ROYAL HUNTの母体になったことでも知られるデンマークのWITCH CROSS。そこのシンガーだったアレックス・サヴェージが、新たに(つっても80年代の話ですが)立ち上げたバンドの唯一作。 WITCH CROSS時代は、肩イカらせてNWOBHM風味の荒くれパワー・メタル・ソングを歌っていた彼氏ですが、ここでは打って変わって小洒落た衣装に身を包み、“So Much For Happy Ending~♪”と明るく伸びやかな歌声を披露していて、加藤みどりも「なんということでしょう」と度肝抜かれるレベルの劇的改造ビフォーアフター。 見た目だけに留まらず歌唱力の方も、表現力から何から見(聴)違えるような成長を遂げていますし、何よりも本作に託されている、煌びやかなボーカル・ハーモニーとKeyを惜しみなく注ぎ込んだ、80年代ど真ん中のメロディック・ロック・サウンドは、WITCH CROSSの幻影を追い求めるファンをも力ずくで納得させてしまうクオリティの高さ。 特にポップなサビメロがキャッチーな②はアルバムを代表する名曲。それだけでなく、例えばケネディ大統領のベルリン演説を引用した④ではドラマティックな空気を醸成する等、本編はちゃんとハード・ロッキンなエッジと、北欧のバンドらしい哀感/透明感の保全も図られているのだから隙がない。 月並みな表現ですが、アルバム1枚きりで終わってしまったことが惜しまれるバンドでしたね。
北欧ハードポップ路線のアルバムの中においては 比較的重厚且つ大スケールに盛り上がっていく 曲調が異彩(ってほどでもないけど)を放つナンバー。 中盤には“Ich bin ein Berliner”の文句で知られる ケネディ大統領のベルリン演説(だよね?)の音源が引用され ドラマティックな曲展開に華を添えます。
元VANDENBERGのクルーで(同バンドが'84年に行った来日公演にも帯同した)ギタリストのハリー・ヴェイリングが 中心となり、オランダはオーファーアイセル州ロッシャルにおいて結成された5人組パワー・メタル・バンドが、 '91年に発表した自主制作による6曲入りデビューEP。(後に日本のみで、TYTAN、IRON MAIDEN、TYGERS OF PAN TANG、 MSG、DEEP PURPLE等のカヴァー曲を追加収録したスペシャル・エディション盤がリリースされている) そのサウンドは、ザクザクと力強く刻まれるGリフと重厚なリズム・セクションの上に、ヘタウマなVoとメロディックな ツインGが乗っかった、NWOBHMにも通じる垢抜けない雰囲気を漂わせたパワー・メタル。よりコアな方向へと歩みを 進める後の作品に比べると、本作はグッとオーセンティックなHM寄りのスタイルが取られており、こと「取っ付き易さ」に かけてはHARROWの作品の中でも随一。取り分け、雄々しくパワフルに疾走するメロディック・パワー・メタル・チューン③は、 このバンドの代表曲として今でも時々聴きたくなる名曲の1つ。(ドラマティックに盛り上がる⑤⑥も良い曲) HARROWの最高傑作と言えば、個人的には2nd『CALL OF THE UNBORN』を推すが、パワーとメロディが丁度良い按配で 組み合わされた本作の魅力もまた捨て難い。国内盤のみに収録されたカヴァー曲の数々も美味しいしね。
EXODUS離脱後は、趣味で演ってるAC/DCのカヴァー・バンドや、TENET、DUBLIN DEATH PATROLといったプロジェクトでプレイする以外は、ほぼセミ・リタイア状態にあったスティーヴ“ゼトロ”サウザ(Vo)が、ライブ会場で出会った若きギタリスト、コスタ・ヴァルヴァタキスの存在にモチベーションを刺激されて、'11年に結成したニュー・バンド。 同年、セルフ・タイトルの4曲入りデモテープを制作した後、ドイツのMASSACRE RECORDSと契約。'13年には、ゼトロの実子、コーディ(B)とニック(Ds)を含むラインナップで1st『HEROES OF ORIGIN』を発表している。
'04年にコロラド州はデンバーにて誕生。 NWOTMの盛り上がりの中で頭角を現し(LAZARUS A.D.とは特に親交が深いらしい)、'06年にシングル『MURDER BY METAL』を、'07年に1stデモ『THRASH CAN』をリメイクした6曲入りEP『PWN' EM ALL』(元ネタがあからさまに透けてるタイトルですね)を制作後、アメリカのCANDLELIGHT RECORDSとディールを締結。デヴィッド・チャべス以下、ジェス・デ・ロス・サントス(B)、ショーン・チャべス(G)、ライアン・ブルーム(Ds)というラインナップで'09年に1stフル・アルバム『BURN』でデビュー。 主にベイエリア・スラッシュ勢からの影響を散りばめたオールドスクールなスラッシュ・メタルを追及しつつ、勢い任せにしない構築感をも兼ね備えたサウンドが高評価を獲得し、'11年には2nd『TIME IS UP』を発表。Gの片割れとドラマーにメンバー・チェンジが発生していましたが、こちらもデビュー作を上回る快作。 また'12年には4曲入りEP『POINT OF NO RETURN』もリリースしている。
SLAYERとSEPULTURAのカヴァーも収録したEP『POINT OF NO RETURN』でワンクッション置いた後、'13年に発表された3rdフル・アルバム。 ミックスをテリー・デイト、マスタリングをジェイムズ・マーフィが手掛けるという必勝オーダーが組まれ、歯切れ良いVo、ザックザクのGリフ、機動力に富むリズム、フラッシーに花咲くツインGとが威勢良く突っ走る、HAVOK流スラッシュ・メタルの旨味成分がパンパンに詰まった名曲①で幕が上がる本作ですが、聴き進めていくと何やら違和感が。 全体的に音圧が低く、かっちりとした整合性が感じられた前作に比べ、よりメロディアスに「歌っている」Vo、弾むような軽快感を伴って疾走するリズム等、どちらかといえば、カラッと乾いたノリの良さが重視されていることが原因かと。例えるなら、TESTAMENTのアルバムだと思って聴きてみたら、始まったのがEXODUSのアルバムだった・・・みたいな? これはこれで間違いなく痛快なスラッシュ・アルバムですし、キレのある演奏が映える楽曲の数々、例えば運動中枢を直撃する③や、キャッチーな曲調に無性に頭を振りたくなる④みたいな名曲は、アルコール類のお供に最適。ただこの音をHAVOKに求めていたかと言えば・・・うーむ。 尤も、他にも①②⑦⑩といったクールなスラッシュ・ソングが並ぶ本作に、三ツ星の評価を与えることに何ら躊躇はありませんけどね。
カナダ出身の5人組で、ポール・マッカースランド(Vo)とマーヴィン・パート(G)が音頭を取って’81年に結成。バンド・コンテストへの参加や、EP『HAYWIRE』の自主制作等で腕を磨いた後、'86年に『BAD BOYS』でデビューを飾る。ここからは表題曲がヒット(最高第21位)、アルバム・セールスも最終的にプラチナムに到達している。ポップ・メタル色を強めた翌年発表の2nd『DON’T JUST STAND THERE』は更なる好セールスを記録し、特にシングル・カットされた“DANCE DESIRE”はカナダ国内においてTOP10チャートに食い込む大ヒットとなっただけでなく、日本でもヤマハ主催の世界歌謡祭(80年代末まで毎年日本武道館で開催)にエントリーされ金賞を受賞したという。 カナダ国内において確固たる支持基盤を築きつつも、音楽シーンの潮流の変化によりレコード会社から満足のいくサポートが得られなくなり、90年代に入って活動を停止。 00年代に入ってバンドは復活を遂げ、ニュー・アルバムのリリースもアナウンスされているが、まだ発表には至っていない模様。
80年代の「AID」ブーム華やかなりし頃、メタル版“WE ARE THE WORLD”として、故ロ二ー・J・ディオの音頭取りによって立ち上げられたプロジェクトが'86年に発表した作品。 チャリティー・ソング“STARS”を目玉に、シングルとアルバム(多数のバンドのライブ音源を収録)がそれぞれリリースされたが、自分が本作に興味を持った時には既にLPは廃盤になってしまっていたので、'96年にCDの再発が叶った際には、それこそ小躍りしながら購入に走った事を思い出します。 「アフリカの飢餓救済」を目的とした志の高さや、一堂に会した名立たるミュージシャン連中の共演、そして、その一癖も二癖もある面子を見事まとめ上げたロ二ーの校長先生っぷりも立派だが、何より特筆したいのは、ロ二ー、ヴィヴィアン・キャンベル、ジミー・べインが作詞・作曲を手掛け、叙情的なイントロに始まり重厚且つドラマティックな曲展開を備えた、「まるでDIO」な名曲“STARS”自体の素晴しさ。これがなけりゃ折角の豪華共演も宝の持ち腐れってもんですよ。特に、ジャケットの写真が脳裏に浮かぶサビメロが良い。思わずコブシ振り上げながら一緒にシンガロングしたくなりますね。 尚、参加面子の中で個人的に特に印象に残っているのは、Voならポール・ショーティノ(凄い声量)、Gならどんな時でも自己主張を忘れないイングヴェイ、あとメイデン印のユニゾン・プレイで楽曲の屋台骨を支えるエイドリアン・スミス&デイヴ・マーレイのコンビでしょうか。 近々CDの再々発が噂されていますが、そん時ゃ是非ともリマスター作業とDVDの収録も宜しくお願い致します。
今では売れっ子プロデューサーとして腕を振るうサシャ・ピート(G)が在籍し、90年代には、HELLOWEEN、GAMMA RAY、BLIND GUARDIANらと共に、ここ日本でジャーマン・メタル人気を牽引したHEAVENS GATEの記念すべきデビュー作(’89年)。 JUDAS PRIEST型正統派HMに、ジャーマン・メタルならではのメロディとパワーがトッピングされた名盤『LIVIN’ IN HYSTERIA』(’91年)の出来栄えに衝撃を受けた当時、慌てて遡って本作も買いに走ったのですが、勿体ぶったインスト序曲①による導入を経て、うじうじと蠢くGリフが印象的なアルバム表題曲“IN CONTROL”のカッコ良さだけで速攻ノックアウトされてしまいましたよ。流石、来日公演のトリを飾っただけあって、“GATE OF HEAVEN”や“LIVIN’ IN HYSTERIA”にも負けない名曲ぶり。 他にもキャッチーな疾走チューン“TYRANTS”あり、トリロジー第一作目となる重厚なエピック・メタル調の“PATH OF GLORY”あり…といった具合に、メタル者が拳を振り上げるに足る逸品の数々を収録し、国内盤は'90年発表の6曲入りEP『OPEN THE GATE AND WATCH!』とのカップリング仕様、全15曲、1時間オーバーの超過ボリュームにも拘わらず、ダレを殆ど感じることなく全編を聴き通させてしまうのですから、「こいつらは本物だ!」と、バンドの才能を確信するには十分です。 クセの強いVoにベタッとしてキレに欠けるドラミングとか、全体的にまだまだ垢抜けない雰囲気を漂わせつつも、デビュー作でこのクオリティは立派。『LIVIN’~』が気に入った方ならこっちも押さえておいて損はありません。格安価格でお買い求め頂けますしね。
HEAVENS GATEの日本での人気が頂点に達した瞬間の記録であると同時に、その凋落の始まりの証ともなってしまった、何とも皮肉なライブ・アルバム。 当サイトにおける獲得ポイント数の少なさからも察しが付く通り、バンドの経験不足をもろに露呈してしまった垢抜けないパフォーマンスに対し、手厳しい意見が続出した初来日公演の模様が克明に捉えられていることから余り評判の芳しくない本作ですが、どっこい個人的には「仰る通り。ご尤も」とそれらの意見に全面同意しつつも、どうしても嫌いになれず、今でも機会があれば聴き返している作品であります。 まず第一に楽曲が良い。“LIVIN' IN HYSTERIA”“GATE OF HEAVEN”“IN CONTROL”といった代表曲を筆頭に、ベスト盤状態で次々に繰り出される楽曲はいずれもジャーマン・メタル好きなら一聴の価値がある名曲ばかり。そして第二に挙げられるのがファンの熱烈な盛り上がりっぷりで、コーラス部分を客に任せきりにするシンガーのパフォーマンスには苛々させられるものの、一方でそれに見事な反応を返す観衆の一体感溢れる大合唱には「お見事!」と素直に賛辞を贈りたくなります。 例え残念なクオリティでも、こうしたバンドとファンの熱いエネルギーの交歓がしっかりとフィーチュアされているライブ・アルバムには点数が甘くなるというもの。「良い曲と熱心なファンを沢山抱えているバンドは強いなぁ」と思わせてくれる1枚ですよ。
NWOBHMの波には少々乗り遅れても、名曲“ROLL THE DICE”のスマッシュ・ヒットと華のあるルックスの威力で(?)、堂々メジャー・レーベルとの契約を勝ち取ったスコットランド・グラスゴー出身の5人組が、’83年に発表した1stアルバム。 「DEF LEPPARDフォロワー」という評判、それにプロデュースをQUEENのブライアン・メイが手掛けていることが先入観となり、「どうせ好みの音じゃねぇだろう」と入手を後回しにしていた作品なのですが、実際に聴いてみたら、そのカッコ良さに膝ガクガク。 いや、確かにDEF LEPPARDっぽさは本編の端々から感じられます。OPナンバー“IN AND OUT OF LOVE”の爽快なコーラス・ワークとか、哀メロが胸打つ“BROKEN HEART”の洗練具合とか、“ROCK ME”が醸し出すアリーナ・ロック的スケール感とか、高いヒット・ポテンシャルを感じさせる楽曲の数々は、それはそれでお気に入り。しかしそれ以上にグッと来るのが3曲目の“LOVE ON THE RUN”を皮切りとするにスリリングな疾走ナンバーの数々。特にハードネス、メロディの哀愁、ツインGのドラマ性、いずれの面においても本家DEF LEPPARDを凌駕せんとする気迫漲る“VICTIM OF THE NIGHT”と“HELL IS BEAUTIFUL”の2曲は、メタル者ガッツポーズ必至の逸品であると断言したい。逆にこういう荒々しさがあちらほど大衆受けしなかった要因なのかもしれませんが…。 個人的には、「DEF LEPPARDにあまりピンと来ない」という人に寧ろお薦めしたい1枚ですよ。
ANTHEM脱退以降は表舞台から姿を消していた中間英明(G)が、渡米時代に作り溜めていたマテリアルが正式音源化。 インストゥルメンタル作品ではなく、全曲英詞による歌入り。但し、元がデモテープなので音質はお世辞にも良好とは言えず。またシンガーの歌唱も、力みまくりのハイトーンが引っ繰り返りそうになる危なっかしさ。加えて、HURRY SCUARYの『BREAK IT UP』や名盤『POINT OF NO RETURN』と比べてしまうと収録曲は今ひとつ面白みに欠ける・・・と、あまり「アメリカ・レコーディング作品」というありがたみを感じさせてくれません。 しかし、そうしたモノトーンな本編中にあっても総天然色の華を終始撒き散らすのが、技術的にも感性的にも冴え渡る中間のGプレイ。例え地味な楽曲であろうとも、ひとたび彼の演奏が走り始めれば、一気に曲調が輝き出すのですから、御見事!としか言いようがありません。 長き不在を囲う内に、半ば伝説的存在と化していた「不世出のギター・ヒーロー」との評価が伊達じゃないことを再確認させてくれる1枚。ファン向け作品ですけどね。