前作『HURRICANE EYES』がアメリカで不発に終わったことを受けて、テクニック志向を抑制し、LOUDNESS史上最もメロディアスな曲作りが試みられている、'89年発表の8thアルバム。 個人的に初めて購入したLOUDNESS作品ということで非常に思い入れのある1枚なのですが、こうした作風の変化や、個性の塊のようだったオリジナル・シンガー、二井原実の脱退を否定的に捉えて、雑誌では「アクが抜けてごく普通のHR/HMバンドになってしまった」と嘆くレビューも見られました。 勿論気持ちは分からなくもないのですが、しかし「ごく普通のHR/HMサウンド」のカッコ良さを舐めたらいかんぜよ、と。新Voマイク・ヴェセーラの熱唱、その彼のメタル声と化学反応を起こして、リフ/リード両面において更に切れ味の鋭さを増した高崎晃のG、そしてスピーディ且つタイトなリズム隊の存在が映える“SOLDIER OF FORTUNE”と“DEMON DESEASE”という、極上の名曲2つにサンドイッチされる形で並んだ中庸な魅力を備える楽曲群は、ほんのり和風テイストも取り入れたメロウな“25 DAYS FROM HOME”を筆頭に、ヘヴィ・メタリックなエッジは保ちつつ、胸を打つ哀愁とキャッチーなメロディに彩られた、いずれ劣らぬ逸品揃い。 つくづく、この編成が長続きしなかったことが惜しまれる名盤なのですが、90年代のLOUDNESSの混迷ぶり(と敢えて言いますが)を鑑みると、もし仮に同一編成であと何枚かアルバムを作ったとしても、これほど凄い作品が再び出来たかどうかは微妙なところではないでしょうか。短い出会いだったからこそ眩く輝いた、みたいな?
当時の国産HR/HMバンドは、1年にアルバム複数枚を発表する等、今の感覚からすると信じ難いほど性急な活動ペースを余儀なくされていた印象があって、当然、それに耐え切れず潰れてしまうバンドも数多く存在したわけですが、LOUDNESSが凄かったのはこれを逆に糧へと変えて、短期間の内に飛躍的な成長を成し遂げた点(しかもメンバー・チェンジもなしに)。その成長過程は発表されたアルバムにも、しかと刻印されています。 '83年発表の本3rdアルバムは、未だ“Mr. YSE MAN”のようなちょいプログレ風味の入った大作をこなしつつも、全体的にはサウンドをタイトにストレッチすることで、80年代型HM路線へとその軸足を移しつつあることが伝わってきます。(この試みは次作で結実)。 更にアグレッシブに、強靭に鍛え上げられた高崎晃のGプレイを前面に押し出し、切れ味鋭いGリフが楽曲を牽引する“IN THE MIRROR”“THE LAW OF DEVIL'S LAND”“SPEED”といったスピード・ナンバーの数々は、まさしくバンドの代表曲の名に相応しい存在感。 大仰な『魔界章典』なるタイトルが、決してコケ脅しには聴こえない力作と相成っております。
YESやPINK FLOYDに触発されたメンバーらにより、'76年にカナダはオンタリオ州において結成。 '79年に一旦解散するも、'89年に再編。翌年にはカセットテープのみでセルフ・タイトルのデビュー作を発表。 更に'92年に2nd『SO EXACTLY WHERE ARE WE?』をリリースすると、これが日本の輸入盤市場で評判となり、'94年にはゼロ・コーポレーションから国内盤の発売も実現している。 '95年に3rd『ON SECOND THOUGHT』を発表して以降はすっかり名前を見聞きしなくなってしまったが、その後はどうしたのだろう?1stをCDで発表し直す、なんて話もあったようだが、果たして実現したのかどうか。
“LAY DOWN YOUR ARMS"に勝るとも劣らぬ光りを放つ、 スピーディ且つドラマティックな本編ラスト・ナンバー。 1度スローダウンして、そこから再度疾走へと転じる場面で 炸裂Gプレイのカッコイイこと!(ちょっぴり“THUNDERSTEEL"風?) 初めて聴いた時は、思わずガッツポーズ取っちゃいましたよ。
自らマエストロを名乗るも、CDをスタートすると聴こえて来るのは、調子っ外れでたどたどしいGプレイ・・・という完全に出落ち系なイギリス人ギタリスト。 当然、'92年発表のデビュー作『PAGANINI'S LAST STAND』1枚きりで消えたものとばかり思っていましたが、その後も7弦ギターを開発したり、LA MUSIC AWARDを受賞したりと、活発に活躍していたようで意外。 '09年には2nd『13 JOKES FOR HEAVY METAL MANDOLIN』も発表していますが、聴いてみたいような、そうでもないような・・・。
全英チャート第4位に食い込むヒット作となった7th『WINGS OF HEAVEN』の成功を受け、より「売れること」を意識して制作された'90年発表の8thアルバム。 プロデューサーに名手キース・オルセンを起用し、彼が所有するLAのスタジオでレコーディング。共作者としてジム・バランスやラス・バラード、スー・シフリンといった売れっ子ライター陣が名を連ね、おまけに出来上がったアルバムのタイトルは『GOODNIGHT L.A』・・・これで不安を感じないファンはおらんだろ?っつーぐらいMAGNUMらしからぬ要素てんこ盛りの本作だが、意外にもクオリティの方は高い。 ざっくりと歯切れの良いHM成分の増量と引き替えに、ブリティッシュ然としたウェット感は薄れてしまったものの、ボブ・カトレイの極上の歌声と、ト二ー・クラーキンが生み出すメロディのフックに鈍りはない。大味なノリの①②はともかく、マーク・スタンウェイが奏でるKeyを活かして物悲しくもドラマティックに盛り上がる③以降は、キャッチーなHMナンバー④、都会の夜景が目に浮かぶアーバンなバラード⑤、MAGNUM版“BORN IN THE USA”(?)といった趣きの⑦、力強く高揚感に満ちた⑧、鳴り物を取り入れ快活に弾む⑨、まろやかでソウルフルなボブ・カトレイの歌声が引き立つ⑩等、従来のMAGNUM節と、このアルバムならではの新味が巧みに溶け合わされた魅力的な楽曲が並ぶ。何より、へヴィ・メタリックな疾走感とMAGNUMらしい高いドラマ性を兼ね備えた大トリ曲⑪のカッコ良さはガッツポーズ級。 流石に真っ先に聴くべきMAGNUMの代表作とは思わないが、このクオリティは実に立派。