『FEAR OF THE DARK』を区切りに、ずんどこ大作志向を鮮明にしていったIRON MAIDENのアルバムには今ひとつ入れ込めず、今回も新作は2枚組、しかも18分越えの超大作まで収録!とアナウンスされた時から「こりゃあ期待できそうにねえなぁ」と、どうにもテンションが上がらずにいたのですが聴いて吃驚。他の方のレビュー通り、とても良く出来た作品じゃありませんか。 まず2枚組と言っても、1枚の収録曲は5、6曲で、トータル・ランニング・タイムも90分(つまり1枚平均45分)と、聴き易いボリュームに抑えられている点が○。更に楽曲の質も高いレベルをキープ。エイドリアン・スミスらしいHMナンバー“SPEED OF LIGHT”や、エピカルな曲調とライブ映えしそうなコーラスにアガりまくる“THE RED AND THE BLACK”のカッコ良さはどうだ。目玉である18分越えの大作“EMPIRE OF THE CLOUD”も、情景描写に優れた劇的なメロディ/アレンジ/曲展開とが上質な映画観賞の如き感覚をもたらしてくれてダレ場ナッシング。 それらを援護するのがブルース・ディッキンソンの歌いっぷりの良さで、長尺をがっちりと下支えする彼の雄々しい歌唱を聴くにつけ、これが本当に体内をガン細胞に蝕まれていた男の声か?と。 まぁ、ものによっては中弛みを感じるというか、インスト・パートもっと短縮できるんじゃね?とか思ってしまう楽曲もなくはないのですが、派手さよりも、冗長さと紙一重の堅実性重視で楽曲を盛り上げていくのが今のIRON MAIDENスタイルですからね・・・。 ともあれ、ここまで楽しめた彼らのアルバムは久し振り。入門盤に打って付け・・・というよりも、最近IRON MAIDENにご無沙汰だった古参ファンにこそお薦めする1枚ではないかと。
強烈な横ノリ感を生み出すGリフからインプロヴァイズされたGソロまで、トニー・アイオミばりのスモーキーなGワークで「黒いアイオミ」の異名を取る黒人ギタリスト、アルフレッド・モーリス三世率いるドゥーム・メタル・バンドが、'13年に発表した5th(4th?)アルバム。 BLACK SABBATHの名曲をバンド名に戴くだけあって(そもそもサバスのトリビュート・バンドとして活動をスタート)、志向する音楽性も、自分のようなこの手のジャンルに疎い人間でも「おぉ、ドゥームだ」と一聴瞭然なぐらい、コッテコテのドゥーム・メタルをプレイ。 低音から高音までシアトリカルに行き来する様が、さながら「邪教の司祭」といった趣きのVoと、ドライヴしまくるBに、振り下ろされるハンマーの如きDsとが、収録曲1つ1つのキャラ立ちを明確にすると共に、アップテンポの⑥や緩急を飲み込んだ⑧等を本編に織り交ぜることで、かったるいドゥームにありがちな冗長感を排除。サウンドを重厚且つダイナミックに引き締めます。 ピアノをアクセント的に用いて、アルバムをドラマティックに締め括る名曲⑨の荘厳な存在感が、本編のクオリティの高さを雄弁に物語る1枚でした。
GREAT WHITEのフロントマンとして、現在もその看板を守り続けるジャック・ラッセル(Vo)が、故ボブ・キューリック&ビリー・シャーウッドをプロデューサー兼曲作りのパートナーに招いてレコーディングを行い、'02年に発表した2枚目のソロ・アルバム。 GREAT WHITE健在時に制作され、その息吹も感じられる仕上がりだった1stソロ『SHELTER ME』(’96年)に比べると、主要メンバーが櫛の歯が抜けるように欠けていき、バンドが実質的な解散状態に陥ってしまった時期にレコーディングが進められている本作は、今後ソロ・アーティストとして自身が進むべき方向性を模索するかの如く、ピアノやアコースティック・ギター、爽やかなハーモニーとに彩られたバラード~スロー・ナンバー系が大半を占め、よりジャックの「歌」に焦点を絞ったライトでメロウ、AOR寄りのサウンドが託されています(敬愛する実父の死もこうした作風に影響を与えた模様) とはいえ、もともと歌唱能力の高さに関して定評のある御仁ゆえ、この仕上がりはむしろ個人的にはばっち来い。とりわけジャックのエモーショナルな歌いっぷりが映える、GYPSY KINGSの“INSPIRATION”を思わすイントロから哀愁をたっぷり帯びた曲調にグッと来る③や、もし80年代にシングル・カットされたならヒット・チャートを賑わせたって不思議じゃない⑤辺りは、ラッセル/キューリック/シャーウッドという座組でここまでやってくれるんかいと、正直ビックリでしたよ(と同時にみくびって申し訳ないとも) 今後またソロ・アルバムを制作することがあるなら、是非またこの路線でヨロシク…とお願いしたくなる、実に味わい深い1枚です。
認知症と多系統萎縮症の悪化でツアーから身を引くというニュースを目にしたと思ったら、それから殆ど間を置かずに飛び込んできた「急死」の報には驚かざるを得なかったジャック・ラッセル(Vo)。浮き沈みの激しいミュージシャン稼業を送り、バンド名の使用権を巡ってかつての盟友マーク・ケンドールと訴訟にまで発展した時期もあったという彼氏が、JACK RUSSEL’S GREAT WHITE名義で'17年に発表したアルバムがこちら。 GREAT WHITEの看板掲げて制作されているので、本作から流れてくるのは当然過去作の延長線上にある、ブルージーなエッセンスを盛り込んだHRサウンド。マークのGの不在ゆえか、はたまた歌を中心に据え、全体的に落ち着いたトーンが支配的なこじんまりとした作風ゆえか、GREAT WHITEの新作というよりは「ジャック・ラッセルの3枚目のソロ・アルバム」を聴いているような気分になる仕上がりではあるものの、彼のソロ作…特に2nd『FOR YOU』(’04年)を愛聴している身には落胆に当たらず。むしろ望むところですよ。 流石に“ALWAYS”級の名曲は見当たらないまでも、独特のハスキー・ボイスは年を経ても全く衰えることなく健在。哀愁に満ちたOPナンバー①、後期GREAT WHITEに通じる②④、アーシーなバラード⑥といった佳曲は流石の歌いっぷりでエモーショナルに酔わせてくれますし、妖しげな雰囲気漂わすアルバム表題曲⑦、テクニカルなGの存在が映えるアップテンポのHRナンバー⑨のような新味を感じさせる楽曲も魅力的です。 JACK RUSSEL’S GREAT WHITEのポテンシャルが十二分に伝わってくる力作だっただけに、これが最初で最後のフル・アルバムになってしまったことが残念でなりませんね。
'85年に結成。オランダはアムステルダムを拠点に活動し、3本のデモテープを発表した後、'89年に6曲入りEP『CRY OF THE JACKAL』を500枚限定で自主制作。バンドは90年代に入って間もなく解散するも、『CRY~』はマニアの間で入手困難なお宝として評判を呼び、中古盤がかなりの高額で取引されるようになっていた。 '07年にオリジナル・メンバーだったGとDsが音頭を取ってJACKALは再結成。それに併せて、'87年と'91年のデモ音源5曲をボーナストラックとして収録した『CRY~』のリマスター盤もオフィシャル再発された。
その昔、どこぞの慌て者がデンマークのJACKALの作品と勘違いして購入するぐらい(ちくしょうめ・・・)似た名前のバンドが多数存在していてややこしいのですが、本作はオランダのJACKALが'89年に500枚限定でリリースし、マニアの間で評判を呼んだ6曲入りEP。 メタルバブル爛熟期真っ只中に産み落とされたのに、飾り気に乏しいプロダクションから、イキのいいツインG、そして少々頼りないハイトーンVoまで、真っ向から正統派HM一本勝負を挑んでくる本作は「バブル?何それ美味しいの?」状態。洗練とかゴージャスといったお洒落キーワード0っぷりで、GRAVESTONE、TALON等の80年代前半の独産メタル・バンドを引き合いに出して語られることの多い、浮かれトンチキな世間に背を向けたソリッド過ぎるサウンドが男らしいったら(単にお金がなかっただけかもしれませんが)。 ついでにジャーマン勢に比べると、メロディのクサ味や大仰な曲展開に対する拘りはアッサリ気味で、むしろ溌剌と突っ走る元気の良さの方が強く印象に残る辺りが、流石スピード/スラッシュ・メタルをいち早く受け入れ評価したオランダのバンドであると。特に、尻上がりにテンションを高めていく4曲目の“NIGHTMARE”と、後に続く彼らのテーマ曲とも言えそうなインスト・ナンバー“CRY OF THE JACKAL”はスリリングな名曲。 今となっては「うっかり間違えて買ってみるもんだなぁ」と感慨深い1枚です。フル・アルバムが聴いてみたかったな。
いくつものバンド/プロジェクトを渡り歩き、現在はソロ・シンガーとしても成功を収める実力派マイケル・ボーマン(Vo)と、実兄のダーク・ボーマン(G)、元MAD MAXのアクセル・クルーズ(Ds)らにより結成されたドイツ出身のJADEAD HEARTが’94年に発表した1stアルバム。 日本盤はゼロ・コーポレーションからのリリースで、同じ時期にやはりゼロから発売となったFATES WARNINGの『INSIDE OUT』(’94年)とごっちゃになってしまい「プログレ作品だっけ?」ってな誤った印象を抱いていたのですが、(当然そんなことはなく)本作に託されているのはアメリカンな抜けの良さ&分厚いハーモニーと、ヨーロピアンな叙情性を併せ持ったメロディアスHRサウンド。要所で美しく煌めくアコースティックギターを有用したアレンジも冴えており、フック満載の楽曲作りから、この頃既にLETTER XやCASANOVA等での活動を通じて歌唱力の確かさをHR/HMシーンに知らしめていた熱い歌いっぷりに至るまで、マイケルが自身の才を存分に振るえる環境が整ったわけですから、そらクオリティの高い内容に仕上がることは自明の理であったと。 重厚なOPナンバー①に始まり、曲調とマイケルの声質が相俟って猛烈にBON JOVIっぺー②、ドラマティックな⑥、キャッチーなハードポップ⑧、哀愁爆発バラード⑨、欧と米のエッセンスをバランス良く取り込んだ⑩、“I WAS MADE IN LOVIN’ YOU”そっくりな(KISSトリビュート・ソング?)⑬…といった具合に、本編は捨て曲の見当たらない充実作だけに、ゼロ・コーポレーション閉鎖後、国内盤が廃盤のまま放置されているのは勿体ない気がしますね。
W.A.S.P.やSTEELER、更にはWARLORD、HELLIONといったバンドを渡り歩いた、LAメタル・シーンの旅ガラス(?)リック・フォックスにより結成されたSINでしたが、バンド運営を巡る対立が火種となってクーデターが発生。リーダーのリックを放逐して主導権を奪取したその他のメンバーが、バンド名をJAG WIREと改めて'86年に発表した1stアルバムがこちらとなります。尤も、名実ともにバンドの支柱だったリックを欠いた活動は長続きせず、これが最初で最後の作品になってしまったわけですが…。 そうしたゴタゴタの末に生み落とされた本作なれど、内容はメチャ強力。歯切れ良く刻まれるGリフ、躍動感溢れるリズム、フラッシーなGプレイに、コーラスが厚く盛られたサビメロではVoが曲名をシャウトする等、サウンドは典型的な初期型LAメタル・スタイルを標榜しつつも、本編に「レッツ・パーティ!」的な能天気さは薄め。むしろKeyをアクセントに用い、程好く翳りを帯びたメロディが散りばめられた楽曲は欧州HM勢からの影響を伺わせる場面もしばしばで、その筆頭がSIN時代にもシングルとして発表されている、LAメタルの隠れた名曲と評判の疾走ナンバー“ON THE RUN”ではないかと。この必殺の名曲を皮切りに、泣きを湛えたドラマティックなバラード“MADE IN HEAVEN”、KeyとGが火花を散らしながらスリリングに駆け抜ける“TAKEIN’ THE CITY”といった逸品が次々に畳み掛けてくるアルバム後半のカッコ良さは只事じゃありませんよ。(ちなみにオリジナル盤と再発盤とでは曲順が異なっている) 「幻の名盤」扱いが決して過大評価ではなかったと心底納得できる1枚。再発に感謝です。
1stソロ『RUDE AWAKENING』がゼロ・コーポレーションからリリースされた当時は、ジェイムズ・クリスチャンというアーティストに全く興味がなかったのでスルーしてしまったのですが、その後HOUSE OF LORDSで快作を連発する彼の実力に瞠目させられ、’06年発表のこの2ndソロを慌ててショップへ買いに走りましたよ。 優秀なシンガーであるだけでなく、ジェイムズ自身が素晴らしい楽曲を書けるソングライターであることに加えて、本作はファブリツィオ・V・グロッシーがプロデュースを手掛け、スタン・ブッシュや、マーク・フリーへの楽曲提供、VENUS & MARSでの活動で知られるジュディス&ロビンのランダル母娘といった百戦錬磨の作曲陣が参加しているのですから、「それもう絶対に大当たりの奴じゃん」と聴く前から期待値がガン上がり。そして実際聴いてみても、高まりきったこちらのテンションにきっちり応えてくれる出来栄えをアルバムは誇っており、完成度に関して言えば、同時期にリリースされたHOUSE OF LORDSの再結成作『THE POWER AND MYTH』をも上回っているんじゃないでしょうか。 特にランダル母娘との共作曲で、ヴァースからコーラスへ向かって哀愁度が上昇していく②や、哀愁のメロディをフラッシーに弾きまくるGの活躍も印象的な⑦、スタン・ブッシュが手掛け、ジェイムズの奥方であるロビン・ベックがバックVoとして参加するキャッチーで爽快な⑧は、この組み合わせにこちらが期待する要素をギュッと凝縮したようなメロハーの逸品です。(ちなみにXのPATAのペンによるバラード⑤も収録) つくづく『RUDE~』購入をスルーしてしまった己の所業を悔やまずにはいられない1枚。
3rd『DEMONS DOWN』(’92年)を最後にHOUSE OF LORDSが事実上の解散状態に陥ったことを受けて、フロントマンだったジェイムズ・クリスチャンが’94年に発表した1stソロ・アルバム。当時はゼロ・コーポレーションからのリリースでしたが、後にNIPPON CROWNからボーナストラック6曲を追加収録する形でリイシューもされています。(今じゃどちらも入手困難なのが残念) 華を添えるブルース・ゴウディ、マイク・スラマー、ミッチ・ペリーといったギタリスト達のゲスト参加に加え、作曲面ではHOUSE OF LORDS時代からの付き合いであるソングライター、マーク・ベイカーの助力を得て制作されている本作で聴けるのは、まさしくそのHOUSE OF LORDS時代の作風を忠実に受け継いだ、ほんのりブルージーな味付けも施されたメロディアスHRサウンド。 ほぼバラード系の楽曲の固め打ち、全体的にHR/HM色は薄めな仕上がりながら、だからこそジェイムズのエモーショナルな歌声が映える。立ち上がり①こそ多少地味な印象でも、「ドラマかCMで主題歌に起用されてませんでした?」と思わず考え込んでしまうぐらいフック効きまくりの名曲②で早くもクライマックスを迎えて以降は、これまた高いヒット・ポテンシャルを感じさせる③、躍動感溢れるロック・チューン⑦、物悲しいイントロからドラマティックに盛り上がっていく⑧等、本編には秀逸な楽曲が目白押しです。 スタン・ブッシュやランダル母娘といった腕利き作曲家が関与した2ndソロ『MEET THE MAN』も大変な傑作でしたが、本作だって負けず劣らず、探し出してチェックする価値は十分にある1枚かと。
バンド名はジャバン?ギャバン?(宇宙刑事?)どう読む?と思ったら、どうもドイツ語で「ジャワ」と読む模様。メロディ愛好家から地味に寵愛を受ける名盤『SOMEWHERE IN THE NIGHT』1枚を残して解散してしまい、その後はメンバーの動向もよう分からんかった謎多きドイツの6人組が’92年に残した最初で最後のアルバム。リリース当時BURRN!!誌のレビューで高得点を叩き出していたので、「じゃあ日本盤も出るだろ」と高を括っていたのですが、いつまで経ってもその気配はなく、そうこうする内にバンドが解散してしまったとの噂を耳にして、仕方ないので輸入盤を買いに走りましたよ。 雑誌レビューではRISING FORCEが比較対象として挙げられていましたが、個人的にはそこまでバリバリの様式美HM路線な印象はなく、煌びやかなKeyをフィーチュアして、哀愁と透明感を湛えた音像は北欧ハードポップに近い感じ。かと思えば、ジェフ・スコット・ソート似のVoの声質が、サウンドの繊細さからするとやや太めな辺りがゲルマン風味も主張しているという。しかしハード・ナンバーからバラードまでエモーショナルに歌いこなす、このシンガーの歌唱能力の高さは保証できますし、彼が歌うクラシカルな風情を湛えた⑥、儚く爪弾かれるアコギをバックに切々と歌い上げる⑫といったバラード2曲は、メロディの泣きっぷりといいドラマティックな曲展開といい、まさに珠玉。そして当然、テクニカルなGをお供に涼し気に駆け抜けていく①のようなHRナンバーも魅力的です。 今となっては余り顧みられる機会のない1枚ですが、メロディ愛好家を自認する方なら一度ぐらい聴いておいて損はないかと。
ソロ・アーティストとしてアルバム・リリースやツアーを行う傍ら、リタ・フォード、VIXEN、MR. BIGといったバンドに楽曲提供を行う等、80年代からシンガー/ソングライターとしても活躍してきたジェフ・パリスが、'93年に乞われてイギリスのNOW AND THEN RECRODSから発表した3rdソロ・アルバム。 プロデュースからエンジニアリング、果ては全パートの楽器演奏まで一人でこなすマルチ・プレイヤーぶりを発揮してレコーディング作業を敢行。それに関してはご本人が「エナジーとアイデアがあればどんな状況でもアルバム制作は可能。大金は必要はない」との男前な発言を残してくれています。カッコイイじゃないのさ。 収録曲は、共作者としてMR. BIG、売れっ子セッション・マンのマイケル・トンプソン、KISSのポール・スタンレー、BAD ENGLISHのリッキー・フィリップスら豪華な面子がクレジットされていて、気の利いたアレンジから、痒い所に手の届くメロディ展開に至るまで、長年かけて培われたソングライターとしての腕前が存分に振るわれた仕上がり(歌の上手さに関しては言うまでもありません)。MR. BIGの1st『LIVE AND LEARN』にも収録されたゴージャスなOPナンバー①や、80年代ならヒット・チャートを賑わしていても不思議ではないバラード⑩辺りも素晴らしいのですが、個人的に特に一押ししたいのが⑧。知る人ぞ知る才人ブレット・ウォーカーとの共作で、胸打つ哀愁の名曲っぷりには「この顔合わせによるの楽曲がもっと聴いてみたかった…」と、つくづくブレットの早逝が惜しまれます。 もう長いこと日本盤リリースと縁がありませんが、ご健在でいらっしゃるのでしょうか?
これまで数多のバンド/プロジェクトをマイク片手に渡り歩き、様式美HMからメロハーまで「何でもこざれ」で歌いこなしてきた実力派シンガー、ジェフ・スコット・ソートが'02年に発表した、ソロ名義では8年ぶりとなる2ndアルバム。 本作で聴けるのは、まさにアルバム・タイトルを地で行く「プリズム」の如き煌めきを放つ、美しく抒情的なメロディアスHRサウンド。JOURNEYの名曲“SEND HER MY ANGEL”のカヴァーも含め、まるで喉を傷めてバンドを脱退したスティーヴ・オウジェリーの後任として、数年後にジェフ自身がJOURNEYに参加することとなるのを予感させるような作風と言うべきか。そんなわけで、OPナンバーらしい躍動感溢れるエネルギッシュな曲調に、テクニカルなGプレイが華を添える①にて幕が上がる本編は、バラード~ミディアム・テンポのナンバーを中心にじっくりと「歌」を聴かせに掛かる構成で、RISING FORCE時代のような様式美HM路線を期待する向きにうっちゃりをカマしてきます。 しかしその一方、感動的な盛り上がりっぷりが胸を打つ②、黒っぽさ全開で、グレン・ヒューズにも匹敵するんじゃなかろうか?というファンキー且つソウルフルなフィールが痛快な⑤、打って変わって哀愁ダダ漏れのドラマティックな(イングヴェイ時代を思い起こさせる)⑥等々、収録楽曲の曲調は結構多彩。その上、それらを歌い上げるジェフの熱くエモーショナルな歌唱がサウンドに陰影とダイナミズムを付与してくれているため、右から左へまったりと流れて行ってしまうような緩さは皆無という。 ソングライターとしてもジェフ・スコット・ソートの才能が存分に発揮された1枚ですね。
ジェス・ハーネル(Vo)が'95年に制作したソロ・アルバム。「それって誰よ?」という人に説明させて頂くと、ジェス・ハーネルはHR/HM冬の時代にLAからデビューを飾り、2枚のアルバムを発表してメロディ愛好家からちょっぴり注目を集めたメロディアスHRバンド、LOUD & CLEARのフロントマン。本作はその彼氏の1stソロ・アルバムで、制作当時はアメリカの音楽シーンの状況悪化もあって自主制作の環境に留まったようですが、LOUD & CLEARが評判を呼んだことも手伝って、'98年にはマーキー/アヴァロン・レーベルを通じて日本盤発売が実現しています。(THE BEATLESの代表曲の一つ“IN MY LIFE”や、ジェフ・テイトになりきった歌いっぷりが微笑ましいQUEENSRYCHEの“WALK IN THE SHADOWSのカヴァー等も収録) なので聴き手としてはついLOUD & CLEAR路線の溌剌としたポップ・メタルを期待してしまうところなれど、1曲目がいきなりピアノ・バラードという構成からもお察しの通り、ここで披露されているのは歌が主役のAOR/産業ロック・サウンド。メタル要素は殆ど見当たらないので要注意。とはいえ、ジェスのハイトーンVoを生かした楽曲のクオリティはいずれも高く、特にSIGNALの名曲“DOES IT FEEL LIKE LOVE?”のカヴァー⑤、物悲しいアコースティック・バラード⑥、本編中においては比較的ロック色強めのメロハー・チューン⑦といった逸曲が連続するアルバム中盤にはグッと惹きつけられましたよ。 近頃はとんと中古盤屋でも見かけることがなくなってしまいましたが、掘り出し物をお探しのメロディ愛好家諸氏にはお薦めの一作じゃないでしょうか。