元GREAT KING RATのリーフ・スンディン(Vo)ら、スウェーデン人ミュージシャンを引き連れて'97年に行われた、ソロとしては初めてのジョン・ノーラム(G)の来日公演の模様を収めた実況録音盤。発売元は勿論「LIVE IN JAPAN商法」でお馴染みのZEROコーポレーションですよ。 “FACE THE TRUTH”で幕が上がり“SCREAM OF ANGER”にて幕が降りる本編は、CDの容量限界ギリギリまで使って、4枚のソロ作(1st~4th)及びEUROPE時代の楽曲から万遍なくチョイスされていた当日のライブのセットリストをほぼ忠実に再現。 選曲はこれがベストか?と問われれば「そうでもない」と即答できますし、何よりバンドと観衆の掛け合いの類が殆どない、ソリッド過ぎる作りも好みが分かれるところではありますが。 それでも、ギターを身体器官の一部のように自在に操るジョン・ノーラムのGプレイ、ヨラン・エドマンやケリー・キーリングは勿論のこと、グレン・ヒューズ時代の楽曲すら不安げなく歌いこなすリーフ・スンディンの熱唱等、白熱のパフォーマンスの前にはそうした不満もフェードアウトしていきます。リリース当時はあまり良い評判を耳にしなかった3rdや4thからの楽曲も、ここで聴く分には十二分にカッコイイ。 ジョン・ノーラムのソロ時代を手っ取り早く振り返りたいという向きにお薦めの1枚かと。
北欧メタルの持つ透明感と、ゲイリー・ムーア~THIN LIZZY的HRサウンドとが巧みに溶け合わされた、ソロ・アーティスト、ジョン・ノーラムの最高傑作の呼び声も高い'92年発表の2ndソロ・アルバム。 楽曲のクオリティのみならず、それを支える参加ミュージシャン達も結構豪華。囁かれていた不仲説を粉砕するEUROPEの盟友ジョーイ・テンペスト(Vo)、DON DOKKEN時代の仕事仲間ビリー・ホワイト(G)とピーター・バルテス(B)、そしてアルバムのメイン・シンガーを務めるのは歌神グレン・ヒューズ(Vo)・・・どうです、この布陣。まるでジョン・ノーラムというギタリストの過去/現在/未来を総括するかのようではありませんか。 特にグレンのソウルフルなVoは、アルバムの品質のみならず「格」の向上にも大きく貢献。とても絶賛ヤク中街道邁進中(当時)とは思えぬ、張りも伸びも艶もある歌声を終始響かせていて、流石THE GOD OF VOICE。中でもハード・ドライヴィンに本編OPを飾るアルバム表題曲①は名曲中の名曲ですよ。(ぶっちゃけ、この曲のインパクトが本編の印象を霞ませているきらいもあるのですが) 他にも哀愁のバラード③、ジョーイ・テンペストのエモーショナルな歌声が彩を添える⑥(浮いてないよねぇ)、HUGHES/THRALLコンビ作曲の⑩(PHENOMENAのカヴァー)等、優れた楽曲が目白押しなので、ジョン・ノーラムのソロ作に触れるのならば、まずはこのアルバムからどうぞ。
コマーシャル路線に不満を感じてEUROPEから脱退したジョン・ノーラムの初のソロ・アルバムで、キャッチコピーは《俺のギターには金玉がついている》、しかも曲作りの相棒が敏腕ソングライターのマルセル・ヤコブ(B)とあっては、「きっと“SCREAM OF ANGER”風のハードな楽曲だらけの北欧メタル作品に違いない!」と期待に胸膨らませて本作に挑んだので、最初聴いた時は、その思いの外ポップというか歌モノ路線寄りの作風に「ぇえー・・・?」と首をかしげてしまいましたよ。 しかし、よくよく聴けば分かる(いや別によく聴かずとも伝わる)楽曲の出来の良さ。敬愛するゲイリー・ムーア風味のメロディアスHR路線を志向しつつ、②⑤⑥に参加するMr.北欧ボイスことヨラン・エドマンの透明感を湛えたハイトーンVoと、マルセル謹製の甘いメロディが彩りを添えるサウンドは、ジョン・ノーラムのソロ作の中では一際高い北欧メタル度を検出。特にシングル・カットされたヒット曲②は、ジョン・ノーラム版“THE FINAL COUNTDOWN”ライクな名曲です。(“果てしなき想い”という邦題も○) 欲を言えば1、2曲は“SCREAM~”ばりのハードな疾走ナンバーを収録して欲しかったところなんですが、例え曲調はポップであっても、ジョンが伸び伸びと気持ち良さげにGを弾きまくっているので、まぁこれはこれで。確かに金玉付いてるよ。
THE SNAKESに関わった90年代末ぐらいからか。日本のHR/HMファンの間でも「どうもノルウェー出身の凄いシンガーがいるらしい」と徐々に噂になりつつあったタイミングで、ヨルン・ランデ(Vo)がリリースした初めてのソロ・アルバム(’00年)。その門出を祝うべく、ロニー・ル・テクロ、トゥーレ・オストビー、ラルフ・サントーラ&シェーン・フレンチ等々、ヨルンがフロントマンを務めたVAGABOND、THE ARK、MILLENIUMといったバンドの面々がゲスト参戦して華を添えてくれています。 ソロ・アルバムといっても、書下ろしの新曲5曲、カヴァー5曲の全10曲からなる内容は若干変則的。ソロ・シンガーとしての表現欲求に突き動かされて作り上げたというよりは、「自分、こんな色々なタイプの楽曲が歌いこなせます!今後ともヨロシク!」ってな、HR/HMシーンに向けたプレゼン的な性格が強めに感じられる仕上がりです。 とはいえ、それが悪いなんてことは全然なく。譜面に正確なだけでは決して歌いこなせない、難易度高めの哀愁のOPナンバー①を情感豊かに歌い上げてみせる導入だけで早くもその実力派シンガーぶりを知らしめてくれる本作は、ソロ・アルバムとしてのクオリティも十分。またCITY BOYの“THE DAY THE EARTH CAUGHT FIRE”や、JOURNEYの“EDGE OF THE BLADE”、FOREIGNERの“BREAK IT UP”、JEFFEERSON STARSHIPの“JUST THE SAME”といった敢えて隠れた名曲を取り上げるセンスにもキラリと光るものがありますよ。 数あるヨルン・ランデのソロ作の中でも、上位に来る完成度を有す1枚ではないでしょうか。
JUNKO名義2作目であり、三原じゅん子の歌手活動の取りあえずの一区切りとなった’86年発表の11thアルバム。 《ぶっ飛んで下さい。ロック遊女。》という帯惹句と、ジャケットを飾る和服を着崩したJUNKOの艶姿を見ると早くも迷走の気配がビンビンですが、10th『SO DEEP』に引き続いてB’z結成前の松本孝弘(G)が全面参加。鳴瀬喜博(B)、そうる透(Ds)、大平勉(Key)らがバックを固め、作曲陣にもハワード・キリー(河井拓実の変名)やAROUGEの福田純&橘高文彦(マネージメントが同じだった関係でツアーにも帯同していた模様)が名を連ねる等、基本的には前作で披露されたHR/HM路線を踏襲した仕上がりとなっています。 但し“WIRE ROCK”のようなゴリゴリのHMナンバーが姿を消し、煌びやかなシンセのフィーチュア度が格段に高まったサウンドは、80年代らしくよりゴージャスなメロディアスHR化が進行。JUNKOも『SO~』に比べると肩の力を抜いて伸びやかな歌唱を披露していて、本当、政治家としてのこの人に感心したことはビタいちないのですが、シンガーとしての実力には感心させられますよ。特に哀愁のメロハー“CAN’T STOP MY JEALUSY”や“TOKIO BLUE”、洗練されたバラード“LAY ME DOWN”辺りは、「三原順子でしょ?」と半笑いで聴き始めたら、クオリティの高さに思わず真顔になってしまう出来栄え。松本孝弘のGが暴れ回る疾走ナンバー“DEAD OR ALIVE”も本編をグッと引き締めてくれています。このタイプの楽曲がもう1曲ぐらいあればなぁと思わなくもないですが。 HR/HM路線であと2、3枚聴いてみたかった…と惜しまずにはいられませんね。
嘘か誠か、出演したライブハウスで客と乱闘を繰り広げていたら、偶然その場に居合わせたアリス・クーパーに気に入られ、そのまま彼のバンドの一員としてデビューを飾ることとなったという80年代感溢れるシンデレラ(にしてはゴツ過ぎますが)エピソードの持ち主、ROCK’N ROLL RAMBOことケイン・ロバーツが'86年に発表した1stソロ・アルバム。 「アサルト・ライフル魔改造ギターをドヤ顔で掲げる筋骨隆々な長髪マッチョ(ケイン本人)」というバカ負けするインパクト抜群のジャケットだけ見ると、「俺の武器はギター」とか言いながら物理的にギターで相手をブン殴っていそうな感じですが、実際にここで聴けるのは繊細な手つきでカッチリ組み立てられたメロディックHRサウンド。キャッチーなメロディに美しいボーカル・ハーモニー、そして構築感すら漂わすGプレイといい、見た目と託された音のギャップのデカさに二度ビックリですよ。 背中に鬼の顔を浮かび上がらせながらGを弾きまくる光景が思い浮かぶようなインスト・ナンバー④、ドスの効いたコーラスをフィーチュアして突撃する⑦といった、イメージ通りのパワーメタル・ナンバーを配しつつも、しかし本編のハイライトを飾るのは、ロビー・デュプリーとの共作曲②や、キメキメなコーラス・ワークがライブ映えする③、キャッチーな哀愁のメロハー⑨、クレジットにはキップ・ウィンガーの名前も見えるバラード⑩といった、ゴテゴテとした筋肉の鎧よりも、洗練されたスマートさの方が印象に残る楽曲の数々という。 長らく廃盤で入手困難な状態が続いていましたが、2nd『SAINTS AND SINNERS』(こちらも◎)と一緒に再発されましたので、是非とも一度はお手に取って頂きたい名盤です。
バンドの看板でもあったバイオリン奏者ロビー・スタインハートの去ったKANSASが、'83年に発表したジョン・エレファンテ加入2作目となる9thアルバム。 前作収録の名曲“PLAY THE GAME TONIGHT”のスマッシュ・ヒットに気を良くしたレコード会社の「もっとコマーシャルなアルバム作らんかい」との圧力により、曲作りの主導権がケリー・リヴグレン(G)から、フロントマンたるジョンと、彼の兄でプロデューサー/コンポーザーとして鳴らすディノ・エレファンテに移行。それに伴い、ニール・カーノンが手掛けた乾いた音作りといい、シンセを大々的にフィーチュアしてメロディから湿り気が、曲展開からはプログレ色が減じられた楽曲といい、今作は(まさしくアルバム・タイトルが示す通り)大胆な作風の刷新が図られた仕上がりとなっています。 正直、スティーヴ・ウォルシュ在籍時代のKANSASサウンドを期待すると肩透かしを食う可能性大ですが、「ディノ&ジョンのエレファンテ兄弟が取り仕切ったメロハー作品」と気持ちを切り替えて本作に接すると、GリフがSURVIVORの“EYE OF THE TIGER”みたいな①とか、後に続くカラッと明るくポップな②とかも「これはこれでありだね!」と思えてくるから不思議ですよ。またアルバム後半には、山あり谷ありの曲展開をアップテンポで駆け抜けていく⑦、ケリーのペンによる、タメを効かせつつ重厚に盛り上がっていく⑧&リズミカルな曲調に哀愁のメロディが乗せられた⑨といった、かつてのプログレ・ハード風味がさりげなく薫る逸品もちゃんと収められていることを付け加えておきます。 KANSAS入門盤にゃお薦めしかねますが、スルーは勿体なさ過ぎる。自分なりの曲順を考えてみると、より評価が高まる1枚かもしれませんね。