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DENIAL OF GOD ★★ (2013-04-10 01:14:17)

デンマーク産ブラックメタル。
1stフルアルバムの発表は2006年と割と最近ですが、90年代初頭からデモやEPなどをリリースしている、何気に古豪と言うべきキャリアのあるバンドだったりします。


INFERIUS TORMENT - Ceremony of Godslaying ★★ (2013-04-08 21:08:20)

2012年発表の2nd。
これはかなり良質なブルータルブラック。

元BELPHEGORのライブメンバーという経歴を持つTorturer氏が辣腕を振るう、ブラストを中心に緩急付けて聴かせる暴虐なリズム展開に、邪悪で宗教的なだけではない、どこかロマンティックさやメロウさも感じさせるメロディを練り込んだリフを乗せたブラックで、個人的にはLegion在籍時のMARDUKを思いおこす音。特にメロウなメロディと暴虐なリズムの対比は、MARDUKの「Heaven Shall Burn」「Nightwing」アルバムを思わせますね。

メロディの良質さもかなり耳を惹きますが、ヴォーカルの獰猛ながらタメの効いたがなりは(現MARDUKの)Mortuus氏を思わせる邪悪さがあり、これもなかなか印象に残りますね。所々で宗教的SEやクワイアなどを使い、サタニックな雰囲気を演出したりする部分もありますが、基本的には要点をしっかり押さえた分かりやすいファストブラックで、この手が好きならすぐに入れる音。

ただ、好みの問題ですが私的にはドラムの金物が少し耳障りな時があるのは気になるかも…この手は暴虐性を快いと感じられるかどうかがキモになってくるので。その辺りを考慮しても、十二分にクオリティは高い音を出してるのは間違いないです。ロシア産のバンドですが、スウェディッシュブラックのメロウさやファストさが好みの方にお勧め。


INFERIUS TORMENT ★★ (2013-04-08 21:06:45)

ロシア産ブラックメタルバンド。
2011年に元BELPHEGORのライブメンバーで、BETHLEHEMにも在籍するTorturer氏が加入し、ロシア産ながら欧州バンドとも人脈的な繋がりがあるバンド。


KULT OV AZAZEL - The World, the Flesh & the Devil ★★★ (2013-04-06 23:57:45)

2005年発表の4th。

これはファスト好きにはたまらない作品ですね。
タイプとしては、スウェディッシュブラックをもう少しドライにした感じの、叙情性と荒涼感のあるトレモロリフを伴いつつ、ファストにカチ込むブルータルブラックですが…この手が好きでも思わず振り落とされそうになるブラストといい、絨毯爆撃そのものツーバス連打といい、ファスト系の中でも体感的なスピード感はかなり速い印象。

例えば、叙情性ならDARK FUNERALだったり、宗教性ならMARDUKやFUNERAL MISTだったりの方に分があると思うんですが、単純に速さ故の聴き心地の良さであれば、その手のジャンルの代表格を凌いでしまうかもしれません。音質はクリアながらモダン過ぎない音作りで、しばしば軽さが指摘されたりしますが…個人的にはヘヴィ過ぎてスピード感を殺ぐより全然良いと思う。曲調こそブラックらしい邪悪さに満ちているのに、なんか軽快な印象なんですよね。それが(ファスト好き限定で)凄く耳に心地良い。

これはもっと評価されて然るべきアルバムではないでしょうか。ブラストやツーバス連打といったエクストリームなリズムに心地良さを感じる、邪悪で荒涼としたトレモロが好き…この二つの属性を備えている方なら、まず気に入るのではないかと。


THY DARKENED SHADE - ETERNUS MOS, NEX RITUS ★★★ (2013-04-04 06:09:10)

2012年発表の1st。

このバンドはギリシャ産のブラックメタルバンドで、メンバーのSemijaza氏はACRIMONIOUSを始め、KAWIRやRAVENCULTなどギリシャ産でも割と知名度の高いバンドに在籍している/していた…というプロフィールを持ってますが…ザリザリした質感を持つ、土着性や呪術性を練り込んだリフが、スラッシーなノリの良さも見せるリズムと連動する作風は、TAAKE辺りを代表とするノルウェー産ブラック、それもTrue Norwegian Black Metalを標榜するグループを思わせますね。

ACRIMONIOUSなんか正にそうですが、ギリシャのバンドってオカルティックな雰囲気を持ったバンドが多い印象なんですよね。このバンドもノルウェー産のバンドよりどこか陰湿な空気感を持っている気がします。それがノルウェー風の土着性とスラッシーな攻撃性の入り混じったリフと噛み合い、更なる邪悪さを生み出せている感じ。疾走だけに頼らない、ある意味グルーブ感のあるリズム構成とも相俟って、妙に温度感のある闇を感じられる作品。寝る時に聴いてて、半覚醒の無防備な状態で聴いたらかなり怖くなってしまいました…。

楽曲構成、演奏、プロダクションなど1stにしてはかなりハイレベルな作品で、流石名門World Terror Committeeからのリリースだと感じさせます。特に妙なリアルさのある邪悪なムード作りは非常に巧み。ノルウェー産ブラックが好きでも、ギリシャ産が好きでも自信を持ってお勧め。


NETTLECARRIER - NETTLECARRIER ★★★ (2013-04-04 06:05:15)

2012年発表の1st。

なんかもう人脈からしてノルウェー産エリート・ブラックって感じですが…正にそういう音を出してますね。ブラックメタルの基本の様式や、ブラックとしての質の高さは死守しつつ、様式をただ踏襲するだけでないクリエイティビティをしっかり備えている音。このレーベル(Indie Recording)ってこういうバンド多い気がします。

まず耳に付くのが、音作りの独特さですね。モダンなバンドのような硬質な重さではない、どす黒い靄に包まれるかのような、アナログ感のある重さを感じられるプロダクションが大きな特徴。この音作りが、丁度アトモスフェリック系のバンドにおけるキーボードのような役割を果たし、トレモロリフのメロディを強調すると同時に、雰囲気に深みを与えているような感じがします。

そしてその黒い靄の上に浮き上がって聴こえるようなトレモロリフも、当然の如く絶品。時にメロウだったり、時に呪術的だったりしますが、常にどこか優美さを湛えているような雰囲気なんですよね…。アルバムを再生してすぐに、高貴さすら感じさせるメロディを練り込んだリフが聴け、一気に引き込まれてしまう。蛇が獲物を狙うようなヴォーカルも、余り暴虐には感じないものの、この雰囲気にはかなり合っているんじゃないかと。

音質的に工夫が見られるものの、やっているのはあくまでノルウェジアン・ブラックというのが良いですね。ノルウェー産ブラックに特有の、ほんのり土着性の感じられる邪悪さが好きな方にお勧め。


NETTLECARRIER ★★ (2013-04-04 06:00:59)

ノルウェー産ブラックメタルバンド。
現在のドラムはENSLAVEDに在籍していた事でも知られるDirge Rip氏。
ヴォーカル/ベースのMannevond氏は元URGEHALで、現在はKOLDBRANN等にも在籍。


MANII - KOLLAPS ★★★ (2013-04-03 19:50:29)

2013年発表の1st。

MANESのメンバーによる新バンドの初のアルバムという事ですが、こう来たか…って感じですね…。後期のエレクトロニカの路線とは似ても似つかない、スローなテンポと不吉なメロディで聴き手の精神をじわじわと追い詰めるような、葬式ドゥームにもかなり近いタイプのディプレッシブ・ブラック。NORTTやLURKER OF CHALICE辺りと共通する、絶望的なムードを持った作風。初期の作風からシンフォ要素を無くし、絶望方向に純化した音、とも言えるのかも。

NORTTが昏い洞穴を思わせる、奥行きのある暗さを感じさせる音だとするならば、こちらは底なしの沼へ少しずつ引き込まれていくような、もう少し粘着質な感触のする音だと思う。NORTT辺りに比べるとフレーズ重視的な側面も強く、ノルウェー産エリートブラックの矜持を見せるような、印象深いトレモロが使用される場面も多いのも特徴ですね。個人的にメロディは投獄前のBURZUMを陰湿さに特化させたようなイメージで、モロに好みだったり。

という訳で作風はエレクトロニカに接近した後期MANES作品とは全くかけ離れた音になりましたが、すぐそこまで破滅が迫っているような、それでいて自分ではどうにも出来ないような絶望感は「How the World Came to an End」アルバムと共通するものがあるのかも。ノルウェー産ブラック信奉者でなくとも、XASTHURの活動停止に涙を呑んだような絶望音楽ファンならばツボに嵌まる音でしょう。


MANII ★★ (2013-04-03 19:46:06)

元MANESメンバーによるブラックメタルバンド。
実質的にMANESの後継バンド(というか変名バンド)らしいですね。


TRIUMFALL - Antithesis of All Flesh ★★★ (2013-03-29 22:31:34)

2009年発表の1st。

私はヴォーカリストがGORGOROTHに加入した事でこのバンドの存在を知ったような、どニワカも良い所なんですが…メロブラ好きなのにこんな素晴らしいバンドを今まで知らなかったとは、正に汗顔の至り、って奴ですね…。正直今まで聴いてきたメロディックブラックの中でも、相当良いアルバムだと思いますよ、これ…。

タイプとしては、薄暗いメロウさを湛えたトレモロを武器に、メロディックにドラマティックに進行するブラックで、DISSECTIONやNAGLFARを渋く、というか雰囲気重視にした感じとも言えますが…まずメロディが素晴らしい。メロウながらブラックとしての甘美な邪悪さも溢れた、スケールの大きさを感じるメロディは、聴いていると夜空を覆う数千体の悪魔達を使役するコンダクターにでもなった気分になって、思わずタクトを振るような動作をしたくなってしまいます(笑)。

また、このバンドはキーボードも要所で取り入れるタイプなんですが…キーの使い方の上手さは、マジでメロブラ界でもトップクラスなんじゃないでしょうか。単にそれ自体がメロディアスなだけでなく、トレモロリフを主軸としたバンドサウンドをより立体的に、重層的に聴かせる事に成功しているように思うんですよね。このバンド特有の、甘美な邪悪さに酔い痴れるようなメロディのセンスとの相性も恐ろしいまでに最高。

アトモスフェリックなキーによって引き立てられる、宗教的なムードはどこかカルトな感触も覚えますが…決して自己満足にはならない間口の広さ、クオリティの高さも備えた音だと思う。同郷のBANEやMAY RESULTもメロブラとしてかなり良質な音源をリリースしているし、セルビアのブラックシーンは侮れないですね…。ぶっちゃけ、今のGORGOROTHよりもずっと好みの音だったりします。


TRIUMFALL ★★ (2013-03-29 22:14:40)

セルビアのブラックメタルバンド。
ヴォーカリストのAtterigner氏がGORGOROTHに加入した事でも有名ですね。


ASARU - From the Chasm of Oblivion ★★★ (2013-03-27 21:46:08)

2012年発表の2nd。
何気のこのアルバム、個人的には名盤かもしれません…。

タイプとしては、トレモロリフを多用し、邪悪メロウなメロディを武器に緩急付けてドラマティックに聴かせるメロディックブラック。耳を傷めるようなノイジーさではなく、かといってモダンに洗練されすぎている訳でもない、適度にアナログ感や湿り気を残した音作りが絶妙。フレーズをしっかり聴かせつつ、音が塊になって聞こえるような迫力もある音で、このプロダクションがトレモロに澱むような深みを与えているように思えます。

このバンド、出身国はドイツなんですが、楽曲が纏う空気は老舗の北欧ブラックっぽいんですよね…。例えば1曲目の1分くらいのパートを始め、アルバム内でも散見される土着的な叙情性と邪悪さをメロディを塗したスラッシーなパートは、TAAKEやCARPATHIAN FORESTなどのスラッシュを通過した「True Norwegian Black Metal」のバンドと通じるものがあるし、テンポを落としたメロウなパートの、邪悪な中に甘美さ・優美さがある雰囲気は近年のWATAINに通じるものがあると思う。

それらのバンドと比べるともう少しオーソドックスなスタイルのメロブラで、それらバンドにはない陰湿な湿り気を含んだメロウさも感じられる辺り、大御所のスタイルを踏襲したに留まらないクリエイティブさがあるように思います。個人的には、楽曲の良さはそれら有名バンドに肉薄するものがあるように感じます。なにより、音作りやメロディのセンスがツボに嵌まるのか、聴いてて本当に心地良い音なんですよね…。

とは言っても、TAAKEやWATAINのような雑誌の表紙を飾ったり来日したりするバンドのようなメジャー感があるかといえば微妙で、正直まだマイナー臭が抜けきらないといえば抜けきらない音なんですが…私としてはそこも含めて好きな音だったりします。ちょっと渋めのメロブラ好きは是非。


ASARU ★★ (2013-03-27 21:40:17)

漁る?あ猿?
ドイツ産ブラックメタルバンド。
ex-AGATHODAIMONのFrank Nordmann氏が在籍。
活動停止時期があったものの、95年より存在するバンドらしいです。


OBSCURE ANACHRONISM - Metanoia ★★ (2013-03-24 12:41:18)

2011年発表の2nd。
これはなかなかの良盤ではないでしょうか。

タイプとしてはトレモロリフに練り込んだ叙情性の強いメロディを武器に聴かせる、メロディックなブラックメタルという感じですが、フレーズの反復による陶酔感の演出と、緩急付けたドラマティックな構成の折衷を見事にこなしている感じで、バンドの持つ哲学を伝えるような濃密なムードと、聴き手を引き込むドラマ性を兼ね備えた作風に仕上がってるように思います。

疾走パートの苛烈さや地声交じりの、感情の入ったヴォーカルが醸し出す狂気的な部分は勿論ですが、個人的にはテンポを落として聴かせる箇所にこそより魅力を感じたり。深遠な空気は保ちつつも、トレモロのメロディに分かりやすい物悲しさや鬱感情が含まれているので、入っていきやすいんですよね。スローパートだけで言えば鬱ブラック的とも言えそう。

DISSECTIONの初期作がメロディアスなブラックメタルのスタイルを確立したとして、それをマッシブなどす黒さを強めるとWATAINに、ミニマルで儀式的な要素を強めるとこのバンドの音楽性になりそうな気がします。こだわりは感じさせつつ、小難しさはそれ程感じない、カルトなバンドの中では割と取っ付きやすい音ではないかと。


UTARM - Mutilation Epoch ★★ (2013-03-23 21:28:34)

2007年発表の1st。

私はこれ、なんの予備知識もなく店頭で見かけたときは絶対プリミティブブラックだと思い、セールで安かった事もあってレジに持っていったんですが…意外なことにノイズ要素のかなり強いブラックで、ブラック界隈よりもむしろアンビエント方面での評価の方が高いくらいのバンドらしいですね。いや、あの横ジャケのフォントはどう見てもプリミティブ系のそれでしょう…。

という訳で、ある意味当てが外れた形ではあったんですが、ノイズブラックとしては割と好みな音なんですよね。一部破壊的な部分もあり(正直4曲目とかちょっと辛い)はしますが、基本的には耳を聾するような音ではなく、アンビエント要素を上手く絡めてじわじわと精神を蝕んでいくような、陰湿なムードの非常に濃い作風。時折入るピアノが美しく、どこか破滅を感じさせるような使われ方でかなりセンス良いと思う。

確かにノイズ系ブラックに全く耐性がないと辛い音ではあるんですが、この湿り気のある雰囲気の演出は確実に鬱ブラックやプリミティブブラックに通じるものがあると思う。調べてみるとUtarm氏はDRAGGED INTO SUNLIGHTやDODSENGELなどのブラックメタルバンドの作品にアートワークで参加した経験もあるらしく、感性的に共通するもののある作風もなんとなく納得。


UTARM ★★ (2013-03-23 21:26:54)

ノルウェー産アヴァンギャルドブラック。
ノイズ要素のかなり強い音を出してるバンド。


URNA - Sepulcrum ★★★ (2013-03-23 21:02:36)

2006年発表の2nd。

割と有名なレーベルから出てるのと、セールで安かったのもあって実態を良く知らないまま購入してしまいましたが、これがかなりの絶望音楽で個人的には当たり盤でした。タイプとしては、NORTTやXASTHURなど、葬式ドゥームに通じる破滅的な暗さを感じさせる、スローな鬱ブラックに、LURKER OF CHALICE辺りの腐食したアンビエント要素をプラスした感じでしょうか。

リスナーに閉塞感・圧迫感を与えるためだけに存在するようなディストーション、血の河がゆるゆると流れるかのようなトレモロなど、ギターのフレーズは最早バンドサウンドとしての特性をほぼ失い、情景の一部と化しているような感じで、それが偏執的な音使いのサンプリングやキーボードと混じりあい、より深い絶望感を醸し出している様な音。地の底から響くようなエフェクトの掛かったヴォーカルも、亡者の呻き声のようで雰囲気にぴったり。

ただし、NORTTやXASTHUR、或いは他のフューネラルドゥーム系のバンドはメロディそのものが破滅的というケースが多いですが、この作品はバンド自体によるメロディ成分は薄めで、その代わり爛れたアトモスフェアが濃くなっている作風なので、聴き手に好みによってはかなりマニアックに感じるかもしれません。ともあれ絶望的な気分に浸りたいという欲求を満たしてくれる事は間違いないかと。

ちなみにラストはBEHERITのカヴァーですが、原曲にあったある意味でのキャッチーさが綺麗さっぱり消えうせている代わりに、やたら深度のある暗闇を感じさせる音になってるので、暗黒音楽好きは是非聴いて欲しい所。


URNA ★★ (2013-03-23 20:58:16)

イタリア産フューネラルドゥーム/ディプレッシブブラック。
ABSENTIA LUNAEやLOCUS MORTIS等でも活躍するMZ氏が在籍。


DEATHMOOR - Opus Morte Ⅲ ★★ (2013-03-21 21:12:59)

2012年発表の3rd。

メンバーが関与するLASHBLOODほどあからさまに表に出ている訳ではないものの、こちらもアヴァンギャルドというか、不条理なムードが漂うブラックメタルを演ってますね。邪教の祈祷師の祈りのような、不気味なクリーンヴォーカルを取り入れた、ややRAWなブラックで、特にスロー~ミドルのパートではねっとりとしたベースも相俟って、バンド名の通り死の沼に引き込まれていきそうな雰囲気。

ミドルパートのムードの濃さとは裏腹に、疾走パートの極悪ぶりにも目を瞠るものがありますね。ヴォーカルといい演奏といい、殺す気全開で襲い掛かってきてます。ただ金属質なRAWさの目立つ音質は、疾走パートでは荒々しさを際立てていてフィットしているものの、オーガニックな不気味さの強いスローパートではちょっとそぐわないかな…と感じる部分も。スロー~ミドルパート中心な作風だけに、個人的にはもう少し腰の強い粘液質な音だと良かったと思わなくもないかも。

この界隈では有名なレーベルであるDAEMON WORSHIPから出てるだけあって、ブラックメタルの邪悪さや不気味さ、隠匿性といったものはビシビシと伝わってくる作品。このレーベルに目をつけてるくらい熱心なリスナーなら聴いて損はないと思います。


SAILLE - Ritu ★★★ (2013-03-21 20:30:43)

2013年発表の2nd。
これは試聴して即買い余裕でした(笑)。

タイプとしては、緩急を付けつつもギターリフに込められた叙情的トレモロとブラストビートを軸に攻め、キーボードがそれをサポートしドラマティックに聴かせる、リフ重視のシンフォニック・ブラック。ギターソロにもある程度力を入れる辺り、メロブラにも近い聴き心地。近年クオリティの高い作品が立て続けにリリースされ、豊饒極まりないシーンとなっているシンフォブラック界ですが、この作品もそこに確かな爪痕を残せる高品質なアルバムですね。

まず素晴らしいのは、主にトレモロリフに込められたメロディのセンスでしょう。私が即買いを決意したのもこのバンドのトレモロを聴いてですし。単にメロディックでメロウというだけでなく、ゴシックに通じる妖艶さだとか上品さだとかがあって、聴いてると思わずうっとりしてしまう感じ。要所でリフにフックを持たせるフレーズ構成の上手さも光っていて、同系統のバンドの中でも取っ付きやすく聴こえます。

あくまで主役はセンス溢れるリフという感じなんですが、キーボードもかなり良い仕事してますね。アトモスフェリックな妖気であったり、シアトリカルな耽美さであったり、エスニックで異境的な神秘性であったり、そのパートが要求する空気感をしっかり醸し出している感じ。ブラスト+トレモロで攻める王道パートだけでなく、儀式的だったり美しかったりするスローパートもそれ以上に魅力的に仕上げてくる辺り、単純に作曲能力・作曲センスが高いといえるのかも。

初心者からジャンルの熱狂的なファンまで幅広く楽しめるであろう、高品質なシンフォニック・ブラック。変にメタリックに熱くなったりせずあくまで妖艶な空気感を重視している辺りがほんと素晴らしいです。しかしこれだけ良いバンドがいると、このジャンルを聴き始めた人は目移りして逆に大変そうかも。


SAILLE ★★ (2013-03-21 20:07:25)

ベルギー産シンフォニックブラック。
2009年結成と若手ながらかなり上質な作品をリリースしてる期待株。


SONIC REIGN - Monument in Black ★★★ (2013-03-01 23:16:41)

2013年発表の2nd。

前作「Raw Dark Pure」が、普遍的で聴きやすいブラックメタルの様式を踏襲しつつ、SATYRICONやTHORNSに通じる厭世・厭人的な雰囲気も感じさせる良盤だったんですが、今作もその作風は変わりませんね。前作の路線は踏まえつつ、音質面やフレーズ面、展開面などで更なるクオリティアップが図られている感じ。何気に前作から7年近く経ってますが、待った甲斐があったのではないでしょうか。

とりわけ進化していると思ったのはプロダクションですね。モダンなヘヴィさにも、プリミティブなRAWさにも頼らない、聴いていて非常に心地良く感じる音。聴きやすいのになんか陰湿なのが良いんですよね。パートによっては意外とグルーヴィな感触があったりもするんですが、フレーズのダークさと音質の良さのせいもあり、全く嫌味に感じません。また、リフも無慈悲さは変わりませんが、今作はむしろオーガニックな印象も。冷たさや病的さより、純粋に闇を叩き込んでくるような感じ。

個人的には、SATYRICONの「Rebel Extravaganza」と「Volcano」の間の、ミッシングリンクをメジャーな感性を補いつつ埋めるような作風だと思うんですよね。ただし当時のSATYRICONと比べると、実験精神が希薄な分、ストレートなかっこよさが際立っていて、大分聴きやすく仕上がっている印象。SATYRICONのように、ブラックメタルの歴史に一石を投じるような変化はしていませんが、その分スタイルとしての完成度はかなり高くなっているかと。


END - END Ⅲ ★★ (2013-03-01 23:12:42)

2009年発表の3rd。

タイプとしては、死霊の森から聞こえてくるような、呪わしい邪悪さを演出するトレモロ、荒涼感・殺伐感を醸し出す擦り込みリフを軸としつつ、ある程度緩急を付けて聴かせるブラックで、GORGOROTH辺りの真性系と、DARKTHRONE辺りのプリミティブ系の中間といった感じの音。引き裂くような高音絶叫と、威圧するような低~中音域のグロウルを使い分けるヴォーカルも悪くないです。

ブラックとしては良く言えばストイック、悪く言えばありがちなスタイルではありますが、プリミティブ系の響きのあるRAWなギターノイズと、タイトに響くドラムや低音が効いた音質を組み合わせた音作りは割と独特。この音質のせいで、メタリックな刻みリフを使ったパートがやたら邪悪にかっこよく、曲中において良いアクセントになってるんですよね。地獄の溶岩が煮え滾ってるようなイメージ。

何気に良質なバンドの多い印象のギリシャですが、この作品もややマニア向けながら良盤だと思います。


END ★★ (2013-03-01 23:12:10)

ENSHADOWEDのメンバーの絡む、ギリシャ産ブラック。
名前がシンプル過ぎて検索に引っかかりにくそう(笑)。


QUADRIVIUM - Methocha ★★★ (2013-03-01 18:59:13)

2013年発表の2nd。
これは試聴して即購入確定でした。

音は一言で表すなら、「発狂版/エクストリームメタル版ARCTURUS」という感じでしょうか。宇宙的ムードを醸し出すアンビエンス重視のパートと、デスメタルにも通じるアグレッション重視のパートを使い分けて聴き手を翻弄しつつ、そこにスペーシーなSEやキーボード、ICS Vortex(Simen)似のトリッキーかつ朗々と歌い上げるクリーンヴォーカル、ほぼノイズとかした絶叫ヴォーカルが乗る、前衛的な要素の強いシンフォニック・ブラック。

特にこの作品、クリーンヴォーカルの声質がほんと素晴らしいんですよね…。Simen氏の伸びやかで奇術的なスタイルを基調としつつ、Garm(ULVER)氏やLazare(SOLEFALD)に通じる色気を持っている声で、この手のヴォーカルが好きであれば確実にツボに嵌まりそう。デス声の方も、Ihsahnに似たタイプの高音絶叫でこちらもなかなかにかっこいいです。

楽曲も妖艶なヴォーカルとバンドサウンドが大仰に絡むオペラティックなものから、煌びやかさや妖しさは残しつつ、クリーンヴォーカルを使わずにアグレッションを重視した曲、ブラックホールに緩やかに光が吸収されていくような大作、ARCTURUSの2ndそのままのインストなど、金太郎飴にならないバラエティの豊かさがありますね。泣きと大仰さを兼ね備えた曲をラストに持ってくる構成も良い感じ。

ただ、ちょっと惜しいと思うのは、一曲目であり触りを試聴しただけで私に購入を決意させた「Methocha」が、クリーン/デスの使い分けの割合、ヴォーカルラインのキャッチーさ、アグレッションと妖しさの兼ね合いなど、全てに於いて均整の取れた楽曲で、このバランスを実現した曲がもう少しあればなぁ…と思ってしまった事でしょうか。まあリードトラックの役割をしっかり果たしてるとも言えますが。

と言っても、アルバム通して★3つは余裕でつけるクオリティはあるので、シンフォ系の音が好きで、翻弄されるようなトリッキーな世界観を持つ曲が聴きたいという方なら、まず買って損はないでしょう。確実にお値段以上の品物かと。


Ⅵ - DE PRAESTIGIIS DAEMONUM ★★ (2013-03-01 18:51:38)

2008年発表の4曲入りEP。

…まず最初のハレーション気味のノイズから、刃物で耳の中を掻き回されるかのような凶悪な音色のリフに驚きますね…。音自体も殺気立ってますが、生々しい殺意の感じられるヴォーカルもかなり極悪。知らずにDebemur Mortiからの再発盤をジャケ買いしたんですが、メンバーがANTAEUS、AOSOTHという事で大いに納得。予めそれらバンドを聴いてる方ならすぐにでも受け入れられる音かと。

ただ、ANTAEUSやAOSOTH(特にANTAEUS)って、ささくれ立った精神状態をそのまま音楽に具現化したような、人を寄せ付けない攻撃性が強い印象があったんですが、こちらは宗教的ムードも含んでいる音という気がします。RAWなリフの音色とも相俟って、地獄のヴィジョンが見えてきそうなリフのメロディや、一部の不気味なクワイア風キーボードなんか正にそんな感じ。

まあ、そもそも関連メンバーからして絶対にRAWブラックとして半端なものは作らないだろうって感じですが、期待は裏切らない仕上がりかと。ただ、良い作品であはあるけど、衝撃度ではANTAEUSの方が上かな、という気も。


★★ (2013-03-01 18:49:53)

フランス産RAWブラック。
現時点ではメンバーの全員がANTAEUS、AOSOTH関連。


MANETHEREN - Time ★★★ (2013-03-01 18:42:03)

2012年発表の4th。

ショップでも「ハイクオリティな鬱ブラック」と紹介されていましたが、これは予想していた以上に良い作品かもしれません。まず驚くのは、音のクリアさと厚さ。アトモスフェリックにバンドサウンドを包むキーボードを効果的に用い、鬱屈したムードの演出を行うタイプの作風ですが、頭のキーボードからして厚みのある音でびっくり。本編のバンドサウンドも、妙にノイジーになったりせず、叙情的なフレーズをしっかり聴かせるクリアさのある音で、アングラ度は低め。

6曲74分という大作主義、しかも鬱ブラックというジャンルとしては珍しく、ミニマルなフレーズの繰り返しではなく、ドラマティックな楽曲構成で聴かせる音ですが…ブラストビートを用いた疾走パートであっても、メタリックな高揚ではなく、鬱感情が加速していくような感覚を覚えさせる辺り、やはり鬱ブラックとしての感性がしっかり根付いていると言えるでしょう。

基本的にはほんのりと叙情味の感じられるメロディを練りこんだリフで聴かせる、ドラマ性を重視しつつもメランコリックで儚いムードを描き出す作風ですが、歪みの少ないトレモロリフを用いてシューゲイザー系ブラック的な清浄さを演出したり、クワイア風のコーラスで畏怖を感じさせる雰囲気を醸しだしたり、テンプレをなぞるだけではない展開があるのも良いですね。ヴォーカルも、ただ悲痛なだけでなく苦悩や懊悩に苛まれているかのような表現力があって良い感じ。

楽曲やプロダクション等、総じてレベルの高い音という感じで、鬱ブラックというジャンルにハマりたての聴き手にもお勧め出来そうな音。特にSHININGやFORGOTTEN TOMB辺りのドラマ性を重視する作風が好きな方にお勧め。ただ、ミニマルな音に乗せてマイナス感情をひたすらブチ撒けるような生々しいものが好みな方には向かない可能性も。良くも悪くもハイクオリティです。


MANETHEREN ★★ (2013-03-01 18:39:33)

アメリカ産鬱ブラック。
DISK UNIONのガイド本でも作品を取り上げられた実力派。


DEVILISH IMPRESSIONS - Simulacra ★★★ (2013-02-20 00:35:04)

2012年発表の3rd。

まず帯の「BEHEMOTH、DIMMU BORGIR、EMPERORファンにお勧め」というジャンルの大家ばかりが並ぶコメントからして目を引きますが、それがハッタリに思えないくらいクオリティの高いシンフォブラック。特に、シンフォブラックってクサメロを派手にブチ撒けるバンド、アトモスフェリックな妖気の漂うバンドはいても、EMPERORに通じる神話的な神秘性を感じられるバンドってなかなかレアなんですよね。この作品はそれが感じられるのがまず素晴らしいと思う。

音的には、「Puritanical~」期のDIMMU BORGIRを思わせる、ヘヴィネスも備えたモダンな質感のあるシンフォブラックという感じですが、高音Vintersorg似、中音域はIhsahn似のクリーンを大胆に取り入れた、後期EMPERORの「Elegy of Icarus」「The Eruption」辺りのエピックな曲から直接の影響を得たであろう展開の楽曲があったり、キーボードの高貴な邪悪さがやはり中期以降のEMPERORを思わせる部分があったり、聴いていてどこかEMPERORの影もちらつくサウンド。

何気にこのクリーンヴォーカルが、神話の主人公になりきっているような悲哀やナルシシズムが感じられて絶品なんですよね。単に反宗教だけでなく、神話や文学にも食指を伸ばす歌詞の世界観とも合っているのでは。また、デス声によるキャッチーなサビやヘヴィな音圧を伴い畳み掛ける突進パートを含む曲もあり、こうした楽曲ではBEHEMOTHを思わせる場面も。と言っても各バンドの影響が未消化で散漫という訳では決してなく、しっかり自分のものにして聴きやすく仕上げているのが素晴らしい。

帯に書いてあった3バンドありきで話を進めてしまいましたが、これら先人の名前を出さずとも、一回聴けばそのクオリティの高さで聴き手に強い印象を残せる、非常に優れたシンフォニックブラックだと思う。神秘性やドラマ性に優れた、キレのある音源を求めている方は是非。上記3バンド以外にもCRIONICSやSAMMATH NAURなどのポーランド産ブラック好きにもお勧め。変なマイナー臭もなく、取り合えず日本盤クラスだと思います。


SATURNIAN - DIMENSIONS ★★★ (2013-02-18 12:43:39)

2012年発表の1st。

良質なバンドの登場が相次ぐシンフォニック・ブラックメタル界に、ENSLAVEDやKEEP OF KALESSINを始め良質なブラック作品のリリースで知られる、Indie Recordingsより新たな刺客が現れましたね…。これがまた素晴らしい出来で、日々マンネリズムと格闘しながら、後進のバンドからは突き上げを食らうベテランバンドが正直ちょっと気の毒になってしまうほど(笑)。

ブラックメタルの、それも新進気鋭のバンドとしては驚くほどクサメタル界隈で取り沙汰されることの多いアルバムなんですが、それも頷けるようなド派手かつクッサクサな、ハイクオリティなシンフォニックブラック。息が詰まるほどに派手なキーボードを従えつつ、ブラックのアグレッションで疾走する様は正に圧巻。メタリックなヘヴィさを演出しつつ、要所で聴き手をクサトレモロ責めにするリフ捌きも良い仕事してます。リフだけでなく、リードフレーズも泣きとクサさがあって何気に素晴らしかったり。

しかし、このバンドはシンフォ要素の取り入れ方のセンスが素晴らしいんですよね…。よくCRADLE OF FILTHとも比較されている通り、メロディそれ自体にはゴシック的な美意識が感じられるんですが…そのメロディのぶち撒け方にゴシック的な隠微さは余り感じられず、むしろサウンドトラックの派手さやキャッチネスが強いような印象。可憐なソプラノの導入なども良いフックになっており、聴き手を一聴で虜にする力のある、非常に求心力の高い仕上がり。

DIMMU BORGIRの「Sympozium」辺りを聴いて、アルバム全体があんな派手だったらな~と思った方は多いと思うんですが、これはそれに近いものがある…と言ったら褒め過ぎでしょうか。取り合えずシンフォニック・ブラックマニアの方は避けて通れないクオリティですし、ジャンル初心者にも優しい聴きやすい音だと思います。少なくとも良盤以上、個人的には名盤評価でもいいかな、と思います。貫禄の点でベテラン勢には譲りますが、クサさはそれ以上かと。


SATURNIAN ★★ (2013-02-18 12:42:51)

イギリス産シンフォニック・ブラック。
先日Indie Recordingから1stアルバム「Dimensions」を発表。


OREMUS - Popioly ★★★ (2013-02-18 12:39:50)

2011年発表の1st。

BLAZE OF PERDITIONのメンバーによるサイドプロジェクトの1枚目の作品ということですが…クリアながら、ブラックメタルらしい生々しさとコシの強さも備えた良質な音作り、鬼気迫るような威圧感を感じる、威厳のあるヴォーカルのがなり、如何にもブラックメタルといった荒涼感や毒々しさのあるトレモロリフなど、かなりBLAZE OF PERDITIONと共通した特徴を持つサウンド。正直本隊のアルバムに入ってても違和感無い曲ばかりだと思う。

ただ、あくまで「若干」ですが、こちらの方が本隊よりもメタリックな聴きやすさが控えめで、ブラックの儀式めいた邪悪さを押し出している印象はありますね。4曲35分という大作主義の構成、執拗な邪悪フレーズの繰り返しも含む展開、荒涼感を重視したスロー~ミドルパートにも時間を割く作風など、聴き手を世界観に引き込むことが重視されている感じがします。

と言ってもブラックの邪悪さに満ちたトレモロはしっかり聴き手の耳を惹きますし、決してマニアオンリーな作品ではないのがミソですね。BLAZE OF PERDITIONが気に入った方はもちろん、聴いていない方でもブラックの宗教的なムードや邪悪さに惹かれている方なら受け入れられる間口の広さはあるかと。BOP同様良質な真性ブラックです。


OREMUS ★★ (2013-02-18 12:38:42)

ポーランド産ブラックメタル。
BLAZE OF PERDITIONメンバーによる別働隊。
バンド名はラテン語で「我等祈らん」の意で、祈りの前に捧げる言葉だとか。


URIZEN - AUTOCRATOPOLIS ★★ (2013-02-18 12:36:32)

2005年発表の1st。
まだ8-bitサウンドに目覚める前の音源ですね。

と言っても、この時点からかなり独特なサウンドを構成。
流れるように炸裂する流線型トレモロリフ疾走を聴かせつつ、ARCTURUSやBORKNAGARをヤケクソにしたような奇怪ながらキャッチーなコーラスパート、雨垂れを思わせるようなお洒落なピアノ、果てはCRADLE OF FILTHリスペクトっぽいゴシック系キーボードの導入などもあり、聴き手を欺くように展開するアヴァンギャルドな路線。

脱メタルしている部分もかなり多く、3曲目がいきなりメタル要素皆無な、オールクリーンヴォーカルの曲だったりします。お洒落なピアノが良いアクセントになっていて、アヴァンギャルドながら散漫な感じがしないのは良いですね。全体的にARCTURUSから強い影響を受けていそうな音。特に「La Masquerade Infernale」のエキセントリックさや全体の雰囲気、「The Sham Mirrors」のケレン味が受け継がれている気がします。

で、ここまで書くと、非常な良盤に思えるんですが…ブラックの価値観を意図的に逸脱した作風としても、音が妙に軽い気がするし、ほとんど歪まない、喋り声以上、デスボイス未満のヴォーカルは正直苦手。この辺りで画竜点睛を欠いてしまっている印象があるんですよね…独特なのは良いんですけど、個人的にはもう一歩というか、多少不満の残る出来。


LASHBLOOD - PHILOSOPHY OF SELF-FLAGELLATION: BEING AND NOTHING ★★★ (2013-02-11 09:25:24)

2012年発表の1st。

ロシア産でアヴァンブラックという時点で如何わしさ満点ですが、Daemon Worshipからのリリースという事もあって思い切って購入。…これはなかなかの当たり盤ですね。前衛性を押し出しつつも、ブラックの本懐である「邪悪さ」も忘れていない、センスの良い作品だと思います。

アルバム前半は、催眠的ベースラインと陶酔誘発型のミディアムパート、そしてVED BUENS ENDE的な妖しいクリーンを交え、聞き手を腐食した仄暗い森の中へ誘うかのような、グロテスクかつ幻想的なブラックメタルを展開。2曲目のトレモロ疾走なんかはシーンの代表格バンド並にかっこよく、前衛性を感じさせながらブラックメタルとしても優れた出来。ノルウェジアン・ブラックに硫酸をかけて融解させたような、薄気味の悪い世界観。

そして3曲目のやたらノリの良いリズムと、奇妙な浮遊感のあるトレモロが摩訶不思議なムードを醸し出した辺りからは、グッとアヴァンギャルド要素が濃くなりますね。4曲目はブラックメタルにピアノとサックスのお洒落で夢見心地なパートが挿入される、妙な展開の楽曲ですが、ここで寝たら夢魔に精神を貪られて廃人になりそう(笑)。ラスト5曲目はスラッシーなリズムで始まり、ストレートな曲と思いきや…左右のギターリフの絡みは脳内フィーバー状態で作ったとしか思えない奇天烈な感触。正直、たまらないです(笑)。ラストは無音の後にジャジーな演奏で終了。

前衛ブラックの中にはアヴァン過ぎてブラックから遠ざかってしまうバンドも多いですが、この作品はブラックから離れ過ぎず、適度な距離感を保ててると思う。VED BUENS ENDEやLUGUBRUMなどが好きな方にお勧めですが、こちらの方がブラック要素強めで根っからのブラック好きにも受け入れやすい音だと思います。


LASHBLOOD ★★ (2013-02-11 09:23:14)

ロシア産アヴァンギャルド・ブラック。
昨年Daemon Worshipより1枚目のアルバムをリリースしています。


EIS (GEIST) - Wetterkreuz ★★★ (2013-02-11 09:20:20)

2012年発表の3rd。

ショップでの推され具合やレビューサイトのコメント等から察するに、2012年のブラックの中でもかなり評判の良いアルバムの様ですが…これは評価が高いのも納得の、非常に良質なコールド・ブラック。ノルウェーのISKALDや同郷のSCHRATを思わせる、寒々しいトレモロリフで凍てついた空気を演出しつつ、時折アトモスフェリックなキーボードも取り入れ、長尺の曲をドラマティックに聴かせる、メロディックな作風。

但し、いわゆるメロブラと言われるバンドの中では、ちょっと辛口な路線で、特に厚みを伴いつつもノイジーな、ザリザリしたリフの音色は苦手な人には少しキツいかも。しかしこのノイジーさこそが、暴虐パートでの土石流もしくは雪崩的な迫力を、アトモスフェリックなパートでの日常離れした神秘性を掻き立て、カルトな魅力を放っている事もまた事実なんですよね。

と言っても、ブラック初心者が聴いてもしっかり冷気を感じ取れるであろう、演出力や楽曲構成力、メロディセンスの高さは備えており、決してマニア向けな間口の狭さにはなっていないところが良いですね。ブラックをある程度聴きこんで、このジャンルのノイジーな音質に慣れた方であれば楽しめるかと思います。


EIS (GEIST) ★★ (2013-02-11 09:14:47)

ドイツ産ブラックメタルバンド。
かつてはGEIST名義で活動していましたが、現在はEISに改名した模様。


GOD SEED - I Begin ★★★ (2013-02-07 10:48:56)

2012年発表の1st。

GORGOROTHの分裂後、名前を引き継いだInfernus主導の方はオールドスクールで渋めの新作を出したり、昔のアルバムをリメイクしたり懐古的な路線に進んでいるようですが、分裂前の最終作「Ad Majorem~」のヒリヒリする殺気漂うノルウェジアン・ブラック路線を引き継いでいるのはこちらですね。

「Awake」「From the Running of Blood」「The Wound」辺りはイントロから如何にもノルウェー産ブラックな、寒々しいトレモロ疾走が聴け、もうこれだけで凡百のバンドを寄せ付けない格好良さ。Ghaalの相変わらずの狂人絶叫振りとも相俟って、GORGOROTHの「Ad Majorem~」で感じられた狂気が再び蘇るかのよう。個人的には一曲目「Awake」の出だしからテンションMAXになってしまいました(笑)。

基本ストレートなノルウェジアンブラックながら、要所でキーボードを挟んでくるのも特徴ですね。シンフォ系というほど使用頻度が高いわけではないですが、空間系のアトモスフェリックな音色だけでなく、プログレ的な妖しげな音も使っていたりして結構耳に残る。真性度が薄れたように感じる人もいるようですが、私は上手く曲のアクセントになっていて良いと思う。ただ分裂前のGORGOROTHと全く同じ音でない事は意識した方がいいかも。

正直言うと、今のGORGOROTHよりもこちらの方が大分私的には好みの音なんですよね。特にジャンル代表バンドの矜持を見せ付けるような、メロウさと殺気の入り混じったトレモロ疾走が素晴らしく、これだけでもう満点付けたくなります。ちなみに私はデジパック盤を買ってしまいましたが…本当にボートラ微妙過ぎなので、拘りがなければ通常盤の方がいいかも。ケースの方が保存状態を良く保てそうだし。


MEMBARIS - Grenzganger ★★★ (2013-02-07 10:44:57)

2010年発表の3rd。

リリースレーベルは某ファンジンでも取り上げられていたARTicazですが、Battle DagoraothやMortuus Infradaemoni、或いはメンバー的に繋がりのあるWEIRD FATEなど、Cold Dimensions所属バンドと共通するような、ノイジーな音質と寒々しいトレモロリフを伴う疾走が凍てついた雰囲気を演出する、アトモスフェリック・ブラック路線。似た路線のバンドの中でもかなり叙情性や殺気に優れた音に仕上がっているのではないでしょうか。

特に堰を切ったような、狂奔する疾走振りと、ヴォーカルの自棄を起こしたかのような絶叫は殺す気満々。ですが緩急付けたドラマ性に富んだ展開、RAWなギターリフを始め、神秘性を演出する工夫の見られるキーボードやリードギターの音色、寒々しさに泣きのプラスされたメロディ使いなど、楽曲自体はかなり練られている印象。粗い音作りが、イマジネーションを掻き立てるというか、モダンなバンドにはない情景を感じさせてくれるんですよね。

という訳で、アトモスフェリックブラックが好きな方、Cold Dimensions系リリースを追っている方にお勧めの一枚。この手のサブジャンルでも上位に食い込める音を出しているバンドだと思います。


ENTHRAL - Obtenebrate ★★★ (2013-02-05 22:31:20)

2012年発表の4th。

SJODOGGのメンバーも在籍する、ベテランノルウェー産ブラックメタルバンドの、フルアルバムとしては9年ぶりの新作ということで、一部で話題になった1枚。私は1stとこの作品しか聴いていないんですが、1stと比べると大分ストレートに邪悪さを追求している印象。ブラックとしては凝った展開が多めですが、作風自体は非常に純度の高い暗黒ブラックメタルという感じの仕上がり。

トレモロを多用して弾かれるメロディは、北欧らしい寒々しさやメロウさよりも毒々しく陰鬱な雰囲気が強めで、それがクリアながらモダンな重さではない、ブラックの鋭さを感じさせる音質と相俟って、まるで蛇と髑髏で出来たモザイク模様の壁が迫ってくるような不気味なムードが演出されてますね。暗黒趣味の強い妖艶な作風ですが、ブラストパートの爆発力もなかなか。

個人的には、MAYHEMの「Grand Declaration~」アルバムや、SATYRICONの「Rebel Extravaganza」アルバムに近い、陰惨で無慈悲な雰囲気を持っていると思う。ただ、前述の作品が持っているような実験性はこのアルバムには希薄で、100%ブラックメタルで構成されているという感じ。メロディの方向性や展開の凝り方などから、キャッチーとは言えないものの聴き手を引き込む力の強い作品。

…ただ、ひとつマジで許せないのは、このアルバムデジパック仕様なんですけど、何故か外側が糊付けされていて、ブックレットは内側からでないと取り出せなくなってるんですよね。で、ブックレット入れる場所が狭すぎて、デフォルトで折り目ついてるし、しかも取り出す時にデジパックが少し破れたし…。正直点数下げてやろうかと思った。まあ内容がいいので★3つですけど、もう少し工夫出来なかったんでしょうか…。


IBLIS - MENTHELL ★★★ (2013-02-04 22:51:42)

2012年発表の1st。

VIRUSやEPHEL DUATH好きな人にお勧めという紹介で興味を持ち、試聴したら一発で気に入ってしまい購入を決意した一枚。本人は自分たちの音楽性を「ニュークリア・ロックンロール」と称しているようですが、前述のバンドの奇怪さにロックのグルーヴを加えたようなグロテスクなアンサンブルで聴き手の脳を揺さぶりつつ、ここぞという所でブラストを爆裂させる、かなりラジカルな作風。

基本的にはプログレメタルやアヴァンギャルドメタルの要素が強いですが、時折入れるトレモロ+ブラスト等、ブラックメタル的な部分もしっかり残してくれているのが嬉しい所。何気にベースがゴリッとした質感の、重みのある音だったりするんですが、それが非常に隠微で妖しい雰囲気を出してるんですよね。変態が地下室でえもいわれぬ行為を行っているのを覗いているような、背徳感というか気持ち悪さというか。

ヴォーカルは演説調やがなり声、妖しげなクリーンなどを使う、この手にありがちな歌い方と思いきや…時々グロキモく発狂するのが素晴らしい(笑)。心霊系の番組で悪霊に取り憑かれた人がこんな感じの声を出してた気がする。もしくは催眠術で赤ちゃん帰りしたとか、宇宙を飛び交う毒電波に脳をやられたとか、そんな感じ。なのにホイッスル系の絶叫はガチでかっこよかったりするので始末が悪いです。

アヴァンギャルドメタルって、一般的な音楽の裏をかこうとしすぎたり、知性的になりすぎたりでスノビズムに陥ってしまうこともありますが…これは逆に聴いていると頭がどんどん悪くなりそうで素敵(笑)。脳みそ溶けていきそうだもん、これ(笑)。前衛性と知性があるのに、ここまで高尚さを欠いてるのは逆に凄い。アヴァンギャルド系でも、DIABLO SWING ORCHESTRAやUNEXPECT辺りは普遍的なかっこよさがありすぎる、もっと気色悪い音楽が聴きたいという方にお勧めです。


IBLIS ★★ (2013-02-04 22:51:03)

ポーランド産アヴァンギャルド・ブラック。
VIRUSやEPHEL DUATHなど不条理系好きな方にお勧めの音。


SERVED DEAD - Servants Arise ★★★ (2013-02-03 23:48:23)

2010年発表の1st。
元は自主制作盤で、2012年にInverseより再発。
…これはヤバい代物が再発されましたね…
Inverse Recordsにはグッドジョブの一言ではとても感謝しきれません。

シンフォニック・ブラックというジャンル自体、メロディアスな作風のバンドが多いですが、この作品はその中でも特にメロディの際立つ逸品。メロディが分かりやすく、かつトレモロリフによって強調されるので、かなりキャッチーに聴こえる。メロディの方向性自体は、勿論楽しそうだったり明るかったりといった雰囲気ではなく、シンフォブラックらしい悲哀に満ちたものなんですが、余りにもメロディアスなのでここは「クサい」という言葉を賛辞として送っておきたいです。

どちらかというとキーボードよりはギター、特にトレモロリフに力を入れている感じですが、ピアノやストリングスなど上品な音色によって曲に華を添えるキーボードも、なかなか良い仕事してると思う。…ここまでメロメロな作風ながら、「The Hammer」ではかつてのBURZUMに影響を受けたと思しきリフが出てきたり(と言っても、やたらキャッチーでメタリックになってますが…)、ブラックメタルとしての本懐も忘れていないのが素晴らしい。

そしてもう一つ褒めておきたいのがヴォーカル。
どうやら二人いるようですが、その内の片方が喘鳴のようなホイッスル音が混じった高音絶叫で、「Dusk~」期のCOFや昔のALCEST辺りと比較しても劣らないほどの凄絶さ。聴いているこっちの喉が痛い通り越して張り裂けそう(笑)。もう一人の中音域のがなりも、粘着質な響きがあって悪くないと思う。

自主制作盤としては音も悪くない(ヘヴィではないものの、クリアで聴きやすい)ですし、シンフォニック・ブラックが好きならばマストな一枚と言っても過言ではありません。唯一残念なのが、再発盤のジャケが白地に簡単なエンブレムとアルバムタイトルが載ってるだけでかなり地味なこと。正直、知らないバンドでこのジャケを買うのは結構勇気いると思う(笑)。内容は凄くいいので、シンフォブラックファンは惑わされずに是非買ってしまいましょう(笑)。


SERVED DEAD ★★ (2013-02-03 23:47:34)

フィンランド産シンフォニック・ブラック。
数多くの優良なシンフォブラックバンドが台頭する昨今においても、生え抜きのバンドだと思う…というか個人的に凄く好みの作風です、このバンド(笑)。去年出た1stの再発盤、ジャケは地味ですけど中身はかなり素晴らしいです。


DARKMOON WARRIOR - Crown of Snakes ★★★ (2013-02-03 09:35:00)

2009年発表の1st。

どうもこのバンドの経歴を調べてみると、96年からデモを出し続け、2009年になって漸くフルアルバムの発売に漕ぎ付けた…という事で、意外に活動暦はかなり長いバンドみたいですが…そのキャリアを裏付けるかのような、地に足の付いたブラックを演ってますね。やや金属質なノイジーさはあるものの、緩急やメロディの濃淡をしっかり付けた緊張感のある展開といい、厚みを持たせた音作りといい、非常に重厚で威風のある音を出してます。

このブラックメタルの本質を衝きつつもハイクオリティな作風は、同レーベルに所属するASCENSIONやORDER OF ORIASを髣髴とさせるものがありますが…このバンドはブラックメタルの邪悪さだったり悲哀なムードだったりを際立たせるメロディが、時々あざとい程に鮮烈。例えば12分近い大作のラスト曲なんかは、イントロから泣きのギターメロで攻め、トレモロを交えた疾走パートなんかはDARK FUNERALやNAGLFARを愛聴する人ならガッツポーズもの。濃厚な邪悪さとメロディアスな作りを両立させているのが素晴らしい。

良質なブラックを次々にリリースするレーベル、WTCですが、この作品もまた素晴らしいですね。衝動性やインパクトばかりでない、濃密なブラックメタルをがっつり聴きたい方にお勧めの一枚です。


GRA - GRA ★★★ (2013-02-03 09:25:43)

2011年発表の1st。

路線としては、如何にもスカンディナビア産のバンドらしい、寒々しいトレモロ疾走を多用した、かなりメロディアスなブラックメタル。音質はある程度鮮明さを保たれており、決してヘヴィでモダンな音作りという訳ではないものの、それがトレモロの寒々しい感触を際立たせてますね。スタイルとして典型的なだけに、このジャンルが好きな方ならすぐにでも気に入りそうな音。

但し、トレモロに込められたメロディはメロブラとしては破格のダークさで、気が滅入るような陰鬱さが演出されており、テンプレをなぞっただけの音ではないのが好感。スウェディッシュメロブラに、GEHENNAの「WW」アルバムや近年のSATYRICONの鬱メロディを加えて煮詰めたような作風。これらのバンドよりも王道っぽい音な分、取っ付きやすいとも言えるかも。このジャンル聴く人なら陰鬱で隠微なメロディはむしろご褒美でしょうし。

派手な作風ではないものの、しっかりしたクオリティと濃いムードを醸し出すメロディがある、非常に良質な作品。普段からブラックを聴いている人であれば購入リストに加えても良いと思います。


GRA ★★ (2013-02-03 09:23:07)

スウェーデン産メロディック・ブラック。
正式名称は「GRÅ」ですが、これだと文字化けするので「GRA」で登録。
(コメントでは文字化けしないけど、バンド名などの項目だと文字化けするのを確認)
Åが出せない人は「オングストローム」と打って変換してみましょう。


REIGN OF EREBUS - Humanracist ★★ (2013-02-02 10:26:13)

2001年発表の1st。

このバンド、以前はCOFに通じるような、ゴシック要素の強いシンフォブラックを演っていたらしいんですが…初のフルアルバムとなる今作は、それが信じられないようなRAWなシンフォブラック。特にANTAEUSやAOSOTH辺りのRAWブラックを引き合いに出したくなるような、ノイジーなギターリフが強烈で、個人的にこの音は「刃物系」とでも呼びたくなるような感じ。

ヴォーカルやキーボードは引っ込み気味のミックスで、全ての音がひと塊になって押し寄せてくるような土石流サウンドに仕上がってるんですが…その中から聴こえてくるメロディ自体は非常に良質。決して華美になりすぎず、恐ろしげなムードを演出しつつもメロディアスさを演出するキーボードの音色の選択センスもかなり良いと思う。メロディが前に出すぎてないのが逆に感じでてると思う。

ちょっとアングラ風味のシンフォニック・ブラックが好みの方にお勧めの一枚。適度にRAWな音質とメロディアスさの光る好盤で、個人的にはかなり心地良く聴けました。


WELTMACHT - The Call to Battle ★★ (2013-02-02 10:19:10)

2001年発表の1st。
12曲32分、最長曲でも4分半と1トラックはやや短めの構成。

KRIEGのネームバリューに惹かれて買ってみましたが、これは渋いですね(笑)。オールドスクールな作風ながら、ミッドテンポを基調としたいぶし銀な感触を醸し出す音で、初期GORGOROTHを更に渋くしたかのような路線。キーボードの導入やブラストで攻めるパートもありますが、基本的には心地良い渋かっこよさの支配する音ですね。

初期GORGOROTHと同様、このバンドもどこか土着的な感触がありますが、ヴァイキングというよりは密林にでも潜んでいそうな雰囲気。そしてImperial氏のヴォーカルは、相変わらず蛮族の酋長的というか、鈍器をフルスイングかつ全力で振りぬく野蛮さがありますが、今回はそこに裏返り気味の鬱テイストを加えてきた感じ。やはり彼のヴォーカルはヒリヒリする狂気が感じられて良いですね。

作風的に狂気をぶち捲けるような剥きだしの恐ろしさは希薄ですが、ブラックならではの生々しさとメタルとしての根幹がしっかりしている故の渋さのある、良質な作品だと思います。KRIEG関連追ってる人は買っても損はないのでは。


WELTMACHT ★★ (2013-02-02 10:17:18)

KRIEG人脈によるアメリカ産ブラック。
2枚のアルバムを残し、現在は解散してしまっている模様。


KONTINUUM ★★ (2013-01-31 21:03:02)

アイスランド産ポストブラック。
先日名門レーベルCandlelightより1枚目のアルバムをリリース。


KONTINUUM - EARTH BLOOD MAGIC ★★ (2013-01-31 21:00:14)

2012年発表の1st。
レーベルも有名どころだし、ポストブラックなんてブラック界隈でも割とマニアックなサブジャンルにも関らず、特にブラック専門でもないタワレコに結構な枚数が入荷していたり、意外に話題になっているバンドなんでしょうか?

路線としては、うっすらと音像を覆うギターノイズが、ブラックメタルのRAWさではなく、シューゲイザーに通じる儚くドリーミーな質感を醸し出すポストブラック。ショップではKRALLICE辺りが引き合いに出されていましたが、こちらはトレモロ偏重な作風ではなく、幽玄なアルペジオやちょっと渋めなリードギターによるメロディが印象的な、この手としては変化に富んだ作風。

子供声のSEによってノスタルジックな雰囲気を演出してみせたり、ロックのダイナミズムを酩酊感に変えてみせたり、ブラックメタル的な妖艶さと攻撃性を演出する部分もあったり、曲によって方法論を変えてきている感じで、まるで夢の場面が次々に切り替わっていくかのような構成。ヴォーカルはクリーン多めですが、マイルドでちょっと渋めな声で夢の世界に誘うかのような響きがあるような気がします。

ブラック本来の邪悪さからはかなり離れた音ですが、バラエティに富む曲作り、ダークさもある程度残したムード等、ただ儚いだけではないポストブラックという仕上がり。正直自分のストライクゾーンとはちょっと違う音なんですが、プログレッシブで幻想的なものが好きであればツボに嵌まるかもしれません。


BLAZE OF PERDITION - Towards the Blaze of Perdition ★★★ (2013-01-31 20:55:12)

2010年発表の1st。

某サイトではWATAINと同系統のブラックメタルとして、OFERMODやONDSKAPTを差し置いて名前が挙げられていて、「これは買わねば」と思い至り購入したわけですが…これは見事に期待に応えてくれる作品でした。WATAIN同様、メタルとしての重厚感がブラックの邪悪さと結びつき、サタニックな威風へと結びついていくどす黒いブラックメタル。ローファイ音質にも華美なキーボードにも頼らないストロングスタイルのブラックという感じ。

しかしこのバンド、この手のバンドの中でも各要素のレベルが高いんじゃないでしょうか。メロディアスながら甘さではなく、ブラック特有の妖気と邪気を発散するリフといい、威厳のあるドスの効いた中音域がなりと信者を先導するようなアジり系がなりを使い分けるヴォーカルといい、ブラック好きなら即効で引き込まれる魅力がある。楽曲構成も巧みで、特に何かに追い詰められる様な焦燥感を煽る疾走パートや、メロディアスながらサタニックな雰囲気を助長するソロの組み込み方が上手い。

流石に近年のWATAINと比べるとまだ地下臭さは残っていますが、「これがブラックメタルだ!」とでも言いたくなるような音を出してますので、マニアならずともお勧めの逸品。


PORTA NIGRA - FIN DE SIECLE ★★★ (2013-01-29 12:26:26)

2012年発表の1st。

ドイツ産のハイクオリティなアヴァンギャルド・ブラックという売り文句、同郷のSECRETS OF THE MOON辺りのバンドを思わせるお洒落なジャケットに惹かれ購入。レーベルも信頼と実績のDebemur Morti Productionsですし、これでハズレな訳はない…とは思っていましたが、これは想像以上に良いアルバムですよ。

路線としては、幻惑的で幽玄なアルペジオや、妖しげなノーマルヴォイスなども駆使し、意味深な雰囲気を演出しつつ進行するブラックメタル。ミディアムテンポを中心としたリズム構成も、どっしりと構えたような深みのあるムードを演出していますね。知性的ではあっても、その知性の裏に虚無的で皮肉な、黒い嘲笑いが仄見えるような、どこか気難しさのある音。

トレモロリフで奏でられるメロディには、SECRETS OF THE MOONにも通じる、病的で邪悪な響きがあるのがまた素晴らしいんですよね。前衛的でありながら、変にスノッブな方向には行かず、しっかりブラックの暗黒さや妖しさを追及してくれている感じ。悲痛な感情を込めた絶叫も、声が太いためナヨナヨした感じになっておらず好印象。様々な要素を取り入れつつグダグダにならず、常に緊張感のある楽曲構成も見事で、1枚目にして総じてハイレベルな仕上がり。

個人的な印象としては、近年のSOTMのような漆黒で深遠なブラックメタルに、AKERCOCKEの妖しい雰囲気をプラスしたような印象があるんですよね。ちょっと変わった、しかしブラックとしての妖しいムードの演出はしっかりしているバンドが好みであれば、確実に気に入るのではないでしょうか。


OFERMOD - Thaumiel ★★★ (2013-01-29 12:24:51)

2012年発表の2nd。

前作はメタルとしてのマッシブさが、ブラックメタルとしての邪悪さと融合し、威風漂うムードの演出された作品に仕上がっていましたが、今作は邪悪さや威風といった要素は変わらないものの、前作とは少し路線を変えてきましたね。前作よりもブラックメタル特有の、メロディの妖艶さを強調することでよりメロディアスかつ儀式的な作風になった感じがします。

妖艶なメロディで攻めるパートが多くなったこと、パーカッション等を積極的に導入していることなどで、部分的にはペイガンっぽく聴こえる箇所も。ただし異教的というよりは邪教的という感じで、やはりブラックのどす黒さが先に立っている感じ。ヴォーカルもがなり声の太さはそのままに、よりダウナーで粘着質な薄気味悪い表現力を身に付けており、楽曲の陰湿なムードを更に盛り立てます。

ただし、「オーソドックス・レリジャス・デスメタル」を名乗り、重厚感のあるプロダクションだった前作と比べると、今作は少しだけブラックメタル本来のRAWさに立ち返った印象も。作風が妖艶なメロディを軸に攻める方向にシフトしてきているので、メロディを強調するこの音質の変化は正解だと思う。

レーベルが変わり、ブックレットに赤フォント使ってたりといったアートワークの変化から、自分の望まない方向に音楽性を変えてたらどうしようかと思っていましたが、個人的には前作よりも好みですね。World Terror Committee辺りのレーベルがこのバンドの前作の路線に近い良質なバンドを多く輩出していますが、それらバンドと比べても一線を画する作風になったと思う。スウェーデンの真性ブラックの代表格のバンドに進化した、と言っても過言ではないかもしれません。


TEITANBLOOD - Woven Black Arteries ★★★ (2013-01-19 06:46:45)

2012年発表の2曲入りコンピレーションCD。
新曲と前年に発表されたアナログに収録された曲からなる構成。

WARブラック大注目株の彼等ですが、今作もまた素晴らしい内容ですね。…2曲で27分という大作主義の作風、クワイヤや演説などの宗教じみたSEを用いたカルトなムードの演出、音響ドゥームに通じるダークなプロダクション…と、ここまでフラグが立ちまくってるのに全然高尚さだとか芸術性だとかに向かっていかず、不敬な野蛮さばかりが際立つこの雰囲気はある意味凄いと思う。

シャーシャーと耳を聾し、現実感を失わせるようなギターリフが音像を支配し、ボテボテと針山を転がり回るように叩かれるドラム、内臓を吐き散らしながらのたうつ様なヴォーカル、時折挿入される狂ったギターソロ…正に悪鬼羅刹の音という感じ。衝動に任せて演奏している立ち姿よりも、獄卒どもが地上に溢れ出して無辜の人間を責め苛んでるような、邪悪で理不尽で非現実的な音像。

作風的に音響系、エクスペリメンタル系のブラックが好きな方にもアピールできそうですが…そういうバンドの多くが持っている難解さや高尚さはここにはなく、ひたすらに凶悪で凶暴なので注意が必要。2曲入りという構成から避けている方もいるかもしれませんが、これはフルに近い値段払っても買う価値のある作品ですよ。かなりお勧め。


LIKBLEK - LIKBLEK ★★ (2013-01-19 06:09:24)

2010年発表の1st。
Daemon Worship Productionsより発売。
NEFANDUSやSERPENT NOIRの作品を出してるレーベルですね。

という訳でレーベル買いなんですが、これが上記バンドに通じるような真性系の凄みと、WARブラックに通じる、ダーティなRAWさの入り混じったブラックメタルで、かなりの良盤。ドスの効いた太さと汚さを兼ね備えたプロダクションといい、頭のネジが一本外れたような狂気だけでなく、威圧感もあるヴォーカルといい、個人的にはアメリカのKRIEGの近作に近い雰囲気を感じたり。

ただ、この手のダーティさの強いブラックメタルとしては、一部かなりメロディアスな部分も含むのも特徴。そのメロディもMAYHEMやSATYRICONに通じるような、じわりと恐怖が伝わってくるような陰鬱さとメロウさがあるもので、なかなか耳を引きます。音質の太さとも相俟って、時折ゾクッとするような威風をも感じさせますね。

一曲一曲の演奏時間は短めで、アルバム通しても約27分と決してボリュームがあるほうではありませんが、その分一気に聴きとおせるような勢いを持った快作に仕上がってると思います。邪悪でオールドスクールなものが好きであればおすすめ。


LIKBLEK ★★ (2013-01-19 05:55:07)

元SACRAMENTUMのメンバーも絡むスウェーデン産ブラック。
バンド名は「死体の様に青褪めた」という意味だとか。


CHASMA - DECLARATIONS OF THE GRAND ARTIFICER ★★ (2013-01-15 21:36:21)

2011年発表の1st。
3曲で30分を超える、大作主義な作風。

ショップではAGALLOCHやWOLVES IN THE THRONEROOM辺りのシューゲイザー寄りブラック好きにお勧めされていたバンドですが…上記バンドはともかく、ALCEST辺りのノスタルジックな音が好きな人は引きそうな音ですよ、これ(笑)。スタイルこそアルペジオを用いた静パートの演出や、長いスパンの展開とザラついた音質のリフによる陶酔感など、シューゲイザー系ブラック的ではありますが、むしろ感性としては鬱ブラックに近いのではと思います。

音像も靄のようなノイズ質が妙に重々しくのしかかってくるような陰鬱さがあるし、リフのメロディもその靄の中に神経を侵すガスでも含まれているかのごとき毒性の高さ。2曲目の冒頭の、ALCESTならノスタルジックな子供の声SEでも入れそうな所を、このバンドはパニック悲鳴SEで気味悪さを強調してる辺りも象徴的でしょう。ヴォーカルはBURZUM系の高音裏返り気味絶叫ですが、この手ではかなり真に迫った迫力がある方だと思う。特に2曲目ラストの憎くて憎くて仕方がないような全霊の叫びは必聴。

シューゲイザー系でも綺麗な世界観を描いているバンドより、陰鬱としたヴィジョンを持ってるバンドを好む方にお勧め。ALTAR OF PLAGUESやBOSSE-DE-NEGE辺り好きならチェックしてみるといいかも。


DODSENGEL - VISIONARY ★★★ (2013-01-15 20:06:58)

2009年発表の1st。
現時点で二回も再発されているらしいですが、それも頷ける作品。

路線としてはWATAINやFUNERAL MISTなどの、真性な邪悪さ全開かつメタルとしてのマッシブさもあるバンドを、もうちょっとRAWでプリミティブな方向に寄せた感じで、雰囲気としてはスウェーデンのHERESIやONDSKAPT辺りに近い雰囲気なんですが、この手のブラックの中でもトレモロ含有率がかなり高めで、メロディアスな曲作りが成されているような印象。

そしてそのメロディが、ブラックメタルとして絶品なのが素晴らしいんですよね…。初期(De Mysteriis~期)のMAYHEMを思わせる、メロディそのものにダイレクトに悪魔主義の教義が練り込まれたような戦慄感。それに加えて、ちょっと勇壮な感じのメロディやフレンチ系に通じる病的さ漂うメロディもあり、プリミティブ系苦手な人でも行けそうなドラマティックさがありますね。

そしてヴォーカルの演技力、これも素晴らしいの一言。
Maniac氏やNoktu社長系のエグすぎる喚き声を基本に、何かを必死で訴えかけるような感情を込めたがなり、吸引ホイッスルと思しき女性の悲鳴めいた絶叫など、パフォーマンスの一つ一つが真に迫っていて狂気的。楽曲の邪悪さ、病的さとも相俟って聴いているこっちの精神が参ってしまいそう…。

個人的には、単に冒涜的というよりも、もっと精神を侵すような病性のある邪悪さを感じられる作品。ブラックメタルが好きであればこのどす黒いムードやメロディのセンスには抗いがたいものがあると思う。ブラック系初心者がこのジャンルの深淵を覗くにもうってつけかもしれません。


DORDEDUH - Dar de Duh ★★ (2013-01-15 20:00:26)

2012年発表の1st。
ENSLAVEDのカヴァーと2010年のEPを加えた限定盤二枚組使用もあり。

NEGURA BUNGETの元メンバーが参加するバンドという触れ込みですが、確かにアトモスフェリックな要素とペイガン要素が同居するブラックと言うことで、路線の方も共通するものがありますね。NEGURA BUNGETも大概でしたが、こちらはそれ以上に前衛的というか、かなり風変わりな印象を受けるサウンド。

祭り系の歓声っぽいコーラスや民謡調のクリーンヴォーカル、薄暗いムードを壊さない程度の叙情的な笛メロなどを用いた祭儀的なパートと、深遠さを感じさせるスピリチュアルなキーボードがバンドサウンドを包み込む、アンビエンス重視のパートを両立させる構成が特徴で、聴いていると物質世界と精神世界を行ったり来たりしているような、何とも不安定な気分になる作品。

NEGURA BUNGETと比較すると、こちらはスラッシーなギターリフも登場するぶん、よりメタリックで実体的な音とも言えそうなんですが…何故か受ける印象はよりマニアックでシャーマニックな感じ。NEGURAと比べるとフレーズの印象度はちょっと弱めな感じもしますが、メタルとフォークの融合のさせ方のアイデアや世界観の演出の巧みさは引けを取らないのでは。

マニアックといってもフォーキッシュな叙情的メロディは鏤められており、初心者を完全に締め出すような作風というわけでもない辺り、割とバランス良く作られてると思う。個人的には刻みリフ頼りの部分はもうちょっと音が重くてもな…と思いますが、それだと雰囲気が崩れるように感じる人もいるのかも。


DORDEDUH ★★ (2013-01-15 19:59:18)

ルーマニア産ペイガン/アトモスフェリックブラック。
NEGURA BUNGETの元メンバーが参加。
バンド名は「精霊への思慕」という意味だとか。


SECRETS OF THE MOON - Seven Bells ★★★ (2013-01-12 16:13:41)

2012年発表の4th。

作風的には「Antithesis」より続く、メタルとしてのマッシブさ、クオリティの高さがブラックメタルとしての邪悪な黒光りに直結する、威風堂々としたブラックメタルですが…楽曲の質といい邪悪なムードといい、バンドとしても過去最高のものを練り上げてきたのではないでしょうか。個人的には、2012年のメタルアルバムの中でもトップクラスに素晴らしい作品だと思います。

特にこのバンドは以前から「引き」のパートが長く、展開面でクドさを覚える事が少なくなかったんですが…今作ではその使い方も、そのパート自身も更に磨きがかかり、冗長さを全く感じさせなくなった気がします。引きのパートがより魅力的になったことで、楽曲の持つどす黒さは一段と深みを増した印象。威風のある暗黒ブラックメタルをやらせたらこのバンドの右に出るものはいない程だと思う。

メロディの黒さも相変わらず、というより更に強化された印象で、アルペジオでは世界が今にも終焉を迎えそうな破滅感を醸し出し、トレモロには腐った膿が湧き出すような、グロテスクな質感が感じられますね。展開や音質など、メタルとして申し分のない質のある「実体的な」ブラックメタルであるにもかかわらず、暗黒ムードの深さでは一流のアトモスフェリック・ブラックやアンビエント・ブラックを凌ぐレベル。

個人的な好みもありますが、これは現代ブラックの名盤だと思う。ブラックメタルが好きな全ての人に聴いていただきたい素晴らしい作品です。


NEFANDUS - YOUR GOD IS A GHOST ★★ (2013-01-12 16:09:45)

2012年発表の4曲入りEP。
現MARDUKのDevo氏がミックスを担当。

関連バンドのOFERMODやSERPENT NOIR、MALIGNはどれも真性の雰囲気漂う、邪悪極まりないブラックメタルを演ってますが、この作品も同様にドス黒い空気を醸し出すブラックですね。OFERMODがデス寄りの重さ、SERPENT NOIRが粘着質な残虐性を持っていたのに対し、このバンドは荒涼感溢れる寒々しいトレモロを多用し、若干メロディアスで聴きやすい路線。

Devo氏によるRAWながらトレモロ映えするプロダクション、トレモロ一辺倒でなく、イカレ系のギターソロや刻みリフも交えたオールドスクール要素もあるギターワークなど、作りはかなりしっかりしている感じ。ただ、2曲目がノーマル声も交えたドゥーミーな、やや好みが分かれるものであることや、全体として疾走パートは意外と少なめな点は気に留めて置く必要があるかも。

個人的には、1曲目のメロディアスさや疾走具合が丁度いいので、全体的にそのくらいのバランスで作ってくれれば更にツボだったんですが…逆に言えば金太郎飴になりがちなエクストリームメタルのジャンルで、しっかり曲ごとの差別化が出来ている良盤とも言えるのかも。


NEFANDUS ★★ (2013-01-12 16:08:33)

スウェーデンで活動する古株のブラックメタルバンド。
OFERMOD等のMichayah氏が在籍。


SERPENT NOIR - SEEING THROUGH THE SHADOW CONSCIOUSNESS : OPEN UP THE SHELLS ★★★ (2013-01-10 23:28:08)

2012年発表の1st。

メンバーはOFERMOD絡みという事ですが、正にOFERMODやプログレ方向に行く前のDEATHSPELL OMEGA等と共通する、ドス黒くて宗教色漂う、邪悪極まりないブラックメタルを演っていますね。それらのバンドと比べると、メロディアスな部分は控え目な代わり、ノイジーなリフには引き摺るような粘着感があり、より陶酔感や宗教的恍惚感を覚えさせる事に的を絞ったような音。

効果音の挿入等を上手く用いた、儀式的なムードの演出もセンスが良く、全編に渡って何か邪悪な存在と対峙しているかのような緊張感が漂ってますね。何気にリズムも変化に富んでおり、時には一見邪悪な雰囲気にはそぐわなそうなノリノリのリズムまで出てきますが…骸骨の化物が人の死を歓んでステップ踏んでるような気色悪さがあって全然楽しそうじゃありません。むしろグロいです。

ノイジーな音を通じ、本気で聴き手を暗黒世界に引きずり込もうとするような、真性な雰囲気に満ちた作品。一番好きな音楽ジャンルを問われて躊躇なく「ブラックメタル」と答えられる人は、自己啓発(サタニズム的な意味で)用に一枚持っておくといいかも。それ以外の人は…回れ右でもいいかも。


SERPENT NOIR ★★ (2013-01-10 23:26:56)

ギリシャ産ブラックメタルバンド。
OFERMODやNEFANDUSのMichayah氏がドラムを担当。


GRAVEN - The Shadows Eternal Call ★★★ (2013-01-10 23:19:46)

2005年発表の2nd。
これ、中古で凄く安かったんですけど…かなりの良盤ですね。

作風としては、耳に優しくないノイジーなリフを特色とする、プリミティブブラックの様式を踏襲したスタイルですが…単にRAWなだけでなく、音質も楽曲自体もしっかり作りこまれている印象。特にオールドスクールなものを中心としつつ、時に幻惑的なフレーズを挟んだり、ジャーマンブラック特有の氷の礫が吹き付けるようなトレモロを交えたりするリフが素晴らしい。

それを奏でるギターの音色も、薄っぺらではなくしっかりと厚みのある、骨の太い音で、リフの魅力を引き出してくれてるのが良いですね。現在ENDSTILLEでも活躍するZingultusのヴォーカルは、鬼気迫るような気迫の篭もった絶叫で噛み千切るような迫力がある。プリブラとしては迫力のある音作りですが、ヴォーカルがそれに負けない壮絶さである事も音の凄みを増す要因となってますね。

関連バンドのENDSTILLEやGRAUPEL辺りと比べるとRAWでプリミティブ色が強く、やや地下臭い作品かもしれませんが、ジャーマンブラックが好きであれば推薦。良いアルバムですよ。


WALLACHIA - Shunya ★★★ (2013-01-06 23:27:10)

2012年発表の3rd。
日本人名っぽいアルバムタイトル(笑)。「俊也」ってところでしょうか。

路線としては、トレモロや刻みをバランス良く織り込んだギターリフに、シンセによる荘厳な装飾を纏って疾走する、メロデス要素もあるシンフォニック・ブラック。生のストリングスを使用するパートもあったり、シンセが弦や鍵盤系だけでなくサイバー系やSE系の音色も交えていたり、ドラマ性に富んだクオリティの高い音。何気にギターリフが耳を惹く箇所も多く、バンドサウンドと装飾のバランス感覚も良い感じ。

ただクオリティの高いシンフォニックブラックというだけでなく、個人的にはBORKNAGAR辺りに通じる、バイキング風味の勇壮さにプログレッシブな感性が加わったような、独特の感覚も覚えるんですよね。特にブラストで攻めるパート、暴虐さよりも勇壮さと神秘性が同時に伝わってくるような雰囲気が似ている気がします。この辺り、シンフォ系のテンプレ通りでない魅力が感じられてグッド。

様式をなぞっただけの音とは一線を画してますし、聴きやすさ、クオリティの高さ共に申し分のない音だと思います。シンフォブラック系の基本バンドを一通り押さえて、更なる深みに嵌まっていく足がかりとしても非常にお勧めな音源。


WALLACHIA ★★ (2013-01-06 23:26:38)

先日Debemur Mortiより新作を発表した、ノルウェーのシンフォニック・ブラックメタルバンド。何気に結成は95年とかなり活動期間の長いバンドらしいです。


NIHASA - BRAHAMANDA XUL GRIMOIRE ★★ (2013-01-04 00:10:06)

2009年発表の1st。

アートワークも神秘的で良い感じだし、メンバーもギリシャのブラックメタルシーンでは割と有名な人が関与しているにも関らず、某所でかなりの安値で投げ売られていたので購入したんですが…正直、これは投げ売られるのもちょっと分かるかも…いわゆるアトモスフェリック・ブラックですが、微妙に魅力が伝わりづらい作品なんですよね。そもそもイントロのアンビエント部分が8分近くある時点で勿体付け過ぎで聞き手を選ぶ感じが。

と言っても、分かりやすさに欠けるというだけで、ブラックメタルのテンプレ的でない魅力がある作品ではあるように思います。シンセとギターノイズを上手く混ぜ、邪教の祭壇のある洞窟に煙が立ち込めているような、妙な湿り気は他のブラックにはない魅力だと思う。その中に響く刺々しい音色のトレモロも、精神に来る感じがしてノイジーさを活用できてると思う。ACHERONTASやSTUTTHOF同様、密教的な邪悪さ漂うメロディも楽しめますし。

正直ACHERONTASやSTUTTHOF辺りのバンドにまで食指を伸ばしてない方にお勧めは出来ませんが、ムード重視のブラックメタルが好みの方なら一聴の価値はある作品だと思います。アトモスフェリック系でオカルティックなものが好きであれば買ってもいいかも。NIGHTBRINGER辺りで音を上げるようなら手出し無用かと。


NIHASA ★★ (2013-01-04 00:08:25)

ギリシャ産ブラックメタルバンド。
元STUTTHOFでNIGHTBRINGERのライブメンバーでもあるACHERONTAS氏を中心としたプロジェクト。


GRABAK - Sin ★★★ (2013-01-02 17:52:34)

2011年発表の5th。

なんか寝技や組み技が強そうなバンド名ですが(笑)、基本的には1349やDARK FUNERAL辺りをもう少しマイルドにした感じの、ファストパート中心のブラック。メロい中にも暗黒性を含ませたリフのメロディもこれらのバンドと共通しますが、DISSECTIONに通じる優美さやジャーマンブラック的な寒々しいメロウさも感じられ、よりメロディアスな感触の作風。ドラムがやや丸めの音で、一歩間違えればB級バンドにありがちなチープさを醸し出してしまいそうですが、この作品はそれがむしろリフのメロさや催眠性を強調している感じに仕上がってるのは、流石ベテランといった所でしょうか。

また、ごく一部ではゴシック的な女性ヴォーカル(ソプラノ・クワイア)を取り入れ、楽曲に変化を付けているのもいいですね。特に1曲目、天使メタトロンの台詞を美麗なソプラノが歌い上げた後、ヴォーカルが「おおメタトロンよ、俺を退屈させるな(Oh Metatron don’t bore me to death)」と続けるパートはケレン味たっぷりで実に燃えます(笑)。ただし質は高いものの、1349のような大きな話題を攫うバンドと比べるとインパクトの面では劣るのも否めないかも。個人的には音作りもリフ捌きも心地良くて、聴きやすくて好きですけど。

ベテランらしい堅実な作りで、ブラックメタルが元々好きな方であれば安心して聴ける作品だと思います。アメリカのAVERSE SEFIRA辺りを愛聴する方にもお勧め。こっちの方が大分分かりやすいですけど、聴き心地の良さは通じるものがあると思う。


GRABAK ★★ (2013-01-02 17:51:33)

元NARGAROTHのメンバーも絡むドイツ産ブラック。
90年代半ばより活動する、ジャーマンブラックとしてはかなりのベテラン。
ちなみに某格闘技団体とは何の関係もありません(笑)。


NEFARIOUS - THE UNIVERSAL WRATH ★★★ (2013-01-02 17:47:19)

2012年発表の1st。

この如何にも荒涼とした世界観を持っていそうなジャケ、そしてCold Dimensionsよりリリースという事からも察せる通り、バンドサウンドを包む幻想的で冷えた感触のシンセを纏いつつ、ザラついたギターリフとブラストを中心とした苛烈なリズムで、身を切る吹雪の如く疾走していくアトモスフェリック/コールドブラック。SEAR BLISSはメタリックな印象が強いので、そのメンバーがこういうアンビエンス重視のブラックメタルを演ってるのはちょっと意外。まあ、SEAR BLISSの最新作「Eternal Recurrence」でのアトモスフェリック方向への接近を考えれば、不思議ではないのかもしれませんが…。

ただ、COLDWORLDやAURVANDIL辺りの、似た系統のバンドと比べると音がメタリックというか、もっと実体的な印象も受けるんですよね。ミッドテンポも多用する構成やトレモロを交えた、変化のあるリフ捌き、シンセの音色など、情景を描くことと同じくらい、展開のドラマ性にも気を配っている感じ。そのせいなのか、ただコールドなだけでなく、SEAR BLISSの作品に通じるような、宇宙的な壮大さも感じられる気がします。作品のタイトルにも「Universal」が入ってますし。

まあ、Cold DimensionsとSEAR BLISSメンバーという時点で鉄板のクオリティはあるだろうと思ってましたが、予想通りの質の高さで満足。このバンドの出自を聞いて惹かれる人ならば買って損に思うことはないのでは。


NEFARIOUS ★★ (2013-01-02 17:46:42)

ハンガリー産コールドブラック。
SEAR BLISSのメンバーが在籍。


VON GOAT - SEPTIC ILLUMINATION ★★★ (2013-01-02 17:43:58)

2010年発表の1st。

アメリカ産カルトブラックの始祖、VONの作風を受け継ぐプロジェクトという事で、期待して購入しましたが…これは素晴らしいですね。「Satanic Blood」でのテープ起こしっぽい音質が改善された(とはいっても、適度に篭もったRAW音質ではある)り、儀式的な要素があったりしつつも、基本的にはシンプルでサタニックなオールドスクール・ブラックメタル。えずくようなヴォーカルの汚さもカルトさを強調しててグッド。

VONの頃からそうでしたが、やはりリフのセンスが素晴らしいですよね。オールドスクールなダーティさはしっかり演出しつつ、地下臭く邪悪なムードも満点、それでいてシンプルという。音質や展開など飾りに過ぎません的な作風も、リフの魅力に拍車を掛けてます。更にリードギターが生気を奪うようなメロディを弾いてたりするのも、より楽曲の邪悪さや洗脳度を上げる結果になってますね。ちなみにこの作品ではLEVIATHANのWrest氏がドラムを叩いてますが、LEVIATHANやLURKER OF CHALICEなどのアンビエンス重視のグロさは余り感じられず、あくまでオールドスクールさを貫く音。

…数あるオールドスクール・ブラックメタルの中でもトップクラスにかっこいい音を出してるんじゃないでしょうか。やはりリフに物を言わせられるバンドは強いです。


鉄色クローンX - 鉄色クローンX (2012-12-11 23:49:27)

Marty FriedmanやCHTHONICのFreddy Limが参加したももいろクローバーZカヴァーアルバム。2012年発表。…この面子でももクロカヴァーとか私みたいなミーハー気質のメタル好きにはたまらない企画ですよ(笑)。あのももクロのウルトラキャッチーなメロディがメタルサウンドでビルドアップされたら…と思うと、考えただけで垂涎モノです(笑)。

…という訳で、早速買ってきたんですが…これ、正直微妙な気が…。
ももクロの曲のデスボイス+メタルサウンドによるカヴァーということですが…ポップスは歌メロの流れありきで、デスメタルはリフ中心で展開していくという構成の違いが、まずあると思うんですよね。そこでポップスやロックをデスメタル風にカヴァーする時はその様式の違いをどうアレンジするかが腕の見せ所になってくると思うんですが…このアルバムはそこが上手く行ってない気がしてしまいます…。

楽曲の流れは基本的に原曲準拠で、歌メロの劇的さを前提にした構成になっているのに、その歌メロをなくしてデスボイスにしているせいで、むしろドラマ性は下がってしまっている印象。例えばサビでメロブラやメロデスのような、クリーンヴォーカルの乗る余地のないメロディアスなリフが来るなど、展開にデス要素を活かす工夫があれば良かったんですが…別にクリーンヴォーカルでも成立しない訳ではないアレンジで、正直何のためにメロディやキャッチネスを犠牲にしてまでほぼ全編デスボイスの構成にしたのか分かりません。確かにギタープレイはかっこいいですけど、まあMartyならこれぐらいはやってくれるだろう、という想像の範疇内のかっこよさって感じだし。

ハイピッチの絶叫と、ガナリ気味のグロウルを使い分けて楽曲に変化を付けようと頑張る、Freddyのデスボイスはまあ、(お行儀良すぎとは言え)悪くはないですが、時々入るクリーンはぶっちゃけ「何じゃこりゃ…」って感じ。1オクターブ下でブツクサ呟くような歌唱で、正直イラッとする。そこは血管が切れようが声が裏返ろうが音程を全音単位で外そうが原キーでブチブチブチ切れ熱唱するところでしょうが…ヘヴィメタルバンドが、それも一流のミュージシャンが、原曲に「全力感」で負けてどうするんだよ!!ももクロの「全力感」を更に引き出すためのメタルアレンジじゃなかったんでしょうか…。

…有名どころを揃えただけあって、メタルとして別に質が悪いアルバムだとは思わないんですが、正直ももクロの楽曲の魅力を十全に引き出しているアレンジとは言いがたいと思う。これならインストであること前提のアレンジで楽しませてくれたTokyo Jukeboxの方が面白かったと思うし。買うな、とは言いませんが、フルプライスのアルバムを買うならももクロ本家か、CHTHONICの作品を買った方が良いかも…。まあデスボイスに物珍しさを感じる人には受けそうですけど。個人的にはちょっと期待値が大きすぎたかもしれません。


XLIX - DEMO 2012 ★★★ (2012-11-06 23:15:23)

2012年発表の4曲入りデモ。
イントロ・アウトロを含め27分とボリュームはまあまあ。

国産の鬱ブラック期待の新バンドという触れ込みですが、曲によって見せる顔の異なる作品ですね(と言っても実質2曲ですけど…)。1曲目のイントロに続く2曲目は、物悲しく鬱エモーショナルなメロディを紡ぎ上げていくスローパートと、五寸釘を打ち付けるような、独特な音色のドラムが耳を惹くファストパートを組み合わせた緩急付いた楽曲。女性の悲鳴と、赤ちゃんの泣き声に男性の断末魔をプラスしたかのような、鬱ブラック特有の超高音絶叫も印象深い。

3曲目は、鬱アルペジオに音響志向を覗かせる低音を絡めたパートで聴き手の意識を沼のように引き込みつつ、篭もった音色のトレモロリフによる陰鬱なメロディを聴かせる楽曲ですが…このトレモロの篭もり具合がかなり素晴らしい。暗闇の中で何かが蠢いているような得体の知れなさを醸し出しつつ、個人的には耳に凄く心地良い音。ヴォーカルは悲痛絶叫も使いつつ、前曲よりも太いがなりスタイルでなかなか威厳があってかっこいい。4曲目はほぼノイズに徹したアウトロ的な楽曲。

欧米の行き過ぎた鬱ブラックって、鬱感情を垂れ流すばかりで聴き手にとってはちょっと退屈に思える展開も珍しくないんですが…この作品はどのパートも「聴かせたい箇所」が明確で、それがある意味での聴きやすさに繋がっている感じがしますね。カルトなようでいて、実は聴き手を凄く意識した作品なんじゃないかと。その辺り国産っぽいな、って思います。


IGNOMINIOUS - Death Walks Amongst Mortals ★★ (2012-11-06 23:12:54)

2011年発表の1st。

ジャケットからはフィンランド辺りのオールドスクールなウォー・ブラックみたいな雰囲気が漂ってますが、ハンガリーのプリミティブブラックで意外にもかなりメロウなメロディを押し出した作風。少々野暮ったく感じるほどに左右のチャンネルからトレモロリフ中心でメロディアスなギターを絡ませて進行する作風で、メロディも邪悪さや汚さよりも悲哀の情感がかなり強い感じ。

「メロウなプリブラ」カテゴリの中でも、相当メロディアスな部類に入る音。但し聴きやすいかというとそうは言い切れず、高音域のシャーシャー感を強調した音作りはある程度のプリミティブ/RAWブラック耐性を必要とするかも。聴き手を選ぶ音作りながら、邪悪さやカルト性よりもメロディの哀愁を重視するという、ある意味音楽として正統な攻め方をしているせいで却ってニッチ感が強くなっている印象も。ヴォーカルの絶叫もかっこいいけど、時々妙に苦しげな叫びを聴かせるし。

個人的にはもう少し狂気の部分を強調しても良かったかな…とも思いますが、悪くない作品だと思う。ノイジーな音とメロディアスなリフの応酬に陶酔感を感じる方なら楽しめるかと。


TUKAARIA - Raw to the Rapine ★★★ (2012-11-05 19:14:11)

2011年発表の1st。
翌年にProfound LoreよりVOLAHN、ODZ MANOUKとのスプリット音源を加えてトールケース/デジパック仕様、500枚限定で再発されてます。どの音源も2011年に発表されたもの。

路線としては、緩急付けた展開も取り入れつつ、テレビの砂嵐を思わせるノイジーな音作りの中にトレモロリフが響く、プリミティブブラックの様式を踏襲したものといえますが…流石一癖あるバンドの多く所属するProfound Loreが目を付けただけあって、単にプリブラのテンプレをなぞっただけには終わらない、深遠な邪悪さも感じさせてくれる作品になってますね。

まずトレモロによる、オカルティックなメロディが非常に秀逸。寒々しい部分もありますが、単に寒いというよりも悪寒を呼び起こすような、不気味さも伴う感触がありますね。テレビの砂嵐だと思ったら、良く見ると無数の蛇が蠢いてそう見えていた…みたいな気色悪さ。威厳のある中音域のがなりから、怨念を振り絞って追いすがるような絶叫、祈祷師系の抑揚のないクリーンまで使いこなすヴォーカルの表現力もまた素晴らしい。

アメリカのバンドですが、個人的にはドイツのカルトバンドを思わせる雰囲気があるんですよね…例えば、炸裂感のあるRAWなドラムや追い立てるようなヴォーカルによる焦燥感、メロディアスなベースやノイジーな音像が醸し出す陶酔感の入り混じった、カオスな感じはKATHARSISに通じるものがあるように思うし、陰鬱な音の中に祈祷系クリーンと神秘的なトレモロが響き魔性を演出するパートはちょっとLUNAR AURORAっぽい。

こちらの方がストレートなプリミティブブラックで、前述のバンドと音楽性自体はかなり異なるんですが…それらバンドの「VVorld VVithout End」や「Andacht」などの名盤群と相通じるような、日常から切り離されたカルトな空間を感じさせてくれるんですよね。そこがまさしく私のツボだったり。正直この素晴らしさで500枚限定は惜しすぎます。興味がある方は今の内に確保しておく事を強くお勧め。


ODZ MANOUK - Odz Manouk ★★★ (2012-11-05 19:11:15)

2010年発表のデモ音源に、TUKAARIAとのスプリット音源を付け、リマスターを施し2012年にProfound Loreから再発された音源集。500枚限定、トールケース/デジパック仕様。

このバンドも、基本は2ビート疾走に紙ヤスリのようなザラついた音質のリフ、トレモロリフによる邪悪メロディを絡めたパートの多い、如何にもプリミティブブラックという感じの作風ですが…同時期にProfound Loreより音源をリリースし、スプリットの相手でもある同郷のTUKAARIA同様、ジャンルのテンプレを踏襲するだけでない、一歩踏み込んだ深さのある音を出してますね。

特にメロディ面においては、陰鬱さはTUKAARIA以上かもしれません。今正に蠱毒が作られんとしているような、毒々しいメロディであったり、不協的な気味悪さと神秘性を同時に感じさせるものだったり、オカルティックで本能的な嫌悪感・恐怖感を煽るようなトレモロリフ多め。時に宇宙的なSEを混ぜたりなどの工夫も相俟って、凡百のバンドには作りえないグロテスクな感触を与える音に。

ただし、ひたすら暗黒・オカルト趣味に彩られた作品ではあるんですが…一部ではギターソロにメロウなベースラインを絡ませたり、意外にメロディアスな側面もあるのも特徴ですね。ヴォーカルも曲によって喉痛めそうな絶叫だったり、腸を吐き出しそうなドスの効いた声を出したり、かなり感触が違いますが…レコーディング時期は2005年から2011年に及ぶらしく、そういった制作スパンの長さがパフォーマンス・フレーズ等のバリエーションに繋がっているのかも。

全編通じて日常ではまず体験できないような、濃密に満ちた邪気を感じさせてくれる作品。プリミティブブラックの粗い音質が受け入れられる暗黒音楽好きなら、まず買って損はないのではないでしょうか。


TODESKULT - APATHY ★★ (2012-11-03 22:40:46)

2009年発表の2nd。

ドイツ産の鬱ブラック…という事ですが、SILNCERの悲痛さと、フューネラルブラックの陰鬱さを掛け合わせたような、正にこのサブジャンルの真ん中…といった感じの音を出してますね。闇が這い出してくるようなスローテンポに、時折暗いにも程があるトレモロを絡めて進行する作風で、妙にマニアックで自己満足的な部分もなく、しっかり聴き手に陰鬱さを伝えてくれる音。

特徴的なのがヴォーカルで、この手には珍しくないSILENCER系の裏声絶叫なんですが…ここまでSILENCERっぽいのは逆にレアかも。咳き込んだりはしませんが、直立不動では出せなそうなキチ絶叫っぷりがそっくり。この手のバンドって感情表現をやりすぎてて逆に滑稽だったり情けなく聴こえたりする事もありますが、このヴォーカルは丁度良く悲痛さを伝える事ができてるように思います。

ただまあ、ジャンルから逸脱するような特別さがある訳ではないので、アピール出来るのは鬱ブラック好き限定でしょうね。HYPOTHERMIAやチェコのTRIST辺りのバンドを一通り聴いて、もっとこのジャンルに踏み込みたいと思った人にはお勧め。


MGLA - With Hearts Toward None ★★★ (2012-11-01 22:33:07)

2012年発表の2nd。

これはヤバい!!このバンドって、今までは「知る人ぞ知る」くらいの知名度のバンドだったという認識なんですが、この作品を以ってジャンルの代表格のバンドと肩を並べるくらい、魅力的なバンドに成り上がったのではないでしょうか…ほんと素晴らしいアルバムですよ、これ。

作風的には、今までの集大成という感じで、前作「Groza」で見せた、音質を太くすることでWATAINやCRAFT辺りに通じる、どす黒い邪悪さも保ちつつ、初期作品のメロウなトレモロも再び多く取り入れ、より聴き手の耳を惹く力をアップさせたような作風。ヴォーカルもドスの効いたがなりで、威厳すら漂わせる存在感を放っており、非常にかっこいい。

プリミティブブラック的な執拗な反復で聴き手をトランス状態に導きつつ、時にファストブラック以上の怒涛の狂った疾走を、時に激メロウかつ邪悪の哲学を脳髄に叩き込むようなトレモロを聴かせる展開も、カルト風味を醸し出しつつドラマティック。メロウなトレモロを用いていない部分でも、リフの歪め方が巧いせいで、辺りの情景が焦土に変わっていくような荒涼感を覚えるほど。

最早WATAINやOFERMODが目指した、ダイレクトな暗黒性を引き継ぎつつ、プリミティブブラックの手法による催眠性も同化させた、モンスター的な作品と言っても過言ではないのでは。リフの反復で聴き手をトランスさせ、理性の抵抗を奪ったところでサタニズムを説く、非常に危険なアルバム…マジでそんな風に思えてきます。しかしこれだけの作品を出したとなると…MGLAが皆に見つかってしまう(笑)。


CARNARIUM - Constelaciones de Requiems ★★ (2012-11-01 22:29:55)

2002年発表の1st。
これは聴きやすいシンフォブラックですね。

タイプとしては、刻みリフを多用し、メタリックに聴かせるメロデスちっくなバンドサウンドに、ハープシコードやストリングスの音色を用いたキーボード、声楽的な歌い回しの女性クリーンヴォーカルが乗り、上品で荘厳な世界観を演出するシンフォブラック。メロディそのものも、如何にもゴシック的な甘美さが感じられるもので、暗黒耽美趣味を分かりやすく伝える、ある意味キャッチーな作風。

丁度「Midian」期のCRADLE OF FILTHが、「Her Ghost in the Fog」等で一部取り入れていた女性ソプラノを全編に取り入れ、より聴きやすくキャッチネスを重視した作風というと近いものがあるように思います。但し、音作りやアレンジにはCOFと比べると幾分…というか大分チープな部分もあり、まだマニア向けといった感じを脱し切れていない感は否めませんが。

と言ってもメロディは上質ですし、シンフォブラック好きで暗黒耽美趣味な作風の中で存在感のある女性ヴォーカルが登場するスタイルに惹かれた人ならば、ある程度満足は行くのではないかと。


PROFESSOR FATE - The Inferno ★★★ (2012-10-29 20:45:06)

2007年発表の1st。
「Limbo」ではGarm氏がヴォーカルでゲスト参加。

ANAAL NATHRAKHのメンバーによるプロジェクトとして有名ですが、あれだけブチ切れたエクストリームメタルを演っているアーティストの作品としては意外なことに、非バンドサウンドのダークウェーブ。打ち込みのリズムにキーボードによるクラシカルなメロディや妖しいクリーンヴォーカルが乗り進行していく作風で、ヘヴィなギターリフなどは当然無いものの、シンセを重ねてあるため音圧に物足りなさはないですね。

本隊でも非常にど派手なサウンドを展開するIrrumator氏ですが…こちらのプロジェクトでも、ダンテの「神曲」をテキストに用いていたり、シンセメロもクラシカルで大仰であったり、やはり世界観は大袈裟なのが良いですね。全編を通じて諧謔心に溢れたラスボスが玉座から見下ろしているような、ケレン味溢れるムードがあるのが素晴らしい。エクストリームメタルのミュージシャンがこういう打ち込み音楽のサイドプロジェクトを演るのは珍しくないですが、その中でも分かりやすい、聴き手に世界観を伝える力の強い音だと思う。

ちなみにGarm氏が参加した「Limbo」ですが…これがダークウェーブ版HEAD CONTROL SYMSTEMといった感じで、彼のトリッキーでセクシーなヴォーカル炸裂しまくりで、彼の歌声が好きなら悶絶確定のキラーになってますので、ULVERファンで未聴の方がいましたら是非こちらも聴いておくようお勧めします。


PROFESSOR FATE ★★ (2012-10-29 20:44:32)

ANAAL NATHRAKHのIrrumator氏によるダークウェーブ。


JUNO BLOODLUST - THE LORD OF OBSESSION ★★★ (2012-10-28 22:21:25)

2012年発表の1st。

国産のシンフォニック・ブラックで凄いバンドが出てきた…と、噂はかねがね聴いてましたけど…これは想像以上に凄いですね…。ゴシック的な耽美さやドラマティックでクラシカルなメロディを好む方ならマストバイな逸品で、同じ日本人である事を誇りたくなるような素晴らしい仕上がりの作品です。

路線は、オルガンやストリングス、ピアノ等の音色を用いた劇的なキーボード・アレンジが持ち味のシンフォブラックですが…このメロディが本当に素晴らしい。CRADLE OF FILTHの「Midian」や「Dusk and her Embrace」アルバムを思い起こすような、クラシカルで陶酔的な美を感じさせるメロディですが…ASRIELや六弦アリスなど、同人シンフォ系のグループを思わず想起してしまったくらい、そのメロディの使い方が派手で分かりやすいのが特徴。このキャッチーなまでの派手さは日本人ならではと言えるでしょう。

普通、ここまでキーボードアレンジを派手にしてしまうと、ギターは一歩引いたアレンジにしてしまいがちですが…このバンドは全くそんな事には頓着しません。むしろキーボード入れなくても十分メロディアスなんじゃないか…というくらい、フックに満ちたメロディに溢れてます。トレモロ含有率高めながら、それのみに頼ることのない起伏ある、ドラマ性たっぷりのアレンジが本当に素晴らしい。ヴォーカルも一本調子ではなく、もがくように叫んだり、語尾を呻き気味にしてみたり、アレンジの劇的さに見合った感情の込め方で、かなりかっこいいです。

人それぞれ好みがあるので、安直にCRADLE OF FILTHみたいなジャンルでも最も有名なバンドを持ち出してきて、それを超えた…なんて事は言えませんが、派手さや分かりやすさ、取っ付きやすさに於いては個人的にはCOF以上だと思う。美しいメロディが派手に炸裂する様を聴くと、つい恍惚となってしまうようなメロディ重視派メタラーならば必聴盤です。


TERDOR - AXIS PANZERZUG ANNO NOVEMBER 1942 (2012-10-28 22:18:50)

2008年発表の1st。

メロウなだけでなく、暗さや悲哀といった感情を含んだメロディと、焼け付くようなノイジーなリフが、ブラックメタルらしい好戦的で荒々しい演奏に乗り、戦場の殺伐とした空気感だったり、荒廃した焦土の荒涼感を感じさせるブラックメタル。楽曲やメロディ自体のセンスは悪くなく、特に理性の箍が外れリミッター解除モードで絶叫を繰り返すヴォーカルなんか実にかっこいいと思えます。しかし…

この音作りはなんとも惜しいですね…まずイントロの、SEが終わり際にぶつ切りになる、トラック分けをミスったようなオープニングで早くもテンションが急速冷却。本編もプリブラのような聴きづらい音ではないにしても、音割れのようなノイズが入ったり今にも消え入りそうな弱々しさになったり、後半の楽曲だけ音量大きめだったり、ある意味プリブラより性質悪い音。この辺りまともにしてくれれば、普通に良作なんですけどね…。

という訳で、個人的な評価はまあ並くらいですね。雰囲気のあるジャケも、よく見ると裏も表も同じアートワークを使っているし、低予算で作られたアルバムなのかも。


MOREDHEL - Satanik Endsieg ★★ (2012-10-28 09:53:08)

2010年発表の1st。
NARGAROTHのKanwulfがレコーディング・ミックス等を担当。

もうジャケからして如何にもプリブラという感じですが、音の方もジャケの印象そのまんまですね。オールドスクールなリフを交えた、プリブラとしてはある程度展開を設けた作風ですが、RAWな音質で荒々しく聴かせるブラックである事に終始ブレのない音。殆ど音が割れているようにしか聴こえないヴォーカルの絶叫もかっこいい。プリブラ期のNARGAROTHともかなり近い音。

典型的なプリミティブブラックではありますが、トレモロやアルペジオに込められたメロディは、フレンチブラック並にネガティビティを撒き散らすようなものであるのが特徴ですね。フレンチブラックのような耽美さや病的さは薄く、ひたすらに聴き手の気力を奪っていくような陰鬱さ。リズム的にはノリの良い部分もあったりしますが、メロディの方は聴いてるだけで筋力が麻痺して衰えていきそう。

オールドスクールなノリと、ネガティブメロウなメロディセンスが両立された、プリミティブブラックとしてはなかなかの良盤。この手が好きであればまあ買って損はしないのでは。


KATHAARSYS ★★ (2012-10-28 09:51:19)

スペイン産プログレブラック。
以前Aboriorth氏が在籍していた事もあるバンド。


KATHAARSYS - Anonymous Ballad ★★★ (2012-10-28 09:50:20)

2009年発表の3rd。

スペインのブラックという以外、何の予備知識もなく聴いたので最初の出音には結構驚きましたね…Vintersorg氏やGarm氏を思わせる、男声美声クリーンによるオープニング。この美声クリーンや、ギターによる暗い森を思わせる、ゴシック的なメロディを絡めて情緒たっぷりに展開していくブラックで、ゴシック色強い頃のOPETHやWOODS OF YPRES辺りともそう遠くない音。マイルドな美声クリーン以外に、低音グロウルと絶叫を使い分けるヴォーカルもなかなかの巧者。

上品で暗い美しさを伴うメロディに場を支配させつつも、そこにブラック特有の荒々しい音色のリフを絡めてみせたり、トレモロリフを狂おしく掻き鳴らしたり、上記バンドと比較するとどこか狂気的で、カルトな感性も垣間見せる展開も多いのが特徴。ただし、それによってメロディの耽美さが更に強調されている辺り、かなりのセンスの良さを感じますね。どこか破滅に向かっているような雰囲気のある音だと思う。

実は投げ売りされてたのをたまたまサルベージしてきたんですが、かなりの良盤でびっくり。ドラマティックで美しい、メロディアスなブラックが好みであればフルプライスで購入しても損をしたと思うことはないのでは。


THE INIQUITY DESCENT - THE HUMAN APHERESIS ★★★ (2012-10-26 12:24:44)

2012年発表の1st。
CDケース側面の「The Human Apharesis」は誤植っぽいです。
FINNTROLLの現ヴォーカリストが絡むアヴァンギャルド・ブラック…という触れ込みで購入しましたが…アヴァンギャルドという言葉から連想されるような難解さは殆どなく、小気味良いかっこよさと根深い邪悪さが同居した、なかなか独特な作品ですね。

近年のブラックにはロックのヴァイブを取り入れてダイナミックさを演出するバンドが多いですが、このバンドもリズムにロック要素を取り入れ、骨太な展開で聴かせてくれますね。WATAIN系の、ブラック特有のドスの効いた感じと、ハードコアやスラッシュのキレの良さを併せ持ったような、ヴォーカルのがなり声も音の太さと相俟って、実に邪悪に響いてます。

但しリフの方は割と個性的で、ブラック特有のトレモロリフは余り使わず、音圧の高い摺り込むようなリフが中心で、それが前述のダイナミックなリズムと合わさると押し潰されそうな威圧感すら感じます。そこに練り込まれたメロディも、耳孔に毒の油を注いで洗礼を施すような、薄気味悪さ漂うもので、そうした雰囲気作りはやっぱりアヴァンブラックだな…と思わせたりも。

近年のSATYRICONや、ORCUSTUS、DEMONAZ、KHOLDなど、ノルウェー産の大物ブラックのロックやハードコア要素の強いバンドが好きな方にお勧め。近年のDARKTHRONE辺りと比べると、全然ブラック色強めで聴きやすい音を出してると思います。WATAINをロック寄りにした感じというと近いかも。


THIRST - BLACKLIGHT ★★★ (2012-10-26 12:20:50)

2008年発表の3rd。
90年代初頭から活動するバンドで、この時点で15年以上のキャリアがあるとか。

音としては…如何にもデスメタル大国のポーランドらしい、低音をしっかり効かせた暴虐な展開を軸に、メロディックブラックのメロウなメロディ、アトモスフェリックなキーボードによる神秘性を取り入れた、美味しい所を上手く取り入れたようなスタイルで、ブラスト畳み掛けのブルータリティと長めのギターソロも含むメロディアスな作りを上手く両立させた、ドラマティックなサウンド。

ヴォーカルは如何にもブラックといった風情の高音絶叫で、これもキレ良くかっこいい。まあ取り入れている要素がどれもエクストリームメタル・ブラックメタルに置いて常套という感じなので、まあ格好悪くなる事はまずないんですが…このバンドは取り入れ方、消化の仕方としてはかなり巧みな方だと思う。特にダークさを伴うメロウなメロディが、ブラックメタルらしくてかなりツボ。

作風的にちょっと安牌っぽい感じはしてしまいますが、安心して聴ける作品だと思う。やっぱりブラストとトレモロの組み合わせは王道かつ魅力的ですよ。


QUINTA ESSENTIA - Archetypal Transformation ★★★ (2012-10-22 21:54:34)

2008年発表の2nd。

アメリカ産のメロディック・ブラックという事ですが…最初聴いたとき、余り突出した部分が無いように感じられ、ぶっちゃけ一度は手放してしまったくらいなんですが…なんとなく気になって買い戻し、聴き返してみたら意外に嵌まってしまいました。メロディアスさ・ドラマティックさではメロブラでも上位に食い込める良盤ですよ、これは。

まず特徴的なのが、メロディアスなパートが間断なく続く楽曲構成。ブラック特有のトレモロリフであったり、メロデス以上に長尺のギターソロであったり、メロディの流れ自体がそのまま楽曲の展開とイコールであるような曲の作り方で、ベースもかなりメロウ。音質が刺々しくなく、重過ぎないのもメロディアスさを強調する結果となっていますね。

但し、メロディそれ自体はブラックに特有の寒々しさや邪悪さはやや薄めで、以前聴いたときはそこにインパクト不足を感じてしまった訳なんですが…良く聴くと、ただメロいだけでなく、神秘的で深遠な感触もあり、部分的にどメロウなパートなどもあって、決して魅力に欠ける訳ではないんですよね。後期EMPERORを邪悪さ薄めてメロデス化したような深みも、ちょっとだけ感じられたり。

ただ、時々冗長な展開もあり、もう少しメロブラとしてのキャッチーな部分が欲しかったのと、男性クリーンヴォーカルはもっと頑張って欲しかった、というのはありますね…。まあその二点を差し引いても、良質なメロブラであることに変わりはないんですが。メロくてプログレッシブな展開のブラックが好きな方にお勧め。


REVERENCE - The Asthenic Ascension ★★★ (2012-10-19 00:08:00)

2012年発表の4th。
前々作をAvantgardeから、前作をOsmoseからリリースし、今作はCandlelightからのリリースと、名門レーベルを転々としているだけあって、かなりハイクオリティなインダストリアル・ブラックを演ってますね。

直接的にインダストリアルノイズなどを曲に絡めてくる事は少なく、アトモスフェリックなキーボードや無機的な質感を持ったリフなどにより、破滅の差し迫ったようなムードを演出している作風で、タイプとしては「Generator」期のABORYMに近いと言えるかもしれません。ブラックって演奏や音質に荒々しさを残しておく事が多いですが、この作品は生臭さがほぼ排除され、無機質な耳触りを持った仕上がりの音作りになってますね。その音作りが、生命反応のないような破滅感を更に高めてます。

この作品も聴いていると、ABORYM以外にも他のバンドが色々浮かんで来るんですが…その悉くが私のツボを突いてるバンドなんですよね。例えば、不協的なリフや不穏なアルペジオを駆使した、病的なムード作りは同郷のBLUT AUS NORDの近作を、時折リフに練り込まれる殺伐としたメロディはBlasphemer在籍時のMAYHEMを思わせる部分も。アルバム全体から言えばごく一部に過ぎないパートですが、LUNAR AURORAを思わせる神秘的トレモロが出てきたときは悶絶しましたね…。

先人の影響をそのまま取り込んだだけという訳ではなく、しっかり自分の持つ世界観に反映させられているのが素晴らしいです。ダークで破滅的なメタルが好きな方、特にBLUT AUS NORDの「MoRT」アルバムについて、雰囲気は好きだけどもう少しメタリックさや展開がある方が好みだと思った方なんかはどツボなのでは。


NAER MATARON - ΖΗΤΩ Ο ΘΑΝΑΤΟΣ ★★★ (2012-10-15 22:18:02)

2012年発表の6th。
前作から大幅なメンバーチェンジがあり、Vicotnik氏やNordvargr氏も抜けてしまった訳ですが…その影響なのか、音楽性も前作とはかなり異なる路線になってますね。

端的に言ってしまうと…まさかのデスメタル化。
ドラムやギターも低音が効いた、ドスの効いたプロダクションに変化、ファストパートは音圧に任せて畳み掛けるような、ミドルパートは重苦しさを感じさせるような、直接的な攻撃性を強く感じさせるような音で前作のメロブラな作風が嘘のよう。ヴォーカルも低音のグロウルに徹してますし、ちょっとしたキメの付け方も完全にデス化してしまってます。

但し、トレモロを前に出したメロディアスなパートもある程度残しており、そういうパートでは前作に通じる陰気ながら印象に残るメロディをしっかり聴かせてくれるのは嬉しい所ですね。そもそも、前作にもリフの圧力で押すパートは確かにあったし、低音グロウルもメインヴォーカルの陰で仕事してたりしたので、その辺りを拡大解釈したら今作の作風に辿り着くことは考えられるんですよね。ただ、耳当たりがかなり異なる音なので、一聴して戸惑いを覚えたのは事実ですが…。

と言ってもエクストリームメタルとしての質はむしろ上がった感じで、BEHEMOTHやHATE辺りのブルータリティにこのバンド特有の陰湿メロウさが合わさった作風は、これはこれで非常に魅力的。AZARATH、BLACK FLAME、HELL-BORN、MOON、RAVEN WOODSなどの、デス寄りブラックが好みであれば聴いておいて損はないかと。個人的にはこの手の音では陰湿さがある今作はかなり好み。逆に今作を攻撃性が直接的過ぎてムードが薄いと感じる方は是非前作を。


LUPUS NOCTURNUS - Suicidal Thoughts Pt.Ⅰ ★★ (2012-10-15 22:15:32)

2008年発表の1st。
鬱ブラックの総本山Self Mutilation Serviceからのリリース。

メキシコの鬱ブラックという時点でなにやら期待してしまいますが…メタルに関して過激なものを好むお国柄が反映されているのか、分かり易過ぎるくらい分かり易く鬱ブラックしてる音ですね。スローテンポを基調にメロウなリフでひたすら責め苛むような作風は、ほぼ鬱ブラックのテンプレ通りとも言える音で、ジャンル自体が好きであればすぐにでも没入でき、そうでない人には無用の長物という、ある意味はっきりした音。

何気に鬱ブラックとしてはかなり優秀で、リフは陰鬱なだけでなく、どこかエモーショナルさも感じさせるもので、それが逆に生々しい絶望感を感じさせてくれたり、展開もミニマルさや酩酊感・没入感を壊さない程度に付けられていたり、マニアックになり過ぎない作りが良いと思う。正直これ以上メロウさや展開を排されると退屈に聴こえかねないんですが、このバンドはそこまで自己満足的にしないのが良いですね。

ただ、SILENCERの弱々しい部分を抜き出した感じというか、志村けんが拷問されているようなヴォーカルは、悲痛通り越してちょっと滑稽に聴こえてしまうんですよね…ぶっちゃけヴォーカルがBURZUMクラスに魅力的だったら、個人的にはもっと入り込めた作品だと思うんですけど。