかに始めると、いつの間にか夜中になってる・笑)ゲームですが、まだ若干バランスの荒い部分もありますね。特に第2部終了から第3部に掛けてそれが顕著。第2部終了時に開放されるダンジョンで手に入る・仲間になる武器やモンスターが、それまでよりも遥かに強力なせいで、愛着あるモンスターを育てにくかったり、第3部開始のフラグが厳しいのか、私の場合そのダンジョンのボスを一通り倒しても第3部が始まらず、こちら側のパーティが強くなり過ぎたり、この辺りのバランスはもう少し何とかして欲しかったかも。

後はストーリー進行に応じて一部の住民に好感度キャップがあるせいで、一部クエストを達成するためにストーリーを進めるのが必須だったり、石材や木材を集めるのが若干面倒だったりなども出来れば改善して欲しい所。まあ、面白いからこそ「改善して欲しい点」が多数見つかるのかもしれませんね。基本的には、時間を忘れて没入できるほど楽しいゲームである事に間違いないです。


SADHAKA - Terma ★★★ (2014-05-27 10:17:35)

2013年発表の1st。

自然崇拝的な、神秘性に満ちたムード、ブラック特有の歪みに叙情性を加味したリフを伴う、暴虐性よりも情景描写を重視したような疾走を含む長尺の展開など、ポスト/シューゲイザー/カスカディアン・ブラックの流れを汲む作風ですが…この手のバンドとしては「黒さ」がかなり際立つ音になってますね。魔術・秘術の類を利用して、自然主義にアプローチするような、叙情性だけでなく暗黒性も強く感じる音作り。

他のこの手のバンドと比べるとトレモロの叙情性を押し出したパートは少なめですが、アンビエントパートに於ける、質量感のあるドローンめいた音色、時折出てくるドゥーミーに引き摺るリフなど、前衛・暗黒系のドゥームにも通じる音が取り入れられており、それがダイレクトに楽曲の暗黒な雰囲気に繋がっている印象。また、リフの土煙を上げるような、どこか有機的な感じのする歪ませ方も、そんな雰囲気によく合ってますよね。

と言ってもメロディ面も決して疎かにはなっておらず、疾走パートではしっかりとこの手に特有の叙情メロディが聴けたり、リードギターがかなりメロウなフレーズを聴かせるパートがあったり、このジャンルの醍醐味である叙情性も、甘くなりすぎない程度に感じられるのが良いですね。ポスト方向に行き過ぎて脱ブラックしてるバンドよりも、「Mammal」までのALTAR OF PLAGUESや、FARSOTなどの邪悪さ強めのバンドが好みな方にお勧め。


THE PHANTOM CARRIAGE - Falls ★★★ (2014-05-27 10:13:01)

2013年発表の2nd。

このバンドはブラックだけでなく、(カオティック)ハードコアの流れも汲んでいる(だからなのか、現時点で未だにEncyclopaedia Metallumに未登録だったりする)ようですが…両者のダークな面のみを抜き出して、上手い事合わせたような感じですね。一曲目の途中でヴォーカルが「いえーい」的な素っ頓狂な声を上げ、ギターも場違いに明るいメロディを奏で始めたときはババを引いたかと思いましたが(苦笑)、それ以降は邪悪さに全くブレのない、どす黒い音を聴かせ続けてくれます。

カオティックに耳を蹂躙しつつ、ブラックの邪悪さも感じさせてくれるギターリフ、単に暴虐というだけでなく、叩きつけるような炸裂感や、変化に富んだダイナミズムも感じさせてくれるリズム構成、モダン系のバンドとは一線を画する、ヘヴィさと有機的な邪悪さを両立させた音作りなど、どこを取ってもブラックとハードコアの美味しい(暗黒な)部分が上手く融合してます。ぶっちゃけ同郷のDEATHSPELL OMEGAの「Drought」にかなり近いんですけど、こちらの方がより展開的に分かりやすい印象がありますね。

という訳で、1曲目の一部を除いてはかなり気に入った一枚。邪悪なだけでなく、その邪悪さにハードコア要素が一層の凄みを与えているのが素晴らしい。