D.A.D.と言えば、大ヒット作『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』(’89年)に対して、BURRN!!誌上ではゴッドが90点台を献上。その後すぐに2度の来日公演が実現する等、「新世代北欧ロック・バンドの雄」として注目を集める存在でした。本作はそんな彼らが’90年に日本で行ったショウケース・ギグ(会場は大阪MIDシアター)の模様を捉えた実況録音盤で、収録曲は7曲と少なめ。また選曲が『NO FUEL~』に偏っていることもあり、バンドの入門盤向けというよりは「熱心なファン向けアイテム」に類される1枚かと。 ぶっちゃけ、哀愁と美旋律まみれのオールドスクールな北欧メタルを愛する身的には、その風変りなロックンロール・サウンドは当時完全に興味の範疇外だったのですが、「日本収録のライブ盤」という点に釣られて本作を購入。そしたら「あ。案外良い曲書けるバンドなんだ」と(失礼過ぎる感想)。特にマカロニ・ウェスタンmeetsパンク・ロック=カウパンクと評された彼らの音楽性の真骨頂と言うべき“GIRL NATION”や、シングル・カットされ話題を呼んだ代表曲“SLEEPING MY DAY AWAY”等は、砂塵とタンブル・ウィード舞う西部の荒野を想起せずにはいられない、乾いた哀愁が心地良いったらないHRナンバー。 既に地元では確固たるステイタスを築いていたバンドだけあって、ライブ・パフォーマンスからは実績と自信に裏打ちされた安定感が漂いますし、掛け合いも盛り込んだ7曲目で飛び交う黄色い歓声を聴いていると「あぁ、日本でも人気あったんだなぁ」としみじみ。 興味本位から購入した作品でしたが、思ったよりもずっと楽しめた1枚でしたよ。
デビュー以来破竹の快進撃を続けて来たEARTHSHAKERが、国産HR/HMバンドとして初めて日本武道館という檜舞台で行ったライブの模様を収めた’86年発表の実況録音盤。メジャー・デビューから僅か3年足らずで武道館に辿り着いてしまったのですから、当時の彼らにどんだけ勢いがあったか分かろうというものですよ。ちなみに以前のCDは容量の関係上数曲カットされてしまっていましたが、現行バージョンはLPに準じた2枚組仕様に戻っていますので、安心してお買い求め下さい。 収録曲は永川敏郎(Key)が正式メンバーとして加入し、音楽性が拡散し始める5th『OVERRUN』以前の初期4作からチョイス。つまり「哀愁のメロディ」と「独特の歌詞世界」とを大切にした歌謡HRチューンばかりがセットリストに並ぶ上に、シンフォニックなOP序曲に導かれて、のっけから劇的に炸裂するのが名曲中の名曲“MORE”ですよ。そりゃあーた、ハートを鷲掴まれないわけがない。 以降も、大合唱を巻き起こす“RADIO MAGIC”“COME ONE”を始め、個人的に愛して止まない“THE NIGHT WE HAD”や、今にもチャイコフスキーの“序曲1812”が聴こえてきそうな(?)工藤義弘のドラム・ソロを組み込んだ“流れた赤い血はなぜ!”から“記憶の中”に“FUGITIVE”まで、名曲・代表曲の数々が目白押し。これらを聴くと、西田昌史のVoにしろ石原慎一郎のGにしろ、一音一音に「歌心」を込めるバンドの姿勢が、ライブという場であっても全くブレていないことがビンビンに伝わって来ますよ。 EARTHSHAKER入門盤として下手なベスト盤に手を出すぐらいなら、まず本作をどうぞ。
FRONTIER RECORDSが仕掛けた数多のプロジェクトに参加し、ソングライターとしての手腕を振るって来たスウェーデン人アーティストのエリック・マーテンセン。その彼のメイン・バンドたるECLIPSEが'08年に発表した2ndアルバム。 そんなわけで聴く前から出来の良さは約束されたようなもんの本作ですが、実際に聴いた後も、その信頼が裏切られることはありませんでした。80年代風味満点の健康的なメロディックHR(日章旗ジャケットの採用は80年代っぽさを演出するためか?)という、デビュー作で披露したサウンドを継承しつつ、メロハー路線に寄せてた前作に比べると、今回はWHITESNAKEやUFOといった彼らのルーツたるブリティッシュHRバンド勢に対する愛情をつまびらかに開陳することで、楽曲に、よりハード・ロッキンなエッジと躍動感が加味されているのが特徴。その辺は『ARE YOU READY TO ROCK?』なる直球極まりないタイトルが堂々表す通りですね。 それでいて勢い任せで大味になってしまうことはなく、涼しげな哀愁に彩られた歌メロにしろ、メタリックに弾きまくって存在感を主張するGソロにしろ、全編に亘ってフックの大盤振る舞いなのですから、やはりエリック・マーテンセン、只者じゃあない。 無駄なく構成されたアルバムに捨て曲は見当たりませんが、中でもアグレッシブな曲調と伸びやかなサビメロの対比が印象的な②と、アコギ爪弾かれるイントロの後、憂いに満ちたメロディが本編随一のハードさを纏って駆け抜ける⑤の2曲は、それぞれアルバムの山となるハイライト・ナンバー。 これ以降のアルバムも聴いてみたくなる魅力溢れる作品です。
今やFRONTIERS RECORDS関連の作品には欠かせない存在となった感のあるマルチ・アーティスト、アレッサンドロ・デル・ヴェッキオの名前を初めて意識する切っ掛けとなったプロジェクト、EDGE OF FOREVERが'04年に発表した1stアルバム。 シンガーは現AXEのボブ・ハリスで、プロデューサー兼ソングライターとして故マルセル・ヤコブが全面バックアップ。ジェフ・スコット・ソートも一部楽曲にゲスト参加していることで注目を集めた作品…というか、当時は確かマルセルのネーム・バリューに釣られて本作を購入したんだっけなぁと。この頃はアレッサンドロは「誰それ?」状態でしたから…。 そうした制作環境が関係しているのかどうか、本作にはアレッサンドロ印のメロハー・チューンの合間に、マルセル在籍時代のイングヴェイや初期TALISMANを彷彿とさせる北欧風様式美HMナンバーも収録。ジェフ・スコット・ソートとボブ・ハリスの熱を帯びた歌合戦と、冷え冷えとした曲調の対比が効果的な③、“I AM A VIKING”を思わす重厚且つ劇的な⑤、そこから間髪入れずに疾走を開始する⑥、Keyがミステリアスな雰囲気を盛り上げる⑨等は、プロデューサーがボビー・バース(AXE)に交代する次作以降とはやや趣きを異する、本作ならではの名曲と言えるのではないかと。勿論ポップ&キャッチー、且つフックも効きまくった②や、メロディの色彩豊かなバラード⑦のような、アレッサンドロのソングライティング・センスが早くも眩い輝きを放つ名曲も忘れ難いのですが。 この内容の充実っぷりで中古盤価格が3桁台ってのは、お買い得にも程があるんじゃあないでしょうか?見かけたら是非。
異能の天才ダン・スウァノ率いるEDGE OF SANITYが作り上げた、このバンドの最高傑作にして、メロディック・デス・メタル黎明期を代表する名盤の1つでもある、'94年発表の4thアルバム。 前作『THE SPECTRAL SORROWS』において、ブルータルなデス・メタルに明確なメロディの流れを持ち込む事で、(CARCASSの『HEARTWORK』に先んじて)メロディック・デス・メタルなるサウンドを、世のメタラー諸氏に知らしめたダンだが、本作では更に、Key、アコギ、クリーンVoを用いた「美しさ」の演出、静と動の対比、それらを効果的に活かしたドラマチックな曲展開といった要素の数々を大胆に導入し、一層の音楽的進化を遂げている。 ヨーロッパ的なダークネスをたっぷりと含んだ流麗なリフ・ワークと、北欧のバンドならではの悲哀と激情を兼ね備えたメロディの素晴しさは出色で、特に、後半に向けてグイグイと高まりを見せる、哀しみに満ちたメロディが胸を締め付けるヘヴィ・ナンバー①、ブルータルな曲調に反して、リフやメロディには慟哭のドラマが宿る「メロデスかくあるべし!」な②⑥、ノーマルVoとデス声/緩急の使い分けが巧みな③、静と動、美と醜が目まぐるしく入れ替わり、インスト・パートでは劇的なツインGのハーモニー・プレイが炸裂する、本作のハイライト・チューンと言うべき④、全面的にクリーンVoをフィーチュアして、キャッチーに疾走する異色曲⑤といった楽曲が集まる、本編前半のテンションの高さは半端ではない。(当然、後半のクオリティも十分) ・・・とまぁ、この時点では間違いなくメロデス群のトップを快走していたEDGE OF SANITYだったのに、この後、ファン置いてけぼりの実験作『CRIMSON』で大コケした結果、ここ日本において急激に失速してしまったのは残念でならない。
本国ではデビュー早々チャート№1の座にアルバムを送り込み、著名なミュージカルやディナー・ショーを手掛ける等、着実にキャリアを積み上げてきたというスウェーデン出身のシンガー/ソングライター、エミル・ジーグフリードソン(舌噛みそうな名前だ)、’24年発表の3枚目のソロ・アルバムにして日本デビュー作。 母国語で歌っていた前2作は完全にポップス・アルバムだったそうですが、SUPREME MAJESTYのメンバーを曲作りのパートナーに迎えレコーディングが行われた本作で披露されているのは、高揚感に満ちたメロディ、歌の合間をフラッシーに駆け巡るG、楽曲を華やかに色付けるKeyとが生き生きと躍動する80年代風味満点のポップ・メタル。かつてはアメリカのバンドのお家芸だったこの手のサウンドも、今や北欧メロハー勢がそのお株をすっかり奪ってしまった感がありますね。 主役たるエミールも、伸びやかで張りのある歌声から、フックを盛り込んだ曲作りの巧みさに至るまで、キャリアに裏打ちされた実力を十二分に発揮。VoだけでなくGも良く歌っている②、レディー・ガガのカヴァーながら完全にHRバージョンとして蘇った⑤、イントロが“EYE OF THE TIGER”を彷彿とさせるSURVIVOR調の⑨等、本編は捨て曲の見当たらない充実っぷりを誇っており、中でもタイトル通りスパニッシュ・テイストがピリリと効いた哀愁のメロディック・ロック・チューン⑦と、青春映画のEDテーマ曲といった趣きでアルバムを爽やかに締め括る⑫は本年度ベスト・チューン候補にも挙げたいくらいですよ。 メロハー界の有望株登場にホクホク顔になれる1枚。前2作も聴いてみたくなりました。
デンマークはオールボーにおいて、平均年齢16歳という若いメンバー達によって結成。 '07年制作の自主制作EP『ART IN IMPERFECTION』で獲得した評判を梃子に、'11年には「制作日数僅か12日間」という実にスラッシュ・メタル・バンドらしい手法でレコーディングされた1stフル『LOST IN VIOLENCE』をULTIMATE RECORDSから発表。 更に'12年には、バンド・コンテスト「ROCK THE NATION AWARD 2012」に参加し、数千の応募バンドの中から見事最優秀バンドに輝き、その賞品としてワールドワイドなレコード契約を獲得。 プロデューサーにHYPOCRISYのピーター・テクレンを迎える等、より潤沢なレコーディング環境で制作された2nd『LAST NIGHT OF SOLACE』は'13年に発表され、同作はSPIRITUAL BEASTを介して日本盤もリリースされた。