『PAINKILLER』リリース時のラインナップに戻り久しぶりにリリースされた復活を告げるアルバム。一つの時代に区切りをつけ地下へともぐり細分化されたシーンの中で従来の姿を取り戻すのに多くのバンドが苦労するのですが、『PAINKILLER』リリースから15年も擁するとは思いもしませんでしたね。その空白の15年を埋めるべく元来あるべきシーンの中核を担う一つの形を形成してきた自らが築き上げた王道を再構築して世に示した一枚。安易な原点回帰や枯渇したアイデアを埋め合わせる為の焼き回しなどではなく、焼け野原となったシーンへの復活の狼煙を上げる意欲作。当然彼らの事を知らない若い人へ向けて、ロブのハイトーンを活かしたツインギターによるメロディックなソロやリードプレイなど華やかさも施したアレンジはスピードと重量感を交えつつ攻撃性とドラマ性をバランスよく配し、メタル黄金期への解放感を促すパワフルなヘヴィメタルサウンドを体感させてくれる迫力と緊張感を味わうには最適、スコットの強烈なドラムも健在とスケールの大きさを雄弁に物語っています。当時のファッションからも推察できるようにポップな80年代メタルを意識した『TURBO』80年代的なメタリックサウンドを取り戻しつつもキャッチーさも失わない『RAM IT DAWN』スラッシュに対する回答としてコアで鋭さを極限まで高めた『PAINKILLER』それらの系譜とは違う順当な成長を見せた『SCREAMING FOR VENGEANCE』から『DEFFNDERS OF THE FAITH』の流れを組み70年代的なニュアンスを強めた今作はあえて狙った方向性、このクラシックなメンバーで再結成する意味を知らしめるには十分すぎる内容でしょう。まぁ確かに置きに行っているし新鮮味はないのですが、この時代にここまで奇をてらわず自らの道しるべを再提示した事の意味を噛みしめると身体に響いてくる重みも違ってくるでしょうね。個人的には『PAINKILLERパートⅡ』を作られた方が遥かに置きに行っているし枯渇したアイデアを誤魔化す手法としか見れないので、これはこれで満足のいく仕上がりでした。何を聴きたいかで大きく評価も分かれるんでしょうが、彼らの歴史を総括するような内容と、新たなる歴史を刻む仕切り直しには相応しい原点回帰を告げる一枚ですね。
アンセム脱退後、深夜TVで坂本英三がアニソングループをプロデュースするみたいな姿を見たときに、やはりメタルと一区切りつけた活動をするのかな?そんな気持ちになりました、それだけ力を入れて活動していたのでしょう、今後の活躍を楽しみに、彼ほどの実力者がお茶を濁し続ける事がないよう祈りたいものです。そんな寂しい思いから手に入れたのが今作アニメ『力王』のサウンドトラック、HEAVY METAL ARMYやEASTERN ORBITでの活躍で知られる中島優貴プロデュースの一枚。勿論かれが作曲にキーボードとして八面六臂の大活躍、ギターには今は亡きMAKE-UPの松沢浩明も参加。前13曲入りで内2曲が坂本英三が最初の脱退後に歌いれしたものです。アルバム全般は低予算とは言え中島のプログレ魂が炸裂、打ち込みドラムだしアニメなんで迫力不足は否めませんがシンフォニックなプログレサウンドが流石の一言、その方面が好きな方ならかなり楽しめるでしょうね。お目当ての英三さんが歌う2曲は若々しい声ではありますが、灼熱のヴォーカリストの片鱗を伺わせる熱い喉を披露、ペラッペラの歌謡メタルもグイッと持ちあげてくれます。中島優貴プロデュース能力の高さがとにかく充実度を高めているのでアニメのサントラと侮る事無くマニアなら耳を傾けても損はしないでしょう。
METAL MASSACREシリーズにも参加した事がある4人組が1988年にリリースした1st。湿り気のある歌声が変に力む事無く朗々と歌い、パンチ力もないし個性は薄いが安定感はありソツなくフロントマンとしての重責をこなしています。、王道をいくリズム、ワビサビを心得た叙情派ギタリストと普通すぎるくらい普通なんですが、明るくなる事を許さないブリティシュ寄りの王道を行く叙情派HM/HRサウンドが奏でる湿り気と美意識にマニアには何ともしがたい魅力を放ち続けます。とは言えメリハリの少ない展開や構成、王道すぎて感情表現の薄さが気になるかも知れませんが、叙情的なメロディとスピード感のあるソロなどギターには工夫と煌びやかなセンスが光り、そこへのアプローチと聴かせ方を練り込んだら、スケールが一段も二段もUPしたと伺わせるだけに、インディーズ盤の悲しい性と言うものでしょうね。またシリアスなサウンドを活かす為にも、もう少し重さがあればなお良いです。とは言え全体的に包まれる湿り気と叙情的な雰囲気は大好物で、手を出したくなるジャンルなんです。欧州大陸の香りがするHM/HRが好きな方には楽しんでもらえるかと思います。ちなみにCDやiTunesなどで検索すると、おそらく同じ内容かと思いますが、「Nothing Is Sacred」という作品もあります(このサイトの登録時にこちらが優先されたのでgargoyliのGARGOYLEにしています)重複しないように気を付けてください。でも確かEP盤がまた「GARGOYLE」ってタイトルだったような記憶があります??