…ただ、一つ文句を付けるとしたなら、ブックレットがギュウギュウに詰まっていて取り出しづらい事でしょうか…無理矢理出そうとしたらデジパック歪んだし…。デジタルメインのリリースっぽいから仕方ないんでしょうか。ともかく、DEATHSPELL OMEGAやVIRUS、後期ALTAR OF PLAGUES、脱プリブラ期のNACHTMYSTIUMなど、前衛性と暗黒な雰囲気を兼ね備えたブラックが好きであれば聴いて損はないと思います。素晴らしいです。
かつてブラックメタルでは有数のレーベル、End All Lifeから出したSLIDHRとのスプリットが好評を博したバンドが、約9年の時を経てついに1stフルをリリース…しかもレーベルはかのNorma Evangelium Diaboliということで、ブラック好きには大注目となっている一作ですが…これはかなりの力作です。
OLD MAN'S CHILDやGROMTH、SUSPERIAなど、メロディック/シンフォニックブラック絡みのメンバーによるバンドですが、シンフォブラックばりの大仰さのあるキーボードと、フューネラルドゥームの凌遅的絶望感をミックスさせたような、独自のエクストリームメタルを展開。通常の葬式系のモノクロームな世界観とは若干情景の異なる、色の付いた絶望を見せる音をCDの収録時間限界まで詰め込んだ作品。
このバンド、メロディの展開によるドラマ性の演出が物凄く上手いんですよね。例えば、インスト明け二曲目の「The Burning Eyes of Vengence」。この曲のブラックメタルらしい邪悪でメロウなトレモロから、メロデス的なクラシカルで優美なメロディに変化していくパートなんて、あまりに劇的で、あまりにクサくて…思わず悶絶してしまいました。…最近話題になったバンドで言うなら、HYPERION辺りをチェックしてる人はツボにハマる可能性大です。
ブラック/デスメタルとして紹介されている事が多いですが、ここで聴けるのは一般的なブラッケンド・デスとはかなり趣きの異なる音。MAYHEMの「Grand Declaraion of War」、SATYRICONの「Satyricon」アルバムなど、大御所にも明白にブラックを基本としつつ、そこから逸脱している作品は多くありますが、この作品もそれに近い雰囲気を感じますね。ミッドテンポやメロウなギターを重視しつつ、クリアな音質によるキレの良い暴虐パートも配したかなりドラマティックで変化に富んだエクストリームメタル。
オールドスクールさ強めのバンドサウンド+神秘的なキーボードの組み合わせや、喉を潰すのも厭わないような衝動に満ちた絶叫など、EMPERORの伝説的な1stアルバムを想起させる場面も多い作品。場面によっては、はっきり「Cosmic Keys~」「I am the Black Wizards」辺りの楽曲の影を感じられたりするのはご愛敬でしょうか。キーボードのフレーズも印象深いものが多いですし、楽曲が金太郎飴になっていない質の高いものであるのも素晴らしいです。
Metal Bladeからの発売、Terrorizer誌にもレビューが掲載されるなど、結構プッシュされてる印象。販促シールではBEHEMOTHが引き合いに出されてたりするので、ブルータル路線のバンド化と思いきや、意外にもロック寄りのミッドテンポ中心のグルーヴィなリズム、情感の籠ったリードギターで聴かせる音で、冒頭からハンドクラップ入れたくなるようなキャッチネスがありますね。
SECRETS OF THE MOONの中心人物であるsG氏らによるプロジェクトという事で購入。…この後に出た、SOTMの新作「Sun」は今までの路線をある程度引き継ぎつつ、ややブラック離れしたアプローチで更なる深遠さを感じさせてくれる一枚でしたが、この作品はそのステップ・ストーン的な役割も大きかったのではないでしょうか。
これは本当に名曲。 ソロならではの緻密なアレンジがありつつ、刺激的でキャッチー極まりない歌メロやロックとしてのダイナミズム、彼の音楽ならではの頽廃性があり、サビでの小憎らしいまでのクールでキマった歌い回し、呻き声のようなシャウトなど、ヴォーカル部分にキッズが真似したくなるような要素が多くて素晴らしい。 しかしこの歌メロを聴くと、清春さんは印象的な歌メロを書く天才かもしれない…と思わされますね。「Love nest in love nest in」とか一回聴いたらメロも歌詞も頭に刷り込まれて脳内リピート止まらなくなります。
現ULVERのメンバーで、SUNN O)))のライブメンバーでもあるというDaniel O’Sullivan氏のプロジェクトかつ、ULVERの新譜をリリースしたHouse of Mythologyからのリリースという事で、ブラックやドゥーム、エクスペリメンタルメタルなどの愛好者から注目が集まっているであろう一枚。ジャケットのウサギもお洒落で可愛らしく、つい手に取りたくなってしまいます(笑)。
バンド名の示す通り、「戦争」をテーマにしたブラックメタルを演っているバンドですが、いわゆる「ウォー・ブラック」的なダーティでアンダーグラウンドな手法ではなく、整ったヘヴィな音で畳み掛ける、ブルータル・ブラック的な音に近い感じですね。時折トレモロリフによるメロディを前に出すパートはあるものの、メロディアスさを過剰に押し出さず、あくまで冷徹で無慈悲な音を貫くスタイルはMAYHEMの「Wolf’s Lair Abyss」辺りと共通するものがあるかも。
ブラックメタル本来のRawさを残し、モダンになりすぎないプロダクション、トレモロ含有度高めながらメロウさに頼りすぎず、殺傷性や殺伐さにも富んだリフ捌き、全体を通じて感じられる、マッシブな暗黒性…DISSECTION辺りの流れを汲む、如何にもスウェディッシュなメロディック・ブラックですが…。こんなことを言うのもなんですが、「Sworn to the Dark」「Lawless Darkness」期のWATAINにめっちゃソックリな音(笑)。マジで一瞬聞き違いそうになるレベルで似てます。
変り種ブラックとして、特にアヴァンギャルド性を薄気味悪さやダークさに転化させているバンドとしてよく名が挙がる彼らですが、ほんの触りを聴いただけでもそれを納得させられてしまうような作品ですね。路線としては、LEVIATHANやDEATHSPELL OMEGAなどのカオティックで暗黒趣味の強いブラックと、LE GRAND GUIGNOLやPENSEES NOCTURNESなどの前衛的で演劇趣味なシンフォブラックを掛け合わせたような、不気味なアンビエンスを醸し出すブラックメタル。