ディープ・パープルなら第三期派な僕にとってイアン・ギランは偉大なシンガーではありませんでした。大人になるにつれChild In Timeの厳かな雰囲気とギランのキレまくったシャウトの凄みを理解してからは彼のソロにおけるキャリアに着手、再結成パープル以降の年々衰える姿を見ているだけに一抹の不安はあったのですが、期待を煽るイントロに①に導かれ激しく疾走する②、味わい深いバラード③、爆裂する④コリン・タウンズの鍵盤プレイが華麗に舞う⑤とバランス良く流れる展開のカッコ良さに痺れました。時代は1979年、パープルファミリーの中でここまでメタル度の高い攻撃的なサウンドで勝負を賭けていたとは驚きです。NWOBHM幕開けにギランは時代を見越した音で火蓋を切っていたんですね。今作は複数のヴァージョンがリリースされており参加メンバーが違うのですが、僕が所持している2007年に再発されたギターがバーニー・トーメ(パンクロック出身のギタリスト、ランディ・ローズ死去のあとオジーに参加を要請された事でも知られていますね)。ドラムはミック・アンダーウッドがクレジットされているヴァージョンです。コリン・タウンズが推奨したシンプルなロックスタイルを基調としたエキサイティングなHM/HRサウンドを歌うギランに改めてシンガーとしての凄みを体感させてもらいました。
最近リメイクもされましたね米産のホラー映画「エルム街の悪夢」をバンド名に冠したオーストラリア産の4人組による2011年リリースの1st。BACK TO 80'なスタイルのサウンドにやや食傷気味な昨今ですが、こちらもご多分にもれず、その手のスタイルを踏襲、キャッチーなメロディとコーラスワーク、強靭なリズムと躍動感、華やかさと硬質でシリアスな面を併せ持ちバランス感覚は上々、安易な模倣では終わらない工夫を凝らしたど真ん中なスタイルで真っ向勝負、ここまでの完成度を見せればNWOTHM群の中でも上位に食い込む出来栄えでしょう。KISSIN' DYNAMITEに通ずるようなメロディを大切に、ハードで豪快な楽曲が小気味よく進み、器用なリードギターが華麗なトッピングを施していきますね。あの時代のあの音が現代によみがえった爽快感溢れる剛毅でメジャー感のある一枚に懐かしさと同時に、今の時代にどの程度影響を与えていくのかを楽しみにしています。派手目のリズムプレイも好きだし、耳馴染み良く口ずさめるようなギターの持って行き方が大好きです
英国産ハードポップバンドが1994年にリリースしたアルバム。時代はグランジ・オルタナ全盛、厳しい環境下にこの手のサウンドを世に送り出すミュージシャンがいた事に驚きます。英国産らしい憂いに富んだメロディが優しく抱きしめてくれる佳曲が目白押し、刺激は薄いがキーボードの使い方も出しゃばらずも効果的に使い嫌味なく聴き手の守備範囲を広げ、万人に喜ばれるようなハードな刺激を加味しているのが印象的。地味ですが、いぶし銀のアレンジが冴えわたるの職人技に、「人生送りバント」でお馴染みの川相昌弘を思い出されますね。本当に地味目なんですがマニアには②の”Power over me ”を強く勧めますね。フックに富んだメロディが胸を締め付ける名曲です。