中指おっ立てる最低で最高なタイトル&ジャケットを前に、北島康介ばりに「なんも言えねぇ…」状態になってしまう、OVERKILL、’87年発表の5曲入りEP。 彼らのルーツ(の一つ)であるパンク・バンドSUBHUMANSのカヴァーにして、毎度「ファック・ユー!」のコール&レスポンスでコンサートのクライマックスを盛り上げるEP表題曲①の他、クリーブランドで録られたライブ音源4曲を収録。そんな本作は、先日購読した『スラッシュ・メタルの真実』のブリッツのインタビューによれば、ツアーを通じて親交を深めたMEGADETHのデイヴ・ムスティンが移動式スタジオを「好きに使っていいよ」と無償提供してくれたお陰で制作できたという。あの尖りまくってたイメージの80年代の大佐が…と、当時のスラッシュ・シーンの連帯ぶりにちょっとグッとくるエピソード。 尚、現在は上記5曲以降に未発表ライブ3曲と、OVERKILLの自主製作デビューEP収録の4曲を加えた『FUCK YOU AND THEN SOME』仕様で入手が可能。特にレア盤と化していた後者を聴けるのは大変ありがたい。音質は芳しくなく、そのサウンドは未だスラッシュというよりは硬派なパワー・メタルなれど、狂笑の似合うブリッツの金属Voも、タフなNYのストリートで鍛え上げられた鋼の如き強靭さも既に健在。ついでに4曲中3曲は後々アルバムでリメイクされることになるのですが、唯一選に漏れた“THE ANSWER”がこれまた名曲で、BLACK SABBATHばりのヘヴィネスが横溢する前半から、IRON MAIDEN風の勇壮な疾走へと転じる曲展開が「やっぱOVERKILLは昔っから凄かったんや!」とガッツポーズ決めたくなるカッコ良さ。ファンなら必携の1枚ですよ。
'89年発表の4thアルバム。バンドのメロディ面を一手に担っていたボビー・ガスタフソン在籍時代最後の作品であり、 これまでの集大成的作風ゆえ、本作をOVERKILLの代表作として挙げるファンも多い。 曲調に広がりの見られた前作に比べ、心持ち初期の剛速球路線に揺り戻されてる印象で、キャッチーさは薄れたものの、 より強靭に引き締まったリフ&リズムは、さながら鉄塊の如くガツガツと刻まれ、硬質なサウンド・プロダクションと相俟って、 突進パートでは全身に弾丸を浴びているかのような感覚を味わえる。 その一方で、前作で培ったドラマ性も十二分に活かされていて、「これぞOVERKILL!」な高速スラッシュに、 劇的なインスト・パートを持ち込んだ、名曲中の名曲②“ELIMINATION"、重く引き摺るリフとダイナミックな曲展開が BLACK SABBATHを思わせる⑤“PLAYING WITH SPIDERS/SKULLKRUSHER"、初のパワー・バラード⑧“THE YEARS OF DECAY"、 激しくアップダウンを繰り返す⑨“E.VIL N.EVER D.IES"といった楽曲は、きっちりアルバムの聴かせ所として機能している。 本作を最後にボビー・ガスタフソンが脱退してしまった為、以降、彼らのアルバムで、ここで聴かれるような流麗なメロディ展開を 耳にする機会は、残念ながらかなり減ってしまった。(今のマッチョ路線なOVERKILLも嫌いではないのだけれど)
ボビー・ガスタフソン在籍時代の作品は、いずれも甲乙付け難い高い完成度を誇るが、その中でも、この'88年発表の3rdはマイ・ベスト。 攻撃的な硬派スラッシュ・メタルという基本はそのままに、楽曲のクオリティが急上昇。曲調にも幅/メリハリ/緩急が出て来て、 全9曲、捨て曲がないのは勿論、どの曲も非常にキャッチーで、聴いてると勝手に体が動き出す衝動的エネルギーに満ち溢れている。 中でも、高速ロックンロール・スラッシュ③“HELLO FROM THE GUTTER"と、スラッシュ版IRON MAIDENといった趣の ドラマチックな⑦“END OF THE LINE"は、従来にはなかったタイプの異色曲ながら、2曲とも完全にOVERKILL色に染め上げられていて 違和感は全くなし。どころか、どちらもアルバム前半と後半のハイライト・チューンの役割を果たしている。 金属的艶を感じさせるボビー・ブリッツ・エルズワースのハイテンションなVo、縦横無尽に動き回り、楽曲を牽引するD.D.ヴァーニのB、 アグレッシブ且つメロディックなソロをキメまくるボビー・ガスタフソンのGという、OVERKILLの三本柱が完璧に機能している、 彼らのカタログ中、最もスラッシュ・メタル色が強く出た1枚。