この曲では「うっ!!」ではなく「アォ!!」というシャウトですが、そこはトムのこと、思いっきり陰気で邪悪にしてくれます。 彼の声で「Are you morbid?」(病んでるか?)なんて言われると良い意味でぞっとしますね。 「Into…」のとこでも同じこと書きましたが、やっぱり彼らの曲はテンポが落ちるところがカッコいい。
アルバム一曲目の冒頭でいきなり必殺ハイトーンシャウトぶちかますところからして、アルバムジャケットそのままの破壊力を知らしめています。 そのくせ中盤の「Shout It Out……」やサビの「Ram It Down!」連呼のキャッチーさで心を捕える術も心得てます。 さすが「神」、怖いぐらいパーフェクト。
本作で色濃く出している正統ヘヴィ・メタル要素にシンフォニックが絡むという点で、実は次回作への布石だったのではないかとも思えます。劇的ではないもののアルバム内では曲展開がある方だし、サラのコーラスが一番活きているし(というか、他の曲であまり使われていない)、ボーカルは中音域の駄々っ子声(失礼)が効いている。 『Thornography』収録曲の評価を辛くしがちですが、この曲は盲点でした。 ただ、アルバムレビューにも書きましたがダニの「And here we go again!」だけはどうも似合わない気がして笑ってしまうのですが。
際立った名曲があるのは『Paranoid』の方だと思いますが、アルバム全体のバランスがいいのはこちらかなと。ドゥーム色よりヘヴィネスの方が濃いですし。アイオミのソロ曲も効いてます。 ちなみに、『Master Of Reality』というタイトルを冠しておきながら、1曲目がいきなりトリップソングというのはある意味ブラックユーモアという気がします。
この曲を初めて聴いたのは、DVDに収録されてた『Cradle Of Fear』(ダニ主演のネット映画)の予告編でした。といっても冒頭のピアノパートから急に疾走パートに飛んでしまうカットバージョンでしたが。切なさ漂うピアノから急にダニ声が入った時には「これもクレイドル!?」と驚いたものです。 で、この度ようやく曲全体を聴くことが出来たのですが、カットされてた冒頭の低音ボーカルが良いです。「All Hope…」といいこの曲と良い、このEPでは低音の効かせ方が巧い。疾走パート前からじわじわ入ってくる重いギターと、疾走する中で響くミステリアスなオルガンもカッコいいです。
アルバムのタイトルトラックにして冒頭を飾る曲。マッチを擦る音の直後、前作より格段に重くなったギターという幕開けが渋い。ヴィレのボーカルもだいぶ低音域です。 中盤にテンポが落ちて、低音ボーカルが最骨頂を迎えるくだりがType O Negativeを彷彿させます(実際、結成初期にカヴァーやってたことあるみたいですし)。個人的には、ここが一番好きなパートです。
HIMのヴィレ・ヴァロがゲスト参加した曲。ダニいわく「彼の声こそバイロン卿に相応しい」そうです。 貴公子と駄々っ子(笑)というミスマッチな組み合わせながら、そのミスマッチさ加減が不思議と聴き心地いいです。特に「The patron saint of heartache…」からのヴィレの美声と、ダニの奇声の掛け合いでゴシックの雰囲気が増してます。 欲を言えば、ダニの高音が苦しそうなのがちょっと残念。あと、シンフォニックパートも味付け程度じゃなくてもっと入れた方が(既にアルバム全体に対して言ってますが、ここではその方がヴィレの声にも合うと思えただけに尚更)。 一説によると、この共演ついでにダニとヴィレはキスしたとか(笑)。本当ならヴィレも意外とバカなチャレンジ精神の持ち主だったようで、その点クレイドルと似た者同士? 一部のファンは泣くかもしれませんが、私はむしろ褒めたいです。
残虐行為が発覚した後、エリザベスは臣下と違って火刑を免れたのですが、代わりに窓という窓を塗り固められた城の一室に死ぬまで幽閉されたという、彼女にとっては死刑より惨い最期を遂げたそうです。そのためか、物語が進むにつれて音はよりダークになっていき、聴いている側にも闇が広がらんばかり。最後の暗闇の中で老いて死んでいくエリザベスの語りはぞっとすると同時に、この上なく悲痛です。 また、ストーリーテラーに徹していたダニですが、第一章「Benighted Like Usher」において初めて「I」という概念を用いています。唐突に感じられるかもしれませんが、ストーリーテラーが物語の中に登場しエリザベスに寄り添うことで、彼女の孤独と後の破滅を一層強く覗わせるかのように思えます。
God Of Fuck、Antichrist Superstarを経て一転、「ただの自殺の王様ごっこをしている少年」。ありとあらゆるものを破壊し尽くした後に語られるこの言葉は、一際虚無感を帯びて響きます。アコースティックとシンセがその雰囲気を引き立てています。 尚、『Holy Wood』の日本盤ボーナストラックにこの曲のライヴ盤が収録されています。ギター、ベース、ドラムはより太く、キーボードはより美しくなっていて、そちらも好きです。
2001年発表のライヴDVD。『Midian』期のツアーです。 音源は『Live Bait For The Dead』のものと同じノッティンガム公演の時のものです。ステージがどんな感じだったのかよーく分かります。観た感じそんなにステージでっかくないので、この距離感でライヴ体感出来たノッティンガムのファン達が羨ましいですよ。最後、何故かダッチワイフがオーディエンスの頭上転がってたりします。耽美なクレイドルには不釣り合いに思えるかもしれませんが、後述のドキュメンタリーを見ると何となく納得出来てしまう……。 しかしダニ若いな。当たり前だけど。 で、『Peace…』同様こちらにもまたツアードキュメンタリーが収録されてますが…… 君らはカメラ向けられたらベロを出すかケツを出すかせんと気が済まんのかい。あるいは何かネタ披露するとか。ヴァンパイア軍団転じて、メンバーとスタッフ一丸となったクソガキ集団ですよ全く。ドキュメンタリーのエンドクレジットでもふざけた文句書きまくってるので注目です。 そしてダニ……君ほどママチャリの似合うメタルアーティストを私は他に知らない。 この他PV、『Cradle Of Fear』の予告(ダニ主演のネット映画。B級スプラッターホラー)、ブレアウィッチをパクったアホな映像、アートワーク収録。あと、隠しコマンドもあります。「Born in a Burial Gown」に出てたあの人達って(二重の意味で)スゴい人達だったんだ……。
『Mechanical…』までのPV集とツアーの模様を収録したVHS。こちらもDVD化されていないのが惜しい。 PV集はベスト盤(初回限定DVD付きの方)が出てしまった分価値が薄れた感がありますが、ツアー及びライヴの映像は価値大ありです。グラムロックを意識したきらびやかなステージや、紙吹雪が舞う中「The Speed Of Pain」を歌うマンソンなんて、この時のツアーでしか観れない光景です。 以前の『Dead To The World』ではおぞましさ、エグさ、汚さを強調していましたが、今回映し出されているバックステージの彼らはむしろ悪ガキです。おもちゃのピストル持って乱入したり手持ちカメラで遊んでたり。新入りのジョン5に対するイジメも、ステージでミスしたジンジャーに下される制裁も、どこの小中学生じゃ! ってレベルです。でも放火はさすがにマズイぞ。 あと、来日した際に富士急ハイランドのゴーカートで遊んでたという伝説(?)の映像も拝めます。
『Holy Wood』発表時のライヴを収録したDVDです。 複数の公演の映像(日本のもあり)を編集したものなので、カット毎に衣装、メイク、オーディエンスがまるで違っているのが観ていてどうも気になるところ。映像の切り替えもスタイリッシュすぎるように思えました。後に加入したティム・スコルドがマンソンと共同監督していたとのことなので、あのスタイリッシュ加減は彼の影響なんだろうか?と勘ぐってしまいます。あと、何となくカメラがジョン5びいきのような気も……。 でもライヴのクオリティはやっぱり高いです。観てるとすぐにオーディエンスの一員と化して、TVの前で合唱あるいはコール&レスポンス参戦。 マンソンのステージコスチューム&演出も見ごたえあり。巨大竹馬出てくるし、木(Holy Woodか?)よろしくニョキニョキ伸びたりするし、「The Love Song」では法王(枢機卿?)コスプレだし。「Antichrist…」なんか演説台が出てくるだけでも嬉しいのに、火柱なんか上がったらもう恍惚モノです。 この他にドキュメンタリー『The Death Parade』が収録されてます。 グルーピーと戯れる様子(いや、戯れるとかいうレベルを超えてます)、ジンジャー・フィッシュ負傷の決定的瞬間、脚の傷口を縫うマンソンなど、かの『Dead To The World』には及びませんがそれでもかなり衝撃的な映像満載です。 Slipknotのジョーイやオジーの姿も見れるのが嬉しいところですね。
本作の不評は多くのファンの知るところです。高音シャウトが少ない、シンフォニックじゃない、ホラー要素が少ない等々。実際、聴いてて「ここでもっと大仰にストリングス入ればいいのに……」「クワイア入れればいいのに……」と何度思ったことか。メタルとしては上質だけど、クレイドルの作品としては物足りないですね。 ……と、文句のつけどころを列挙しても、どうしても否定できない点が。 それは彼等が本当にすんごくいいメロディ書くってことです。 「シンフォニック要素欲しいな……」と思いながら聴いてても、メロディが耳に残るし、無意識で首動いちゃうし、実は「Foetus…」なんか無意識で歌っちゃうぐらいだし。本当かっこいいんです。 あと、高音域減ってもやっぱりダニ声はダニ声です。もうやめられません。しかし、M11で「And here we go again!!」ってフレーズ挿まれた時には似合わなさ過ぎて笑ってしまいました。……すみません。 以上の理由から、『Harder, Darker, Faster』のデラックス盤買ってしまいました。前評判から言ったら通常盤で十分じゃないか?なんて思ってたってのに。 まぁ、ボーナストラックはわりと佳作揃いだし、外れとまではいかなかったかなと。 多分、このプロセス踏んだからこそ、これまでのシンフォニック&ホラー色を併せて取り込んだ次作の感動があるんでしょうか。