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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 2701-2800

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火薬バカ一代さんの発言一覧(評価・コメント) - ABC順 2701-2800
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Harlequin - Love Crimes - Love on the Rocks ★★★ (2013-11-27 21:56:45)

「ポップ・バンドと舐めるなよ」との
バンドの気概が具現化したドライヴするロック・ナンバー。
それでいてメロディのフックや細かいアレンジにも
気配りが行き届いている辺り、感心させられます。


Harlequin - One False Move ★★★ (2013-11-28 23:37:31)

1st『VICTIM OF A SONG』がゴールドを、続く2nd『LOVE CRIMES』がプラチナムをそれぞれ獲得・・・と、本国カナダにおいては確固たる地位を確立するに至ったHARLEQUINが'82年に発表し、日本デビュー作ともなった3rdアルバム。
『愛は危険な夢遊歩行』なる、言葉の意味はよう分からんがインパクトは十分な邦題を付けられた本作は、再びタッグを組んだ売れっ子プロデューサー、ジャック・ダグラスとの共同作業も一層磐石なものとなり、もはや勝ち組バンドとしての風格さえ漂ってくるようです。キャッチーなメロディと心地良い疾走感とがブレンドされたOPナンバー①の素晴らしさなんて、余裕はあっても慢心のないバンドの充実っぷりを伝えてくれる名曲。
サビのリフレインが印象的な躍動感溢れる④⑦や、ハスキーなVoと哀愁振り撒くG、Keyが叙情性を増幅する⑩等、ハーモニーとメロディを増量することによりサウンドの洗練に磨きを掛ける一方で、インスト・パートが主役を張るプログレ/70年代HR的な構築美と重さを併せ持つ⑤のような楽曲も収録するなど、相変わらず、そのサウンドはポップでありながらしっかりとした背骨も通されています。硬軟のバランスが取れた曲作りの上手さには、「流石、カナディアン・メロディスHRの雄」と感心させられることしきり。
アメリカでの成功を果たせなかったことから、メンバー的にはイマイチ不満足な作品らしいですが、いえいえ。これの国内盤も是非再発して欲しかったなぁ。


Harlequin - One False Move - I Did It for Love ★★★ (2013-11-30 00:31:44)

アルバムの幕開けに相応しいアップテンポのナンバーですが、
HR的な感触よりも、お洒落でキャッチーなノリの良さが強調されていて、
アメリカでの成功を狙うバンドの野心が透けて見える仕上がり。
いやでも、これがメロディアスで実に良い曲。
この時期のバンドの「ノリにノってる感じ」が伝わってきますね。


Harlequin - One False Move - It's a Woman You Need ★★★ (2013-11-30 00:33:40)

アルバム収録曲中、最も濃厚な哀愁を背負って
本編を締め括る名曲。透明感を湛えたKeyが
アメリカン・プログレ・ハード的な雰囲気も演出します。


Heathen's Rage (2016-06-04 08:37:25)

'83年に、ニュージャージー州はヤードビルにおいて結成。NYまで遠征してANTHRAXやOVERKILL、S.O.D.といったバンドの前座をこなす傍ら、デモテープ制作にも邁進。この時期、『METAL MASSACRE』シリーズに収録して貰おうとMETAL BLADE RECORDSに音源を送ったりしたようだが残念ながら不採用に終わっている。
マネージャーの伝手で’86年に地元のインディ・レーベルROCK DREAM(実態は町のレコード屋さん)からセルフ・タイトルの3曲入りEPを発表。これをテコに本格的なレコード契約を得ようと画策するも(既に10曲入りデモ・アルバムも用意済みだったという)、ことはそう上手く運ばず、その後メンバー・チェンジも相次いだため、80年代末期に活動停止。
彼らが残した音源は、後にマニアの間でお宝化。現在ではEPやデモテープ収録楽曲をまとめたコンピレーション・アルバムが数種類リリースされている。


Heathen's Rage - Heathen's Rage ★★★ (2016-06-04 08:38:11)

MANOWARの名曲“BLOOD OF MY ENEMIES”の歌詞の一節からバンド名を頂戴し、HEATHEN’S RAGEを名乗ったニュージャージー州ヤードビル出身の5人組が、'86年に発表した3曲入りEP。
「疾走感とメロディはACCEPT、ヘヴィネスはBLACK SABBATH、ドラマティックな曲展開はIRON MAIDEN、大仰さはMANOWARがお手本」とのメンバーの自己分析が正鵠を射るパワー・メタル・サウンドが非常にイカす1枚。パクリ?いやいや。これは「美味しいトコ取り」と評したい。付け加えるなら、遊びを排して直線的に畳み込むリズム・ワークはスピード/スラッシュ・メタル譲りで、全体を覆う硬質な雰囲気も、彼らが前座を務めたNYの先輩バンド達(ANTHRAX、OVERKILL他)からの影響が伺えたり。
緩急を活かして勇壮に迫り出す①、スラッシーな突破力を有する②、DIO辺りに通じる正統派HMナンバー③と、いずれ劣らぬ逸品揃いの楽曲をしっかりと歌いこなす、高音域の大仰な歌い回しがエリック・アダムスを彷彿とさせるシンガーもなかなかの実力者。随所でハモる2本のGと、アクティブに動き回るBと共に、この歌えるシンガーの存在も本編の劇的さ向上に多大なる貢献を果たしています。
たった3曲収録にも拘らず、聴き終えて大いなる満足感を得られる力作なのですが、現在では大量のボーナストラックも追加収録された2枚組アンソロジー盤が入手可能。こっちにも同一路線の優れた楽曲がザックザクで、つくづく「何でフル・アルバムを作れなかったのか」と、地団駄踏みたくなりますね。


Heathen's Rage - Heathen's Rage - City of Hell ★★★ (2016-06-06 23:06:42)

3分弱のランニングタイム(実測は4分だけど1分以上がイントロ)を
脇目も降らず突っ走るリフとリズムの猪突猛進ぶり、
シンプルにシャウトが繰り返されるサビに、やたらハイテンションなGソロ等
ノリは完全にスラッシュ・メタル。
でも豊かにメロディを歌うVoの存在がきっちり個性を主張しています。


Heathen's Rage - Heathen's Rage - Knights of Steel ★★★ (2016-06-06 22:57:06)

抑えたイントロから挑みかかるようにテンポアップする
曲展開のカッコ良さは、これぞメタルの醍醐味!
高音域の大仰な歌い回しがエリック・アダムスを思わすVoに
ドラマティックにハモるツインG等、楽曲は十分メロディックですが、
直線的に畳み込むリズム・セクションは
スラッシュ/スピード・メタルからの影響もチラ見え。
両者の組み合わせが個性にもなっています。


I AM GHOST - Those We Leave Behind (2010-10-11 01:07:07)

X-JAPANやMALICE MIZERといった日本のビジュアル系メタル・バンドからの影響も公言する、スティーヴ・ジュリアーノ(Vo)率いるアメリカはカリフォルニア州出身の5人組が、'08年に発表した2ndアルバム。
前作『LOVERS REQUIEM』は、MY CHEMICAL ROMANCE辺りに通じるスクリーモ・サウンドに乗せて、日本人好みの憂いを帯びたメロディが駆け抜けていく好盤だったが、今作では鍵盤奏者と、サイドVo兼ヴァイオリニストの女性メンバーの脱退に伴い、シアトリカルな雰囲気やゴス色が大きく後退。代わって、喉から血が出るようなスクリームや、ヘヴィ・メタリックなリフ&リズムの存在が強調され、前作に比べストレートさを増した作風は、随分とアグレッシブ。
尤も、全編を彩るお耽美なメロディの魅力に鈍りは全くないし、何より、スティーヴが作り出す哀しくもキャッチーな歌メロのフックと来たら相変わらず強力無比。メランコリックに疾走する名曲④をハイライトに、優れた楽曲が連打されるアルバム前半(①~⑥)の盛り上がりっぷりなんて辛抱堪らんものがありますよ。
ダーク&へヴィ化が進んだとの前評判に「大味になってたらどうしよう・・・」と一抹の不安を隠せなかった本作だが、実際には、単にHM指数が上がってただけの話で(泣きのGソロのフィーチュア度も高まっている)、例えばBULLET FOR MY VALENTINEの新作なんかが気に入った人にもお薦めできる1枚かと。但し、ジャケット・アートワークは最悪だが。


I-TEN (2013-02-07 22:28:02)

'81年、パット・べネターのアルバム『PRECIOUS TIME』制作に関わり知己を得たことを切っ掛けにコンビを結成。マドンナの“LIKE A VIRGIN”、シンディ・ローパーの“TRUE COLORS”、BANGLESの“ETERNAL FLAME”、ホイットニー・ヒューストンの“SO EMOTIONAL”etc・・・と、枚挙に暇がない程の大ヒット曲を次々に生み出していった80年代を代表するヒット・メイカー、トム・ケリーとビリー・スタインバーグが立ち上げたAOR/産業ロック・プロジェクト。
HR/HMファン的には、本作収録の“ALONE”を後にHEARTがカヴァーして、全米№1ヒットさせたことがトピックでしょうか?


I-TEN - Taking a Cold Look ★★★ (2013-02-07 22:16:25)

マドンナの“LIKE A VIRGIN”を筆頭に、数々の全米№1ヒット・ソングを手掛けた作曲家コンビ、トム・ケリー(Vo、G、Key)とビリー・スタインバーグ(Vo、G)の立ち上げたメロハー・プロジェクトが、'81年に発表した最初で最後のアルバム。
キース・オルセン、スティーヴ・ルカサー、ジェフ・ポーカロ、アラン・パスカetc・・・と、それまで彼らが培って来た人脈をフル活用して召集した一流どころのプロデューサー/ミュージシャンの力を借りて制作されているだけあって、質の高さは折紙付きの本作ですが、やはり何よりも注視すべきは、トム&ビリーが作り出すメロディの魅力。
OPナンバー①の憂いを帯びたサビメロの絶妙さを聴いただけでも本編にグッと惹き込まれてしまいますが、以降も、後にHEARTがカヴァーして大ヒットさせた③、REO SPEEDWAGONEが取り上げた⑥等、「流石、売れっ子ライター」と唸らされる、キャッチーにして心打つ哀メロてんこ盛りなメロハー・ソングが連続。
個人的には、HR/HMとはかなり距離を感じさせるダンサブルなアレンジが苦手なのですが、ともあれメロディの強力さはその点を補っても大いに余りあります。
現在ではCDの入手も容易ですので、メロディ愛好家で本作を未聴の方は是非一度お試しあれ。


I-TEN - Taking a Cold Look - Alone ★★★ (2013-02-09 22:10:00)

素晴しい曲なのは間違いないですが、
HEARTバージョンと比べると、
やや地味な印象は否めないかな?
このアルバムでは隠れた佳曲といった趣きですが
聞き比べてみるのも一興かと。


I-TEN - Taking a Cold Look - I Don't Want to Lose You ★★★ (2013-02-09 22:06:53)

REO SPEEDWAGONEが『THE HITS 1973-1988』で
この曲をカヴァーしていますが、さすが良い所に目をつける。
コーラス部分のツインVoアレンジと、メインのサビメロを歌う
ハイトーンVoが醸し出す哀愁に聴き惚れてしまいます。


I-TEN - Taking a Cold Look - Taking a Closer Look ★★★ (2013-02-09 22:00:54)

OPナンバーにしてアルバムのハイライト。
ポップでキャッチーでノリが良く、
且つ心を捉える憂いを帯びた歌メロからは
「大ヒット曲」並の貫禄と聴き応えが
感じられる名曲です。


I.N.C. - RAZORBACK ★★ (2007-11-08 21:35:00)

アメリカはコネチカット州出身で、BがVoも兼任するツインG編成の4人組スラッシュ・メタル・バンド、
I.N.C.ことINDESTRUCTION NOISE COMMANDが、'88年に発表した1stアルバム。
いきなり8分以上もある①(バンド名を冠したテーマ曲でもある)で幕を開けるという、デビュー作にしては
かなり大胆な構成を取ってる本作。①以降も5~8分台の楽曲が並び、全8曲でトータル・ランニング・タイムが50分を
超える大作主義に、このバンドの旺盛なチャレンジ精神が伺える・・・というよりも、単にMETALLICAの名作
『MASTER OF PUPPETS』に影響を受けただけなんだろうなぁ、多分。
とは言え、『MASTER~』に比べると、欧州風味の流麗なメロディや、様式的な構築美といった要素はそれ程でもなく、
むしろ、暗さや湿り気を排した音作りや、スピーディな疾走パートを基本としつつ、快活に刻まれるカリカリのGリフ、
ドラマ性よりも「ノリの良さ」や「勢い」が先立つカラッとした曲展開は、どこかベイエリア・スラッシュを思わせる。
Bが兼任するVoの音程がフラット気味なため、テンションが上がり切らない点がもどかしいが、そのVoが歌う歌メロは
結構キャッチーだし、メロディアス且つスリリングに切り込んで来るツインG、景気良く弾けるB、起伏に富んだ曲展開といった、
このバンドの持ち味が存分に活かされた①③⑤は聴き応え十分。(特にアルバム・タイトル・トラックの⑤は名曲)
また、技巧を凝らした長尺曲を揃える一方で、⑧のようなストレートに疾走する高速スラッシュ・ナンバーで
ラストを締める構成も○。これで曲の出来/不出来の差がもう少し少なければ文句なしの名盤だったのだけど・・・。


I.N.C. - RAZORBACK - RAZORBACK ★★★ (2007-11-08 21:52:55)

1stのアルバム・タイトル・トラック。
劇的なイントロで掴みはOK。乾いた音像のもと、
歯切れ良く刻まれるカリカリのGリフ、派手に動き回って曲に
アクセントを加えるB、ダイナミックな曲展開を支えるDs、
メロディアス且つスリリングなソロを聴かせるG、
ややフラット気味だがキャッチーなメロディを歌うVo・・・と、
バンドの持ち味が上手く活かされた、
7分以上の長尺を飽きさせる事なく聴かせきる名曲。


IAN GILLAN - Toolbox ★★★ (2019-04-10 00:14:08)

イアン・ギラン再評価の機運が高まっていた時期でさえ、DEEP PURPLEの迷作『紫の聖戦』の直前に発表されている本作にはなかなか手が伸びなかったというのが正直なところ。しかしギラン本人の自信に満ちたご尊顔が鎮座ましますジャケットには久々に「GILLAN」のロゴマークが復活していますし、参加メンバーは、日本では後にHEARTLANDでの活動で人気を博すスティーヴ・モリス(G)、元STARSHIPのブレット・ブルームフィールド(B)、そしてドラマーは何とY&Tのレオナード・ヘイズとな。これが決め手となり購入を決意してみれば、期待通り(参加面子の顔触れに見合った)大変素晴らしい内容だったという。
貢献度の高さでは群を抜くスティーヴがセンスフルなGプレイを滑らかに閃かせ、リズム隊がエッジと疾走感を注入する楽曲を得て、主役たるギランが気合の入ったシャウトを随所で炸裂させまくっているのですから、これ以上何を望むことがありましょうか。ノリノリの曲調に切れ味鋭いGが緊張感を加味する②、アルバムのハイライトにしてGILLAN屈指の名曲と言える疾走ナンバー④、重厚で劇的な⑤といった、ギランのハイトーンが映える楽曲の数々を聴けば聴くほど、つくづくこの後の『紫の聖戦』における出涸らしみたいな歌唱は一体何だったのか?と。やっぱりアレは加齢による衰えよりも本人のやる気に起因するものだったんだなぁと。(今じゃ一周回って大好きになってしまいましたけどね>紫の聖戦)
後半ややテンションが落ちるのが玉に瑕とはいえ、全盛期に発表された傑作群にだって引けを取らない充実作。「GILLAN作品にハズレなし」の法則を再確認させて頂きました。


IAN GILLAN - Toolbox - Candy Horizon ★★★ (2019-04-10 23:51:03)

スティーヴ・モリスの奏でるイカしたGリフと、疾走するリズムの上に、
ギランが目の覚めるようなシャウトを織り交ぜつつ、哀愁の絡みつく
歌メロの乗っけていく、新生GILLANの魅力の粋を結集したかの如き名曲。


IAN GILLAN - Toolbox - Don't Hold Me Back ★★★ (2019-04-10 23:58:02)

重厚でメロディアスなミッド・チューン。
こういう曲ではレオナード・ヘイズ起用がバッチリはまります。
(音作りのせいかあまり目立った感じはありませんが)
終盤でハイトーンを連打するギランのVoも絶好調。


IAN GILLAN - Toolbox - Pictures of Hell ★★★ (2019-04-11 00:09:56)

“CANDY HORIZON”から“DON'T HOLD ME BACK”ときて、
このヘヴィ・メタリックなハード・ナンバーに繋がっていく
一連の流れは、間違いなくアルバム『TOOLBOX』のハイライト。
突き抜けるハイトーンVoにメロディアスなG、
「ワン・バスでツー・バスの音を出す男」と評された
ヘイズのキレキレなドラムまで堪能できてしまう全部入りな逸品。


ICED EARTH - Burnt Offerings ★★★ (2007-12-15 00:36:00)

2nd『NIGHT OF THE STORM RIDER』が日本で大ヒットしたにも関わらず、レコード会社とのビジネス上のトラブルから3年もの沈黙を余儀なくされたジョン・シェイファー(G)率いるフロリダのパワー・メタル軍団が、復活を懸けて'95年に発表した3rdアルバム。
後にジョンが「ストレスの溜まる状況が曲作りに影響を与えた」と語った通り、前作で聴かれたような壮大なオーケストレーションが脇へと下がり、生々しい音像で迫り来る楽曲群は、ICED EARTHの作品の中でも、一際ダークでヘヴィ、且つ怒りに満ちた仕上がり。(また、スラッシュ・メタル色が残る最後の作品でもある)
とは言え、別に本作発表当時、ロック・シーンを席巻していた「モダン・へヴィネス」からの影響があるわけでもなし、作品自体は、相変わらずパワフルでメランコリックでドラマティック。いや寧ろ、ICED EARTHの曲を歌うのに打って付けの歌唱力を備えた強力新Voマシュー・バーロウの加入と、大仰な装飾が取り払われた事で、よりGリフやメロディの魅力がハッキリと浮かび上がっているんじゃないかな、と。
特に、映画『エクソシスト』の“チューブラーベル”を彷彿とさせるイントロからスタートする、激しさと美しさ、繊細さと豪快さを飲み込んでダイナミックに展開していく①を筆頭に、「これぞICED EARTH節!」な②③④、そしてポロポロと零れ落ちるような、美しいアコギとピアノの調べが印象的な小曲⑦を序曲代わりに、ダンテの“神曲”をモチーフに作り上げられ、16分に及ぶ長丁場の地獄巡りを、一瞬たりともテンションを緩めることなく聴かせきる、ジョン・シェイファー渾身の組曲⑧の圧倒的迫力の前には「グゥ」の音も出ません。
個人的に、ジョンが作り出した大作曲の中でも、この“DANTE’S INFERNO”が一番のお気に入り。


ICED EARTH - Burnt Offerings - Burnt Offerings ★★★ (2007-12-15 00:41:55)

“TUBULAR BELLS"ばりのイントロに始まり、
繊細さと豪快さ、激しさと美しさを兼ね備えた
ドラマティック極まりない曲展開が堪能できる、
ICED EARTHの美味しい部分が余す所なく詰め込まれた
3rdアルバムのOPチューンにして、アルバム・タイトル・トラック。


ICED EARTH - Burnt Offerings - Dante's Inferno ★★★ (2007-02-05 22:51:23)

ICED EARTHの楽曲は、長ければ長いほど
(もしくは短ければ短いほど)クオリティが上がっていく
傾向が見られるのだが、この深遠かつドラマチック、
十数分という長さを全く気にさせない大作は、その代表格。
序曲的に配置された小曲“THE PIERRED SPIRIT"(これまた名曲)
とセットでお楽しみください。


ICED EARTH - Dystopia ★★★ (2013-02-08 23:36:58)

看板シンガーのマシュー・バーロウが脱退。その後任に元INTO ETERNITYのステュウ・ブロックを迎え入れて'11年に発表された10thアルバム。
マシューのような攻撃的なシャウトから、リッパーの如きハイピッチ・スクリームに至るまで自由自在に歌いこなし、それでいて小器用さよりも、ぶっ太い芯の通ったパワフルさが強烈に印象に残るステュウの見事な歌唱を得たお陰で、マシュー不在の痛手を全く感じることなく本編に没頭できる今作ですが、やはりアルバム最大の求心力たり得ているのは、首魁ジョン・シェイファーが手掛け、唯一無二のICED EARTH印が刻印されている収録楽曲の数々。
ストーリー・アルバムを作ると、コンセプトの構築に熱心になり過ぎて肝心の楽曲がお留守になるパターンの多い彼らですが、今回はノンコンセプトなHMアルバムということもあり(映画が元ネタになっているものが多いようですが)、個々の楽曲がきっちりと練り込まれて高い完成度を提示。ここまで手応えを感じさせてくれたのは7th『THE GLORIUS BARDEN』以来じゃないかなぁ?と。
イントロだけでメタル魂が燃え上がる①、重厚な悲壮感が溢れ出す②、ブルドーザーの如き迫力で畳み掛ける③⑧、武骨さの中から滲み出す叙情性に胸を打たれる④、JUDAS PRIEST、IRON MAIDENの系譜に連なる正統派のツインGが大活躍な⑥⑦⑫・・・と、こう書いているだけで全身の血が沸き立ってくる、勇猛果敢にしてドラマティックな逸品が隙間なく陳列された本作は、なるほど「バンドの最高傑作」との議論が持ち上がるのも納得のカッコ良さです。


ICED EARTH - Dystopia - Anguish of Youth ★★★ (2013-02-10 22:58:14)

自殺を試みた女性についての歌なので
ダークでメランコリックな雰囲気が漂いますが、
アコギによって醸し出される叙情性が
このバンドらしい武骨な優しさを伝えてくれるバラード。
マシュー・バーロウでも、ティム・オーウェンズでもなく、
Voがステュウ・ブロックだからこそ演れた楽曲ではないかと。


ICED EARTH - Dystopia - Anthem ★★★ (2013-02-10 23:04:12)

オフィシャル・ビデオも作られた
アルバムのリーダー・トラック(なのかな)。
コートの襟を立てて、逆風を突いて
一歩一歩前進していくような気分にさせられる
厳粛且つ重厚な、まさしく「アンセム」な1曲。


ICED EARTH - Dystopia - Dark City ★★★ (2013-02-10 23:00:40)

個人的に大好きなSF映画『ダークシティ』を
題材に取っているだけでも星三つを進呈したいぐらいですが
楽曲自体も相当なカッコ良さ。
ことに疾走するツインGのドラマティックさ加減は
思わずコブシを突き上げたくなる程です。


ICED EARTH - Dystopia - Dystopia ★★★ (2013-02-10 22:55:12)

このイントロ聴いて昂ぶらない奴は偽メタル・ファンだな!
と、思わず物騒なことを口走りたくなるぐらい
劇的な導入部を擁する、まさに掴みにもってこいの名曲。


ICED EARTH - Horror Show ★★★ (2011-02-14 23:17:05)

2nd『NIGHT OF THE STORMRIDER』と共に、マシュー・バーロウが歌うICED EARTHの最高傑作として愛して止まない、'01年発表の6thアルバム。
重厚壮大なコンセプトを前面に押し出したアルバムを手掛けると、ストーリーは非常にドラマティックなのに、肝心の収録曲が地味で決め手に欠くという、後期SAVATAGEに通じる弱点を毎度感じずにはいられないICED EARTH。
ところがどっこい、ホラー/オカルト映画、怪奇小説の世界観をコンセプトに掲げる本作では、狼男や吸血鬼など、同ジャンルのアイコン的モンスターが曲毎にテーマとして設定されており、これが個々の楽曲のキャラ立ちを明確化。しかもそのいずれもが、野太くも憂いに満ちたマシューのVo、ジョン・シェイファーが刻み込む重厚なGリフ、そしてドラマティックな曲展開を兼ね備えたICED EARTH印の名曲揃いと来たもんだ。
映画『オーメン』のサントラを彷彿とさせる禍々しさ・大仰さで迫り来る、悪魔の子ダミアンについて歌った②、ジギル博士の危うい内面を描写するかのように緊迫感を伴ってスリリングに疾走する⑥、吸血鬼の運命を悲壮感たっぷりに描き出す⑩、そして女性Voをゲストに招き、アルバムのフィナーレをオペラティックに飾る⑪といった、モンスター達の威容や彼らが背負った宿命を、アメコミ的なぶっ太い輪郭線で具現化する名曲の素晴しさは、まさしく本編の白眉。IRON MAIDENのカヴァー⑧も、そのハマりっぷりのみならず、テーマを補強する役割も果たしておりナイス選曲だ。
2ndアルバムと併せて、ICED EARTH入門編にお薦めの1枚。ちなみにBを弾いてるのは名手スティーヴ・ディジョルジオですよ。


ICED EARTH - Iced Earth ★★ (2006-10-30 21:52:00)

2nd以降はよく見かけるのに、どういうわけか本作だけは入手困難な状態が続いている、'91年発表の1stアルバム。
デビュー作という事で、まだ現在のようなスケールのデカイ大仰さは然程感じられず、どちらかと言えばオーソドックスなパワー/スラッシュ・メタルの要素が濃厚。楽曲は比較的コンパクトにまとめられ、クセの強いVoの存在と相俟って、彼らの全カタログ中、最もストレートな作風に感じられる。
だがしかし。ザクザクと刻まれるゴン太リフ、重々しく疾走するリズム、扇情的なツインG、繊細なアコギ、Keyを効果的に導入したドラマ性に満ちた曲展開etc・・・と、既にICED EARTHならではの個性はガッチリ確立済み。
特に、クライマックスへと向かって力強く盛り上がっていく②、組曲形式でアルバムの締めを飾る⑥⑦⑧は、その辺りが強く発揮された、繊細さと攻撃性の同居するドラマチックな名曲で必聴。
せっかくバンド名まで冠したのに、OPチューン①が大した曲じゃなかったりと、新人バンドならではの詰めの甘さを感じる場面は多々あれど、後の大成を予感させるのに十分な完成度を誇る1枚。


ICED EARTH - Incorruptible ★★★ (2017-09-12 23:47:11)

まず雑誌に載ったICED EARTHのインタビューで、新作(’17年発表)がコンセプト・アルバムではないことを確認して「よし、今回は期待できそうだぞ!」と(超失礼)。これまで再三述べて来たことですが、首領ジョン・シェイファーはコンセプトに囚われず、個々に起承転結を有する楽曲をクリエイトしている時の方が、作曲者としての切れ味がより鋭さを増す印象で(個人の感想です)、本作もその説を裏付けてくれる強力な出来栄えを誇る。…って、ICED EARTHのカタログに駄作は1枚もありませんけどね。
勿論コンセプト・アルバムじゃないからといって、ドラマ性や劇的さが薄まってしまうようなことはなく。厳めしいコーラスがヴァイキング軍団の行軍を思わせる①、海賊の戦場たる大海の如く力強くうねる②、ネイティヴ・アメリカンのスピリチュアルな雰囲気を纏ったインスト曲⑦、ジョンの南北戦争マニア魂が燃え盛る、フレデリックスバーグの戦いにおけるアイルランド旅団の悲劇について綴られた大作ナンバー⑩…。ステュ・ブロック(Vo)のパワフル且つ表現力豊かな歌唱、劇画チックな陰影と愁いを湛えたメロディ、強靭に刻まれるGリフ、ヘヴィネス漲るリズム・ワークを得て、聴いているだけで歌詞世界の情景が眼前に広がっていくような、シネマティックな楽曲の数々を描き出すジョンの筆致はここでも冴え渡っています。また今回は初期スラッシュ・メタル時代に立ち返ったかの如き、アグレッション全開のスピード・ナンバー⑤も収録。本編中盤をグッと引き締めてくれているという。
ICED EARTHはもう過去のバンド?いやいや。現役バンドですら稀な、これほど強力なアルバムを提示してくれるバンドをロートル扱いは畏れ多過ぎるってもんですよ。


ICED EARTH - Incorruptible - Great Heathen Army ★★★ (2017-09-13 23:50:57)

重厚且つ物々しいイントロを経て
ヴァイキングについて歌った歌詞に相応しく
厳めしく進撃を開始するOPナンバー。
聴いてるだけで力瘤ってしまう
パワフルな曲調にはICED EARTHの個性が
しっかりと刻み込まれています。


ICED EARTH - Incorruptible - Seven Headed Whore ★★★ (2017-09-13 23:55:04)

ICED EARTHがここまでストレートに突っ走る
楽曲を演ったのは一体いつ以来でしょうか。
スラッシュ・メタルのルーツを伺わせる疾走ナンバーで、
噛み付くようなシャウトから突き抜けるハイトーンまで
振れ幅の大きなVoの歌唱と、テクニカルに駆け巡るGとが
効果的に楽曲のテンションを高めてくれています。


ICED EARTH - Night of the Stormrider ★★★ (2006-12-07 22:51:00)

「ドラマティック・スラッシュ・メタル」と聞くと、DESPAIRの3rd『BEYOND THE REASON』と共に真っ先に頭に思い浮かぶのが、このICED EARTH'92年発表の2ndアルバム。
既に確固たる個性を築いていたとは言え、まだオーソドックスなパワー/スラッシュ・メタル風味が強く、収録曲のクオリティにもバラつきが見られたデビュー作に比べ、今回はメンバー・チェンジでVoの
歌唱力がUP(特にメロウな歌い上げが魅力)。よりツインGの煽情度も高まり、各楽曲の平均クオリティとドラマ性が飛躍的に向上・・・と、捨て曲皆無の高い完成度を誇る作品に仕上がっている。
そして何より、コンセプト・アルバムという舞台装置を用意し、アコギ、生ピアノ、オーケストレーションの大胆且つ効果的な導入、アコースティックな小曲で曲間を繋ぎ、ドラマを流麗に物語っていく
その演出手腕には、いよいよ「ICED EARTH本領発揮!」といった感が強く漂う。
その最高峰が、世のメタラー諸氏の度肝を抜いた事で知られる、劇的極まりない名曲①。カール・オルフの“FORTUNA"ばりにドカンと炸裂するイントロには、個人的にも失禁しそうになるぐらい痺れさせて頂きました。
②を筆頭に、エッジーなリフの刻みを聴けば、この頃の彼らが未だスラッシュ・メタルのフィールドに留まっている事が分かるが(そしてまたそこが良い)、本作の成功で自信を深めたジョン・シェイファー(G)は、これ以降、ドラマティシズムの追求に血道を上げていくことになる。


ICED EARTH - Night of the Stormrider - Angels Holocaust ★★★ (2007-02-05 22:44:28)

やはりICED EARTHと言えばこの曲。
その他の2ndアルバム収録曲も何れも高いクオリティを誇るが、
この超名曲(特にイントロ)のインパクトの前には
霞んでしまう・・・というのが実際のところ。


ICED EARTH - Plagues of Babylon ★★ (2014-03-05 23:51:44)

それなりの歳月ICED EARTHの活動をフォローして来た身として、ジョン・シェイファー(G)の才能を疑ったことは一度としてありませんが、なればこそ不思議なんが、どうしてこの人はコンセプト・アルバムを作らせると収録楽曲が華に欠ける仕上がりになるんかなぁ?と。
テーマ練るのに時間を取られてしまうのか、はたまた、1曲毎ではなくアルバム全体の流れの中でドラマを構築しようとするからなのか・・・理由は色々考えられますが、本作に関して言えば、新加入のステュウ・ブロック(Vo)が、自己紹介代わりにロブ・ハルフォードばりのハイトーンからダンディな低音まで多彩な歌声を披露していた前作に対し、今回はケレンを排して、(ほぼ)中音域一本に絞った歌唱に徹していることも、この落ち着いた作風に少なからず影響を及ぼしている印象あり。
尤も、それでも彼の歌唱の雄々しさに疑問を挟む余地はなく、また頼れる相棒を得て益々意気盛んなジョンのクリエイトする楽曲も、1曲ずつ取り上げればそのクオリティは相変わらず無類(地味=退屈というわけではない)。荘厳な響きを湛えて闘魂迸る③⑥⑧や、男泣きの哀愁を背負った⑦⑪といった、ICED EARTH流パワー・メタルの真骨頂たる楽曲の数々には賛辞を惜しみませんよ。
共通したテーマを持つ前半6曲と、独立したメタル・ソングの後半6曲からなる構成ですが、通して聴くよりは上記した楽曲を摘み食い的に楽しみたい作品ですかね。


ICED EARTH - Plagues of Babylon - Cthulhu ★★★ (2014-03-06 23:22:07)

クトゥルー神話を題材に取り上げ、
メランコリックな導入部からテンポアップして
荒々しく盛り上がっていくという
ICED EARTHの必勝パターンが炸裂する名曲。
数千、数万のむくつけき野郎共が拳振り上げながら
合唱してる姿が目に浮かぶような、
荘厳にして勇壮なサビメロもいい具合に
メタル魂を鼓舞してくれます。


ICED EARTH - The Glorious Burden ★★★ (2007-05-26 23:30:00)

マイナー臭の発生源だった(そしてそれこそが最大の魅力だった)マシュー・バーロウ(Vo)が抜け、後任に元JUDAS PRIESTの肩書きを持つティム“リッパー”オーウェンズを迎えた事で、全体的にグッと垢抜けて、メジャー・アクトとしての貫禄が感じられるようになった'04年発表の7thアルバム。
「戦争」をテーマに掲げたコンセプト作、更に南北戦争の天王山、所謂「ゲティスバーグの戦い」を20分間に亘って壮絶に、ドラマティックに、エモーショナルに綴ったジョン・シェイファー渾身の大作組曲⑨~⑪を含む、パワー/メロディ/ドラマ性の三拍子揃った(傑作6th『HORROR SHOW』に勝るとも劣らない)ハイクオリティな内容を誇る本作については、既に多くの方が意見を述べていので、自分なんぞが今更付け加えることはもうなにもありません。
ただ1つ、本作にまつわる事で非常に残念だったのは、チケットを購入して楽しみに待っていた来日公演が直前で中止になってしまったこと。もし来日してくれれば、ジョン・シェイファーにティム・オーウェンズ、ラルフ・サントーラにボビー・ジャーゾンベクという、(個人的には)失禁モノの強力ラインナップでのライブが見られた筈だったのに・・・無念。


ICON - Icon ★★★ (2015-04-29 00:01:58)

軽薄さを微塵も感じさぬ重厚な正統派HMサウンドが託された、LAメタル異端の名盤として、ARMORED SAINTやMALICEの諸作と共に雑誌等で取り上げられる機会の多い、ICONが'84年に発表したデビュー作。(そういやプロデューサーはマイク・ヴァーニーでしたっけね)
メタリックな光沢を放ちながら、ツインGとリズムとが分厚く押し出してくるOPナンバー①を聴けば、彼らのお手本がJUDAS PRIESTであることは疑いようがありませんが、その一方で、アイラインばっちり/カットTシャツざっくりなメンバーの派手派手なルックス、ギタリストのドヤ顔が目に浮かぶようなテクニカルなプレイ満載のリードG、あと「歌う」よりも「叫ぶ」といった感じの勢い重視なVo等は、バンドの出自が間違いなくLAメタルにあることも物語っていています。
正直、音程に無頓着に喚くVoには聴き疲れを覚えなくもないのですが、楽曲はそれを補って余りあるカッコ良さ。中でもフラッシーなツインGを活かした疾走ナンバー⑥から、“美しき聖像破壊者たち”なる邦題の付けられた神秘的なインスト曲⑦を経て、本編屈指の出来栄えを誇る劇的且つ重厚な⑧へと雪崩れ込んでいく中盤以降の流れは、欧州風味の正統派HMにLAメタル流のメイクを施したICONサウンドの真骨頂。
本作に冠せられた大仰な邦題『聖なる咆哮』は伊達じゃねぇ!と思わせてくれる名盤です。


ICON - Icon - Rock 'n' Roll Maniac ★★★ (2015-04-29 00:12:28)

個人的には1stアルバムで一番好きな楽曲なのですが
まさかの得票数0。
アメリカンな威勢の良さと、ヨーロピアンな
湿り気と重厚感の良いトコ取りな名曲ですよ!


ICON - Night of the Crime ★★★ (2017-05-29 00:35:16)

見た目も出す音も華やかなバンドが揃っていたLAメタル・シーンにおいて、ウェット且つ重厚な欧州風味の正統派HMサウンドが異彩を放ったICON、’85年発表の2ndアルバム。
クオリティは高かったものの、デビュー作がセールス的には伸び悩んだ結果を踏まえ、バンドはここで大きく音楽性を転換。曲作りにおいては外部ライターのボブ・ハリガンJr(JUDAS PRIESTとの仕事で知られる)の助力を仰ぎ、シンセサイザーやボーカル・ハーモニーを大幅増量。ポップ&メロディアス化が推進された本編は、プロデュースをエディ・クレイマー、ミックスをロン・ネヴィソンという大物が手掛けたことで一気に抜けが良くなった音作りと併せて、グッと大人びて洗練された風格を身に纏うようになりました。
“聖なる咆哮”とか“美しき聖像破壊者達”とか、大仰な邦題が似合うメタリックな雰囲気は大きく後退するも、派手さを抑えてミディアム・テンポ主体で攻めて来るリズム、テクニカルなだけでなく仕事ぶりも的確なツインG、そして前作最大の弱点とも言えた「雑さ」が解消され、丁寧且つ伸びやかに哀愁のメロディを歌い上げる飛躍的成長っぷりが頼もしいVoがフィーチュアされた収録曲は、ロマンティックな哀メロがキュンと胸を締め付ける⑨を始め、キャッチーな秀曲が揃っていてクオリティ面において盤石。特にスペーシーなシンセのイントロからスタートする重厚な⑤は、物悲しいメロディと、HMバンドとしてのエッジの鋭さを併せ持つICON屈指の名曲ではないかと。
ことほど左様に、これをバンドの最高傑作に推す声が多いのも確かに納得がいく1枚。にも関わらず本作がセールス的には惨敗だったという現実の方が納得いかんのですよ。


ICON - Night of the Crime - Hungry for Love ★★★ (2017-05-29 23:29:29)

HRバンドとしてのエッジや重量感は十全に保ちつつ、
ICONというバンドのメロディ・センスの良さが
如何なく発揮された哀愁のメロハー。
特にコーラスの美しさに蕩けますね。
このサビメロをぶち壊すことなくパワフルに歌い上げる
シンガーの確かな成長ぶりに拍手。


ICON - Night of the Crime - Out for Blood ★★★ (2017-05-29 23:26:50)

スペーシーなシンセとテクニカルなGが映える
抒情的なインスト・パートと、テンポアップして
ハードに盛り上がる歌入りパートの二部構成からなる、
ドラマティックなアルバムのハイライト・ナンバー。
前作に収録されていてもおかしくない曲調ですが
Voの歌唱力やアレンジ力の向上もあって
より安定感が増しています。


IMPELLITTERI - Wicked Maiden ★★ (2009-03-12 23:21:00)

ベテラン・バンドの原点回帰が相次ぐ昨今、約10年ぶりにロブ・ロック(Vo)との復縁を果たした
IMPELLITTERIの最新作も、そうした姿勢がハッキリと打ち出された内容に仕上がっていて嬉しい限り。
賛否両論を呼んだ実験作『PEDAL TO THE METAL』は結構好きな作品だったのだが、やはり、華麗且つストロングな
正統派HMナンバーが全編に渡って敷き詰められた本作を聴いてしまうと、「これこそがIMPELLITTERI!」との
思いを新たにするのも確かで、何より、掴みはOKな名曲①や、流麗なKeyが良いアクセントとなっている③で炸裂する、
ロブの熱いシャウトが素晴しいったら。やはりこの人の歌声を聴くと、心のメタル魂にポッと火を点されますなー。
フックの効いた哀メロが心地良い④⑥といった、適度に力の抜けた(ポップな)楽曲も◎。
アルバムとしては、ロックンロール風味の⑦以降、メロディの魅力が下降線を描いてしまうのが残念だが、それでも
パワフルなエネルギーが漲る本編前半を聴くためだけでも、本作は購入する価値が大いにあるというもの。
ギター・ヒーローの存在の見直しが進む昨今、良いタイミングで、優れた内容の作品を発表してくれたと思うので、
これを機会にIMPELLITTERIがデッカク飛躍してくれるとファンとしては嬉しい。頑張れ。


INCUBUS(UK) (2015-04-12 23:01:03)

同名バンドが多数存在するため、別項「INCUBUS」のコメント欄でなくとも混乱しますが(笑)、こっちはイギリスのダラム出身で、デイヴ(Vo、G)、ケン(G)、スティーヴ(Ds)のクロフォード3兄弟と、その友人コリン・エヴァンス(B)によって結成された4人組。
マニアから愛されるGUARDIAN RECORDSと契約を結んだ後、まずはレーベル・メイトのMILLENIUM、SPARTAN WARRIORと共にオムニバス盤『PURE OVERKILL』に楽曲提供をした後、'84年に1st『TO THE DEVIL DAUGHTER』でアルバム・デビューを果たす。
大成出来ぬままNWOBHM史の片隅へフェードアウトしていったバンドですが、ハモリまくるツインGを生かしたサウンドは、(少々垢抜けないながらも)今尚郷愁を掻き立てる輝きが感じられます。


INCUBUS(UK) - To the Devil a Daughter ★★★ (2015-04-12 23:06:28)

スティーヴ、デイヴ、ケン・クロフォードの3兄弟を擁してNWOBHM最末期に活動していた英国のバンドが、'84年にGUARDIAN RECORDSに残した唯一のフル・アルバム。
ヘタウマなジャケット、チープな音質、いなたいVoと、後発ながらもNWOBHMの伝統をきっちりと受け継いでいる頼もしき(?)本作ですが、音の方にまでNWOBHMらしい荒々しさや疾走感を期待すると、3兄弟による息の合ったボーカル・ハーモニーに彩られた、時にポップにさえ感じられるウェットでメロディアスな作風に、間違いなくスカされることになりますのでご注意を。
味のある楽曲の連なりが醸成する「雰囲気」によって聴き手を「酔わす」タイプの作品ゆえ、強烈なインパクトを焼き付けられる名曲は見当たりませんが、このバンド最大の武器たる、シケシケな哀愁のメロディをのべつまくなし紡ぎ出すツインGは、印象的にハモリまくるOPナンバー①から、早くも英国メタルの旨み全開。悶絶モノの泣きと劇的さで迫り来る③と、哀メロと三連ビートの組み合わせがUFO“DOCTOR, DOCTOR”を思わす⑥なんて、PRAYING MANTISやHERITAGE辺りを好むマニアならば無視できない存在感を発揮してますよ。線の細いVoさえも、ここではその頼りなさが逆に楽曲の叙情性を引き立てているように聴こえてしまうのだから不思議。
「NWOBHMのメロウ・サイドに属する隠れた逸品」との評価に偽りなし。な1枚。


INTRUDER - Believer ★★ (2015-06-07 23:58:30)

スラッシュ・メタル・バンドの方ではなく、ジョン・カラク(G)率いるニュージャージーのメロハー・バンドが、'00年に発表した2ndアルバム。
前作『DANGEROUS NIGHTS』は、「まるで収録全曲が(BON JOVIの)“RUNAWAY”状態」と評された哀愁のアメリカン・メロディアスHRの好盤でしたが、今回は本当にその“RUNAWAY”をセルフ・カバー(カラク氏は“RUNAWAY”共作者)。しかもオリジナルの完コピではなく、バラード調に始まってハードに盛り上がっていくという中々にドラマティックなアレンジが施されていて、この曲目当てで購入した身としては、一本釣りされた甲斐があった!と思わせてくれる好カヴァー。
ただアルバム全体としては、長年に亘って作り溜められたアイデアの大盤振る舞いだった前作と比べてしまうと、やや弱く感じられてしまう点は致し方ないところか。いやそれにしたって、いきなりメロハー・マニアのハート・キャッチなOPナンバー①に代表されるような、煌く哀メロとキャッチーな曲調とが絶妙な融合をみた楽曲の冴えっぷり(お薦めは①⑤⑨)は、やはり只事じゃありませんけどもね。
あと個人的には、トレイシー・ホワイト(SHOTGUN SYMPHONY)のバッチグーな歌唱力も加点ポイント。取り分け、泣きのGの熱演も胸に迫るバラード⑥⑪における熱唱ぶりからも明らかな通り、太い芯を感じさせつつも円やかで潤いに満ちた彼の歌声が、本作を数割増しで魅力的に輝かせてくれていることは疑う余地なしですよ。
これ以降、確かバンドは消息を絶ってしまったと記憶していますが、ジョン・カラク氏は今頃どこで何をしておられるのでしょうか?


INTRUDER - DANGEROUS NIGHTS ★★★ (2013-12-28 00:53:41)

ジョン・ボン・ジョヴィと名曲“RUNAWAY”を共作したことで知られるソングライター、ジョン・カラク(G)が、これまで書き溜めてきたマテリアルを世に出すべく、ARCARAやSHOTGUN SYMPHONYの主要メンバーの力を借りて立ち上げたバンドが'97年に放ったデビュー作。
先頃購入した『メロディアスHRディスクガイド』(まさしく新世紀版『メロディック・ロックへの誘い』といった趣きの好著)において「全曲が“RUNAWAY”状態」とレビューされていたのを読んで興味を持ち、折りよく安価で売りに出されていた中古盤を入手して聴いてみたのですが、これがもう(恐らく意図的に)“RUNAWAY”感バリバリなOPナンバー①を手始めに、Keyが印象的なフックを作り出す哀愁のメロディック・ロック・サウンドはまさしく初期BON JOVI路線。「BON JOVIったらやっぱ1stでしょ」な我が身にはジャストフィットな1枚でありました。
尤も、こうした作風を歌うにはトレイシー・ホワイト(Vo)のウェットな声質が少々重くも感じられますが、それでも歌唱力は確かな上に、次から次に繰り出される楽曲がとにかく高品質なので、聴き進めるうちに全く気にならなくなります。特にピンと張り詰めた緊迫感を漂わす④、素晴らしいシンガーがいてこそ映えるバラード⑤、Keyが“EMERGENCY”な雰囲気を醸し出す⑥は、前述の①と並ぶアルバムのハイライト・ナンバー。
こんな傑作が、中古屋で3桁の値段で買えてしまうのだから日本は良い国(?)だなぁ、と。


INTRUDER - DANGEROUS NIGHTS - HEARTS ON THE LOOSE ★★★ (2013-12-29 10:23:01)

「俺だって“孤独のランナウェイ”の作曲者だぜ!」
というジョン・カラクの主張が漲るイントロに
顔が綻ぶアルバムのOPナンバー。
尤も、楽曲自体は“孤独~”と似ているわけではない
魅力的なメロディックHRの名曲。


INTRUDER - DANGEROUS NIGHTS - Surprise Attack ★★★ (2013-12-29 10:26:03)

奇襲攻撃のタイトルに相応しく、
Keyがメロウネスのみならず、ぴりっとした
緊迫感も演出する逸品。
ギタリストとしてもジョン・カラクが
良い仕事を披露しています。


INTRUDER(THRASH) - A Higher Form of Killing ★★★ (2017-03-20 22:22:22)

ドラマーのジョン・ピエローニを中心に、テネシー州にて結成されたパワー/スラッシュ・メタル・バンドが’89年に発表した2ndアルバム。1st『LIVE TO DIE』の好評を受けてこちらは日本盤のリリースも実現しています。(でももう廃盤という)
本作からサイドGを加えて5人編成に移行。また新たにMETAL BLADEと契約を結ぶ等、バンドに訪れた環境の変化は音楽性の方にも伝播。具体的に言うと、まずレコーディング・パジェットが増えたことで音質が改善。更に全編を貫く畳み掛ける疾走感はそのままに、よりテクニカルなアプローチが試みられた楽曲は、Gリフ重視、ギャング・コーラスの増量等、一層スラッシュ・メタル色を強めた仕上がりに。近未来の毒ガス戦争に警鐘を鳴らすアートワークや、ノーベル賞受賞科学者フリッツ・ヘイバーの言葉をインナースリーブに引用したりする社会派カラーの鮮明さも、この時期のスラッシャーらしいところです。
パワー、スピード、それに次々重ねられていくGリフのアイデアと、いずれの要素も及第点を軽くクリア。その一方で、嘗てはデビュー作に比べると卒なくまとまり過ぎて、パンチに欠けるように感じられたものですが、殆ど十年ぶりぐらいで聴き直したら、みるみる印象が急上昇しましてね。しっかりとメロディを追うVoを活かした劇的な④⑩、テンション高く弾きまくるツインGを擁しスピーディに突き進む②③、アグレッシブ且つキャッチーな⑧等、終始緊張感を高いラインで保ったまま走り抜ける力作じゃねえか!と。
敢えて気になる点を挙げさせて貰えるならば、複雑精緻化した楽曲にドラマーの腕前が追っ付かなくなってる場面が散見され、MONKEESのカヴァー⑤で嬉々としてリードVoを取ってる場合じゃないだろうと、君は。(カヴァーの出来はユニークで◎なのですが)


INTRUDER(THRASH) - A Higher Form of Killing - Mr. Death ★★★ (2017-03-20 22:28:19)

メロディアスに歌えるVoと、ギャング・コーラスの
抜群にテンポの良い掛け合いにアガらずにはいられない
アルバムのラスト・ナンバー。
猛然と弾きまくるGも鮮烈な印象を残します。


INTRUDER(THRASH) - A Higher Form of Killing - The Martyr ★★★ (2017-03-20 22:37:06)

ヨーロピアンな湿り気を漂わせていた前作に比べると、
ニュースのナレーションをSEに付け加えるモダンなアレンジから、
湿度の下がった音作り、山あり谷ありの展開を盛り込みつつ
Gリフ主導で突っ走る曲調まで、より明快にベイエリア・スラッシュ路線への
傾倒が感じられるアルバムのOPナンバー。
いやでも十分カッコイイんですよ、これが。


INTRUDER(THRASH) - Escape from Pain ★★ (2007-02-24 22:57:00)

CD屋の輸入盤コーナーで見かけて、「お、INTRUDERの新作か?」と思って購入、後で確認したら
'90年発表の5曲入りEPの再発盤(リマスター仕様)だった。
しかし、これが結構優れた内容で、前年発表の2nd『HIGHER FROM OF KILLING』は大人しくまとまり過ぎていて、
正直、可もなく不可もなくといった感じのアルバムだったが、それが本作では一変。
上擦り気味だったVoの歌唱に太さが増し、更に『HIGHER~』のウィーク・ポイントだったDsの技量が格段に向上。
モタリが殆ど感じられなくなっていて、そのドラミングに引っ張られる形でリフや疾走感のキレ味も
大幅パワーアップ。結果、作品に宿るダイナミズムが前2作の比ではなくなっている。
CHICAGOの名曲“長い夜"のカヴァー①も、巧くスラッシュ・バージョンに変換しているし、
EDにエクソシストの“TUBULAR BELLS"(?)をくっ付けたEP表題曲の大作②、2本のアコギが絡み合う
美しいイントロを経て疾走を開始する④といった楽曲は聴き応え十分。
ツインGの煽情度がやや落ちたように感じられるが(とはいえ④のGソロは◎)、ともあれ、
こりゃあ、未聴の3rd『PSYCHO SAVANT』が是非とも聴いてみたくなった。


INTRUDER(THRASH) - Live to Die... Relived ★★★ (2007-03-26 21:26:00)

今から十数年ほど前に、BURRN!!誌のスラッシュ・メタル特集でこのアルバムが取り上げられていたのを読んで早速買いに走った記憶がある、テネシー州は、ナッシュビルならぬスラッシュビル(笑)出身の4人組、’87年発表の1stアルバム。
ツインG編成となった次作以降は、明快なベイエリア・スラッシュ路線へと徐々にシフトしていくこととなる彼らですが、シングルG編成のこの時期は、所属先がJAG PANZERやLIEDGE LORDを擁したB級メタルの登竜門(?)IRON WORKSだったこともあってか、NWOBHMからの影響も伺わすダークで湿気ったスピード・メタルを演っています。個人的には、初めてOPナンバー①を耳にした時は、HEATHENの『BREAKING SILENCE』のことを思い出しました…と書くと、どんな感じの音か伝わるでしょうか?
音質はイマサンなれど(メタル・バンドの中では最も早くフル・デジタルでレコーディングされた作品の一つらしいですが、その恩恵は全くと言っていいぐらい感じられない)、歌えるVoを活かした、静と動の対比が見事な③、メロウなBソロも印象的な④、そして本編のハイライトと呼ぶべき、東欧調の寂しげなメロディを爪弾くアコギに始まり、ドラマティックに疾走していく⑤といった強力な楽曲を擁した本編中盤の盛り上がりが圧巻。INTRUDERのカタログのベストな1枚としてファン人気が高いのも然もありなん。
惜しむらくは、CDの再発に際して最低で最高だったオリジナルの首吊りジャケットが、無難なデザインのモノに変更されてしまったことぐらいですよ。


INTRUDER(THRASH) - Live to Die... Relived - Kiss of Death ★★ (2007-03-26 21:34:49)

1stアルバムのハイライト・チューン。
何処となく東欧を思わせる、物悲しげなアコギのイントロに
始まり、スピーディ且つ劇的に盛り上がっていく曲展開が
素晴しい。


INTRUDER(THRASH) - Psycho Savant ★★ (2009-10-13 22:25:00)

バンドの代表作と名高い『LIVE TO DIE』('87年)の頃は、シュールで不気味なジャケット・アートワークが
ピタリとハマる、欧州風味の暗く湿った雰囲気漂うスラッシュ・メタルを演っていた彼らだが、作品を重ねる毎に
そういった要素は薄れていき、この3rdにしてラスト・アルバムでもある本作で聴く事ができるのは、
すっかり垢抜けたアメリカン・スラッシュ・メタル。・・・と言っても能天気さはまるでなく、
それよりもリズミックに疾走するキャッチーな縦ノリのリズムにそうした要素を強く感じてみたり。
フラッシーに弾きまくり、全編を華麗に彩るメロディックなツインG、起伏に富んだメロディを歌うVo、
そして技巧を凝らした(プログレッシブ・ロックからの影響も感じさせる)テクニカルな曲展開を兼ね備えた
①④⑥⑧といった楽曲は、特に本作の方向性と魅力を判り易く伝える名曲かと。
全8曲収録で、その殆どが6~7分台という大作主義には流石に胃もたれを感じざるを得ないものの、
練られたアレンジとスラッシーな疾走感が緊張感を維持してるお陰で冗長さはギリギリのところで回避。
前2作が気に入った人なら買って損はないハイクオリティな内容の1枚・・・なんだけど、既に再発された1stや2nd
に対し、こっちはいつまで経っても全くリイシューされる気配がないのであった。


IQ - Are You Sitting Comfortably? ★★★ (2022-11-17 00:27:40)

80年代初頭に英国で盛り上がりをみせたネオ・プログレッシブ・ロック・ムーブメントの渦中にて、ブームの旗手たるMARILLIONに続く存在と目されたロンドンの5人組が、'89年にSQUAWK RECORDSから発表した4thアルバム。
発売当時は「けっ、気取ったバンド名を名乗りやがってよぉ」と、いらぬ僻み根性を発動させ購入はスルーしてしまったアルバムですが、後追いでチェックしてみたところ、その内容の素晴らしさに感銘受けまくり。正直舐めててスマンかった、と。
メジャー・レーベルからのリリースということで、プログレ・メタル的な大仰さや緊張感の演出よりも、キャッチーなメロディをしっかりと聴かせることに重きを置いた、ポップ寄りの路線に仕上げられてはいるのですが、一見耳馴染みが良く分かり易いサウンドようでありつつ、実は曲間をシームレスに繋いで全編を流れるように構築し、変拍子や技ありの曲展開をさりげなく随所に差し込む等、聴くほどに新たな発見がある作り込みっぷりと、高いインテリジェンスを感じさせる作曲センスには、かつての己のバンド名に関する毒づきはサクッと棚上げして「流石、I.Q.なんて名乗るだけのことはありますなぁ」と華麗に手のひら返し。特に映画のサントラを思わせるスペーシーな③をイントロとしてスタートする④や、9分越えの山あり谷ありの大作⑦は、長尺をまるで苦に感じさせないバンドのポテンシャルがフルに発揮されたアルバムのハイライト・ナンバーではないかと。
今となってはあまり顧みられることのないバンドですが、MARILLIONや初期DREAM THEATERを愛する向きはこちらもチェックしておいて損はないよ!な1枚です。


IQ - Are You Sitting Comfortably? - Falling Apart at the Seams ★★★ (2022-11-18 00:02:44)

柔和な声質のVoによって歌われるメロディはポップな響きも湛えていますが
変化に富む曲展開に支えられた7分以上に及ぶ長尺といい
スペーシーなアレンジといい、プログレッシブ・ロックならではの
魅力もきっちり兼ね備えた名曲に仕上げられています。


IRON ANGEL - Hellbound ★★★ (2018-08-31 00:25:23)

ドイツの古参パワー・メタル軍団が復活を果たし、2nd『WINDS OF WAR』(’86年)以来、実に32年ぶりに3rdアルバムとなる本作を発表してくれました。
しかも音楽性は驚くぐらい変わっていないという。「30年間まんじりとも変化してない」と書くと悪口のようですが、嘗ての己の個性を的確に把握し、それを長年に亘って維持し、揺るぎなく提示してみせることだってそう簡単に出来ることじゃありませんよ。
スピード・ナンバーを中心に、野卑なVo、剛直に刻まれるリフ&リズム、要所で湿ったメロディをブッ込むツイン・リードGとが直線的に畳み込む、ACCEPTやJUDAS PRIEST、あるいはNWOBHMからの影響を下敷きにしたムサ苦しさ満点のサウンドは、まさに『WINDS~』に続く作風であり、80年代中頃の独産パワー・メタルならではの味わい。殊にHELOWEENブレイク以降のメロパワ勢に顕著だった「明朗快活」「懐っこさ」(キャッチーさとも言い換え可能)とは一切無縁の無愛想さ、昭和期からガード下で営業しているラーメン屋でドンブリに親指ブッ差して配膳してくる店主ばりにぶっきらぼうな佇まいのサウンドは、今だったら寧ろ新鮮に響く可能性だって…まぁ、それはないか。
ともあれ個人的には、ノリ良く畳み込む③、不穏な緊張感を湛えて突っ走る④、アグレッシブに牙を剥く⑥、ライブ向きのアルバム表題曲⑨、歌メロがMETALLICAの“BATTERY”を彷彿とさせる⑨といった硬派な楽曲の数々を心から楽しませて頂きましたよ。
前2作同様、万人にお勧めするのは躊躇を覚える内容ではありますが、逆に前2作を気に入った人なら購入に躊躇を覚える必要はない1枚かと。


IRON ANGEL - Hellish Crossfire ★★ (2014-11-24 18:40:22)

NWOBHMに触発されて'80年頃に活動を開始した、ジャーマン・パワー・メタル第一世代に属するバンド・・・と説明するよりも、「2ndにユルゲン・ブラックモアがゲスト参加してたバンド」と説明した方が「あー、いたね。そんな連中」と通りが良い(気がする)ハンブルグ出身の5人組、'85年発表の1stアルバム。
スピーディ且つ攻撃的サウンド(+陰気な歌詞)で、後続の独産スラッシュ勢にインスピレーションを授けたとされる彼ら。思いっきり頼りないVoと、取り立ててオチもヤマもない勢い任せな楽曲とが、B級メタルの香ばしさを濃厚に漂わす本作の裏ジャケに掲げられた、《この作品を全世界のスピード/へヴィ・メタル・ファンに捧ぐ》との文言に、処分に困る結婚式の引き出物を貰った時のような表情を浮かべてしまったHR/HMリスナーも多かったのではないかと。
でも、個人的には結構好きな作品なんですよね、これ。特にリフ作りのセンスには光るモノが感じられ、このカッコ良さだけでご飯が2、3杯はイケる勢い。“BURN”風GリフとMOTORHEADばりに荒くれた曲調がミックスされた⑤や、ドラマティックに盛り上げんとする心意気(だけ)は伝わる⑨、そして荒々しく突進するリフ&リズムの畳み掛けがプレ・スラッシュ的カッコ良さを放つ⑩等は、なかなか聴かせてくれます。
万人向けとは言い難くも、愛すべきサムシングに満ちた1枚ですよ。


IRON ANGEL - Hellish Crossfire - Heavy Metal Soldiers ★★ (2014-11-30 00:09:27)

ストレートど真ん中なタイトルに相応しく
ヒネリもへったくれもなく突っ走るスピード・ナンバー。
スラッシュにしては迫力不足で、パワー・メタル的にはへたくそ過ぎる
というVoの力量不足には如何ともし難いものがありますが
Gリフのカッコ良さとタイトな疾走感だけで十分楽しませくれます。


IRON ANGEL - Winds of War ★★ (2014-12-10 21:40:42)

一部マニアの間で、リッチー・ブラックモアの実子、ユルゲン・ブラックモア(G)がゲスト参加していることが話題となった'86年発表の2ndアルバム。ただリッチーの幻影を求めて本作を購入した虹紫ファンの多くは、ムサ苦しく炸裂する野卑なパワー・サウンドを耳にして、盤を速攻で売っ払うかブン投げたのではないかと推察されますが・・・。
スピード/スラッシュ・メタリックな②④⑨で要所を締めつつも、ACCEPTが演りそうな③、ライブじゃコール&レスポンスが盛り上ったに違いない⑤、初期HELLOWEENの名曲“HEAVY METAL”を彷彿とさせる⑦、そしてユルゲンがGソロを弾いている本編の目玉曲⑧を聴けば明らかな通り、今回はパワー・メタル・テイストが大増量。明快さと勇壮さ増し増しのコーラス・ワークや、ウルフ・ホフマンを手本に印象的に「歌う」2本のG(あとカレ・トラップの手掛けた整理された音作り)もそれを援護射撃。前作において豪快な音痴っぷりを披露していたVoも、ここではバラードの小曲⑩も無難に歌いこなす等、普通に「上手くない」レベルまで飛躍的(!)な成長を遂げていますよ。
雑誌のレビューじゃケチョンケチョンでしたが、溢れんばかりのメタル愛と、愚直なまでのヒネリのなさ/芸のなさに、思わず笑みを零さずにはいられませんて。デビュー作から経験値の上積みも確認できて(これで?!とか言わないように)、個人的には愛聴している1枚であります。


IRON ANGEL - Winds of War - Creatures of Destruction ★★★ (2014-12-11 23:20:29)

1stのスピード/スラッシュ・メタル路線を受け継いで
アルバムのラストを激烈に締め括る疾走ナンバー。
鬼のように刻まれるGリフのカッコ良さはもとより
噛み付くような歌メロの迫力、
シャープに炸裂するツイン・リードGの練られ具合といい、
前作からのバンドの成長ぶりがしかと確認できる名曲です。


IRON ANGEL - Winds of War - Sea of Flames ★★ (2014-12-11 23:14:51)

明快なイントロや、合唱を誘うコーラスからして、
本作におけるバンドのパワー・メタル志向を物語っています。
ユルゲン・ブラックモアがGソロを弾いていることが話題になりましたが、
正直、それほど耳を引くような内容ではなく
むしろエンディング付近をドラマティックに盛り上げる
Gソロの方がよっぽどエキサイティングですよ。


IRON ANGEL - Winds of War - Son of a Bitch ★★ (2014-12-11 22:31:34)

タイトルといい、パワー・ロックンロールな曲調といい
ACCEPTへのなりきりっぷりが楽しい1曲。
この手の楽曲だとVoの粗も目立ちませんしね。
「空腹のウド・ダークシュナイダー」みたいな感じで。


IRON CROSS (2014-12-28 22:36:59)

バンド名で検索しても「同名バンドが多い」「アルバム1枚きりで消息不明」ぐらいのことしか分からない、アメリカ・ペンシルバニア州ピッツバーグ出身の4人組。
(でもこちらのサイトには、収録曲まで含めて一発登録することが出来て驚いた)
謎に包まれた・・・というより、単に大した活動をしなかった、要は80年代のHR/HMブームを盛り上げた泡沫バンドの一つってことなんでしょうが、でも彼らが'85年に発表した唯一作『WARHEAD』は、「その他大勢」とは切って捨て難いサムシングを放つ力作でした。


IRON CROSS - Warhead ★★ (2014-12-28 22:49:40)

IRON CROSSを名乗るバンドはあちこちにいますが、彼らはペンシルバニア州ピッツバーグ出身の4人組で、本作は'85年発表のデビュー作。というか唯一作か。
以前ワゴンセールで投売りされていたところを、バンド名とアートワークが気に入って「SHRAPNEL系かな?」と当たりを付けて購入したのですが、これがドンピシャと言わないまでも結構近い感じのパワー・メタルを演っていて、思わず「よっしゃ」と握り拳固めてしまいましたね。
オヤジ臭い声質のシンガーをフロントマンに据え、重心低くパワフルに押し出してくるサウンドはJUDAS PRIESTからの影響が濃厚ですが、さほどダークな雰囲気は漂って来ないあたりがアメリカ産。ザックリと刻まれるリフ&リズムの組み合わせは、曲によってはLAメタルっぽく感じられたりも。
音質は今ひとつ。手癖だけで組み立てられたようなGソロが存在感に乏しく、どうも楽曲が小さくまとまってしまっている感も否めませんが、シンガーが「ロブ・ハルフォードの物真似をするウド・ダークシュナイダー」と化す疾走ナンバー③⑤⑩等に明らかな通り、作曲センス(特にリフ作り)には確かな冴えが確認できます。中でもライブ会場で観客の頭が一斉に揺れる様が目に浮かぶようなヘドバン・ソング⑥は名曲。
他に作品をリリースしてれば聴いてみたい、と思わせてくれる1枚でした。


IRON CROSS - Warhead - Send for the Cross ★★★ (2014-12-29 23:39:09)

戦車の進撃を思わすパワフルなリフ&リズムと
その間隙を縫って閃くメロディとの組み合わせに
血中メタル成分が沸騰して、頭を振りたくて
仕方なくさせてくれるパワー・チューン。
ミドル・テンポの楽曲かくあるべし!な名曲ですよ。


IRON MAIDEN ★★★ (2016-03-15 00:11:43)

てかぷりおさん

実は先週、ちょうど愛知へ行く用事が入っていて、
「何たるタイミング!時間作って足を運ぼうかな」とか考えていたのですが、
最終的にはその用事自体がキャンセルになってしまい、結局行けず終いだったんですよね。
 
内容が気になっていたので、レポートありがとうございました。
羨ましい限りです。


IRON MAIDEN - Maiden Japan ★★★ (2018-04-04 23:43:19)

IRON MAIDENが’81年に行った来日公演の模様を収めた実況録音盤(収録会場は愛知厚生年金会館)。邦題は『ヘヴィ・メタル・アーミー メイデン・ジャパン・ライブ!』で、ジャケットに踊る「日本」「女」という怪しげな日本語が微笑ましい。
収録曲は全4曲と、ボリューム的には少々食い足りない感があるものの、ポール・ディアノ&クライヴ・バー在籍時代のIRON MAIDENの荒々しいライブの一端を垣間見ることが出来る作品としてファン人気は高い。また、切り取ったディアノの生首を掲げるエディがジャケットに描かれたベネズエラ盤が、コレクターズ・アイテム化しているのもよく知られた話。余談ですが、自分が持っているのは『MAIDEN JAPAN』に“PURGATORY”と“GENGIS KHAN”、ニコ・マクブレインが駄弁りまくる“LISTEN WITH NICKO! PARTⅢ”を追加収録した全7曲仕様のCD。古本屋の中古コーナーで本作を発見した時は「公式には『MAIDEN~』はCD化されてない筈だし、海賊盤か?」と疑いましたが、よくよく思い出してみれば、これって多分活動10周年記念企画でリリースされた10枚の内のシングルの一つだったという。(日本では最初からBOX SET『FIRST TEN YEARS』として発売)
ともあれ内容に関しては文句なし。本編のメインたる『MAIDEN JAPAN』は名曲揃いな上、バンドの若さ迸る演奏も非常に生々しく捉えられていますし、日本のファンの声援も熱い。既に女性客の声援も結構混じっていて、バンドも嬉しかったのでは?とか思ったり。
これを聴くと、巷に出回っている放送用音源をソースにしたブート盤(そっちは中野サンプラザでのライブを収録)を正式作品化して欲しくなってしまいますよ。


IRON MAIDEN - The Book of Souls ★★★ (2015-11-04 22:45:24)

『FEAR OF THE DARK』を区切りに、ずんどこ大作志向を鮮明にしていったIRON MAIDENのアルバムには今ひとつ入れ込めず、今回も新作は2枚組、しかも18分越えの超大作まで収録!とアナウンスされた時から「こりゃあ期待できそうにねえなぁ」と、どうにもテンションが上がらずにいたのですが聴いて吃驚。他の方のレビュー通り、とても良く出来た作品じゃありませんか。
まず2枚組と言っても、1枚の収録曲は5、6曲で、トータル・ランニング・タイムも90分(つまり1枚平均45分)と、聴き易いボリュームに抑えられている点が○。更に楽曲の質も高いレベルをキープ。エイドリアン・スミスらしいHMナンバー“SPEED OF LIGHT”や、エピカルな曲調とライブ映えしそうなコーラスにアガりまくる“THE RED AND THE BLACK”のカッコ良さはどうだ。目玉である18分越えの大作“EMPIRE OF THE CLOUD”も、情景描写に優れた劇的なメロディ/アレンジ/曲展開とが上質な映画観賞の如き感覚をもたらしてくれてダレ場ナッシング。
それらを援護するのがブルース・ディッキンソンの歌いっぷりの良さで、長尺をがっちりと下支えする彼の雄々しい歌唱を聴くにつけ、これが本当に体内をガン細胞に蝕まれていた男の声か?と。
まぁ、ものによっては中弛みを感じるというか、インスト・パートもっと短縮できるんじゃね?とか思ってしまう楽曲もなくはないのですが、派手さよりも、冗長さと紙一重の堅実性重視で楽曲を盛り上げていくのが今のIRON MAIDENスタイルですからね・・・。
ともあれ、ここまで楽しめた彼らのアルバムは久し振り。入門盤に打って付け・・・というよりも、最近IRON MAIDENにご無沙汰だった古参ファンにこそお薦めする1枚ではないかと。


IRON MAN - South of the Earth ★★★ (2015-01-04 14:53:46)

強烈な横ノリ感を生み出すGリフからインプロヴァイズされたGソロまで、トニー・アイオミばりのスモーキーなGワークで「黒いアイオミ」の異名を取る黒人ギタリスト、アルフレッド・モーリス三世率いるドゥーム・メタル・バンドが、'13年に発表した5th(4th?)アルバム。
BLACK SABBATHの名曲をバンド名に戴くだけあって(そもそもサバスのトリビュート・バンドとして活動をスタート)、志向する音楽性も、自分のようなこの手のジャンルに疎い人間でも「おぉ、ドゥームだ」と一聴瞭然なぐらい、コッテコテのドゥーム・メタルをプレイ。
低音から高音までシアトリカルに行き来する様が、さながら「邪教の司祭」といった趣きのVoと、ドライヴしまくるBに、振り下ろされるハンマーの如きDsとが、収録曲1つ1つのキャラ立ちを明確にすると共に、アップテンポの⑥や緩急を飲み込んだ⑧等を本編に織り交ぜることで、かったるいドゥームにありがちな冗長感を排除。サウンドを重厚且つダイナミックに引き締めます。
ピアノをアクセント的に用いて、アルバムをドラマティックに締め括る名曲⑨の荘厳な存在感が、本編のクオリティの高さを雄弁に物語る1枚でした。


IRON MAN - South of the Earth - The Ballad of Ray Garraty ★★★ (2015-01-05 23:16:58)

タイトルと歌詞から推察するに
スティーヴン・キングの『死のロング・ウォーク』に
着想を得ているのかな?
表題は“バラード”ですが、アルバムを締め括るに相応しい、
エピカルでドラマティックな大作曲で、朗々歌い上げるVoと
燻し銀のGがその表現力を如何なく発揮しています。


ISSA - Can't Stop ★★★ (2012-12-29 11:37:30)

イッサ、3枚目の作品は80~90年代に活動していたメロディアスHRバンドの楽曲を集めたカヴァー・アルバム。(アレンジは現EDEN'S CURSEのアレッサンドロ・デル・ベッキオが担当)
普通、この手の企画盤はマーケティング的な観点からも、ある程度名の知れたアーティストの楽曲をカヴァーするのが常道ですが、本作はそこを敢えて外し、大成せずに埋もれてしまったバンドの名曲群を掘り起こしている点がユニーク。マーケティングよりも趣味性を優先したかのようなこの企画、まるでFRONTIER RECORDS社長セラフィノ・ペルジーノ氏の「俺が聴きてぇんだから、細けぇことは良いんだよ!」との決意表明が聞こえてくるかのようです。
本編に登場するバンドは、AVIATORにREGATTAにBOULEVARD・・・と名前を挙げただけで「ああ、あれね」となる方は相当なマニアとお見受け致します。個人的に半数近くは、楽曲はおろか名前すら知らなかったバンドなのですが、知名度よりもクオリティ優先の選曲が為されているだけあって、いずれも一発でハート鷲掴みな珠玉の逸品揃い。しかもそれをイッサ嬢が溌剌と歌い上げるわけですからね。
AVIATORの①や21 GUNSの④、MYSTIC HEALERの⑤はやっぱり名曲ですし、その存在をまるで知らなかったREGATTAの③、BOULEVARDの⑦なんて、本編のハイライト・ナンバーとしてオリジナル盤を探さずにはいられませんよ。
メロハー名盤探しのカタログ代わりにもうってつけの1枚です。


ISSA - Crossfire ★★★ (2015-05-22 23:49:47)

AOR/産業ロックの隠れた名曲をカヴァーしてみせた秀逸な企画盤『CAN'T STOP』('12年)の高評価に後押しされたのか、完全にハードポップ路線に舵を切っている'15年発表の3rd。
発売後すぐに入手はしたものの、一緒に購入したREVOLUSION SAINTSのアルバムが余りに素晴らし過ぎたせいで何だか色褪せて聴こえてしまい、暫くCD棚の肥やしにしてしまっていました。んで、こうして久々に引っ張り出してじっくり聴いてみて、「うん。やっぱり良い出来だな」と。
これまでの作品同様、FRONTIER RECORDS勝利の方程式(=優秀なライター&ミュージシャンによる水も漏らさぬバックアップ体制)に則って制作されている以上、ハズレ掴まされる心配はまず有り得ず、しかも本作の「貌」たるイッサ嬢が、キラキラと眩い燐粉を振り撒くような溌剌とした歌唱で、同レーベルのその他のメロハー作品とは明確な差別化を図ってくれるわけですからね。
よりポップに洗練された、ヒット・ポテンシャル搭載型ハードポップ・ナンバーが軒を連ねる本編は、哀愁とキャッチーさが絶妙に溶け合うサビメロにメロハー愛好家の血が騒ぐ④⑧⑪、そして何より、FMのスティーヴ・オーヴァーランドとのデュエット・バラード③の哀愁っぷりがトドメの一撃を加えてくれるという按配。つか、この曲に関しては完全にゲストの筈のスティーブさんが貫録勝ちを収めてる感じですよ。
そんなわけで、ファンなら安心してお買い求め頂けるクオリティの1枚。


ISSA - Crossfire - Raintown ★★★ (2015-05-24 22:48:03)

FMのスティーヴ・オーヴァーランドをゲストに迎えて
しっとりと聴かせる極上のデュエット・バラード。
哀愁に満ちたメロディといい、胸を打つ盛り上がりっぷりといい、
まさしくアルバムのハイライトを飾るに相応しい名曲です。


ISSA - Sign of Angels ★★★ (2012-12-27 21:10:56)

端麗な容姿と卓越した歌唱力を兼ね備えるノルウェーの歌姫、イッサことイサベル・ウーヴェスヴェンが'10年に発表した1stアルバム。
見目麗しいアートワークからも明らかなように、ソプラノ・ボイスか、はたまたオペラティックなスタイルで歌い出しそうなゴージャスな美貌の持ち主のイッサ嬢ですが、その声はどちらかと言えば「お転婆」系(死語)で、ハスキーな声質はロック・シンガー然としたパンチの効き具合。
10代の頃からプロキャリアを積んでいるだけ合ってその実力は確かな上に、FRONTIER RECORDSの全面バックアップを受け、参加ミュージシャンもソングライターも腕利きの職人揃いとあっては、これはもうレベルの低い作品が出来上がるわけがありません。
事実、エッジを失うことなく哀メロのフックに磨きのかけられた、華やかなハード・ポップ・サウンドは出色の出来栄え。キャッチーなサビメロからヒンヤリとした冷気を纏った哀感が滲み出す辺りが流石は北欧産で、個人的には①③④など感動的な名曲が並ぶ前半の充実っぷりに心震えましたよ。
眉と耳に唾つけて購入しましたが、確かに噂に違わぬ捨て曲なしの力作でありました。


ISSA - The Storm ★★ (2012-12-29 00:06:55)

ゴージャスな美貌のみならず、ハスキーな歌声の素晴しさ、そして何よりデビュー作『SIGN OF ANGELS』の飛び抜けたクオリティの高さで話題を呼んだイッサ嬢が、再びFRONTIER RECORDS人脈に連なるソングライター/ミュージシャン勢と共に制作、'11年に発表した2ndアルバム。
デビュー作のどういった要素がリスナーに受けたかを的確に把握し、楽曲のフック、キャッチーなサビメロ、壮麗なアレンジをより一層研磨することによって「哀愁のハードポップ・サウンド」の魅力を素直に伸ばしてみせた本作の質の高さは、カラータイマーみたいな(?)のKeyリフが印象的なOPナンバー①を聴いただけでハッキリと伝わってきます。
ただ、関わったソングライターの資質の差異なのか、今回は北欧的な冷ややかな哀感は少々減退した印象で、全体としてはより普遍的なメロハー・テイストが強まった感あって、別にこれはこれで十分魅力的ではあるものの、個人的には前作の作風がドンピシャだっただけに、やはり物足りなさを覚えてしまうかなぁ、と。贅沢な話ですが。
とは言え、そんなことを理由に⑥みたいな良い曲が収録されている本作をスルーするなんて勿体なさ過ぎる話ですけどね。


JACK STARRS BURNING STARR - No Turning Back! ★★★ (2016-02-01 23:54:47)

米マイナー・メタル界の一番星、ジャック・スター(G)率いるJACK STARR'S BURNING STARが'86年に発表した2ndアルバム。
東南アジアの市場で売られてるSHRAPNEL系速弾きギタリストの海賊盤みたいなジャケットのバッタ臭には思わず脱力感誘われますが、ここに託されたストロングな正統派HMサウンドの説得力は間違いなく本物です。
RIOT来日公演時の影の薄さを覆す、マイク・ティレリのリキの入ったシャウトをフィーチュアし、VIRGIN STEELEリズム隊の力も借りてパワフルに突き進む本編は、力技一辺倒かと思わせておいて実際は、ジャックの盟友、デヴィッド・ディフェイズ(Key)が奏でるクラシカルな小曲を要所に挟み込む等、欧州HM由来のドラマティックな構成/演出を巧みに敷設。
音色も演奏スタイルも紡ぎ出すメロディも、強引且つ高圧的なジャック・スターのGプレイが評価の分かれ目として、発表当時BURRN!!誌では確か40点台を叩き出していましたが、いやいやいや。SHRAPNEL系プレイヤーのようなスマートさ/華麗さとは一切無縁ながらも、変に気取ることなく、メタル・ハートにズドンと突き刺さるメロディを直球で投げ込む、この人の熱いGプレイを個人的には断固支持。②のGリフのカッコ良さ、④のGソロのグッと来る組み立てや、ラスト・ナンバー⑨のエンディング・パートの入魂振りは、いつ何時聴いても身の内に燃え盛るメタル魂に火をくべられる思いですよ。
アメリカン・パワー/ヘヴィ・メタル好きなら一度は聴いておいて損のない力作。


JACK STARRS BURNING STARR - No Turning Back! - Run for Your Life ★★★ (2016-02-04 21:41:38)

実質的なアルバム・ラスト・ナンバーだけあって
終盤の激しい盛り上がりっぷりにはメタル魂に火が点される思いですよ。
クライマックスで迸るジャック・スターのGソロが熱い!


JACK STARR - Out of the Darkness ★★★ (2016-02-06 00:28:45)

VIRGIN STEELEを去ったジャック・スター(G)が'84年に発表した、「ギターを抱いた渡り鳥」チックなアートワークも渋いソロ・アルバム。
ここで炸裂するのは、孤高の一匹狼ばりのアグレッションとハードボイルドな哀愁を併せ持った裏路地メタル。煌びやかなネオン瞬く大都会の裏側で、強かに生き抜くアウトローが如きデンジャラスな影を背負ったサウンドは、VS時代とは相当に趣きが異なります。が、レコーディングに協力したNYを根城とするミュージシャン――当時RIOTを脱退したばかりのレット・フォリスター(Vo)に、THE RODSのリズム隊(カール・カネディはプロデューサーも兼任)――といった連中が演るのに、これほど相応しい音もありますまい!と(ちなみに当初はニール・タービンがシンガー候補だったらしい)。特にOPを飾る“CONCRETE WARRIOR”は、硬派な曲調にタイトルといい、ササクレて挑発的なG、気安く触れてくる者を威嚇するかのようなVo、パンチの効いたリズム・ワークといい、アルバムの象徴的名曲ですよ。こちとら破滅的ライフスタイルを送ったレットのテーマ曲と勝手認定してるぐらいで。
攻撃的な演奏のみならず、バラード⑤やインスト曲⑧では濃厚にGを泣かせるジャック・スターが本作の主役であることは間違いありませんが、同時に「NYメタル」アルバムとしての個性確立にはレット・フォリスターというシンガーの存在も欠かせなかったのではないかと。あたら惜しい人を亡くしたものです・・・。


JACK STARR - Out of the Darkness - Concrete Warrior ★★★ (2016-02-06 10:24:24)

まず曲名が渋い。“コンクリート・ウォリアー”ですよ。
タイトルに相応しく挑みかかって来るかのようなGリフと
力強く打ち鳴らされるリズム、その上に刺々しくも
どこか哀愁を感じさせるレット・フォリスターのシャウトが
乗っかった楽曲自体、タイトル負けしないカッコ良さです。
弾きまくりつつ、歌心も忘れないジャック・スターのGソロも◎


JACKAL - Rise ★★ (2019-03-19 00:48:12)

JACKALやNARITA等での活動を通じ、マニア筋から実力派シンガーとして高く評価されたブライアン・リッチ(故人)を擁するスウェーデンの4人組が、'90年にEMI RECORDSから発表した1stアルバム。第2次北欧メタル・ブームを代表する名盤の一つ、’93年発表の2nd『VAGUE VISION』がここ日本でも評判を呼んだことから、当時の所属レーベル、ゼロ・コーポレーションを通じて本作国内盤も発売の運びとなりました。
メジャー・リリースにも関わらず、80年代に作り溜められたデモテープ音源が勝手に流用されてしまったとのことで、音質はイマイチ。サウンドの焦点も定まっているとは言えず、またブライアンの歌唱力もこの時点ではまだまだ青さが感じられる…と、ぶっちゃけ粗削りな作品であることは隠しようもありませんが、でもそこが本作の魅力でもあるという。
全編に亘ってガムシャラに歌いまくるVoと弾きまくるGをフィーチュアした本編は、代表曲として知られる①があったかと思えば、まるでLAメタルな明るいロックンロール⑦があったりと、村野武範ばりに「レッツ・ビギン!とにかく何かを始めよう!」と思い付いたことを端から全部ブッ込んだ感じの無暗矢鱈な勢いの良さに溢れています。何より、スリリングなインスト曲⑥やテクニカルなGプレイが炸裂する疾走ナンバー⑪、緩急を効かせてラストを締め括るドラマティックなアルバム表題曲⑫辺りからは、次作にて顕在化することとなるこのバンドの才能の輝きをハッキリと見て取ることが出来ますよ。
JACKAL入門盤には2nd『VAGUE VISION』をお薦めしますが、そちらが気に入った方なら本作も押さえておいて損はない筈。


JACKAL - Rise - Rise ★★★ (2019-03-20 01:01:59)

やや粗削りながらも、北欧産らしい冷ややかな憂いを湛えたメロディと
静と動を活かしたドラマティックな曲展開を同居させた、
イントロからして名曲の風格漂うこのアルバム表題曲の完成度は
本編の中でも頭一つ抜きん出ている印象です。


JACKAL - Vague Visions ★★★ (2013-09-11 22:31:16)

ブライアン・リッチ(Vo)の訃報を知り、久々に引っ張り出して聴き直している、デンマークのJACKALが'93年に発表した2ndアルバム。
レーベルメイトのMASQUERADEと共に'94年には来日公演を行っている彼ら。当時は「クリスマス・ライブ」という趣向に尻込みして足を運ばなかったのですが、後に雑誌でライブ内容が賞賛されているのを読んで「変な見栄張らずに見に行けば良かった」と後悔しまくったことを思い出します(閑話休題)。
そんなJACKALが得意としていたのは、QUEENSRYCHEからの影響を伺わせる、タイトなリズム・ワークに下支えされた展開多めのパワー/へヴィ・メタル。そこに(ありがちなジェフ・テイト型ハイトーンではなく)ブルース・ディッキンソンばりにパワフルなブライアンの歌声と、キンキンに冷えたメロディを奏でる北欧メタル然としたドラマティックな2本のGが乗っかることで、他にはないこのバンドならではのサウンドが形成されていました。特にキレのある歌と演奏で畳み掛けるアルバム表題曲①や、劇的な構築美を宿す③⑥⑧は名曲。
いま改めて聴き直すと、実はブライアンのVo以上にツインGの存在こそがこのバンドの生命線だったことに気付かされますが、ともあれ、本作が黎明期のゼロ・コーポレーションを代表する名盤の1つであり、これを「JACKALの最高傑作」とする評価には全く以って異論ありません。
中古盤が激安価格で入手可能ですので、未聴の方は一度是非。


JACKAL(HOLLAND) (2015-11-24 22:16:02)

'85年に結成。オランダはアムステルダムを拠点に活動し、3本のデモテープを発表した後、'89年に6曲入りEP『CRY OF THE JACKAL』を500枚限定で自主制作。バンドは90年代に入って間もなく解散するも、『CRY~』はマニアの間で入手困難なお宝として評判を呼び、中古盤がかなりの高額で取引されるようになっていた。
'07年にオリジナル・メンバーだったGとDsが音頭を取ってJACKALは再結成。それに併せて、'87年と'91年のデモ音源5曲をボーナストラックとして収録した『CRY~』のリマスター盤もオフィシャル再発された。


JACKAL(HOLLAND) - Cry of the Jackal ★★ (2015-11-24 22:18:14)

その昔、どこぞの慌て者がデンマークのJACKALの作品と勘違いして購入するぐらい(ちくしょうめ・・・)似た名前のバンドが多数存在していてややこしいのですが、本作はオランダのJACKALが'89年に500枚限定でリリースし、マニアの間で評判を呼んだ6曲入りEP。
メタルバブル爛熟期真っ只中に産み落とされたのに、飾り気に乏しいプロダクションから、イキのいいツインG、そして少々頼りないハイトーンVoまで、真っ向から正統派HM一本勝負を挑んでくる本作は「バブル?何それ美味しいの?」状態。洗練とかゴージャスといったお洒落キーワード0っぷりで、GRAVESTONE、TALON等の80年代前半の独産メタル・バンドを引き合いに出して語られることの多い、浮かれトンチキな世間に背を向けたソリッド過ぎるサウンドが男らしいったら(単にお金がなかっただけかもしれませんが)。
ついでにジャーマン勢に比べると、メロディのクサ味や大仰な曲展開に対する拘りはアッサリ気味で、むしろ溌剌と突っ走る元気の良さの方が強く印象に残る辺りが、流石スピード/スラッシュ・メタルをいち早く受け入れ評価したオランダのバンドであると。特に、尻上がりにテンションを高めていく4曲目の“NIGHTMARE”と、後に続く彼らのテーマ曲とも言えそうなインスト・ナンバー“CRY OF THE JACKAL”はスリリングな名曲。
今となっては「うっかり間違えて買ってみるもんだなぁ」と感慨深い1枚です。フル・アルバムが聴いてみたかったな。


JACKAL(HOLLAND) - Cry of the Jackal - Cry of the Jackal ★★★ (2015-11-26 21:50:25)

ツインGを先頭に押し立ててスリリングに疾走する
インスト曲で、その曲調はまるでサバンナで獲物を狩る
ジャッカルの如き(見たことありませんが)。
EPのタイトルを冠されるだけあって、メロディックに
歌う2本のGが、Voの不在をまるで気にさせません。


JACKAL(HOLLAND) - Cry of the Jackal - Nightmare ★★ (2015-11-26 21:45:17)

正確なタイトルは
“NIGHTMARE(THE DISTANCE BETWEEN DREAM AND REALITY)”。
聴き始めこそ平均的な正統派HMナンバー風ですが、
Gソロ直後にテンポアップして、
ツインGにリードされる形で山あり谷あり、
ドラマティックに展開していく中盤以降が
この曲の本番です。


JAG PANZER - Ample Destruction ★★★ (2017-05-07 22:06:25)

後にSHRAPNEL RECORDSからソロ・デビューを飾るジョーイ・タフォーラ(G)が在籍していたコロラド州出身の5人組が、’84年に発表した1stアルバム。
当然ジョーイはここでも大変素晴らしい仕事ぶりを披露。もっと己の技術をひけらかして悪目立ちしているものと思いきや、エピカルな雰囲気を宿し高圧的に迫り来る正統派パワー・メタルを効果的に盛り立てるチームワーク重視のGプレイに徹しており、勿論その演奏は十分にテクニカル。ソロ作で発揮されるセンスの良さを既に垣間見せてくれるという。
しかしながら、個人的に本作の主役はバンドの中心人物たるハリー“THE TYRANT”コンクリンの存在ですよ(ちなみにTYRANTはJAG PANZER改名以前のバンド名)。TYTAN FORCEにSATAN’S HOSTにRIOT…と、一貫してUSメタル裏街道一筋に歩み続ける彼氏の必殺仕事人シンガーぶりはここでも健在です。つか「クセが強い歌声のシンガー」とのイメージがありましたけど、本作では「あ、普通に歌っても上手い人だったんだ」とこっちの認識を改めさせられる、大仰にして堂々たる歌唱を聴かせてくれていますよ。
マニア諸兄から隠れた名盤扱いされているだけあり、疾走するOPナンバー①から、7分越えのドラマティックなラス曲⑩まで捨て曲なし。中でも特筆すべきは、イントロの荒くれたGリフの刻みっぷりだけでメタル魂が燃え上がる③。ハリーのパワフルなVoと、劇的な曲展開を見事に構築する楽器陣という両者の最良の部分が抽出された名曲ではないかと。
JAG PANZER自体は離散集合を繰り返しながら現在も活動を継続している模様なれど、やはり彼らの作品で真っ先に聴くべきは本作、との意見に異議は全くございません。


JAG PANZER - Ample Destruction - Harder Than Steel ★★★ (2017-05-07 22:15:06)

「これこそUSパワー・メタルじゃい!」とばかりに
荒くれて刻まれるGリフと青筋シャウトを轟かせるVoとが、
バンカラちっくに突き進むパワー・チューン。
かと思えばジョーイ・タフォーラの流麗なGプレイを
フィーチュアしたインスト部では、2本のGが美しくハモってみせたりと、
曲展開における押しと引きの演出も巧み。
「どうせマイナーメタルでしょ」とかせせら笑っていると
US裏メタル界の番長ハリー・コンクリン先輩にドツかれる名曲です。


JAG WIRE - Made in Heaven ★★★ (2022-03-22 00:57:11)

W.A.S.P.やSTEELER、更にはWARLORD、HELLIONといったバンドを渡り歩いた、LAメタル・シーンの旅ガラス(?)リック・フォックスにより結成されたSINでしたが、バンド運営を巡る対立が火種となってクーデターが発生。リーダーのリックを放逐して主導権を奪取したその他のメンバーが、バンド名をJAG WIREと改めて'86年に発表した1stアルバムがこちらとなります。尤も、名実ともにバンドの支柱だったリックを欠いた活動は長続きせず、これが最初で最後の作品になってしまったわけですが…。
そうしたゴタゴタの末に生み落とされた本作なれど、内容はメチャ強力。歯切れ良く刻まれるGリフ、躍動感溢れるリズム、フラッシーなGプレイに、コーラスが厚く盛られたサビメロではVoが曲名をシャウトする等、サウンドは典型的な初期型LAメタル・スタイルを標榜しつつも、本編に「レッツ・パーティ!」的な能天気さは薄め。むしろKeyをアクセントに用い、程好く翳りを帯びたメロディが散りばめられた楽曲は欧州HM勢からの影響を伺わせる場面もしばしばで、その筆頭がSIN時代にもシングルとして発表されている、LAメタルの隠れた名曲と評判の疾走ナンバー“ON THE RUN”ではないかと。この必殺の名曲を皮切りに、泣きを湛えたドラマティックなバラード“MADE IN HEAVEN”、KeyとGが火花を散らしながらスリリングに駆け抜ける“TAKEIN’ THE CITY”といった逸品が次々に畳み掛けてくるアルバム後半のカッコ良さは只事じゃありませんよ。(ちなみにオリジナル盤と再発盤とでは曲順が異なっている)
「幻の名盤」扱いが決して過大評価ではなかったと心底納得できる1枚。再発に感謝です。


JAG WIRE - Made in Heaven - On the Run ★★★ (2022-03-23 00:05:44)

歯切れ良く刻まれるリフ&リズムに乗せて、憂いを帯びたメロディが
駆け抜ける様は、この曲が「LAメタルの隠れた名曲」扱いされているのも
納得のカッコ良さ。オルガンをフィーチュアしてより欧州HMからの
影響が色濃く薫るSINバージョンも乙な味わいなので、
聴き比べてみるのも一興かと。


JAG WIRE - Made in Heaven - Takin' the City ★★★ (2022-03-23 00:10:03)

鋭角的に刻まれるGリフ、単なる彩りの域を超えてGとバトルを
繰り広げるKey、Voがアグレッシブに歌う憂いを帯びたメロディといい
名曲と名高い“ON THE RUN”にも匹敵するカッコ良さを誇る疾走ナンバー。
むしろこっちの方が良いという人がいても不思議じゃないぐらいですよ。


JAGUAR - Power Games ★★ (2007-04-25 21:40:00)

我が事ながら一体いつ購入したのかさっぱり思い出せない、イギリスはブリストル出身の
4人組HMバンドが'84年に発表した1stアルバム。
NEAT RECORDS、イマサンな音質、リフ主体で突っ走るシンプルな楽曲、如何にも英国的な
ドンヨリとした湿り気を帯びたメロディ、篭り気味の声質のVoが歌う煮え切らない歌メロetc・・・と、
アルバム全体から「これでもか!」というぐらいNWOBHM臭を発散している本作だが、
ここに収められている楽曲には、へヴィ・メタルがどんどん先鋭化していって、
やがてスラッシュ・メタル誕生へと行き着く過渡期的な荒々しさが満ち満ちている。
特に、冒頭から矢継ぎ早に繰り出されるスピード・チューン3連発は強力で、なるほど、本作が発表当時、
「MOTORHEADの“ACE OF SPADES"やEXCITERの“HEAVY METAL MANIAC"級のインパクトを与えた」という話も
あながちホラじゃないのかな、と納得するに十分なカッコ良さを誇る(知名度じゃ全然勝負にならないけどね)
また彼らの場合、スピードのみで押し切るのではなく、へヴィ・バラードの④や、ドラマチックな曲展開が
魅力の⑥、よく動き回るBラインがIRON MAIDENを思わせる⑧といった、メロディを前面に押し出した
「聴かせる」タイプの楽曲で足元をしっかりと固めている点もナイス。
ヘヴィ・メタルと呼ぶには荒々しく、スラッシュ・メタルと呼ぶにはメロディアス。これぞスピード・メタルの力作。


JAMES CHRISTIAN - Meet The Man ★★★ (2020-09-08 01:04:48)

1stソロ『RUDE AWAKENING』がゼロ・コーポレーションからリリースされた当時は、ジェイムズ・クリスチャンというアーティストに全く興味がなかったのでスルーしてしまったのですが、その後HOUSE OF LORDSで快作を連発する彼の実力に瞠目させられ、’06年発表のこの2ndソロを慌ててショップへ買いに走りましたよ。
優秀なシンガーであるだけでなく、ジェイムズ自身が素晴らしい楽曲を書けるソングライターであることに加えて、本作はファブリツィオ・V・グロッシーがプロデュースを手掛け、スタン・ブッシュや、マーク・フリーへの楽曲提供、VENUS & MARSでの活動で知られるジュディス&ロビンのランダル母娘といった百戦錬磨の作曲陣が参加しているのですから、「それもう絶対に大当たりの奴じゃん」と聴く前から期待値がガン上がり。そして実際聴いてみても、高まりきったこちらのテンションにきっちり応えてくれる出来栄えをアルバムは誇っており、完成度に関して言えば、同時期にリリースされたHOUSE OF LORDSの再結成作『THE POWER AND MYTH』をも上回っているんじゃないでしょうか。
特にランダル母娘との共作曲で、ヴァースからコーラスへ向かって哀愁度が上昇していく②や、哀愁のメロディをフラッシーに弾きまくるGの活躍も印象的な⑦、スタン・ブッシュが手掛け、ジェイムズの奥方であるロビン・ベックがバックVoとして参加するキャッチーで爽快な⑧は、この組み合わせにこちらが期待する要素をギュッと凝縮したようなメロハーの逸品です。(ちなみにXのPATAのペンによるバラード⑤も収録)
つくづく『RUDE~』購入をスルーしてしまった己の所業を悔やまずにはいられない1枚。


JAMES CHRISTIAN - Meet The Man - Know You in the Dark ★★★ (2020-09-09 00:49:59)

聴き進むに従って哀メロ濃度が高まっていき、
それが頂点に達するコーラスの素晴らしさは流石ランダル母娘のお仕事。
情感豊かなジェイムズ・クリスチャンの熱唱も相俟って
実にグッとくる楽曲に仕上がっています。


JAMES CHRISTIAN - Meet The Man - Strong Enough ★★★ (2020-09-09 00:53:48)

明るく爽やかな曲調の中にも仄かな哀愁と
強力なフックを忍ばせるツボを心得た作曲術は
流石スタン・ブッシュ先生。
ロビン・ベックのバックVoも楽曲の爽快感盛り上げに
貢献してくれています。


JAMES CHRISTIAN - Rude Awakening ★★★ (2021-03-16 00:16:00)

3rd『DEMONS DOWN』(’92年)を最後にHOUSE OF LORDSが事実上の解散状態に陥ったことを受けて、フロントマンだったジェイムズ・クリスチャンが’94年に発表した1stソロ・アルバム。当時はゼロ・コーポレーションからのリリースでしたが、後にNIPPON CROWNからボーナストラック6曲を追加収録する形でリイシューもされています。(今じゃどちらも入手困難なのが残念)
華を添えるブルース・ゴウディ、マイク・スラマー、ミッチ・ペリーといったギタリスト達のゲスト参加に加え、作曲面ではHOUSE OF LORDS時代からの付き合いであるソングライター、マーク・ベイカーの助力を得て制作されている本作で聴けるのは、まさしくそのHOUSE OF LORDS時代の作風を忠実に受け継いだ、ほんのりブルージーな味付けも施されたメロディアスHRサウンド。
ほぼバラード系の楽曲の固め打ち、全体的にHR/HM色は薄めな仕上がりながら、だからこそジェイムズのエモーショナルな歌声が映える。立ち上がり①こそ多少地味な印象でも、「ドラマかCMで主題歌に起用されてませんでした?」と思わず考え込んでしまうぐらいフック効きまくりの名曲②で早くもクライマックスを迎えて以降は、これまた高いヒット・ポテンシャルを感じさせる③、躍動感溢れるロック・チューン⑦、物悲しいイントロからドラマティックに盛り上がっていく⑧等、本編には秀逸な楽曲が目白押しです。
スタン・ブッシュやランダル母娘といった腕利き作曲家が関与した2ndソロ『MEET THE MAN』も大変な傑作でしたが、本作だって負けず劣らず、探し出してチェックする価値は十分にある1枚かと。