‘06年にオリジナルASIAの復活が実現。長年の相棒だったジェフ・ダウンズがそちらへ参加してしまったため微妙な立場に置かれることとなった「もう一つのASIA」のシンガー、ジョン・ペイン。本作は彼がプログレ・フィールドでの活躍で知られるエリク・ノーランダー(Key)を曲作りのパートナーに、ブルース・ブイエ(G)、ガスリー・ゴーヴァン(G)、ジェフ・コールマン(G)、ジェイ・シェレン(Ds)ら豪華アーティストをゲストに迎えて――といえば聞こえは良いけど実際は制作期間が長期に及んだせいでメンバーが入れ替わっただけ――レコ―ディングを行い、DUKES OF THE ORIENT名義で’18年に発表したアルバム。 例によってBURRN!!誌では酷評され60点台を食らっていましたが、「ペインが歌いノーランダーが曲作りに噛んでいるのだから、そんな酷い内容なわけなかろう」と購入してみれば、これが元々はASIA FEATURING JOHN PAYNE名義でのリリースが予定されていただけあって、オリジナルASIAの向こうを張るような抒情的でドラマティックなプログレ・ハード・サウンドが全編に亘って展開される力作に仕上がっていましたよ。 特に英国シンガー然とした威厳と包容力溢れるペインの歌声に導かれて、力強くアルバムのOPを飾る①、美麗なハーモニーに彩られた重厚にして劇的な⑤、侘しげに爪弾かれるアコギの導入が効果的な大作⑨といった楽曲は、「ASIAらしさ」の底上げに注力するノーランダーのナイス・アシストも相俟って、まさしくこのタッグに期待する要素が凝縮されています。 ダウンズ/ペイン期のASIAは勿論のこと、MAGNUM辺りの正調ブリティッシュHRサウンドを愛する向きにも強くお勧めできる力作。
ドイツはバイエルン州ランツベルグにて'06年に活動を開始した時、中心メンバーは若干13歳だったという早熟なスラッシュ・メタル・バンド。 KREATOR、METALLICA、PANTERA、パンク/ハードコアをお手本に(特にベイエリア・スラッシュからは影響を受けまくったとのこと)、ライブ活動と曲作りに邁進し、'10年にはかのWACKEN METAL BATTLEで優勝を果たす等、ドイツ国内において確固たる支持基盤を築き上げる。 こうした評判を後ろ盾にNAPALM RECORDSとの契約を実現させたバンドは、'12年にデビュー作『VIOLENT DEMOLITION』を発表。更には'14年発表の2nd『AWAKE THE RIOT』で本邦初登場も果たした。
「イカ天」に出場してベスト・プレイヤー賞を受賞する等、インディーズ・シーンにおいて確固たるファンベースを築いていたDANTEが、’91年に満を持して発表した1stアルバム。 購入当時は「加瀬竜哉がBで参加している」ということ以外、本作に関する情報は殆ど手元になかったのですが、バンド名がDANTEで、アルバム・タイトルは『IN THE LOST PARADISE』。しかも発売元がMANDRAKE ROOTとくれば、「これもう絶対にドラマティックな様式美HMアルバムでしょ」と期待に胸膨らませて再生ボタンを押したらば、聴こえて来たのはラフでノリ重視のHMサウンド…。様式美作品でなくとも加瀬のソロ『SISTER LEESA』(’93年)みたいな作風であってくれればと期待していた我が身には肩透かし感が半端なかったものの、クレジットをよく見りゃ作曲担当はギタリスト氏。そもそも加瀬はバンドの中心メンバーでもなんでもなかったという。(思い違いしてたこっちが悪い) そんなわけで、ファースト・インプレッションにしくじった感のあった本作でしたが、繰り返し聴き込むうちに「これはこれであり」と評価を上方修正。インディーズ制作ゆえの音質的ハンデや、楽器陣の達者さに比べるとVoの弱さが如何ともし難いというジャパメタにありがちな弱点を抱えつつも、キレのある演奏とアレンジ・センスに支えられた楽曲は、キャッチーなコーラス・ワークをフィーチュアして疾走するOPナンバー①といい、躍動感溢れるDANTEの代表曲④といい、アルバム後半を引き締めるスピード・ナンバー⑧といい、時折ギラリと光るカッコ良さでこちらの耳を惹き付けてくれます。 MANDRAKE ROOTも店仕舞いしてしまい、今では余り見かけなくなってしまったのが残念な1枚ですね。
英国はヨークシャー州ノーザラートン出身。 GUARDIAN RECORDS N’ TAPESからリリースされたコンピレーション・アルバム『PURE OVERKILL』に参加していたTOKYO ROSEを前身に誕生。ドラマーはBATTLEAXEの1stと2ndに参加していたイアン・トンプソン。 印象的なジャケット含め、マニアから愛されるデビュー作『SHADOWS OF THE NIGHT』(’84年)1枚をROADRUNNER RECORDSに残してバンドは消滅。'87年にEPを発表しているとの情報もありますが、実在を示す証拠はない模様。
ホラーのエレメントを取り入れたHR/HMサウンド(メンバー曰く「ホラー・ミュージック」)を追求すべく、'77年にスティーヴ・シルヴェスター(Vo)によって結成された、デス/ブラック・メタルやオカルト・メタルの源流の1つにも数えられている、カルト的人気を博すイタリア出身の5人組。(ちなみにバンド名はIN DEATH OF STEVE SYLVESTERの略) ・・・といっても、そうした情報を知ったのはインターネット発達以降の話で、結構最近までは単に「妙ちきりんなコスプレ集団」ぐらいにしか思っていなかったのですが。 '88年のアルバム・デビュー以降、無数のメンバー・チェンジを繰り返しながら活動を継続。'13年には最新作もリリースしている様子。
沈滞する90年代の英国HR/HMシーンにおいて気を吐いたDEN OF THIEVES、'95年発表の2ndアルバムにして(残念ながら)ラスト作。 勢いよく切り込んでくるKeyリフが、どことなくVOW WOWの名曲“SHOT IN THE DARK”を思わす疾走ナンバー①によるOPだけで「よっしゃ、合格!」と膝を打つ本作は、英国声シンガーの熱唱とバックのタイトな演奏を活かして、憂いを帯びたメロディがキャッチーに駆け抜けていく、「華」はないけど聴けば聴くほどに旨味が染み出す燻し銀のブリティッシュHMサウンドが、今回も徹頭徹尾貫かれています。 ①③⑦⑩といった疾走曲のカッコ良さに一層の磨きを掛けると共に、ソロを取ったかと思えばリフも刻み、時にはGとバトルを繰り広げたりと、ゲスト参加とは思えぬ八面六臂の活躍を魅せるKeyのフィーチュア度が格段にUP。これにより潤いとドラマ性が増強された本編は、キャッチーな哀メロ・ナンバー④に、ドラマティックに盛り上がる⑤⑨、爪弾かれるスパニッシュ・ギターが絶品の⑧、ハードポップ風味の⑫etc・・・といった具合に、個々の楽曲のキャラ立ちがより明確になりました。 メリハリ不足やチープな音質といった前作の弱点もきっちりと改善、ポテンシャルの高さを遺憾なく発揮した力作・・・なんだけどこれも廃盤。無念。
ブラジルはリオグランデ・ド・スル州の州都、ポルト・アレグレ出身で、結成は'90年まで遡る古株スラッシャー。(当初はデス・メタルをプレイしていたようだが) 90年代前半はメンバー・チェンジ、スプリットEPやデモテープ制作で腕を磨き、'98年に自主制作の1st『NERVOUS SYSTEM』でデビュー。 '01年に2nd『INFINITE ABYSSAL』、'04年に3rd『BEHIND THE VEIL』をコンスタントに発表。'07年にはWACKEN OPEN AIR METAL BATTLEに出場して第2位の成績を残す。 '08年、NWOTMの盛り上がりに乗って(?)4th『UNNATURAL DISPLAY OF ART』で日本デビュー。'12年には5th『THE HUMAN NEGLIGENCE IS REPUGNANT』を発表。同作は日本盤のリリースこそ叶わなかったものの、相変わらず強力なスラッシュ・メタル・アルバムに仕上がっていた。
D.A.D.と言えば、大ヒット作『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』(’89年)に対して、BURRN!!誌上ではゴッドが90点台を献上。その後すぐに2度の来日公演が実現する等、「新世代北欧ロック・バンドの雄」として注目を集める存在でした。本作はそんな彼らが’90年に日本で行ったショウケース・ギグ(会場は大阪MIDシアター)の模様を捉えた実況録音盤で、収録曲は7曲と少なめ。また選曲が『NO FUEL~』に偏っていることもあり、バンドの入門盤向けというよりは「熱心なファン向けアイテム」に類される1枚かと。 ぶっちゃけ、哀愁と美旋律まみれのオールドスクールな北欧メタルを愛する身的には、その風変りなロックンロール・サウンドは当時完全に興味の範疇外だったのですが、「日本収録のライブ盤」という点に釣られて本作を購入。そしたら「あ。案外良い曲書けるバンドなんだ」と(失礼過ぎる感想)。特にマカロニ・ウェスタンmeetsパンク・ロック=カウパンクと評された彼らの音楽性の真骨頂と言うべき“GIRL NATION”や、シングル・カットされ話題を呼んだ代表曲“SLEEPING MY DAY AWAY”等は、砂塵とタンブル・ウィード舞う西部の荒野を想起せずにはいられない、乾いた哀愁が心地良いったらないHRナンバー。 既に地元では確固たるステイタスを築いていたバンドだけあって、ライブ・パフォーマンスからは実績と自信に裏打ちされた安定感が漂いますし、掛け合いも盛り込んだ7曲目で飛び交う黄色い歓声を聴いていると「あぁ、日本でも人気あったんだなぁ」としみじみ。 興味本位から購入した作品でしたが、思ったよりもずっと楽しめた1枚でしたよ。
デビュー以来破竹の快進撃を続けて来たEARTHSHAKERが、国産HR/HMバンドとして初めて日本武道館という檜舞台で行ったライブの模様を収めた’86年発表の実況録音盤。メジャー・デビューから僅か3年足らずで武道館に辿り着いてしまったのですから、当時の彼らにどんだけ勢いがあったか分かろうというものですよ。ちなみに以前のCDは容量の関係上数曲カットされてしまっていましたが、現行バージョンはLPに準じた2枚組仕様に戻っていますので、安心してお買い求め下さい。 収録曲は永川敏郎(Key)が正式メンバーとして加入し、音楽性が拡散し始める5th『OVERRUN』以前の初期4作からチョイス。つまり「哀愁のメロディ」と「独特の歌詞世界」とを大切にした歌謡HRチューンばかりがセットリストに並ぶ上に、シンフォニックなOP序曲に導かれて、のっけから劇的に炸裂するのが名曲中の名曲“MORE”ですよ。そりゃあーた、ハートを鷲掴まれないわけがない。 以降も、大合唱を巻き起こす“RADIO MAGIC”“COME ONE”を始め、個人的に愛して止まない“THE NIGHT WE HAD”や、今にもチャイコフスキーの“序曲1812”が聴こえてきそうな(?)工藤義弘のドラム・ソロを組み込んだ“流れた赤い血はなぜ!”から“記憶の中”に“FUGITIVE”まで、名曲・代表曲の数々が目白押し。これらを聴くと、西田昌史のVoにしろ石原慎一郎のGにしろ、一音一音に「歌心」を込めるバンドの姿勢が、ライブという場であっても全くブレていないことがビンビンに伝わって来ますよ。 EARTHSHAKER入門盤として下手なベスト盤に手を出すぐらいなら、まず本作をどうぞ。
FRONTIER RECORDSが仕掛けた数多のプロジェクトに参加し、ソングライターとしての手腕を振るって来たスウェーデン人アーティストのエリック・マーテンセン。その彼のメイン・バンドたるECLIPSEが'08年に発表した2ndアルバム。 そんなわけで聴く前から出来の良さは約束されたようなもんの本作ですが、実際に聴いた後も、その信頼が裏切られることはありませんでした。80年代風味満点の健康的なメロディックHR(日章旗ジャケットの採用は80年代っぽさを演出するためか?)という、デビュー作で披露したサウンドを継承しつつ、メロハー路線に寄せてた前作に比べると、今回はWHITESNAKEやUFOといった彼らのルーツたるブリティッシュHRバンド勢に対する愛情をつまびらかに開陳することで、楽曲に、よりハード・ロッキンなエッジと躍動感が加味されているのが特徴。その辺は『ARE YOU READY TO ROCK?』なる直球極まりないタイトルが堂々表す通りですね。 それでいて勢い任せで大味になってしまうことはなく、涼しげな哀愁に彩られた歌メロにしろ、メタリックに弾きまくって存在感を主張するGソロにしろ、全編に亘ってフックの大盤振る舞いなのですから、やはりエリック・マーテンセン、只者じゃあない。 無駄なく構成されたアルバムに捨て曲は見当たりませんが、中でもアグレッシブな曲調と伸びやかなサビメロの対比が印象的な②と、アコギ爪弾かれるイントロの後、憂いに満ちたメロディが本編随一のハードさを纏って駆け抜ける⑤の2曲は、それぞれアルバムの山となるハイライト・ナンバー。 これ以降のアルバムも聴いてみたくなる魅力溢れる作品です。