'92年に、ドイツのHR/HM系ミュージシャン達が一堂に会したGERMAN ROCK PROJECTを企画して、シングル『LET LOVE CONQUER THE WORLD』をリリースするなど、欧州HR/HMシーンではちょっとした顔だった英国出身の女性シンガー、ゴドラン・ラオス率いる4人組HRバンドが、'90年に発表した1stアルバム。ちなみにドラマーは彼女の旦那でもあるヨルグ・マイケル。(一緒になったのはバンド解散後らしいですが) 鼻に掛かった掠れ声がセクシーなラオス嬢の歌声を、煌くKeyサウンドと、元LIVING DEATHのフランク・フリッケ(G)ら、確かな実力を有するメンバーが出しゃばらない演奏で盛り立てる本編は、アリーナ・ロック調のスケール感と、フック満載のメロディに彩られた華やかな楽曲が顔を揃え、「覚えやすさ」と「ライブ映え」を念頭に置いて磨き上げられたであろうキャッチーなそれらは、世が世なら米ビルボード・チャートの上位を賑わせていても不思議じゃないくらい垢抜けたヒット・ポテンシャルを感じさせてくれます。 問題なのは本作がリリースされた'90年は、既にこの手のサウンドがメイン・ストリームの座から凋落し始めていたということで、あと数年早く発表されていれば状況はもう少し違っていたのでしょうが、バンドはこのあと'95年に2ndアルバムをレコーディングするも、結局リリースには至らないまま解散してしまった。
来日公演を見てきました。「良くも悪くもスタジオ・ミュージシャンが集まったバンド」という イメージが強かったのですが、かなりしっかりとしたライブを見せてくれたので大満足。 特にミカエル・アンダーソンが、あそこまでしっかり歌えるシンガーだったとは嬉しい驚きでした。 てっきり、経験値の少なさからメロメロな歌唱を披露してしまうものとばかり・・・。 また、ファンによる“ROCK'N ROLL IS SAVING MY SOUL"のサビの合唱シーンは、 ミカエルでなくとも感動してしまう、ショウのハイライト的な場面として非常に印象に残りましたね。 唯一の不満は、アンコールなしで1時間弱と、公演時間がえらく短かった点でしょうか。
3枚目のシングル“赤ずきんちゃん御用心”が起死回生の大ヒットとなった――これがコケれば大手を振ってHRバンドに戻れると期待していたメンバー的には複雑な思いがあったようですが――LAZYが、’78年に発表した2ndアルバム。 曲作りは全てレーベル・サイドが(主に歌謡曲界隈から)参集した外部ライター勢が担当、歯が浮くような甘い歌詞から、和製BAY CITY ROLLERSの線を狙ったという明朗快活なポップ・ロック・サウンドに至るまで、1st『THIS IS THE LAZY』(’77年)同様、お仕着せのアイドル路線は今回もガッチリと堅持。それでも前作の成功を受け、多少ながらもバンド側の発言権も増したのか、楽曲にしろパフォーマンスにしろ、その端々でLOUDNESSへと至るHR/HM路線の息吹が確認できる仕上がりとなっています。 特に高崎“スージー”晃のGプレイは単なるアイドル枠には収まりきらない「気」が漏れ出す場面が多々あり、疾走ナンバー④なんて切れ味鋭いGリフの刻みっぷりといい、井上“ポッキー”俊次のKeyを生かしたドラマティックな曲展開といい、「アイドル・グループにしては」どころか、この時点で早くも80年代HMスタイルの試し撃ちが如きカッコ良さを誇っていますし、泣きのGとストリングスが効いた劇的なバラード⑥も、後に影山“ミッシェル”ヒロノブがソロ・アルバムでセルフ・カバーしたのも納得の名曲ぶり。あと高崎が歌う③とか、爽やかに駆け抜ける⑨とか、かつては眉をしかめて聴いていたアイドル歌謡風味の楽曲も実は結構魅力的であることに気付かされたりも。 改めて聴き直したことで、グッと評価が高まった一作であります。
タイトルが表す通り、LAZYが'80年に発表した5枚目の作品。(フル・アルバムとしてはこれが4作目となる) HR色の増強が図られた4th『ROCK DIAMOND』(’79年)と、LOUDNESSの原点というべき最終作『宇宙船地球号』(’80年)の間に挟まれているので、当然本作もその流れを汲んだハード&ヘヴィなサウンドが託されているものと思いきや、さにあらず。“フルカウント”や“HOTEL”のような疾走ナンバーは見当たらず、どころか収録曲は全て外部ライターのペンによるもの。メンバーは曲作りに一切関わっておらず、バディ・ホリーやSKYLARK(デヴィッド・フォスターが在籍していたことで知られる)、鹿取洋子バージョンが有名なDIESELのディスコ・チューン“GOIN’ BACK TO CHINA”のカヴァーも収録する等、むしろポップ方向に幅寄せした内容に仕上がっているじゃありませんか。 ダウンタウン・ブギウギ・バンドみたいな①が始まった時はどうなることかと思いましたが、本作がアイドル歌謡路線に逆戻りしているのかといえば、そんなことは全くなく。強引な自己主張は抑制し、HRのエッセンスが曲中により自然に溶け込むよう心掛けられた楽曲及びアレンジは、レコード会社に「やらされている」というよりは「メンバー自らが積極的に新しい領域に取り組んだ」との印象を受ける仕上がりで、曲によっては同時期盛り上がりをみせたAORの線を狙ったのかな?と思わされたりも。特に哀愁を湛えて盛り上がるSKYLARKのカヴァー③は、原曲の良さとメンバー入魂のパフォーマンスが相俟って実にグッと来る逸品ですよ。 もろに過渡期的内容ながら、メンバーの成長ぶりが伝わる1枚となっています。
プロデューサーに産業ロック勢との仕事で知られるケヴィン・ビーミッシュを起用し、更に最終的なミックス・ダウンは売れっ子マイケル・ワグナーに依頼。「LEATHERWOLFが勝負に出た」と強く印象付けた'89年発表の2ndフル・アルバム。 湿度を抑え、カラッと抜けの良い音作りに併せて、曲展開も比較的ストレートに整理整頓。殊更にトリプルGの存在は強調せず、Voを中心にアメリカンHMならではのキャッチネスの底上げが図られているサウンドは、言うなれば重厚なパワー・メタルから、シャープな高機動型HRへと華麗なる転身を遂げた感じ。強化されたコーラス・ワークを伴い、よりシンプル且つメロディアスに押し出してくる③⑥等も収録した本編を聴いた時は、LOUDNESSの出世作『THUNDER IN THE EAST』のことを思い出したりも。 『THUNDER~』が、全米でブレイクを果たすべく、大きく音楽性を変化させながらも「らしさ」を見失っていなかったのと同様、本作もハードさやドラマ性を損なうことなく、新旧の持ち味をバランス良く配合することに成功しています。特に起承転結がバッチリ決まったOPナンバー①は、本作を代表する名曲中の名曲。切れ味鋭く疾走へと転じる中間部のカッコ良さにテンション上がらないHR/HMリスナーはおらんですよ!と断言したくなるぐらいのもんで。 もう数年早く発表されていれば状況も好転して、LEATHERWOLFがこれを最後に解散することもなかったのでは・・・とか夢想させられる1枚。(後に再結成しましたけどね)
マサ伊藤が「NWOBHM最強のバンドの一つ」と記す、英国はノッティンガムシャー、マンズフィールド出身で、マイクとグレンのスクリムショー兄弟を中心に結成された(活動開始は60年代まで遡るという)トリオ・バンドが、'80年に残した唯一のフル・アルバム。 「イギリスのRUSH」と評されただけあって、RUSH、YESを彷彿とさせる凝った曲展開やヒネリの効いたアレンジ、曲によってはメロトロンをフィーチュアする等、プログレ方面へのアプローチに余念のない本作ですが、軸足は飽くまでメタル側にキープ・オン・ロッキン。疾走感溢れるインスト・パートがスリリングなOPナンバー“GOING HOME”、ビートを効かせたダークな“KNIFE IN YOUR BACK”、タイトルからしてド直球のスピード・ナンバー“METAL MAN”、哀愁塗れの“MAMMA”から悲壮且つ重厚な大作曲“MAN OF COLOURS”に至るまで、NWOBHMらしいハードネスも泣きも十二分に堪能できる本編は、「プログレっぽいの?じゃあパスで!」なんて後ろ向きな発言かます輩(俺のことですが)を、張り倒して正気に返らせ得るインパクト&クオリティを兼備しています。 尚そんな本作。オリジナル盤と、後に発売されたベルギー盤では曲順が全く異なる上に、後者には、シングルとして発表されたNWOBHM史に足跡を刻む名曲“ASHES TO ASHES”がOPナンバーとして収録されているので、聴き比べてみるのも一興かと。ちなみに、テイチクから再発された日本盤はオリジナルの曲順に準じつつ、ボートラとして“ASHES~”も収録するという両者の美味しいトコ取りな構成で、そりゃ中古盤がプレミア価格で取引されるよな…と。一日も早い再発を希望する次第。