CAMPO DE MAYOの中心人物による独りブラックとの事ですが、カルト性はCDMの頃より更にアップしている気が…。まずブラックメタルパートが始まった時、余りの轟音に耳が潰れるかと思いましたもん(笑)。音量を下げて普通に聴ける様に調節すると、そこにはULVER3rdを思わせる極悪金属質ノイズ含有型プリミティブブラックの姿が。音質こそ人を選びますが、悪魔の霊柩車に乗せられ疾走するような、青褪めたメロディ使いがなかなか悪くないです。
特にリフを前面に押し出し、ドラムをやや控え気味にしたプロダクションや、トレモロの奇妙に震えるような音、聴いているだけで不幸になりそうなフレーズなど、「音使い」によって邪悪さを感じさせることにかなり拘っているような作風がかなり素晴らしい。ただ、ラストの「Oeuvre de Rouge」は最早音楽の形を留められなくなる寸前のような、破綻しかかったぶっ壊れたパートも含んでるので、人によってはトラウマものかも。私も最初聴いてて正直恐怖を感じましたもん…。
2000年発表の1st。 自主制作でこの作品を発表した後、活動状態が不明のままになっていたようですが、何故か2012年になってHammer of Damnationから再発されたようです。
路線としては、多くのサイトでブラックだけでなくドゥームのタグが付いていることからも分かるとおり、基本ミディアムテンポ中心で、哀愁を込めつつも神秘性のあるメロディを聴かせつつ、ドゥーミーかつドリーミーに進行する、オカルト的なムード漂うブラックメタル。音質こそ(チープとはいえ)クリアですが、個人的にはBEHERITの「Drawing down the Moon」アルバムを連想する作品なんですよね。
PESTE NOIREほどあからさまではないものの、やはり所々で不条理な展開はあって、妙なSEを盛り込んだ「Sante nom de Freux!」でそれは顕著。「カア、カア(カラスの鳴き声)……ポン!…ぽこぽこぽこぽこ……」とか、ラストの雄叫びと悲鳴とか、何をどう突っ込めば…。しかも楽曲自体は恐ろしくかっこいいですからね…これは歌詞の内容が知りたいです(笑)。
前々作の「Now, Diabolical」以降、ブラックメタルの滲み出る邪悪さをロックのダイナミズムを通じて実体化させたようなブラックを演っている彼らですが、ロックのキャッチネスという点では「Now, Diabolical」で一度ピークを迎え、前作の「The Age of Nero」では鬱々とした雰囲気や冷徹な感触など、よりムードの濃さが強まった印象だったんですが、今作もその方向で進化している感じですね。
ブラックメタルの威風とネガティビティを感じさせつつも、分かりやすいメロディをフィーチャーしたリフに、ロック由来のダイナミックさ、力強さを感じさせるドラムが合わさると、まるでどす黒い空をバックに聳える万魔殿を目の前にしたような迫力。よくある箔を押したようなヘヴィさのオーバープロダクションではなく、楽器の音色をしっかり重視した音作りですが、「The Infinity of Time and Space」辺りの楽曲が持つ纏わり付くような…というか、有機的な暗黒性はこの音作りでこそ出しえるもの、という感じがします。
また、今回は自らの代表曲と言っても差し支えないくらいの自信作らしい「The Infinity of Time and Space」を始め、土着的なメロディを前面に出した「Natt」、彼等にしては渋いメロディ使いの「Our World, It Rumbles Tonight」などを始め、今までにも増して楽曲の個性が強い感じ。ただ、ゲストヴォーカルのクリーンを前面に出した「Phoenix」はちょっと…声質が合ってる分、WATAINの「They Rode on」やBEHEMOTHの「Inner Sanctum」よりは大分マシですけど…これだけは正直好みじゃないかも。
…なんですけど、個人的にはちょっとEMPERORの1stにも共通する、邪悪な寒々しさを感じるんですよね。キーボードの神秘性のみならず、要所で登場するサタニックなトレモロ、適度に篭もったバンドの音、ブラストだけに頼らず、その煙る音の中で心地良く炸裂するスラッシーなリズム、そして「グアアアア!」系の生々しい絶叫と、かの名盤を思わせる要素がそこかしこに鏤められている感じ。6曲目「Wrath and Revenge」のトレモロのメロディなんてモロだと思う。
このバンドも、WOLVES IN THE THRONEROOMやPANOPITICONと並んで、最近話題のカスカディアン・ブラック(カナダやアメリカの特定地域の自然主義アトモスフェリックブラックやその一派)として注目を浴びているようで、某ファンジンでもかなり大きく取り上られていましたが…前述したバンドよりも、より音響をフレーズより重視したような、メロブラから離れアンビエンスに重きを置いた作風で、更にコアな路線と言えるかもしれません。
ただ、前述したように楽曲の魅力自体は今までのWATAIN同様、凡百のバンドを寄せ付けないものがありますし、カオティックな「Outlaw」のような新機軸なかっこよさを打ち出した楽曲もありますし、良いアルバムである事は間違いないです。特に「Rabid Death’s Curse」「Casus Luciferi」よりも「Sworn to the Dark」「Lawless Darkness」の路線が好みの方はとにかく買うべき。
6曲目の、妖艶な女性ヴォーカルの歌うスキャットのメロディなんかもキャッチーすぎてなんかムカついてくるレベルですし(笑)、英訳すると「We are Celts」のタイトルを持つ8曲目は民族メロディが余りにも濃すぎて、お花畑をスキップしたくなりそう。これら以外のクサメロ特化型でない楽曲も、やっぱりどこかメロディが印象に残るんですよね。流石クサメタルの国、イタリアのバンドだけあります。
…と言っても、整いながらもブラック特有の刺々しさを感じるプロダクション、タメの効いたヴォーカルの凶悪さなどもあり、全く「ぬるいブラック」にはなっていないのでご安心を。メロディのセンスも時折黎明期の北欧産ブラックを思わせるような、土着性を感じる部分もあり十二分にダークで呪術的。特にタイトル曲で聴けるリフなんて、まるで「Storm of the Light’s Bane」期のDISSECTIONを思わせる邪悪な寒々しさがあって、メロディック・ブラックとして非常にかっこいい。
しっかりとしたヘヴィさを醸し出す、引き摺るような音色のギターリフが音の壁を作り出しつつ、そこにキーボードやリードギター等が悲哀に満ちたメロディを丁寧に紡ぎ上げる作風で、どちらかというと純正のブラックよりはSWALLOW THE SUN辺りのデス要素強いゴシック・ドゥームに近い音でしょうか。そこにアトモスフェリック/シンフォニック/メロディックの各種ブラックメタルのテイストを加味したような感じですね。
基本的には暴虐性と前衛性の強い音ではあるんですが、その中で時折見せるブラックメタルとしてのストレートなフレーズがやたらかっこよかったりするんですよね。例えば「This Too Shall Pass」で聴けるトレモロリフなんかは、メロブラ期のSATYRICONを思わせるような邪悪メロウなメロディが込められていて、メロディック派も軽く悶絶させられるレベルだと思う。
二胡がまるでゲーム音楽の如きキャッチネスに満ちたメロディを振りまき、ギターソロも叙情的な「Ode to Expedition」の名曲振りを考えると、もっと二胡はメインでフィーチャーして欲しかったと思わなくもないですが…そういったあからさまにオリエンタルな要素を取り入れていないパートにおいても、どこか大陸的な大河に揺蕩うような優雅さがあるのが良いですね。「Sanguinary Salvation」のギターソロとピアノの絡みなんかはその好例でしょう。
音的には、粗いリフのディストーションが抽象的な雰囲気を演出する音像の中、ブラックらしいトレモロを中心としたメロウなメロディを響かせつつ疾走するスタイルで、WOLVES IN THE THRONEROOMやASH BORERなどのカスカディアン勢を思わせるようなブラックメタル。情景描写に特化する余り変に気取った音にならず、ブラックらしいサベージな暴虐性もあってバランスのいい仕上がりだと思う。意外にオールドスクールな展開を垣間見せるパートも。
路線は簡単に言うなら、サイバー/インダストリアル要素を含む、知的なアヴァンギャルド・ブラックで、オーケストラルなパートやノイズ/アンビエント、ジャズなどの要素も一部垣間見せる、練り込まれた音…という所ですが、出している雰囲気というか風格が半端ないです。まるで「Antithesis」以降のSECRETS OF THE MOONの威風ある邪悪さと、「Generator」期のABORYMの不穏で頽廃的なムードを足し、後期EMPERORに通じる知性を加えた感じ…というと近いでしょうか。
という訳で、一刻も早くジャンル内で有力なレーベルと契約して、ブラック好きの間にその名を轟かせて欲しいと切に思ってしまう、そんな素晴らしい作品でした。SECRETS OF THE MOONやPORTA NIGRA辺りの知的で頽廃的なブラックが好きであればまず買い。そうでなくても、まずは試してみてほしいところですね。ほんと良いアルバムなので。
タイトルからは優雅で穏やかな曲を想像していたら、まさかのシンフォメロスピでびっくりしました(笑)。しかもヴォーカルを取るのはFripSideに所属し、歌唱力にも定評のある南條さん。アルバムでメタラー殺しの要素があるとしたらここでしょう。ハープシコードやストリングスをふんだんに使いつつ、何気にリフの音量も遠慮してないオケはストレートにかっこいい。何気にバスドラのフレーズが心地良かったり、やはり音はしっかり作りこまれている印象。…っていうか、after school NAVIGATORSといい、このプロジェクトは攻めてますよね…。
また、オーケストラやヴォーカルワークによる壮大さだけでなく、バンドサウンドの部分もある程度しっかりしているのが良いですね。何気にギターソロなんかもあったりしますし、プロダクションはしっかり重さもあり、かつクリア。CandlelightとかSeason of Mist辺りのメジャー所から出ていてもおかしくないクオリティだと思う。敢えて言えば、意外にドラムの音色がイマイチに感じる箇所があったくらいでしょうか。
JUNO BLOODLUSTのドラマーが在籍するシンフォニック・ブラックという予備知識しかなかったんですが、聴いてみて驚きました。何なんでしょう、この「止まったら死ぬ」的な爆走具合は…。まるでKULT OV AZAZEL辺りがシンフォ化したような凄まじさで、むしろブルータルブラックのカテゴリに入れてもいいと思うような暴虐さ。ヴォーカルがデス的な低音咆哮中心なのも、更に暴力的なムードに拍車を掛けてますね。
シンフォニック・ブラックとしてはそこまでキーボードに依存しない音作り、重さよりは爽快さを感じるプロダクション等も、ドラムの心地良い飛ばしっぷりと上手く噛み合ってる感じですね。例えばDIMMU BORGIRやCRADLE OF FILTHほど大胆な場面変化のある作風という訳ではないですが、要所で印象的なフレーズを挟み、神秘性を演出するキーボード、禍々しさを演出するリフ捌きなどもあり、楽曲自体もかなり良質だと思います。
個人的には、ド派手でクラシカルなシンフォニックブラックを好む方よりも、爽快に飛ばすブルータルブラックが好みの方に推薦したい作品。特にこの心地良い爆走感、KULT OV AZAZELとかなり近いものがあると思うんですよね。
魔方陣のようなジャケットに惹かれて購入してしまったんですが、予想(期待)を裏切らない神秘主義的な真性ブラックという感じで、これは良いですね。多くのレビュアーがDEATHSPELL OMEGAやBLUT AUS NORDとの共通点を挙げる通り、アメリカ産ながらフレンチブラックの毒々しく美しい宗教的なトレモロを取り入れた路線で、前述のバンドの作品と比較するならDSOの「Si Monumentum~」アルバムに近い音でしょうか。