バンド名はジャバン?ギャバン?(宇宙刑事?)どう読む?と思ったら、どうもドイツ語で「ジャワ」と読む模様。メロディ愛好家から地味に寵愛を受ける名盤『SOMEWHERE IN THE NIGHT』1枚を残して解散してしまい、その後はメンバーの動向もよう分からんかった謎多きドイツの6人組が’92年に残した最初で最後のアルバム。リリース当時BURRN!!誌のレビューで高得点を叩き出していたので、「じゃあ日本盤も出るだろ」と高を括っていたのですが、いつまで経ってもその気配はなく、そうこうする内にバンドが解散してしまったとの噂を耳にして、仕方ないので輸入盤を買いに走りましたよ。 雑誌レビューではRISING FORCEが比較対象として挙げられていましたが、個人的にはそこまでバリバリの様式美HM路線な印象はなく、煌びやかなKeyをフィーチュアして、哀愁と透明感を湛えた音像は北欧ハードポップに近い感じ。かと思えば、ジェフ・スコット・ソート似のVoの声質が、サウンドの繊細さからするとやや太めな辺りがゲルマン風味も主張しているという。しかしハード・ナンバーからバラードまでエモーショナルに歌いこなす、このシンガーの歌唱能力の高さは保証できますし、彼が歌うクラシカルな風情を湛えた⑥、儚く爪弾かれるアコギをバックに切々と歌い上げる⑫といったバラード2曲は、メロディの泣きっぷりといいドラマティックな曲展開といい、まさに珠玉。そして当然、テクニカルなGをお供に涼し気に駆け抜けていく①のようなHRナンバーも魅力的です。 今となっては余り顧みられる機会のない1枚ですが、メロディ愛好家を自認する方なら一度ぐらい聴いておいて損はないかと。
ソロ・アーティストとしてアルバム・リリースやツアーを行う傍ら、リタ・フォード、VIXEN、MR. BIGといったバンドに楽曲提供を行う等、80年代からシンガー/ソングライターとしても活躍してきたジェフ・パリスが、'93年に乞われてイギリスのNOW AND THEN RECRODSから発表した3rdソロ・アルバム。 プロデュースからエンジニアリング、果ては全パートの楽器演奏まで一人でこなすマルチ・プレイヤーぶりを発揮してレコーディング作業を敢行。それに関してはご本人が「エナジーとアイデアがあればどんな状況でもアルバム制作は可能。大金は必要はない」との男前な発言を残してくれています。カッコイイじゃないのさ。 収録曲は、共作者としてMR. BIG、売れっ子セッション・マンのマイケル・トンプソン、KISSのポール・スタンレー、BAD ENGLISHのリッキー・フィリップスら豪華な面子がクレジットされていて、気の利いたアレンジから、痒い所に手の届くメロディ展開に至るまで、長年かけて培われたソングライターとしての腕前が存分に振るわれた仕上がり(歌の上手さに関しては言うまでもありません)。MR. BIGの1st『LIVE AND LEARN』にも収録されたゴージャスなOPナンバー①や、80年代ならヒット・チャートを賑わしていても不思議ではないバラード⑩辺りも素晴らしいのですが、個人的に特に一押ししたいのが⑧。知る人ぞ知る才人ブレット・ウォーカーとの共作で、胸打つ哀愁の名曲っぷりには「この顔合わせによるの楽曲がもっと聴いてみたかった…」と、つくづくブレットの早逝が惜しまれます。 もう長いこと日本盤リリースと縁がありませんが、ご健在でいらっしゃるのでしょうか?
これまで数多のバンド/プロジェクトをマイク片手に渡り歩き、様式美HMからメロハーまで「何でもこざれ」で歌いこなしてきた実力派シンガー、ジェフ・スコット・ソートが'02年に発表した、ソロ名義では8年ぶりとなる2ndアルバム。 本作で聴けるのは、まさにアルバム・タイトルを地で行く「プリズム」の如き煌めきを放つ、美しく抒情的なメロディアスHRサウンド。JOURNEYの名曲“SEND HER MY ANGEL”のカヴァーも含め、まるで喉を傷めてバンドを脱退したスティーヴ・オウジェリーの後任として、数年後にジェフ自身がJOURNEYに参加することとなるのを予感させるような作風と言うべきか。そんなわけで、OPナンバーらしい躍動感溢れるエネルギッシュな曲調に、テクニカルなGプレイが華を添える①にて幕が上がる本編は、バラード~ミディアム・テンポのナンバーを中心にじっくりと「歌」を聴かせに掛かる構成で、RISING FORCE時代のような様式美HM路線を期待する向きにうっちゃりをカマしてきます。 しかしその一方、感動的な盛り上がりっぷりが胸を打つ②、黒っぽさ全開で、グレン・ヒューズにも匹敵するんじゃなかろうか?というファンキー且つソウルフルなフィールが痛快な⑤、打って変わって哀愁ダダ漏れのドラマティックな(イングヴェイ時代を思い起こさせる)⑥等々、収録楽曲の曲調は結構多彩。その上、それらを歌い上げるジェフの熱くエモーショナルな歌唱がサウンドに陰影とダイナミズムを付与してくれているため、右から左へまったりと流れて行ってしまうような緩さは皆無という。 ソングライターとしてもジェフ・スコット・ソートの才能が存分に発揮された1枚ですね。
元GREAT KING RATのリーフ・スンディン(Vo)ら、スウェーデン人ミュージシャンを引き連れて'97年に行われた、ソロとしては初めてのジョン・ノーラム(G)の来日公演の模様を収めた実況録音盤。発売元は勿論「LIVE IN JAPAN商法」でお馴染みのZEROコーポレーションですよ。 “FACE THE TRUTH”で幕が上がり“SCREAM OF ANGER”にて幕が降りる本編は、CDの容量限界ギリギリまで使って、4枚のソロ作(1st~4th)及びEUROPE時代の楽曲から万遍なくチョイスされていた当日のライブのセットリストをほぼ忠実に再現。 選曲はこれがベストか?と問われれば「そうでもない」と即答できますし、何よりバンドと観衆の掛け合いの類が殆どない、ソリッド過ぎる作りも好みが分かれるところではありますが。 それでも、ギターを身体器官の一部のように自在に操るジョン・ノーラムのGプレイ、ヨラン・エドマンやケリー・キーリングは勿論のこと、グレン・ヒューズ時代の楽曲すら不安げなく歌いこなすリーフ・スンディンの熱唱等、白熱のパフォーマンスの前にはそうした不満もフェードアウトしていきます。リリース当時はあまり良い評判を耳にしなかった3rdや4thからの楽曲も、ここで聴く分には十二分にカッコイイ。 ジョン・ノーラムのソロ時代を手っ取り早く振り返りたいという向きにお薦めの1枚かと。
北欧メタルの持つ透明感と、ゲイリー・ムーア~THIN LIZZY的HRサウンドとが巧みに溶け合わされた、ソロ・アーティスト、ジョン・ノーラムの最高傑作の呼び声も高い'92年発表の2ndソロ・アルバム。 楽曲のクオリティのみならず、それを支える参加ミュージシャン達も結構豪華。囁かれていた不仲説を粉砕するEUROPEの盟友ジョーイ・テンペスト(Vo)、DON DOKKEN時代の仕事仲間ビリー・ホワイト(G)とピーター・バルテス(B)、そしてアルバムのメイン・シンガーを務めるのは歌神グレン・ヒューズ(Vo)・・・どうです、この布陣。まるでジョン・ノーラムというギタリストの過去/現在/未来を総括するかのようではありませんか。 特にグレンのソウルフルなVoは、アルバムの品質のみならず「格」の向上にも大きく貢献。とても絶賛ヤク中街道邁進中(当時)とは思えぬ、張りも伸びも艶もある歌声を終始響かせていて、流石THE GOD OF VOICE。中でもハード・ドライヴィンに本編OPを飾るアルバム表題曲①は名曲中の名曲ですよ。(ぶっちゃけ、この曲のインパクトが本編の印象を霞ませているきらいもあるのですが) 他にも哀愁のバラード③、ジョーイ・テンペストのエモーショナルな歌声が彩を添える⑥(浮いてないよねぇ)、HUGHES/THRALLコンビ作曲の⑩(PHENOMENAのカヴァー)等、優れた楽曲が目白押しなので、ジョン・ノーラムのソロ作に触れるのならば、まずはこのアルバムからどうぞ。
コマーシャル路線に不満を感じてEUROPEから脱退したジョン・ノーラムの初のソロ・アルバムで、キャッチコピーは《俺のギターには金玉がついている》、しかも曲作りの相棒が敏腕ソングライターのマルセル・ヤコブ(B)とあっては、「きっと“SCREAM OF ANGER”風のハードな楽曲だらけの北欧メタル作品に違いない!」と期待に胸膨らませて本作に挑んだので、最初聴いた時は、その思いの外ポップというか歌モノ路線寄りの作風に「ぇえー・・・?」と首をかしげてしまいましたよ。 しかし、よくよく聴けば分かる(いや別によく聴かずとも伝わる)楽曲の出来の良さ。敬愛するゲイリー・ムーア風味のメロディアスHR路線を志向しつつ、②⑤⑥に参加するMr.北欧ボイスことヨラン・エドマンの透明感を湛えたハイトーンVoと、マルセル謹製の甘いメロディが彩りを添えるサウンドは、ジョン・ノーラムのソロ作の中では一際高い北欧メタル度を検出。特にシングル・カットされたヒット曲②は、ジョン・ノーラム版“THE FINAL COUNTDOWN”ライクな名曲です。(“果てしなき想い”という邦題も○) 欲を言えば1、2曲は“SCREAM~”ばりのハードな疾走ナンバーを収録して欲しかったところなんですが、例え曲調はポップであっても、ジョンが伸び伸びと気持ち良さげにGを弾きまくっているので、まぁこれはこれで。確かに金玉付いてるよ。
THE SNAKESに関わった90年代末ぐらいからか。日本のHR/HMファンの間でも「どうもノルウェー出身の凄いシンガーがいるらしい」と徐々に噂になりつつあったタイミングで、ヨルン・ランデ(Vo)がリリースした初めてのソロ・アルバム(’00年)。その門出を祝うべく、ロニー・ル・テクロ、トゥーレ・オストビー、ラルフ・サントーラ&シェーン・フレンチ等々、ヨルンがフロントマンを務めたVAGABOND、THE ARK、MILLENIUMといったバンドの面々がゲスト参戦して華を添えてくれています。 ソロ・アルバムといっても、書下ろしの新曲5曲、カヴァー5曲の全10曲からなる内容は若干変則的。ソロ・シンガーとしての表現欲求に突き動かされて作り上げたというよりは、「自分、こんな色々なタイプの楽曲が歌いこなせます!今後ともヨロシク!」ってな、HR/HMシーンに向けたプレゼン的な性格が強めに感じられる仕上がりです。 とはいえ、それが悪いなんてことは全然なく。譜面に正確なだけでは決して歌いこなせない、難易度高めの哀愁のOPナンバー①を情感豊かに歌い上げてみせる導入だけで早くもその実力派シンガーぶりを知らしめてくれる本作は、ソロ・アルバムとしてのクオリティも十分。またCITY BOYの“THE DAY THE EARTH CAUGHT FIRE”や、JOURNEYの“EDGE OF THE BLADE”、FOREIGNERの“BREAK IT UP”、JEFFEERSON STARSHIPの“JUST THE SAME”といった敢えて隠れた名曲を取り上げるセンスにもキラリと光るものがありますよ。 数あるヨルン・ランデのソロ作の中でも、上位に来る完成度を有す1枚ではないでしょうか。