Mandatorの前身バンドというか、オランダ時代に名乗っていたのがコチラになります。おそらくバンド名がエフェクターのペダルにちなんでいたのが、よくなかったんじゃないのかなぁと勝手に推察しますが、このバンドはスピードメタル愛好家の間では幻の作品と崇められ、オリジナルのアナログ盤は数万円の価格がつくほど、2006年にCD化されましたが限定品の為、直ぐに完売。こちらに登録されているのは、2006年バージョンで、デモ音源を2曲追加したもの、そして2017年に晴れてDark Symphoniesからオリジナル8曲+デモ『No AIDS in Hell』の4曲を完全追加されたものが再発されました。こちらも限定品故に見つけるのは難しいでしょうが、なぜマニアが血眼になって捜しているかを、その耳で確かめて欲しいですね。
シンガーに小野正利、Rajasの森川邦子、ギターはMarinoの大谷令文、キーボードに永川敏郎等を迎え、業界関係者が集う会場で行われた当日の映像つきのアコースティックライヴ盤。リリースが2004年ですから小野さんは、まだソロシンガーですね。 当時、盛んに行われていたHARD ROCK SUMMIT、今作はそのアンプラグドヴァージョンなのですが、正直、なんだか緊張感に欠けたショーであり、特にDVDの方を見ていただくと、それは顕著なのですが、参加するミュージシャンはガチンコで頑張っているので、その努力に耳を傾けるのが一番、どうしても業界関係者の姿がチラホラと脳裏をよぎりますが、小野さんは何を歌っても上手い。センちゃんこと森川邦子は④⑤⑥で歌いますが、全て日本語、選曲の渋さも手伝い、なんとなく昭和歌謡ステージ感が漂い、少々バタ臭い雰囲気に恥ずかしい気分を味わいます。特にCharが売れる為に書いた⑥なんてね。どうせなら桑名正博のセクシャルバイオレットNo.1とかもやりゃ良かったのにと思いますが、そのあたりもロックに無縁の業界関係者を慮った忖度なんでしょうかね。
何度も聴くようなアルバムじゃないし、この時期にアンプラグドなど、もうやり尽くした感があり、新鮮味も皆無だ。それでも手にしたのは、当時、うだつの上がらない小野さんがメタルを歌うって言う事に興味を惹かれたのが最大のポイント。彼はHARD ROCK SUMMITの常連でもあったしね。ロックのスタンダードを上手い歌で聴きたい、そんな当たり前の事をさらりとこなす実力派のパフォーマンスを楽しみましょう。
①②③④⑧⑨⑩小野正利 ⑤⑥⑦森川邦子
①Is This Love (Whitesnake) ②Open Arms (Journey) ③Endless Rain (X-JAPAN) ④Holiday (Scorpions) ⑤The Rose (Bette Midler) ⑥気絶するほど悩ましい (Char) ⑦Mercedes Benz (Janis Joplin) ⑧Parisienne Walkways (Gary Moore) ⑨People Get Ready (Rod Stewart) ⑩Dream On (Aerosmith)
前作の好評を受け一年後にリリースされた2nd。まずは大幅にサウンドプロダクションが向上、プレイ、楽曲、共にメリハリも生まれ、より剛毅でメロディックなパワーメタルサウンドに移行。その音楽性の根幹を支えるのはギターのコスタ・ヴィレトとベースのに成らずプロデューサーとしても名を連ねるコスタス・スカンダリスなのですが、元Until Rainで現Beast in Blackのヤニス・パパドプロスのパフォーマンスが最大の貢献でしょう。 曲に合わせ表情豊かに歌い上げる彼の灼熱の歌声は、憂いのある熱情型パワーメタルには必要不可欠、バンドの推進力となり、その魅力を発揮しています。楽曲の質と演奏の精度も高まり、本国ギリシャを中心に話題を集める事に成功、直ぐに3rdの制作へと進める事となるのですが、このバンドの新たなる門出を祝うのに相応しいアルバムでしょう。実質1stとも言える快作でしたね。
Plays fingerstyleって…嘘だろうと思わずにはいられない情熱的なリードプレイを聞かせる孤高のギタリスト、コスタ・ヴェルト率いるバンドの1st。シンガーはイタリア人のピエロ・レポラレとアルバニア系のギリシャ人による混合チーム。 少々メリハリに欠ける面はあるが、情熱的なメロディがクールに装うへヴィメタルサウンドを披露。この手の熱き血潮を滾らせる剛毅なHM/HRサウンドが大好きな方なら楽しんでもらえるでしょう。 このバンドが本領を発揮するのは次作以降のなるのだが、彼らの歴史を紐解くうえでもマニアなら一度は聴いてほしい一品ですね。
またかよぉと言いたくなるセルフリメイク&ベストアルバム。彼らのベストアルバムめちゃくちゃリリースされているからね。そんなもんまともに付き合ったら破産するわい。それにセルフリメイクでしょ。マイクの時にやったしさ、元曲をぶっ壊した新生LoudnessなRockshocksヴァージョンあるじゃんと、Thunder in the East 30th Anniversaryで気をよくしちゃったのぉ、またやりやがって、その手は喰わんわいと軽く拒否をきめかねていたのですがね。最近、かなりお得な値段で手に入るとの事で購入を決意、結論から行くとヤラれましたね。久しぶりに殺られましたよ。 初期の3枚に拘り現メンバーの手による選曲&リメイクと言う事なのですが、全盛期さながらのスタイルに回帰。音質も以前のモノよりも当然良くなっているので、カビ臭い古さを一掃。Rockshocksで感じた違和感もなく今の時代にアップデートすることに成功と多くのファンが望む形でのリメイクに着手してくれました。 山下と鈴木のド迫力のリズム隊が生み出す屈強なリズムプレイの凄みたるや、確かに聴きなれた樋口ドラムとは違いますが、鈴木のパワーヒッティングドラムもまた、後任を務めるのに相応しい人材である事を今作で明確に物語っているでしょう。山下のベースも音像がクリアになりしっかりと聞こえるようになったしね。 肝心の高崎も妙なインド感を出さずに期待にこたえる渾身のリードプレイを披露。研ぎ澄まされた感性が爆発するが如きキレまくりのリフワークから、元曲のイメージを損なわない緻密なアレンジによるソロワーク、そのアイデア豊富なリードプレイの数々に、世界が認める天賦の才を発揮していると言えるでしょう。本当に目から鱗ですよ。 そして特筆すべきは二井原実先輩の歌でしょう。55歳を過ぎたオッサンとは思えないパワフルな歌声で魅了。良く昔の方が高い声が出ていたと言われますが、それはちょっと違っていて、今の方が高いレンジをフォローしているし、何より声が強くなっています。昔の方が細く繊細だったので、違う感触から声が出ていないと感じるのでしょうが、実際は今の方が高いところを歌っていますのでね。もし、二井原実先輩が衰えを隠しながら歌っていたら、今作の感触はかなり変わっていたでしょう。先輩の熱情が迸るハイトーンヴォイスの艶やかで色気のあるパフォーマンスが最大の聴きどころ、鍛錬を怠らずに努力をした証拠ですね。 毛も薄くなり体系も変わりましたが、熟練されたパフォーマンスに魅了されっぱなしでした。
手放しで大絶賛ですが、それは今までの歴史があったからに過ぎず、今作は古いマテリアルのリメイクに過ぎない。ある意味、昔の名前で出ていますな作品です。それは前向きなリメイクなのか昨今のリバイバルブームに乗っただけかのかは分かりませんが、ここで聴けるサウンドとミックスは、まさに再結成されてから、多くのファンが待ち望んだ方向性だと思います。 個人的には遅すぎた決断であり、何をいまさらと素直になれなかったりしますが、柴田直人と一緒に凄いアルバム作れたんじゃないのとか思ったりするのでね。しかし既にアナウンスされた次のアルバムはヨーロッパでのリリースも決まっていたりと、今作が起点となりようやく進むべき道を決めたのであれば、大いに支持をしたいと思います。 ドイツを中心にツアーを行い、今度は東欧圏など攻めて欲しいね。ロシアでアーリアとツアーなんて見てみたいわ。 そして次は撃剣霊化にSoldier of Fortuneのセルフリメイクも聴いてみたい。
撃魂霊刀というサブタイトルは4枚目の『撃剣霊化』からでアートワークの旭日旗は『THUNDER IN THE EAST』からと、随分と過去の財産にしがみついた印象を持たせる今作、今までも原点回帰をアナウンスするアルバムをリリースしてきましたが、ここまで露骨なのは初めてで、随分な集金作業をしてきたなぁと思ったのが個人的な感想(音楽性はモダンなままなのに過去のノスタルジーを渇望しているファンには気の毒なほど、そそられる手法)。当然、後ろ向き過ぎる活動には興味を持てないので完全スルーを決めていたのですが、未開封の新品を500円以下で手に入れるチャンスがリリースして間もない頃に訪れたので購入、ネガティブなイメージは視聴意欲を刺激しなかったのですが、概ね当時の彼らのスタイルを踏襲。 わりとキャッチーなリフワークや往年のイメージを刺激する楽曲も散りばめ、往年のファンの事を慮った面も感じさせつつ、2000年以降のモダンさも残しヘヴィだか聴きやすいという作風にまとめた一品。構築美溢れた楽曲群を愛する初期のファンにとっては今作もどっちつかずのI WANT YOUな事に変わりはありませんが、そんなBACK TO THE 80’だけは個人的に勘弁してくれと思っているので、彼らの歴史を語る上でメンツを保てた一枚となるでしょう。自らが築いた伝統を壊し再構築した近年の作風に通じる意欲作、一筋縄ではいかないスリルと革新さの比率が評価を分けるのでしょうが、安易な原点回帰ではない攻めの姿勢は大いに評価できますね。 でも、その後、素直にファンの意向を踏まえクラシックシリーズをLIVEや作品で連発するとは夢にも思いませんでした。特に海外では尚更の事だったりします。2017年に行われたクラシックシリーズなんて、二井原実先輩全盛期を凌ぐ歌声で実力を発揮していましたね。そろそろ進むべき方向を決める時でしょう。 アメリカで受けているへヴィなおしゃれメタルサウンドを意識し続けるのか、二井原実先輩のソウルフルな歌声を生かした、かつての自分たちを今の時代にアップテートした正統派サウンドに舵を切るのかをね。
ノルウェーというバンド名なのに、何故かニュージャージー出身というややこさでチョイと有名なメロディックHM/HRバンドの記念すべき1st。これでゴリゴリのハードコアメタルでもやっていたらどないしようかと不安な気持ちもありそうですが、そこはバンド名から推察できるようなスウィート路線の音楽性で勝負。アメリカのバンドなんで、モロに北欧風とはいきませんが、AOR風の洗練された叙情派HM/HRサウンドが目白押し、嫌みのないキャッチネスさと、コマーシャルリズムを追求した音楽性は、どれも質が高く、スリルはないが抜群の安定感を披露。ロック然としたダイナミズムと歌モノの融合、煌びやかさと透明感のあるメロディ、詰めの甘さもあるが、哀愁を滲ませたメロセンスの才覚に唸りますね。 聴かせる事を中心としたミドルナンバーが中心ですので、ポップだろうが軽かろうが、ダンスミュージックだろうが、テンポが速くなくとダメだという人には、眠くなるような一品でしょうが、メロディを愛するマニアなら楽しんでもらえるでしょう。 今作に一番近い音楽性は、ICONの『Night Of The Crime』ですね。あの音に共感出来るマニアなら手を出しても損はしないでしょう。
現在の欧州におけるトレンドを伝えるような生々しく、そしてへヴィな音像を叩きつけてきた意欲作。盟友になりつつあるアンディ・スニープの手腕による、モダンさも補完された音作りとの相性も良く、全盛期の流れを汲みつつも、けっして過去の焼き回しでは終わらない制作意欲に頭が下がりますね。 所謂『Fast As A Shark』や『Braker』のような即効性と求心力の高いスピードナンバーはないかもしれないが、哀愁とキャッチーさを併せ持った男気あふれる④のような曲を放り込んでも違和感を感じさせないのは見事、ウドよりも柔軟さがあるマーク・トーニロの存在も際立ちますね。また随所に設けられるウルフの扇情的なフレージングの旨味、単に流れで弾くのではなく、スピードに乗らずにスローダウンさせるなど、改めて上手いなぁと感心させられましたね。 アクセプト印満載の③渋い④そして好戦的なリズムが耳を惹く緩急を織り交ぜた⑤と3曲の流れは絶品でしょう。 前作『BLIND RAGE』を聴き、分かりやすさに欠けると感じた人には、厳しい路線となるだろうが、多様性を帯びた楽曲を一つの方向性に集約し男気溢れる任侠メタルサウンドへと仕上げた手腕に改めて舌を巻きましたね。今作を聴き、このバンド暫くは安泰でしょう。そしてウドじゃないアクセプトは認められないと言う頑固なファンにこそ聴いて欲しい一枚でもあります。今作にはこれまでの音楽性を集約したような魅力を感じるはずですから、そしてマークの柔軟だがパワーを落とさない金切りヴォイスの官能的な響きを堪能して欲しいですね。欧州全般を股に掛け快進撃を続ける彼ら、今が全盛期をいっても過言ではない、メタルシーンの王者たる威厳と充実感に必ずや満足を覚えると思いますよ。聴き込むほどに新たなる発見も出来る実に魅力的な一枚へと仕上げてきましたね。