性急気味のリズムにゴリゴリしたギターが乗る硬質な音が基本ですが、プログラミングサウンドがどこかねっとりしていて陰湿さを助長しています。 「Beaten Bitter, Broken Low」「Dine and Dance with the Devil」等、歌詞ではレイモンドお得意の頭韻法が炸裂。タイトルからして明らかなんですけどね。
'97年発売の5thアルバム。 一番メタル色が濃いのは本作だと思われます。ザクザクしたギターリフが前面に出ているし、曲調もバイオレントだし(歌詞はいつでもバイオレントだし陰湿です/笑)。ラテン風味(ただし性格悪い)がないのはちょっと残念ですけど。 PIGはオーケストラが入っているのが好きという方、極悪ラテンソングが好きという方はあまり好かないかもしれませんが、メタル好きでインダストリアル系もいけるという方にはお勧めです。 注意したいのは、国内盤と輸入盤とで曲が違っていることです。 輸入盤収録のM2「No One Gets Out Of Her Alive」とM4「Contempt」は国内盤にはなく、代わりに「Book Of Tequira」と「Find It Fuck It Forget It」のリミックスというかリテイク版です。個人的には輸入盤の収録の方がバランスいいんじゃないかと思います。それに国内盤の対訳があまり良くないし(このサイト内でも評判悪い訳者でした)。でもライナーに載ってるレイモンドの写真がカッコ良かったりする(笑)。 尚、輸入盤のみ収録の上記2曲は、後に『No One Gets Out Of Her Alive』のEPで発表されてます。 また、収録曲10曲中、上記の「Find It…」を含めた3曲はリテイクです(輸入盤なら10曲中2曲が)。どのバージョンも元の曲よりメタル色を増した印象です。
『Praise The Lard』M1のリテイクです。 原曲よりはオーケストラがバックに下がってしまっているのですが、女性コーラスが入ったりシャウトが増したりと、こちらの方が格段に洗練されています。 でも、極私的に一番いいリテイクはSchweinでBuck-Tickの櫻井敦司のコーラスを入れたバージョンじゃないかと。
'07年発表。見れば分かりますが、映画『V Is For Vendetta』の悪質極まりない(笑)パロディタイトルです。ついでに言うと、フライトガイドを模したジャケットアートワークも真っっっ黒なユーモア満載です。 Toolの複雑怪奇な世界観、APCの聴きやすさを期待すると肩透かしを食う、ダークでミドルテンポで淡々とした作風です。音もプログラミングが多用されてます。しかも、メイナードさんの武器たる中性的な美声はほとんど封印され、低音ボーカルが中心。 この辺りが賛否両論になるポイントかもしれませんが、メイナードさんの才能にはまだまだ未知の領域があったことを思い知らされることには違いないでしょう。
「『Kid A』とは双子の作品」の評通り、前作に欠けていた温かさを補うかのようなアルバム。 しかし、「Pyramid Song」で描かれるユートピア的世界、「Life In The Grasshouse」の気だるさ、そして前作と違って優しいサウンドの「Morning Bell」で最後に繰り返される「Cut the kids in half」の歌詞……それらが温かさの中に、優しい絶望と底知れぬ哀しみを潜ませる。
「You can try the best you can/The best you can is good enough」なんて応援メッセージな歌詞をこんなにも空虚に、絶望的に響かせるアーティストは彼らぐらいじゃないかと思います。ラストの「Dinosours are rounding the Earth」のフレーズを聴く度に泣きたくなるのは何故だろう。
「誰だってギターは弾ける、けどそこでお終い」(Anyone Can Play Guitar) 「どんなに頑張ったところで僕には出来ない」(I Can't) まだUKギターロックとして括られていたRadiohead。 しかし、「完璧なあなたと虫けらの僕」を歌った名曲「Creep」を始め、歌詞には後に彼らが世界へ押し広げていくこととなる「どうしようもない絶望感」が存在した。
意図的なのか分かりませんが、音質が前作と比べて明らかに荒くなってます。特にボーカルがざらついた印象。これだけの作曲力とテク持った人達なので、音はクリアな方がより強力な武器になると思うんですが。 それでもアメリカに痛すぎる一撃を加えるリリックは健在だし、「People Of The Sun」「Bulls On Parade」「Vietnow」という名曲もあるし(冒頭3曲に集約されてしまっているのが難ですが)、傑作であることに違いはないでしょう。
やはりRATMのライヴは凄い。音楽のステージってだけじゃなくて、ステイトメント表明の場でもあるようです。オーディエンスに語りかけるのに邪魔だからと、MC中に「スポットライトを外せ」とスタッフに命じるあたり、並々ならぬ気合が覗えます。M7「Zapata's Blood」でサパティスタ運動に言及し(Public EnemyのチャックDもゲストボーカルで参加)、M9でアレン・ギンズバーグの詩を朗読し、M10でN.W.A.のカヴァーを披露したりと、常に巨大な体制と戦う姿勢を崩さない。 もちろんライヴのクオリティも迫力も凄いです。M1「Bullet In The Head」から、トムの変態ギターがスタジオ盤以上に白熱してます。 Live Sideが充実しているのに対しRare Sideが2曲というのは淋しいですが、そこはRATMなので2曲とも出来は文句なし。それに、Live Sideでも十分レアな音源(上記したギンズバーグの詩やN.W.A.のカヴァー)聴けますから。
ラムシュタイン布教の際にはこの曲を使わせていただきました。何せサビは一度聴いたら耳から離れませんから、効果有りですよ。 '05年の来日公演でもやってましたが、第二次世界大戦でアメリカに負けた枢軸国2国の人々が「♪Amerika ist wundarbar~」と合唱している光景はなかなか黒いユーモアです。
アルバムの冒頭を飾る宣戦布告の一曲。とはいえ、この人に「Fuck you - You can never win」と言われては本気で勝ち目がないように思えます。 ブラストとギターのうねりでたたみかけてきたかと思えば、ずっしり安定したテンポと必殺リフとで支配を叩きつける。こんな「極悪非道」なら大歓迎です。
こういう重々しい&邪悪&妖しいと三拍子揃ったリフ聴いてると、「ああSatyriconだなぁ」と思えてしまうほど。この手のサウンドを完全に自分達のものにしている証拠なんでしょうか。 間奏の後から聞こえる「Nothing, No Nothing…」の低く語るようなボーカルが良いです。がなってなくとも邪悪さが滲み出るようで。