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Usher-to-the-ETHERさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 601-700
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Usher-to-the-ETHERさんの発言一覧(評価・コメント) - 時系列順 601-700

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MIST (ITALY) ★★ (2013-12-30 23:41:00)

イタリア産シューゲイザー/ポストブラック。
…と紹介されてましたが、シューゲイザー?ブラック?って感じです(笑)。摩訶不思議なサウンド。


CHRISTICIDE - Upheaval of the Soul ★★★ (2013-12-28 11:31:09)

2013年発表の2nd。

暴虐に蹂躙するブラストビートや、テンション高くカチ込むスラッシュビートを中心に楽曲を展開していく、ファストに攻めるブラックメタル。MARDUKやDARK FUNERAL辺りが比較対象に思い浮かぶような音ですが、こちらは音質のヘヴィさ、メロディの煽情度はやや控えめで、代わりにブラック特有のややノイジーなリフによる、切れ味で勝負するかのような作風。

フレンチブラックとしてはややメロディは控えめで、硬派と言える音ではあるんですが…要所要所で心憎いと思えるほど、ブラックらしい邪悪メロウなメロディを入れてくるのが良いんですよね。ファスト中心ですがしっかり展開にメリハリ付いてる感じ。鬼のようなドスの効いたヴォーカル、ブラストパートの心地良い蹂躙感、剃刀的ノイジーさがリフのヒリヒリした感触を強調しつつクリアな音質など、基本的なクオリティもかなり高いです。

流石にMARDUKやDARK FUNERAL辺りと比べると多少はマニア向けですが、ファスト系が好きであれば聴く価値大有りです。TRIUMPHATORやCRYSTALIUM、ENDSTILLE辺りが好みの方にお勧めです。


CHRISTICIDE ★★ (2013-12-28 11:30:16)

フランス産ファストブラック。
PESTE NOIREやSUHNOPFERのArdraos氏がドラムを務めるバンド。


THE ASCENDANT - The Spiritual Death EP ★★★ (2013-12-28 00:47:58)

2012年発表の2曲入りEP。

基本的な輸入盤アルバムの相場が2000円前後だとすると、2曲で約1000円なのはちょっと高いな…と思って、今まで買い控えしてたんですが…自分の判断力の鈍さを呪います…。なんなんでしょうか、この質の高さは…。Mortuus加入以降のMARDUKやTRIUMPHATORを思わせる、暗黒趣味強めなファストブラックという感じですが、最早ベテランのこれらバンドに、既に肉薄する音を出しているんですが…。

例えば獰猛にがなるヴォーカルや、激ファストなブラストを軸に据えた展開などから感じる暴虐性、その暴虐を余すことなく伝えるクリアな音質など、ファストブラックとしての基本的な質も当然のように高いですが、その上で楽曲も極上なのが素晴らしい!気が滅入ってくるようなアルペジオ、体温だけでなく明度も同時に下げる暗黒極寒トレモロ、音圧を与え闇を更に深くする刻みリフ…上質のパーツを、巧みに組み合わせて醸成される楽曲はどこかカリスマ的ですらあります。いや、本当に買って良かったと思う…。

バンドとしての初音源となるEPがこうまで素晴らしいと、1stアルバムの出来が非常に楽しみですが…残念ながら、2013年には発売されませんでしたね…。良い物を作るために、時間を掛けているのかもしれませんね。ともあれ、2014年は1stアルバムの発売に期待です。


ANCIENT WISDOM - ...and the Physical Shape of Light Bled ★★ (2013-12-28 00:42:17)

2000年発表の3rd。

メンバーがNAGLFAR絡みという事もあってか、シンフォブラックの中ではそれなりの知名度を持つバンドのようですが、出音は王道を少し外したような感じですね。COFやDIMMUと比べると、ミディアムを中心とした展開でメタルとしてのダイナミズムは抑え目な代わりに、ゴシック趣味の強いキーボードを重層的に重ね、アトモスフェリックで美しい空間を打ち出している作風。

ただし、他のアンビエント系のアトモスフェリック・ブラックとは異なり、ギターは意外にメタリック。泣きのメロディを奏でる箇所も多いし、「The Serpent’s Blessing」ではハードロック風のリフまで飛び出してちょっと驚きました。キーボードも空間系のみならず、フレーズ、メロディ重視のため、ヘヴィネスやスピードに重きを置かない音ながらかなりドラマティックな仕上がり。…だけどそれだけに、独りブラック故なのか、バンドサウンドに迫力が足りないのが惜しい…。特にドラムの音はもう少し頑張って欲しかった。

ごく一部(例えば、「Postludium」辺り)では和風ホラーに近いニュアンスのメロディも聴けますし、メロディアス好きな日本人ブラックファンは結構気に入りそうな一枚な気がします。作風自体はかなり好き、もう少し詰めればカリスマ性が出てきそうなところですが…。


ANCIENT WISDOM ★★ (2013-12-28 00:38:17)

スウェーデン産シンフォニック/アトモスフェリック・ブラック。
96年以降はNAGLFARのVarghar氏による独りブラックに。
ちなみにANCIENT VVISDOM(アメリカのロックバンド)とは全くの別バンドなので注意。
私はVVの方を買いそうになりました…(笑)。


THAW - Thaw ★★★ (2013-12-26 21:29:41)

2013年発表の1st。

まず、オープニングのどす黒い粘液質の液体を、呪いを込めてかき回すような暗黒ドローンから、ジクジクと湧き出る膿のようなブラックメタルの音が立ちあがってくる1~2曲目の構成からして、既にグッときてしまいますね(笑)。ドローン/アンビエント寄りの音ですが、その重くドロつく音像を纏いつつ猛然と疾走する蹂躙パートもあり、沸々と煮え滾った憎しみをぶつけてくるかのようで良い按配。

また、疾走パートでも狂気や瞑想的な感触も感じさせる「Divine Light」「Hunted Prey」、サイケデリックなメロディと共に這いずり回りつつ、即興的なドラムが聴き手を威嚇する「Kiara」、どす黒さだけでなく、乾いたメロウさもある「On the World’s Grave」、耳に岩石を突っ込むかの如き害悪ノイズリフで責め苛む「Under the Slag Heap」など、アンビエント志向の強いブラックながら楽曲に幅を持たせているのもいいですね。ネガティビティ全開とは言え、意外にメロディにも意識が向いてる作りなのも好みです。

ドローン/アンビエント志向の強いバンドながら、ひたすら聴き手の想像に委ねるような情景を描くタイプではなく、音像とフレーズをバランスよく聴かせるタイプなので、ブラックを始め暗黒メタルの音に慣れてる人なら、完全なドローンやアンビエントが駄目な人でも受け入れられそう。マニアック過ぎない所が大手レーベル(Avangarde)発らしいのかも。


THAW ★★ (2013-12-26 21:28:26)

ポーランド産ドローン/アンビエントブラック。
FURIAと人脈的に関わりがある模様。


INCURSUS - Eternal Funeral Trance ★★ (2013-12-26 21:23:31)

2009年発表の1st。

音源の感想以前に、このCDは今まで私が買った中でも、梱包状態が最悪の部類に入る一枚、という事を言いたいですね。紙ジャケにCDが無造作に放り込まれてる事は珍しくないですが、この作品はあろう事かCDの読み取り面の無音部とジャケットに直接糊付けがしてあるという、クソという言葉が生温い最悪なパッケージング。録音部には影響はないため、一応聴けはしますが…CDプレイヤーの回転音が明らかに重そうで、負担が掛かっていそうで心配。ふざけやがって…。

これで中身がダメだったらCD叩き割りたくなるレベルですが、そうでなく関連バンドのNIGHTBRINGERに匹敵するほどの暗黒趣味な良質なブラックなので困ります(笑)。ザラついたギターノイズが質量感のある暗闇を生み出し、その中で聴き手を凍死せしめんとするような荒涼としたリフを壮絶に聴かせる、極寒で光の届かない空間を感じさせる非常にムードの濃いブラック。

ノイジーさが得体の知れない雰囲気を醸し出す音像と、どす黒く寒々しいリフの組み合わせ方が非常に上手く、なにか音を中心として邪悪なエネルギーを湛えた力場が形成され、そこに全ての光が吸い込まれていくかのよう。アンビエント、アトモスフェリック系のブラックに近い印象もあるんですが、これはもっと邪悪ななにか…という感じですね。

また、ブラックらしいハイピッチな絶叫スタイルながら、異様なまでの鋭さを感じさせるヴォーカルも素晴らしい。このヴォーカルの特異性のお陰で、このバンドの持っている邪悪・暗黒志向は更なる説得力を持っているように思います。カリスマ性を感じる、素晴らしいヴォーカルですが、どうやら今年自殺してしまったようで…。非常に残念ですが、ご冥福をお祈りします。

普通だったらこの作品には☆3つ余裕で付けますが、余りにもパッケージングが気に入らなかったので今回は2つ。私のだけ梱包ミスでこんな事態になってるのでしょうか、それともこういう仕様なんでしょうか。もし仕様なら、こんな仕様にOK出したバンド側もバンド側だと思う…。


INCURSUS ★★ (2013-12-26 21:22:33)

アメリカ産ブラック。
NIGHTBRINGERのVJS氏が中心となっているバンド。


埼玉最終兵器 - Frenzy Frenzy ★★★ (2013-12-23 16:11:45)

2012年発表の東方メタルアレンジアルバム。
AETHERのEru氏とのコラボ作品で、SSHは半数の曲を担当。
ちなみにボーナスでライブ音源が1曲収録されてます。

SSHは以前アトリエシリーズのメタルアレンジをメジャーでリリースしてるのを聴いたんですが、正直今ひとつな印象だったんですよね…。ですが、この作品を聴いて見直しました。アレンジセンスが格段にレベルアップしたんでしょうか、それともアトリエの時はメジャー進出で緊張してたんでしょうか(笑)。ともかく、プロも多数紛れ込んでる東方同人メタルのシーンでもかなり質の高い一枚ではないかと思います。

今作では、アトリエアレンジの時に感じた引っかかる部分が、完璧に改善されているように思います。特に煮え切らなさを感じたリフは、信じられないくらい良くなってると思う。スラッシーにキレ良く刻むだけでなく、その中にメロディアスなフレーズも仕込んできてかなり熱い!アトリエの時よりも格段に生き生きしたメタルサウンドが実現している印象。

また、「上海紅茶館」ではダンスビートやラップの導入もあったり、半ばメタルを逸脱するアレンジも見受けられますが…リフのかっこよさ、切れ味はそのままに、音色を工夫する事でしっかりダンサブルなリズムに合わせてあるのが素晴らしい。「無何有の里」でのベース強調したダンサブルパートの導入といい、メタルのかっこよさを崩さずにこういうアレンジをしてるのが良いですよね。

また、Eru氏のアレンジは正直当たり外れがある(「フォールオブフォール」はヘヴィなだけで原曲メロディのドラマ性が死に掛けてる感じ)気がしますが、やたらとドラムパートがかっこいい「ネクロファンタジア」、インダストリアルでミステリアスな「平安のエイリアン」など、SSHとは異なる路線のアレンジも多く、アルバムを更にバラエティ豊かにしていますね。

個人的にはトランス系のシンセの音色ってそんなに好きじゃないので、その音色が多用されていることだけが唯一不満ではありますが、まあそれは完全に好みの問題でしょう。東方同人メタルが流行する以前からゲームのメタルアレンジを手掛けていた、大家としての威厳を見せ付けるかの如き質の高いアレンジ作品です。…ぶっちゃけ東方メタルアレンジはもういいかな…と思ってましたが、これは買って本当に良かったと思う。


ISVIND - Daumyra ★★★ (2013-12-23 10:55:47)

2013年発表の3rd。

まあ、このバンドが作風を変える筈もなく…(笑)。期待通り、いや期待以上の、90年代ノルウェー産ブラックの空気を引き摺った、芯まで真っ黒いブラックを聴かせてくれます。近代的なヘヴィネスだとか、圧倒的なスピードだとか、ノイズへの接近やミニマリズムだとか…のような、ブラックの核心ではない要素には決して頼らない、ブラックメタルである事を追及したような、職人的ブラックメタル。

なんというか、こういうオールドスクールで衒いのないブラックを演ってるバンドは数あれど、このバンドの音は説得力が違うという感じがするんですよね。例えば、ヘイト全開で噛み潰すようなヴォーカルもそうだし、メロウながらヒリヒリとした質感のトレモロ、そのヒリついた緊張感を強調する、音圧がありつつ粗めの音質など、ブラックの魅力を知り尽くしてる人が演っている感じ。

オールドスクールなリズムやミディアムパートを絡めた展開も上手く、獲物を狙うようなスラッシーなパートでテンションを上げつつ、ブラストに雪崩れ込む展開なんかはゾクゾクきますね…。北欧ブラック特有の土着的な邪悪ムードも色濃く、バンドサウンドのみによる硬派な音作りながら、キーボード満載のアトモスフェリック系に負けないくらいムードのある音だと思う。

また、ブラストを軸としたファストパート多めの展開ながら、速さだけでなく、どこか人間味のあるグルーヴも感じさせるドラミングも素晴らしい。ブラストパートにおける、雪崩が押し寄せるような迫力や、スラッシーなパートにおける血が滾るような熱さなどは、このドラミングが貢献しているのも大きいのではないでしょうか。

「こういう音」を期待して購入した訳ですが、見事に期待以上のものを返してくれましたね…ほんと、とにかくかっこいいです。凶悪な音ですが、普段からブラックを聴いてる人なら、聴いていて自分のあるべき場所へ帰ったような安らぎを感じるかもしれません(笑)。それくらい「ただブラックメタルしている」音。もしブラック愛好家以外で、この音がモダンな音より良く思えるなら…そろそろ、ブラックにハマる準備をした方がいいかもしれません(笑)。


ESCHATON - Unshaken ★★★ (2013-12-23 10:53:28)

2012年発表の2nd。

ACHERONTASやACRIMONIOUS、NOCTERNITYなど、ギリシャのブラックってオカルトめいた神秘性を感じさせるバンドが多い印象があるんですが、このバンドはそうでもないですね。土着性を感じさせる、陰りのあるメロディを伴うメロウ邪悪なトレモロ、ブラスト一辺倒でないオールドスクールなパートも含む展開など、90年代北欧ブラックの雰囲気を強く感じさせる作風。

また、楽曲の端々でメロブラやメロデスを通り越して正統派的ですらある、メロディアスなリフが出てくるのも特徴ですね。根本にメタルの筋を通しつつ邪悪さを振りまく作風は、初期~中期GORGOROTHにも通じるものがあるかもしれません。真っ当なかっこよさはありますけど、衝動性満点のガラガラなヴォーカルといい、メジャーな感性に阿っていないのもポイント高いです。

90年代北欧ブラックの様式を踏襲したようなスタイルで、特に目新しさはないですが楽曲も音作りも非常に良質。同郷のバンドならTHOU ART LORD辺りが好みの方にお勧め。


SVARTI LOGHIN - Empty World ★★ (2013-12-21 11:31:50)

2008年発表の1st。

どうやらこのバンド、後にフォーク方面に作風を発展させていったとのことですが、この1stの時点ではブラック的ノイジーな音像が儚げなメロディを強調する、いわゆるシューゲイザー系のブラックメタルですね。ブラックらしいトレモロではなく、メロディアスなベースとアルペジオでムードを演出していく作風ですが…多くのレビューサイト・ブログでも言われている通り、この沁みるような儚いアルペジオが非常に秀逸。メロウ系好きなら目頭が熱くなるかもしれません。

但し、メロウで、時に温もりすら感じる優しげなメロディ使いではあるものの、必死の形相で叫び続けているに違いないヴォーカルや、どこか神経を圧迫するような響きを持った、ブラック特有の擦り込むようなリフの音色のせいか、精神を磨耗するような鬱な雰囲気も強く、メロディの性質とも相俟って不安定さも感じますね。また、シューゲイザー系のブラックにはアーバンな空気を感じさせるものも少なくないですが、この作品はパーカッシブなリズムを取り入れた箇所があったり、ネイチャー指向が強め。

儚げなアルペジオが最大のウリな作風のため、例えばKRALLICEからこのジャンルに入ったようなトレモロフェチにはお勧め出来ませんが、繊細なメロディをブラックの苛烈さが強調する、シューゲイザー系ブラックのあの独特な雰囲気が好きな方には、かなりお勧めです。


WINTERBURST - The Mind Cave ★★★ (2013-12-21 11:29:32)

2012年発表の1st。

これは凄いですね。作風それ自体は、何か壮大なストーリーが繰り広げられる映画のサウンドトラックの如き、美麗でクッサクサなメロディを奏でるキーボードをフィーチャーしつつ、負けじとクサいメロディを奏でるトレモロリフを始め、しっかりバンドサウンドにも主張させる、均整の取れたシンフォニック・ブラックという感じで、特に奇抜さ、目新しさはありませんが…1stにして既にジャンルのお手本のようなクオリティの高さですね。

クサメロ好きならうっとりしっ放しになること間違いなしの華美さがありつつ、ブラックらしい暗黒性も仄かに感じるメロディセンスといい、そのメロディの良さを活かしたドラマ性たっぷりの展開といい、とにかく万事に於いて質が高いという印象。音質も、バンドサウンドをモダンにし過ぎて、喧しさがメロの華美さを打ち消す事もなく、さりとて薄っぺらいチープさがある訳でもなく、丁度良いクリアさ、ヘヴィさで非常に良い按配。なんというか、隙がない感じです(笑)。

「シンフォニック・ブラック」というジャンルのど真ん中を攻めるような音を、恐ろしくハイクオリティに出してますので、ジャンルに初めて触れる方にも推薦できそうなアルバムだと思う。終始メロディアスな作りで、メロデス好きにもお勧め。


PACTUM - Sucubo M.O.D.L. ★★ (2013-12-20 01:22:13)

2012年発表の音源集。
89年発表のデモ「M.O.D.L.」、同年リリースの同タイトルのEP、92年発表のEP「Antichristian Front of Freedom」、同年発表のフル「Ficcion, Lujuria y Blasfemia」、94年発表のフル「F.A.L.」の計5タイトル収録のお得盤。

メキシコ産のブラック/スラッシュ…と紹介にありましたが、オールドスクールなブラックというよりも、ベースは完全にスラッシュですね。スラッシュメタルを更に衝動的に、汚く冒涜的に鳴らすことで、結果的にプリミティブブラックやウォーブラックの、もしくはそれ以上のぶっ壊れ感に辿り着いた感じ。低音の音量ツマミを右に回しまくったような割れ気味の音、呼気強過ぎなガナリヴォーカルと肉食系…いや人肉食系な熱い音を展開してます(笑)。

一応、94年のアルバムともなるとメロウな部分もあり(特にベース)、音質もある程度よくなってはいて、衝動的なだけではない音に進化してるんですが、何故かふてぶてしさはアップしてますね(笑)。ただ、個人的にお勧めなのは89年の音源。安いテープに安い機材で録音したような歪み感のあるチープな音ですが、しっかり楽曲の輪郭は伝える、語弊を恐れずに言えば「丁度良い壊れ具合」で凄まじく熱い!何故か92年の「Antichristian~」の音源は、殆ど録音失敗してるような酷い音なので注意が必要。流石にこれだけはフェチ向けだと思う…。私のCDがおかしいわけじゃないですよね…?

モダンなバンドの小奇麗なヘヴィネスとは無縁の、衝動に満ちた熱さが支配する作品。ただこういう衝動的な音楽をこのボリュームで聴くのは多少辛いものが…(笑)。


FUNERARY CALL - Fragments from the Aethyr ★★★ (2013-12-20 01:05:33)

何枚目かは分かりませんが、2012年発表のフルアルバム。
3曲入りですが演奏時間は40分近くあります。

MZ.412やNORDVARGRなど、ブラック系アンビエント好きな方にお勧め…という事で購入しましたが、これは邪悪!ノイズ/ドローンのみならず、管弦楽器やフィールドレコーディング、果ては喉歌(ホーミー)のサンプリングまでを駆使し、黒一色を刷毛で塗りたくったかの如きドス黒い雰囲気に特化した情景を描き出す、ただただ邪悪さのみが残る儀式系アンビエント。

作りは丁寧…というか、暗黒な情景を描くことへの偏執的なまでの拘りが感じられるような作品で、例えば轟音のノイズが耳を聾するパートでも、(物理的に)耳に痛い音=過激、のような短絡には全く陥らず、むしろ何か取り返しの付かない事が進行しているような、精神の方を積極的に嬲ってくる感じなんですよね。魔界や地獄まで行ってフィールドレコーディングやってたりして(笑)。

後、個人的に感銘を受けたのはストリングスの使い方ですね。ゲストにヴァイオリン奏者を起用してる事からも分かるとおり、弦の使用頻度が高めなんですが、面白いくらい「メロディアス」とはかけ離れた音なんですよね(笑)。神経の糸が痛みを伴いつつ、引き千切れそうにそうになるような、嫌な緊張感を演出する事に専念していて、全くクラシカルなメロディが出てこない辺り徹底してます。まあ、この手に美メロなんて誰も期待してませんが(笑)。

バンドサウンドではないため、一般的なメタルファンには間違ってもお勧め出来ませんが、日常からの解脱目的でブラック聴いている方なら心から共感出来る音でしょう。決して宗教行為に利用してはいけません、危険です(笑)。


WISDOM (PARAGUAY) - Sacra Privata ★★★ (2013-12-18 23:59:46)

2009年発表の3rd。

店頭ではパラグアイ産のブラック/スラッシュとして紹介されてましたが、スラッシー度/オールドスクール度はWATAINやGORGOROTH以上、AURA NOIRやCARPATHIAN FOREST未満くらいでしょうか。あからさまに邪悪さを強調するトレモロ、クリアながらドスの効いたプロダクション、野太く威圧感のある中音域でのがなりヴォーカル、ブラスト頻度も高い暴虐な展開と、WATAIN辺りの持つどす黒い真性テイストも濃厚で、個人的にはRAVENCULTやNIFELHEIM等のバンドに近い作風に感じました。

南米産のバンドなんですが、トレモロに込められたサタニックさが北欧のバンド以上にあからさまなのがまた素晴らしいんですよね。例えばインスト明け2曲目の「Ave Kadath」やタイトル曲なんかは、初っ端から不運を呼ぶ風が吹き付ける如き禍々しいメロウなトレモロを聴かせ、一瞬で持ってかれてしまいます。メロディセンスは相当に良いと思う。オールドスクールな展開のもたらすストレートなかっこよさとも相俟って、楽曲はメリハリのある仕上がり。

ちなみに南米産のバンドを多く扱う有名レーベル、Hammer of Damnationからの再発盤には、ボーナスでBathoryのカヴァーに加え、95年から2000年までの音源から6曲が収録されており、軽くベスト盤の様相を呈していてかなりお得。95年の音源は如何にもデモって感じですが、メロウさをRAWさが際立てる97年音源、サタニックなムードの色濃い2000年音源など本編とは違う味わいで良い感じ。ただ、Satanic Propagandaから出てるオリジナル盤は、DISSECTIONの超名曲「The Somberlain」のカヴァーが付くらしいので、そっちを探すのもありかも。

メロディアスながら甘くならず、禍々しい雰囲気を伝えるトレモロや、オールドスクールな熱さがもたらすダーティなかっこよさ、太いバンドサウンドが醸し出す真性な凄みなど、ブラックメタルの魅力を分かりやすく伝え、尚且つ真っ当な質の高さもある好盤です。北欧やギリシャなどのバンドを好んで聴く方にもお勧め。


WISDOM (PARAGUAY) ★★ (2013-12-18 23:57:57)

同名バンドはメタルシーンにも幾つか存在するようですが、これはパラグアイのブラック/スラッシュメタルバンド。実は93年に結成し、現在も活動を続ける古株のバンドだったりします。


STIELAS STORHETT - Expulse ★★★ (2013-12-17 10:43:50)

2011年発表の2nd。

一口にアヴァンブラックと言っても様々なタイプがありますが、このバンドは他ジャンルの音を積極的に取り入れていくタイプではなく(一部にサックスを用いたムーディなパートがあったり、悲鳴やナレーション等のSEを導入しているくらい)、あくまでブラックメタルの範疇内でフレーズに不条理性や捻りを持たせ、それを病的な雰囲気へと繋げていくタイプの作風ですね。

どこかサイケデリックに煙るような音色のディストーション、聴き手を幻惑するような不条理性を感じさせるメロディ、カタルシスを感じるような神秘系トレモロ、音像に変化をもたせ、不安を煽るような刻みリフ…など、楽曲に込められた工夫がもたらす世界観は確かに精神を冒すようなムードを感じるものですが、作風全体としては意外にもメロディアスな作りになっているのもポイントですね。

檻に入れられた病んだ人間が、壁を爪で引っ掻いているかの如き地声の混じった壮絶絶叫ヴォーカルや、女性の悲鳴等を用いたSEによる演出効果もあり、個人的にはフレンチブラックに通じるメロウさに、LIFELOVER辺りのサイコティックな雰囲気をプラスしたような印象を受ける音なんですよね。人を寄せ付けないムードはあれど、メロディが良いのでこの手が好きであれば取っ付きづらさを感じることはないと思います。

ロシアのブラックですが、全くロシアっぽさを感じない作風です(笑)。北欧やフランス辺りのちょっと捻くれて、病んだ感性を持つバンドが好きな方にお勧め。


MALADIE - Plague Within ★★★ (2013-12-16 21:44:12)

2012年発表の1st。

本人達は、バンドのスタイルを「Plague Metal」と称しているようですが…確かに、クラシカルなピアノによる美麗なメロディをSE的に導入して見せたり、単に邪悪というよりも不条理さを感じさせたり、トラッドを捻ったような妙な叙情を感じさせたりするメロディをリフに込めたり、知性的な面も見せつつも、あくまで本質はブラック本来の苛烈さであったり、病的なムードであったり、ネガティブな感情の発露にある…という感じの作風ですね。

取り分け凶悪極まりないのがヴォーカル。余りにも感情を込める余り、息の強さが過剰気味なのか、ホイッスル音混じりまくりの凄まじく痛々しい叫びになってます…聴いてるこっちが喉痛めそうな感じ(笑)。しかも終始ハイテンション、かつ悲鳴系・高音系ながらしっかり歪みの掛かった声で素晴らしい。ただ、惜しむらくは時々重ねてあるクリーンがどうも蛇足に感じる事でしょうか…なんか半端で、せっかくの壮絶絶叫をスポイルしてるように思えてなりません。

そして楽曲の方は、実験性もそこそこにブラックメタルらしい擦り込むような音色のリフを伴い、ブラスト中心で展開するもので、ヴォーカルの壮絶さと相俟ってかなり苛烈な印象。病的な雰囲気は保ちつつも、シューゲイザー系にも通じるカタルシス感を覚えるような轟音トレモロ、近年のDEATHSPELL OMEGAから影響を受けたような、カオティックなリフ捌きも見られ、近代ブラックの良い所取りをしている感じ。というか、「Pes Equinovarus」の終わり際のリフ、どうも聴き覚えが…(笑)。まあ、この曲混沌としててかっこいい名曲なんで、良いですけどね(笑)。

ピアノによる美メロを用いた雰囲気作り、パーカッションを取り入れた少々民族っぽいパートなど、アヴァンギャルド/実験要素もあるといえばあるんですが、まず最初にヴォーカルを始めとした壮絶さに圧倒される作品。決して知性的なだけではない、しっかりと髄まで「病気」なアルバムですよ。


MALADIE ★★ (2013-12-16 21:42:38)

ドイツ産プログレッシブ/アヴァンギャルドブラック。
バンド名はフランス語で「病気」を意味する単語だとか。


STRIBOG - U Okovima Vječnosti ★★★ (2013-12-10 21:43:13)

2010年発表の1st。
最初店頭でバンド名見た時は無礼にもSTRIBORGのパチモンみたいな名前だと思いましたが(笑)、買ってみるとこれがフォーク/ペイガン由来のクサメロ志向のメロディック・ブラックの中でも、かなり素晴らしい作品で驚きました。

路線としては、「NeCHRIST」辺りの時期のNOKTURNAL MORTUMにも通じる、スラブ民族らしい土着的で、キャッチーなクサメロを笛や妖しげな女性ヴォーカルが奏でつつ、ブラックらしい苛烈なバンドサウンドで聴かせる作風で、特に物珍しい音を出している訳ではないんですが…トレモロだけでなく、スラッシュ由来のキレの良い刻みを多用した、畳み掛けるようなテンションの高さ、それによるメリハリのついた楽曲が、ほんと素晴らしいんですよね…。

基本的にはクリアながら、ブラックらしい生々しさをある程度残した音作りも、刻みリフの音色の切れ味を更に高め、そのハイテンション振りを演出するのに上手く貢献しているように思いますし、ややピッチ高めの鋭いがなりを聴かせるヴォーカルも相当に苛烈な印象で、「クサメロ系ペイガンブラックは好きだけど、メジャーなバンドは音が整い過ぎてて、アングラなバンドは内を向き過ぎててちょっと…」という方にも自信を持ってお勧め出来る作品だと思います。

メジャー過ぎずアングラ過ぎずのバランスが奇跡的に良く、しかも楽曲自体も超良質。フォーク/ペイガン系好きであればマストな一枚だと思います…が、レーベルがマイナーな事もあってタワレコにすら置いてないほど知名度が低いのが残念…。もっと評価されて良いバンドだと思います。


STRIBOG ★★ (2013-12-10 21:37:43)

クロアチア産フォーク/ペイガン/メロディックブラック。
STRIBORGと間違いやすいので注意(笑)。


NECROPHOBIC - Womb of Lilithu ★★★ (2013-12-04 01:02:12)

2013年発表の7th。

優れたスウェディッシュ・メロブラって、例えばDISSECTIONやWATAIN等がそうなんですけど、ただメロウだったり禍々しかったり、寒々しかったりだけじゃなくて、「Satanic Majesty」とでも呼びたくなるような、邪悪な品格のあるメロディセンスを備えているように思うんですが、このバンドもそうしたセンスを持つ、希少なバンドの内の一つだと思います。

NECROPHOBICは特にこれらのバンドの中でも、ギターソロを積極的に導入したり、サビに当たるパートを持つ構成の楽曲が多かったり、スラッシーでノリの良いオールドスクールなパートを導入するなど、メタルとしての普遍性の高い音楽性を持っている印象があるんですが、そうしたセンスがあるお陰で、ポピュラリティなど糞喰らえなカルトバンドと比較しても、邪悪さにおいて何ら劣らないのが素晴らしいですよね。

…とまあ、これまでと比べて劇的といえるような変化は無いんですが、進化・変化してる部分はありますね。特に成長を感じるのがヴォーカル。サタニックな歌詞を歯切れ良く、切れ味の鋭いがなりをメインに使いながらも、時折グロウル的な低音を語尾に交えドスを効かせるなどの表現力を見せ、非常にかっこいい。一般的なメロブラより、楽曲におけるヴォーカルの重要性が高いような印象。「Splendour Nigri Solis」の「nox nox」「xon xon」とか、一緒に口ずさみたくなりますもん(笑)。

また、前作までと比べるとあからさまにメロウなトレモロを強調するようなパートは減退気味で、それがメロ好きとしては多少不満な部分でもあるんですが(笑)、代わりにドロついた音圧を伴った禍々しさが上がっている印象で、より邪悪さにハクが付いたように感じました。とは言っても、印象に残るギターソロも多く、他と比べたら全然メロディアスな音ですけどね。

WATAINもめでたく日本盤が出たことですし、NECROPHOBICも是非日本盤をお願いしたいところですね。こういうブラックメタル特有の、邪悪だけど優美なトレモロを、高いレベルで伝えてくれるバンドはほんともっと知られて欲しいと思う。エクストリームメタルとしても普遍的なものを持ってると思いますし、是非お願いしたいです。


μ's - μ’s Best Album Best Live! Collection II - LOVELESS WORLD ★★★ (2013-12-04 00:59:15)

…まさか、カップリングでガチなメロスピ系アニソンが来るとは思いませんでした…。正直表題曲そっちのけでこの曲ばっかり聴いてしまってます(笑)。ツーバスにストリングスが乗るオケとか、ギターソロとかまるっきりメロスピで最初聴いたとき吹きましたもん(笑)。そして特筆すべきはサビメロの劇的さ。シンフォゴスではなく、あくまでメロスピアニソンなので「歌メロに限って言えば」ですが、まるでクサメロ全盛期(「ルナティック・ラブ」「エンジェルハイロウ」「Alice in the Necrosis」辺り)の六弦アリスのキラー曲を聴いてるようだわ…。六弦アリスと異なり、歌唱はアイドル系ユニゾンですが、それに抵抗が無いクサメラーなら必聴ですよ。


KALAFINA - Consolation - consolation ★★★ (2013-12-04 00:57:50)

全くKALAFINAを聴いた事がない状態で、「多分こういう路線の楽曲を演ってるんだろうな」と思っていた通り…いや、それを何倍にもハイクオリティにして具現化したような、崇高なクサシンフォゴシック。一度聴いただけで胸を貫くサビメロに惚れました。ただ、アルバムを通してこういう楽曲は意外と少ないのがちょっと残念かも。


CULTUS - A Seat in Valhalla ★★★ (2013-11-11 18:53:56)

2004年発表の1st。

この作品も、例によって投げ売られていたのをサルベージしてきた訳なんですが、これが「メロウなプリブラ」カテゴリでもかなり優秀なアルバムで、かなり得した気分です(笑)。作風はシンプルなミニマルに疾走するリズムに、トレモロリフと割れ割れのヴォーカルという典型的ブラックの要素を乗せた感じですが、トレモロのメロディが優れているためにエピックな雰囲気を纏っているというタイプで、個人的にはMOONBLOOD辺りに通じるものを感じたり。

リフやリズムの構成はシンプルなんですが、何気に時折メロディアスなベースのフレーズが出てくるのが、またメロウさを強調していて良いんですよね。やや高音強調気味のリフの音色の歪め方、威厳を伴うヴォーカルなど、各要素も申し分なくレベルが高いと思う。ちなみに、CD版にはSORHINのカヴァーも入ってますが、これがメロディの聴かせ方の違いはあれどアルバムの雰囲気に馴染んでいてかなり良い感じ。少し毛色の違うメロディで良いアルバムの締めになってると思います。

メロウなトレモロでミニマルに攻めるタイプのプリブラが好きであれば推薦できる作品。ジャンル聴き始めの方でもDARKTHRONEのTransylvanian Hungerを聴いて「これは名盤だ!」と感銘を受けた方ならばハマること間違いなしです。


LOST INSIDE - Mourning Wept Beside Me ★★ (2013-11-11 18:47:09)

2011年発表の3rd。

音としては、スローテンポに陰鬱なメロディの乗る、典型的な鬱ブラックという感じですが、SILENCERやNORTT辺りの、圧倒的なマイナス感情を伝えるようなバンドとは異なり、「澱み」「濁り」といった単語が思い浮かぶような、どんよりとした空気感を描写していくような作風。ただし楽曲は落ち着いた印象で、歪みもそれほど強くない音作りですが、ヴォーカルに関してはノイズ一歩手前の絶叫スタイル。

某レビューで「鬱ブラックであり、それ以上の何者でもない」という主旨で揶揄されてもいた通り、鬱系好き以外には退屈に思われるかもしれませんが、波長が合う人には実に心地良い空間を提供してくれる作品ですね。個人的には、特に1曲目の、キーボードの演出する澱が溜まりヴェール状になったような音の中を、ゆるゆると薄暗いメロディが流れる感じがかなり好きです。癒されます(笑)。

流石に入門編というにはマニアック過ぎますが、鬱系としてはSTRIBORG辺りに比べると大分聴きやすい音を出してると思います。ムード重視の鬱ブラッカーにお勧めです。


MORDHELL - Suffer in Hell ★★★ (2013-11-09 16:22:19)

2011年発表の2nd。

中古でやたら安かったので、実はそれ程期待していなかったんですけど…これ、めっちゃかっこいいですね。路線としては、「Sardonic Wrath」期のDARKTHRONEや、CARPATHIAN FOREST、AURA NOIR辺りに近い、スラッシーでオールドスクールなブラックメタル。聴いてて体が動くような体感速度重視のリズム、ブラックの擦り込むような感触にドライブ感を加えたようなリフの応酬は、単純に聴いてて気持ち良く、ストレートにかっこいい。

この手のバンドって、スラッシーな熱気が邪悪さを打ち消しがちな印象があるんですけど、このバンドはしっかり「邪悪」なのが素晴らしいです。時々出てくるメロディアスなトレモロにはブラックらしい陰鬱さ、寒々しさが込められているし、ヴォーカルもこの手にありがちな歪みを押さえた吐き捨て声ではなく、ドスの効いた歪み切ったがなり声なのが、個人的には好みなんですよね。スラッシーな曲調に求められるキレの良さも申し分なく、良いヴォーカルだと思う。

しかし、中古価格からするとこのアルバムを二束三文で売り払った人がいる事になりますが、ちょっと信じられません。よっぽど合わなかったんでしょうか…(笑)。正直これならフルプライスで買っても満足してたであろう出来です。かなりお勧め。


THE ONE - I, Master ★★ (2013-11-09 16:20:08)

2008年発表の2nd。

作風的には耳を聾するようなブラストで攻め立てる、ブルータルなパートや混沌としたリードギターのフレーズを絡めつつ、オールドスクールに進行するブラックという感じですが…音作りがかなり辛口。メロディ感を感じさせない程強く歪んだシャーシャー系のリフの音色は、目の前にどす黒い帳を下ろされたかのような絶望感を感じますね…。

そしてそのギターの作る轟音の中で響く、他の音の聴かせ方もかなり上手いと思う。まず五寸釘の混じった暴風雨が吹き付けてくるような、RAWなドラムの音色はプリブラ好きには心地良い音だし、獣の唸り声のような獰猛ながなり、オカルト的な恍惚感を誘発するような地縛霊系クワイアなどはリフのノイズによるヴェールが掛かっているせいで、一層カルトな響きを得ているように思います。

ノイジーながら、頽廃的な雰囲気の宗教画のような、厳かで陰鬱な雰囲気を持つアルバム。カルト志向な方にはお勧め出来るのではないでしょうか。


THE ONE ★★ (2013-11-09 16:16:54)

現在はイギリスに籍を置く、元はギリシャ産のブラック。
創設メンバーのI氏はGLORIOR BELLIのライブメンバーらしいです。


ARS GOETIA - Anachoreta ★★ (2013-11-09 16:13:39)

2007年発表の1st。

バンド名通り、オカルト風味の強い作風のブラックメタルですが…如何にもなおどろおどろしいメロディやキーボードなどには頼らず、ブルータル方向にもプリミティブ方向にも傾き過ぎない、あくまで「ブラックであること」を貫きつつもオカルト風味を漂わせる、ストロングスタイルな作風。メロディアスとは言えない音ですが、時折入るトレモロには確かな神秘性や禍々しさが息づいてますね。

個人的にこのアルバム、イタリアのバンドの作品ながらどこかノルウェーの黎明期バンドのような雰囲気が漂っているように思うんですよね。例えば地下臭く陰湿ながらプリブラほどミニマルではない作風は、1stの頃のMAYHEMを思わせますし、「The Last Winter」は「Isa」期のENSLAVEDにも通じる、神秘性とダイナミズムを同時に感じさせる良曲だと思う。

正直「このバンドならでは」という強烈なウリには欠けるため、初心者向けとは言いがたいですが、渋い邪悪さを醸し出していて悪くない作品だと思います。


XULUB MITNAL - Ba'ate'il ★★ (2013-10-31 22:09:33)

2010年発表の1st。

バンド名といいジャケの雰囲気といい、如何にもマヤ文明の神秘が伝わってくるような、異教的ブラックを演ってそうな感じですが…実際はそういう民族めいたパートは一部にSE的に挿入されるくらいで、実際はごくストレートなブラックメタル。トレモロなどのメロウな要素を極力排した、擦り込むようなリフとパンキッシュな炸裂感を感じさせるリズムを絡めた、「非」メロディックなスタイルで、こちらの方が断然エクストリームメタルとして真っ当な音ですけど、どこかILDJARNのスピリットを受け継いでるようにも聴こえる音なんですよね。

メロディが薄い分地味、言い換えればストイックなんですけど、ヴォーカルがかなり極悪なお陰で、受ける印象としてはなかなか強烈。最早高音のハーシュノイズに聴こえてしまうような、非人間じみた凶悪な歪みが掛かった音ながら、憎しみや敵意のような人間的(マイナス)感情も伝わってくるような凄まじく壮絶な声。個人的にこの声大好きです。ただ、せっかくマヤ文明を感じさせるようなパートを演るんだったら、もっとブラックメタル部分と大胆に絡ませて欲しかった所。なんか民族要素の取り入れ方が半端に聴こえてしまうんですよね…。

ヴォーカルは凄まじいけど、ちょっと楽曲面では(異教的要素を期待すると)物足りなさを感じてしまうかも。神秘性などよりも、ストレートなエグさを求める方向けだと思います。


XULUB MITNAL ★★ (2013-10-31 22:08:42)

メキシコ産ブラックメタル。
おそらくマヤ文明がテーマ。バンド名からして神秘的ですよね。


OBSEQUIAE - Suspended in the Brume of Eos ★★ (2013-10-30 22:37:36)

2011年発表の1st。
神秘的なジャケに心を惹かれて購入しましたが、ジャケ同様中身の方も個性的で良いですね。

タイプとしては、優美でメロディアスなギターフレーズを全編に配し、たおやかに進行していくアトモスフェリックで神秘性を感じさせるブラック。音質も音圧で攻めるようなヘヴィな音ではなく、メロディの繊細さを際立たせるようなクリアな音。ブラックらしい畳み掛ける疾走パートでもどこか優雅さを感じさせますね。音の美しさに反し、ヴォーカルは歪み切った絶叫なのも個人的には+なポイント。ダークだけど癒される作品。

ジャケのイラストそのままのような、美しくて神秘的なギターメロディが特徴のアルバムですが、アメリカ人がミステリアスな雰囲気を表現しようとすると、ちょっと和風っぽく聴こえる部分が出てくるのが個人的には面白いんですよね。特に4曲目の後半のメロディとか、聴いてて「忍者が出てきそうなメロディ」だと思いましたもん(笑)。もしくは江戸時代の権謀術数に満ちた城内のテーマソング(笑)。何気に、日本人の感性にフィットするメロディの路線かもしれません。

ダークで穏やかなムードは、人によってはブラックメタルらしさすら感じられないかもしれません。しかしメロディはかなり良いので、雰囲気のあるメロブラが好きなら聴いておいて損はないと思います。


OBSEQUIAE ★★ (2013-10-30 22:36:26)

アメリカ産メロディック/アトモスフェリックブラック。
97年より活動し、デモ作品を数枚リリースしていたAUTUMNAL WINDSというバンドが前身。ちなみに中心人物のBlondel de Nesle氏はAZRAEL (US)に在籍していた人物です。


NACHTVORST - Silence ★★★ (2013-10-30 22:33:42)

2012年発表の2nd。

眼前に高い壁が聳えるような絶望感を伴う、フューネラルドゥームにも通じる引き摺り系のリフによる音圧と、ゴシック的美意識を感じさせる悲壮なメロディをフィーチャーした、ディプレッシブなブラックメタルで、各サブジャンルのいいとこどりをしたようなサウンドですが…これがなかなかツボに嵌まる。

リズムはNORTT辺りの、フューネラル系のバンドと比べると多少速めで、リフも刻みを入れてリズムを強調したりしてますが、これがリフの黒い音圧と合わさるとかなりの圧迫感があって良いんですよね。フューネラルドゥームが一打一打の緊張感がウリだとするなら、こっちはもっとダイレクトなヘヴィさを感じさせる音だと思う。

あと何気に特筆したいのは、メロディの美しさですね。フューネラル系の悲壮感・絶望感とゴシック系の彩り、美しさが絶妙に混じったような印象で、特にインスト曲なんてなにか大作映画(但しバッドエンドに限る)のエンディングのような美しさ。また、フューネラルドゥームにありがちなグロウルだけでなく、ブラック的な引き千切るような高音絶叫も使うヴォーカルも私的にはかなりツボ。

WORSHIPやMOURNFUL CONGREGATION辺りの葬式ドゥームと比べるとテンポは大分速めで、メロディも鮮やかな事からその手のファンには徹底していないように聴こえるのかもしれませんが、個人的にはこれはこれで丁度良い按配だと思うんですよね。AHABやSWALLOWS THE SUN辺り行ける人は試してみてはどうでしょうか。お勧めです。


NACHTVORST ★★ (2013-10-30 22:29:57)

オランダ産ブラック。
ゴシック的美しさ、葬式ドゥーム的陰鬱さを取り込んだスタイル。


ARFSYND - Arfsynd ★★ (2013-10-30 22:27:51)

2010年発表の1st。

リリースレーベルがDaemon Worshipの時点で予想は付きますが、衒いのないブラックメタルど真ん中な音ですね。メロウなトレモロを伴う疾走パートもある程度挟みつつも、それ以上に陰鬱なミドルテンポにも重きを置いた作風で、分かりやすいメロディアスさや暴虐さではなく、緩急ついた展開の中で邪悪さがじわりと滲み出てくるような、割と渋めな音という感じ。

何気にこの作品、音作りがかなり良いと思う。リフの歪みを引き摺るような、爛れたような音は特にミドルパートにおいて、厭な感じの湿り気を演出しているし、変にヘヴィではなく生々しさを残したドラムの音も耳に心地良い。一応独りブラックらしいですが、バンド感がしっかりある音で、RAWさとクリアさのバランスも上手い事取れてると思う。ヴォーカルはオーソドックスな中音域~やや高めのがなりですが、時折どこか絶望的な響きを帯びるのが良いですね。

どのサブジャンルに阿ることもない、堅実に良質に真性なブラックメタル。派手さはないですけど、この陰鬱で邪悪なムードはブラック好きに良く馴染むのでは。個人的にはかなり浸れます。


MORTUORIAL ECLIPSE - The Aethy's Call ★★★ (2013-10-29 23:47:03)

2012年発表の1stですが、これは凄まじい!!

音楽性は一言で言うなら、「Demigod」アルバム以降のBEHEMOTHにも通じる、音圧を込めて暴虐に磨り潰すような、デスメタル由来のヘヴィに畳み掛けるバンドサウンドに、派手なオーケストレーションが乗るという、手法としてはごく分かりやすい音ではあるんですが…音のクオリティといい迫力といい、その辺のB級バンドが束になってかかっても全く敵わないものがあるように思います。

絶望感すら感じるドスの効いた、ヘヴィなバンドサウンドに、Nergal氏を髣髴とさせる、古代の神々の怒りのような咆哮が轟くだけでも、聴き手を圧倒するパワーに満ちている感じですが、そこに乗るオーケストレーションがかなり派手で素晴らしい。邪悪な存在を称える凱歌のような管楽器の音色で既に大仰極まりないですが、更に震えるストリングスが張り詰めた緊張感を演出。

…それがバンドサウンドに乗る事で、まるで一体の体長が数kmに及ぶ天使と悪魔の大戦争にでも巻き込まれたかのような、最早人間ではどうする事も出来ないような破壊的な情景が浮かんでくるんですよね。オーケストレーションの使い方だけでなく、リフ捌きもヘヴィさに飽かせて攻めるだけでなく、ブラックらしい叙情トレモロを上手く絡めてくるもので何気に素晴らしい。

演奏時間が30分弱と短かったので、物足りなく感じるかと思いましたが…余りにも張り詰めた空気に聴き終わる頃にはぐったり疲れてました(笑)。それだけ充実したものを聴かせてもらった感じです。BEHEMOTHやDIMMU BORGIR、SEPTIC FLESH、FLESHGOD APOCALYPSE辺りのバンドが好みであれば必聴です。


MORTUORIAL ECLIPSE ★★ (2013-10-29 23:43:32)

アルゼンチン産シンフォニックデス/ブラックメタル。
去年1stを出したばかりの新しいバンドで、しかも南米産という事でマニアックな音を想像されるかもしれませんが、現時点でBEHEMOTHやDIMMU BORGIRと渡り合えそうな凄まじいクオリティの音を出してます。シンフォニックなエクストリームメタルが好きならば要チェックなバンドです。


KOZELJNIK - Deeper the Fall ★★★ (2013-10-25 22:36:33)

2010年発表の2nd。

某レビューでSATYRICONやDODHEIMSGARDなど、北欧のエリートと言えるブラックが引き合いに出されつつ、それらバンドにはない邪悪さもある…と激賞されていたので、購入に踏み切りましたが…これが期待を裏切らない出来で素晴らしいです。MAY RESULTも今では真性な凄みを放つバンドに育ってきてるし、BANEやTRIUMFALL辺りも良質ですし、実はセルビアのブラックってレベル高いのでは。

路線としては、ブラストで攻める直接的な暴虐パートもある程度交えつつも、聴き手の精神をじわりと侵食するような、不気味な余韻を残すミディアムパートを取り入れた、知性的ながら不条理さと邪悪さに支配されたようなブラックで、雰囲気としてはCODE辺りの、長年ブラックを演ってきた連中による、一捻り加えた発展型ブラックに近いような感じですね。がなりだけでなく、朗々と不気味なクリーンを響かせるヴォーカルもCODEに近いものがあると思う。

CODEもそうなんですが、決して衝動だけに任せない、知性的で練られた展開や音作りにより不穏な空気、聴き手を引き込むような陶酔感を感じさせつつも、同時にブラックメタル本来の殺伐とした空気感、ダイレクトな邪悪さもしっかり保っているところが素晴らしいです。知性的と言っても小難しい訳ではなくて、ただ聴いているだけで精神が汚染されていきそうなムードに満ちた作品。

セルビアのバンドですが、ノルウェジアンブラック愛好家であれば確実にピンと来るような音を出していると思います。かなりお勧め。


KOZELJNIK ★★ (2013-10-25 22:34:32)

セルビア産ブラック。
MAY RESULTのメンバーが関与しているバンドです。


TERRA TENEBROSA - The Tunnels ★★ (2013-10-25 22:29:50)

2011年発表の1st。

被り物をした変態的なジャケットに惹かれ、ジャンルがポストブラックということ以外の予備知識なしに買ってしまいましたが…これはかなり聴き手を選びそう。不穏なアルペジオであるとか、深く歪んだギターの音色であるとか、使われているパーツはブラックなんですけど、メタルとしての整合性から背を向けて、ひたすらに不穏さを煽る事に終始しているような音で、半ばノイズ/アヴァンギャルドに足を突っ込んだような音になってますね。

儀式的な感触を醸し出す不気味なアルペジオ、どす黒い靄を吐き出すような気色の悪いリフ、エフェクトによって攻撃性を殺がれ、得体の知れなさを感じさせるヴォーカル等が混じって出来る音像は、宇宙に棲む怪物が思念派を送って人間の脳裏に見せる映像といった趣のグロテスクさ。もしくは謎の思念体に取り付かれた人が作った音楽という感じ(笑)。

正直かなりマニアックな音だとは思うんですが、聴き手の脳裏に不気味な映像を見せる力という点ではブラックでも優れている方だと思う。DEATHSPELL OMEGAの「Si~」アルバムのPrayerシリーズ、「Fas~」アルバムの静パートがエクストリームなパートよりも好みだという方ならば、波長が合うのではないでしょうか。個人的には分かりやすい不穏メロが聴ける6曲目がお気に入りです。


TERRA TENEBROSA ★★ (2013-10-25 22:28:58)

スウェーデン産アヴァンギャルドブラック。
バンド名はおそらく「暗黒の大地」の意。
メンバーやジャケのヴィジュアルが変なバンドとしても知られてます(笑)。


ULVER - Messe I.X–VI.X ★★★ (2013-10-19 23:52:17)

2013年発表の12th。
2012年9月に、オーケストラと電子楽器を使用して行われたライブや、それに先んじて行われたオーケストラのリハーサルのテイクを元に、スタジオでの作業を加えて完成させた…というかなり変則的な制作状況で生み出されたアルバムらしいです。

最初スピーカーで漫然と聴いていた時は、あからさまに前衛的で奇妙な音や、派手で耳を引く様なオーケストラの主題がないことや、導入部の静寂の長さなどから、前作(60年代サイケカヴァー)が肌に合わなかった事もあって、「最近のULVERはイマイチかも…」と思いかけてたんですが…イヤフォンでしっかり音に向き合って聴いたら印象が一変しました。これ、素晴らしいじゃないですか…!

まずは最初聴いたときにガッカリしかけた、電子音による無音スレスレの導入部ですが…これがちゃんと聴くと実は感動もの。真っ暗な浜辺で、水が足を浸すような感触の音から徐々に音が立ち上がっていき、それをオーケストラが引き継ぐオープニングは、静かながらドラマ性のあるものだと思う。後に続く、オーケストラパートも、思わず息を止めてしまいたくなるような緊張感があって、恐ろしくも美しいです。

一部楽曲ではGarmことKristoffer Rygg氏のあの特徴的な官能的ヴォーカルを交え、電子音とオーケストラを融合させた音像が続いていく訳ですが…それらを融合させている事自体よりも、それによって生み出されている暗黒美に満ちた情景が素晴らしい。抽象的、だけど映像的というか。ゴシックメタル的でも、シンフォゴシック的でもない「ゴシック的美意識」の強く感じられる作品。正直私の知識では音楽的に高尚かどうかは全く分からないですけど、少なくともこれだけは言えます。Garmの音楽的感性は本当に素晴らしく、共感出来る。

当然ながら過去に似た作品のないアルバムですが、強いて言うなら「Quick Fix for Melancholy EP」と世界観が似ているような気もします。こちらの方が作り込まれていて、陰影も濃い感じですが。既にGarm氏の感性の虜であるならばマストバイ、そうでなくてもアーティスティックな暗黒音楽が好きであれば大推薦。ただ、メタルやロックにしか興味がない人はスルーでもいいかも。


IHSAHN - Das Seelenbrechen ★★★ (2013-10-18 00:52:07)

2013年発表の5th。
アナウンスでは10月21日に発売になってましたが、何故か店頭に並んでいたので速攻で購入しました。アルバムタイトルの意味は「魂の破壊」もしくは「精神の崩壊」などになるのでしょうか。何れにしても、タイトル通りの作品だと思います。

…これは、今までのIhsahnが演ってきた音楽、それを総括する作品と言えるのではないでしょうか…。EMPERORの4thに始まり、4枚のソロアルバムで演ってきたプログレッシブでインテリジェントなエクストリームメタル路線と、PECCATUMが活動停止間際に辿り着いた美しく深遠でダークなアヴァンギャルド・ゴシック・ロック路線を合わせ、高めたかのような作風。

アルバム前半は、後期PECCATUMに通じる深遠で情景的なフレーズを垣間見せたり、より前衛的な色を増してはいるものの、概ね前作までの延長線上にあるエクストリームメタル路線ですが…不安を煽り立てるようなドラムにドローンめいた音、Ihsahnの哲学者が苦悩の余り発狂したような絶叫が絡み、光の差さないどころか光を吸収するような闇を演出する「tacit 2」から、急激にアンビエント・アヴァンギャルドな色を濃くしていくという構成になってますね。

アルバム前半に対する感想は「素晴らしい」なんですが、後半は良くも悪くも「凄まじい」という感じですね。今までのIhsahnからすると信じられないほどメロディ志向が薄く、代わりに音像・情景・実験性が濃い音で、時にはメタルの様式すら放棄しているくらいなんですが、その分神秘性は異様なまでに高く、暗黒空間の空虚さを実体的なものとして体験出来てしまうかのよう。…人に畏怖を与える音、という意味では、EMPERORの初期作品以上かもしれません。メタルとしてのポピュラリティは正直高くないと思いますが、そうまでして暗黒な音を追求しているIhsahnは本当に尊敬しますね…。

ちなみにデジパック盤ボーナストラック「entropie」「hel」は後半の流れを汲むアンビエント作品なんですが、これら曲のタイトルと音像は本当に秀逸だと思う。如何にも恐ろしげな音ではなくて、人の体温の感じられないような、幾何的な音とも言える感じですが…アルバムタイトルとも合わせて、壊れた魂の、人間としての知覚や意識を完全に失い、数学的法則の一部になった末路…みたいな印象があって、心が冷えるような怖さを感じてしまいます。Ihsahnらしい意味深さだと思う。

メタル作品としては、アンビエンス重視な部分にくどさを全く感じないと言えば嘘になりますが、それによって感情を揺さぶられたのもまた事実。Ihsahnって、エゼキエルやスウェーデンボルグ、ブレイクらと同じくらい「見える人」なんじゃないでしょうか…。この作品を聴いて、そんな事を思いました(笑)。


IHSAHN - Das Seelenbrechen - NaCl ★★ (2013-10-18 00:51:22)

意味深なタイトル…どういう意図を込めてこのタイトルにしたのか気になりますね…。ギターとドラムのプログレッシブな絡みは、アンビエント色の強くなる後半が嘘のようなバンドサウンドらしいフレーズ。ただ、絡みフレーズが個人的には少しくどく感じるかも。Ihsahnらしい美意識が至る所に感じられる、良質な楽曲ではありますけど。


IHSAHN - Das Seelenbrechen - Pulse ★★★ (2013-10-18 00:50:51)

PECCATUMの世界観をもう少しメタルの価値観に近付けたら、こんな曲になるのではないでしょうか。「regen」同様、根源に触れるような神秘性を感じますが、同時にこの曲では安らぎも感じるんですよね。母親の子宮の中にいた時は、こんな情景を見ていたのかも…みたいな。静謐で、Ihsahnのメロディセンスを堪能できる名曲です。


IHSAHN - Das Seelenbrechen - Tacit Ⅱ ★★ (2013-10-18 00:50:20)

何故か「Ⅱ」の方が先に来るという不思議な構成。荒れるパーカッシブなドラム、ドローン的な音像、Ihsahnの苦悩に満ちた絶叫が重なる音は、まるで光を吸引する重力を持ったどす黒い塊のよう。メタルのフレーズとしての面白さ、かっこよさなどが薄く聴き手を選ぶ感じはしますが、アルバムにおいても重要な曲なのではないかと思います。


IHSAHN - Das Seelenbrechen - Regen ★★★ (2013-10-18 00:49:41)

前半のピアノとクリーンヴォーカルで聴かせるパートが、水を漂うような根源的な神秘性を感じさせて思わず恍惚となります。そしてこのパートでのIhsahn様のヴォーカルが官能的…を通り越してエロい、エロ過ぎる(笑)。特に「touch」の言い方で身悶えしそうになりました(笑)。後半のオペラティックな盛り上がりも、メタルとしてのカタルシスに満ちてていいですね。


IHSAHN - Das Seelenbrechen - Hiber ★★★ (2013-10-18 00:46:10)

今までのIhsahnのソロ作品の延長線上にあるエクストリームメタル路線ながら、キーボードのパラノイアックなフレーズが神経を直接に作用するかのよう。既に「魂の破壊」は始まっている…そんな感じです。中盤~後半に掛けてのストリングスパートのメロディが、PECCATUMの名曲「Desolate ever after」を思わせる、荒廃した情景が見えるような感じがして好きですね。


LORD AGHEROS - Demiurgo ★★★ (2013-10-13 11:58:46)

2012年発表の4th。

ゴシック的な美しさ、沈痛さ、悲痛さに満ちたメロディが印象的なアトモスフェリック・ブラックを聴かせてくれるバンドですが、今作も作風に変化はなく、上質な美メロ・悲哀メロを聴かせてくれる作品ですね。音作りは結構独特で、アトモスフェリックなキーボードがジリジリしたリフを包み込むような感じなんですが、このギターの音色が命の灯が燃え尽きそうになっているような儚さを生んでいるように思います。

以前の作品では、美しくメロディアスなだけでなく、実験的な部分もある作風も持ち味でしたが、今作は後半部分がアンビエントというコンセプト性を前面に打ち出してますね。アンビエント部分はドローンめいた音を使ったダークアンビエントなものから、バンドサウンド部分でも聴けるようなクラシカルな美メロに満ちたものまで種類に富んでますが、共通してゴシック的な悲痛さが感じられ、深遠な雰囲気がありますね。

ブラック的な攻撃性・暴虐性などからは距離を置き、芸術性や構築性を重視した美しいアトモスフェリック・ブラック。ブラックの暗黒でメロディアスな部分が好みの方なら聴いておいて損はないかも。


SO HIDEOUS, MY LOVE... - To Clasp a Fallen Wish with Broken Fingers ★★★ (2013-10-13 11:54:32)

2011年発表のEP。

バンド名からは、何となくお洒落なサウンドを予想していたんですが…意外にもシューゲイザーブラックの中でも苛烈極まりない音で驚きました。ブラック的な歪み切った、必死さすら感じさせる壮絶なヴォーカルと、荒れ狂うような疾走も交えた展開も見せる曲調は、この手の中でも攻撃性の強い、感情的な音と言えると思います。

また、この手のシューゲイザーブラックって、メロディを儚く抽象的にするバンドが多いんですが、この作品はもっと実体的というか、あからさまな泣きの入った沈鬱なメロディなんですよね。チェロの代わりにコントラバスを交えた構成の弦楽四重奏を取り入れたり、トレモロの音も太めだったり、かなりメロディアスさの強調された作り。

ただ故意なのか詰めが甘いのか分かりませんが、無音部の後のシークレットトラックがやたら音が小さかったり、明らかにトラック分けをミスっていたりするのがちょっと惜しいですね…そこを除けば、激情に満ちた悲哀ブラックとしてごく良質な作品だと思います。


MALMORT - Vox in Excelso ★★ (2013-10-10 21:46:03)

2012年発表の1st。

フレンチブラックらしい病的な雰囲気と美しさの同居するトレモロを軸に、緩急付けて聴かせる、幾分メロディックなブラックメタルという感じですが…スラッシーというよりは、リフやリズムにどこかパンキッシュなグルーヴ感、炸裂感も感じられるのが特徴ですね。クリアな音作りながら、ドラムの音質が乾いた、かつ抜けのいい、心地良い音になっているのも、その炸裂感を助長していますね。

但し、パンク/ハードコアに見られるような、衝動を聴き手と共有するような感覚は全くといっていいほどなく、代わりに真性ブラック的な凄みというか、邪悪さで聴き手を圧倒せんとする意志に満ちている感じ。感性は完全にブラックメタル。冷徹で冷酷です。中音域でドスを効かせてがなるヴォーカルも、立派にサタンの言葉を預かるものとしての役目を果たしてます。

メロディアスでクリアな音作りから、割と聴きやすい作品ながら、フレンチブラックらしい悪のオーラが漏れてくるような作品。そこまでブルータルではないんですけど、意外とリフや楽曲の作りからMARDUKのファン辺りはグッと来るかも。


MALMORT ★★ (2013-10-10 21:44:59)

フランス産ブラックメタルバンド。
ドラムを担当するOldar氏はNEHEMARやEVOHEにも在籍していた人物。


KULTURA KURENIYA (КУЛЬТУРА КУРЕНИЯ) - Рвота 2.0 ★★ (2013-10-10 21:32:45)

2012年発表の5曲入りEP。
今作はあのPest Productionsからのリリースのせいか、普通にショップ店頭でも購入できました。

ショップではALCESTが引き合いに出されていたんですが…どっちかというと、最初期のブラックメタル色強めな頃のALCESTが比較対象としては正しいでしょうか。確かにアルペジオを使った幽玄な展開、ノイジーなリフを伴う疾走パート、邪悪さではなくて儚さやノスタルジーを指向するメロディのセンス等、シューゲイザーブラックとしての要件は満たしているんですが…全体を通じてどこか自棄っぱちなムードも強いのが特徴。

ヴォーカルの声を裏返るほどの、エモーショナルと呼ぶには余りにも憎々しげな絶叫もそうですし、ミッドテンポで妙に金物を打ち鳴らす、ヒステリックで攻撃的なドラミング、ジリジリしたリフの音など、儚いメロディの割に音が刺々しく、ちょっと厭人的な雰囲気を感じるほど。個人的には、繊細さが行き過ぎて逆にナヨナヨさを感じるくらいだとちょっと物足りないので、これくらいの刺々しさはむしろ歓迎したいところですが。

作風的には、確かにALCEST辺りを皮切りとする、ポストブラックのムーブメントの一端を担うバンドなのかもしれませんが、ブラックメタルのRAWな感性も感じられるのが良いですよね。ポスト系だけでなく、ブラック自体も好きな方にお勧めです。


KULTURA KURENIYA (КУЛЬТУРА КУРЕНИЯ) ★★ (2013-10-10 21:31:53)

ロシア産ポスト/シューゲイザーブラック。
バンド名は「Smoking Culture」という意味だとか。普通に「喫煙文化」でいいんでしょうか。


DYSTER - Phase terminale ★★★ (2013-10-09 21:02:04)

2012年発表の2nd。

某所で新古品が安価だったのでよく考えずレジに持って行きましたが、これがかなり良質な鬱ブラック。適宜オカズも挟み、ロックのかっこよさも感じさせる抜けのいいドラムによるミッドテンポ中心の展開に、少々ノイジーなギターと粘着質に歪んだヴォーカルが絡み、徐々に聴き手を追い詰めるような鬱屈した雰囲気を醸し出しつつ、不審な影が蠢くようなトレモロが不吉さを感じさせるような作風。

鬱系に分類される音ではありますが、この手にありがちなミニマルな作風ではなく、曲によってはメロトロン風やオルガン風キーボードを取り入れた、グロふわアンビエント要素があったり、ベースのトレモロを強調し不穏な質感を更に実体的に演出したり、展開は割と凝っている感じ。ドラミングの心地良さといい、フレンチブラックらしい鬱屈した美しさを持つトレモロのメロディといい、決して自己満足的でない、人に鬱感情を伝える事をしっかり念頭に置いた音という印象ですね。

正直言うと、同じような雰囲気が続くような鬱ブラックはちょっと食傷気味なんですけど、これはかなり楽しんで聴けました。私は安価で見かけたのが購入のきっかけでしたが、鬱屈したブラックが好きならば普通にフルプライス出しても損したと思う事はないように思います。良い買い物しました(笑)。


DYSTER ★★ (2013-10-09 20:56:11)

フランス産鬱ブラック。
AUTARCIEのNokturn氏による独りバンド。


ANWYNN (FRANCE) - Voices of Perdition ★★ (2013-10-09 20:50:16)

2008年発表の1st。

基本的にはプリミティブブラック的なRAW音質に、悲壮なメロディを滲ませたトレモロ、ガラガラに歪みきったヴォーカルを乗せた、如何にもアンダーグラウンドなブラックという感じですが…自分達の音楽に固有の名称(Gallic Metal)を付けるだけあって、あからさまではないものの、どこか民族テイストの感じられる作品ですね。

トレモロリフのメロディには北欧ブラック的な寒々しさだけでなく、ペイガン系メロブラの物悲しさも混じっている感じなんですが、これが効果的にリフの身を切るような感触を強調しているんですよね。また、ドラミングも一般的なプリブラと比べると、どこかパーカッシブな感覚のフレーズが多いように思うんですが、これも上手くさりげない民族風味の演出に一役買ってるような感じがします。

明らかな民謡メロディや民族楽器を使うことなく、あくまでプリミティブブラックの様式を固持しながら、そこはかとなく民族テイストの感じられる作風。何気にそれがプリブラの本来持っている陶酔感と相性が良かったりするんですよね。マイナー臭漂いまくりの音ですけど、悪くないですよ。


ANWYNN (FRANCE) ★★ (2013-10-09 20:49:03)

フランス産ブラックメタルバンド。
このバンドは自分達の音楽を「Gallic Metal (ガリアのメタル)」と自称しているとか。
あと多分同名バンドではベルギーのバンドの方が有名らしいです。


ERIMHA - Reign Through Immortality ★★★ (2013-10-09 09:52:53)

2013年発表の2nd。

ジャケに貼付されたシールには、BEHEMOTHやDIMMU BORGIR、CRADLE OF FILTHなどの有名バンドが引き合いに出されてますが…確かに、これらメジャーバンドを比較対象にしてもおかしくないくらい、メジャー志向かつハイクオリティなサウンドですね。クリアかつ音圧の高い、重低音を効かせた畳み掛けはBEHEMOTHに、シンフォ要素を導入したスケールの大きい音作りはDIMMU BORGIRに、時折垣間見せるゴシック的な美意識の高さはCOFにそれぞれ通じるものがあり、これらバンドの良いとこ取りをした音楽性と言えるかも。

ただし、メジャー志向でクオリティの高いサウンドではあるんですが、例えばブラストで畳み掛けるパートに管楽器の音色を合わせ、よりスケールの大きな蹂躙感を演出してみせたり、音圧の高いバンドサウンドに閃くようなストリングスのフレーズを乗せ、邪悪さと耽美さを両立させてみせたり、全体を通じてダークな美しさがしっかり強調された音になっている辺り、感性はブラックメタルのそれだと思います。デス・ブラック・ゴシックの良いとこ取りな作風は、上記バンドほど個性があるとは正直言いがたくはありますが、それらバンドのファンを満足させうるだけの質の高さはあると思う。

個人的には、BEHEMOTHやDIMMU BORGIR、COF辺りも確かに似た傾向はあるんですが、ポーランドのVESANIAを更にメジャー志向にした作風という印象もあるんですよね。知的かつダークでブルータル。まあエクストリームメタルを好んで聴いている方なら何かしら琴線に触れる部分のある音だと思います。


ERIMHA ★★ (2013-10-09 09:50:02)

カナダ産メロディックブラック/デス。
バンド名はシュメール語で「軍隊」の意味だとか。


NEO INFERNO 262 - Hacking the Holy Code ★★★ (2013-10-09 09:48:32)

2008年発表の1st。

インダストリアル・ブラックと言っても、インダストリアル要素を装飾程度に取り入れたバンドから、ほぼバンドサウンドの輪郭を失って、ブラックメタルとしての形式から大きく逸脱するものまで様々ですが、このバンドは音作りの深い所までインダストリアル化しておきながら、ブラックとしての感性もしっかり残している辺り、非常にバランスの良い作風と言えると思います。流石フレンチブラックの大御所が作っただけあって、実験的で知的なだけでなく、邪悪さも特盛。

例えばメカニカルな質感を強調したマシンブラストは聴いていて単純に気持ちいいし、それぞれの音の位置にまで手を加えたリズム構成、サンプリングとバンドサウンドを混ぜ合わせた実験的な音作りなどは、興味深く楽しく聴けます。一方で、ブラック由来のトレモロによる邪悪さ、演説調を交えたヴォーカルによる殺伐とした雰囲気の演出など、ブラックメタルに求められるような過激さが、インダストリアル要素を取り入れた事によって全く失われていない、むしろ強調されているのが素晴らしい。ほんとブラック好きにとっては心地良過ぎる音ですよ…。

インダストリアルな音にアレルギーがないブラックファンであれば、是非とも持っておきたい一枚。フレンチブラック悪の枢軸の底力を思い知らせるような力作だと思います。


NEO INFERNO 262 ★★ (2013-10-09 09:46:49)

フランス産インダストリアル・ブラック。
フレンチブラック・エリート達によるプロジェクトで、ARKHON INFAUSTUS等の666 Torturer氏、MERRIMACK等のJudicael氏、ANTAEUS、SECRETS OF THE MOONのLSK氏らが在籍している事が判明しているらしいです(どのメンバーがこのプロジェクトでどのバンドネームを名乗っているか、何を担当しているか等は不明らしい)。


GORATH ★★ (2013-10-05 10:13:08)

ベルギー産プログレッシブ/アヴァンギャルドブラック。
アルバムを6枚も出しており、かなりキャリアのあるバンドですが、どうやら今年の春に解散してしまった模様。


GORATH - Apokálypsis (Unveiling the Age That Is Not to Come) ★★★ (2013-10-05 10:11:02)

2011年発表の5th。

このバンドの音楽性は、よく「プログレッシブ」とか「アヴァンギャルド」という言葉で表される事が多いようですが、このアルバムを聴く限り、実際はリズムや音色、フレーズに引っ掛かりを持たせるような事はあっても、ブラックの邪悪さから逸脱するような事はせず、あくまでブラックらしい真正な凄みや宗教的な恍惚感で勝負する、どす黒い音を身上としている作風。

聴き手の心に不安感を植えつけるようなアルペジオ、単に暴虐さにあかせて攻めるだけでない、搦め手も時折交えるようなリズム展開など、楽曲の作りは凝っている印象ですが、トレモロフェチの私としてはやはりトレモロリフの使い方に注目したいですね。全体的にメロディが邪悪で非常に宜しいですが、特に「The Seven Seals」の理性が警鐘を鳴らすような爛れたメロディ、「Le Porteur de Lumiere」のマンドリン風(?)の枯れ落ちるような音色は個人的に心を捕まれました。

WATAINのErik風の太くキレのいいがなりを中心としながら、語りや悲鳴、詠唱風など表現力の高さを見せるヴォーカル、ギターの歪み方が多少強めながら基本的に整っているプロダクションなど、各要素のレベルも高く、まるでWATAINやVALKYLJA辺りを多少アングラ度強め、かつ前衛度を高めたかのような感じの質の高さ。上記バンドや3rdまでのDEATHSPELL OMEGA、レーベルWTCやDaemon Worshipの所属バンドが好みの方は買って損はしないかと思います。


SONNENBRAND - В Осознании Превосходства ★★ (2013-10-05 10:05:20)

2013年発表の1st。

これはペイガンブラックの中でも、割と上級者向けの音かもしれません。
まずインパクトあるのがリフのノイジーな音質。高音域のノイジーさを強調していながら、しっかりベースも聴こえる低音域も疎かにしない音作りで、かなり音圧高めで殺しに来ている感じ。このノイジーさ、どちらかというとマニアックなプリブラか鬱系に通じるものがあるように思います。それをもっと刺々しく攻撃的に整えた感じ。

この音作りで大分篩いに掛けられてしまいそうですが、楽曲自体は良質。泣き要素の強いトレモロで攻めるパートは初心者でも問答無用でグッと来るような叙情性ですが、余りそればかりを強調せず、メロディアスになり過ぎないリフ捌きは音質とも相俟ってヒリヒリとした感触を生んでますね。ヴォーカルの地声交じりの絶叫も、リフと音質の醸し出す殺伐とした雰囲気に良く合ってると思う。

そして特筆したいのがヴォーカルのクリーン。朗々としたテノール歌唱ですが…正直、この手の歌い方の中でもかなり魅力的な方じゃないかと思います。野太くて、艶があってホントうっとりと聴き入ってしまいます。はっきり言って、個人的にはこの作品の一番の聴き所だと思ってますもん。音作りのマニアックさとかどうでもよくなります(笑)。良い声過ぎる…。

…そういう訳で、もう少し音質がマイルドなら、もう少し叙情トレモロの頻度が高ければ初心者にもお勧めできそうですが、現時点では割とマニアックな音だと思います。ただ、クリーン歌唱が本当に素晴らしいので、男臭い歌声に魅力を感じる人はそれ目当てで買ってもいいかもしれません。


SONNENBRAND ★★ (2013-10-05 10:04:17)

ロシア産ペイガンブラック。
バンド名はドイツ語ですが、れっきとしたロシア産のバンドです。


EMPTINESS - Error ★★★ (2013-10-02 23:11:52)

2012年発表の3rd。

関連バンドのENTHRONEDは真性ブラックな邪悪さと、エクストリームメタルらしい暴虐性を上手く合わせたハイクオリティなブラックを演っていましたが、こちらは更にデスメタルに接近した音ですね。メロディよりもうねり、澱みを重視するかのようなリフ捌き、重低音の地を這うかのようなグロウルなど、ブラック要素よりもデス要素の方が優勢な感じのする作風。

ただ、デスに接近するブラックメタルバンドは数多くいますけど、このバンドの音はその中でも抜きん出て緊張感があって、そして陰湿だと思う。ダークなトーンを奏でたり、神経を焼くようなメロディを奏でるリード、ブラック由来の爛れた邪悪さを表現するトレモロなど、フレーズがいちいち高い暗黒センスを感じさせるんですよね。リフとリズムのどこか粘着質な絡みもあり、時折息をするもの憚られるような重苦しさすら感じます。その雰囲気を保ったまま暴虐ブラストパートに移行したり、本気で殺しに来てる感じの音。

海外のレビューサイトとかを見てると、つまらないメタルを表現するのに「watered down(手ぬるい)」とか「mediocre(凡庸)」といった単語がよく使われますが、そういった言葉とは光年の彼方にあるような邪悪なエナジーに満ちた作品。デス化したブラックの中でも相当に高品質な一品です。ENTHRONEDも相当良かったんですけど、こちらも素晴らしい。歌詞カードが見づらいことだけがネックです(笑)。


EMPTINESS ★★ (2013-10-02 23:10:43)

ベルギー産デス/ブラックメタルバンド。
人脈的にENTHRONEDと深い繋がりのあるバンドです。


ISRATHOUM - Black Poison and Shared Wounds ★★ (2013-09-28 09:37:38)

2012年発表の2nd。

もうレーベルとジャケの時点で真性ブラックである事は予想が付きそうですが…全く予想通りの音です(笑)。寒々しさや宗教的な雰囲気、病的な毒々しさを醸し出すトレモロを駆使しつつ、それ一辺倒にはならないリフワーク、サタニックなフレーズを堪能できるほどクリアながら、ヒリヒリした質感もあるプロダクションなど、如何にもブラック然とした音。

ただ、ヴォーカルの鬱系テイストの入った、必死な感じの絶叫のせいか、ただ邪悪なだけでなく奈落に落ちていくような救いようの無さも感じるんですよね。また、ストップ&ゴーとも言いづらい微妙なリズムの引っかかり、死者が踊るような跳ね気味のリズムの導入など、楽曲中に奇妙さを覚えるようなフックのあるパートもあって、それが陰湿で病的なムードを更に高めているように思います。

安定のDaemon Worshipらしい真性ブラック。WATAINやVALKYRJA辺りが好きで、更にディープな方向に足を進めて行きたい人向けだと思います。


ISRATHOUM ★★ (2013-09-28 09:36:40)

オランダ産ブラック。
最新アルバム「Black Poison and Shared Wounds」からDaemon Worshipに移籍。


RUSTING SUN - Behind the Shadows ★★ (2013-09-28 09:30:29)

2011年発表の1st。

ショップやレビューサイトの紹介ではアヴァンギャルドブラックとして紹介されていましたが、実際にはブラックメタルを逸脱するような部分は余りなく、刻みリフや疾走パートを用いて展開しつつも、聴き手を不安にするようなメロディで聴かせる、鬱テイストの強い作風。呟くような、唱えるようなクリーンと、ネガティブな感情を爆発させるような叫びを使い分けるヴォーカルもディプレッシブブラック的。

ただ、時々妙に居心地の悪くなるような不穏さを醸し出すフレーズを挟んでくる辺りは、前衛的な感性を持っていると言えるかも。個人的な印象としては、鬱ブラックをベースにDEATHSPELL OMEGAの不穏な部分のみを抜き出して加える事で、更なる不安感を演出している…という感じなんですが、宗教色は余りなく、あくまでマイナスの感情を伝えるための音楽…という雰囲気。

全体を通じて重苦しいまでのネガティビティが支配する作品ではありますが、鬱系としてはミニマル過ぎない展開、意外に泣きメロもあったりでそこまでマニアックな作品ではないと思います。ただ、ある程度ブラックが好きな人向けだとは思いますが。


RUSTING SUN ★★ (2013-09-28 09:28:43)

ドイツ産アヴァンギャルドブラック。
ODAL、ERHABENHEITのTaaken氏が在籍。


PESTILENTIAL SHADOWS - Depths ★★ (2013-09-24 19:12:57)

2011年発表の4th。

人脈的には、DROWNING THE LIGHTやAUSTERE、WOODS OF DESOLATIONなど鬱系寄りのバンドが多いようですが、ここで聴けるのは真性にして衒いのない、ごくオーソドックスなブラックメタル。部分的にミニマルで瞑想的な展開を取り入れつつも、基本的には黒いトレモロリフやブラストビート等、如何にもブラックらしい要素を絡めつつ、緩急付けて聴かせる、暗黒なドラマ性を感じさせる作風。

音質はフレーズは鮮明に聴き取れ、低音もある程度効いてエクストリームメタル然としつつも、ノイズ質をやや強調したような感じなんですが…これがなかなかに秀逸。不透明感を感じさせる音作りが、楽曲の陰影を更に濃くしている感じ。リバーブの掛かった、ドスの効いた絶叫ヴォーカルや邪悪なトレモロリフの音色とも相性バッチリ。聴きづらくなるほどノイズ質を強調せず、ミステリアスな雰囲気を上手く作ってる辺りが巧いです。

このバンドならでは!といった、分かりやすいウリに欠ける辺り初心者には勧めづらいアルバムではありますが、しっかりブラックメタルの邪悪さを感じさせてくれる良質な作品。陰鬱さと凶悪さを両方求める方向けだと思います。


PESTILENTIAL SHADOWS ★★ (2013-09-24 19:11:24)

オーストラリア産ブラックメタル。
DROWNING THE LIGHTなどのメンバーが絡んでいるバンド。


BLUTKLINGE - Call of the Blackened Woods ★★ (2013-09-24 19:06:32)

2007年発表の4曲入りEP。
…と言っても、現在流通しているEwiges Eis盤はボーナストラックが1曲入っていて、演奏時間は40分以上で、ボリュームはフル並。

作風としては、物悲しいメロディのトレモロやアルペジオ、非人間的なまでに歪み切った絶叫と嘆きを乗せた呻きを使い分けるヴォーカルを、一部ブラストを交えつつ基本スローなリズムに乗せて展開していく、鬱ブラックの典型と言えるような感じですが…。まず肝であるメロディが非常に秀逸。鬱や絶望よりも、涙腺を刺激するような悲哀の感情に満ちたようなメロディが、全編に渡って横行。

個人的には、実はストイックで地味なメロディよりも、こうした分かりやすく琴線に響くメロディの方が好みなんですよね。それを弾くギターの音色も、金属質なノイジーさを強調しながらも、耳に痛かったり変に人工的だったりという事のない、奥行きを感じさせるような歪みの掛かったもので、上手くメロディの物悲しさを強調しているように思います。例えば、NARGAROTHの「Geliebte des Regens」アルバムは、ミニマリズム・悲哀・ノイジーさの全てで振り切っていましたが、それらをもう少しマイルドに仕上げた感じ…というと近いかもしれません。

タイプとしては鬱系に属する音ですが、カテゴリの中でも泣き要素の強い一枚。メロブラ好きもスローである程度ミニマルな作風が大丈夫であれば行けるかも。


BLUTKLINGE ★★ (2013-09-24 19:05:07)

ドイツ産ブラック。
バンド名はドイツ語で「血の刃」らしいです。


HATS BARN - Voices of the Ultimate Possession ★★ (2013-09-23 10:03:26)

2012年発表の3rd。

なんとも恐ろしい…じゃなくて気合の入った(笑)経歴を持つバンドですが、音の方もある意味ストイックなプリブラですね。RAWな音質が悲壮感の込められたメロディの醸し出す物悲しいムードを更に掻き立てるプリミティブブラックという感じですが、篭もった、耳に痛いノイジーさとは異なる音作りから受ける印象は、最早「湿った」を通り越して「湿気った」とでも言いたくなりそう。

基本は悲壮な哀愁メロディのトレモロで攻めるパターン多めですが、「Conquering the Throne of God」を始め、所々でカビが生えそうな陰湿なメロディも見られ、そういったパートではMUTIILATIONに通じるような病的さも垣間見せてくれます。また、ヴォーカルはがなるだけでなく、時折ホイッスル音すら混じってるように聴こえる、箍の外れた高音絶叫を交えてくるタイプで、それがアングラな狂騒感に拍車を掛けているような感じがします。

音作り、メロディ共に湿度の高い一枚。疾走パートこそ多めですが、この黴臭い陰湿な雰囲気は鬱ブラック好きにも受けるかもしれません。プリブラとしても分かりやすい魅力に満ちた一枚です。


HATS BARN ★★ (2013-09-23 10:02:29)

フランス産プリミティブブラック。
墓荒しや違法な武器の所持で捕まった経験もあるらしいPsycho氏らによるバンド。


OMFALOS - Idiots Savants ★★ (2013-09-23 09:57:48)

2011年発表の1st。

ブラジル産のアヴァンギャルドブラックというプロフィール、オープニングの聴いてるだけで呪われそうなSEパートから、一体どんな音が飛び出すのかと思いましたが…時にクラシカル、時にメカニカルな感触を伝えるトレモロ、スラッシーに狂ったりメロウなメロディを弾いたりするギターソロなどを詰め込み、豪速マシンブラストに乗せてカオスに展開するインダストリアルブラックでかなり予想してたのと違う感じ。なんですけど、これはこれでかなり面白いです。

ブラス系のシンセを用いた壮大な雰囲気の演出、メロディアスなリードギターをフィーチャーしたドゥーミーなパート、アルペジオによるアトモスフェリックなパートなど、楽曲ごとに手を変え品を変え、様々な要素を9曲で26分という小品主義な構成のぶち込んでくる感じで、聴いてて「ちょっと落ち着け」とでも言いたくなります(笑)。ただ、音質のクリアさ、楽曲の聴かせどころの設け方など、多少変態的ではあるけど作品の質自体は高いと言えるのではないでしょうか。

アヴァンギャルドの看板に偽りの無い変わった作品ですが、人を寄せ付けないようなムードは希薄で、むしろカラッとしたかっこよさのあるアルバムだと思います。アヴァンギャルド性が邪悪さや暗黒性、気難しい複雑さへ繋がってるようなブラックが苦手な方でも、この作品なら行けてしまうのでは。


SZRON - Death Camp Earth ★★★ (2013-09-22 09:43:45)

2012年発表の3rd。
ディスコグラフィを見ると、かなりの量のスプリットや音源集などをリリースしているようですが、オリジナルのフルとしては3枚目らしいですね。

4曲38分という大作主義なアルバム構成ですが、特に衒った部分などは無く、硬派なまでにプリミティブな魅力を追求した、これぞブラックの真髄とでも言いたくなる様なストレートな出音。寒々しさを感じさせるトレモロと、アングラな熱気を伝えるオールドスクールなリフを黄金比で混ぜつつ、緩急つけつつもストイックに展開していく、職人的とも言える作風。

特に「プリブラとしてのリフの音色・歪め方」にはかなり拘っているのではないでしょうか。サタニック、ミサンスロピックなどす黒さと、地下音楽特有の熱気を封じ込めつつ、しっかりフレーズの魅力を伝えるような音色に仕上がってると思う。凍てつくリフを伴う疾走も当然かっこいいですが、特にスロー~ミドルパートにおける、黒いリフで視界を塗り潰しつつのトレモロが反則級にかっこいい。大地を焦土に変えていくような邪悪さ。

ただ、唯一いまいちだと思ったのは、1曲目「Becoming a Shadow」の中盤~後半に掛けての展開があまりにもくどい事でしょうか。スラッジーなリフでミニマルに聴かせる事自体は良いとして、アルバム構成的に「引き」のパートが来て欲しくない部分でくるのが、ちょっと惜しい感じ。まあ、それ以外には全く文句は無いですけど。プリミティブブラックとして完成されている音だと思う。

これはプリミティブ系好きな人には是非聴いてほしいアルバムですね。同郷のバンドならMGLA、スウェーデンのCRAFTやARCKANUMなど、独自の哲学を持ってそうな硬派なブラックが好みであれば是非。


EQUINOXIO - By the Serpent and Will (for Those Who Chose Not to Serve But to Rule and Conquer) ★★ (2013-09-22 09:38:54)

2011年発表の2nd。

まるで機銃掃射のような、手数の多くブラストを多用するドラミングと、寒々しさよりもどこか妖艶さを感じさせるトレモロリフによるメロディで聴かせる、非常にブルータルなブラックメタルを展開。中南米産という言葉から連想されるようなダーティなアングラ感は余り無く、エクストリームメタルとして真っ当にハイクオリティな音で、音質もクリアで割と聴きやすい音。

メロディの妖しさとブルータリティで圧倒していく様にはちょっとNILEを思い出したりしましたが、こちらはヘヴィさよりも炸裂感を強調したような音作りになっている辺りがブラックらしいポイントでしょうか。また、時折裏返ったような悲鳴を上げるヴォーカルのやけくそ振りも特徴ですが…個人的には、少し素っ頓狂な感じがしてしまいこのパフォーマンスは今ひとつだと思う。グロウル気味の発声から持ち上げるように叫ぶところなんかは、素直にかっこいいと思えるんですが。

圧倒するようなハイテンションの中での、手数の多いブラストを絡めた弾幕的ドラミングと、妖しげなメロディをフィーチャーしたトレモロの応酬が非常に心地良い作品。分かりやすい魅力・質の高さがあって決して間口の狭い音ではないと思います。


EQUINOXIO ★★ (2013-09-22 09:34:15)

パナマ産ブラック。
ライブメンバーにCHAOS INVOCATIONと繋がりのあるバンド。


ARVET - Aijna ★★★ (2013-09-21 10:36:26)

2011年発表の1st。

関連バンドのSATURNIAN MISTがなかなか良かったので手を出してみたんですが、こちらも別ベクトルで素晴らしい作品ですね。作風としては、北欧産らしい寒々しいトレモロを使いつつも、初期~中期DEATHSPELL OMEGAを思わせる不穏で妖しいメロディ、地縛霊のような呻きコーラスなども取り入れ、密教的で閉塞的なムードを色濃く漂わせる、プリミティブな質感の強いブラックメタル。

基本はプリミティブな閉塞感を重視した作風なんですが、疾走パートにおける乾いたドラムによる炸裂感、妖しげなミディアムを基調としながらも疾走も交えてくる、ドラマ性もある構成など、プリミティブ性を壊さない範囲で上手く「聴かせる」音に仕上げているのが素晴らしいですね。楽曲の質の高さ、かっこよさとアングラ性を上手く両立させている感じ。母国語でがなるヴォーカルの必死さ加減も地下臭い雰囲気を更に助長しているように思います。

プリミティブな感触のブラックが好きであれば自信を持ってお勧めできる一枚。決して衝動的なだけではない、高いセンスに裏打ちされた雰囲気を持った作品です。


ARVET ★★ (2013-09-21 10:35:46)

フィンランド産ブラック。
元SATURNIAN MISTのNoxifer氏を始め、SATURNIAN MIST絡みの人脈が関るバンド。ちなみにバンド名はフィンランド語で「傷痕」らしいです。


SATURNIAN MIST - Gnostikoi Ha-Shaitan ★★★ (2013-09-21 10:32:06)

2011年発表の1st。

この2年ほど前に出たEP「Repellings」では刺々しいRAWブラックを演っていましたが、大分出音が変わった感じですね。デスメタル的なヘヴィさ、ブルータリティを取り入れ、よりエクストリームメタルとして直接的なビルドアップが図られた印象。結構メロウなギターソロも多かったりします。ただしBEHEMOTHを始め、HATEやRAVEN WOODSなど多くのバンドがブルデスに通じる音を出してるのに対し、このバンドの音はオールドスクールデスの禍々しさ、邪悪さが強調された音になっているように思います。

音質がクリアながら作り物っぽさを感じさせない、どす黒い靄に包まれるようなものであったり、楽曲によっては妖しげな女性ヴォーカル、神秘的なキーボードも用いられたりなど、ムード作りにはかなり拘っている感じ。ブックレットの凝り具合からも、オカルトなムードへの傾倒が伺えますが、それを十二分に音に込められているように思います。メロディも時折メロウさも見せつつ、密教的な妖しさを志向していて素晴らしい。デス由来のダイレクトな攻撃性、メタリックなヘヴィさがそのムードを全く壊していない、むしろ強調している辺りセンス良いですよね。

Repellingsも悪くなかったですが、大分路線を変えたこの作品は予想以上に素晴らしかったです。正直デスとブラックのハイブリッド的な路線を行くバンドの中でも、個人的にはかなりツボを突いた音を出しているバンドなんですよね。お勧めです。


AETHERNAEUM - Wanderungen durch den Daemmerwald ★★★ (2013-09-16 12:50:16)

2013年発表の1st。

カテゴリーとしては、生のチェロやヴァイオリン等も使用し、フォーキーで仄暗い叙情性を込めたメロディを、アトモスフェリックな音像を醸し出す、心地良くノイジーなリフと展開のスパンが長めの構成、大作主義な作風で聴かせることで、丁寧に情景を描いていくアトモスフェリック・ブラック…という感じで、ドイツのバンドながらカスカディアン勢にも通じる、儚い叙情を感じる繊細な音を出してますね。

関連バンドのEWIGはブラックよりゴシックとして認識されているようですが、そういったバックグラウンドを持っているという事が、かなりプラスに働いているように思います。儚いだけでなく陰影の濃いメロディ、ナルシシズムを感じられる幽玄な低音クリーンなど、ゴシックの美意識が感じられる要素が、この音像の中にあって悉く耳を惹くんですよね。特に陰りのあるメロディの演出する、身を切るような感触はコールドブラックが好きな方も好みそうだと思う。

情景的なブラックメタルが好きであれば、幅広くお勧め出来る作品だと思います。COLDWORLDやAURVANDIL、NEFARIOUS辺りのコールド系、DORNENREICHやHELRUNAR辺りのフォーク系、WOLVES IN THE THRONEROOM、SKAGOS、PANOPTICONなどのカスカディアン系など、どのタイプを好む方が聴いてもなにか感じるものがあるかと。


AETHERNAEUM ★★ (2013-09-16 12:46:50)

ドイツ産アトモスフェリック・ブラック。
EDEN WEINT IM GRABのメンバーが在籍。


ROOT ★★ (2013-09-14 11:55:00)

チェコ産ブラックメタルバンド。
80年代後半より活動を続け、9枚ものアルバムをリリースしている大ベテラン。


ROOT - Heritage of Satan ★★★ (2013-09-14 11:54:17)

2011年発表の9th。
一部楽曲で元MAYHEMのBlasphemer氏、BEHEMOTHのNergal氏、WATAINのErik氏がゲスト参加。…なんなんだこの私得なメンツは(笑)。そりゃ、バンドの評判とも相俟ってレジに持って行きたくなりますよね(笑)。

ブラックメタルシーンでも古株かつ熱狂的な支持を受けるバンド、しかし現在はある程度ブラックから距離を置いた音を出している…という情報から、期待しつつ不安もあったんですが…これは買って良かったですね。確かに典型的なブラックとは言えない音ですけど、ダークでサタニックなメタルである事に変わりはなく、私的にはかなり好みの作風なんですよね。

楽曲によっては、空気を澱ませるような邪悪なトレモロリフや、暴虐さをダイレクトに伝えるブラストビート等、ブラック的な音も出していますが…基本的には正統なメタルのグルーヴやダイナミズムを持つ、ダークでダーティなヘヴィメタル。音質も変に篭もっていたりせず、楽曲の持つダークなムードを直接的に伝えるようなクリアな音。DISSECTIONの「Reinkaos」やSATYRICONの近作辺りよりも更に普遍的なメタルを目指している感じ。

ただし、そのグルーヴィだったりダイナミックだったりが、妙に明るい方向でなく、邪悪さや暗黒性をより実体的にする方向に作用しているのが素晴らしいです。ヴォーカルもダミ声でがなったり低音でメロディを追ったりしていてブラックっぽくはないですが、叫ばずとも悪魔達を従えるような威厳に満ちていて、これはこれで好き。普通にハイトーンとかだと能天気に聴こえてしまってサタニックなムードが壊れる気がするんですが、こういうクリーンなら歓迎。

普遍的なメタルのかっこよさを感じさせつつも、あくまでサタニックなムードを最重要視したような濃さも感じさせる、かなりの良盤。アルバムの導入が多少長い事を除けば、満足の一枚。ベテランらしい確信に満ちた、黒光りする作品です。


POSTHUM - Lights Out ★★★ (2013-09-13 22:47:50)

2012年発表の2nd。
着々と良いバンドを獲得するIndie Recordingsに移籍してのリリース。

前作でも一部に温かみを感じさせるような、儚いメロディを使ったパートはありましたが、今作ではその路線を大分押し進め、一般的なブラックメタルとはやや異なる、幻想的なムードも重視した、一歩進んだような作風になった感じですね。リフもシューゲイザー的とは言わないまでも、包み込むような感触がどこかに感じられるような、より音色に拘った音作りが成されているように思います。

ただ、ブラックの感性から離れたポストブラック勢と比較すると、バンドサウンドのダイナミズムも同時に重視してくれている辺りが、私好みで良いんですよね(笑)。個人的には現在のENSLAVEDの路線をちょっとだけオーソドックス寄りにしたような、プログレッシブな雰囲気を感じたり。ヴォーカルのエッジを引き伸ばすような、ガラついた叫び声なんか明らかにGrutle氏のパフォーマンスを意識してそうな感じがしますし。

前作も良質なブラックでしたが、今作も異なる路線ながら良いアルバムだと思います。ポストブラック的な感性をある程度持ちながら、ブラックメタルである事も捨てていないバランス感覚が好きですね。現在のENSLAVEDや、レーベルメイトのNETTLECARRIER辺りのバンドを好む方にお勧めです。


RAHVIRA (ՌԱՀՎԻՐԱ) - Rahvira. Part 1 (Ռահվիրա. մաս 1 - Կոչ Արյաց) ★★ (2013-09-13 22:44:44)

2010年発表の1st。

アルメニア語のフォントが醸し出す不可思議な雰囲気、ジャケのブラックメタルっぽくない図形的アートワークに惹かれ、アヴァンギャルドなものを期待して購入。おそらくポップな方向に行ってからのWHEN meetsブラックメタルみたいな感じだろうな…とジャケから予想していたんですが、まさかのペイガンブラック、それもかなりまともな作りの作風で驚きました。

作風としては、初期NOKTURNAL MORTUMを派手さを2ランクダウン、哀愁を1ランクアップさせたかのような民族要素の濃いメロディを、トレモロリフや時々泣きのギターソロに乗せ、ミッドテンポ中心でお届けする叙情的ペイガンブラック…と行った感じでしょうか。RAWながら耳に痛くない、適度にアングラ臭を醸し出すプロダクションもあり、落ち着いて聴ける音。

どうもこのバンドはNS的な思想を持って活動しているようですが、排斥的な雰囲気はそこまで強くなく、時々使われる神秘的なキーボードが醸し出すアトモスフェリックなムードもあり、聴いてて浸れるような作品だと思います。怒気と狂気を感じさせるような、ガラガラした声質でがなるヴォーカルなんかは、バンドの持つ思想の強さを感じさせるところでしょうか。

逆にNS系の過激さを求める人には物足りなさが残るところかもしれませんが、ごく良質なペイガンブラックだと思います。まあジャケから期待した音とは全く違ったんですが、メロディセンスが良く個人的には楽しめましたね。


RAHVIRA (ՌԱՀՎԻՐԱ) ★★ (2013-09-13 22:43:43)

アルメニア産ペイガンブラック。
流石にアルメニア語のフォントは見ても全く分かりません…(笑)


APOLOKIA - Kathaarian Vortex ★★ (2013-09-12 23:25:21)

2013年発表の1st。
しかしMy Kingdom Musicもマニアックなバンドと契約しましたね…。

よくプリミティブブラックの、高音域を殊更に強調したノイジーな音作りを「シャーシャー」という擬音で表す事がありますが、その極北な音を出している作品。プリミティブ系でもトップクラスに耳に痛い音だったULVER「Nattens Madrigal」アルバムの音質を更に尖らせたような、錐で鼓膜を突き刺すような超極悪プリミティブブラック。20年近くやっててこの音というのだから恐れ入ります(笑)。

ギターの、音量を下げても耳に優しくならない鋭くノイジーな音に隠れて、呪詛系のヴォーカルやベースとドラムが混じった低音が漏れ聴こえてくる様な、この手でも極端な作風。しかも叙情的なメロディで聴かせてくれたULVERと異なり、こちらはメロディもヒリ付いた感じで徹底してます。しかし何気にリフがかっこよかったり、ドラムの軽快さが心地良かったりなど、カルトなだけでない「ツボを押さえた音」ではあると思います。

…とは言っても、中級者以上でも跨いで通るような人を選びまくる作風である事は間違いないですけど(笑)。上級者向けとか硬派とかを通り越して、むしろフェチ・マニア向けな一品だと思います。ノイズを邪悪なバンドサウンドに乗せて浴びるように聴きたい方にお勧め。


APOLOKIA ★★ (2013-09-12 23:24:36)

イタリア産極悪プリミティブブラック。
90年代半ばより活動、先日My Kingdom Musicより1stフルを発表。


HÖSTKÄNSLOR - Fear Reality (2013-09-10 21:43:50)

2010年発表の1st。

ノイジーなギターリフや儚げなアルペジオ、その残響音が抑圧された心情を代弁するかのように鳴り響き、鬱々と進行していくディプレッシブなブラックメタル。メタルとしてのカタルシスには敢えて背を向け、情景的である事を追求したかのような音像主義の音作り。CDをかけるだけで、部屋全体に「澱み」のようなものが広がった気になるような音を出してます。

そしてヴォーカルも水に怯える狂犬病の犬の如く、現実を恐怖し引きこもる男の心情を表すかのように、情けなく裏返った声で絶叫。最早かっこよさとか邪悪さとかは関係なくて、ひたすらにやるせない時間が流れます。個人的にはありがちなブラックメタル色の強いノイジーな曲よりも、3曲目や6曲目のようなポストロック志向が強い曲の方が、儚げなムード満点かつメロディも結構印象的で好きだったりしますけど。

鬱系・シューゲイザー系でも割とマニアックな方かな、と思います。この手を普段から聴いている方以外には気軽に勧めづらい一品。