GERMAN DEATH METAL GODSことMORGOTHが、'91年に発表した2枚目のEP。5曲収録のうち①②③が新曲、④⑤が1stデモ収録曲のリメイク。 かつてテイチクから発売された国内盤は、(↑の方の仰る通り)デビューEP『RESURRECTION ABSURD』とのカップリング仕様で、 それ1枚でMORGOTHのアマチュア時代から現在までの成長過程が振り返れる、便利な構成となっていた。 で、本作の内容はと言えば、1stフル・アルバムとなった'92年発表の『CURSED』では、へヴィネス重視の耽美方向へと 舵を切った彼らだが、この作品までは、ひたすらパワフルに疾走しまくる直球勝負のデス・メタル路線。 最初からプロフェッショナルな環境で制作されているため、デモ音源を基にしていた前作に比べ音質が向上、 楽曲やVoの迫力が大いに増していて、そのせいか、よりデス・メタル度が高まった作風との印象を受ける。 ただし、邪悪なVoや重苦しいGリフ、アクセル・ハーマン謹製の薄気味悪いジャケット・アートワーク(笑)のみで デス・メタリックな禍々しさを主張するのではなく、②のGソロ・パートを手始めに、本編のところどころにヨーロッパ的な 湿り気を帯びたメロディを仕込んで、禍々しくも荘厳、且つドラマティックな雰囲気を演出している辺りが、このバンドの美点。 前作同様、5曲収録とは言え、全く物足りなさを感じさせない力作に仕上がっている。
カナダはアルバータ州エドモントン出身。アレックス・グティエレス(G)が中心となって'08年にバンド活動をスタート。'10年にカーラ・マカッチェン(Vo)を始めとするオリジナル・ラインナップが整い、同年、セルフ・タイトルの自主制作EPを発表してデビューを飾る。 翌年には、HORROR PAIN GORE PRODUCTIONとの契約を得て1stフル『MURDER DEATH KILL』を発表。同作の好評を背景に、新たにNAPALM RECORDSとのディールを成立させたバンドは、ボーナス・トラック3曲を追加収録して『MURDER~』を再発。 更には'13年に2nd『ORIGIN OF EXTINCTION』を発表。その名をより広くスラッシュ・シーンに知らしめることに成功した。
カナダ出身で、女性メンバー2人(VoとB)を擁するスラッシュ・メタル・バンドが、地元のインディーズ、HORROR PAIN GORE PRODUCTIONから'11年に発表した1stアルバム。(現在はデモ音源3曲を追加収録して、NAPALM RECORDSからリリースされた再発盤が流通している模様) 先に2nd『ORIGIN OF EXTINCTION』を聴き、そのカッコ良さに感心して本作も購入してみたのですが、おお、こっちもナイス出来栄え!と。スケ番チックに威勢良く歌う女性Vo、派手に弾きまくるわけじゃないけど、メタル魂を鼓舞するメロディをストレートに投げ込んでくるツインGを両軸に、ロックンロールのノリの良さも飲み込んで炸裂するアッパーなスラッシュ・メタルという、彼らなりのサウンドも既に確認できます。 メタルコア調のシャウトを多用しているカーラのVoや、直線的に叩き付けられるリフ&リズム等、本作の方が若干ハードコアな感触が無きにしも非ずですが、どっちにせよスラッシュ・メタルとしてのカッコ良さに揺るぎはなし。中でもオーストリアで起きた「フリッツル事件」を題材に取り上げた④は、荒くれたZNOWHITEとでも言うべき聴き手を一発で虜にするアルバムのハイライト的名曲。 既に十二分に光るものを感じさせてくれる1枚ですよ。
JOHNNY KIDD & THE PIRATESのデビュー・ヒット曲のカヴァーにして、 MOTORHEADとGIRLSCHOOLが合同で発表した3曲入りEP(全英チャート最高第4位) 『St. Valentines Day Massacre』のリーダー・トラック。 メインVoはレミーとケリー・ジョンソンが分け合い、 ドラムは首の骨折って入院中だったフィルシー・テイラーの代わりに GIRLSCHOOLのデニス・デュフォードが叩いている。 3分弱のランニング・タイムをヤサグレ気味に突っ走る無頼な名曲。
元々はTHE MILES BROTHERS名義でブルーアイド・ソウルを演っていたジョージア州アトランタ出身の5人組が、音楽シーンの潮目の変化を受けて、よりHR色を強めたサウンドを実践するべく、バンド名をMPG(MILES PER GALLON)に改めて、'80年にA&M RECORDSからセルフ・タイトルのデビュー・アルバムを発表。この時のラインナップはオリジナル・メンバーのトニー・カレイ(Vo、Key)以下、デヴィッド・ミカエル(G)、キム・スミス(G)、マイケル・ボルト(Ds)、スティーヴ・ロックリン(B)。 アルバムは非常に高品質だったがセールスには繋がらず、バンドはこの作品のみを残して解散。後にデヴィッド・ミカエルはDAVID名義で数枚ソロ・アルバムを発表。本作のCD化に伴うリマスタリング作業も担当しています。
クロノスと共にVENOMの中心的存在であったマンタス(G)、クロノスの実弟でもあるアントン(Ds)、クロノス脱退後のVENOMでフロントマンを務めた巨漢シンガー、ザ・デモリションマンことトニー・ドーランにより'10年結成されたトリオ・メタル・バンド。 元々はVENOMのアルバム・タイトルに因んでPRIME EVILを名乗っていたが、同名バンドがいたことからMPIRE OF EVILに改名し、'11年に、6曲入りEP『CREATURES OF THE BLACK』でデビューを飾り、更に'12年には1stフル『HELL TO THE HOLY』を発表している。('12年にアントンは脱退) ところで、トニー・ドーランはATOMKRAFTを再結成している筈なのだが、そっちの活動は一体どうなっているのでしょうか。
「KISSのようなライブを演り、JUDAS PRIESTばりのシャープなエッジと、MOTORHEADに匹敵するラウドさを併せ持ったサウンドを追求する」というVENOM時代の身上に基づき(?)、2曲のオリジナル・ナンバーと共に、JUDAS PRIESTの“EXCITER”、MOTORHEADの“MOTORHEAD”、KISSの“GOD OF THUNDER”、それとAC/DCの“HELL AIN'T A BAD PLACE TO BE”等、彼らのルーツというべきバンドのカヴァー4曲も収録されている'10年発表のデビューEP。 カヴァーのチョイスはハッキリ言ってベタもいいところですが、とにかく個性の強い人たちが集まりゆえ、アレンジは比較的オリジナル・バージョンに忠実にも関わらず、より禍々しく、よりオドロオドロしい色合いが強く感じられる辺りは流石というか何と言うか。 また、カヴァー曲の強烈な存在感に押されて霞がちなオリジナル・ナンバーの方も、単体で聴けばVENOM時代の流儀を受け継いだ、厄いオーラを発散する剛直なメタル・ナンバーであり十分にカッコイイ。(特に4曲目の“REPTILE”は○) フル・アルバムに対する期待感を煽るには申し分ないクオリティを有した1枚。今なら1stフル『HELL TO THE HOLY』の国内盤を購入すれば漏れなく本作も付いてきますので、おつまみ感覚(?)でどうぞ。
長く続く廃盤状態のせいで、近年、中古盤の価格が急騰しているというザ・デモリションマン在籍時代のVENOM作品群。この状況を鑑みたマンタス&トニー“ザ・デモリションマン”ドーランが、『PRIME EVIL』『TEMPLE OF ICE』『THE WASTE LANDS』の3枚から選りすぐった楽曲をリ・レコーディング、更に新曲2曲も加えて'13年にMPIRE OF EVILの名の下に発表したリメイク・ベスト盤(?)がコレ。 ライブ映えを念頭に置いたのか、リメイク作業はスピーディorアグレッシブな楽曲を中心に行われていて、我が愛聴盤『TEMPLE~』からはたった1曲の選出に留まっている点は「そりゃ殺生な」ってな感じですが、まぁ名曲を山ほど抱えているバンドゆえ、どう選んだって漏れは出ますわな。 轟然たる音作りのもと新たに蘇った荒くれナンバーの数々は、速い曲はより速く、ミドルの楽曲はより禍々しく・・・といった具合に一層のビルドアップを遂げていて、トニーの野太い咆哮とBプレイ、厄いリフ・ワークからメロディックなソロ・パートまで剛柔自在のマンタスのG、それにジャクソンのエクストリーミリーなドラミングとが三位一体となった冒頭3曲、取り分けOPナンバーの“TEMPLE OF ICE”はスラッシャー及びパワー・メタラー必聴の名曲かと。この中に並ぶと新曲2曲がやや弱く聴こえてしまうのは如何ともし難いですが、それらも比較論抜きで評価すれば、バイオレントなスラッシュ・ナンバーで十分にカッコイイ。 ザ・デモリションマン時代のVENOMの再評価を促すのみならず、来るべきMPIRE OF EVILの新作に対する期待感を煽るのにも十分な1枚。出来れば『TEMPLE OF ICE』や『THE WASTE LANDS』のリマスター再発もお願いしたいところですが・・・。
「VENOMつったらクロノス脱退以降こそが最高ッスよ!」という自分のような人間にとっては、現行VENOMよりもテンションが上がる存在、マンタス(G)、トニー“ザ・デモリションマン”ドーラン(B、Vo)、アントン(Ds)ら、旧VENOM構成員らによって結成されたMPIRE OF EVILが'12年に発表した1stフル・アルバム。 80年代アングラ・メタル的な轟然たる音作りの下、スラッシーなリフ捌きから構築美を宿したGソロまでシャープにこなすマンタス、Bプレイも歌声も容貌同様の厳つさを誇るザ・デモリションマン、燃費の悪いアメ車が排ガス撒き散らしながらかっ飛ばしてるようなアントンの豪快なドラミングによって作り出されるサウンドは、トリオ編成とは思えぬヘヴィネスと禍々しい邪気をプンプンと発散しており、イーヴル且つ剛直な①や、ダーティで埃っぽいロックンロール・テイストも塗された⑤⑧といった疾走ナンバーは、VENOMが最もVENOMらしかった時期の音像に忠実に寄り添った作りで、彼らのファンも大満足間違いなし。か? 個人的には、この面子にはもっと後期VENOM寄りのスタイルを期待していたのですが、とは言え、スピード・メタリックなGリフとマンタス会心のGソロが駆け抜ける③や、そこはかとなくメロディアスで荘厳な⑥といった名曲もちゃんと収録されているので、総合的には十分満足行く内容なのは確か。 ちなみに初回盤は、デビューEP『CREATURES OF THE BLACK』も同梱された限定2枚組使用なので、売り切れる前にレコード屋さんへGO!・・・と書こうと思いましたが、間違っても飛ぶように売れるタイプの作品じゃないので、まぁボチボチ聴いてみて下さい。
結成は'81年まで遡り、後にSARATOGAやSILVER FISTを結成するメンバーが在籍していたスペインはマドリード出身の古豪パワー・メタル・バンドMURO。本作は彼らが’03年に行ったラスト・ライブの模様を収めた実況録音盤です。(そういえばこのバンドはデビュー作もライブ盤でした) 最後のツアーということで、当然セットリストはベスト選曲が組まれている…のかどうかは、MUROのカタログは2nd『TELON DE ACERO』(’88年)ぐらいしか聴いたことがない身には正直分かりかねるものの、“ACERO Y SANGRE”や“TELON DE ACERO”を始め、勇ましげな巻き舌Voをフィーチュアしたスピード・ナンバーで全編を固めて、お別れの湿っぽさはそこそこに、ド直球のパワーメタル・サウンドと熱気ムンムンなパフォーマンスで畳み掛ける様は「スペインのACCEPT健在なり」を証明する迫力に満ちていますよ。ちなみにデビュー作では、そのACCEPTの“FAST AS A SHARK”をカヴァーしていましたが、本作ではY&Tの代表曲“FOREVER”のスペイン語カヴァーを披露。かなりのハマりっぷりなのでセットリストの定番だったのかなと。 これを受けて立つ観衆の方も「スペインのメタル・ファンは熱い」との評判に違わぬ、時に演奏を掻き消さんばかりの盛り上がりでバンドをおもてなし。特に両者の掛け合いをイントロ代わりに、スラッシュ・メタルばりのアグレッションを撒き散らしながら突っ走る2ndアルバム収録の名曲“SOLO EN LA OSCURIDAD”が炸裂する場面は、個人的に本作のハイライトでした。 解散記念盤ですが、何だったらMURO入門盤代わりにいかがでしょうか。(バンドも後に再結成しますし)