姉さん、事件です(古い)。遂に、遂にジョージ紫&MARINERのカタログ2枚が再発ですよ。SABBRABELLS、DOOM、SACRIFICEといったバンドの1stアルバムが次々CD化された昨今、もしかしたら彼らも…と一縷の希望は抱き続けていましたけど、嘗てオムニバス盤『OKINAWAN HARD ROCK LEGENDRY』に提供されていた2曲を繰り返し聴いて満足していた時期を想うと「まさかこの日が来ようとは」と感慨に浸らずにはいられませんて。 音楽的方向性の違いから紫がアルバム2枚を残して解散した後、ジョージ紫が新たなメンバー(全員アメリカ人)と共に結成したバンドで、本作はニューヨークにてレコーディングが行われ’79年に発表された1stアルバム。多彩に楽曲を色付けるKeyを中心に据えた音楽性は紫時代を継承しつつ、インプロヴィゼーションは控えめに、曲展開からコーラス・ワークまでアレンジをしっかりと作り込み、歌を主役によりメロディアスで整合性を高めた仕上がりとなっているのが特色です。 勿論⑤みたいなGとKeyがスリリングに絡み合いながら疾走するDEEP PURPLEスタイルのHMナンバーも収録されていますが、個人的にそれ以上に印象に残るのは、スペーシーなイントロに導かれてスタートする①であり、ピアノの美旋律をアクセントに、泣きを湛えてエモーショナルに盛り上がっていく④や、哀愁のバラードの小曲⑦から繋がり本編を壮大且つドラマティックに締め括る⑧といった、プログレ・ハード風味が薫る楽曲の方。 長き入手困難な時期を通じて高まりまくっていたこちらの期待を裏切らないどころか、想定していたハードルを軽々と飛び越えていく名盤。再発に心からの感謝を。
物憂げなイントロから反転攻勢に出るOPナンバー①が、当時『MASTER OF PUPPETS』をリリースして飛ぶ鳥落とす勢いだったMETALLICAからの影響があからさまでちょっと笑う。また硬質なスラッシュ・ビートが怒涛の如く畳み掛ける⑦も秀逸・・・といった具合に、ことほど然様に「スラッシュ風味のパワー・メタル」だった1stに比べ、1歩も2歩もスラッシュ・メタル方向へ踏み込んだ作風に仕上がっている、'88年発表の2ndアルバム。 その一方、前作で既に大作曲に挑むチャレンジ精神を発揮していたバンドゆえ、今回はアレンジや曲展開に凝り、緩急のコントロールを意識する等、より「聴かせる」姿勢も鮮明化。スラッシーな攻撃力と風変わりなメロディとが同居する⑩や、ハムレットをテーマに取り上げた組曲⑪⑫は、そうした彼らの意欲の賜物と言えましょうか。ただそうなると、ハイパーに歌いまくるアラン・テッシオ(Vo)の低~中音域における音程の甘さが気にならなくもないのですが・・・。 ともあれ、これを最後にバンドが解散するとは思えない「やる気」漲る1枚。(まぁ、その後再結成するわけですけどね)
リジー(Vo)とジョン(Ds)のへイル姉弟が中心となって活動を開始。当初は姉弟以外のメンバーは流動的だったらしいが、'00年発表の6曲入りEP『DON'T MESS WITH THE TIME MAN』の制作を境にラインナップが固まり、更に積極的なライブ活動が実を結んで、'05年には米メジャーのATLANTICとディールが成立。 まずは挨拶代わりにライブEP『ONE AND DONE』('06年)をリリースし、そして'09年には本命の1stフル・アルバム『HALESTORM』を発表。(プロデュースはハワード・ベンソンが担当) 同作は80年代HR/HMからの影響が色濃く打ち出された作風にも関わらず、全米総合チャートの40位にランクインを果たし、シングル“I GET OFF”とIT'S NOT YOU”もメインストリーム・チャートのトップ10に入るという好リアクションを獲得している。 '10年にはLOUD PARK 10に出演するため初来日を果たす等、アルバム・リリース後は積極的にツアーに勤しみ、'12年には再びプロデューサーにハワード・ベンソンを招いて2ndアルバム『THE STRANGE CASE OF・・・』を発表した。
セルフ・タイトルのデビュー作が好評を博した事を受け、再びプロデューサーにハワード・ベンソンを起用してレコーディング、'12年に発表された2ndアルバム。 リジー・ヘイル(Vo)のエネルギッシュな歌声をメインに据え、哀愁とフックの効いたキャッチーなメロディで勝負するメロディックHRサウンドは勿論今回も健在。と言うか、リジー嬢の歌声に関しては前作より更なるパワーアップを遂げていて、アグレッシブなメタル・チューンにおけるガッツ溢れるシャウトから、バラードで聴かせる入魂の歌い込みに至るまで、溢れ出すようにエネルギーが迸る歌唱は唯一無二の個性として昇華され、アルバム最大の聴き所となっています。 また、ヘヴィ・メタリックに疾走するOPナンバー①で幕が開く事に象徴されるように、収録楽曲についても全体的に攻撃性の底上げが図れている印象が強く、それでいてメロディの質に大味化が見られない点にこのバンドのセンスの良さが見て取れる。 “BET U WISH U HAD ME BACK”級の名曲が見当たらないため一聴してのインパクトは前作に及ばないものの、それでも並のバンドじゃ束になっても敵わないほど楽曲のクオリティは充実。特に⑤⑥⑦⑧といったバラード~メロディアスHRナンバーが連続する中盤は強力な求心力をもって耳を捉えて離さない。ちなみに個人的な一押しは、優れたメロディ・センスとモダンなセンスが光る⑧(ライブの楽しさについて歌った歌詞も○)でしょうかね。 1stアルバムの成功がフロックでなかったことを見事に証明する充実作。
HELLOWEENではなくHALLOWEEN、ドイツではなくアメリカはミシガン州デトロイト出身の4人組が、'85年に地元のインディー・レーベルMOTOR CITY METAL RECORDSから発表した1stアルバム。 メンバーの早過ぎた白塗りメイクと、《DETROIT’S HEAVY METAL HORROR SHOW》の肩書が何やら怪しげな雰囲気漂わす本作は、チープなプロダクションから台所事情の苦しさが透けて見えますが、カイ・ハンセンに通じる(やや弱々しい)味わいのハイトーンVoをフィーチュアして、ササクレ立ったアグレッションを放ちながらスピーディに畳み掛けるスラッシュ・メタルの一歩手前…いわゆる「スピード・メタル」に分類されるサウンドは、バンド名同様に4人編成時代のカボチャ軍団に似通う趣きあり。但しメロディに欧州民謡調のクサ味やドラマ成分は控えめで、収録曲のランニング・タイムも殆どが3分台とタイト。ドラム連打を皮切りに嵐の如く吹き荒れるOPナンバー①を始め、より直線的に突っ走っている辺りは流石アメリカのバンドらしいなぁと。 とてもじゃないが万人向けとは言い難いアングラ感を発散しつつも、例えばこのバンドなりのバラードと言える抒情的な③、あるいはそこから繋がっていく、弾きまくるツイン・リードGをフィーチュアしてスリリング且つ忙しなく疾走する④(デビュー・シングル曲でもあった)のカッコ良さなんかには無視できない魅力が漲っていますよ。 極初期のHELLOWEENは勿論のこと、SAVAGE GRACE辺りが楽しめる方にお勧めする1枚。
イスラエルはテルアビブから登場した、限りなくデス・メタル寄りのスラッシュ・サウンドを聴かせてくれる5人組。(CD屋ではデス・メタルのコーナーに陳列されてること多し) '11年に出場した「WACKEN BATTLE」で最優秀バンドに輝いたことから、元NOISE RECORDS創始者カール・ウォルターバックが新たに設立したSONIC ATTACK RECORDSとの契約をゲット。同年、EP『RISE OF THE HAMMER』を発表してデビューを飾る。 '12年には1stフル『ANTHEMS OF THE DAMMED』を、そして'14年には日本盤も発売された2nd『STEELCRUCHER』をリリースしている。
デビュー作『ANTHEMS OF THE DAMNED』の高評価をバネに、プロデューサーにKILLSWITCH ENGAGE等との仕事で知られるクリス“ゼウス”ハリスを迎え、ジャケット・アートワークを名匠アンドレアス・マーシャルが手掛けるという万全の布陣を敷いてレコーディング、'14年に発表された2ndアルバム。 本編収録のカヴァー曲⑭⑮⑯の存在が端的に物語る通り、ACCEPTの重厚な突進力、RUNNING WILDのエピカルな構成力、そして聴き手を煽動するノリの良さをMOTORHEADから抽出した上で、それらを現代的にアップデート、更にデス/ブラック・メタル/パンク/ハードコアのブルータリティで攪拌したかのようなスラッシュ・サウンドは、勿論今回も健在。 エピック・メタリックな勇ましさと野蛮さを撒き散らしながら猛然と突進する②④⑦⑬や、聴いてるだけで思わず暴れ出したくなるバイオレントな③⑤⑥といった、リフ&リズムが硝煙弾雨の如く降り注ぐ情け無用のスラッシュ・ナンバーの数々には血を滾らせずにはおられんですよ。 洗練と引き換えに豪快さを薄れさせてしまった音作りは、個人的にはあまり好みとは言えないのですが、ともあれ完成度では確実にデビュー作を上回る充実作。