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GOATFUNERAL - Luzifer Spricht: 10 Years in the Name of the Goat ★★ (2017-09-18 04:51:15)

2016年発表のコンピレーション盤。
1stアルバムの「Bastion Lucifer」と、各種スプリット音源を収録しており、バンドがこれまでに出した楽曲を網羅できる作品。

幾つかの作品が本国で発禁になっていることでも有名なEISREGENのメンバーが関わっているバンドのようですが…露悪趣味的な部分は確かに共通していますが、様々な音楽的要素を混合し知的な展開も見せるEISREGENに対し、こちらはオールドスクールなブラックメタルを直接に聴かせる音。ただし音に「コシ」「味」があるような点は、EISREGEN譲りとも言えるでしょうか。

EISREGENと比べるとよりダイレクトな俗悪さを表現しており、気合一発みたいな作風ではありますが、プリミティブ勢に通じる野蛮さの中にもどこか知性が感じられてしまうのが特徴でしょうか。聴かせ所をしっかり設けた丁寧な展開だったり、キーボードやSEを用いたオカルティックなムード作りだったり…実は作り込んでいそうな感じですね。

ただこの作品、「Goat Worship」なカルト性・オカルト性はかなり強く感じられるものの、「Funeral」っぽさは余り感じられないような…?興味がある方はその辺りを踏まえて手を出した方がいいかも。


DROUGHT - Rudra Bhakti ★★ (2017-09-17 12:30:41)

2016年発表のEP。
おそらくバンドとしては初の音源かつ、正体を明かしていないバンドながら、Avangarde Musicからのリリースという快挙。

作品タイトルや曲名からはヒンドゥー教をテーマにしていることが伺えますが、あからさまに中近東系のメロディを取り入れたりなどは殆どなく、深遠なダークアンビエントと、ノイジーなリフの中で蠢くようなバンドサウンドを見せつける、儀式的なムードの漂うブラックメタル。

アルバムタイトルは「干ばつ」の意味ですが、確かにメロディには北欧的な土着性や寒々しさというよりは、乾いた狂気のようなものが感じられる気がします。それが前述したような深遠さと合わさると、プリミティブながらどこかサイケデリックな感触も覚えます。雰囲気的な面では、DEATHSPELL OMEGAの「Drought」アルバムから多少なりとも影響を受けているのかな…という感じも。まあ正体を明かさずDSOのアルバムタイトルをバンド名にしてるという時点で影響下にある可能性はかなり高いですが。

そういう訳で、儀式的なブラックが好きならばお勧めできる作品。ASOFYやTHAW辺りが行ける方なら試してみてもいいかも。


SOULEMISSION - Tales of Inevitable Death ★★★ (2017-08-25 12:53:17)

2016年発表の1st。
「Sea of Emptiness」でSHININGのNiklas Kvarforthがゲスト参加。

…SHININGの彼が参加してる時点で何となく予想はつきますが、トレモロを多用したメロディックな曲作りとは裏腹に、メロディ自体はどこか病的で前衛的な雰囲気のある、鬱要素強めなメロブラ。要所でアトモスフェリックなキーを配し、更に鬱要素を深めていくスタイルで、ヴォーカルも往年のManiac氏のパフォーマンスを髣髴とさせる、粘着質な喚き声で曲に負けじと病気振りを発揮。

ブラストによる疾走を多用し、メタリックなギターソロを入れるなど、メリハリのついた展開などはエクストリームメタル然としていますが…ドラムのやや軽めな音、ノイジーなギターの音色など、プロダクションは若干癖があり、デスメタルなどの持つゴリゴリとした硬質さは志向されていない感じ。この音作りや、楽曲それ自体、ヴォーカルの狂気などが合わさり、まるで普段は自傷を繰り返している精神を病んだ人間が、突然攻撃性を外部に向けだして斧を持って襲い掛かってきた…みたいな、ヤバい雰囲気に満ちてますね…。

楽曲のクオリティの高さと、鬱屈したカルトさが上手く合わさった作品。メジャー志向でもマニア向けでもないニッチな感じはありますが、個人的にはかなり好きな部類の音です。


NÉVOA - Re Un ★★★ (2017-08-20 12:09:28)

2016年発表の2nd。

ポルトガル産のアトモスフェリックブラック、2014年結成の比較的新しめのバンド…というくらいの前情報しかなかったんですが、これは相当良い作品ですよ…。近年のDEATHSPELL OMEGAがスピードや暴虐性でなく、ドゥーミーなミディアムと実験性を重視した感じというか、VIRUSが印象深い前衛性そのままに、ブラックユーモア的な部分を排して暗黒方面により深く傾倒した感じというか…その辺りの一流のバンドを比較対象にしたいくらい、記憶に刻む力のある作品。流石名門Avangarde Musicから出てるだけの事はあります…。

ブラックメタルらしい不穏なリフでダークな情景を描いていくのが基本ではありますが、バンドサウンドやSE的な部分のアイデアの豊富さ、音作りの丁寧さが凄く特徴的。リフ捌きを軸としたバンドアンサンブルの前衛性なんかはDEATHSPELL OMEGA辺りと通じるものがあり、ブラックのテンプレ的な音から積極的に逸脱しようとする意気込みが感じられる(しかもその結果印象を深く刻むことに成功している)し、導入部からして弦の擦れる音が儀式的な雰囲気を感じさせるなど、音作りも執念を感じるほど拘ってると思う。アトモス系でも稀有な、「超常的な何かが宿っている音」ではないでしょうか。

…ただ、一つ文句を付けるとしたなら、ブックレットがギュウギュウに詰まっていて取り出しづらい事でしょうか…無理矢理出そうとしたらデジパック歪んだし…。デジタルメインのリリースっぽいから仕方ないんでしょうか。ともかく、DEATHSPELL OMEGAやVIRUS、後期ALTAR OF PLAGUES、脱プリブラ期のNACHTMYSTIUMなど、前衛性と暗黒な雰囲気を兼ね備えたブラックが好きであれば聴いて損はないと思います。素晴らしいです。


KING (AUSTRALIA) - Reclaim the Darkness ★★★ (2017-08-08 12:34:52)

2016年発表の1st。
結構新しいアルバムなのに、未開封の新品が半額くらいで売ってたのでサルベージしましたが、これがなかなかの力作で素晴らしいです。

カテゴリとしてはメロディック・ブラックになるんでしょうが…ブラックにありがちなマニアックさ・アングラさは殆どなく、まるで正統派メタルのドラマティックさをそのままに、音の分厚さや攻撃性など、エクストリームメタルの激烈さでビルドアップしたかのような作風で、メロデスにも通じる音ですね。一作目にしていつ国内盤がリリースされてもおかしくない、地に足の着いたハイクオリティさ。

ただしハイクオリティだからといって無難な訳ではなく、ヴォーカルにはブラックメタル由来の獰猛さが強く感じられるし、なにより聴かせるべきところではしっかりと聴かせてくれる、叙情的なメロディがかなり良いんですよね。ちょっとヴァイキング風味入っている所がまたたまらないです。このメロディのお陰で、かなり音圧のある音ながらメリハリをもって聴かせることに成功している印象ですね。

しかし、かなり質の高い作品なのになぜ投げ売られていたのか…質の高さゆえに仕入れ過ぎたとかでしょうか(笑)。確かに、ただ質が高くてもなにか話題になるような要素がないと爆発的には売れなそうではありますからね…。


KING (AUSTRALIA) ★★ (2017-08-08 12:34:06)

オーストラリア産メロディックブラック/デスメタルバンド。
しかし検索で見つけてもらう気皆無なバンド名ですね…(笑)


DEMONIAC (GERMANY) - Malleus Christianitatis ★★ (2017-07-31 11:38:51)

2016年発表の1st。
前身の2バンドを含めると80年代末から活動しているバンドで、90年代半ばにメンバーがメンバーがMOONBLOODを始めるにあたって一度解散したものの、2013年に再結成して出来たのがこの作品なのだとか。

…そんな経歴からも分かる通り、一本筋の通ったプリミティブブラックを展開。一応神秘的なキーボードを被せる場面も一部あるものの、基本はジギジギした音色が耳を劈くリフ、リバーブの掛かった中に殺意を込めてがなるヴォーカル、オールドスクールな疾走…とプリブラの王道を行くような音。アンダーグラウンドの様式を遵守して今に伝える、ある意味では愛想のなさが素晴らしいですね。

良くも悪くもアングラなプリブラの真ん中を突いてくる音ですので、MOONBLOODのネームバリューで注目してしまうくらいのブラック好きには確実に刺さるかと。基本この手が好きな人以外に向けて発信はしていないだろう作風です。


DEFUNTOS - A Eterna Dança da Morte ★★ (2017-07-31 11:34:48)

2016年発表の7th。

ポルトガル産のディプレッシブブラック/ドゥームとのことですが、鬱系のブラックでドゥーム要素を取り入れる場合、フューネラルドゥームの様式を採用することが多いように感じますが、このバンドは躍動感やダイナミズムのある、ミディアムテンポ中心のドゥームメタルを採用。ただしブラックの暗黒性に染まり切ってる音なので、覇気よりは邪悪なものが脈動する様子を感じられるムードが強い。

フィンランドのBARATHRUMなんかとも若干共通するように感じますが、BARATHRUMはまだ音の向こう側のバンドメンバーと「熱」を共有できそうな感じでしたが、こちらはオブスキュアかつ不穏な音作りになっており、より得体の知れなさやそこから生じる不気味さの強い、闇深い音。肉体的なタフさではなく、精神世界的な部分に踏み込んでくる作風…でしょうか。

イントロの雰囲気からすると躍動感もあるパートを含む音なのは若干意外でしたが、これはこれで悪くないですね。鬱ブラックのテンプレ的ではなく、鬱な世界観を描いてくれる良質な作品。


TAMERLAN EMPIRE - Isfahan's Fall ★★ (2017-07-31 11:30:18)

2015年にデジタルで発表されたデモのCD版。
2016年に100枚限定でリリース。

特にシンフォ系やメロディック系にはクサメロ好きに刺さる音を出してるバンドが少なくないですが、このバンドもそんなシンフォニックブラックの一つですね。苛烈なリズムや凶悪なヴォーカルなど、エクストリームメタルとしての攻撃性は備えつつ、トレモロリフやピアノによって奏でられる、ちょっと中近東風味のメロディは味わい深く、かなり印象に残ります。

ただし、ノイジーなリフによって音圧を稼ぐ音像は、若干メジャーバンドと比べるとチープな印象も拭えないかも…。ただ、ドローンめいた音やパーカッションを用いて儀式的な雰囲気を醸し出している部分なんかは、独特のカルトさがあって悪くないです。中近東系のメロディともマッチしてますしね。

ちなみにデモ扱いながら演奏時間は36分と、やや短めのフルアルバム並にボリュームあり。私はCD版を買って、メタルアーカイブで情報を得たんですが、ジャケには「Tamerlan」としか書いていないので、もし店頭などで探す際は注意が必要かも。


GREY AURA - Waerachtighe Beschryvinghe Van Drie Seylagien, Ter Werelt Noyt Soo Vreemt Ghehoort ★★ (2017-07-31 11:26:15)

2014年発表の1st。
CD2枚組、変形デジパックに箔押しと装丁がかなり豪華で目を惹きます。

ポスト/アトモスフェリックブラックには都会主義だったり、空想の世界だったり色々な情景を描くバンドが多いですが、このバンドが描くのは雪山のような寒々しい光景で、ある意味ブラックメタルとしては王道なのかも。霜柱を踏み砕くようなノイジーなリフ、体温を下げるようなメロディ使いが直接的に聴き手を極寒の自然に置き去りにしたような感覚を味合わせる作品。

アトモスフェリックブラックって結構聴かせるバランスが難しくて、下手するとミニマルさやノイジーさが仇となって間延びしてしまいがちですが…このバンドは聴かせるべきフレーズも、全体的な展開もしっかりメリハリがついているように思います。ちなみにドイツ語なので何を言ってるのかは不明ですが、会話のSEが入っているので…なんだか遭難ものの映画を見ているような気持ちにもなります。

やたら豪華な装丁がハッタリに思えない好盤。COLDWORLDやAUTUMN'S DAWN辺りのバンドを好む方に。


REBIRTH OF NEFAST - Tabernaculum ★★★ (2017-06-04 18:37:35)

2017年発表の1st。

かつてブラックメタルでは有数のレーベル、End All Lifeから出したSLIDHRとのスプリットが好評を博したバンドが、約9年の時を経てついに1stフルをリリース…しかもレーベルはかのNorma Evangelium Diaboliということで、ブラック好きには大注目となっている一作ですが…これはかなりの力作です。

メタリックな硬質さではなく、視界を闇に閉ざすどす黒い靄を思わせる、禍々しい音圧に包み込まれるようなプロダクションと、不協的なメロディを多用し、不吉さや邪悪さを強く感じさせるリフ捌きにより、ブラックの中でも生え抜きの暗黒性の強い世界観を描き出すブラックメタル。暗黒な響きを伴うギターのレイヤーを重ねた、アンビエント的感性も感じられるパートにも凄みを感じます。

既存のバンドで例えるなら、DEATHSPELL OMEGAの不吉で不協的なメロディ使い、WATAINやFUNERAL MISTに通じる「ブラック」「メタル」の両方に対して通すスジ、LEVIATHANやNIGHTBRINGERの暗黒アトモスフェリックさを併せ持った、どす黒さ邪悪さの表現に持てるリソースの全てを叩き込んだような音…という感じでしょうか。禍々しさを極めたような音作りに持ってかれそうになります。

アンビエント的な感性を含む曲作りは多少は好みが分かれるかもしれませんが、ブラックメタルとしての宗教的な禍々しさの演出のクオリティは恐ろしく高いものがあります。「ダークである」ことに価値を感じている音楽ファンであれば、きっと酔い痴れる事の出来る音であると思います。


WHITE WARD - Futility Report ★★★ (2017-06-03 10:30:25)

2017年発表の1st。
所謂ポストブラックには悪魔崇拝や自然への回帰だけでなく、アーバン(都会的)な情景を描くバンドも出てきていましたが…ウクライナからその代表格といえる作品を作り上げたバンドが登場したようです。

路線としては、ノイジーな音像や苛烈な疾走、叙情性の高いトレモロリフといったブラックメタルの要素を巧みに使い、情景を描き出すポストブラックで、官能的な響きを帯びたサックスや、聴き手の情景への没我を誘うような打ち込みリズムなども取り入れて進行していくスタイルですが…音像に多大な影響を与えるサックスを、ポストロック的なパートだけでなく、ブラックメタル的なパートにも用いているのが特徴。ブラック要素とポスト要素を厳密に分けず、融合を図っているの(しかも、それが上手く行っている)は個人的に物凄く気に入った点ですね。

また、都会的情景の中に潜む病的さや空虚感、人間性の脆弱さなどを浮き彫りにするような音ではあるんですが、「軟弱さ」は殆ど感じられないのが良いんですよね。クオリティの高いプロダクション、ブラックメタルパートやヴォーカルの獰猛さなど、繊細な音作りをしていながら、芯のある音像になっているように思います。これも個人的な嗜好になってしまいますが、軽薄なクリーンヴォーカルや妙に間延びした展開など、「軟派さ」を感じるような部分は廃されているのも凄く好ましいです。

某ショップでは「ULVERのPerdition Cityアルバムのブラックメタル版」などという、すさまじい殺し文句が書かれていて…見事に絡め取られましたが、その言葉を信じて購入して大正解でした。ほんとこの手のアーバニズムをテーマとしたポストブラックとしては決定盤といってもいい作品だと思います。必聴!


CANTIQUE LÉPREUX - Cendres Célestes ★★★ (2017-06-03 10:27:22)

2016年発表の1st。

…カナダ・ケベック州出身のアトモスフェリック・ブラックで、Eisenwaldからのリリース…ということですが、ある意味国やレーベルの色が良く出ている音なんじゃないかな…と思います。同じアトモスフェリックブラックでも、例えばAvangarde辺りからリリースしてるバンドと比べると、耳を劈くノイジーさだったり、スラッシーで攻撃的なパートがあったり、よりメタルの衝動性やカルトさが強調されている音という感じ。

ただし、展開はドラマティックかつ練られている印象。時折見せる、和風ホラーにも通じるダークな響きと叙情性を帯びたトレモロリフは的確にこの手の音が好きな人のツボを突きに来るし、ともすれば金太郎飴になりがちなこのジャンルとしては上手く楽曲を差別化出来ているように思います。叙情性はあれど、なよなよした甘さは殆ど感じられず、結構辛口な耳当たり。…やはりケベック出身のバンドはどこか過激なイメージがありますね…。

ドラマ性、苛烈さ、叙情性などを兼ね備えた、申し分のないクオリティのアトモスフェリックブラック。叙情性とダークさ、両方求める方にお勧め。


LIFEBLOOD - Shattered Wishes ★★ (2017-05-21 11:17:24)

2015年発表の1st。

SUNGODDESSのメンバーが関与する鬱ブラック/ドゥーム。鬱ブラック然としたトレモロもありつつ、基本的にはミディアム~スローで引き摺るようなノイジーさのリフを中心に展開していくスタイル。何気にベースが音の中心になっていると言っても過言ではないくらいにメロディアスで、粘り気のある音で絡め取られる・引き込まれるような感覚を覚えさせつつ、粛々と進行していきます。

このほぼ全編ミッド~スローの展開が凄く雰囲気出ているんですよね…樹海とか山奥とかに、死を求めて一歩一歩踏み込んでいる感じがしてしまって…。メロディが無愛想だったり、展開がミニマルすぎたりしないのも、死を前にした主人公の人間的な感情が溢れ出しているかのようでグッと来てしまう…。ただ、息漏れの多いグロウルを使うヴォーカルだけはちょっと微妙かも。故意にそう歌ってるようにも聞こえますが、何か弱い感じに聞こえてしまいます…。

とはいえ鬱感情を体現したかのような作品なので、そういった音を求めるならば間違いなく期待に応えてくれる作品かと。日本的な湿ったムードがたまらないです。


MOON (AUSTRALIA) - Render of the Veils ★★★ (2017-05-21 11:12:34)

2015年発表の3rd。
同名のバンドがポーランドにもいますが、こちらはオーストラリア産。どちらもそれなりにジャンル内では名の通ったバンドだけにややこしいですよね…(笑)

ポーランド産のMOONは近年エクストリームメタル然とした実体的なヘヴィネスを身に付けてきましたが、こちらは正にカルトを絵に描いたような儀式的な音を出してますね。痛覚すら刺激するようなプリミティブなバンドサウンド、リバーブが掛かり人間性を失った絶叫、そしてそれらを包み込むアトモスフェリックなキーボードが溶け合い、密教的で密室的な音の世界が構築されてます。

この作品、凄く危ういけど面白いバランス感覚の上に成り立ってるように思うんですよね。モノクロのプリミティブさと、サイケデリックな感覚が入り混じっている独特のムードは色彩感覚すら破壊されそうだし、危険で刺々しい雰囲気と宗教的な恍惚感が上手く同居しているのも興味深い。同郷のSTRIBORG辺りに通じるサイケ感あると思いますが、個人的にはこちらの方が演出は上手く感じます。

バンドの音を聴いていることを一瞬忘れ、トランスの中に引き込まれそうになる感覚…意外とシンセを用いたプログレとか好きな人が聴いてもハマるかもしれません。そういう感覚がありつつ、邪悪さに主眼を置いてるバンドって貴重ですよね。


ASTRONOID - Air ★★★ (2017-05-10 13:36:16)

2016年発表の1st。

ポストブラック界隈で好評を得たVATTNET VISKARのメンバーが絡んでいたり、あるサイトでは日本語訳されたインタビューやレビューが掲載されたり、日本でもかなり注目度の高いバンドのようですが…これは面白いですね。ノイズ質を真ん中に据えつつ、トレモロで音像を彩ったり、ごく明瞭なメロディをリフに込めつつ疾走したり、儚く清浄な雰囲気は湛えつつも、それを様々な手法で表現していくスタイルのポストブラック。

ノイジーなリフと叙情トレモロの組み合わせ方など、一部ではプリブラ辺りがヒントになっているのでは…と思わせる部分もありますが、基本的に他のポストブラックと比較してもメタル離れした感性を持っている印象で、特にソフトな響きの声を重ね、スペイシーな雰囲気を演出するヴォーカルパートにそれが顕著。また、前述したようにメロディの明瞭さも特徴で、時には「儚げ」「エモーショナル」という枠を超えて、多幸感すら覚えてしまうほど。

関連バンドのVATTNET VISKARと比較してもメタルの攻撃性や暗黒性が感じられない音なので、最初はちょっと好みから外れてると思いはしたんですが…聴いてるうちにやり切っている感じがしてこれはこれで良いな…と思うようになりましたね。新世代のメタル…って感じがします。


NEKRARCHON - Gehinnam ★★★ (2017-05-10 13:33:07)

2016年発表の1st。

ギリシャ産のプリミティブブラック…との事ですが、基本はRawで地下臭いプロダクションに、禍々しさしか感じられないがなりや、瘴気漂うメロディのトレモロを組み合わせた、如何にもなプリブラという感じで、NGLAやPHLEGEINなどNorthern Heritage産のバンドとも通じる音を出してますね。プリブラとしてごく分かりやすい魅力が詰まった音だと思います。

ただ、所々にアトモスフェリックブラックに通じる、情景描写に重きを置いた感性を感じるパートもあるのが特徴になってますね。音像の歪ませ方を若干弄ることで視界が歪むような薄気味悪さを演出してみせたり、邪悪さとか暗黒だとかをより有機的に聴かせるような工夫が凝らされたパートも多いんですよね。何か得体の知れない、しかし禍々しいものが忍び寄ってくる…そんなムードに満ちた音です。

トレモロリフに込められたメロディ自体もごく分かりやすい暗黒趣味してますし、プリブラの中でもかなり精神に訴えかける力の強い作品ではないでしょうか。プリブラが好きならお勧め、そうでなければ非お勧めです。


KORGONTHURUS - Vuohen Siunaus ★★★ (2017-05-10 13:30:45)

2016年発表の2nd。
デジパックにも歌詞カードにもバンド名が普通のフォントで表記されている箇所が無くて…レビューを書こうとして「バンド名なんだったっけ…?」ってなりました(笑)。結局メタルアーカイブのTOTALSELFHATREDの関連バンドから辿って調べる羽目に…。

メンバーの半数以上がクオリティの高い鬱ブラックを聴かせてくれた、TOTALSELFHATREDのメンバーということで、ほぼ暗黒音楽としての質の高さは約束されたようなものだと思いますが…こちらでも変に奇を衒ったり脇道に反れる事なく、がっつりとミサンスロピックな雰囲気や邪悪さを追求したブラックメタルを演ってますね。

鬱や悲しみなどのマイナス感情が流れ込んでくるトレモロリフ、それを軸に据えたドラマティックな曲展開、抜けの良いドラムが支える薄っぺらくない音作りなど、クオリティの高いメロディック・ブラックという感じですが、ノイジーに耳を刺すリフの音色、ヴォーカルの血の涙を流していそうなブチ切れた絶叫など、プリブラ勢にも通じる人を寄せ付けない刺々しさも感じられる音。カルト性とクオリティを上手く両立させてるように思います。

という訳でブラックの鬱的・厭人的・攻撃的な部分が好きであれば買って損はない作品だと思いますが…バンド名がただでさえ分かりにくいので、どこかに見やすいフォントで表記しておいて欲しかったです(笑)


GRAVE DESECRATOR - Dust to Lust ★★★ (2017-05-10 13:26:55)

2016年発表の3rd。

ジャケに貼付されたシールで引き合いに出されてるバンドが、「BLASPHEMY」「BESTIAL WARLUST」「ARCHGOAT」等の時点で、ほぼどんな音か想像がついてしまいますよね(笑)。演奏が崩壊していたり極端にプロダクションが劣悪だったりということはなく、普通にエクストリームメタルとしてのクオリティを保った音ですが、ウォー/ベスチャルな感性もがっつり伴ったダーティなブラックメタルを展開。

まるで五寸釘を打ち付けるが如くRawなドラムの音色といい、初期BEHERITの吐き捨てならぬ吐き出し系のヴォーカルを再解釈したようなエグみ溢れるヴォーカルといい、耳に突き刺さってくる音の一つ一つに獣性が感じられるのが素晴らしい。鐘の音色を取り入れて儀式的なムードを醸し出してみせたり、どこか密教的な雰囲気を感じさせるパートがあるのもカルトな感じで良いんですよね。

大手レーベルのSeason of Mistと契約したことからも分かる質の高さと、ウォー/ベスチャルな感性によるカルト性が入り混じった、かなりの好盤。この系統としてはマニア以外にもお勧めできる作品だと思います。


AU CHAMP DES MORTS - Dans la joie ★★★ (2017-05-08 12:26:11)

2017年発表の1st。
バンド名は「死者たちの場」、アルバム名は「喜びの中」の意(多分)。

ANOREXIA NERVOSAの前進バンド結成時からのメンバー、Stephane氏の新バンドの初フルアルバムという事で、鳴り物入り的な注目を集めている一枚ですが…そういった予備知識のみで聴くと、まず第一音から予想を裏切られますよね。空間の中に揺蕩うような浮遊感ある音から、ノイジーなバンドサウンドへの移行…アノレクとは似ても似つかない、ポスト/アトモスフェリックブラックが展開されています。

ただ、ABIGAIL WILLIAMSの近作もそうなのですが、以前エクストリームメタルをがっつり演っていただけあって、他のポストブラックよりもバンドサウンド寄り(音像がノイズに寄り過ぎてない・展開がミニマル過ぎない)な感じで、メタルとしての分かりやすい聴き所をしっかり残している感じなんですよね。ジャケットから想像できるような、中世的で仄暗いメロディのセンスも凄く良いですし、聴きごたえはかなりある作品ではないでしょうか。

という訳で、まさかのアトモスフェリック化でしたが…同様にアノレク関連バンドのTHE CNKがインダストリアルな音だったことを考えても、ド派手で攻撃性の高いシンフォニックブラックはアノレクでやり尽くしたという事なのかもしれませんね。頽廃・耽美という部分に関してはアノレクとも共通するものがあると思いますので、その辺りのワードに惹かれる方も是非。


ABYSSIC - A Winter's Tale ★★★ (2017-05-08 12:20:51)

2016年発表の1st。

OLD MAN'S CHILDやGROMTH、SUSPERIAなど、メロディック/シンフォニックブラック絡みのメンバーによるバンドですが、シンフォブラックばりの大仰さのあるキーボードと、フューネラルドゥームの凌遅的絶望感をミックスさせたような、独自のエクストリームメタルを展開。通常の葬式系のモノクロームな世界観とは若干情景の異なる、色の付いた絶望を見せる音をCDの収録時間限界まで詰め込んだ作品。

基本的に頽廃的・破滅的な美しさのある情景を描くように進行しますが、時折大仰なキーのメロディ、獰猛なグロウル、圧殺リフが渾然一体となって襲い掛かってくるパートの迫力は凄まじいものが…。まるで何か悪しきものの封印が解かれて溢れ出したかのよう。一曲目なんかは、水音のSEと流れるようなストリングスによって、三途の川を思わせる情景を描き出していますが…突如として魂を喰らう化物が現れたような強烈な印象を残します。

シンフォニックブラックの感性を以って、フューネラルドゥームの絶望感を表現しようとすると、なるほどこういう作風になるのか…と、ある意味とても興味深く聴けた作品。もちろん興味深いだけに留まらず、しっかりと心地よく絶望に浸らせてくれます。


DARK HAUNTERS - To Persevere is Diabolical ★★★ (2017-04-18 00:11:49)

2016年発表の1st。
最初「DARK HUNTERS」だと思っていて、「(ゲームの)ヴァンパイアが元ネタかな?」と
思ってしまいました(笑)。

路線としては、メロデスにも通じるメロディックで高揚感あるリフに、大仰なキーボードで華麗に味付けをしたシンフォニックブラック。ギターワークなどはメロデスと比較してもかなりメロディアスですが、ブラック特有のネガティブでダークな雰囲気もあるのが良いですね。若干音質・音量がDIMMU BORGIRクラスと比較すると一歩譲るものの、ブラックの陰惨さにクラシカルな上品さをプラスした楽曲はかなりハイレベル。

このバンド、メロディの展開によるドラマ性の演出が物凄く上手いんですよね。例えば、インスト明け二曲目の「The Burning Eyes of Vengence」。この曲のブラックメタルらしい邪悪でメロウなトレモロから、メロデス的なクラシカルで優美なメロディに変化していくパートなんて、あまりに劇的で、あまりにクサくて…思わず悶絶してしまいました。…最近話題になったバンドで言うなら、HYPERION辺りをチェックしてる人はツボにハマる可能性大です。

…流石にメジャー級の音とまでは言えないものの、楽曲が良いのでかなりの良盤ではないかと思います。クサメタルの国イタリア…そこで王道のシンフォニックブラックを演ったらどうなるか、その見本みたいな音だと思います。


GRAVES AT SEA - The Curse That Is ★★ (2017-04-18 00:08:39)

2016年発表の1st。

音は一言で言えばブラッケンド・スラッジでしょうか。占める割合としてはスラッジ・ドゥームが8、ブラック要素が2くらいでスラッジの方がメインな感じですね。ただ重々しく引き摺るだけでなく、なにか異質な生命が脈打つかの如き動きのあるリフにより、ダイナミックかつグロテスクな音を演出していくスタイル。フューネラル系とはまた違った意味での拷問感ある音です。

メロディの志向としてもメロウさや絶望感よりも、乾いた感触が強く、ヴォーカルの絶叫とも相俟ってヒリついた雰囲気が演出されてますね。また、パートによってはかなりメロウでダークな優美さを感じさせるヴァイオリンがフィーチャーされているのも特徴で…パート自体はそれほど長くないものの、作品の中にあってインパクトを残し、メリハリを付ける展開として機能しているように思います。

ブラックの要素はやや薄めですが、殺伐とした雰囲気に身を浸したい時にはうってつけの作品。どちらかというとエクスペリメンタルかつ暗黒趣味強いメタルがお好きな方向けでしょうか。


WAR INSIDE - S.U.T.U.R.E ★★★ (2017-04-07 23:02:11)

2016年発表の2nd。

フランス産のいわゆるブラッケンド・デスとの事ですが…これはハイクオリティかつ、デス・ブラックの配分が結構ユニークで、魅力的な作品ですね。この手のバンドって、デス要素がブルデスの禍々しさ・強靭さを重視することが多い印象がありますが、このバンドはそれだけでなく、OBITUARY(の疾走部分)やMALEVOLENT CREATIONなど、スラッシーなオールドスクールデスに通じる切れ味も重視している感じがします。

そこにブラックメタルらしいメロウかつ毒のあるトレモロや、どす黒いメロディ使いなどが合わさり、より展開にメリハリが付けられており、聴いていて引き込まれる仕上がりに。ヴォーカルもオールドスクールデスを思わせる吐き捨てながら、どこかブラック的な狂気も感じさせる声で音にピッタリ。ちなみに、音作りも当然のようにメジャー級。クリアかつ暴虐性をしっかり伝えるヘヴィさを兼ね備えた、このジャンルとしての「良い音」出してます。

ジャケやアートワークからして何かスペシャルなものを聴かせてくれそうな雰囲気がありましたが、見事に期待に応えてくれた作品。デス・ブラックどちらも行ける方は是非。


KÖRGULL THE EXTERMINATOR - Reborn From the Ashes ★★★ (2017-04-07 22:58:34)

2015年発表の4th。

VOIVODの曲名からバンド名を取ってる事からも分かる通り、スラッシュ要素の強いブルータル/ウォーブラック。プロダクションも低音の聴いた厳つい感触を残しつつもかなり良好で、ブラスト中心のブルータルブラックと比較すると、より「俗悪」な印象。リフはスラッシーな刻みを多用しつつも変化に富んでおり、パートによって地獄のような苛烈さや、軽快さを伴う疾走感で聴かせたり、刻みにインテンスなメロディを練り込んだりなど、展開が一本調子にならないのも良いですね。

ブラックメタルらしいトレモロも時折使いますが…メロディの質的に硫酸で溶かされたよう…とか、悪魔が召喚されるかのよう…とか、悉く邪悪なメロディで正に「慈悲は無い」という感じ。ヴォーカルは結構癖が強く、ハイピッチの吐き捨て系でホイッスル音混じったりロングトーンにo段の音が混じり気味だったり、人間味のある感触がやはり「俗悪」な感じですね。音同様の熱気があって良いですが…実はこんな厳つい声なのに女性ヴォーカルだったりします。

エクストリームメタルとしてごく真っ当なクオリティの高さがあるので、ウォーブラックの中ではかなり聴きやすい部類だと思います(崩壊要素がないという意味で)。一方でアンダーグラウンドの熱気も楽しめる辺り、かなり優れた作品だと思います。


BLACK FUCKING CANCER - Black Fucking Cancer ★★★ (2017-04-05 13:22:25)

2016年発表の1st。

ショップでもネットでもKATHARSISの名盤3rdを髣髴とさせると評判だった作品。確かに、カオスと血腥さを演出するリフ捌き、整合性と荒々しさを備えた赤黒い音質など、例の作品に対する崇拝すら伝わってくるブラックですね。ただしこちらはヴォーカルが(パフォーマンスは狂気じみてるものの)よりリズムに寄り添っていたり、若干整った音で、カオティックなソロを入れるなどサタニックなデスメタルに通じる雰囲気も感じられます。

この作品の一番の売りは、やはりリフとリズムのアンサンブルでしょうか。前述したようにKATHARSISの「VVorldVVithoutEnd」的な、精神抉るような禍々しいカオスを演出するリフですが、そこにドラムががっつり絡んでくるのが特徴。その結果、何か邪悪な蠢いているような、脈動感ある音作りになっているように思います。…ちなみに、ルーン文字っぽいもので書かれた歌詞カードの表記も必見。凝っているのは分かるけど訳分からないです(笑)。

これはかなり素晴らしい作品だと思います。Osmoseらしいエクストリームメタルとしての質の高さと、KATHARSIS大好きなカルト嗜好が合わさって凄まじい事になってます。かなりお勧め。


ELDERBLOOD - Messiah ★★★ (2017-04-05 13:20:03)

2016年発表の2nd。

元NOKTURNAL MORTUMのメンバーによるシンフォニック・ブラックとの事ですが、メジャー級と言っても差し支えないくらい超クオリティな音出してますね。デスメタル的なヘヴィネスを備えたバンドサウンドは、それのみでも凄まじい存在感ですが、キーボードもなにか邪悪な存在の誕生を祝福しているような、禍々しさと壮麗さを備えたもので、引き算なアレンジなんかクソ喰らえなバランスが素晴らしい…やはりこのジャンルはやり過ぎてナンボだと思います。

音作りも巧みで、それぞれの音の輪郭がはっきりした、分離の良い音だからこそこの迫力があるんでしょうね。音の鳴る位置にもしっかり拘って作られている感じで、全方位から爆撃されて逃げ場がない感じの音。楽曲も良く、悪魔の軍勢が総攻撃するが如き突進パート、嘆き悲しむようなメロウなパート、バンドサウンドの壁により威容を見せつけるようなパートなど、メリハリの付いた展開で聴かせてくれます。

シンフォニックブラックって、クオリティの高い音を出してるバンドは沢山いますが、この
バンドはそれに加えてどこかカリスマ性も感じられるのが素晴らしいです。NOKTURNAL MORTUMのような土着性やカルト性は薄いですが、純粋にクオリティが高く派手で凶暴なメタルが好きならば大推薦です。


INSANITY OF SLAUGHTER - Be at a Loss ★★★ (2017-03-15 14:41:27)

2016年発表のコンピレーション盤。
2001年のEP「Be at a Loss」に、2002年のライブ音源を追加したもの。

これ、数あるジャパニーズブラックでも傑作の部類じゃないでしょうか。
まず楽曲がとても素晴らしい。プリブラ的な2ビートやスラッシュビートを多用し、オールドスクールな熱気を湛えつつ、邪悪極まりないトレモロリフが全編を通じて横行するスタイル。時折入るリードギターのフレーズも、後期DISSECTIONに通じるような邪悪さを甘美に聴かせるような感じで、メロウになるあまり禍々しさをスポイルすることがないのが良いですね。

ヴォーカルも歌詞を見ずに何を言っているのか聴き取るのが困難なほど歪んだ声で絶叫するタイプで、いざ歌詞を読んでみると「AAAAAAHHHHHH!!!!!!!!!!」とか、やたら「!!!」を多用しているのが目につきます(笑)。サタニズムの教義とか面倒な事は一切考えず、衝動性をひたすらにぶつけてくるような感じはヴォーカルの「ギエエエエエ」系の絶叫にも色濃く反映されてますね。凶暴さも粘着質さもあって素晴らしいパフォーマンスです。

…そして音作り、これもまた素晴らしい…。
トレモロリフのメロディを殺すことなくRawに仕上げた音で、個人的にはFUNERAL MISTの1stや、CHAOS OMENのEPなど、Necromorbus Stadio関連の音源に通じるものを感じたり…。音源の制作はかなり前ですけど、ブラックメタルの魅力を心底から分かってる人が作った感じのする音ですね。ちなみにライブ音源は、若干ヴォーカルの音量が小さいものの、より生々しい音でEPの曲を楽しめます。トレモロがより深い暗闇から響いて来るように聴こえる…。

国産ブラックが好きであればスルー厳禁な音源。最近復活したこともあるのかもしれませんが、この音源を世に出してくれたZero Dimensional Recordsにも感謝です。


INFERNAL CURSE - Apocalipsis ★★★ (2017-03-15 14:39:14)

2016年発表の2nd。

アルゼンチンのバンドながら日本のレーベル(Obliteration Records)から発売され、ショップでもそれなりにプッシュされていたり、ウォー・ベスチャルブラックのガイド本が発売されこのバンドも取り上げられた事などから、普段ウォーブラックを聴かない人でも手に取った方は多いんじゃないでしょうか。そんな方にもお勧め出来るくらい、分かりやすく、かつ強力にジャンルの魅力を伝えてくれる作品だと思います。

まず音作りが素晴らしいですよね。ノイジーに耳を劈く音は発火寸前の緊張感を漂わせながら、オールドスクールデスに通じる、腹にズンズン響く低音も効いたプロダクションはダーティな冒涜性と、サベージな衝動性をがっつりと伝えてくれます。リバーブが効き、若干言葉が伝わりづらいヴォーカルも異様さをより増していてかっこいい。マニアからしたらちょっと整い過ぎている音なのかもしれませんが、私的にはこれくらいの音が一番楽しめるバランスですね。

なんとなく流行に乗るような感じで購入しましたが、私のようなミーハーでもかなり楽しめる良質なアルバムです。この手の入り口としてもいいかも。


GREY SKIES FALLEN - The Many Sides of Truth ★★ (2017-03-15 14:36:36)

2014年発表の4th。

低音で朗々と歌いつつ、ドゥーミーなリフと美しいキーボードで耽美な雰囲気を演出するゴシックドゥーム的なパートや、デス声ヴォーカルと共にデス/ブラック由来の攻撃性を見せつつ疾走するパートがあったり、様々なメタルのサブジャンル内を横断するような、マージナルな作風の音。

…ただ、多サブジャンルを横断するプログレッシブな音ではありますが、儚さや美しさなどゴシックな叙情美に重きが置かれているようで、過度な前衛性だったり情報量の多さだったりは排除されている印象で、エクストリームメタルとしてはかなり聴きやすい部類ですね。その辺りを整合性があると取るか、逆に物足りないと取るかで評価が変わってきそう。

メロデス期のOPETHやDARK TRANQUILLITY辺りの美意識のあるメロデスが好きな方にお勧めですが、これらバンドと比べるとちょっとだけ訴求力が弱い印象も…。


ABYSSION - Luonnon Harmonia ja Vihreä Liekki ★★ (2017-03-12 20:23:08)

2015年発表の2nd。

販売元のSvart Recordsはドゥームやプログレメタルを始め、前衛・実験系のメタルにも強いレーベルらしいですが、このバンドもプリミティブブラックを基調としながら、一捻り加えたような音を出してますね。基本は荒々しい音質でトレモロを伴いつつ疾走する、プリブラ路線ですが、サンプリングやノイズ、ギターのフレーズなど時折サイケデリックな要素を加えてくるのが特徴。

更にヴォーカルが地声の混じった、やたら野太い怒号で、かつ耳元で叫ばれるようなミックスになっており、母国語の響きとも相俟ってなにか異常性を感じられるのも印象深いポイント。このせいでサイケデリックさが演出するものが、精神世界系というよりは精神にエラーが起きて異常な状態になったような雰囲気になってる印象を受けます。

フルとしては演奏時間はかなり短めですが、独特なプリブラ観を持ってるバンドだと思うので気になった方は要チェックです。


SULPHUR - Omens of Doom ★★★ (2017-03-09 20:34:38)

2016年発表の3rd。

ブラック/デスメタルとして紹介されている事が多いですが、ここで聴けるのは一般的なブラッケンド・デスとはかなり趣きの異なる音。MAYHEMの「Grand Declaraion of War」、SATYRICONの「Satyricon」アルバムなど、大御所にも明白にブラックを基本としつつ、そこから逸脱している作品は多くありますが、この作品もそれに近い雰囲気を感じますね。ミッドテンポやメロウなギターを重視しつつ、クリアな音質によるキレの良い暴虐パートも配したかなりドラマティックで変化に富んだエクストリームメタル。

アルバム全編で聴ける、メロディアスなギターのフレーズが凄くセンスがあって良いんですよね。サイケデリックな叙情味を感じたり、ハードロックのソロパートのような泣きを感じたり、色々な表情を見せ楽曲を彩ってくれます。メロデス並にメロディアスではあるんですが、ブラック特有の暗黒美も感じられる辺り、DISSECTIONの「Reinkaos」アルバムに通じるものを感じます。知性的な音ですが、基本ヴォーカルはデス声でギターがメロディを担当してる構成も良いですね。インテリジェンス値高いバンドって曲良いのにヴォーカルのへぼクリーンで台無しな事が多くて…それがないのが良いです(笑)

ブラッケンド・デスのような暴虐と叙情の融合を求めると大分戸惑う音かもしれませんが、少なくとも他のバンドと十把一絡げにされるような作品ではないと思います。聴き応えのあるアルバム。


DOMOS - Onset of Gelid Eon ★★★ (2017-03-09 20:31:36)

2017年発表の1st。
邦題は「凍てつく永劫の始まり」。

おなじみの国産レーベル、Hidden Marlyからのリリースですが…流石に外れがないですね。コロンビア産のバンドながら北欧産より北欧産っぽい音のプリミティブブラック。ブラックバンド黎明期のDARKTHRONEやISVIND辺りの作品って、メロウなだけでなくそのバンドの哲学を勝手に想像してしまうような、そんな説得力がトレモロに込められていた感じがしますが、このバンドもそれに肉薄するような土着的で邪悪メロウなリフを聴かせてくれます。アトモス系のキーボードやドラマ性の高い展開も導入し、アルバムを通じて変化のある構成なのも良いですね。

ヴォーカルの耳元で叫ぶような絶叫や、粗めながらブラックのリフの良さを伝えるヤスリ的音作りなど、プリミティブブラックとしては隙が無い音で、良質な作品と断言は出来るんですが…何故か3曲目の後半だけトレモロリフの音量がぶっ壊れてるのが謎です(笑)。いきなり音量設定をミスったかのようなトレモロが、全ての音を遮るかのようにメロディアスなフレーズを奏でるので、良くも悪くもそこが印象に残ってしまう…。まあフレーズ自体悪くないですけど…。

そんな訳で一部「ん?」となる箇所はあったものの、プリブラの良さをがっつり伝えてくれる良い作品だと思います。これも買って正解でした。


SHADOWTHRONE - Demiurge of Shadow ★★★ (2017-03-08 01:15:34)

2017年発表の1st。
Hidden Marlyより日本盤が出ており、邦題は「影のデミウルゴス」。

一体このレーベルはどこからこんな良質なバンドを発見してくるのか…これまたかなり好みのシンフォニック/メロディック・ブラックで買って本当に良かったと思わせる作品。メロブラとしてはオールドスクールさが強く、背徳性を感じさせつつも適度にメロディを挿入しメリハリのあるリフ捌きと、神秘性の強いアトモスフェリックなキーボードが織りなす非常にドラマティックな音。若干ドラムがやかましい音作りな気もしますが、荒れ狂う海を思わせる音に感じられるので個人的には好きですね。

オールドスクールさ強めのバンドサウンド+神秘的なキーボードの組み合わせや、喉を潰すのも厭わないような衝動に満ちた絶叫など、EMPERORの伝説的な1stアルバムを想起させる場面も多い作品。場面によっては、はっきり「Cosmic Keys~」「I am the Black Wizards」辺りの楽曲の影を感じられたりするのはご愛敬でしょうか。キーボードのフレーズも印象深いものが多いですし、楽曲が金太郎飴になっていない質の高いものであるのも素晴らしいです。

流石にカリスマ性という点ではEMPERORに譲るのは否めませんが、凄まじく良質なシンフォニックブラックなのでこの手が好きならマストかと。ほんとこのレーベルには期待してしまいます。


THE 3RD ATTEMPT - Born in Thorns ★★★ (2017-03-07 11:56:02)

2015年発表の1st。
表記によってTHEがあったりなかったり…ジャケのロゴにはTHEがありますが、CDケース側面の方には表記されてないのでショップで探す際は注意。

元EMPERORでGREEN CARNATIONを立ち上げ、CARPATHIAN FORESTなどにも参加していたTchort氏を始め、北欧産ブラックのそれなりに有名所が集まったバンドの初フルアルバムという鳴り物入りの作品。作風自体は、スラッシュの要素の強いブラックで、CARPATHIAN FORESTやAURA NOIRを想起させる感じですね。ブラックの方が主体になってる感じ、前者により近いように思えます。

出だしがかなりパンキッシュなのでイメージを引っ張られますが、北欧産らしい土着的な禍々しさを伴う疾走があったり、キーボードも用いた儀式的な曲があったり、楽曲のバリエーションは意外に豊富。ヴォーカルもブラック特有の噛み千切るような絶叫を中心に、スラッシュ風の怒号、低音のグロウル、濁声でメロディを追ったりなどなかなか表現力高いです。特にタイトル曲での濁声ヴォーカルと一緒に用いられる、悪意に満ちた絶叫がかなり苛烈で素晴らしい。

流石に有名所がやってるだけあって、クオリティも保証済みですが、そういうバンドにありがちな無難さもほとんど感じられない非常に良質な作品。CARPATHIAN FOREST辺り好きな方は是非。


GERYON - The Wound and the Bow ★★ (2017-03-07 11:49:37)

2016年発表の2nd。

KRALLICEのメンバーによるテクニカルデス…という事で興味を持ったんですが、最近のKRALLICEもテクニカル・アヴァンギャルド志向を強めているとはいえ、予想以上にアヴァンギャルドな路線で少々戸惑ってしまった作品。

ベースとドラムによる複雑怪奇、かつエクストリームな絡みの上に、ハードコアテイストのある絶叫が乗る…というスタイルですが、まるでベースとドラムのアンサンブルでどこまで行けるのか、その閾値を探っているかのような実験性がある…。楽曲やサウンドスケープよりも、その時の楽器隊の絡みに音を聴く楽しみを見出す感じで、トレモロリフによる高い叙情性も評価されていたKRALLICEとは全く別物。そもそも編成がギターレスですしね。

…という訳で近年のKRALLICE以上に好みが分かれそうな作風。知性や演奏力、クオリティなどは間違いなく高いので、後は合うか合わないかですね…。


NEAR - Our Sun ★★ (2017-01-18 23:21:36)

2016年発表の2nd。

ショップではGORGOROTHなどのノルウェー謹製のブラックメタルが引き合いに出されていましたが、その通り邪悪なトレモロリフと苛烈なブラストビート、ヘヴィネスよりもRawさを重視するプロダクション、ほぼノイズと化した裏返り気味の絶叫…と、衒いのないブラックメタルのスタイルですね。この手を普段から聴いている方ならすぐにでもアルバムの音に没頭できる感じ。

このバンド、何気に神秘性や邪悪さなどの演出が巧みなんですよね。主張しすぎない程度にキーボードも用いてますが、これが幽玄でアトモスフェリックな音色で雰囲気が出ててグッド。薄めのバンドサウンドのプロダクションとも相俟って、ちょっとだけBURZUMなんかも思い起こさせたり…。トレモロも時折神経を掻き毟る系の不協メロディを入れてきて、邪悪さの演出にかなり貢献している印象。

個人的な印象としては、北欧ブラック+若干アトモス系の感性を加えた音…という感じですね。常に仄暗い空気が付きまとうようなムードはなかなかに良い感じ。


SVIATIBOR - Le Havre Du Seigneur Céleste (2017-01-08 08:29:19)

2016年発表の6th。
2014年に初のフルを出したばかりなので、かなりハイペースな活動ですね。

…GRAVELANDはプリミティブ路線から脱却し、シンセサイザーとバンドサウンドを組み合わせることで、独自の壮大なアンビエンスを感じさせるペイガンブラックを構築していましたが…それを更にマニアックにしたようなペイガン・アンビエントブラックですね。

とにかく音の作り方が独特なのが特徴。最早バンドサウンドをほぼ感じられなくなるほどに、シンセサイザーが前面に押し出されていて…しかもまるでPS1期のビデオゲームのような、デジタルであることを隠そうともしないような音色なんですよね。その音が包むリズムも打ち込みめいた音ですし、なにかサウンドトラックを聴いているような聴き心地。「意図されたチープな音色」には独特の美しさが宿っているように思います。

ただ、サウンドスケープに対して主旋律がもう少し主張してもいいと思ったり、若干の物足りなさはあるかも…。結構好みが分かれそうな作品です。


HYPERION (SWEDEN) - Seraphical Euphony ★★★ (2017-01-06 23:38:36)

2016年発表の1st。

各所でも話題・高評価を得ているメロディックブラックの新星。私は運良く現物(CD-R)でゲット出来ました。一言でいえば全編にメロウなメロディを配したメロディックブラックなんですが、このメロディへの指向性の高さはとてもそんなものでは…。最早比較対象が最初期のIN FLAMESとか、メロデスの一流どころと比べてもメロディの良質さ・含有量ともに劣らないと思います。

そこにサタニックで邪悪なトレモロや、破れかぶれな畳みかけなどブラックらしさも垣間見せてくるセンスが素晴らしい。WATAINやDMDS期のMAYHEMなど、比較的メロディアスな「真性」ブラックの「美と邪悪さ」の対比が3:7くらいだとしたら、このバンドはその比率が逆転している感じ。つまり、中世的なメロディで美しさに主眼を置きつつも、しっかり邪悪さへの指向もある…という感じです。

若干プロダクションが金属的なジャリジャリした音だったり、ケチを付けられる部分が全くないわけではないですが、これは「逸材」と評されるのもよく分かります。メロブラが好きであれば是非。


MEFITIC - Woes of Mortal Devotion ★★★ (2017-01-06 23:35:44)

2015年発表の1st。

これは圧倒的…。
ノイジーながら視界をどす黒く染め抜くような質量感もあるリフと、リバーブを掛けつつ低音で厳かに獣声を吐きだしていくヴォーカルなどが醸し出す音像は、ウォーブラックに近いカオティックな野蛮さ。最早纏う暗黒エネルギーの量が飽和状態で、音からジクジクと漏れ出しているような状態。

ただし演奏が崩壊するような危うさは全くなく、儀式的なスローと暴力的なファストの使い分け、それを支える演奏力などはむしろ構築性の高さや知性を強く感じさせます。野蛮さと知性を掛け合わせて、これ以上は濃くなりえないような濃度の「黒」を演出しているような感じですね。聴いてしまったが最後、魔に魅入られ戻れなくなってしまう…そんなヤバさ漂う音。

…はっきり言ってマジで素晴らしいです。どす黒い音が好きであればスルー厳禁。


BESATT - Hail Lucifer ★★★ (2017-01-03 11:26:55)

2000年発表の2nd。

ポーランドのブラックではかなり評価が高い(一部は日本盤も発売されている)ようですが、それも頷けるくらい「ツボを突いた」作品だと思います。作風自体は邪悪なトレモロや苛烈なブラストを織り交ぜつつ、緩急付けて聴かせる、ブラックメタルの王道という感じですが、音作りが凄く「分かってらっしゃる」という感じがします。

ノイズ質を多く含むギターリフは冒涜的な感覚を、丸めのドラムの音色はモダンさではなく生々しさを、音圧の中で鳴るガリガリしたベース音は獣性を感じさせて、それが一体になるとブラックでしかなしえない邪悪なムードが演出されてるように思います。ノルウェー勢だとTAAKE辺りと近い感覚でしょうか。また初期EMPERORを髣髴とさせる、喉に過剰な負担が掛かりそうな破れかぶれなヴォーカルも素晴らしいです。


…まだ現役バリバリで活動してるバンドのようですし、出来たら最近の作品も聴いてみたいところ。この邪悪さや生々しさをキープしていて欲しい…!


DEIPHAGO - Into The Eye Of Satan ★★★ (2016-12-28 11:21:08)

2015年発表の3rd。

ウォー/ベスチャルブラックメタルのガイド本でもかなり大きく取り上げられていて、気になっていたので購入しましたが、これはいいですね。ほぼノイズの塊と化したようなギターリフに、「暴虐」なんて言葉ではなく、「タコ殴り」とか「ド突き回すような」とか野蛮な表現で形容したくなる残虐なリズム、理性がぶっ飛んでそうな必死極まりない絶叫が渾然一体となり、聴き手を蹂躙するような凄まじい音。

彼等が通った後には草一本残らないくらいの破壊的な音なんですが、ドラムとの絡みやカオティックなソロなどアンサンブルが分からないでもないギターや、ノイジーな轟音に埋もれることなく獣性を伝えるドラムなど、ウォー/ベスチャルや崩壊系のブラックを普段から愛聴してる人以外でも楽しめるような、ギリギリの所で整合性というかバランスが取れているような気もします。

とにかく万人が聴いて万人が破壊衝動を感じられるような音ではあると思います。このサブジャンル自体相当マニアックだと思いますが、作品自体は「何が魅力か」が凄く分かりやすい音だと思うので、気になった方は是非。


GHOST BATH - Moonlover ★★ (2016-12-28 11:13:59)

2015年発表の2nd。
なんと翌年にはNuclear Blastから再発されてますね。
私が購入したのもそっちの盤です。

…月の被り物をした状態で緊縛された女性のジャケが物凄く目を引きますが、これって自前で撮影してるんでしょうか…。ともかくこんなジャケを載せるバンドは変態的でアヴァンギャルドなひねくれブラックをやっているに違いない!と勝手に決めつけていましたが、意外なことに悲痛なエモーション前回のポスト/シューゲイザーブラックで逆に驚きました。

ポストロック的な柔和なパートもありますが、基本的には耳を聾するような苛烈なノイジーさの中で、儚さや哀切な雰囲気を強烈に放つトレモロリフと、BURZUMなどを思わせる肺の底から絞り出すような絶叫を聴かせる、壮絶な音。ほんと、ジャケを見せられた段階ではここまでストレートに感情を表現してくる音だとは思いませんでした。メロディのセンスも良く、この手のノスタルジックでエモーショナルなブラックが好きであれば満足できるかと。

それにしてもジャケのインパクトがヤバい…(笑)。確か武装錬金にこんな感じのやついましたよね。


KRATER - Urere ★★★ (2016-12-27 12:44:05)

2016年発表の3rd。

これは凄まじいですね。
スタイルとしては、明度と温度を著しく下げるような、吹雪系トレモロリフと暴虐なブラストビートで畳みかけつつ、邪悪なミッドパートも織り交ぜていく、ブラックメタルとしては特に衒いのない、ノルウェー勢に通じるようなストレートなスタイルではあるんですが…。

とにかく音作りが強烈。トレモロのメロディを強調しつつノイジーに耳を聾するリフの中、ヴォーカルやドラムの音も強靭に響いていて…それらが渾然一体となって襲ってくる音塊の問答無用の殲滅力が凄まじい。アトモスフェリックブラックの寒々しいムードを、ファストブラック並みの攻撃性で力づくで演出しているような、そんな印象を受けました。

これはもう試聴してすぐに購入を決めましたね…ブラック好きでまだ聴いていない方は、取り敢えず試聴だけでもして欲しいところ。ホント求心力高い音です。


TRIBULATION - The Children of the Night ★★ (2016-12-27 12:41:57)

2015年発表の3rd。

以前はもっとデス/ブラック色がストレートに出ていた音だったらしいですが、今作はロック色強いノリのいいミディアムを中心に、哀感の籠ったギターのフレーズやプログレ風味のキーボードを乗せ、非常に丁寧に楽曲を構築していくスタイルになってますね。ロックとしての楽曲の良さは、(好みは別として)エクストリームメタル・ブラックメタルどうこうの範疇を超えた普遍性があるように思います。

ヴォーカルはブラックメタルのがなりを貫いていたり、ゴシックメタルにも通じる妖しさがあったり、しっかり「ダークな音楽」としての筋は通しているバランスがまたいい感じなんですよね。近年のENSLAVEDやIN VAIN、EISREGENやメロデス期のOPETHに通じるような、知性的だけどダークな部分も色濃い音だと思います。

確かに、話題になるのも頷けるクオリティの高さを誇るアルバム。流石にデスボイスアレルギーの方にまでは勧めませんが、ダークでかっこいい音楽が好きであれば是非。


KETZER - Starless ★★ (2016-12-26 07:31:23)

2016年発表の3rd。

Metal Bladeからの発売、Terrorizer誌にもレビューが掲載されるなど、結構プッシュされてる印象。販促シールではBEHEMOTHが引き合いに出されてたりするので、ブルータル路線のバンド化と思いきや、意外にもロック寄りのミッドテンポ中心のグルーヴィなリズム、情感の籠ったリードギターで聴かせる音で、冒頭からハンドクラップ入れたくなるようなキャッチネスがありますね。

販促シールではTRIBULATIONも引き合いに出されてましたが、どちらかと言うとこっちの路線に近い音ですね。ただし、ただキャッチーなだけではない、どこかひねくれた知性を感じさせる展開も見せ、同郷のEISREGENなんかも連想します。ヴォーカルがメロディを歌う時ですらかなり歪ませた声なので、ブラックらしい殺伐感はしっかり残ってるのも嬉しいところ。

ブラックの王道とは言えない、ややマニアックな路線ですが、金太郎飴にならず一曲一曲をしっかり練り込んで聴かせるかなりハイクオリティな作品。衝動性よりも構築性を重視する方に。


MURDRYCK - Antologi MMXV ★★★ (2016-12-24 15:25:51)

2016年発表の2nd。

このバンド、元はダークアンビエントを演っていたらしいですが、近年になってバンドサウンドのブラックメタルに移行したんだとか。その経緯からも想像される通り、アトモスフェリックブラックとメロディックブラックを折衷させたようなスタイルになってますね。

楽曲の展開やムードの演出などはアトモス系の様式をある程度踏襲している感がありますが、メロディの質だったりバンドのアンサンブルだったりはメロブラのそれ。北欧の土着的なメロディを練り込んだトレモロもフェチ的に楽しめつつ、時にベースが主導権を握るなどバンドらしい音作りで、攻撃性も十分なため、ポスト・アトモスフェリックブラックにありがちな「ブラックメタルを聴いてる感の薄さ」が少ないバランスが個人的にはかなりツボですね。

そういう訳で、ポスト・アトモスフェリック系の風景の演出と、メロブラらしい土着性や攻撃性を一緒に楽しめる優れた一枚。こういう音好きなんですよね。


TEMPLE OF GNOSIS - De Secretis Naturae Alchymica ★★ (2016-12-24 15:22:37)

2016年発表の1st。

如何にもスピリチュアルな世界観を描いていそうなバンド名、ラテン語のアルバムタイトル、そして有名レーベルATFMからの発売という事で気になっていた作品。実際に聴いてみると、確かにこれは期待や予想を裏切らない音ですね。スローテンポの中、スラッジ・ドゥーム的なノイジーに引き摺るリフの上、宗教的なキーボードや魔的なトレモロなどが重なり、どす黒い世界観を描いていくスタイル。

黒く精神に染み込んでいくような出音はこの手の音としてもかなりディープな雰囲気で、目を閉じて聴くと世界観に引き込まれそうになりますね。ただ、どうも展開にSE的なものを感じる部分が多くて…ブラックらしいトレモロが鳴っているときの魔性な空気感などはたまらないものがありますが、個人的にはもう少し展開があると良かったですね…。正直展開に関しては物足りなさあるかも。

狙ってる世界観自体はもうツボもツボなので、次作はもっと重層的なアレンジ・展開に磨きを掛けて欲しいですね…。


PHAZM - Scornful of Icons ★★★ (2016-10-10 12:27:04)

2016年発表の4th。

このバンドはどうやらドゥーム/デスからロックンロール要素のあるデスメタルへ移行した…と認識されているようですが、今の所最新作となるこの作品を聴く限りではブラックメタルの要素もかなり強いですね。スカンジナビアのブラックメタルを思わせる、寒々しく邪悪なトレモロを聴かせる場面も多いですし、どちらかというと力強くヘヴィなブラックをメインに、デスロールの要素が入っている感じ。

ただしブルータルブラック勢のスピードで暴虐さを演出する音楽性とは若干異なり、この作品は「ロール」のグルーヴ感があることで「殲滅力」が非常に強い音という印象。メジャーレーベル産らしいガッツリとしたヘヴィな音や、ハードコア的な野蛮さを感じさせる咆哮、人間性を失ったような高音絶叫、Attila Csihar系の呪詛声のどれもキレ良く聴かせる優れたヴォーカルなども相俟って、敵の息の根を確実に止めるようなハイクオリティなエクストリームメタルとして仕上がってます。

非常にフィジカルな強さが感じられる音なんですが、ブラック特有の叙情味や邪悪さといった部分もガッツリ兼ね備えたハイブリッドな感触も。グルーヴィな要素を取り入れたバンドにありがちな明るさが殆どなく、ドス黒い音塊を叩きつけて来る感じが素晴らしい。


NRCSSST - Schizophrenic Art ★★★ (2016-09-11 11:07:51)

2015年発表の1st。

SVARTTHRONやPERGALEなど、精神的なヤバさを感じさせるリトアニア出身(現在はドイツに籍を置いている)というプロフィール、「精神分裂症のアート」というアルバムタイトルから、何やら病的で難解な作風を想像してしまいますが…実はシューゲイザー寄りのブラックとしては真っ当過ぎるくらいに真っ当な作品で逆に驚きました。このサブジャンルを初めて聴くにも適してると言えるくらいに分かりやすい音。

儚くて感情に訴えかけてくるトレモロリフとノイジーに歪んだ音像、鬱感情を加速させる絶叫の組み合わせはこの手の王道とも言える音ですが、描いている情景が抽象的な割に、メロディやフレーズなどをはっきり聴かせる作風なんですよね。清浄な中に、時折メランコリックで病的さも垣間見せるメロディ、ブラスト一辺倒でなく、ロック調のタイトなリズムも用いる展開など、語弊を恐れずにいえば聴きやすい音。ヴォーカルパートの殆どを占める絶叫が、やや線は細いもののちょっとIhsahn似の叫び声なのも良いですね。

MaaとZero Dimensionalという日本のレーベルからの共同リリース作品ですが、やはり目の付け所が良いですよね。今作もレーベルを信用して買って良かったな…と思える作品でした。


SECRETS OF THE MOON - SUN ★★★ (2016-09-05 10:46:10)

2016年発表の6th。

このバンド、個人的には「ブラックメタルの深遠さを聴かせるバンド」としてイチオシなんですが、今作でもまた深化した音楽性を聴かせてくれますね。「Antithesis」「Privilegivm」「Seven Bells」に続く、ミディアムテンポで陰影の濃い、どっしりとしたブラックを聴かせる路線をベースにしつつ、リフの質感がヘヴィネスより音響的な広がり重視になっていたり、ヴォーカルがクリーンメインになっていたり、今までよりも抽象的なムード作りを優先しているという印象の音に。

…正直、視聴した当初はクリーンがメインになるのは残念だと思っていたんですが、じっくり聴いてみるとこれはこれで悪くないんですよね。無気力に呟くような声が中心ですが、これが隠喩に富んだ、抽象的な歌詞をよりダイレクトに伝える事に貢献しているように思えます。アルペジオなどに顕著に見られる、独特の深遠さを感じさせる黒いメロディはより磨きが掛かっており、以前にも増して聴き手を世界観に引きずり込むパワーが強くなっているように思えます。

単純にエクストリームメタルとしてであれば「Seven Bells」の方がお勧めではあるんですが、暗黒で、かつ思索に富む世界観に浸りたい…というのであれば、今作はブラックメタルというジャンルの中でも屈指の一枚となるのではないでしょうか。ほんとこのバンドは素晴らしいです。


CRONE - Gehenna ★★ (2016-09-05 10:45:37)

2014年発表の4曲入りEP。

SECRETS OF THE MOONの中心人物であるsG氏らによるプロジェクトという事で購入。…この後に出た、SOTMの新作「Sun」は今までの路線をある程度引き継ぎつつ、ややブラック離れしたアプローチで更なる深遠さを感じさせてくれる一枚でしたが、この作品はそのステップ・ストーン的な役割も大きかったのではないでしょうか。

音としては、SOTM絡みらしい暗黒な空気感を醸し出すアルペジオなどは引き継ぎつつ、よりポストロックに寄った路線でしょうか。無気力で気だるげなヴォーカルはSOTMの最新作「Sun」にも引き継がれてますね。微妙に昔のOPETHを思わせるリフがあったり、全体としてはSOTMと差別化されている感じですが、スラッジめいたどす黒く引き摺る音響重視のパートなんかは、SOTMの「Sun」にあってもおかしくないと思えたり。

これはこれで悪くはないですが、個人的にはやっぱり暗黒趣味強いSOTMの方が好きですね。そういう意味で星は2つで。


清春 - シングル / カップリング / その他アルバム未収録曲等 - 窓 ★★★ (2016-08-29 17:48:57)

以前いつかのインタビューで、「カップリングもシングルになり得る位良い曲って言われたい」という主旨の事を言っていたような記憶がありますが…これ物凄く良い曲ですよね。「輪廻」は重要な曲なのでタイトル曲になるのは分かりますが、時期をずらしてシングルにすればいいと思うくらいに…。
サビも悪くないんですが、素晴らしいのはラスト。メロディと声質、歌い回しが最ッ高にマッチしていて、惹き込まれるのを止められない…。この部分を聴くと、今更ですが天性のものを持ってるヴォーカリストだと再認識させられます。


清春 - UNDER THE SUN - JUDIE ★★★ (2016-08-29 17:46:10)

これは本当に名曲。
ソロならではの緻密なアレンジがありつつ、刺激的でキャッチー極まりない歌メロやロックとしてのダイナミズム、彼の音楽ならではの頽廃性があり、サビでの小憎らしいまでのクールでキマった歌い回し、呻き声のようなシャウトなど、ヴォーカル部分にキッズが真似したくなるような要素が多くて素晴らしい。
しかしこの歌メロを聴くと、清春さんは印象的な歌メロを書く天才かもしれない…と思わされますね。「Love nest in love nest in」とか一回聴いたらメロも歌詞も頭に刷り込まれて脳内リピート止まらなくなります。


清春 - SOLOIST - FUGITIVE ★★★ (2016-08-29 17:44:32)

理屈は分かりませんがものすごく惹き付けられる曲。
メロディは起伏があるし、メロウな中に彼特有の妖艶さが漂っているんですが…正直そんな説明では何故ここまで良い曲に思えるかは伝えられません。どうも感想を具体的に書こうとすると分析的に聴く癖が付いちゃいますが、それを放棄したくなるような良い曲です。


清春 - SOLOIST ★★★ (2016-08-29 17:43:57)

2016年発表の8th。

実は彼の関連バンドはSADSの途中くらいからあまり熱心には聴いていなかったのですが、今回アルバムを購入し、本腰を入れて聴いてみて驚きました。楽曲が物凄く良く、かつ丁寧に作られていることと、彼のパブリックイメージである「頽廃的・攻撃的なロック」からかなり遠ざかりつつ、幅広いアレンジが施されているんですよね。前作は「JUDIE」「Law’s」などまだその要素強めな曲もありましたが、今作はそういうイメージとは関係なく、本当に「自然体の、良い音楽を届ける」事に専念している感じ。

…こう書くと以前の黒夢やSADSの音楽に憧れた人にとっては刺激が足りないのでは?と思うかもしれませんが、時に重層的な音作りを見せたり、時にロックのかっこよさを感じられるアンサンブルを聴かせるアレンジは十二分に刺激的。歌や歌詞、リズム、楽器のフレーズ、アレンジなど、聴けば聴くほどにお気に入りのポイントが出来ていく感じ。…こういった要素は、ロックの衝動性を重視する聴き手には「刺激」として伝わりにくい部分もあるかもしれませんが、清春さんのヴォーカルがあることで上手くその橋渡しが出来ている感じがするんですよね。

…例えば、黒夢やSADSの刺激的で頽廃的な世界観に憧れて楽器を始めたようなキッズが、社会人になり、色々な音楽を聴いた上でこのアルバムを聴いたとしたら、ものすごくのめり込めるのではないでしょうか。そういったリスナーが成長する以上のヴィジョンを見せてくれる作品というか…。そんな意味で、やはり清春さんって偉大なアーティストだと思います。それを改めて実感させられるアルバムでした。


LANIAKEA - A Pot of Powdered Nettles ★★ (2016-08-28 07:49:06)

2016年発表の1st。

現ULVERのメンバーで、SUNN O)))のライブメンバーでもあるというDaniel O’Sullivan氏のプロジェクトかつ、ULVERの新譜をリリースしたHouse of Mythologyからのリリースという事で、ブラックやドゥーム、エクスペリメンタルメタルなどの愛好者から注目が集まっているであろう一枚。ジャケットのウサギもお洒落で可愛らしく、つい手に取りたくなってしまいます(笑)。

音的にはメタルの要素は薄く、SUNN O)))にも通じるノイジーなドローンリフやアトモスフェリックなキーボード、オルガンやノイズ、サンプリングなどを重層的に組み合わせ、瞑想状態の脳波に寄り添うような、トリップ的で心地良い空間を演出するような、アンビエント/ポストメタル路線。ULVER関連の音源ですし、もっと早く感想書こうと思ってたんですが何回も心地良さに寝落ちしました(笑)。

ULVERの近作やSUNN O)))などからそう遠くない音ではありますが、曲によってはかなりヴォーカルオリエンテッドな場面があるのが特徴でしょうか。こちらも音のレイヤーの一つとして組み込まれている感じで、歌い方も柔和なものなので音に対して変に浮いたりという事はないですね。ただ、ULVERのGarm氏の歌声と比べると、やはりカリスマ性の欠如は如何ともしがたいですね…そもそも比べるなっていう話ですが。

…世の中の「癒し系」の歌が受け入れられない人でも、案外こういう音なら癒されるんじゃないでしょうか。丁寧に重ねられた音に耳を傾けているうちに、少しずつ心地良くなってくる作品です。ただし、近年のULVERに負けず劣らずメタルから乖離した音なので、その点だけは要注意。


ODIOUS - Skin Age ★★★ (2016-08-26 10:49:22)

2015年発表の2nd。

一言で説明するならば、デスメタル的なヘヴィネスと、中近東風の妖しげなメロディを取り入れたシンフォニックブラック。日本盤が発売されている事からも分かる通り、モダンでヘヴィさを余すところなく伝えるプロダクションを始め、凄まじくクオリティの高い作品。モダンで整った音ですが、その「ヘヴィさをダイレクトに伝える」性質は、中近東系のエキゾチックなメロディと以外にも相性が良く、密教的な妖しげな世界観により一層の説得力を与えている感じがします。

また、楽曲も「中近東風」メロディが常に横行してはいますが、場面によって浮かんでくる情景が全く違うメリハリの付いた展開なのが良いですね。エジプトのピラミッドを遠景で映していたり、墓を荒らす物達へのファラオの怒りが荒れ狂う場面だったり、色々なシーンが浮かびます。基本いかめしいまでの重々しい音で爆撃する感じですが、隠微なミディアムパートがあったりパーカッションを取り入れた土着性の強いパートがあったり、展開の種類自体も豊富。

メタルとして基本的にハイクオリティな事に加え、やりたい事がはっきりしている筋の通りを感じられる作品。エクストリームメタルが好きであれば確実に聴く価値のある作品だと思います。


DEATHCODE SOCIETY - Eschatonizer ★★★ (2016-08-26 10:40:28)

2015年発表の1st。

…なんというか、このカヴァー曲の並びはずるくないですかね(笑)。JUDAS PRIESTで正統派メタルファンにもアピールしておきつつ、ラスト限定盤のみにEMPERORのカヴァー入れるとか…そりゃブラック好きなら興味惹かれない訳ないじゃないですか…!!

そして内容の方もEMPERORをカヴァーするのに恥じないほど、オーソドックスでハイクオリティなシンフォニック・ブラック。キーボードこそ大仰ではありますが、ギターリフが結構不穏なものを弾いていたりするので、ピリッとしたインテンスさが効いている印象。ヴォーカルの絶叫が(特に中期の)EMPERORに近いことも相俟って、EMPERORの2ndと3rdのミッシングリンクを繋ぐような作品にも思えます。

Osmose産らしく、メタルとしても非常にクオリティが高くJUDAS PRIESTのカヴァーで何となく手を取った人も唸りそうな感じですが、肝心のEMPERORカヴァーは…。このアルバム本編準拠の音作りになっており、原曲の緊張感溢れるリフ捌き、魔術的なキーボードのフレーズをより鮮明に楽しめますが…特にクリーンヴォーカルなどのカリスマ性が足りないように感じてしまうのは、Ihsahn信者だからでしょうか? なにか朗々さが足りない…。まあクリーンは本編でも微妙でしたが。

ともあれ最近のシンフォニック・ブラックとしてはかなりの好物件。変に聴き易過ぎたりせず、禍々しさや終末感などをがっつり感じさせた上での華美で高品質なシンフォブラックなのが嬉しいところ。


STAHLSARG - Comrades in Death ★★★ (2016-08-13 09:50:34)

2015年発表の1st。
EASTERN FRONTの元メンバーが在籍。

…まず一つ言いたいのは、このアルバムが非常に優れたメロブラである…という事ですね。ブラックらしい邪悪メロウなトレモロで聴かせる展開を主軸に、メロデスにも通じる展開の起伏、デスメタル的な重さなども取り入れた良いとこ取りなサウンドですが、トレモロリフで攻めるパートにはDARK FUNERALにも通じる暗黒性と叙情性のバランスの良さが感じられ、決して中途半端にならないレベルの高さがあるように思います。プロダクションもクリアながら、モダン過ぎて聴き疲れしたり雰囲気を損なったりすることのない良質なもので、全体的に高品質な逸品。

ただ、二つほど大きな欠点があるのが惜しいんですよね…。まず一つはヴォーカル。ドスを効かせてがなるスタイルは禍々しさを感じさせ非常に宜しい…のですが、何故かアクセントにハイトーンが崩れたような奇矯な高音を交えてくるのがキッツい。シリアスな邪悪ムードを滑稽なピエロ声でぶち壊す様には苛立ちを禁じえません。
もう一つはジャケット…正直全然ブラックっぽくないし、バンドの出自を知らなかったら手に取ろうとは思わなかったかも。ケース側面のフォントもブラックメタルっぽくないですし、なかなかこんな良質なブラックを演っているとは想像しがたいアートワークなんですよね。

正直ヴォーカルのスタイルが余りにも好みから外れてるので星2個の評価にしようと思いましたが、路線自体はかなり好みなのでやはり3つで。色々と惜しい作品です。


EASTERN FRONT - Descent Into Genocide ★★ (2016-08-08 19:03:39)

2014年発表の2nd。

バンド名の示す通り、「戦争」をテーマにしたブラックメタルを演っているバンドですが、いわゆる「ウォー・ブラック」的なダーティでアンダーグラウンドな手法ではなく、整ったヘヴィな音で畳み掛ける、ブルータル・ブラック的な音に近い感じですね。時折トレモロリフによるメロディを前に出すパートはあるものの、メロディアスさを過剰に押し出さず、あくまで冷徹で無慈悲な音を貫くスタイルはMAYHEMの「Wolf’s Lair Abyss」辺りと共通するものがあるかも。

「ブルータルな音」としての音作りのレベルはかなり高い印象で、特に速さだけでなく「重さ」も備えたドラムの音が、楽曲の暴虐性を更に際立てている感じ。殺気立ったヴォーカルの絶叫もそうだし、時折出てくるメロディアスなパートでもメロディ自体が幽鬼的な不気味さがあったり、荒廃したネガティブさを醸し出していたり、全体を通じて殺伐とした雰囲気が非常に強い作風。整合性も残虐性も両立させたような、エクストリームメタルとして高品質な作品。

まあCandlelightから出ている時点である程度品質保証が付いているようなものですが、その期待を裏切るような作品では無いと思います。個人的にはもう一押し、なにか強く思い入れられるような要素が欲しいところですが…。


オプソドラス (オサンコラ) ★★★ (2016-08-08 19:01:37)

まるでコリドラスが古代魚になったかのような、不思議な見た目の魚。色が焼き魚のようでおいしそう(笑)。個人的な印象としてはコリドラスよりも更に丈夫で、特に餌に対しての貪欲さは凄まじいものがあります。普段は物陰でじっとしているのに、餌を撒くと体をビクンビクンさせて躍り出てきます(笑)。給餌時以外にも夜中は結構遊泳しているようですが、他の魚を襲うことは殆ど無いので飼い易いといえるかも。
…コリドラスと比べるといまいちマイナーなのは、枝分かれした髭が昆虫っぽく好みが分かれるからでしょうか。丈夫だし個人的には好きですけどね。


ANACHRONAEON - The Oracle and the Keyholder ★★ (2016-08-08 09:00:21)

2015年発表の5th。

メンバーの内2人が参加する関連バンド、EYECULTも相当にメロディックな音でしたが、こちらもかなりメロディの立ったエクストリームメタルを演ってますね。ただしこちらはもっと真っ当なメタルの価値観で作られている感じで、メロデス8割・メロブラ2割…という感じの音。ブラックメタル的な地下臭い雰囲気や邪悪さを重視するとEYECULTに、メタリックな整合性や攻撃性を重視するとこのバンドの音になるのかもしれませんね。

ただしメロデスとしてはかなり攻撃性の高い音で、ブラストを主軸にしたリズムと同期して猛然と刻み込むリフを聴かせる殺傷力のあるパートがあったり、ヴォーカルがいかめしい低音グロウルで吼えていたりして相当に獰猛な音。とは言え、メロブラ的なトレモロリフによるメロディにもかなり重きが置かれており、マニアックになり過ぎない間口の広さがある感じ。エクストリームメタルを普段から聴いてる人ならすぐにでも受け入れられるかと。

ただ、前述したようにほぼメロデスですので、EYECULTのようなブラックメタルらしい地下臭さを求めるには向かないかもしれません。メロデスもある程度行けるブラック好きにはお勧めです。


HORNWOOD FELL - Yheri ★★ (2016-08-08 08:56:51)

2015年発表の2nd。

MAYHEMを始め、ENTHRONEDやWATAINなどに通じる、メロウさ・邪悪さ・攻撃性のバランスの取れたブラックメタル。乾いた質感がありながらもクリアな音作り、トレモロ疾走のみに固執しない起伏ある展開、殺気の篭もったヴォーカルのがなり声、土着性の感じられる不気味なメロディ…と、各要素ソツなくレベルの高い音ですね。結成は2013年の半ばとかなり新しいバンドのようですが、クオリティは既に第一線級。

ブラックメタルの王道の様式をほぼ踏襲しているような音で、特別に尖った作風という訳ではないですが、自然(土着性)と超自然(オカルト)の要素が交じり合ったような、独特な雰囲気があるのが特徴でしょうか。不気味で生気のないクリーンヴォーカルを取り入れたり、所々メタルを若干逸脱して、アンビエンス重視の志向性の禍々しさを醸し出したり、ムード作りの為の創意が随所に感じられるような音ですね。

流石にAvantgardeからのリリースだけあって、根本的なクオリティが高くジャンル好きには聴き入れやすい一枚。深く悪意渦巻く森に一歩一歩踏み込んでいくような雰囲気も悪くないですし、なかなかの好盤だと思います。


MIGHTIEST - SinisTerra ★★ (2016-07-09 11:41:55)

2016年発表の1st。

メンバーは他のバンドを演ってたりしたとはいえ、なんと結成から20年以上が経ちようやく発売された初のフルアルバムだとか。だからなのか、楽曲の展開はかなり力が入っている印象。ドラマティックな展開から伝わるメタリックな力強さ、エピックな土着性が演出するメロウさを丁寧に組み合わせ、トレモロとブラストのみに頼り過ぎない劇的なブラックメタルを演出してます。朗々としたクリーンで歌い上げるパートなんかは若干ペイガンに通じる部分も。

ただし、プロダクションは一般的な「良い音」ではなく、リフをノイジー&ファジーに聴かせたり、アトモスフェリックなキーボードで音像を包み込んだりなど、ブラックならではのやり方で神秘性を強調したもの。この音作りと曲展開のバランスが織り成す独特の神秘性から、ショップでLUNAR AURORA辺りが引き合いに出される所以なんでしょうね。個人的にはこういう展開ならもっとフレーズをくっきり聴かせた方が良いな…と思ってしまいますが。

聴き応えのある作品であるのは間違いないですが、ちょっと惜しい面もあるかな…という作品。ドラマ性と神秘性を両立させたブラックが好きな方に。


SOV - Aklamerad Kalamitet ★★ (2016-07-08 11:27:40)

2016年発表のEP。
今の所この音源のみリリースしているようです。

ショップの紹介でSNSのアカウント等も特に持たず、正体不明のバンドとあっただけあって、音源を視聴できる所も見つからなかったんですが、何となく衝動的に購入してしまった一枚。しかも値段的にフルアルバムだと思ってたら6曲入り、演奏時間23分強のEPだったという…(笑)。

そんな感じでしたが、まあ内容的には悪くないですね。グルグルと渦巻くような低音がある意味でアトモスフェリック・ブラック的な音像を演出する、意図的にRawさを演出したブラックで、怨嗟や憎悪の篭もったエモーショナルな絶叫を聴かせるヴォーカルは少しハードコアテイスト入ってる感じでしょうか。

結構色々な要素を取り入れるタイプで、オールドスクールな疾走やメタリックなギターソロを見せたかと思えば、オープニングからデジタルな処理に抵抗がない柔軟さを垣間見せたり、パーカッシブなリズムで神秘性を演出しつつ女性ヴォーカルを入れたりなどの意外性を見せる部分も。ただ、作品自体の演奏時間が短くそれぞれの要素を楽しめる時間も短いのと、やっぱり王道のトレモロ疾走やメロブラ的な土着メロウなメロディが際立ってかっこよく聴こえる…というのはありますが。

独特の音像の中でのトレモロとかホント好きですし、悪くないんですが…流石にこの内容で2000円超えはちょっと割高に感じてしまいます(笑)。EPなら1500円くらいだと嬉しいんですが(笑)。


SUSPIRAL - Delve Into the Mysteries of Transcendence ★★ (2016-07-02 22:12:56)

2016年発表の1st。

流石I, Voidhangerからのリリースだけあって、ユニークなブラックメタルを展開してますね。メタリック、アトモスフェリック、カオティックの三要素を上手いバランスで組み合わせ、独自の視点で暗黒趣味な世界観を追求していくような音。纏わり付くようなノイジーさのあるプロダクションは邪悪なアトモス系ブラックのようですが、展開はトレモロ疾走に頼りきらない重厚でドラマティックなもので、刻みリフやギターソロなどパーツ自体は意外にもメタルしてます。

ただし、それらによって紡がれるメロディがひたすらにカオティックで不協的なのが最大の特徴。メロディを感じられるパートは少なくないんですが、メロウさよりも混沌としたムードが非常に強いんですよね。ヴォーカルが呪詛を吐くような低音がなり、助けを求めるような絶叫などを使うタイプであることも相俟って、聴いているとじわじわと精神を追い詰められるような感覚があります。

楽曲のクオリティは高いですが、捉え所のない暗黒性を演出するメロディにかなり癖があり、聴き手を選びそうな感じはします。DEATHSPELL OMEGAやLEVIATHAN辺りのバンドで鍛えられてる方なら全然楽しめると思いますが。


WRATHFUL PLAGUE - Thee Within the Shadows (2016-06-29 09:21:48)

2013年発表の3rd。

…これは今まで聴いたものの中でも最高クラスに「訳の分からない」ブラックメタルかもしれません。根幹はアンビエント要素を含むRawなメロディックブラックで、薄っぺらで金属質なノイジーさで責めるリフ、じっとりとしたダークさを演出するアンビエント要素、毒蛇が「シャーッ」という音を真似たようなヴォーカル(微妙)など、一般的なブラックの範疇にある部分はまあ普通に楽しめる感じ。

ただ、何故か多くのパートにおいてギターリフやヴォーカルが、左右チャンネルを行き来するようなミックスになっているのが意味不明なんですよね。催眠的な効果を醸し出したいのかもしれませんが、正直気が散るだけで大して効果的とは思えないです。バンドサウンドをフェイドアウトさせ、アンビエントパートにもつれ込んでいく展開も消化不良感が…。バンドの音を音素の一つとして捉え、加工する事を躊躇わずに音像を作っているのかもしれませんが…そういう処理がことごとくツボを外しているような印象。

例えばDHGやUNEXPECT、WHENなんかは「訳の分からなさ」を意図的に魅力として演出しているように思えますが、このバンドのそれは本当に意味不明。通向けを通り越して相当なマニアにしかお勧めできない作品だと思います。


SKÁPHE - Skáphe² ★★★ (2016-06-29 09:19:20)

2016年発表の2nd。

もう赤と黒メインのヴィジュアルのジャケからして饐えた血腥い臭いが漂ってきそうで、思わずレジに持って行きたくなりますが…中身もこのジャケの雰囲気まんまですね(笑)。下手に音圧を稼ぐわけではなく、纏わり付くような瘴気を発生させるようなノイジーなリフ、そこにぶよぶよした質感をプラスし、更に生臭さを際立てるベースなどが絡み、極めて不快指数(愛好者的には快楽指数)高い空間を演出する、カオティックでRawなブラックメタル。

この音源、とにかく混沌とした空間の表現が上手いんですよね。ただでさえ音像が赤黒く不気味なのに、そこに溶け込みながらも妙な生々しさを感じさせるヴォーカル、メロウさよりも不協的な不気味さを感じさせるギターのフレーズなど、楽曲を彩る全てがどす黒さを助長している印象。DEATHSPELL OMEGAがテクニカルさや神秘性ではなく、ひたすら不気味さを追及した感じとか、「VVorldVVithoutEnd」期のKARTHARSISをカオスに特化した感じとか、その辺りの一級品のバンドを引き合いに出して例示したくなるくらい、表現の巧みさが光ってます。

ジャケからして何かヤバそうなムード満点ですが、それに惹かれて買っても損はしないであろう逸品。カオティックで邪悪な音に身を浸したい方は是非。


HAAT - Recidivus in Obscurum ★★ (2016-06-27 23:30:08)

2002年発表の1st。

Hailリストの中にILDJARNやAKITSAがあったり、ボーナスにVONのカヴァーを入れていることからも想像の付く通り、一般的な意味での聴き心地の良さに反逆するようなRawブラック。特に打ち込みと思しきドラムの音色が印象的で…ILDJARNがよく演っていた、スチスチと抜けの良い金属的な音にそっくりで、そこか非常に特徴的なんですよね。

リフも薄っぺらなノイジーさではなく、厚みのあるエグめの音で、前述のスチスチいうドラムと相俟ってILDJARNにも通じるプリブラ特有の、この手が好きな人のみが感じられる心地良さが演出されてますね。また、曲間にダークアンビエントを挟みこむのも印象的ですが…雰囲気の演出は良いものの、音割れしてたりするのはちょっと雑に感じてしまうかも。

プリブラって3部作期のDARKTHRONEフォロワーやMUTIILATION辺りのフォロワーが多めで、ILDJARNをリスペクトしてるバンドって(比率としては)少なめな印象なんですが、このバンドはそんな感じですね。実際にトリビュートにも参加しているようですし。しかし何気にオランダってヤバいバンドが多いような…。


GLORIOUS AGGRESSOR - Retribution Curse ★★ (2016-06-27 23:28:19)

2012年発表のEP。
500枚限定で、今の所この音源しか発表していないようです。

まるで日本の某有名メタルバンドの楽曲のようなバンド名ですが、れっきとしたアメリカンブラック。メンバー構成のデータも無く、全く未知数のバンドの初音源としては何気に結構良いレーベル(Obscure Abhorrence)からリリースされているんですが、確かに北欧産、特にノルウェー産のバンドに通じるような、土着性の高い邪悪メロウなトレモロリフなんかは、凄くセンスを感じられるんですよね。

ただ、時折正統派メタルのような流麗なギターソロに展開を割いたり、ドラムがかなり軽めだったり結構特徴的な部分もある印象。特に後者は、真性ブラック的な重々しさは若干薄れてしまっている気はするものの、炸裂感というか聴いていて気持ちの良い音になっており、マイナスにはなっていないように思います。ソロも微妙に浮いてる気はしなくもないですが、メロウさ・メロディアスさを強調していて悪くはないかと。

北欧のバンドを思わせるリフ捌きが特に魅力的な一品で、若干癖はあるものの悪くは無い作品かと思います。メロブラ好きにお勧め。


MÄAX - Six Pack Witchcraft ★★ (2016-06-27 00:01:17)

2010年発表の5曲入りEP。

このタイトル…中古で安かったこともあったんですが、ついレジに持って行ってしまった私の気持ちも分かるでしょう(笑)。シックスパック(腹筋が発達し6つに割れている状態を指す)の魔術って…どんなやねん!と…(笑)。しかもジャケット裏のメンバー写真がめっちゃイカツイし。

…ただし内容は、意外にも(?)真っ当なパンキッシュ&オールドスクールなRawブラック。ひたすら脳筋(むしろ腹筋?)な音かと思いきや、若干メロウなリフやハードロック調のリフも使用し、結構展開には起伏がある感じ。何気にヴォーカルの怒声が凄まじくかっこいいんですよね。特に2曲目エコーが掛かって掛け合いのようになっているパートとか凄く良いです。

なによりくぐもったローファイで粗い音が気持ち良いですし、半ばネタのつもりで購入しましたが結構楽しめてしまいました。Raw系、オールドスクール系が好きであれば普通にお勧め。


GRAFVOLLUTH - Long Live Death! (2016-06-26 23:59:07)

2011年発表の2nd。

…一言で言うならば、「色々やる系」のブラックでしょうか。
どす黒いエナジーが密集するかのようなノイジーな音像と、粘着質さと切れ味の良さを兼ね備えた、凄まじく邪悪ながなり声を聴かせるヴォーカルが、凄みを効かせる真性ムード高いブラックをベースに、宗教的クワイア風のSEやノイズ方面へのアプローチなど、様々な工夫を凝らして聴かせる音。

ただ、それが必ずしも良い方向に作用しているとは言い難いのが悲しい所…。特にアンビエントに寄ったパート、幾らなんでも音割れ気味の微妙な音色のキーボードや、単調なアルペジオで何分も引っ張るのは肯定的には見れないです。前述の宗教的クワイアも同じフレーズ連続させ過ぎて何かシュールですし…。ひしゃげた音色のトレモロが地獄の情景を映すような、アトモスフェリック寄りのパートやパーカッシブなドラムが儀式的な雰囲気を演出するパートなんかは結構好きですが。

元々の素材がなかなかいいだけに、この料理の仕方はちょっと残念。特にヴォーカルの声部分的にはかなり好みなんですよね…。


NULLINGROOTS - Take Care ★★★ (2016-06-26 12:53:12)

2016年発表の3rd。
日本のMaa Productionsからのリリースという事で注目してる方も多いのでは。

ブラックメタルの攻撃性と、シューゲイザーの儚いメロディを混合した、いわゆる「ブラックゲイズ」と呼ばれるような音ですが…その両要素の配分がかなり好み。ノイジーさによりアブストラクトな光景を演出しつつも、バンドの音としての魅力もちゃんと感じさせるプロダクション、弱々しさを全く感じさせない絶叫、疾走パート多めながらメリハリの付いた展開など、メタルの魅力をしっかり演出した上で、儚く悲しげなメロディを全編に大胆に取り入れているのが素晴らしい。

ホントにこのバランスが、生と死の境界を彷徨っているような印象を与えるんですよね。ブラックメタル由来の攻撃性は生への執着だったり人生への悔恨から来る無念さ、儚いメロディや非日常的な音像が演出するのは幽世の光景がほの見えている…そんな感じの音。この手はアトモス系に理解がないと展開が退屈な作品も多いですが、ブラックのインテンスさと儚いメロディが交錯するバンドパートは言わずもがな、薄いトレモロを流したり低音のキーが絶望感を演出したりなど、「静」のパートでも工夫が凝らされており、この手の音にそんなに馴染みが無い人にもアピール出来るドラマ性があるように思います。メロディそれ自体の劇的さもありますし。

ぶっちゃけシューゲイザー要素のあるブラックってリリースされすぎだと思いますが…玉石混交の中にあって存在感を放つ逸品だと思います。流石はMaa Productions…。


ASGRAUW - Krater ★★ (2016-06-26 12:50:29)

2016年発表の2nd。

これ、Hidden Marlyから日本盤が出ている上に、ショップでLUNAR AURORAが引き合いに出されていて、物凄く興味を惹かれたんですが…正直そこまでLUNAR AURORA的な魔性のある音だとは思わないんですが、アトモスフェリックさとメタリックさのバランスのいい、優れたメロブラで、Hidden Marlyが目を付けるだけのことはある作品だと思います。

薄くざらつくようなノイジーさのプロダクションの中で、高音域の清浄な音も含むメロウなトレモロを、時にスラッシーだったりオールドスクールな側面も見せるバンドサウンドに絡めていく、繊細さと攻撃性の入り混じるメロディック・ブラック。音像は派手とは言いがたく、ものすごくインパクトのある音という訳ではありませんが、良く聴くとメロディの絡ませ方がかなり魅力的だったりします。集中して聴けば聴くほど魅力が伝わるような音で、若干通向けかな?という印象。

どっちかというと、LUNAR AURORAよりはその関連バンドの高品質メロブラ、THORNGOTH辺りが好みな方にお勧め出来る作品ですね。神秘性とドラマ性を上手い事両立させた好盤です。


BLACK CILICE - Mysteries ★★★ (2016-06-19 10:35:04)

2015年発表の3rd。
活動当初よりかなりの数のデモをリリースしているようですが、フルとしては3枚目。2016年に日本のレーベル、Hidden Marlyが再発しているので、そこで聴いた人も多いのでは。

ディプレッシブ系の鬱要素と、プリミティブ系の粗さを組み合わせて独特の陰湿さを表現するブラックメタル。疾走の頻度も高いミニマルなリズム、腐食を促すようなネガティブ極まりないメロディ、ザンザンに降り付ける酸性の雨を思わせるような粗いプロダクション…と、音を構成する要素がお互いにカルト臭を高めあい、ある意味でカリスマ性すら感じさせる雰囲気があるように思います。

特に特徴的なのは余りにもRawな音。ギターの歪みの出力が不安定で、ノイズが妙な波形を描いているのだと思いましたが…このノイズに聞こえるやつ実はヴォーカルだったんでしょうか(笑)。ただ、このプロダクションが有機的な生臭さの漂う、真っ暗な室に閉じ込められたかのような雰囲気を醸し出していて、独自の魅力を放っているように思います。ギターのRawさの割にドラムもはっきり聴こえますが、酩酊感を助長するようなオカズ等を入れてきてより催眠効果の高い音に。

鬱系・プリミティブ系って結構様式が決まってしまっていて、同じ感じのバンドが多いですけど、これは結構個性的な魅力があると思います。ジャンルを好きな人が楽しめないような変な個性じゃなく、ちゃんと全力でネガティビティを表現してくれているのが素晴らしい。


THUNDERBOLT - Apocalyptic Doom ★★★ (2016-06-19 10:31:59)

2007年発表の4th。
この後バンドは解散しているようなので再結成が無い限り目下最終作ですね。

なんとなくパワーメタルバンドっぽいバンド名な気がしますが、中身はブラックメタルのど真ん中直球を行くような音。不気味さやメロウさを感じさせるトレモロやブラストでの畳み掛けによるメリハリの付いた音で、時折MAYHEMの1st辺りのブラックメタル原典へのリスペクトも伺える展開もあるのが熱い。

基本北欧ブラックに通じる邪悪さをストレートに体現してる音ですが、ブラストで畳み掛けるパートでの暴虐性であったり、デスメタル的な切り返しなどはデスメタル大国ポーランドのお国柄を感じる部分かもしれません。プロダクションのノイジーな質感も相俟って、WATAINやMAYHEMなんかと比べるとどこか乾いた印象もありますね。

取り合えずブラックが好きであればなにかしら感じるものはあるであろう音。INFERNAL WARなどのメンバーが関与してますが、流石のクオリティです。


FUNERAILLE - Dis Pater ★★ (2016-06-05 12:01:34)

2009年発表の1st。
中心人物のLyshd氏は元ANNTHENNATHだとか。

何となく好戦的な感じのするバンドロゴですが、実際はフランス産らしい病的なムードやメロウさを強く感じさせる、雰囲気重視なプリミティブ・ブラック。どこか閉塞感を覚えるようなジリジリした音色のリフによる、湿り気のあるメロディや、遠吠えのような掠れきったリバーブの効いた絶叫が、陰々鬱々とした空気感を演出する音。

そこにアトモスフェリックなキーボードが被さってくるのも特徴で、音色だけ聴くとどこか光が差すようにも感じられるんですが、何故かバンドの音と合わさるとより閉塞感を増しているように聞こえるんですよね。また、一部ヴォーカルがガテラルめいた低音も使う部分もありますが、それがまた楽曲のジメジメした薄暗い雰囲気を助長しているように感じます。総じて、プリミティブ系としてはかなり陰湿な印象の音に仕上がっている感じ。

衝動性よりも鬱々とした雰囲気が強い作品ですが、フレンチブラックに特有の病んだムードが好きであればツボに嵌まる音かもしれません。


CRIMSON MOONLIGHT - Veil of Remembrance ★★ (2016-06-05 11:58:01)

2004年発表の2nd。

97年から活動するバンドで、初期はシンフォニックブラックだったらしいですが、現時点ではほぼシンフォ要素はなくなり、メロウなメロディを練り込んだトレモロを効かせつつ、メロデス的なメタリックさも垣間見せるリフ捌き、疾走パートではファストブラック並の怒涛の突進振りを見せるリズムなどを武器に聴かせる、メロディックブラックに分類出来そうな音になってますね。

正直、ドラムの音は若干チープさを残しているんですが…だからこそ、無軌道なまでに突進するパートでの野蛮さや殺傷力は、整いきったモダンな音を出しているバンドよりも高いように思います。ただ、ファストパートでのキレ具合が凄くツボなだけに、ちょくちょくミッドテンポで刻みリフを入れたり、メロデスに近いアプローチが見られるのが何となく中途半端に聞こえてしまいますが…。WATAIN辺りと比べるとミッドテンポでの説得力に少し物足りなさを感じるところも。

と言っても、殺気の篭もったヴォーカル、リフのメロディのダークさとメロウさの両立、疾走パートでの鬼畜っぷりなど、総じてクオリティはかなり高い印象。一本調子や金太郎飴にはなっていないですし、メリハリあるメロブラが好みであればハマれるかもしれません。特に時折垣間見えるDISSECTIONリスペクトが個人的にはかなり熱いです。


GALGERAS - Booswichterij ★★ (2016-06-05 11:56:05)

2005年発表の1st。

タイプとしては典型的なプリミティブブラックで、如何にも人体に有害な成分を含んでいそうなノイジーなリフと、ガラガラに歪んだヴォーカルが殺伐とした雰囲気を強烈に醸し出している音。メロディ薄めのミッドテンポのパートでは若干の淡白さを感じるものの、ノイジーなリフから漏れ聞こえるメロディはそれなりの威風があるし、ヴォーカルも堂に入った殺気たっぷりのパフォーマンスで聴かせてくれます。

ただ、妙にキーボード・アンビエントへのこだわりを見せる部分がちょっと微妙なんですよね…。オープニングのインストに3分以上も割いたり、ヴォーカル入りとはいえ5分以上のキーボード曲をプリブラ曲の間に挟むのは流石にダレる気が…。この要素が、プリミティブブラックのパートにあまり反映されていないのは、幸と見るか不幸と見るか…。

しかし、オランダのバンドは北欧のバンドと比べるとどこかニッチな感触が強いものが多い気がしますが…気のせいでしょうか(笑)。


CONTROL HUMAN DELETE - Terminal World Perspective ★★ (2016-06-05 11:53:39)

2007年発表の1st。

何となくジャケットから予想が付く音ではありますが…打ち込みのマシンビート、サンプリングなどをバンドサウンドに絡めたインダストリアルブラック。ノイジーなリフの音色とこれらインダストリアル要素の相性は良く、厭人・厭世的なムードが上手く演出されてますね。バンドの音単体だとリフに愛想のないパートでも、アトモスフェリックなキーと合わせることで上手い情景の演出になっていたり、この手としてのセンスはなかなか。

個人的には、この音源はマシンビートの使い方が上手いのが良いんですよね。どうもこの手のリズムに打ち込みを取り入れたブラックは、過激な音にしようとドラムのアタックの強過ぎる音像にして、うるさいだけになってしまいがちですが、そこに陥っていないのが良いです。特にトレモロを伴う豪速の疾走パートでは、プリミティブブラックを聴いているような酩酊感を覚えられます。

某所で投げ売りに近い価格で売られていたので購入したんですが、かなり良質なインダストリアルブラックを演ってます。正直投げ売りは不当に感じるくらいの良作かと。


VIRVEL AV MORKERHATET - Metamorphopsia ★★★ (2016-05-29 16:09:19)

2016年発表の2nd。

これはクオリティとカルト性を高いレベルで両立させた良盤なのではないでしょうか。路線としては、RAGNAROKやTSJUDER辺りを思わせる、ブラストによる疾走を軸にした苛烈なリズムと、トレモロを交えたメロウなリフで聴かせる、北欧メロディック/ファストブラックに近い音。パートによってはVED BUENS ENDEやPARIAなどに近い変則アンサンブルや、効果音・ナレーションなどのSEを挿入し、不条理さを加味するような場面も見られますね。

ただ、前述したバンドと決定的に違うのは、主に疾走時に於けるリフの質感でしょうか。前述のバンドは切れ味の鋭さやメロディのメロウさで聴かせる感じなのに対し、こちらは融解してドロドロになった粘液質の毒性のある液体を、緩やかに流し込むかのような不気味なトレモロがメインなのが特徴。これにより、音や楽曲のクオリティは非常に高いにも関わらず、どこかマニアックさを感じさせる雰囲気があり、これが個人的なツボには大ヒット。敢えて粗探しをするなら、SEが挿入されるパートにおいて、バンドサウンドに食い気味の音で入っていることくらいでしょうか。興醒めする程ではないですが、多少気になります。

個人的にはかなりお勧めの作品。特に、PARIAやポーランドのFURIAなど、ブラックメタルを真芯で捉えつつも、逸脱した魅力の加味されているバンドが好みな方には大推薦。


SVÄRTA - Sepultus ★★★ (2016-05-29 16:06:53)

2015年発表の1st。

これはいいですね。プリミティブブラックの様式を踏まえつつも、テンプレ以上の良さをしっかり出せている作品だと思います。ドカドカとRawな音色での2ビート疾走が非常に暴力的で心地良いですし、ブラストで爆走するパートも狂っている感じがあり惹き付けられる。何故か若干右よりから聴こえてくるヴォーカルも、リバーブの掛かった音割れ寸前の絶叫で楽曲のいかれた雰囲気をより強めてますね。

また、プリミティブブラックのキモとも言えるリフも、及第点を遥かに超える魅力があるように思います。トレモロによるメロ自体メロウさと土着的な不気味さからくる邪悪さを感じさせますし、どこか血腥い粘液質な何かに包まれているような感覚を覚える、空間的な響きのある独特の音なのが良いですね。ただ、バンドサウンドのパートは文句なしですが、時折挿入されるアンビエントパートが正直いまいちに感じるのが、欠点といえば欠点でしょうか。

…某ショップでは正体不明のバンド、として売り出されていましたが…これは単に情報を出してないのか、ハクを付けるためなのかどっちなんでしょう(笑)。ちなみにブックレット裏のメンバーの写真(?)では被り物をしていました(笑)。


EOSPHORUS - Winds of Apep ★★★ (2016-05-28 19:58:49)

2014年発表の2nd。
今年に入って日本盤が出たので、チェックしたら良かったので購入。どうも日本盤の発売にはタワレコ関連のディストリビューターが絡んでいるようですね。

ブラックメタル本来のRawさを残し、モダンになりすぎないプロダクション、トレモロ含有度高めながらメロウさに頼りすぎず、殺傷性や殺伐さにも富んだリフ捌き、全体を通じて感じられる、マッシブな暗黒性…DISSECTION辺りの流れを汲む、如何にもスウェディッシュなメロディック・ブラックですが…。こんなことを言うのもなんですが、「Sworn to the Dark」「Lawless Darkness」期のWATAINにめっちゃソックリな音(笑)。マジで一瞬聞き違いそうになるレベルで似てます。

ただ、こういう路線のバンドは多いですが、このバンドは楽曲や音のクオリティでWATAINと勝負できるクオリティのある、数少ないバンドのうちの一つなんですよね。「これ聴くならWATAIN聴くよ」とは言い切らせない魅力のある稀有な作品。敢えて比べるとするなら、当時のWATAINの方が暗黒性や重厚さに富んでいて、メロウさやある意味での軽快さはこちらに軍配が上がるかな…という印象。暗黒趣味強めながら、メロデス好きも素通りできないくらいメロディが強めで、かつキャッチネスも備えている感じ。

日本盤が出てるくらい(しかも天下のタワレコ絡み)だし、クオリティ高いと予想はしてましたが、まさかここまでとは…。ただ、アルバム紹介でMAYHEM、DARK FUNERAL、COF、DIMMU BORGIRのファンにお勧めというのはどうかと思っちゃいます。前者2バンドは分かりますが、シンフォ系よりはDISSECTION、WATAIN、MGLA辺りのメロウだけど暗黒性高いメロブラ聴いてる人にアピール出来る音ですし。


THE UGLY - Decreation ★★★ (2016-05-28 19:54:11)

2015年発表の2nd。

MARDUK、NORDJEVELのドラマーであるFredrikの参加バンドとして知られるバンドですが…このバンドもそれらと比べて劣らないほどの、エクストリームメタルとして一級品の質の高さですね。乱暴な対比をしてしまえば、MARDUKがファストブラック、NORDJEVELがメロディックブラック要素が強い音なのに対し、THE UGLYはメロデスラッシュの要素が強い感じでしょうか。

この人のドラミングは、フレーズの作り方が上手いのか、ただ速いだけじゃなくて聴いていて心地良くノレるんですよね。それを活かす、ブラストやスラッシュビートを多用した激烈な展開で聴かせる音。意外にもリフにはメロディックな部分が多く、メロウなリフで聴かせておいて苛烈でスラッシーなリフでトドメ、のような流れが劇的でかっこいい。メロディ自体も破滅的というか、廃墟に酸の雨が降り注いでいる感じというか…如何にもブラック然としたダークさがあって凄く良いです。ヴォーカルも声量・迫力共に申し分なしで、エクストリームメタルとして瑕疵の見当たらないハイクオリティな音を構築。

別に奇を衒ったことをしている訳ではないですが、この手のメタルとして超真っ当な完成度の高さのある一品。日本盤が出てもおかしくない感じ…ですが、MARDUKの最新作ですら出てないからなぁ…。世知辛い世の中になったものです。


EMPYRIUM - The Turn of the Tides ★★★ (2016-05-24 00:52:00)

2014年発表の5th。

ネオフォーク寄りのペイガンメタルといえばまず名前が挙がるバンドですが、聴いたのはこのアルバムが初。実際に聴いてみた感じとしては、ネオフォーク「寄り」というよりは、楽曲を構成する要素の8割くらいがそっち系で、メタル要素はかなり薄め。品性を感じさせる、中音域でのマイルドな歌唱、メロディアスなアコギやピアノ、キーボードなどによる仄暗いメロディで聴かせる路線で、打ち込みのリズムなど、情景をより深く描くためならエレクトロ要素を取り入れることも厭わない音。

メロディ自体は明瞭で魅力に溢れたものですが、アルバムを通じて内省的な暗さが貫かれているのも特徴ですね。ドゥーミーに悲哀を演出するリフ、ブラックメタルに通じるような絶叫も一部とはいえ聴かれることも相俟って、初期ULVERなどの仄暗い森林系フォークブラック、ARCTIC PLATEAU辺りの内省的ポストブラックなどを好んで聴く層にも受け入れられそう。内省的ではあっても、世界観を伝える力が非常に高いので、取っ付きづらく求心力に欠ける音ではないのが素晴らしいです。

フォーク系のブラックのみならず、ゴシックドゥームやディプレッシブブラックなど、暗く美しいメロディにゆっくり耽溺出来るような音楽が好きであればお勧めです。


STURMGEIST - Meister Mephisto ★★★ (2016-05-24 00:49:19)

2005年発表の1st。

SOLEFALDで独特の感性とヴォーカルを聴かせるCornelius氏が中心人物を務めるバンドですが…アヴァンギャルドブラックを中心に、シンフォ・ゴシック・ペイガン・プログレなど様々に拡散する音楽性を持ったSOLEFALDですが、こちらではシンフォニック・インダストリアル方向にある程度路線を絞った音になってますね。もちろん、彼特有の前衛性のある雰囲気は勿論継承されてます。

基本は頽廃的で、どこか重厚さもある雰囲気を醸し出していますが、時折キレの良いリフと共に入る疾走パートなどはごく真っ当なかっこよさで、楽曲のクオリティもSOLEFALDに劣らず高いですね。しかしCorneliusのヴォーカル…彼のナルシスティックな呻き気味の低音での歌声を聴いていると、どうしてもSOLEFALDの音源を聴いてる気分になりますね。自分色に染めるパワーがやたら高いヴォーカリストだと思います(笑)。

SOLEFALDの路線に共感している人ならば、買ってまず損はないだろうという一枚。この後二枚のフルと、デモをリリースしてるようですが、今はどうなってるんでしょう…。


EBONY LAKE - In Swathes of Brooding Light ★★★ (2016-05-21 10:22:50)

2011年発表の2nd。

変り種ブラックとして、特にアヴァンギャルド性を薄気味悪さやダークさに転化させているバンドとしてよく名が挙がる彼らですが、ほんの触りを聴いただけでもそれを納得させられてしまうような作品ですね。路線としては、LEVIATHANやDEATHSPELL OMEGAなどのカオティックで暗黒趣味の強いブラックと、LE GRAND GUIGNOLやPENSEES NOCTURNESなどの前衛的で演劇趣味なシンフォブラックを掛け合わせたような、不気味なアンビエンスを醸し出すブラックメタル。

普通では掛け合わせないものを掛け合わせたような音で、正直某雑誌のレビューでレビュアーがこのバンドの音に拒絶反応丸出しの意見を書いていたというのも凄く頷ける感じ。前衛戯曲のガワが剥げ落ちかかって、中の地獄が覗いている…そんな雰囲気のある音なんですよね。ブルータルなパートでは不協的なリフの音色も相俟って、破壊的な感触が強いのもまたカルト性を強めているように思います。

明らかにメタラー全般に広く受け入れられる音ではありませんが、これくらい世界観が確固としているバンドだとバンド側もメタラー受けなど全く気にしていないんでしょうね。こういう、明るさや健全さとは無縁な世界観は、個人的にはロックの極みだと思ってます(笑)。


AIHISNA - 凛然とした夢百合水仙 ★★★ (2016-05-21 05:44:14)

2015年発表のおそらく6th。

ゴシック趣味の強い、美しくて派手なオーケストレーションを、メタリックなリフ・リズムに乗せて疾走するインストメタルで、メロディのキャッチネスや音像の華美さなど、ゲーム音楽を本格的にメタルに特化させたような音。実際に、このアルバムの中の何曲かは、翌年に発表の弾幕STG「八重の妖泉華」に使用されてますね。実はそのBGMが凄く良かったのでオリジナルフルも聴いてみた次第です。

このユニットの音楽はメロディの印象深さも然る事ながら、その聴かせ方も非常に上手いのが素晴らしいです。オーケストレーションはただ漫然とストリングスの音でメロディを奏でている訳ではなく、時にピアノやヴァイオリンによる高速のパッセージを挟んでみせたり、チェロによる独奏パートがあったりなど、変化と緊張感に満ちている、ドラマ性に富んだもの。

ギターも単にメタリックなリフでヘヴィさを音像に加味するだけでなく、主旋律を担うことで音像に変化を付けたり、トレモロリフを用いてメロディを強調したりなど、オーケストラの派手さとの相乗効果を出せている印象。同人のゲーム音楽のメタルアレンジもそれなりに聴きますが…ヘヴィなリフや音像を提供出来るサークルは多くても、リフに如何にメロディを練り込むかや、キーボードとギターがどれだけメロディを分かち合うかのバランスを取るのが苦手な所が多い印象があるんですけど、このサークルの音楽はそこをクリアしているのが良いですね。特にトレモロリフをしっかり使えるというのが素晴らしい。

しかし、今作に収録されていない「八重の妖泉華」の楽曲は、次作に収録されるんでしょうか…。背後から高速で飛んでくる鐘弾のトラウマが蘇るラスボス曲「水鏡の朧鐘」とか、がっつり音源で聴きたい所です。


AIHISNA ★★ (2016-05-21 05:43:10)

日本のシンフォニック/ゴシックメタルユニット。
かがやみ氏、かぶ氏による兄妹同人サークルで、音楽のみならずゲームも制作してます。実は海外の超大手レビューサイト、Encyclopaedia Metallumにも登録されてるユニットだったりします(まああそこはUI-70とかCROW’SCLAWなんかも載ってますが)。


LE GRAND GUIGNOL - The Great Maddening ★★★ (2016-05-19 23:54:37)

2007年発表の1st。

「名は体を表す」と言いますが…その言葉をこのバンド以上に体現しているバンドっていないんじゃないでしょうか。楽曲の端々に戯曲的な雰囲気を醸し出すパートを挟み込んでくるシンフォニック・ブラックメタルバンドは少なくないですが、全編がそういうパートで構成され、尚且つバンドサウンドではなく、シアトリカル極まりないオーケストレーションの方が主役になってしまっているアンサンブル…というと、このバンドを置いて他には無いんじゃないでしょうか。

ジャンルとしてエポックメイキングなだけでなく、楽曲の魅力自体も素晴らしい。戯曲を思わせるオーケストレーションが矢継ぎ早に繰り出すメロディは、前衛的・狂的であっても常に美しさやキャッチネスに満ちていて、劇場に入ったが最後、どんなに気が乗らない気分であっても着席を余儀なくされる…そんな心を掴む魅力があるように思います。クサメタラーも間違いなく悶絶できるメロさ。

また、オーケストレーション主導の展開ながら、メタルとしても妥協してないクオリティなのもポイントですね。リズムを強調しヘヴィに刻むだけではなく、ここぞという所でメロさや狂性を演出するギターワーク、むせるほどに笑い狂ったり、ホイッスル音混じりの壊れた叫びを聴かせるなど、演技派ながら通常時のパフォーマンスではしっかりした芯のあるデス声を聴かせるヴォーカルなど、メタルとしてのかっこよさもガッツリ備えている感じ。

…ある意味、シンフォニック・ブラックの一つのスタイルの完成形を見たという気がします。替えが効かない音、かつ鬼クオリティの作品を出したバンドだけに、現在活動していないようなのが勿体無い…。


EWIG FROST - Rust (2016-05-19 23:51:28)

2009年発表の6曲入りEP。
収録時間は27分ありEPとしてはそれなりのボリューム。

「永遠の霜」を意味するかっこいいバンド名(+中古で安かった)に惹かれて何となく購入しましたが…まず思ったのは、音がちっさい(笑)!FUNERAL MISTの1stのようにイントロの途中で音圧を上げる事でドラマ性を演出するのかと思いきや、特にそういう訳でもなく…。個人的には音が多少割れてもこういう音楽は大音量が良いと思うので、印象は若干マイナスからでしたが…。

本編は悪くないですね。どうもこのバンドはアンチナチズムを標榜しているらしく、パンクの衝動性も加味したような音ですが…パンク要素のあるバンドとしてはかなりメロディや雰囲気が陰鬱なのも特徴。特にミディアムパートでのリフ、酸の雨が降り注ぐような、独特の薄暗さや陰湿さが醸し出されているような印象を受けます。荒廃した都市が浮かぶような音というか…。

そういう訳で、売りとなる要素もしっかりあるし、確かに悪くない作品なんですよね。でも諸手を挙げてお勧め出来るほどでもないという…。やっぱりこういう衝動性の高い音はバカでかい音で録音されていて欲しいものです。


ZAVOD (ЗАВОДЬ) - Through the Circle and Five Angles (Крізь коло і п'ять кутів) ★★★ (2016-05-19 23:48:35)

2013発表の2nd。

土着的メロディで人気を博するバンドの多いウクライナですが、このバンドも非常に魅力的なメロディをトレモロリフに織り込んだメロディック・ブラックを演っていますね。土着的で湿り気を帯びつつも、どこかエモーショナルでむせび泣くようなメロディ使いが非常に魅力的。ただこのバンドの場合、パンク/ハードコアの要素を取り入れているようで、他のメロブラよりも衝動性が高い音なのが特徴。

トレモロのメロディを強調しながらも、耳に突き刺さるような刺々しさのあるリフのRawな音色、疾走パートに於ける炸裂感、そして殺意や憎悪をぶつけてくるかのごとき、歪み切りつつも感情の感じられる絶叫ヴォーカル…これらの要素が、より音を感情に満ちたものにしていて、前述のむせび泣くようなメロディの魅力を更に浮き上がらせているんですよね。

流石Hidden Marlyだけあって、どこでこんなバンドを見つけてくるんだろう…と感心してしまうような一枚。聴かせどころがはっきりしていて、魅力が伝わりやすい良質な作品です。


MAELSTROM (UK) - Sunlight ★★ (2016-05-19 00:15:10)

2014年発表の2nd。
元はデジタルで自主制作のリリースでしたが、翌年にContagion RecordsというレーベルからCD化されています。

路線は一言で言うならメロディック、プログレッシブ、アヴァンギャルド、シンフォニック…など様々な要素を内包したごった煮で狂気的なブラック。ミディアム中心で、やや変則的なリズムと、それを強調するように刻まれるヘヴィなリフを軸に、ブラックらしいトレモロや神秘性を醸し出すキーボード、デス声のみならずどこか螺子が飛んでるようなミディアムのクリーンも使うヴォーカルが乗る音で、最近日本盤が出たWRATHAGE辺りと感触が似ている印象。

ただ、前衛的ながらシンフォニックブラックが基本にあったWRATHAGEに対し、こちらの基本にあるのはメロディックブラックで、ザカザカ刻まれるリフに、的確に挿入されるメロいトレモロはかなりの煽情力の高さ。どこか精神世界系の世界観を持っているバンドだとは思いますが、リフの攻撃性やグロウルも使う凶悪なヴォーカルなど、サイコな雰囲気だけでなくデスに通じるアグレッションも持ち合わせているのが特徴。ややブラックらしいRawさは残るものの、エクストリームメタルとしての質は高いと思います。

決して広く受け入れられるような世界観を持っているバンドとは言えませんが…もし波長が合えば、しっかりと応えてくれるクオリティはある作品だと思います。ニッチに高品質と言うか…。


EYECULT - Morituri Te Salutamus ★★ (2016-05-18 13:03:09)

2009年発表の1st。

冒頭の、まるでプラスチック製のドラムを叩いているようなドラムの音による「デデデデデデデデ…ででーん!」みたいなチープ極まりないフレーズを聴いた時は、なにか微笑ましいというか生温かいというか…そんな気持ちになりましたが、その予想を裏切って本編ではかなり良質なメロディックブラックを演ってますね。

某ショップではプリミティブ系の音にも関わらずDARK FUNERALが引き合いに出されていた通り、トレモロリフによる煽情度の高いハーモニーが全編に渡って聴けるのが特徴。ヴォーカルもなかなか気合入ってますし、やや粗めながらメロディをしっかり堪能できる程度にはプロダクションが整っているのも良いですね。個人的には、SÜHNOPFER辺りのメロディックブラックが好きな人にお勧めしたい音です。

冒頭でチープな音と決め付けるのは余りに損な作品。流石Ewiges Eisだけあって若干ニッチですが良質な音源をリリースしてくれています。


P.H.T.O - Affliction ★★★ (2016-05-18 13:00:30)

2011年発表の1st。

緩やかなテンポ中心の楽曲構成+鬱メロディ+悲痛絶叫+アトモスフェリックな音像、と鬱ブラックのテンプレをがっつり満たしてくる作風ですが、類似した音楽性の余りに多いこの界隈でも埋没しない魅力を持った一枚だと思います。

まず音像が他のバンドに比べて厚みがある気がしますが、おそらくベースがしっかりしたメロディを弾き、そこに澱んだトレモロが乗る構成がこの音を生み出している感じがします。そこに乗るヴォーカルも悲痛なだけではない、コシのある説得力のある声ですし、スローだけでなく疾走も交えてくる楽曲構成も巧み。特に疾走パートにおいて、トレモロリフによるメロディを強く押し出す傾向があり、それが上手く楽曲の中でのメリハリに繋がっているという印象です。

そういう訳で鬱ブラックとして及第点を遥かに超える出来ではありますが…このバンドの情報をググろうとすると、PHTOで検索するとPHOTO、P.H.T.Oで検索するとP.H.O.T.Oの結果が表示されるんですが…(笑)。なんという余計なお世話。


NJIQAHDDA - The Path of Liberation from Life and Death ★★ (2016-05-18 12:56:28)

2011年発表の12th。

最近は落ち着いてきつつあるものの、このバンドは年にフルアルバムだけで2~3枚の他大量のEPやスプリット、デモなどもリリースしていて、まずどれを買ったら良いか分からないので取り合えずたまたま中古で安価で売られていたこのアルバムをチョイス。正直リリースが多いというのも良し悪しですよね…。

聴いてみた感じは、良い意味で悪趣味かつプログレッシブ・アヴァンギャルドなブラック。妙なタイミングでのストップ&ゴーなど、引っ掛かりのあるリズムを軸に、奇矯なメロディのトレモロリフを流し込んでくる音で、アトモスフェリック系に分類される中ではかなり実体的な音。展開に目まぐるしさや訳の分からなさがあり、正体を掴ませない感じがあるのでそうカテゴライズされるのかもしれませんね。

楽曲によってはテルミンが使用されていたり、ヴォーカルも絶叫だけでなく、精神を追い詰めるような呻き声を出していたりなど、ひたすらにサイケデリック/サイコさとダークさの両立された音を追及している感じ。結構トレモロを前に出してくるので聴きづらさはあまり感じませんが…アルバムを聴いている間中常に精神を炙られ続けるような、捻じ曲がった感性は全編で貫かれてますね。

まだこれしか聴いていませんが、かなり独特で病んだ世界観を持ったバンド。これで大量リリースというのだから…作っている方の精神がおかしくならないか心配なバンドです(笑)。


NJIQAHDDA ★★ (2016-05-18 12:54:29)

アメリカ産アヴァンギャルド/アトモスフェリックブラック。
メンバーはNJIIJNというアンビエントプロジェクトも動かしているとか。


RIMTHURS - Svartnar ★★ (2016-05-18 12:53:08)

2010年発表の1st。

タイプとしては、アトモスフェリック・ペイガン・メロディックのいいとこ取りのようなブラックメタル…という感じでしょうか。メロウなトレモロを聴かせる疾走パートはスウェディッシュブラックらしさがありますが、内省的で土着性も感じさせるメロディなど、どこか辺境ペイガンブラックっぽい雰囲気もそこに加味されているように思います。ヴォーカルもしっかり凶悪で良い感じ。

個人的にはよく言えばいぶし銀、悪く言えばちょっとだけ地味でしょうか。RAW過ぎず整いすぎずのプロダクション、攻撃性のみでなく、展開やムードの演出にもしっかり気を配った曲の構成、トレモロ含有率高めながら一辺倒ではないリフ捌きなど、しっかりやるべきことをやっているけど、突出したウリには欠けるというか…。まあ誰も彼もが革新的な音を求めている訳ではないですし、叙情的なメロディはかなり上質なので特に問題ではないですが。

若干マニア…というか、この手を常聴してる人向けではありますが、悪くは無い作品かと。


SEA OF TREES - Aokigahara ★★ (2016-04-22 00:11:45)

2011年発表の3曲入りEP。
盤面の無音部分に施された装飾が非常にオシャレ。

このバンド名と作品名…日本人で鬱ブラック好きなら聴かずにはいられなくなりますね(笑)。リリースもMisanthropic Artからなのでクオリティも期待出来そうですし。…実際聴いてみると、予想も期待も裏切らない、鬱ブラックど真ん中の音。やや粗めの録音に、ゆるやかなテンポに陰鬱としたトレモロリフ、BURZUMを更に悲痛に(+もっと情けなく)したような絶叫と、ほんとこの手の王道って感じの音です。

ただ、この手のバンドは雰囲気を出すためか、敢えて明瞭なメロディを避けることも多いですが…この作品はトレモロリフによって奏でられるメロディがかなりはっきりしているのが特徴。個人的にはこれくらい明瞭なメロディの方が酔えるので、これは大歓迎なんですが…トータルの演奏時間が13分しかないのが最大のネック。気持ちよくなり始めたところで終わってしまう感が…。

そういう訳で、楽曲自体はかなり良質なものの、食い足りなさが残ってしまう一枚。未だにフルアルバムは出ていないようですし…。ぶっちゃけ中古でフルアルバムだと思って購入したからそんな風に感じるのかもしれません(笑)。