新生タンクのフルアルバム第三弾。ポーランドのMetal Mind Productionsからのリリースには少し驚きましたが、新シンガーにドラゴンフォースのZPサートを迎え入れ、より正統性の強い哀愁のHM/HRサウンドは益々磨きが掛かりメロディ愛好家にはたまらんものがあるでしょう。インパクトも派手さもないが、哀愁度の高いツボを押さえたツインギターの旨味も盤石だし、堅実な作りだがメロウかつエッジの効いたブリティシュサウンドは安定のブランドとして聴けるし、マニアにとっては悶絶級の一品、今風の生っぽい音作りも功を奏しているのも好印象。個人的には前任のドゥギー・ホワイトはエモーショナルだが声質のマイルドさがTANKサウンドにおいて、やや深みに欠ける面があったので、こちらのシンガーの方が合っているでしょうね。彼の加入によって洗練度もアップ、そこに不器用な男の背中が語る憂いあるサウンドが、エエ感じでブレンドされアルジー・ワードと袖を分かち目指してきたスタイルが実を結んでいるように感じました。
サブラベルズのカヴァーをやっている、その一点が購入の理由。吉井と言えば静岡のモトリークルーといわれたアーグポリスのベースとして国産HM/HRシーンで活動をしていたのは有名な話ですが、後に女装したパフォーマンスが完全イロモノだったラフなハードサウンドがカッコよい(男になった3rdは良かった)キラーメイの菊池兄弟、多くのミュージシャンを輩出したムルバス~16レッグスのベース広瀬洋一等と結成されたのがイエローモンキー、初期の頃はグラム色の強いロックサウンドと、甘いトーンの声がピッタリとマッチしており、なぜアーグポリスのシンガーはあんなに濁声の雰囲気重視の歌い手で、よっぽど吉井が歌っていればと思いましたね。個人的には吉井のキャリアはほとんど知らないし、イエローモンキーとなるとインディーズのCDを一枚聴いたくらいなのでウンチクを語れませんが、リアクションの加藤純也、44マグナムの吉川、プレゼンスの白田、樋口宗孝の愛弟子メイクアップの豊川によるグランドスラム。メイクアップの山田、河野によるグランプリ。恩田快人を中心に葛城哲也のT.V.のドラマーとして知られるバリバリのロックドラマー五十嵐公太、ダンサーやD.T.Rなどでの活動で知られるフライングVを操る男、藤本泰司などが参加していたJUDY AND MARY(音楽性の変換メジャーデビューって恐ろしいわ)など、当時の元メタル組によるスーパーバンドの一つの認識でしたね。
一聴して感じたのが実に怒りに満ち殺気立った印象を受ける2007年リリースの一品。そのイメージはアッパーな②などにも顕著に表れていますが④のようなギャロップビートが押し上げるメロデイックな展開にはグッときますよね。初期の頃のような猥雑さを廃しつつも、やはり親しみやすいメロディを導入するのが上手く、そこかしこにブラッキー節が聴け、使い古されたと形容されるようなオーソドックスな面もメジャー級の貫禄が全てをねじ伏せ飲み込んで行くから不思議です。本当は頭が良いのにおバカな振りをして「Animal (Fuck like a Beast)」と言っていた頃とは違う面も見せつつも、根底にあるスタンスは変わらない昨今の作風の走りとなる、普遍の魅力溢れる充実の一枚ですね。⑥もエエし⑦もエエよ
オリジナルは1985年リリースの7曲入りの1stにスラッシュ化した1988年リリースのミニEP(⑧から⑪)とカップリングでOld Metal Recordsより2007年にCD化もされた一品。クールな印象を与えるメロディと何処か埃っぽさのあるサウンドはタンク風のヤサグレ感もあり、あそこまで男の哀愁を纏っていませんが、US産の乾いたコンクリートメタルサウンドが好きな方なら聴いて損はしないでしょう。ヘヴィメタルとはヘヴィな曲であって勢いやテンポの速さを競うスピード感とは違う魅力が大切だと思う身としては、やや一本気な面はあれど、重厚なミドルナンバーやスカッとするようなストレートな楽曲を用意し、ドタバタとしたけたたましUS産ならではのあの音にゾクゾクと期待を煽られる瞬間があり、マニアックな世界に導かれる一枚として、3年に一回は通して聴きますね。
猟奇的カルト作品を世に送り出し色んな意味でマニア泣かせと言わしめる「Cult Metal Classics Records」からリリースされた、マサチューセッツ州出身ツインギター編成によるキーボード込みの6人組からなるタイトル通り幻のコンピレーション作。US産とはおおよそ思えない叙情的かつ抑揚をつけたメロディ、ファルセットを織り交ぜ、濃厚な歌い回しを魅せるEd Snow の圧巻のパフォーマンスを支える楽曲群のエピカルな響き、その幾重にも折り重なる濃密な世界観はエピカルなHM/HRを愛する方にはたまらんものがあるでしょう。様式美然としたスタイルに重きを置きつつも独特のアングラ臭も漂い、その世界観をより強固にするのは前出したEd Snowの唄もさることながらKeyのChrist St. Pierreによる壮麗なる鍵盤プレイの数々には息を呑むほどの美しい響きもあり、シンプルなリフワーク基調とする中で猛烈なインパクトを与えてくれるでしょう。あくまでも叙情的なメロディを刻む阿吽の呼吸から生まれる鋭利なリードギターを擁するツインギターの華麗なる響き、スピードを押さえ重量感のある世界観を貫くあまり安定感はあるものの、ややキャッチネスさに欠ける面が、この手のサウンドを敬遠される要素のなるのでしょうが、圧巻のパフォーマンスに支えられた楽曲はどれも魅力的だし、聴きこむほどに壮大なイメージを抱かせる練り上げられたアイデアには惹きつけるものがあるかと思います。今作は1991~1993年にレコーディングされたマテリアルと1989年リリースのEPからなるコンピレーション作なのですが、1991年にリリースされた1stも含めカセットのみのリリースしかしておらず、元が自主制作にも程があるような作品。当時のアメリカンマーケットにおいて、このような作風が当然支持されるとも思えず、また今日においても、けっして新しい音ではありませんが、時代性を飲み込むほどの純粋なエピックメタルとしての手法に基づき勇猛なる世界観を表現しております。それにしれも、このような幻の一品を世に蘇らせたギリシャの「Cult Metal Classics Records」には頭が下がりますね。有名無名に関らず、まだまだ埋もれた名作はありますなぁ。輸入盤市場に対する興味は永遠に尽きんね。
インギータイプのネオクラギタリストとしては国内最高峰に位置する男として国内外のマニアからも支持されるケリー・サイモン2015年リリースのアルバム。最近はネオクラものをほとんど聴く機会も無く、最近の活動を知らないのですがギターの講師や教則本のリリースなどでも高い支持を受けギタリストにとっては大いに興味を惹かれる存在としても注目を集めているようですね。以前のように一人で作り上げるのではなく専任のリズム隊もいるし、ゲストメインボーカルとして元ガルネリウスのYAMA-Bを迎え、所謂、王道ド真ん中のTHEネオクラHM/HRサウンドを披露、卓越された技術とメロディセンスを遺憾なく発揮しており、サビでパッと視界が広がり飛翔する、ある種のカタルシスの開放、それらはその筋のサウンドが好みの方にはバチコーンと心に響くものがあるでしょうね。個人的にはバタ臭いYAMA-Bの唄が苦手なので、ケリー・サイモンがリードを取るネオクラ過ぎないハードなI Am Your Judgement Dayや強烈なインストプレイを堪能できるTales Of The Viking、Attack By Zero、岡垣正志が客演している血液型パープルなNobody Is The Same、ラストを飾る感動的なバラードStay With Me Foreverが印象的ですが、それ以外のナンバーもネオクラ様式美サウンドとしての出来は素晴らしく、彼独特のタイム感から生み出される間と繊細なタッチから繰り出される絹の如き滑らかなフレーズの美しさと、ハードなタッチから繰り出される芯の強いメタリックなプレイの数々にマニアならずとも興味を惹かれるのではないでしょうか。
英国産の5人組によるプログレハードバンドが1982年にリリースした一枚。流しの中古屋さんで買ったので詳しいバイオはさっぱり分かりませんが、Vo.Gで活躍するHoward 'Tosh' Midlaneが中心人物らしい。いかにも英国のバンドらしい湿り気を帯びたメロディとトラッド風味満点、泣きのギターを散りばめたムード満点の叙情派サウンドを披露。高い演奏力に支えられた楽曲の構成力は高く、サックスなども盛り込みちょっぴりブルージーな面もあったりと聴きこむ程に奥の深さに興味も惹かれます。とは言えハードな楽曲を味わえるのはA面の2曲Julius、Queen of Tiger Bayだけで、B面はかなり大人しい落ち着いた楽曲で占められておりますが、ラストのOne More For The Road の雄大な世界観も良いフィーリングに包まれていますよ。繊細なアレンジとメロディを多角的に楽しめる一枚、たまには箸休めにいかがでしょうか
来年早々バンド結成45周年を祝って「LOOK AT YOURSELF」を中心とした構成の大阪と川崎で行う彼ら、しかもゲストにはジョン・ロートンのルシファーズ・フレンドときていますからね。見に行きたいなと本気で悩んでいるのですが(ロートン目当てです)ヒープと言えば今作を代表作と押す人が多いでしょうね。濃厚なプレイを楽しめるスピードナンバーの①やドラマシズム溢れる③この2曲を聴くだけでもお腹いっぱい、もう一杯となるのですが、美しいハーモニー、ヘヴィなオルガンや幻想的な鍵盤楽器、さらにはミックのワウをかましたギター、シンプルだがメロディアスなプレイが耳を惹くベースと、的確なビートを刻むドラミング、濃密だか余分な要素を排除し研ぎ澄まされた感性がぶつかり合い昇華される様の凄みには、もはや驚嘆あるのみ。今のご時世もっとヘヴィでハードな楽曲やサウンドはあれど、濃密な音の塊が混然一体となり聴き手を押しつぶすような迫力は、今アルバムならではのありようだと思わずにはいられません。豊富なアイデアを纏め上げ破綻をきたさぬよう丁寧に作り上げたミュージシャンシップの賜物が散りばめられた70年代ロックを語る上で外す事の出来ない至高の一枚。どうやったってレトロな音ではありますが若い人にこそ理解してもらいたい楽曲は詰まっていますね。