NY出身の5人組が、ジーン・ボヴアー(CROWN OF THORNS)のプロデュースを得て'92年に発表したデビュー作。結構長い間オフィシャルなCDが日本盤しか存在しなかったため、世界中のメロハー・マニアの間で争奪戦が繰り広げたレア・アイテムとして知られる1枚でしたが、現在はYESTERROCKからリマスター盤が再発済み。安価にて容易に購入が可能なのですから良い時代になりましたなぁ。(その昔大枚叩いて中古盤を落札してしまった我が身の嘆きをともかくとすれば) それはさておき。本作がプレミア価格で取引されていたのは単に「希少盤だったから」という理由だけではなく、その内容の素晴らしさがあったればこそ。本編はRASPBERRIESの名曲“GO ALL THE WAY”のカヴァーを含めて全9曲を収録。捨て曲の類は当然一切なし。特に哀愁のメロディをJ.D.ケリーがエモーショナルに歌い上げ、それを美しいボーカル・ハーモニーと、後にRAINBOWに加入するポール・モリスが奏でるKeyとがメロウ且つドラマティックに彩る①は、OPナンバーにしていきなりアルバムのハイライトを飾る名曲で、これで掴みはOK。後に続く愁いを帯びて駆け抜ける④や、ブリッジにおけるメロディ展開とJ.D.の熱唱ぶりに涙ちょちょ切れる⑥、女性シンガーがデュエットで華を添える劇的な⑦なんかも、その①に匹敵するインパクトを放つ逸曲であり、こうした強力な出来栄えを誇る楽曲群に適度なエッジを加えるトミー・ラファティのGプレイも、後日ジーンに誘われてCROWN OF THORNS入りするのも納得のセンスと腕前がキラリ光ります。 メロディ愛好家なら一家に1枚は常備しておきたいメロハーの名盤ですよ、これは。
“FOREVER YOUNG”の名曲ぶりが未だメロディ愛好家の間で語り継がれるアメリカのバンド、TYKETTOのフロントマンだったダニー・ヴォーン。彼が主役を務めるプロジェクトFROM THE INSIDEが’08年に発表した2ndアルバムがこちら。日本盤は当時キングからリリースされたものの既に廃盤で(キングは廃盤になるのが早いね)、現在では中古盤市場で1st共々結構なプレミア価格で取引されていることで知られる1枚であります。 レコーディングはイタリアのメロハー梁山泊FRONTIER RECORDSの仕切りで行われ、プロデューサーにはファブリッツオ・グロッシを起用。更にVEGAで活動するトムとジェームズのマーティン兄弟が曲作りに関与と、「細工は流々、仕上げを御覧じろ」とばかりにお膳立てはほぼ完璧。そうして出来上がった、掴みに持ってこいの①、劇的なバラード③、サビメロの絶妙なメロディ展開にフラッシーなGプレイが華を添える④、胸のすくような爽快ハードポップ⑥、高揚感を伴うキャッチーな⑪etc…と、適度にエッジも効いた珠玉のメロディック・ロック・チューンの数々を、ダニーが持ち前のハート・ウォーミングな歌声で熱唱するわけですから、もはや完成度の高さに疑念が入り込む余地はありません。そのダニーも曲作りに積極的に関わっている以上(名盤『DON’T COME EASY』がそうだったように)、ある程度はアメリカンなノリも混入しているものと思いきや、意外やほぼ全編が北欧メロハー風味の哀愁と透明感、爽快さを保ったまま進行していく辺りも嬉しい驚きです。 再結成TYKETTOでの活動で多忙なのか、近年は作品リリースが途絶えてしまっているプロジェクトですが、本作を最後にこのまま消滅させるのは勿体なさ過ぎますよ。
'00年に、カリフォルニア州はノーウォークにてカルロス(Ds)とリカルド(G)が音頭を取って結成したスラッシュ・メタル・バンド。 ジオ(Vo、G)加入後にレコーディングしたデモテープや自主制作アルバム『SPREAD THE FIRE』、並びに積極的なライブ活動が実を結んで、'06年、METAL BLADE RECORDSとディールを締結。ARMORED SAINTのジョーイ・ヴェラの手によりリミックス/リマスター作業が行われた新生『SPREAD THE FIRE』をもって、バンドは日本デビューも飾った。('07年には、NWOTMの嚆矢的役割を果たしたPERFECT CRIME RECORDS編纂のオムニバス盤『THRASHING LIKE A MNIAC』(邦題『狂気のスラッシュ講座』)にも参加) あと、実はカナダのRAZORらと共にこっそり来日公演を行った実績も持つ。
Vo兼Gだったジオの脱退という事件を乗り越え、今年('10年)に入って4年ぶりに2ndアルバム『PLUNGING INTO DARKNESS』を発表したが、どうやら沈黙期間中にMETAL BLADEと切れてしまったらしく、今回は国内盤のリリースはなし。その上どういうわけかAMAZON辺りにも『PLUNGING~』は流通しておらず、入手が妙に困難。 見かけたら取り敢えず購入しておく事をお薦めさせて頂きます。
スラッシュ・メタル・バンドの3枚目のアルバムともなると、ぼちぼち「クリーン・ボイスで歌い上げてみようかな」とか「モダンな要素を取り込もうかな」とか「バラードでも演ってみっかな」といった、音楽的変化に対する欲求が鎌首をもたげ始める頃ですが、このカリフォルニア出身の5人組はそうしたことには一切頓着せず、メロディ無視で激情を吐き出すVo、鑢のように刻み目の粗いGリフと性急なリズムとが、脇目も振らず突進する、極めてオールドスクールなスラッシュ・メタル道を、全身全霊をこめて邁進しております。別に変化に興味がないのではなく、サウンドの幅を広げることよりも、自身のスタイルを一層深く掘り下げることにのみ集中していると言うべきか。 プロデューサーにエリック・ルータンを迎えた成果も、図太さを増したGサウンド、時に禍々しくトグロを巻くへヴィネス演出、そしてアグレッシブな曲調と対比を為すかのように劇的に噴出するメロディックなツインGといった要素に覿面に反映(ちなみにエリックも③でGソロを披露)。特にスラッシャーの血を沸騰させる①⑤⑥は、本編の魅力を結集したかのような好ナンバーですよ。 演奏の精度を高め、更にマッシヴに「スラッシュ・メタルらしさ」が鍛え上げられた逸品で、FUELED BY FIRE入門盤としてお薦めする1枚。
DEEP PURPLEからBEATLES、更にはEAGLES等のAOR/産業ロックまで、幅広いジャンルを愛するメンバー達の「破滅的な出会い」(FATAL ATTRACTION)により80年代末期にスウェーデンはストックホルムにて結成された、Key奏者を含む5人組。 幾つかのコンピレーションCDに参加した後、’96年に1st『END OF REGULATION TIME』でデビュー。同作はSOUND TREASUREを通じて日本盤もリリースされた。 '03年には2nd『SIMPLICITY RULES』を発表するも、’04年にバンドは解散してしまった模様。
ハーモニーが立体的に舞い、 曲展開は華麗にしてドラマティック、 尚且つメロディは北欧メタルらしい冷ややか哀感を宿しているという まさに北欧版NEW ENGLANDと評したくなる名曲であります。 後に続く“THE CURSE OF Mr. FUTURE”と“GOOD TIMES, BAD TIMES”の 2曲と併せて一つの組曲としてお楽しみください。
GCの代表作を2nd「SPACE IN YOUR FACE」とする意見に異論はない(寧ろ賛成だ)が、 個人的に、彼らのアルバムの中で最も気に入っているのは、'91年発表のこのデビュー作だったりする。 アグレッシブなリフ&リズムの上に乗っかる、浮遊感漂う歌メロと、美麗なボーカル・ハーモニーの妙・・・という 個性的なスタイルは既に完成されているのだが、それを美しく彩るメロディの質が「ポップ」「キャッチー」「ソウルフル」な 2nd以降とは異なっていて、ポップでキャッチーなのは間違いないのだけど、もう少し叙情的で哀感が強く演出されている (ように感じられる)のがその理由。言うなれば、GCの前身バンドAWFUL TRUTHの音楽性に最も近い感じ? スパニッシュ風のアコギやら、カントリー調のハーモニカやら、スラッシーな疾走パートやら、 色々な要素をギュッと詰め込んでドラマチックに仕上げた①“I'M NOT AMUSED"や、スピーディな⑦“KILL FLOOR"から、 組曲形式で大作⑩“SPEAK TO ME"へと展開していく、スペーシー且つプログレッシヴな流れは、何度聴いても最高。
イタリアのフェラーラを拠点に、'08年に結成された新人スラッシュ・メタル・バンド。 '09年に4曲入りデモと、デビューEP『HEAVY DANCE』を制作。更に'12年に1stフル『FOR HUMANITY』を発表すると、アルバムをフォローするためイタリア中をツアー(小規模ながら国外も周った様子)。 そして'14年には、新たにSCARLET RECORDSと契約を交わしたバンドの2ndフル・アルバム『BURST INTO THE QUIET』のリリースが決まっている。
数年前、引越しに伴う金欠とCDの収納スペース不足から、メロデス系の作品の大半を手放してしまったのだが、 SADISTの『ABOVE THE LIGHT』とかEBONY TEARSの『眠れぬ夜の物語』とか、大のお気に入りだったために 売っ払う事が出来ず手元に残した作品も幾つかあって、GATES OF ISHTARが'98年にリリースした、 ファンの間では彼らの最高傑作と評価の高いこの3rdアルバムも、そうした作品の1つだった。 DRUM GODこと、名手オスカー・カールソンの切れ味鋭いドラミングに牽引される形で、強力なフックを備えたGリフと 悲哀に満ちたメロディが、デス/スラッシュ・メタリックなアグレッションを撒き散らしながら激走する楽曲の数々は、 全9曲、荘厳且つドラマティックなインスト曲⑨を除くほぼ全編が、タイトなスピード・ナンバーで固められ、 上で別の方々が仰られている通り、確かにその作風はAT THE GATESの名盤『SLAUGHTER OF THE HOUSE』を彷彿とさせる仕上がり。 とにかく光っているのがオスカーの求心力溢れるドラミングで、ただ手数が多いだけでなく、頭よりも体に強烈に訴えかけてくる (デス・メタルよりもスラッシュ・メタル寄りな)キャッチーなリズムの組み立ての上手さが堪らなく気持ち良い。 中でも本編前半のハイテンションな飛ばし具合、殊に鬼のようなバスドラの刻みっぷりが痛快極まりない④は、本作を代表する名曲でしょう。 安っぽいGの音色とか、バランスの悪い音作りがイマイチなれど、メロデス・ファンのみならず、 スラッシュ・メタル・ファンにも自信を持ってお薦めできる力作。
30名以上に及ぶジャーマン・メタル・シーンのミュージシャン達が、「ヘヴィ・メタルは暴力的と決めつけ、 スポイルしていく傾向にあるTVメディアに対して抗議する」目的で集結した、ジャーマン・メタル版USA FOR AMERICA・・・ というかHEAR'N AIDなプロジェクト、GERMAN ROCK PROJECT。 本作は'91年に発表されたシングルで、トム・ハーゲンとグドラン・ラオスが作詞/作曲を手掛けたバラード “LET LOVE CONQUER THE WORLD"のバージョン違い3曲を収録。このうち「METALバージョン」では、 14人のシンガーと共に、総勢18人のギタリスト達がリレー方式でGソロの熱演を繰り広げている。 かの名曲“STARS"と比べてしまうと、参加人数の割りにギタリストのキャラ立ちがイマイチとか(まぁ無理もない)、 大らかさが売りの和み系バラードゆえ、Gソロが10分以上も続くといい加減ダレるとか、色々と気になる点はあるものの、 一種、お祭り騒ぎのようなこの手の企画に、細かい突っ込みは野暮というものでしょう。豪華ミュージシャン達の共演を、 素直に楽しむのが吉かと。1つでも気になるバンドが参加しているのなら、とりあえずご一聴をお薦めさせて頂きます。 ちなみに、本作の売り上げの10%は「熱帯雨林保護基金」に寄付されたのだとか。
名バラード“I’LL SEE YOU IN MY DREAMS”をスマッシュ・ヒットさせ、2枚のアルバムを残して解散したメロディアスHRバンドGIANT。90年代以降は復活と休眠を繰り返していた彼らがFRONTIERS RECORDSの仕切りで3度目の帰還を果たして'22年にリリースした、通算では5枚目となるアルバムがこちら。 オリメンのデヴィッド・ハフ(G)とマイク・ブリグナーディ(B)は健在ながら、売れっ子プロデューサーとして多忙な日々を送るダン・ハフは今回も不参加で、その穴を埋めるのはFRONTIERS RECORDSの必殺仕事人アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ。シンガーはテリー・ブロックに代わって同レーベル一押しの逸材ケント・ヒッリ(PERFECT PLAN)が担当しています。正直なところ、顔触れ的にもサウンド的にも「GIANTの新作」っつーよりは「良くプロデュースされたFRONTIERS RECORDS発のプロジェクト・アルバムを聴いている」ってな感覚に陥ることもしばしばな本作ですが、かと言って、じゃあそれはマイナス要素なのか?と問われれば、さに非ず。抜群のソングライティング・センスとエモーショナルな歌声に下支えされた本編は、高いヒット・ポテンシャルを感じさせるバラード⑥など、フックの効きまくった捨て曲の見当たらない充実度を誇っていて、中でも本編ラストに置かれた⑪は一際インパクトを放つ名曲。果たしてこれがGIANTらしい楽曲なのかどうかはよう分かりませんが、ともかく自分の中で’22年のベスト・チューン候補に燦然と輝くメロディのヨロシク哀愁ぶりにゃ悶絶せざるを得ませんでしたよ。 次回作はもう少し早いスパンでのリリースを、とお願いしたくなる充実作。
ダン・ハフ(Vo、G)と言えば、歌もギターもエモーショナル、曲作りに冴えを発揮し、現在はロック/カントリー分野で引く手数多のプロデューサーとして名を馳せる傑物。その彼が弟のデヴィッド・ハフ(B)、アラン・パスカ(Key)ら、名うてのセッション・ミュージシャン達と結成したGIANTが、1st『LAST OF THE RUNAWAY』のスマッシュ・ヒット後EPIC RECORDSへと移籍して、'92年に発表した2ndアルバムがこちら。 折からのグランジ・ブームに巻き込まれ、セールス的には不本意な結果に終わってしまったと聞く本作ですが、高度な演奏技術と卓越したアレンジ・センスをキャッチーで分かり易い楽曲作りのためにに惜しみなく注ぎ込んだ、ほんのりブルージーな香り漂うメロディック・ロック・サウンドは、傑作だった前作にだって引けを取らない充実っぷり。 90年代という時節柄、メロディの透明感やKeyの活躍の場といったAOR/産業ロック色はやや減退。一緒に歌いたくなるアリーナ・ロック然としたOPナンバー①、7分以上に及ぶ重厚且つドラマティックな②、あるいはホットなGプレイをフィーチュアした疾走ナンバー⑥等に代表される通り、今回はよりダイナミックにロックしているとの印象が強い作風です。ただそうした楽曲においても必ず耳を捉えるメロディやコーラス・ワークが仕込まれていて、大味感の蔓延を巧みに逃れているのがニクイ。PVも作られたキャッチネスと仄かな哀愁の同居が秀逸な名曲④、泣きまくる⑤と大らかな⑩という2種のバラードで本領が発揮される、ダンの歌とギターにも涙を誘われずにはいられませんて。 発表のタイミングがもう少し早ければ、ヒット・チャート上位にランクインしたって不思議ではなかった力作。
イアン・ギランに対しては、長らく「リッチーを煩わせる厄介者」という(相当に偏った)悪印象を抱えていたのですが、そのような彼に対する過小評価はGILLAN時代のアルバムを体験することによって、遥か彼方へと吹っ飛ばされることになりました。 全英チャート№1の座に輝いた本作(3rd)は、GILLANとNWOBHMを語る上で欠かすことのできない重要作(ジャケットからは想像し難いですけどね/笑)。前2作に比べると破天荒さが幾分薄まりを見せてはいるものの、ワイルドに唸りを上げるバーニー・トーメのG、フラッシーなKeyワークでサウンドを華麗に彩るコリン・タウンズ、スピーディ且つラウドに疾走するジョン・マッコイ&ミック・アンダーウッドのリズム隊・・・と、プレイもアピアランスも個性的な一癖も二癖もある連中を、バンドとして堂々まとめ上げるギランのカリスマ性は、一層研ぎ澄まされて絶好調。 楽器陣が火花を散らしてスリリングに疾走する“BITE THE BULLET”で余裕の喉を響かせたかと思えば、憂いを帯びたドラマティックな“IF I SING SOFTLY”は伸びやかに歌い上げ、更に“NO LAUGHING IN HEAVEN”では字余り気味の歌詞をハイテンションに速射する早口Voを披露・・・といった具合に、その歌声は第二の黄金時代を迎えてもうオーラ全開ですよ。 デビュー以降、ホップ→ステップ→ジャンプの要領で遂に英国HR/HMシーンの頂点に立ったGILLANでしたが、これを最後にトメさんが脱退。後任ギタリストとして現IRON MAIDENのヤニック・ガーズが加入し、バンドは新たな局面を迎えることになります。
全英チャート・トップ10に食い込むヒットとなった『Mr. UNIVERSE』の好評を受けて、'80年に矢継ぎ早に発表された2ndアルバム。 バーニー・トーメ(G)やジョン・マッコイ(B)らも積極的に曲作りに関与するようになった結果、「バンドらしさ」が強化。要所に配された疾走ナンバーや、先行シングル“SLEEPING ON THE JOB”といったイキの良い楽曲が、70年代HRスタイルに別れを告げ、騒々しくハジける本編の「80年代型HMテイスト」を盛り上げます。 ヨーロッパ的な暗さや重さよりも、イアン・ギランのカラッと陽性な歌声を活かした、ワイルドで豪快なノリの良さを前面に押し出す一方、重厚且つドラマティックな“ON THE ROCKS”、B主導でヘヴィに沈み込んでいくような“NERVOUS”もあったりと、この「何でもあり」な感覚がGILLANの魅力でしょうか。アドリブ全開のギランのVoと、コリン・タウンズによるジャジーなピアノをフィーチュアしたブルーズ“IF YOU BELIEVE ME”も最高にクール。 タイトル通り「栄光への道」をひた走るバンド内部で上昇気流となって渦を巻くエネルギーが見事に封じ込められた、全英チャート最高3位をマークする大ヒットを飛ばしたというのも納得の力作です。
表向きの理由は「ギランの喉に出来たポリープの治療のため」、実際は「DEEP PURPLE再結成に向けての布石」からGILLANのラスト作となってしまった'82年発表の5thアルバム。 ヤニック・ガーズ(G)が曲作りに本格参戦したこともあって、てっきりヘヴィ・メタリックな作風で攻めて来るものと思ったら、意外や、キャッチーに弾む“LONG GONE”や、哀愁漂う伸びやかなメロハー・チューン“LIVING A LIE”といったこれまでになくポップな楽曲を収録。基本的に本作は、前のめりな豪快さよりも整合性を重視していた前作『DOUBLE TROUBLE』のスタイルをそのまま受け継いでいました。 尤も、「とにかく時間がないのでちゃっちゃと作りました」的な粗さも目立った(トーメのペンによる楽曲も収録されていた)『DOUBLE~』に比べると、しっかりと煮詰められている印象で、何よりOPを飾る疾走ナンバー“WHAT'S THE MATTER”、“蒼き海原”なる邦題もカッコイイ重厚な“BLUESY BLUE SEA”を手始めに、本編に「勢い」が戻ってきている点もポイント。 英国HR然としたドラマティックな曲展開の上に、浮遊感を湛えたギランのVoが乗っかることで摩訶不思議な味わいを生んでいる“DEMON DRIVER”は、このアルバムならではの名曲と言えるのではないでしょうか。 まだまだ多様な可能性を感じさせてくれるアルバムだけに、これが最終作とは残念至極。