クワイアとシンセで荘厳な幕開けですが、本編は疾走ロックンロール。サビと終盤に多いデス声シャウトにあまり迫力がないのが残念ですが、キーボードの旋律と低音ボーカルは相変わらず妖艶で良いです。 ex-Cradle Of Filthのエイドリアン・アーランドソンが参加したバージョンもボーナス・トラックに収録されてます。
「サウンドは期待外れなとこもあるけど、曲はカッコいい」……これって、自分がCradle Of Filthの『Thornography』聴いて思ったことと同じようなものじゃないでしょうか。だとしたら、「このアーティストはこういう音じゃなきゃ嫌だ」という人でない限り、受け入れられると思います。アメリカナイズとかモダンヘヴィネス化とか言う以前にクオリティは高いですから。 この後にメロディック路線への復帰を望むのであれば、単なる回帰ではなくて「ヘヴィネス路線を経ての進化」を期待したいところです。
自らの身体に傷をつけまくっているマニアックのジャケ写からしてブルータルですが、中身のブルータル度も半端じゃありません。 音質はそこまで良くないのですが、音圧はある方なのでヘルハマーの魔神級ブラストはしっかり堪能出来ます。タム回しの速さもはっきり分かるので、本作を聴きながら「今何があったぁぁ!!??」と驚かされることもしばしば。 マニアックのボーカルもギエギエ声だけでなく、デス声のタイプを使い分けているのが起伏があって良い。 どうもボーカルとドラムにばかり注目しがちになってしまいますが、本作ではギターとベースの仕事ぶりの凄さに改めて気付かされました。 そして注目はアッティラのゲスト参加! マニアックのMC「Attila! Come on the stage!!」の時点でテンション上がりました。呪いの声と人間失格の絶叫、それぞれが唯一無二のボーカルの共演……これはブラックメタル史上における貴重な瞬間と言っていいかも。 ちなみに、「Chainsaw Gutsfuck」を捧げられた教皇を羨ましく思ったのは私だけでしょうか(笑)?
「『Kid A』とは双子の作品」の評通り、前作に欠けていた温かさを補うかのようなアルバム。 しかし、「Pyramid Song」で描かれるユートピア的世界、「Life In The Grasshouse」の気だるさ、そして前作と違って優しいサウンドの「Morning Bell」で最後に繰り返される「Cut the kids in half」の歌詞……それらが温かさの中に、優しい絶望と底知れぬ哀しみを潜ませる。
Murderdollsのフロントマン、ウェンズデイ13のソロ作。'05年発売。 サブタイトルは「Songs Of Death, Dying And The Dead」……って全部死んでるじゃないか(笑)!!! ポップなロックンロールで、歌詞内容はB級ホラー……と、やってることはMurderdollsや、それ以前に彼がやっていたプロジェクト、Frankenstein Drag Queens From Planet 13とあまり変わりません。 ただ、ソロになった分ウェンズデイのB級ホラーオタク趣味に磨きがかかったようです(実質彼のワンマンプロジェクトだったFrankenstein…も趣味全開ですが)。B級ホラーというものは、ある種のチープさが魅力になります。それを踏まえると、本作のサウンドのチープさと、安っぽい(それでいて愛すべき)モンスターのようなウェンズデイのボーカルはいい雰囲気出してます。こういう空気に乗せると、どんな悪口雑言もガキの幼稚な悪口です。「お前なんか死ねーー!!」レベルの。 ウェンズデイの根幹は、お菓子食べながらホラー映画観てたり、安っぽいけど面白いハロウィングッズ買い漁ってる子供と変わらないのかもしれません。 B級ホラーやハロウィンのチープな魅力が好きな方にお勧めしたいです。ハロウィンシーズン特有の毒々しいキャンディと一緒にどうでしょう(笑)。 そういえば、本作の帯にあったウェンズデイの肩書は「唯一無二のパーティー・ホラー・ロック・アーティスト」でした。 この「唯一無二」は「他に追随する者がいない!」と褒めるというより、「そんなことやってるのお前ぐらいだよ(笑)」と馴れ馴れしく肩を叩きたくなる意味合いに思えるのは自分だけでしょうか。
あまりにもクオリティの高いアウトトラック集。2ndに入れるには異色すぎる曲をまとめてオフィシャルブートにしてみたら、それはそれで妙なバランスの良さが出て、一つの作品になってしまったような。 「Chic'n' Stu」や「Fuck The System!」に顕著だった意味不明なボケと怖さは、後の催眠二部作への橋渡しであったように思えます。
アルバムの冒頭を飾る宣戦布告の一曲。とはいえ、この人に「Fuck you - You can never win」と言われては本気で勝ち目がないように思えます。 ブラストとギターのうねりでたたみかけてきたかと思えば、ずっしり安定したテンポと必殺リフとで支配を叩きつける。こんな「極悪非道」なら大歓迎です。
こういう重々しい&邪悪&妖しいと三拍子揃ったリフ聴いてると、「ああSatyriconだなぁ」と思えてしまうほど。この手のサウンドを完全に自分達のものにしている証拠なんでしょうか。 間奏の後から聞こえる「Nothing, No Nothing…」の低く語るようなボーカルが良いです。がなってなくとも邪悪さが滲み出るようで。
意図的なのか分かりませんが、音質が前作と比べて明らかに荒くなってます。特にボーカルがざらついた印象。これだけの作曲力とテク持った人達なので、音はクリアな方がより強力な武器になると思うんですが。 それでもアメリカに痛すぎる一撃を加えるリリックは健在だし、「People Of The Sun」「Bulls On Parade」「Vietnow」という名曲もあるし(冒頭3曲に集約されてしまっているのが難ですが)、傑作であることに違いはないでしょう。