ドイツの『Long Island Records』から1994年にリリースした3rd。哀愁のあるメロディを優しい語り口で魅力的に歌い上げており、シンガー、ジミー・マーティンの魅力を余すことなく伝える事に成功。爽快で躍動感のあるハードポップナンバーからバラードまでと、ソロシンガーとしての王道を押さえた楽曲を用意、このソフトなAOR系のロックサウンドに彩られた今作は往年のゼロ・コーポレーションが健在だったらほっとかないクオリティを誇っており、粒の揃った12曲に身も心も癒されますね。嫌みにならないキャッチネスさと泣きすぎない哀愁、キーボードを軸にした作りだがロック然としたダイナミズムさも失わないミックスを施しており、清々しさとロマンティックなムードに包まれた楽曲はどれも魅力的でしたね。歌モノロックが好きな方は手にとって損はしないでしょう。
Mausoleum Recordから1984年にリリースした1st。4thから彼らの事を知ったクチなので予想外のメタリックなサウンドを驚かされました。NWOBHMよろしく剛毅なリフワークを刻むツインギターが放つリードプレイのカッコよさはオープニングから発揮されており、ソロパートのスリリングな展開など聴いていて実に面白い。楽曲自体はフレンチ産の軽やかさや湿り気よりはジャーマンメタルのような武骨なスタイルを踏襲しており、力技でねじ伏せる短絡さがやや面白みに欠ける面もあるが、そこがMausoleum Recordsと言える愛すべき音楽性を世に提示いているようでやっぱり面白い。サビでタイトルを連呼する攻撃的な『Danger』静と動の対比が面白い『Running with the Devil』メタルアンセム的な『Don't Dream Too Much』など前半から即効性に優れた楽曲も用意されているので、それらの曲が苦にならなければラストまでスッとイケるでしょうね。Mausoleum Recordマニアは勿論ですがB級メタルマニアを自負する猛者には惹きつけるものがあるかと。
どこを切っても溢れ出る北欧ならではの哀愁のメロディとシャープな質感は、前作の路線を推し進めつつも更に磨きを掛けてきた印象が強い1984年リリースの2nd。その魅力は野暮ったいが①②とヘヴィなミドルナンバーにも表れ、哀愁の旋律が躍動する③、回転するリフワークと泣きの旋律が印象的な④、歌い手の力量は追い付いていないがヘヴィでダークなミドルナンバー⑤の濃厚な世界観、垢抜けないが北欧的な魅力輝くシャープな疾走ナンバー⑥、メロウなサビメロも印象的な⑦、泣きのバラード⑧と硬軟バランスの取れた一枚としてマニアならずとも惹きつける魅力もある一品へと仕上げてきました。ちなみに今作のオフィシャルCDは存在しておらず、サビがチョイとハズい『Heavy Christmas』、EYE TO EYE路線の『Young And Wild』、バラード『Lorraine』が収録されたボートラ3曲入りのMetal Rendezvous盤はブートらしいので購入する際は覚悟が必要ですね。そしてiTunesから『Screaming For a Riot』と『City Lights』が2曲追加されたものが出ています、こちらは幻のカセットヴァージョンに収録のモノなので貴重ですね。
220VOLTと言えばマックス・ノーマンが手がけた『Eye to Eye』が代表作として取り上げられることも多く、今作のような作風とはチョイと違いますが、ある意味メタリックという点で語ると今作がもっとも攻撃的な面をフィーチャーした一枚になるのかもしれません。押しの強いリフワークと北欧ならではの冷ややかで美しい旋律、マイナー臭は全開ですが北欧ブランドを十分に誇示する内容かと思います。SCORPIONSあたりをイメージさせるメロディックなミドルナンバーからJP仕込みの疾走ナンバー⑤、RIOT+RAINBOWな⑨、強烈な泣きを発散するバラード④、青臭い声質がマイナー臭を撒き散らしていますが、これぞ北欧メタルな哀愁が随所に溢れており、メタリックな北欧HM/HRサイドをフィーチャーしていますね。TORCH、MADISONなど初期の北欧スタイルが好きな方にはたまらんモノがあるでしょう。マイケル・シェンカー、ランディ・ローズよろしくな光沢のあるツインギターの泣きは、やっぱりお国柄のなせる技でしょうね。エエわ
前作『Eternal Black Dawn』から13年ぶりにリリースされた2016年5月発売のオリジナルアルバム。メンバーは前作のメンツにドラムもスティーブ・ウイティッヒが復帰したりと懐かしい顔ぶれも揃い、あのけたたましいOMENサウンドが復活。やや地味で生彩を欠いた作風の前作よりも、よりソリッドでパワフルなパワーメタルサウンドを披露。高揚感を煽る勇壮なメロディ、メタリックで滑らかなギターサウンドはケニー・パウエルならではの細やかな仕事ぶりを発揮、特段これといった押しの強さはないが、屈強なスクラムを組んだアンサンブルは彼らの真骨頂、この独特の響きこそダークなOMENサウンドの根幹を支えるものと思っているので、今作はその辺りが初期の頃を思わせる懐かしさがありますね。歌い手も時折JDキンボールを思わせる面もあったりと、往年のファンにも十分訴える面はあるかと思います。もう少しキャッチーで愛想のいいスピードナンバーを放り込んだ方が、ライトリスナーにはウケもいいのになぁと思うのですが、この重厚で硬派なスタイルこそメタルの魅力と思ってるし、彼らが繰り広げるヨーロピアンテイスト満載のドラマティックな楽曲を聴き体中に熱を帯びる感覚を今作でも十分に感じますね。なんとか商業ベースにのり、コンスタントに作品がリリースできる環境が訪れる事を切に願いますね。
お得意のシアトリカルなパフォーマンスも目に浮かぶ芝居掛ったハイトーンヴォイスと時代性を加味したパワー漲るヘヴィメタルサウンドを披露した1991年にリリースされた2nd。ほぼ自主制作であろう環境がもたらす音質のヌルさはなんともしがたいがリジーボーデンとサヴァタージを掛け合わせたようなスリルとアグレッションにホラータッチを織り交ぜた楽曲の質は高く、ドイツのアチラとスペルがAとEの違いだけでロゴにも思いっきりカボチャだったりと(冷静に考えるとスペルの違いは大きいのですがアホのワタクシの脳みそでは間違えますよん)US産正統派HM/HRシーンに名を刻むバンド故に、その類似性が認知度の足を引っ張っているのなら残念です(バッタもんじゃないよ)。 当時のアメリカのミュージックシーンにおいて、彼らもメインストリームの波の中で自らのアイデンティティを確立しようと試行錯誤、更には音源リリースへ向けて行動を起こすもマネージメントに恵まれず、幻の2ndデモ『Victims of the Night』抱え活動は停滞、その中で新たに録音した今作を6年ぶりにリリース、そして『Victims of the Night』1997年まで待たされるとは運も実力のうちとは良く言ったものです。重々しいヘヴィなグルーブ、光沢のある鉛色の輝きがギラリと光るエッジの立ったギターリフとシアトリカルなパフォーマンスが導く刺激的なホラーショウサウンド、1980年代の頭から今日まで、途切れることなく活動を続けているバンドの底力と、これしか出来ないんだという意地を感じますね。ちなみにワタクシが所持するのは2013年にPure Steel Recordsから再発された、こちらに登録されている12番目まで収録されたヴァージョンですので、17曲入りのはマニア心をくすぐりますね。
大橋隆志率いるキャッツインブーツのシンガーだったジョエル・エリス(キャッツインブーツはアメリカのキャピトル・レコードとアルバム8枚・契約金100万ドルという大型契約を果たし当時は話題になったがアルバム1枚で解散している)とL.A界隈では腕利きのドラマーとして知られるフランキー・バネリらが中心となり結成されたバンドが1992年にリリースした1st。ジョエルのワイルドで歪んだセクシーヴォイスを中心にシリアスなヘヴィロックを披露、軽快な『The Hand That Feeds』で幕が開け乗り良く突き抜けると思ったら、わりとミドル&バラード系の楽曲が中心で聴かせる楽曲が多い、その分メロディにも気を配り、大味なアメリカンロックとは一味違うメロウな味わいがあり、⑤⑥の流れなど顕著に感じさせてくれるでしょう。アルバム全体のクオリティは低くないが、やや流れが単調になりがちでシンプルにスッキリとノラしてくれたらもっと魅力も伝わるのになぁと歯がゆい気持ちを味わい、中盤にオープニングナンバーみたいな曲を放り込んでくれたらと楔になるのですが、まぁ無い物ねだりと言う事で、この安定感のある演奏と歌を楽しむのが一番でしょう。今作で魅力的なフレーズで自己主張をきっちりと果たしているギタリストは、ジェイク・E・リーの後任としてザック・ワイルドらと最終選考まで残ったと言われる、ゲイリー・ホーイが参加しているのが最大のポイントかも知れませんね。バンドは短命に終わり、ゲイリーは、ドラムのフランキーとベースのレックス・テニスンらとソロ作を作成、その後、彼のルーツの一つとなるジェフ・ベックよろしくなギターインストもので大成功を収めますね。ゲイリー・ホーイが真正面からメタル系の作品に参加する一品として彼のファンなら押さえておいても損はしないし、普通にワイルドなアメリカンロックが好きな人にも十分訴求するものはあるでしょう。一頃大流行りのガンズ印のワイルド系バッドボーイロックとは一味も二味も工夫を凝らした楽曲が詰まっているので。
オリジナルは1996年に国内のみでリリースしたUS産のメロディアスHM/HRバンドの1st。話題になったのは今作でドラムを叩くのが鳴り物入りで全米デビューを果たすEZOのドラマー、アンセムやラウドネス、浜田麻里などたぎにわたって活動した本間 大嗣が参加している事で知られる一枚。作風はUS産らしい爽快なメロディと歌を中心とした作りだが時代が時代だけにダークな面もしっかりフォロー、ギターもヘヴィにチューニングされており、コマーシャル性の高い分厚いコーラスを重ねた歌とバックの重さを残した演奏は、微妙なかみ合わせかもしれませんが、多彩なポップセンスとカラフルさが程良く弾け、ポピュリズム溢れる音楽性となり昇華されております。思いのほかギターオリエンテッドな作風にもなっているし、デカイ会場が似合うサウンドは聴いていて心地よい。即効性の高いキラーチューンのオープニングナンバー『Tricks Up My Sleeve』なんてメリハリのある良く出来た曲ですよ。オリジナルのタイトルはバンド名そのままだったのですが、2011年に再発際にデモ4曲をプラスしタイトルも『Tricks Up My Sleeve』に改名、勢いもあるがメロディ重視の楽曲は、類型的で新鮮味に欠ける面もあれど耳を傾ける価値はあるかと思いますよ。メロディ派にはおススメに一品だし本間ファンは押さえたいでしょう。相変わらず美味しいオカズは叩き出しませんが堅実でした(笑)
今年の頭に今作発売30周年を記念してCD2枚とDVDをカップリングした3枚組でMetal Blade Recordsからリリースされた一品。オリジナルを聴いておらず、少々不安はありましたが、内容と価格が良かった(3000円以下)DISC1は今作丸丸+新曲2+今作のデモを収録の22曲入り。DISC2は1stフル収録+ラジオ音源+前身のParadox時代のデモ+2013年再結成時のデモ(1stのシンガー復帰)+2015年時のLIVEのお得感満載の内容にDVDでは更に4時間分の映像があり、最近のHeadbangers Open Air出演時の模様から1986年から1990年までの映像ありと、とりあえずパワーメタル系サウンドが好きな方は買ったらエエんじゃないの?と言いたくなるお得な一品として復活してました。というかバンド時代が再結成していたなんて万感交到るものがありましたね。