間違いなくこれが彼らの最高到達点でしょう。曲単位ではともかくアルバム全体のまとまりとして。3rdの全編疾走も良いけど、4thからこのアルバムにかけて、彼らはスピードにたよらずとも、メロディの良さ、リフの良さ、展開の格好良さ、荒々しいメインVoにからむクリアで滑らかなクワイヤと骨太な掛け声、クラシックやオペラ、民族音楽を絶妙に取り入れたアレンジの良さとそれに負けない楽曲のHMとしての格好良さ、などによって圧倒する、ジャーマンを超越した独創的なバンドになりました。個人的には終盤が少し弱いけど、彼らのどのアルバムもはっきりいって捨て曲が何曲かある中、このアルバムはトータルで完成度が高いです。特にタイトルチューンと「THE SCRIPT FOR MY REQUIEM」はこのバンドのHMとしての最高曲。これ以降の彼らは個人的に何か違う気がして、曲単位では好きな曲もあるのにアルバム単位として、バンド全体としてのめりこむことが出来ません。多分アレンジ能力や構成力や演奏能力はどんどん高くなっていってるのですが、「曲本来の良さ」というのはある段階までいくと、それ以上良くならず失速・停滞している気がします。僕はこの現象はいかなるバンドにも起こって、そこから新たな飛躍を迎えるには何かを捨て去り新たな要素を加えるしかないと思っており、それが最高傑作を作った後にメンバーチェンジや音楽性の大転換をするバンドが多い原因でしょう。彼らは周知の通りメンバーの結束が強いバンドなので、メンバー交代は殆ど考えられず、次のアルバムは音楽性をよりドラマティックに荘厳にし、クラシック・オペラ・民族音楽要素を高め、HM色をその分減らしたりとか、あるいは最新作ではもう一度3rdみたいな疾走感を取り戻したりとか、試行錯誤期にあるのが現在の彼らじゃないかと。早く新しい道を見つけられればと思います。
個人的には、彼らの最高傑作は「SOMEWHERE FAR BEYOND」だと思っているが、その次の作品である本作もなかなかの名盤である。基本的に前作の延長線上にある作品なんだけど、曲の展開がより複雑になっている。特にタイトル・チューンの作り込みは凄い!ドラムまでを含めた音の絡み合いが、今まで以上に濃密だ。それは他の曲でも同じ事が言える。確かにアルバム全体の勢いやパワーは落ちたけど、それは「ドラムの変化」によるところが大きいんじゃないかな。今までは、どちらかというとパワー&スピード重視で、「リズムを刻む為」に叩いていた感があるが(これもかなり好きだけど)、本作ではドラムで「メロディーを奏でる為」に叩いているように思う。タメを効かせ、緩急をしっかりつけたそのドラミングは、それまでの作品と比べて物凄く進歩していると言えそうだ。とっつきにくくなった印象もあるけど、「I'M ALIVE」「THE SCRIPT FOR MY REQUIEM」といった激烈スピード・チューンも盛り込まれてるし、従来の魅力を失ってしまった訳じゃない。独特のクワイヤ・コーラスも(これもまた良く練られている)、惜しげもなく使われる美旋律も健在だ。理解するのに少し時間のかかるアルバムではあるけど、聴く度に発見のある、素晴らしいアルバムだ。
BON JOVIが見いだしたバンドの1STはみんな当たっているが中でも驚異的な完成度をほこるのがこのアルバム。まず剛と柔のバランスが取れた見事な音づくりが凄い。特にギターの音響とドラムのスネアの生の響きが非常に鮮明なのに驚かされる。ビルのプレイは若さあふれるという感じで好感がもてる。プロデューサーのデイヴィッド・プラターは後にDREAM THEATERの2NDも手がけているがまさに職人芸である。 ボクはHEART IS WHERE THE HOME ISとOVERNIGHT SENSATIONとHELPLESSが特に好き。ただあのジャケット内のメンバー写真はどうかと思うが…。