タイトルとアートワークはガテン系。でも音楽性の方は、ニール・カーノンが手掛けた音作りから、デズモンド・チャイルドら外部ライター勢を起用した形振り構わぬ姿勢まで(バックVoにはテリー・ブロック、ロビン・ベックも参加)、自信を持って放ったデビュー作『INDISCREET』がコケたことで「じゃあこれならどうだ!」とばかりに、一層AOR路線に前のめりになっている’89年発表の2ndアルバム。 いや前作だってポップで煌びやかな作品でしたけども、要所で溢れ出す泣きや哀愁が、隠しようのないFMのブリティッシュ・ロック・バンドとしての出自を物語っていたのに比べ、今回はもう身も心もアメリカンになりきって大陸の爽やかな微風を送り込んで来てくれています。例えるなら、前作収録曲“AMERICAN GIRL”の明るくハジけるノリを全編に行き渡らせたような感じ…とでも申しましょうか。 しかし、それが批判に値しないことは他の皆様の絶賛コメントが証明する通り。というか、こんだけ充実した制作環境だったら悪い作品なんて作りようもないですわな。スティーヴ・オーヴァーランドの「エモーショナルな歌唱」のお手本の如きVoや、兄クリスの弟に負けないぐらい歌心溢れるGプレイ等、メンバーのパフォーマンスも実に手堅い。 収録曲については、初めて聴いた時はジュディス&ロビンのランダル母娘提供の至高のハードポップ・ソング“SOMEDAY”のインパクトに全部持って行かれてしまった感があったのですが、その他の楽曲だって③⑤⑧等、十分に粒揃い。 3年後ぐらい、今度は『TOUGH IT OUT 30』をリリースするってのは如何でしょうか?
THRASH DOMINATIONで来日して以来、音信の途絶えていたFORBIDDENから漸く届けられた再結成第1弾アルバム。 劇的極まりない序曲①に導かれて、ダークでブルータルなOPナンバー②が始まった時は「カッコイイけど、随分殺伐としてんなぁ」と、若干の違和感を覚えずにはいられなかったのだが、刻みの細かいGリフに忙しないリズム、そしてその上で朗々と歌うラス・アンダーソンのハイトーンVoが畳み掛けるように疾走する④辺りまで聴き進めると、以降は1st~2ndアルバムの頃を思い出させる、押さえるべきポイントがキッチリと押さえられた「これぞFORBIDDEN!」な楽曲が頻出。勇壮なメロディにシンガロングを誘われる⑦、美しいアコギが絶妙なアクセントとなっている⑧⑩といった優れたスラッシュ・ナンバーの数々に心動かされないFORBIDDENファンはまずおらんでしょう、と。 流石に「捨て曲なし」とまでは行かないが、地味めな楽曲にはクレイグ・ロチチェロとスティーヴ・スマイスが鮮烈且つテクニカルなツインGで華を添え、また、ブルータルな②、ヘヴィネスの充満する⑤、最近のANNIHILATORを彷彿とさせる⑫といったモダンな要素を備えた楽曲も、単なる手慰みに堕とすことなく、しっかりと聴き応えある内容に仕上げる等、ブランクの長さを全く感じさせない作曲センスには脱帽。 重苦しいサウンド・プロダクションの影響で、作品全体を覆う空気はかなり澱んでいるものの、再結成アルバムとしては文句なしで合格点に値する1枚。
月9ドラマの主題歌“YOU'RE MY ONLY"をスマッシュ・ヒットさせ、レコ大新人賞を獲得したソロ・シンガー 小野正利や、 後にCONCERTO MOONに参加する長井一郎が嘗て在籍していた事で知られる、東京出身の4人組HMバンドFORTBRAGGが、 '90年にリリースしたセルフ・タイトルのデビューEP。(同タイトルで内容の異なるデモもあるようだが、そちらは未聴) OPとEDにインスト曲を配置した構成といい、北欧メタルばりの美旋律と、ドラマティックな曲展開を聴かせる楽曲といい、 イングヴェイから多大な影響を受けたと思しき、クラシカルな速弾きを炸裂させるGといい、そのサウンドは、まさに王道様式美HM路線。 さすがに5曲では物足りなさを感じずにはいられないが(歌入りは3曲のみだし)、とりあえず、収録曲の平均クオリティは高めで、 特に、序曲①から展開していく起承転結を備えたドラマティックな②や、美しいアルペジオと、派手に弾きまくる ネオクラGをフィーチュアして突っ走る④は、様式美HMマニアなら一聴の価値があるナンバーじゃないかと。 で、本作最大の目玉というべき小野正利(この当時はSHOと名乗っていた)のVoだが、トニー・マーティン時代の BLACK SABBATHの名曲をも易々と歌いこなす近年の彼に比べると、やはりまだまだ青い印象は否めないものの、 逆に、声を歪ませたそのメタル・シンガー然とした歌声は、今聴くと新鮮に響くかもしれない・・・か? 発売元だったレコード会社の消滅に伴い、現在では廃盤のため入手は困難と予想されるが、柴田直人のソロ・アルバムや、 HARD ROCK SAMMIT、トリビュート盤などでの小野のVoに痺れた人や様式美HMファンなら、探し出してチェックする価値は大いにある1枚。