Nuclear War Now! Productionsというデス・ブラック系を中心に作品をリリースする傍ら、マニアックな廃盤ものも復刻する事に尽力するレーベルから2010年に世に出た幻の一品。参加メンバーはオーメンのケニー・パウエルがいた「The Dominatress」のラインナップ。録音しているのは1st収録の楽曲。どのような形でこの音源が眠り目覚めたのがは分かりませんが、オリジナルとの聴き比べが一番の楽しみ方でしょう。デモ音源と思えわれミックスの違いなど興味深いのですが、今作の3曲目に収録されている「Dy By The Blade」は1stのオープニングを飾るインスト「Lions Roar」の唄ありヴァージョンでしょう。
荘厳なイントロに導かれ目の覚めるようなシャープさが疾走する①の「Run Too Fast」で幕が開ける4th 。続いての②「Still Got Time 」では今までにない唄を聴かせるポップな曲を披露、いよいよ狭いイタリアを飛び出しメジャーシーンを意識したのかと伺わせるような歌曲を放り込み幅広い音楽性を披露しようと準備しているのが窺い知れますね。⑥ではパープルのカヴァーを披露、インストナンバーの⑦「Ridge Farm」とイタリアのパープルと呼ばれるのに相応しいアレンジと腕前を見せつけ、よりソリッドでシャープな現代的アプローチがカッコイイ。惜しむらくは全般的にハモンドのボリュームが下げられ高らかに裏で鳴りまくるあの音が大好きな身としては少々物足りないのだが、それでも随所に効果的なプレイとフレーズも持ち込にバンドの生命線たる魅力は失われていないので嗜好の問題でしょう。リズム隊のアンサンブルも今まで以上に屈強なスクラムを組みキーボードとメタリックなギターとの絡み、それは本当に興味の尽きないセンスと緊張感溢れる熱の籠った名演の数々なり、聴き手の好奇心を掻き立てるでしょうね。個人的には前作よりも地味な印象を受けるし、全般的に様式美色を捨てシャープなキレと無駄を削ぎを落としたアレンジに比重を置き、その分アクは薄まりポップでストレートな面も増えましたが、ギターのタイプは違えど後期レインボー的な要素もチラホラ感じられ、やっぱりイタリアのパープルと呼ばれるのに相応しい一枚だなぁと痛感させられますね。メタル一筋○○年、彼らを知ったのは3~4年前、ヘヴィメタルの奥深さに身震いします。本当に興味は尽きないな。
ギタリストが交代後の1983年にリリースされた2nd。前作同様ハモンドが鳴り響いていますが全編に渡り出しゃばるのではなく、ここぞと言う時に前に出て効果的なプレイを披露、哀愁の疾走ナンバー⑦の「Outside Of Society」ラストを飾る⑧の「Russian Roulette」等で聴けるフレージングの美しさとパッショネイト弾けるプレイには胸打たれるでしょう、特にハードなギターが絡んできてからの色気とメタル然とした攻撃性の相乗効果はこのバンド最大の聴きどころ、音質も含め荒削りな面もありますがNWOBHM由来の熱情と哀愁が程良く溶け合う良質なメロディと攻撃性溢れるメタルサウンドを2ndにて確立、オープン二ングを飾るハードな①「Get Up, Shake up」哀愁のバラード③「Don't Be Looking Back」激しいアーミングから走り出すLIVEでも重要なレパートリーともなっている④「A Race with the Devil」など名曲も揃い パープル色も程々にメタル然としたアレンジはマニアのみならず多くのメタルファンに訴求する効果的なサウンドを響かせているでしょうね。個人的には⑧だけでも聴いて欲しいですね。イタリアンメタル史に燦然と輝く名曲ですよ。
IRON MAIDENと繋がりの深いバンドとして知られるポール・サムソン率いるバンドの3rd。サムソンと言えば所謂、NWOBHMと言えば的なサウンドとは違いパンチの効いたノリの大きいリフワークはあれどブルースベースの渋いHM/HRを基礎に、どちらかと言えばオーセンティックだ。勿論、サンダースティックのパワフルなドラムにブルース・ディッキンソンの激しいシャウトは勿論だが、その豊かな声量は地味な作風の中で実に朗々と溌剌としたパフォーマンスを披露。その卓越した表現力と歌唱スタイルはバンドのスケールを大きく飛躍させるものでした。今作は前作以上に曲も練られ、また各人の演奏にも纏まりが見られるも、個人的には前作のようなパンチ力は下がり、ラス・バラード作の①やブルースの歌声が熱い②など洗練されたものが増え、幾分大人しい印象をうけるが総じてバランス良くなっています。NWOBHM=パンク・ニューウェーブを通過し攻撃性を増したサウンドと言う図式からするとヒットチャートを賑やかしたとは言えサムソンは地味だし、TOPやダイヤモンド・ヘッド、エンジェル・ウィッチ、サタン、ディーモンと言ったバンド群の方がイメージ的にはピンと来るでしょうが、このサウンドもシーンの一角を担っていた。音的には紛うことなき謹製ブリティッシュHM/HRである事に間違はいない。
稀代の名シンガー、ブルース・デッキンソンがブルース・ブルースと名乗りシンガーを務めていたバンドの2nd。リーダーのポール・サムソンはプレイや存在感的にやや地味でしたが、それを補うキャラの濃いブルースに、覆面レスラーならぬ覆面ドラマーとして、しかも檻の中でドラムを叩くと言う破天荒なサンダーステイックがいたので十分すぎる程のインパクトを残したバンドでした。すでにシンガーとして卓越した歌唱を披露するブルースとサンダースティックの派手なドラミングに彩られた優れたパフォーマンスはシンプルかつダイナミックなサムソンサウンドを確立。両名がバンドの推進力となり更なる高みへと押し上げています。こうして改めて聴くとブルージーな③やメイデンの「The Ides of March 」の原曲になる⑥、その流れを引き継ぐいかにも⑦の英国的な輝きに満ちた曲など収録されNWOBHMの礎を支えたバンドとして存分にアピールしていると思います。彼らの作品がCDとして、あまり流通もせず認知度も下がり気味ですが(今作は未CD化かな?)若々しいブルースの伸びやかな歌声を聴いて欲しいし、地味だがブルースベースのポール・サムソンの若いのにいぶし銀のギタープレイを聴いて欲しいものです。音のデカイ金の掛かったロックや女の子がキャッキャキャッキャと飛び跳ねるアイドルメタルもイイが、こういう当時のシーンを垣間見る事の出来るサウンドに耳を傾けるのも娯楽の一つかと思います。勢いもありスケール大きさを伺わせる⑧⑨⑩の流れはいつ聴いても引き込まれますね。