「OBITUARYの新作『XECUTIONER'S RETURN』に、ラルフ・サントーラ(G)参加!」のニュースを聞いた時は、喜び勇んで輸入盤ショップに走ったものだが、実際のところ、あの作品におけるラルフのGプレイは、フラッシーではあるものの、こっちが(勝手に)期待していたような濃厚なメロディは控えめで、バンドに遠慮したのか、それともOBITUARYの強烈な個性に飲み込まれたのか。兎も角、DIECIDEの『THE STENCH OF REDEMPTION』程の化学反応は起きなかった・・・というのが正直な印象。(とは言え『XECUTIONER'S~』自体はとても良く出来たアルバムです) そんなわけで、自分の中のOBITUARYの最高傑作は、未だにこの'90年リリースの2nd『CURSE OF DEATH』のまま。「渡り鳥」の異名を取る名手ジェイムズ・マーフィが、唯一参加したアルバムとしても知られている本作だが、その効果の程は、①のドラマティックなイントロ部分から早くも炸裂。彼の正統派HMテイストを濃厚に漂わせた流麗なGは全編を通して暴れ回り、ドブ川でうがいしてるかの如きジョン・ターディのデス声Vo、重く、ズルズルと引き摺るような粘着質リフ、ダイナミックにウネリまくるリズムといった、従来のOBITUARYスタイルと見事なまでの美醜の対比を描き出す。 特に、バイオレントな曲調と、疾走するドラマティックなGソロの対比が光る⑤や、本編随一のドラマ性の高さを誇るラスト・ナンバー⑨といった楽曲は一聴の価値ありかと。 数あるOBITUARYのアルバムの中でも、特異な存在感を放つ1枚。
ブックオフのCDコーナーで投げ売りされていたところをレスキューしたOMENのベスト盤(’89年)。これって日本盤がリリースされてたとは知りませんでしたよ。 ジャケットが3rd『THE CURSE』(邦題『殺戮の祈祷』)のそれと間違い探し状態なのは「もうちょい頑張れなかったのか?」と声掛けしたくなるとは言え、ケニー・パウエル(元SAVAGE GRACE)の構築美を湛えたGプレイ、ジョディ・ヘンリーのスティーヴ・ハリス思わすBラン、そしてJ.D.金玉…もといキンボールの逞しい歌唱によって形成される、硬質なOMEN流パワー・メタル・サウンドは、やはり聴き応え十分です。 選曲はオリジナル・ラインナップが残した初期3作&EP1枚からそれぞれバランス良くチョイス。ドラマ性とスケール感をいや増した楽曲の完成度的にも、シンガーを始めとするメンバーのパフォーマンスの熟達ぶり的にも、やはり3rdアルバムからのものが傑出している印象ですが(特に“HOLY MARTYR”や“TEETH OF THE HYDRA”は名曲)、しかしながら1st『BATTLE CRY』、2nd『WARNING OF DANGER』収録曲も、こうして改めて聴き直すと十分イケてるなぁと。スラッシーなスピード感で畳み掛ける“TERMINATION”とか、エピック・メタル的荒々しさ漲る“DIE BY THE SWORD”とか。昔耳にした時はあまり感心した記憶がなかったのですが、あの頃の俺は一体何が気に入らなかったというのか…。 こりゃ確かにOMEN入門盤にお薦めできる1枚ですよ。
中指おっ立てる最低で最高なタイトル&ジャケットを前に、北島康介ばりに「なんも言えねぇ…」状態になってしまう、OVERKILL、’87年発表の5曲入りEP。 彼らのルーツ(の一つ)であるパンク・バンドSUBHUMANSのカヴァーにして、毎度「ファック・ユー!」のコール&レスポンスでコンサートのクライマックスを盛り上げるEP表題曲①の他、クリーブランドで録られたライブ音源4曲を収録。そんな本作は、先日購読した『スラッシュ・メタルの真実』のブリッツのインタビューによれば、ツアーを通じて親交を深めたMEGADETHのデイヴ・ムスティンが移動式スタジオを「好きに使っていいよ」と無償提供してくれたお陰で制作できたという。あの尖りまくってたイメージの80年代の大佐が…と、当時のスラッシュ・シーンの連帯ぶりにちょっとグッとくるエピソード。 尚、現在は上記5曲以降に未発表ライブ3曲と、OVERKILLの自主製作デビューEP収録の4曲を加えた『FUCK YOU AND THEN SOME』仕様で入手が可能。特にレア盤と化していた後者を聴けるのは大変ありがたい。音質は芳しくなく、そのサウンドは未だスラッシュというよりは硬派なパワー・メタルなれど、狂笑の似合うブリッツの金属Voも、タフなNYのストリートで鍛え上げられた鋼の如き強靭さも既に健在。ついでに4曲中3曲は後々アルバムでリメイクされることになるのですが、唯一選に漏れた“THE ANSWER”がこれまた名曲で、BLACK SABBATHばりのヘヴィネスが横溢する前半から、IRON MAIDEN風の勇壮な疾走へと転じる曲展開が「やっぱOVERKILLは昔っから凄かったんや!」とガッツポーズ決めたくなるカッコ良さ。ファンなら必携の1枚ですよ。