'18年発表の最新スタジオ・アルバム。前作『SACRED BLOOD“DIVINE”LINE』から2年足らず、リ・レコーディング曲を含むバラード集『THE VALLEY OF TEARS』からは僅か1年のブランクでリリースという、他のベテラン・バンドにも見習わせたいフットワークで活動を続けるMAGNUM。長らく三本柱の一柱だったマーク・スタンウェイ(Key)と、再結成以降のバンドの土台を支え続けたハリー・ジェイムズ(Ds)を失いながらも、本作の完成度の高さには全く揺るぎがないのですから、トニー・クラーキン(G)とボブ・カトレイ(Vo)の看板コンビの旺盛な創作意欲には脱帽ですよ。 音楽性に大きな変化は見受けられず、大英帝国産の貫禄と威厳をその身に纏わせつつも、周囲を睥睨するよりも聴き手に寄り添い、そのハートを芯からポカポカと温めるかのような「遠赤外線メタル」ぶりも健在。マンネリ?とんでもねぇ。比較的ハードな方向に振られていた前作に対し、今回はツアーで得た経験が曲作りに反映され、ノリ易いテンポといい、観客の合唱やバンドとの掛け合いが盛り上がりそうなパートを組み込んだ曲構成といい、全体的にライブ映え重視の楽曲が数多く並んでいるのが新鮮です。 勿論そのことでメロディのフックやドラマ性が薄まる下手を彼らが打つ筈もなく、特にアルバム表題曲である雄大なエピック・チューン⑤は本作の魅力が集約された逸品。この曲に限らず、サウンドの気品とファンタジックな抒情性を効果的に引き上げる、新加入のKey奏者の良い仕事ぶりが光っていますね(カトレイの人肌の温もりを伝えるVo、クラーキンの滋味溢れるGの素晴らしさい関しては今更言及するまでなく)
前作『ESCAPE FROM THE SHADOW GARDEN』が欧州各国のアルバム・チャートで軒並み好リアクションを獲得し、更にそれに伴うツアーもライブ盤をリリースする程の評判を呼ぶなど、目下、80年代以来で訪れた2度目の全盛期を謳歌中のMAGNUMが、その余勢を駆って'16年に発表した最新スタジオ作。 相変わらず目のご馳走と言うべきロドニー・マシューズ謹製アートワークが内容の素晴らしさにお墨付きを与えてくれる本作ですが、ここ数作に比べるとシンフォニックな味付けは控えめ。その分、トニー・クラーキン(G)がクリエイトするサウンドはハード&へヴィな方向に振れていて、いつになく青筋立て気味のボブ・カトレイ(Vo)の歌唱と、リズム隊が叩き出すタメの効いたビートに思わず背筋がシャンと伸びてしまうOPナンバー①は、本作のそうした特色を印象付けてくれる逸曲ではないかと。 さりとて、今更彼らが大雑把にエクストリーム・メタル化する筈もなく、聴き手を包み込むような包容力も、威厳と格式に身が引き締まるような思いのドラマ性も、当然の如く厳然として健在。例えて言うなら本作における変化は、「英国紳士が、着ていたスーツのネクタイを緩めて腕まくりをした」程度のものなのですが、たったそれだけの行為でも「こやつ、只者ではない…!」と相手を圧倒できるのが紳士たる証であると。例えが分かり辛いですが。優美且つ壮大な②、ライブ映えするコーラスを有した⑦、MAGNUM印の劇的な名曲⑨、ラストを厳かに締め括る⑩といったところをハイライトに、現在のバンドの絶好調ぶりが如実にクオリティに反映された1枚。頼むから来日公演に繋がって欲しいなぁ。
JUDAS PRIESTが憑依したかの如き、LAのバンドらしからぬ劇的なブリティッシュHMサウンドを詰め込んだ1st『IN THE BEGINING』でデビューを飾ったMALICEなれど、プロデューサーをマイケル・ワグナーからマックス・ノーマンに代えた本2ndアルバムにおいては、逞しさを増し「ロブ・ハルフォードのそっくりさん」から「ロブ・ハルフォード型ハイトーン・シンガー」へとクラス・チェンジを果たしたジェイムズ・ニールの歌唱、ミッドテンポのヘヴィ・チューンが中核を成す本編の構成等、全体的にソリッドなアメリカンHM(LAメタル)テイストが強化されている印象を受ける。 このJUDAS PREIST成分の減量をプラス/マイナスどちらに評価するかは人それぞれだが、個人的には、身も心もJUDAS PRIESTになりきった“HELLRIDER”や“GODS OF THUNDER”のような強力なキメ曲が見当たらなくなってしまった点は明らかに減点要素。 それでも、挑みかかるようなOPナンバー“SINISTER DOUBLE”を手始めに本作で聴くことが出来るのは紛れもない正統派HMサウンドであり、光沢を帯びた音色で構築美を備えたメロディを奏でるツインGも相変わらずの存在感を発揮。ダークで重厚な“VIGILANTE”、MEGADETHのWデイヴがゲスト参加しているアグレッシブな“CHAIN GANG WOMEN”(ギタリストのジェイ・レイノルズは一時MEGADETH入りが取り沙汰されたりしてましたね)、そして本編中最も濃厚なJP風味を発散する“MURDER”といった、前作を気に入った人を失望させることのない楽曲の数々を収録したアルバムのクオリティは実に堂の入ったもの。 近年、再結成を果たして活動中とも聞くが、だったら新作を作って欲しいなぁ。
ここ数作のコンパクトにまとめられた楽曲重視路線から一転、久し振りに重厚長大なコンセプトを全面に押し出した、'07年発表の記念すべき10thアルバム。 コンセプト重視といえば、30分近くに及ぶ大作組曲“ACHILLES,AGONY AND ECSTASY"を収録した7th『THE TRIUMPH OF STEEL』を思い出すが、全体的にメロディの弱さが目立ったあのアルバムに比べて、今回は1曲1曲がきっちりと練り上げられていて、メロディの煽情度も高め。長尺曲で圧倒するのではなく、キャッチーなHMソングを、SEやナレーション、インスト曲で繋ぎ合わせ、映画のサウンド・トラックの如き壮大さを演出するという手法が取られていて、ジョーイ・ディマイオが『THE TRIUMPH~』から得た教訓をちゃんと本作に活かしている事が判る。例えるなら、6th『KINGS OF METAL』に収録されていた笑撃・・・もとい、衝撃的な組曲“THE WARRIORS PRAYER"~“BLOOD OF THE KINGS"の流れをアルバム全編で展開してみた作品? また、ここのところ「メタル応援歌」的な歌詞の比率がどんどん高まっていただけに、本腰を入れてジョーイが神話世界を題材に取ってスケールの大きな歌詞を書き上げてくれた点もファン的には嬉しい限り。 ただ、疾走曲が並ぶ前半に対して、(そのクオリティは兎も角)似通ったテンポのへヴィ・チューンが並ぶ後半はSEやナレーションの長さと相俟って明らかにダレる。ので、個人的には通して聴くのは遠慮させて貰って③⑤⑥⑦⑩⑫といった楽曲のみを摘み食いしていきたい1枚。
タイトルといい、アートワークといい、暑苦し・・・もとい、劇的な楽曲の数々といい、ファンは忠誠を誓い、興味の無い人間は失笑を漏らすMANOWARというバンドの一番「濃い」部分をグツグツと煮詰めたかのような、アクの強くてマッチョな作風を誇る'89年発表の6thアルバム。 個人的に初めて買ったMANOWARのアルバムであり、HELLOWEENの『守護神伝 第2章』やRIOTの『THUNDERSTEEL』と並んでメタルに本格的にハマる切っ掛けとなった1枚だけに思い入れも一入なんだけど、その辺の贔屓目を抜きにしても本作のクオリティは『HAIL TO ENGLAND』『SIGN OF THE HAMMER』等の傑作群に匹敵する高さ。(・・・じゃないかな、と) CD用ボーナス・トラック⑦がちと弱いが(ネタ曲としては満点)、それ以外は、スラッシーな疾走感とダイナミックなサビメロが圧倒的興奮を生む①に始まり、ラストを締める、余りに大袈裟で芝居がかった展開が笑いと感動を呼ぶ組曲⑨~⑩まで、全編これ捨て曲なし。中でもエリック・アダムスの熱唱が胸焦がす大ヒット・バラード③、100人からの男性コーラス隊が参加した荘厳且つ厳粛極まる⑤、そして劇的にしてキャッチーな(来日公演でも物騒な「HAIL&KILL」コールを巻き起こした)本編のハイライト・チューン⑧といった楽曲のカッコ良さは鳥肌モノ。 また今回特に注目すべきは、これを最後にバンドから脱退するロス・ザ・ボスのGプレイ。一般的に、ジョーイ・ディマイオの作る楽曲と、エリック・アダムスの超絶歌唱があれば、それでMANOWARサウンドは成立するというのがファンの共通認識なれど、このアルバム以前と以後とで、その作風が微妙に変質していく事を鑑みるに「やはりオリジナル・メンバーのロスの存在って重要だったんだな~」と、その豪快さと繊細さを併せ持つGプレイを聴きながらしみじみと実感させられます。 ロス・ザ・ボス在籍時代の集大成とも言える、気合の入った傑作。
せっかくMANOWARが来日するというのに、こちとら出張日程丸被りで、今年のLOUD PARKには早くも不参加が確定・・・。仕方ないのでラウパ用にプールしていた資金の一部で、『BATTLE HYMNS MMXI』に続くリメイク盤、本『KINGS OF METAL MMXIV』を購入致しました。 尤も、音質の著しい向上からメンバーのパフォーマンスの熟達まで、リメイクの意義が明白に刻まれていた『BATTLE~』に対し、『KINGS ~』はもともと脂の乗り切ったMANOWARの漢汁が滴り落ちる大名盤であり、今ひとつリメイクのありがた味を感じ辛いのが難なんですが。 前任者に比べ馬力不足が目立つドラミング、曲順の変更による作品全体のダイナミズムの低下等もそうした印象を後押し。サビメロから爆発力が失われてしまった“WHEELS OF FIRE”のように、ライブ・バージョン準拠で簡素化の図られたアレンジも個人的には食い足りんなぁ、と。 そんなわけでどうにも苦言ばかりが先立つ本作なれど、語り口の大仰さ倍増の④から、三拍子揃った野蛮さ/勇壮さ/劇的さがメタル魂を鼓舞しまくる名曲⑤(歌詞に日本の名前も登場)へと繋がっていく怒涛の展開等、聴いてるだけで男性ホルモンが過剰放出されて思わずマッチョ化しそうになる、血沸き肉踊る瞬間も多々用意されており、この辺りのマキシマムっぷりは流石MANOWAR。 コール&レスポンスの作法の更新等、今年のラウパに参戦するであれば、是非とも押さえておきたい1枚ではあります。未聴の方には、まずはオリジナル盤の入手をお薦めしますけどね。
オリジナル・メンバーの1人であり、生粋のロックンローラーだったロス・ザ・ボス(G)が6th『KINGS OF METAL』を最後にバンドを去って以来、ジョーイ・ディマイオ(B)の妥協を許さぬ完璧主義者っぷりに歯止めを掛けられる存在がいなくなったのか、アルバムのリリース・ペースがオリンピック級の気の長さになってしまったMANOWAR、'96年発表の8thアルバム。 前作『THE TRIUMPH OF STEEL』から参加したデイヴィッド・シャンケル(G)とライノ(Ds)が早くも脱退し、新Gとしてカール・ローガンが加入。Dsの座には前任のスコット・コロンバスが出戻るという慌しい人事異動を経て完成をみた本作だが、大勢には全く影響なし。いや、寧ろやや力み過ぎの感があった『THE TRIUMPH~』を軽く凌駕する内容に仕上がっているような・・・。 前作は、30分に及ぼうかという組曲“ACHILLES,AGONY AND ECSTASY"を筆頭に、気合の入った大作がズラリと並んでいたものの、メロディの弱さがアルバムの印象を弱いものにしてしまっていたが、今回は初心に帰ったのか、贅肉を削ぎ落とされ、コンパクトに絞り込まれた楽曲の数々は、疾走チューンにしろ、ミドル・チューンにしろ、バラードにしろ、非常に明快でキャッチー。 また、前作から飛躍的に向上したエリック・アダムスの歌メロの充実振りも大きい。特に、活きの良いOPナンバー①、タイトル/歌詞/曲調と、どこを切っても100%MANOWAR印な②、中盤の劇的な曲展開がガッツポーズ物のカッコ良さを誇る⑥、壮大なインスト曲⑧~⑨を経て、ラストを猛スピードで締め括る勇壮な⑩といった楽曲は、その両者の最良の部分が上手い具合に組み合わさった名曲じゃないかと。その他の収録曲も何れも粒揃い。当然捨て曲なし。 個人的には、ロス・ザ・ボス脱退(7th)以降のアルバムでは、この作品が一番好きだな。
近年は、打つ手打つ手が悉く空回ってる印象が否めないMANOWAR。新作がそのモヤモヤ感を吹き飛ばしてくれることを期待したのですが・・・。 神話を綴るに相応しい壮大な作り込みが為されていた前作『GODS OF WAR』の反動か、今回は楽曲にしろプロダクションにしろ、非常にシンプルでコンパクト・・・っつーか、地味じゃね?と。パンチに欠ける音作りから、起伏に乏しい本編の構成、キャッチネスが不足がちの楽曲、そしてクドさ控えめのメンバーのパフォーマンス(特にエリックのVo)に至るまで、従来作が、聴いてるだけで筋肉が勝手にパンプアップするメタル・プロテインとするならば、今回はまるでOL向けダイエット食品の如き淡白さで、これは一体どうしたことかと。 いや勿論優れた楽曲もあるんですよ。剛毅に疾走するOPナンバー“THE LORD OF STEEL”とか、好戦的に煮え立つ“EL GRINGO”、過去の名作/名曲のタイトルが歌詞に散りばめられた“HAIL, KILL AND DIE”、そして大仰過ぎる程に大仰な“THE KINGDOM OF STEEL”とか。その他のバンドがこのレベルの楽曲や作品引っ提げてやって来たならば、激賞は間違いないところですよ。「メタル蘇民祭」の様相を呈しているジャケットも最高ですし。 ただ、やはりMANOWAR作品としては「食い足りねぇ」と。これまでどんな賛否両論分かれる問題作だろうとも、背筋を伸ばして堂々提示してきた彼らなのに、本作に関しては「背中を丸めて置きに来た」との印象が拭いきれず。まぁ当方の勝手なイメージの押し付けなんですが。 思わず、他のMANOWARマニアの方の意見を伺いたくなる1枚。
ちょい前、渋谷に「ガンズ・アンド・ストレンジャー」 (原題は同じく“EL GRINGO”)なるアクション映画を 見に行ったら、この曲がエンドロールで流れてきましね。 これがもう映画のつまらなさを帳消しにするカッコ良さで。 アルバム『THE LORD OF STEEL』においても間違いなく ハイライト・ナンバーの一つですよ。
前作『LOUDER THAN HELL』から、実に6年のインターバルを置いて、'02年に発表された待望の9thアルバム。 間に2枚のライブ・アルバムを挟んだとは言え、幾らなんでも6年は待たせ過ぎでしょうが!とか、しかも漸くリリースされた国内盤の歌詞には日本語訳がないという、今時有り得ない手抜き仕様(これはバンドよりもレコード会社の怠慢だが)等、湧き上がる数々の不満を力ずくで捻じ伏せてみせる本作の凄まじいクオリティの高さは、流石MANOWAR。 基本は『LOUDER~』同様、コンパクトに練り上げられたキャッチーなHMチューンが次々に繰り出される、コンセプトよりもメロディに重きを置いた楽曲重視路線だが、個々の楽曲のクオリティは、傑作だった前作をも軽く上回る勢い。 ボーナス・トラックも含めて全11曲、熱きメタル魂を胸に思わず行進したくなる勇壮な①に始まり、エリック・アダムスの驚異的な歌唱力が堪能できるプッチーニの③、厳粛且つドラマチック極まりない⑤を経て、後半の小細工無用の剛球メタル・チューン4連発(⑧⑨⑩⑪)からオマケ収録の名曲“KILL WITH POWER”のライブ・バージョン⑫に至るまで、本編のテンションは一時も緩まる事無く、当然、捨て曲なし。 惜しむらくは曲順がイマイチな点で、似たり寄ったりのテンポの楽曲が並んでいるため緩急に乏しく、折角の楽曲のインパクトの強さを、十分に活かしきれていない印象なのが勿体無い。尤も、前半に壮大で劇的な楽曲を、後半にストロングなメタル・チューンを揃えて、「静」と「動」のコントラストが引き立つ構成を狙ったバンドの意図も理解できるので、この曲順も一概には否定できないんだけど・・・。 ともあれ、こうした些細な部分が気になるのも本作の完成度が半端ないからこそ。疑いの余地なく名盤だ。