このバンド名に、サムライが描かれたジャケット、それに“HEART OF TOKYO”なる楽曲を収録する等、日本のHR/HMファンとして無条件に応援せずにはいられない、スウェーデン出身の5人組正統派HMバンドのデビュー作。(プロデュースはアンディ・ラ・ロックが手掛けている) IRON MAIDENからの多大なる影響をベースに組み立てられ、そこに独産メロパワ・メタルのエッセンスと、新人らしい溌剌としたノリの良さを加えて仕上げられたサウンドは「まさにNWOTHM」といった感じだが、↑上の方も仰られている通り、彼らの場合はVoが歌うキャッチーなメロディが前面に押し出されているのが大きな特徴で、このシンガー、ポップ風味も取り込んだ躍動感溢れる歌メロの構築センスが抜群に冴えており、IRON MAIDENを思わす2本のGが威勢良く駆け回るOPナンバー①に始まり、日本愛を湛えて(?)小気味良く疾走する⑤へと至る本編前半の充実っぷり、そして山あり谷ありの曲展開とエキゾチックなメロディをもって本編をドラマティックに締め括る大作曲⑨の素晴しさは、彼氏が歌う魅力的な歌メロがあったればこそ。 バンド名や曲名に失笑を漏らす真面目なHR/HMファンもいるかもしれないが、侮れない実力を有する新人バンドであることは確か。ライブが見てみたいな。
EUROPEのキー・マルセロ(G)+FAIR WARNINGのトミー・ハート(Vo)の組み合わせだからKEE OF HEARTS。FRONTIERS RECORDSのバックアップを受けて立ち上げられたプロジェクトが’16年に発表した唯一作。 このタッグでは’20年にOUT OF THIS WORLD名義でもアルバムをリリース済みで、あちらではキー・マルセロが曲作りを自ら手掛けていたのに対し、本作はレーベル側があらかじめ用意したアレッサンドロ・デル・ヴェッキオを始めとする職人ソングライター勢の手掛けた楽曲に、二人が生命を吹き込むというスタイルが取られています。有体に言えばお仕着せのプロジェクトであるわけですが(それが嫌でOUT OF THIS WORLDを新たに立ち上げたのかな)、とはいえ流石にメロディ職人たちが関与しているだけあって、収録曲はアッパレな完成度の高さ。また泣きのGソロに耳を惹かれるOPナンバー①や、リフもリードもGが歌っている②…といった具合に、ちゃんとキー・マルセロのギタリストとしての長所にフォーカスした曲作りがなされていて、単に作りっぱなしにしていない点にも感心させられますよ。 勿論、トミー・ハートの熱気とエモーション溢れる歌唱の素晴らしさも言わずもがなですし、リーダー・トラックたる⑦を手始めに、トミーの力強い歌声が映える各曲のキャッチーなサビメロ作りの上手さにも唸らされるものあり。特に本編随一のハードネスと、フックの効いたメロディとが絶妙に溶け合って疾走するラスト・ナンバー⑪は、このプロジェクトの旨みを凝縮したような名曲に仕上がっています。 OUT OF THIS WORLDが気に入った方なら、本作もチェックして損はありませんよ。
KEN HENSLEY & LIVE FIRE名義で'11年に発表された最新ソロ・アルバム。 ARTCHのフロントマンとして知られ、世のマニア諸氏からは「北欧のブルース・ディッキンソン」との異名を取ったエリック・ホークが、シンガーとして参加している点に興味をそそられて購入した作品でしたが、ここでケン・ヘンズレーが披露しているのは70年代HR・・・というよりもURIAH HEEPのエレメントがあちこちに散りばめられた、僅かに触れただけで英国風味が鼻腔一杯に広がるかのようなヴィンテージ・ワインばりのコクと深み、そして格調の高さを湛えたブリティッシュ・ロック・サウンド。 エリックもそれに併せてリラックスした歌唱スタイルに終始しており、ARTCH時代を思い起こさせる雄々しい歌い上げは残念ながら封印されているのだが、その歌唱力は相変わらずスペシャル。 重厚にしてマジカルな①や、ヒネリの効いたシャッフル・チューン②という、いやが上にもURIAH HEEPを思い起こさせるケン・ヘンズレーの真骨頂と言うべき名曲2連発も難なくこなして一気にリスナーを作品世界に引き込んで以降は、泣きのGが心地良いバラード③、スケール感と包容力を併せ持った⑧、ハード・ロッキンな曲調に哀愁を帯びたメロディとドラマティックな曲展開が絡む⑪、そして生オケを加えてより優雅に蘇ったURIAH HEEPの“CIRCLE OF HANDS”のカヴァー⑫にて幕が降りるエンディングまで、あれよあれよの60分。 繰り返しの傾聴に耐え得る味わい深い魅力に、どっぷりと浸り切ることが出来る1枚です。
KANSASの中心メンバーだった、ケリー・リヴグレンが'80年に発表した初のソロ・アルバム。 BLACK SABBATH加入直前のロニー・J・ディオ(Vo)を筆頭に、多彩なゲストを迎えてレコーディングされた本作は、『暗黒の支配者』なる大仰な邦題が物語る通り、7~8分台の長尺曲も収録するなど、ドラマティックな大作主義が打ち出されていて、この時期にAOR/産業ロック路線への傾斜を深めていた、KANSASに対する(当人の思惑はどうあれ)カウンター的内容に仕上がっています。 そのKANSASのスティーヴ・ウォルシュ(Vo)が歌う流麗にしてポップな③や、アーシーで埃っぽい④のようなタイプの楽曲も収録されていますが、やはり本編の聴き所として機能しているのは、ロニーが歌うことを前提にアテ書きされたような、起伏と陰影に富む②や、タイトルからしてRAIBOW時代を彷彿とさせるバラード⑤、そしてフィル・イハート(Ds)やロビー・スタインハート(Vio)らも参加して、70年代KANSASの再現が試みられている(そして達成されている)8分越えの大作ナンバー⑦といったドラマティックな楽曲の数々。 アメリカン・プログレ・ハード時代のKANSASにおいてケリーが果たした役割の大きさを実感させられると共に、本作発表後間もなく、彼がKANSASから離脱することになるのも「さもありなん」と納得の1枚。
KILLER(もしくはKILLERS)を名乗るバンドはヨーロッパ各国に存在していて非常にややこしいのですが、こちらはベルギー出身のパワー・トリオがMAUSOLEUM RECORDSに移籍後の'84年に発表した3rdアルバム。 “ACE OF SPADES”ばりの爆走ナンバー①でアルバムの幕が上がる事に象徴されるように、「ハーモニー?知るかボケ!」とばかりにポール“ショーティー”ヴァン・カンプ(G)とスプーキー(B)が好き勝手豪快に歌いまくるツインVoに、埃っぽく騒々しく刻まれるGリフ&リズムを武器に押し出してくる、MOTORHEADやTANKといったバンドを彷彿とさせる無頼派荒くれサウンドが本作最大の魅力。 更にそこにロニー・J・ディオ時代のRAIBOWからの影響を感じさせる大作主義や、ドラマティックな曲展開を持ち込んでいるのがこのバンドの個性で、特に“KILL THE KING”を想起させる③(楽曲自体はそれだけに留まらない味わいを備えているのですが)と、“STARGAZER”風のドラム・イントロからスタートする劇的な⑦は、どちらもアルバムのハイライト・ソングたる存在感を放つ名曲。またスピーディな⑥も、KILLERならではのパワー感と勇壮なメロディとが巧みな融合をみた強力な逸品ですね。 このバンドの最高傑作にして、入門篇にも最適の1枚ではないかと。
フランス南部のバルバドス出身で、'82年に結成。 '85年に1st『...Fils de la haine』でレコード・デビューを飾って以来、強固なファン・ベースを築き一度も解散することなく現在まで活動を継続。リリースしたアルバムはライブ盤含め20枚以上に及ぶご長寿HMバンド。 ちなみに彼らのカタログは、90年代に6thアルバム(+ライブ盤)までは新星堂から、所謂「わら半紙帯」を付けた国内仕様盤がリリースされていて、当時はフレンチ・メタルにさほど興味がなかったので、「なんか安っぽいなぁ」と買い逃してしまったことを未だに悔いています。
ポール・ディアノが率いたイギリスのKILLERS、ベルギーのKILLER、スイスのKILLER等々、似た名前のバンドは世界中に数あれど、こちらはフランスはバルバドス出身のKILLERS。本国では確固たる人気バンドの地位を築き、現在までに20枚近いアルバムを発表して活動を継続する彼らの記念すべきデビュー作('85年発表)がこちら。ちなみに、後に国内盤仕様のCDが発売された時の邦題は『憎しみの果てに』でした。 当時「フランスのACCEPT」と評されたという彼らのゴリ押しパワー・メタル・サウンドの魅力は、禍々しいイントロを蹴破って、ウド・ダークシュナイダーばりの金属シャウトVo、鼓膜を切り裂く鋭利なGリフ、猪突猛進リズムとが土砂崩れ気味に畳み掛けて来る、まるで「VENOMが演奏する“FAST AS A SHARK”」的迫力を誇るOPナンバー①に集約。音質は酷いもんですが、改めて聴いてもこのカッコ良さにはテンションガン上がりですよ。 それでいて、力押し一辺倒の無骨さのみが武器のバンドかと言えばそんなことはなく。押せ押せの楽曲の中にも緩急や劇的な曲展開がしっかりと息衝いており、仏語詞による柔らかな語感と憂いを帯びたメロディが相俟って、時にサウンドがそこはかとない「優美さ」すら発散する辺りは流石フランス出身バンド。基本バラードながら激しくアップダウンを繰り広げる③、葬送行進曲をイントロに据えて前半は抑え気味に、後半で一気にはっちゃけるバンドのテーマ曲⑥、そして直線的に突っ走りながらも、Voが印象的なメロディを滑らかに歌い上げる名曲⑦等は、そうした彼らの真骨頂が刻まれた逸品ではないかと。 80年代フレンチ・メタル・シーンの充実ぶりを裏付けてくれる名盤の一つです。