STATE OF MINDやGREAT KING RAT、TALK OF THE TOWN、あと個人的には北欧メタルの隠れた秀盤、ラーズ・エリック・マットソンの『VISION』(’92年)で歌っていた印象が未だに強く残っているコニー・リンドと、プロデューサー/ソングライター/マルチ・プレイヤーとして腕を振るうピーター・ブローマン(今回調べてみて’17年に亡くなっていると知ってびっくり)の2人により立ち上げられたメロハー・プロジェクトAMAZE MEが、’97年にマーキー/アヴァロン・レーベルから発表した2ndアルバム。 コニーの甘く感傷的な歌声と煌めくKeyの彩りが映える、「北欧のそよ風」の如き爽やかな透明感&哀感兼備のメロディアスHRサウンド実に心地の良い1枚なのですが、90年代当時はこの手の作品の受け入れ先が日本(と欧州の一部)にしかなかったためか、レコーディング費用はあまり用意出来なかったようで、音質はお世辞にも上質とは言い難く、打ち込み丸出しのリズムも少々気になるっちゃあ気になります。 ただぶち壊しというレベルではありませんし、何よりそれを押しても溌剌と弾むOPナンバー①、清涼感に溢れた⑥、甘口な中にもHRのエッジが効いたアップテンポの⑪等、収録曲の出来栄えが素晴らしい。特に北欧ハードポップの理想形を体現した名曲の一つである②は、この曲目当てにアルバムを買っても損はないと力説したくなる魅力を有しています。 BURRN!!誌等で高評価を得たこともあって、リリース時はそれなりのセールスを記録したようで、廃盤の今でも中古屋に行くと安価での入手が可能。もし見かけたら上記楽曲目当てに手に取って頂けましたら幸いです。
メロデス第一世代として頭角を現し、現在はその音楽性を孤高の域にまで引き上げることで本国フィンランドは勿論のこと、日本でも安定した人気を誇るAMORPHISが’92年に発表した1stアルバム。(日本盤は'95年に2ndアルバムと同時リリース) 本作で披露されているのは、地の底から轟く咆哮Voと重苦しく刻まれるリフ&リズムが、時に轟然と、時にじりじりと這い進む、基本に忠実なデス・メタル。全編に亘って北欧民族音楽由来の抒情メロディが満ち溢れ、メロディック・デス・メタル黎明期の名盤として知られる2nd『TALES OF TEN THOUSAND LAKES』(’94年)や、近年の傑作群における唯一無二のサウンドに比べると、まだまだ相当に粗削りな出来映えではあるものの、寧ろ今聴くと「あのAMORPHISも若い頃はブラスト・ビートを用いて遮二無二にブッ飛ばしてたんだなぁ」と、新鮮に感じる人もいるんじゃなかろうかと。 無論独自の個性も既に芽吹き始めており、侘し気な序曲①を経て、段階的に速度を上げていく重厚な②に繋げる構成や、ツインGの奏でる荒涼とした旋律がデスメタル然としたブルータリティを伴って吹き荒ぶ⑥等は、この時期の彼らだからこそ生み出し得た名曲ですよ。 ちなみにアルバム・タイトルの『THE KARELIAN ISTHMUS』は、フィンランドにとって重要な土地である「カレリア地峡」を意味する言葉。そして彼の地に残っていたフィンランド語の伝承や歌謡を編纂した民族叙事詩が、AMORPHISの曲作りの重要なインスピーレション源として知られる『カレワラ』であるという。斯様にAMORPHISの創作活動の姿勢が、当時から現在まで一貫してブレていなことを伝えてくれる1枚でもあります。
高齢のベテランや、若くして破天荒なライフスタイルを送ってそうなミュージシャンだと、訃報に触れてもある程度は粛々と受け止められるものですが、アンドレ・マトス死去とは…。全く予想だにしなかった方向からブン殴られたような衝撃ですよ。 本作は彼が'12年にソロ名義で発表した3枚目のアルバムで、初めてサシャ・ピート以外のプロデューサーと組んで制作されているせいか、全体的にメロパワ・メタル色もラテン色も控えめ。よりモダンでプログレッシブなアプローチが目立っており、OPナンバーにしちゃ覇気に欠ける①や、本編を色濃く覆う内省的なムード、テンションを抑え気味に淡々と歌うマトスのVoもそうした印象に拍車を掛けています。無論②⑩のような疾走ナンバーも健在ですが、若干「置きに来てる」感がなくもないそれらよりは、憂いに満ちた③、ムーディなバラード④といった、マトスの哀愁声が映える、一聴地味だけど聴くほどに味わいを増す楽曲の方に心惹かれる次第。中でも、緩から急まで多彩な展開を織り込んだ⑧は名曲ですよ。 ちなみに日本盤はVIPER時代の代表曲“AT LEAST A CHANCE”、QUEENSRYCHEの“I DON’T BELIEVE IN LOVE”、演歌の名曲“氷雨”等のカヴァー曲を集めたボーナス・ディスクが付属する2枚組仕様。確か当時“氷雨”聴きたさに本作を購入したんだっけなと。マトスの微笑ましい日本語による歌唱は評価の分かれ目なれど、個人的には哀愁を孕んだ曲調をドラマティックに蘇らせた好カヴァーとして楽しませて頂きました。 マトスの豊かな才能が発揮された1枚であると共に、てめぇがやりたい音楽と、外から期待される音楽との齟齬についての彼の葛藤が刻まれている(ような気がする)作品でもあるという。
人気ないなー、このアルバム。個人的にはANNIHILATORの最高傑作!と断言したくなるぐらい気に入っているんだけど・・・。 快作「CRITERIA FOR A BLACK WIDOW」で、それまでの迷いを断ち切り完全復活を遂げたANNIHILATORが、'01年に発表した8thアルバム。 「CRITERIA~」でバンドに電撃復帰を果たしたランディ・ランペイジが、案の定、アルバム1枚きりで脱退(というか解雇)、本作からは、その後任として元OVERKILLのジョー・コミューが参加しているのだが、これがアグレッシブなシャウトから、ロブ・ハルフォードばりのスクリーム、更にはブルース・ディッキンソン風の雄々しい歌唱まで幅広くこなせる、二代目フロントマン コバーン・ファー以来の逸材。 「歌える」Voの加入効果か、楽曲の方も意図的に激しさ/複雑さが前面に押し出されていた前作に対し、今回はリフにしろ、メロディにしろ、ツインGの絡みしろ非常にキャッチー。曲展開も必要最低限に整理され、ある意味、正統派へヴィ・メタル的とも言える仕上がりをみせる。ここ暫くは封印されていた、バンド初期の必殺技「ここぞという箇所でのアルペジオ」が効果的にフィーチュアされているのも、その印象を強めている一因かな? 結果として、スラッシーな雰囲気は若干後退したものの(勿論③⑩のような高速スラッシュ・チューンも収録しているが)、シャープに疾走する①“DENIED"、へヴィな曲調と哀愁を帯びたVoハーモニーの対比が美しい④“CARNIVAL DIABLOS"、ジョー・コミューのダイナミックな歌唱が劇的な盛り上がりを演出する⑥“TIMEBOMB"、そして全てを兼ね備えた名曲中の名曲⑨“EPIC OF WAR"といったハイクオリティな収録曲の前には、そんなことは枝葉末節。 中期以降のANNIHILATORの何たるかが知りたければ、まず本作を聴くことをお薦めさせていただきまうす。
ジェフ・ウォーターズ自身が担当する国内盤解説を読み「最初期ANNIHILATORの雰囲気がある作品」とのお言葉に、聴く前から期待値がMAXまで跳ね上がった'17年発表の新作。 何せ1曲目のイントロからして“ALICE IN HELL”風でニヤリとさせられますし、以降もスラッシュ・メタル然とした突撃ナンバーあり、抒情バラードあり、シアトリカルな曲展開を有する楽曲あり…と、本編は非常にバラエティに豊んだ仕上がり。原点回帰が志向されたサウンドの中を水を得た魚の如く縦横無尽に泳ぎ回り、聴き手の情緒を不安定する、美しくも不穏なアルペジオを巧みに織り交ぜたジェフの高速Gプレイも、唯一無二のセンスを携えて益々冴え渡っていますよ。 イントロの一捻りから激烈な突進へ転じる①、美しいメロディと凄惨な歌詞の歪んだコントラストが秀逸な④、本編ハイライトに推したい劇的な疾走曲⑦、“BRAIN DANCE”タイプのトリッキーな⑩等、なるほど確かに収録曲は初期3作を思わせる要素が確信的に散りばめられているのですが、ジェフ自らマイクを取るVoの声質がダークなため、作品全体も仄暗い色合いが強まって聴こえるという点では、本作に一番近いのは4th『KING OF KILL』じゃなかろうかと。彼のシンガーとしての力量に不足はないものの、今作の場合はもうちょい声質にエキセントリックな「色」のついたシンガーが歌った方が、楽曲が持つ豊かな色彩をより活かせたのではないかなー?と思ったり思わなかったり。 …等となまじ出来が良いだけに重箱の隅を突きたくなりますが、近年屈指の力作であることは間違いない1枚。ただ「不振を完全払拭」という国内盤帯の惹句はバンドに失礼じゃないかね、君ィ。
傑作です(断言)。直球勝負のタイトルも頼もしいこの12thアルバムは、名作と名高い3rd『SET THE WORLD ON FIRE』以来、 久々にポップ・フィールドにまで曲作りの幅を広げたバラエティ豊かな作風ながら、「らしさ」もしっかりと維持した ANNIHILATORのここ数作のアルバムの中でも、ズバ抜けてハイクオリティな内容に仕上がっている。 マイケル・アモット、アレキシ・ライホ、イェスパー・ストロムブラッドら、キラ星の如く参加している ゲスト・ミュージシャン勢に何かと話題が集まりがちな作品なれど(全員、非常に良い仕事をしてくれていますが)、 それ以上に印象に残るは、メロディの素晴しさ。特に叙情的でキャッチーな歌メロが抜群に良い。その好例が、 憂いを帯びたメロディが軽快に疾走する、名曲“SOUND GOOD TO ME"を彷彿とさせる②や、バックの演奏はアグレッシブなのに その上に乗る歌メロはフックに富みキャッチーというミスマッチ感が楽しい⑤だろうか。 勿論、OPとEDを〆る高速スラッシュ・チューン①⑩を始め、ANNIHILATOR節が炸裂するダイナミックな④⑥⑧、 そして本編の白眉たる、スラッシーな疾走感/キャッチーなメロディ/ドラマチックな曲展開と、全てを兼ね備えた名曲⑦の カッコ良さは言うに及ばず。(ボーナス・トラックがEXCITERの名曲“HEAVY METAL MANIAC"ってのもナイスです) 3rd『SET~』以来、ANNIHILATORをお見限りだったメタル・ファンをも振り向かせる説得力を持った1枚ではなかろうか。 ・・・と絶賛しておいて最後に不満点を1つ。それは相変わらず芯の(熱さの)感じられないデイヴ・パッデンの薄味なVo。 アルバム3枚連続登板はこのバンドのフロントマン史上初の快挙だが、ダンコ・ジョーンズにアンジェラ・ゴソウ、 ダン・ビーラーにジェフ・ウォーターズという強烈な個性を備えたシンガー達に比べると、その存在感はかなり薄い。 このアルバム、例えばジョー・コミュー辺りが歌ってくれればもっと凄いアルバムになったような気がするのは俺だけか。
(皆さんが仰るとおり)ブンブン唸りながら刻まれるキャッチーなベース・ラインが◎ 「SET THE WORLD ON FIRE」のポップサイドの代表曲が“SOUNDS GOOD TO ME"なら、へヴィ・サイドの代表曲はこれだ! 疾走曲、複雑な展開を持つ曲は言うに及ばず、こういうシンプルなミッドテンポの名曲も書けちゃう辺り、ジェフ・ウォーターズの懐の深さが感じられます。
ANNIHILATORがドイツのBANG YOUR HEAD Fest.に出演した際の模様を収めたライブ盤(Disc-1)とBlue-ray、それにスタジオ収録のアコースティック・セッション(Disc-2)という3要素を1つに取りまとめた作品。タイトルはそれに因み『TRIPLE THRAT』。でも日本盤はBlue-rayが付属してないため、表題に込められた意味がイマイチ伝わり難いという。 とまれ内容は高品質です。まずDisc-1のライブ盤に関しては、メンバー全員テクニシャン揃いゆえ、複雑にして精緻、且つライブならではの白熱具合も存分に伝えてくれるパフォーマンスには何の不安もなし。初期の名曲を中心に構成されたセットリストはフェス仕様ですが、必ずしもANNIHILATOR目当てで集まったわけではない観客すら大合唱させてしまう“W.T.Y.D”や“ALISON HELL”といったキメ曲を抱えているバンドはやはり強い。あと驚かされるのがジェフ・ウォーターズのVoの上達っぷりで、最初聴き始めた時は、特に疑いもせず「専任シンガーを迎え入れたのか」とか思っていましたよ。 続いてアコースティック・セッションの模様が収められたDisc-2。OPナンバーが“SOUND GOOD TO ME”でいきなりテンションが上がりますが、選曲はバラード主体のため「この曲をアコースティック化?!」的驚きは少な目。強いて言えば“STONE WALL”が意外なチョイスでしたが、この名曲は出来ればライブ本編の方で聴きたかった…なんて。 それでも、誤魔化しのきかない状況ゆえシンガーとして熟達ぶりがよりダイレクトに伝わってくるジェフのVoを始め、この完成度の高さは流石の一言に尽きます。剛柔併せ持つANNIHILATORの卓越したパフォーマンスが楽しめる、「ファンなら買い」の1枚かと。
嘗てはバリバリの森川之雄派として鳴らした我が身ですが、ANTHEM再結成以降は坂本英三の素晴らしい仕事振りにシビれまくっていたので、今回のフロントマンの交代劇には、喜びよりもまず不安が先立ちました。 でもそれも、実際に本作を聴くまでのお話。高浜祐輔のKeyをお供に、疾走ナンバー固め打ちの本編前半で早くも炸裂する、森川のリキの入った「オゥイェー!!」のシャウトを耳にした途端、そうした不安は完璧に雲散霧消しましたね。 メンバーの屈強且つタイトなパフォーマンスと、グッと胸に染み入る哀愁のメロディとが熱く脈動するANTHEM流HMサウンドの本分はそのままに、激しく燃え盛る坂本のVo→沸々と煮え滾るような森川のVoへとバンドの「声」がバトンタッチしたことで、個々の楽曲が放つ印象も少なからず変化。具体的に言うなら、タメの効いた歌唱を得てよりウェット且つメロディアスな味わいが強まったかな?と。 アルバムは全編捨て曲なしですが、トドメはなんつっても名曲“DON'T LET IT DIE”。攻撃的なGリフ、小気味良く疾走するリズム、噛み付くようなヴァースから一転、メロディアスに展開されるサビメロの素晴らしさは特筆モノで、未だにこんな年間ベスト・チューン・クラスの名曲を生み出してしまう柴田直人(B)の才能には、黙って平身低頭するのみです。
レコーディング終盤、出来上がってきたサウンドに不満が生じたため、クリス・タンガリーディスにミックス作業のやり直しを依頼するというゴタゴタが発生したものの、その甲斐あってか、硬質でタイトなリズムの「鳴り」の良さにかけては過去最高レベルを獲得した、'08年発表の12thアルバム。 時にKeyを交えて、屈強さよりもメロディ重視の姿勢が貫かれた作風は前作『IMMORTAL BIND』と同様だが、所謂「昭和歌謡メタル」的な臭みを伴ったメロディが聴かれる場面は徐々に減少傾向にあり、特にそれは坂本英三(Vo)の歌メロに顕著に表れている。 例えばアルバム表題曲“BLACK EMPIRE”はヴァース部分こそ森川時代を彷彿とさせるANTHEM節なのだが、サビメロに関しては、より洗練されたスマート且つキャッチーな歌い回しでまとめられていて、従来の思わずコブシが回る歌唱は影を潜めている。 尤も、涙なしには聴けない叙情HRナンバー“WALK THROUGH THE NIGHT”や、へヴィに刻まれるリフ&リズムとその上を舞う哀メロのコントラストが絶妙な“EMPTINESS WORLD”辺りを聴けば分かる通りクサメロが皆無なんて事はなく、何より前述の“BLACK~”や、リズム隊が主役を張る“HEAT OF THE EMOTION”“GO INSANE”といった楽曲に代表される、唯一無二のANTHEM流HMサウンドのフォーミュラはきっちりと固守しながら、マンネリに陥ることなく、似て非なる名曲を次々に生み出すこのバンドの曲作りセンスには毎度感心させられっ放しですよ。名盤?勿論ですとも。