数あるLIVE音源はありますが今作は間違いなく上位に位置する作品でしょう。艶のあるクラウスの歌声はキレまくっているし、ウリのまとわりつく官能的なギタープレイは聴きどころも多く、初期の代表曲を網羅したBEST OF スコーピオンズとも言える選曲の美味しさも手伝い、日本人好みとも言われた叙情的な哀愁溢れる官能美に胸焦がれます。個人的には見事な日本語で歌い上げた「荒城の月」を聴き日本人で良かったと誇らしい気持ちにさせてくれた、この曲をベストテイクに上げたいと思います
初期SAXONを支えたグラハム・オリバー、スティーブ・ドーソン、ピート・ギルの三人にTHUNDERHEADを支えたずるむけ剛速球な灼熱のフロントマン、デッド・ブレッドなどが在籍するSAXONがデビュー前に名乗っていたバンド名を冠した事でも知られるSON OF A BITCHが1996年にリリースした1st。90年代半ばに往年のメタルサウンドを基調とした作風でリリース出来るわけがなく時代性を加味しながらも、このメンバーが集った意義を感じる事が出来る正統色の強いパワー漲る一枚。強靭なリズムと重量感、時折垣間見える男の哀愁を纏ったメロディが耳を惹きますが概ね時代はそんな事を望んでいないので、やり切れていないのが残念に感じます。しかし男気あふれるマッチョな男の歌声は張り艶、供に申し分なく問答無用の豪胆な力技を発揮し自らのカラーで染め上げています。SAXON組がらしいプレイで応酬しているのかは聴き手の好みに分かれそうですが、SAXONでもなければTHUNDERHEADでもないオリジナルティ溢れる90年代風の王道スタイルで挑み果敢に攻めています。このバンドがSAXONのバッタもんとして真っ当な評価を受けていないとすれば残念な事実ですが、そんな事を気にする盲目なメタルファンでもなければ、十分に楽しめるでしょうね。
SAXONのオリジナルメンバーだったグラハム・オリバーとスティーブ・ドーソンがSAXON名義でLIVEを行うなど、ポール・ディアノみたいな姑息な感じが漂い、どこか判然としないもどかしさが真摯に向き合う気持ちを削ぎ手が伸びなかったのですが、聴いてみたら意外とSAXONしていないオリジナルティを感じ歌詞などはバイカー向けなんでしょうが2000年以降の正統派HM/HRサウンドが聴け驚いたものです。過去の栄光に頼らないと言ってもビフいないからね。そうもいかないでしょうがガッツ溢れるパワフルさとSAXON由来のノリも感じられ重量感のある今作を興味深く楽しみました。バンド名にSAXONをゴリ押ししてくるとギターリフでグイグイと引っ張っていく曲や哀愁と疾走感を期待しますが、そこを控えめだがタイトでヘヴィな今風の音で纏め上げ古臭さを感じさせず往年の空気を纏っているのはベテランならではの老獪なテクニックを駆使した曲作りの賜物でしょう、派手なソロも炸裂するHell in Helsinkiなんかはパワーメタル路線のSAXONにも通ずる魅力もあり、彼らもSAXONの歴史を語る上では外せないメンバーなんだと認識させられますね。どこかバッタもん感は拭えないでしょうし、比較もあるでしょうが、SAXONの名前に偏り過ぎないオリジナリティが溢れており普通に楽しめますよ。
ロシア産のメタルバンドが2013年にリリースした1st。9曲入り30分というランニングタイムの短さ、英訳するとストレートすぎるBACK TO 80’なスタイルに眉をひそめる方もいるでしょうが、80年代のスコーピオンズにも通ずるような大衆性、メロディアスで叙情的な哀愁味溢れるHM/HRサウンドに今風の生々しい硬質感をまぶしロシアらしい雄々しいさで整えた今作は、正統派マニアなら手を出しても損はしない一枚でしょう。ギターリフを軸に活きのいいギターワークは華やかさを彩り耳馴染み良く飛び込み楽曲の完成度も高い、クラシカルな⑧やバイオリンも活躍する④、女性シンガーが参加した⑤⑦なんかもアクセントとなり剛柔取り揃えた構成は飽きがこないように工夫されている。勿論彼らの持ち味は⑥のようなアルバムタイトルにもなったパワフルなメタルソングなんでしょうが、無駄をそぎ落としたスッキリ感は聴いていて心地よいし清さに好感が持てます。そしてロシアらしい翳りと哀愁がありながらも垢ぬけたポップセンスを散りばめた叙情派HM/HRサウンドは健康的ですらありますね。妙にエロいアルバムジャケットを見ながらロシアンメタルの奥深さに触れました。まだまだあるなロシアには
2013年にMICHAEL SCHENKER'S TEMPLE OF ROCK名義でリリースされた一枚。Voドゥギーホワイトにスコーピオンズのリズム隊、ハーマンとフランシスにkeyはフィンドレ(LIVEでは大活躍ですの彼です)と言うメンツがマイケルをバックアップ、前任のマイケル・ヴォスの甘美なメロディ路線とは毛色の違う濃厚な楽曲を詰め込んだアルバムを披露してくれました。ある意味、ドゥギー色の強い様式美路線を意識したアプローチも取られマイケルの扇情的なギタープレイも冴え渡り、泣きのフレーズも導入されております。とは言え、マイケルがこういうアプローチを試みるとは思ってもみず、少々不思議な気持ちにさせられます。ドゥギー色を生かした楽曲にMSGとはまた違う濃厚さが今作の評価の分かれ目でしょう。往年の空気とは違うマイケルの艶やかなギターはマンネリ傾向と言われようとも色あせる事はありませんね。やはり上手いし独特のタイム感は彼ならではの味わいですね。
国産HM/HRバンド”十二単”のシンガーだった藤原正紀のソロアルバム。紆余曲折を経てリリースされた幻の一品ですね。元々はバンド名義でのリリースでしたが、大人の事情でソロ名義にさせられたらしく、バンド時代よりは明らかに歌主体のライトな方向性となり重さも削られているのですが藤原のパンチの効いた歌声は迫力十分だし十二単の片鱗を随所に感じさせる楽曲もあり、十分ハードなロックサウンドとして楽しめるでしょう。ちなみにギターは後にアンルイスのバックや再結成BOWWOWでもギターを弾いていた八重樫浩、ドラムはJUDY AND MARYの五十嵐公太、キーボードには三国義貴がメンバーとして名を連ねており、違った意味で楽しめる要素もあるかと思います。歌謡路線も藤原が男を魅せているその姿が最大の聴きどころでしょうね。国産メタルバンドが1986年に不遇を味わいソロ名義の憂き目にあうもギリギリのところで捨てきれない精神性も反映されている資料的な価値も高いハードな一枚、歌モノが気にならない方なら楽しんでもらえると思います。