'07年に突如リリースされたDOKKENの蔵出しライブ。1st『BREAKING THE CHAINS』(’81年)発表後、ドイツからアメリカへと戻ったDOKKENが、メジャー・レーベルとの契約を得るべくカリフォルニアでクラブ・ツアーを行っていた時期のライブが収められており(どこで録られたものかは不明らしい)、Gソロ・タイムを含む全10曲中、3曲が未発表曲という構成に食指をそそられ思わず購入してしまいました レコーディング時のラインナップは、ドン・ドッケン(Vo)、ジョージ・リンチ(G)、ミック・ブラウン(Ds)、RATTへと去ったフォアン・クルーシェの後任として新たにバンドへ参加したばかりのジェフ・ピルソン(B)という黄金メンバー。後の洗練されたサウンドに比べると、本作で炸裂するバンドの若さ迸るパフォーマンスは、まるで観客の熱気溢れる声援と、海の向こうで盛り上がるNWOBHMに触発されたかの如く荒々しくメタリック。 とは言え、代表曲“BREAKING THE CHAINS”を始め、健在のボーカル・ハーモニーの美しさには聴き惚れてしまいますし、ジョージのGプレイも既にキレッキレ。何よりそれに対抗するドンの、身の内から迸るエネルギーを制御してきれていないかのようなシャープ気味の歌唱が実にパワフル。まぁ現在との隔世の感ぶりに若干の切なさを覚えなくもないですが、ともあれ観客との掛け合いを盛り込みつつドンとジョージが――不仲ゆえではなく新人らしい健全な競い合いの結果として――激しく火花を散らす“NIGHRIDER”は、本作のハイライトかと。こんだけ白熱のライブを演ってればそりゃ人気も出ますよ。 音源の貴重さと内容の充実度が釣り合った、まさしく「お宝発掘」というべき1枚。
インスト序曲“WITHOUT WARNING”を経て、鋭利に疾走するキメの名曲“TOOTH AND NAIL”のカッコ良さだけで本編の出来の良さを確信させられてしまう(そしてそれは間違っていない)、’84年発表の2ndアルバムにして本邦初登場作。 このOPのドラマティックな流れからも明らかなように、独特のトーンで鋭く切り込んで来るジョージ・リンチのフラッシーなG、よりワイルドでメタリックなビートを刻むようになったジェフ・ピルソン&ミック・ブラウンのリズム隊…といった具合に、前作では「歌」の引き立て役に徹していた楽器陣が、今回は生き生きとその存在感を主張。勿論、益々表現力に磨きを掛けたドン・ドッケンのVoも冴え渡り、4つの個性が対等に(ポジティブな意味で)ぶつかり合って火花を散らすことで、緊張感だけでなくバンドとしての一体感、それにいかにもLAメタル的な華やかな雰囲気がアルバム全体から溢れ出して来ます。 収録曲の粒の揃い具合という点では次作『UNDER LOCK AND KEY』に軍配が上がりますが、それでもDOKKEN入門盤としてお薦めするならば、メロディとハードネスが理想的バランスをとる本作を猛プッシュ。収録曲にしても、冒頭で述べた彼らのHMサイドを象徴する名曲“TOOTH~”を始め、美しく劇的なバラード“ALONE AGAIN”から、メンバー全員が歌える強みを活かした美麗なハーモニーが堪能できる“INTO THE FIRE”まで、DOKKENというバンドの魅力的な側面が的確に切り取られています。 日本でのDOKKEN人気を決定付けた名盤にして、LAメタルの盛り上がりを語る上でも欠かすことの出来ない1枚ですね。
MTVの登場で市場規模が爆発的に拡大し、HR/HMシーンはメインストリーム化が一気に進行。そうした変化を踏まえ、音作りから楽曲までメタリックな荒々しさを抑制した分、ソフトで洗練された側面が強調されている’85年発表の3rd。『TOOTH AND NAIL』が上り調子のDOKKENの勢いを十全に捉えた作品だったとするならば、こちらは円熟の域に入ったバンドの安定感(内情はどうあれ)を楽しむべき1枚といったところでしょうか。 哀愁が滲む“UNCHAIN THE NIGHT”や、MTVでビデオが頻繁にオンエアされアルバム・セールスの押し上げたという“SLIPPIN’ AWAY”“IT’S NOT LOVE”辺りが物語る通り、収録楽曲はミッドテンポを中心にまとめられ、よりキャッチー&メロディアスに磨きが掛けられています。ドンのVoにしろジョージのGにしろ、「俺が」「俺が」という過度な自己主張は控えめに、きっちりと楽曲を活かす方向でのパフォーマンスに専念。極上の三声ハーモニーに彩られた“IN MY DREAMS”が放つ比類なき美しさなんてその好例ですよ。 無論、彼らが大人しいポップ・バンドになってしまったなんてことはなく、本編ラストを締め括るのは、ジェフとミックのリズム隊が気張る疾走ナンバー“TIL THE LIVIN’ END”ですし、何より「柔」のVoと、エッジを効かせた「剛」のGが真っ向勝負で火花を散らす必殺の一撃“LIGHTNING STRIKES AGAIN”のカッコ良さた来た日にゃあ…。そりゃクリス・インペリテリもGリフを真似たくなりますわなと。 聴き始めのインパクトこそ前作に一歩譲るものの、単純にクオリティを評価すれば本作を「DOKKENの最高傑作」とする意見に大いに賛同できる1枚です。
‘06年にオリジナルASIAの復活が実現。長年の相棒だったジェフ・ダウンズがそちらへ参加してしまったため微妙な立場に置かれることとなった「もう一つのASIA」のシンガー、ジョン・ペイン。本作は彼がプログレ・フィールドでの活躍で知られるエリク・ノーランダー(Key)を曲作りのパートナーに、ブルース・ブイエ(G)、ガスリー・ゴーヴァン(G)、ジェフ・コールマン(G)、ジェイ・シェレン(Ds)ら豪華アーティストをゲストに迎えて――といえば聞こえは良いけど実際は制作期間が長期に及んだせいでメンバーが入れ替わっただけ――レコ―ディングを行い、DUKES OF THE ORIENT名義で’18年に発表したアルバム。 例によってBURRN!!誌では酷評され60点台を食らっていましたが、「ペインが歌いノーランダーが曲作りに噛んでいるのだから、そんな酷い内容なわけなかろう」と購入してみれば、これが元々はASIA FEATURING JOHN PAYNE名義でのリリースが予定されていただけあって、オリジナルASIAの向こうを張るような抒情的でドラマティックなプログレ・ハード・サウンドが全編に亘って展開される力作に仕上がっていましたよ。 特に英国シンガー然とした威厳と包容力溢れるペインの歌声に導かれて、力強くアルバムのOPを飾る①、美麗なハーモニーに彩られた重厚にして劇的な⑤、侘しげに爪弾かれるアコギの導入が効果的な大作⑨といった楽曲は、「ASIAらしさ」の底上げに注力するノーランダーのナイス・アシストも相俟って、まさしくこのタッグに期待する要素が凝縮されています。 ダウンズ/ペイン期のASIAは勿論のこと、MAGNUM辺りの正調ブリティッシュHRサウンドを愛する向きにも強くお勧めできる力作。
ドイツはバイエルン州ランツベルグにて'06年に活動を開始した時、中心メンバーは若干13歳だったという早熟なスラッシュ・メタル・バンド。 KREATOR、METALLICA、PANTERA、パンク/ハードコアをお手本に(特にベイエリア・スラッシュからは影響を受けまくったとのこと)、ライブ活動と曲作りに邁進し、'10年にはかのWACKEN METAL BATTLEで優勝を果たす等、ドイツ国内において確固たる支持基盤を築き上げる。 こうした評判を後ろ盾にNAPALM RECORDSとの契約を実現させたバンドは、'12年にデビュー作『VIOLENT DEMOLITION』を発表。更には'14年発表の2nd『AWAKE THE RIOT』で本邦初登場も果たした。
「イカ天」に出場してベスト・プレイヤー賞を受賞する等、インディーズ・シーンにおいて確固たるファンベースを築いていたDANTEが、’91年に満を持して発表した1stアルバム。 購入当時は「加瀬竜哉がBで参加している」ということ以外、本作に関する情報は殆ど手元になかったのですが、バンド名がDANTEで、アルバム・タイトルは『IN THE LOST PARADISE』。しかも発売元がMANDRAKE ROOTとくれば、「これもう絶対にドラマティックな様式美HMアルバムでしょ」と期待に胸膨らませて再生ボタンを押したらば、聴こえて来たのはラフでノリ重視のHMサウンド…。様式美作品でなくとも加瀬のソロ『SISTER LEESA』(’93年)みたいな作風であってくれればと期待していた我が身には肩透かし感が半端なかったものの、クレジットをよく見りゃ作曲担当はギタリスト氏。そもそも加瀬はバンドの中心メンバーでもなんでもなかったという。(思い違いしてたこっちが悪い) そんなわけで、ファースト・インプレッションにしくじった感のあった本作でしたが、繰り返し聴き込むうちに「これはこれであり」と評価を上方修正。インディーズ制作ゆえの音質的ハンデや、楽器陣の達者さに比べるとVoの弱さが如何ともし難いというジャパメタにありがちな弱点を抱えつつも、キレのある演奏とアレンジ・センスに支えられた楽曲は、キャッチーなコーラス・ワークをフィーチュアして疾走するOPナンバー①といい、躍動感溢れるDANTEの代表曲④といい、アルバム後半を引き締めるスピード・ナンバー⑧といい、時折ギラリと光るカッコ良さでこちらの耳を惹き付けてくれます。 MANDRAKE ROOTも店仕舞いしてしまい、今では余り見かけなくなってしまったのが残念な1枚ですね。
ホラーのエレメントを取り入れたHR/HMサウンド(メンバー曰く「ホラー・ミュージック」)を追求すべく、'77年にスティーヴ・シルヴェスター(Vo)によって結成された、デス/ブラック・メタルやオカルト・メタルの源流の1つにも数えられている、カルト的人気を博すイタリア出身の5人組。(ちなみにバンド名はIN DEATH OF STEVE SYLVESTERの略) ・・・といっても、そうした情報を知ったのはインターネット発達以降の話で、結構最近までは単に「妙ちきりんなコスプレ集団」ぐらいにしか思っていなかったのですが。 '88年のアルバム・デビュー以降、無数のメンバー・チェンジを繰り返しながら活動を継続。'13年には最新作もリリースしている様子。
沈滞する90年代の英国HR/HMシーンにおいて気を吐いたDEN OF THIEVES、'95年発表の2ndアルバムにして(残念ながら)ラスト作。 勢いよく切り込んでくるKeyリフが、どことなくVOW WOWの名曲“SHOT IN THE DARK”を思わす疾走ナンバー①によるOPだけで「よっしゃ、合格!」と膝を打つ本作は、英国声シンガーの熱唱とバックのタイトな演奏を活かして、憂いを帯びたメロディがキャッチーに駆け抜けていく、「華」はないけど聴けば聴くほどに旨味が染み出す燻し銀のブリティッシュHMサウンドが、今回も徹頭徹尾貫かれています。 ①③⑦⑩といった疾走曲のカッコ良さに一層の磨きを掛けると共に、ソロを取ったかと思えばリフも刻み、時にはGとバトルを繰り広げたりと、ゲスト参加とは思えぬ八面六臂の活躍を魅せるKeyのフィーチュア度が格段にUP。これにより潤いとドラマ性が増強された本編は、キャッチーな哀メロ・ナンバー④に、ドラマティックに盛り上がる⑤⑨、爪弾かれるスパニッシュ・ギターが絶品の⑧、ハードポップ風味の⑫etc・・・といった具合に、個々の楽曲のキャラ立ちがより明確になりました。 メリハリ不足やチープな音質といった前作の弱点もきっちりと改善、ポテンシャルの高さを遺憾なく発揮した力作・・・なんだけどこれも廃盤。無念。
ブラジルはリオグランデ・ド・スル州の州都、ポルト・アレグレ出身で、結成は'90年まで遡る古株スラッシャー。(当初はデス・メタルをプレイしていたようだが) 90年代前半はメンバー・チェンジ、スプリットEPやデモテープ制作で腕を磨き、'98年に自主制作の1st『NERVOUS SYSTEM』でデビュー。 '01年に2nd『INFINITE ABYSSAL』、'04年に3rd『BEHIND THE VEIL』をコンスタントに発表。'07年にはWACKEN OPEN AIR METAL BATTLEに出場して第2位の成績を残す。 '08年、NWOTMの盛り上がりに乗って(?)4th『UNNATURAL DISPLAY OF ART』で日本デビュー。'12年には5th『THE HUMAN NEGLIGENCE IS REPUGNANT』を発表。同作は日本盤のリリースこそ叶わなかったものの、相変わらず強力なスラッシュ・メタル・アルバムに仕上がっていた。